説明

ロータリー式フィラ

【課題】フィラの回転数が変更されても、容器の底部中心に液体が落下するように容易に対応できるフィラグリッパ傾斜機構を備えたロータリー式フィラを提供する。
【解決手段】回転体9に円周方向等間隔で設けられた充填バルブ5と、それらの各充填バルブ5のそれぞれに対応して容器10を把持する容器グリッパ20と、充填時に容器10の開口部を充填バルブ5のノズル先端部にシールするシール部パッキンとを備えるロータリー式フィラにおいて、容器10の開口部を充填バルブ5のノズル先端部へシールするために容器グリッパ20で容器10を把持したまま持ち上げる作動と連動して、容器10の底部を回転体9の半径方向外周側に傾斜させるように容器グリッパ20を傾斜させる機構とし、この傾斜角度を調整可能なフィラグリッパ傾斜機構とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水等の液体をPETボトルやボトル缶等の容器に充填するロータリー式フィラに係り、特に、シール充填、つまり容器の開口部を充填バルブのノズル先端部にシールして充填するロータリー式フィラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料水等の液体をPETボトルやボトル缶等の容器に充填する装置として、ロータリー式フィラが用いられている。このロータリー式フィラは、回転する円板の外周部に複数の充填バルブを備えており、円板がほぼ1回転する間に、充填バルブから容器内への充填を行う。
ところで、充填バルブから容器内に充填する液体が、円板の回転による遠心力のために半径方向の外周側に振られてしまい、容器底部における周面との隅にぶつかると、充填される液体が舞い上がり、その乱流エネルギーによって空気の巻き込みが生じ気泡量が増大してしまう。
このため、充填バルブのノズルから吐出された液体が容器の底部におけるほぼ中心に落下されるようにして、容器底での液体の舞い上がりを抑え、気泡混入を少なくする手法の技術が開発されている。(特許文献1、2および3)
【0003】
その概要を説明すると、特許文献1では、充填液(18)(特許文献1の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ。)を容器(9)に垂直落下させるのではなく、容器(9)を傾斜状態で保持して、傾斜充填液通路(35)から充填液(18)を容器(9)の内壁に沿わせて流すようにして泡立ちを抑えるとしている。
特許文献2では、容器(1)(特許文献2の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ。)の底部を回転体(10A)の半径方向外側に向けて傾斜させて、ノズル(30)より吐出される充填液(32)が回転体(10A)の回転により発生する遠心力によって振られても容器(1)の底部中央付近に吐出されて、泡立ちを抑制するとしている。
特許文献3では、充填バルブ(5)(特許文献3の図中の記号を括弧書きで表示する。以下本段落において同じ。)のノズル(32)の下方を円板(9)の半径方向内側に向けて傾斜させるか、充填バルブ(5)のノズル(32)を鉛直に支持して容器(10)の底部を半径方向外側に向けて傾斜させて、充填バルブ(5)のノズル(32)から吐出させる液体(L)を容器(10)の底部におけるほぼ中心に落下させるようにして、泡立ちを抑えるとしている。
【特許文献1】特開平11−100096号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−63594号公報(図5)
【特許文献3】特開2006−248547号公報(図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に示す従来技術では、容器底部の形状として中心部分が突出した複雑なものの場合には、容器の内面に沿わせて液体を充填しても、容器の底部に形成された中心の凸部によって液体が舞い上がり、結果的に空気の巻き込みによる泡立ちが生じて気泡量の増大を招く虞があった。
前記特許文献2に示す従来技術では、口上充填を対象としており、シール充填、即ち、ガス飲料のような液体の充填の場合には、容器の開口部をノズル先端にあてがう必要があるが、特許文献2に示す従来技術では対応できない。
前記特許文献3に示す従来技術では、前記特許文献2に示す従来技術の問題点は解消するが、シール部材の容器開口部に接する面、および、容器ホルダの把持部が、水平面に対してフィラ回転速度に応じて予め定めた傾斜角度をなすようになっており、フィラ回転速度を変更する場合には、容器ホルダの把持部およびシール部材を取り替える必要があり、様々なフィラ回転数に対応することが困難であるという虞があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて提案するものであり、その目的とするところは、シール充填をするロータリー式フィラにおいて、フィラ回転数が変更されても、容器の底部中心に液体が落下するように容易に対応できるフィラグリッパ傾斜機構を備えたロータリー式フィラを提供しようとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題に対し、本発明は、以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段のロータリー式フィラは、回転体に円周方向等間隔で設けられた充填バルブと、それらの各充填バルブのそれぞれに対応して容器を把持する容器グリッパと、充填時に容器の開口部を前記充填バルブのノズル先端部にシールするシール部パッキンとを備えたロータリー式フィラにおいて、容器の開口部を前記充填バルブのノズル先端部へシールするために前記容器グリッパで容器を把持したまま持ち上げる作動と連動して、容器の底部を回転体の半径方向外周側に傾斜させるように前記容器グリッパを傾斜させる機構とし、この傾斜角度を調整可能なフィラグリッパ傾斜機構としたことを特徴とする。
(2)第2の手段のロータリー式フィラは、上記(1)のロータリー式フィラにおいて、容器開口部の天面を前記充填バルブのノズル先端部にシールする前記シール部パッキンがノズル先端部のパッキン取り付け部を中心として回転自在の機構としたことを特徴とする。
(3)第3の手段のロータリー式フィラは、上記(1)のロータリー式フィラにおいて、容器開口部の内径部を前記充填バルブのノズル先端部にシールする前記シール部パッキンがノズル先端部のノズル側に球中心を持ち、容器開口部側を凸とする球形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1から請求項3までに係わる本発明は、上記(1)から(3)までの手段のフィラグリッパ傾斜機構であり、ロータリー式フィラにおいて、フィラの回転による遠心力のために充填バルブから容器内に充填する液体が半径方向の外周側に振られても、充填バルブのノズルから吐出された液体が容器の底部におけるほぼ中心に落下されるように容器を傾斜させるに際して、容器を持ち上げる機構を利用して容器グリッパを傾斜させ、この傾斜角度を容易に調整可能な機構としたので、また、傾斜した容器をシール部パッキンにシールするに際して、シール部パッキンを回転自在にしたことにより、または球形状としたことにより、フィラの回転速度を変更する場合に、容易に傾斜角度を調整できるようになり、容器ホルダの把持部およびシール部材等の交換が不要となるとともに、空気の巻き込みによる泡立ちの発生を抑えることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、PETボトルに飲料をシール充填するロータリー式フィラのボトルグリッパ(容器グリッパ)に応用するものであり、以下図に基づいて説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係わるロータリー式フィラの全体の構成を簡略化して示す平面図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係わるフィラグリッパ傾斜機構を示す概略の側面図で、容器が上昇を開始する直前の状態を示す。図3は、図2のI−I断面図で、一部断面図として示す。図4は、図2のシール部パッキン構造を示す一部断面側面図で、容器が傾斜してシール部パッキンと接触してシールされた状態を示す。
【0010】
図1に示すように、充填ノズル5はロータリー式フィラ1の回転円板9に円周等分で取り付けられている。容器搬入コンベヤ11によって矢印AF方向から搬送される容器10は、インフィードスクリュー11Aによって割り出されて、回転円板9と同期して回転する供給スターホイール14を介して、図示Aの位置で容器グリッパ20に把持されて充填ノズル5側に取り込まれる。回転円板9が図示CL方向に回転している間に充填された容器10は、図示Hの位置で充填ノズル5から外れて、回転円板9と同期して回転する搬出スターホイール15を経て、容器搬出コンベヤ12によって矢印BF方向へ搬送される。
【0011】
図2に示すように、一対のロッド24は、充填ノズル5のそれぞれに対応して設けられており、下端に下方ブロック23が、上端に上方ブロック26がボルト等により取り付けられていて、回転円板9に設けられた穴9aおよびブロック25に設けられた穴25aにガイドされて上下動するようになっている。また、充填ノズル5のそれぞれに対応して回転円板9の図示しないフレームに固定されたブロック25の上面にはアクチュエータ27が取り付けられており、軸28、上方ブロック26を介して、ロッド24を常時上方へ付勢するようになっている。一方、片方のロッド24に固定されたローラ用ブロック29の軸31の周りを回転するローラ30がカム32の軌道面に規制されて転動することにより、ロッド24は上方への動きが規制されている。
【0012】
回転円板9には各充填ノズル5に対応してハンドル38付きのねじ棒37Aが螺合されており、ねじ棒37Aの下部部分の円柱状の軸37Bが円板33に設けられている軸受39に案内されて回転するとともに上下方向の動きが規制された状態で円板33と係合していて、回転円板9と円板33に係合する図示しない上下案内ガイドにガイドされてハンドル38を廻すことにより上下動するようになっている。円板33の下部にはブロック34が取り付けられており、さらにブロック34に取り付けられた軸36の周りに回転するローラ35が設けられている。
【0013】
ブロック21にはボルト等により容器グリッパ20が取り付けられているが、ブロック21は、下方ブロック23と一体構造の支持部材23Aに嵌め込まれた軸22を支点として揺動するようになっているとともに、下方ブロック23の方向に引張ばね19で常時引っ張られており、さらに、ブロック21がローラ35と接触していないときは、下方ブロック23に螺合されたストッパ17で図示のように水平位置に保たれるようになっている。なお、ナット18はストッパ17の高さ位置調整後にストッパ17を下方ブロック23に固定するためのものである。
【0014】
ロッド24がカム32の軌道面により上方へ移動すると、ブロック21が上昇してローラ35に接触し、ロッド24がさらに上昇すると、ブロック21の一端がローラ35により押された状態で軸22を支点として、図示S方向に揺動し、容器グリッパ20によって把持された容器10は上昇しながら底部が図示R方向、即ち、回転円板9の半径方向外周側に傾斜するようになっている。
【0015】
容器グリッパ20で把持された容器10の開口部天面と充填バルブ5のノズル41の先端部とのシール構造について、図4で説明する。球面43aを持った球面体43にパッキン抑え44により抑えられて取り付けられたシール部パッキン42は、球面体受け47および固定具45のそれぞれの凹の球面47a、45aと球面体43の凸の球面43aにより回転自在となっている。球面体43は固定具45にOリング46を介してシール機能を持ちながら球面支持されており、球面体受け47はOリング48を介してシール機能を持ちながらバルブ本体40に固定具45により固定されている。
なお、容器10が上昇しつつ傾きながら、その開口部が充填バルブ5のノズル41の先端部とシール係合する際、容器10の開口部が固定具45、球面体43とは干渉しない構造となっている。
また、ノズル本体40、ノズル41他の充填バルブ5の構造については、特許文献3(特開2006−248547号公報)の公知文献に記載されたものがあるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
上記構造において、その作用を説明すると、上流側から供給された容器10はロータリー式フィラ1のA点で容器グリッパ20に把持された後、回転円板9のCL方向への回転でB点に達するとカム32の軌道面によりローラ30、ロッド24、下方ブロック23を介してブロック21が上昇を始め、それに伴って容器10も上昇を始める。C点に達するとブロック21の一端がローラ35に接触してブロック21および容器グリッパ20が矢印S方向に揺動を開始する。その後、D点に達するまでの間、ブロック21が上昇を続けるとともにブロック21および容器グリッパ20が矢印S方向に傾斜していくことに伴い、容器10は上昇しながら容器10の底部が矢印R方向に傾斜していく。
D点に達するとカム32の軌道面によりロッド24の上昇が停止して、容器10の上昇および傾斜の動きが停止となる。
D点に達する直前に容器10の開口部天面がシール部パッキン42に接触して、シール部パッキン42が球面43aと球面45aおよび47aの球面摺動により容器10の傾斜に対応して傾斜化し、D点に達すると図4に示すように傾斜状態でシール係合する。
【0017】
その後、D点からE点までの間に、容器10へは傾斜した状態で充填バルブ5から液体が充填されるが、回転円板9の回転による遠心力で液体は回転円板9の外周側に振られて吐出される。その際、充填される液体が容器10の底中心に向かって吐出されるように容器10の傾斜角度が設定されており、充填液体の気泡巻き込みが極小に抑えられる。容器10への充填が終了すると、容器10は、E点に達してカム32の軌道面によりロッド24が下降を始めるのに伴い、E点からF点に向かう間に下降しながら傾斜状態から水平状態へと復元し始め、F点に達するとブロック21がローラ35から離間することに伴い、水平状態のまま下降する。容器10は、G点に達するとカム32の軌道面により下降は停止し、H点に達すると容器グリッパ20から把持を解かれて、その後、搬出スターホイール15を経て容器搬出コンベヤ12により矢印BF方向へ搬送されていく。
【0018】
なお、ロータリー式フィラ1の回転速度を変更する場合には、容器10の傾斜角度を変更することが求められるが、ハンドル38を廻すことにより円板33の高さを調整することができ、予め求めておいた回転速度と傾斜角度の関係により円板33の高さを決めておけば、容易に傾斜角度を設定変更することができる。また、容器10の傾斜角度の変更に際して、容器10の開口部天面とシール部パッキン42とのシール係合が球面体43の作用により自動的に調整される。
このように、ロータリー式フィラ1の回転速度を変更する場合に、容器10の傾斜角度を容易に調整することができる。
【0019】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係わるシール部パッキン構造を示す一部断面側面図で、容器が傾斜してシール部パッキンと接触してシールされた状態を示す。
【0020】
図5に示すように、シール部パッキン50は、ノズル41側に球中心を持つ凸の球面50aが容器10の開口部内径側とシール係合するようになっており、固定具51によりバルブ本体40に取り付けられている。ここで、シール部パッキン50の材質は、球面50aと容器10の開口部内径側とが液漏れがないようにシール係合するために、弾力性のあるものとなっている。
なお、容器10が上昇しつつ傾きながら、その開口部が充填バルブ5のノズル41の先端部とシール係合する際、容器10の開口部が固定具51とは干渉しない構造となっている。
【0021】
上記構造において、その作用は、第1の実施の形態と同じ作用については重複する内容となるので、記載を省略するが、D点に達すると、容器10の開口部内径側がシール部パッキン50の球面50aとシール係合し、容器10は傾斜したまま保持される。
【0022】
ロータリー式フィラ1の回転速度を変更する場合の容器10の傾斜角度の変更に際しては、容器10の開口部内径側とシール部パッキン50とのシール係合部が球面50aとなっているので、シール係合が自動的に調整される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わるロータリー式フィラの全体の構成を簡略化して示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わるフィラグリッパ傾斜機構を示す概略の側面図で、容器が上昇を開始する直前の状態を示す。
【図3】図2のI−I断面図で、一部断面図として示す。
【図4】図2のシール部パッキン構造を示す一部断面側面図で、容器が傾斜してシール部パッキンと接触してシールされた状態を示す。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係わるシール部パッキン構造を示す一部断面側面図で、容器が傾斜してシール部パッキンと接触してシールされた状態を示す。
【符号の説明】
【0024】
1…ロータリー式フィラ、
5…充填バルブ、
9…回転円板、
10…容器、
17…ストッパ、
19…引張ばね、
20…容器グリッパ、
21…ブロック、
22…軸、
23…下方ブロック、
23A…支持部材、
24…ロッド、
27…アクチュエータ、
30,35…ローラ、
32…カム、
33…円板、
37A…ねじ棒、
38…ハンドル、
41…ノズル、
42,50…シール部パッキン、
43…球面体、
44…パッキン抑え、
45,51…固定具、
47…球面体受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に円周方向等間隔で設けられた充填バルブと、それらの各充填バルブのそれぞれに対応して容器を把持する容器グリッパと、充填時に容器の開口部を前記充填バルブのノズル先端部にシールするシール部パッキンとを備えたロータリー式フィラにおいて、
容器の開口部を前記充填バルブのノズル先端部へシールするために前記容器グリッパで容器を把持したまま持ち上げる作動と連動して、容器の底部を回転体の半径方向外周側に傾斜させるように前記容器グリッパを傾斜させる機構とし、この傾斜角度を調整可能なフィラグリッパ傾斜機構としたことを特徴とするロータリー式フィラ。
【請求項2】
請求項1に記載するロータリー式フィラにおいて、
容器開口部の天面を前記充填バルブのノズル先端部にシールする前記シール部パッキンがノズル先端部のパッキン取り付け部を中心として回転自在の機構としたことを特徴とするロータリー式フィラ。
【請求項3】
請求項1に記載するロータリー式フィラにおいて、
容器開口部の内径部を前記充填バルブのノズル先端部にシールする前記シール部パッキンがノズル先端部のノズル側に球中心を持ち、容器開口部側を凸とする球形状としたことを特徴とするロータリー式フィラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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