説明

ロータリー式調理器

【課題】装置全体は簡素化した構成でありながら、食品の調理に必要とされる撹拌処理や剥ぎ取り処理を円滑に行いうるようにしたロータリー式調理器を提供する。
【解決手段】中心軸線を横方向に向けて回転可能に取り付けられた筒状ドラム10を少なくとも備えるロータリー式調理器Aにおいて、筒状ドラム10内に、筒状ドラム10の内周面に沿って空気が流れることができるように空気を吐出するエアーノズル12、14、16を配置する。また、前記エアーノズルへ空気を送給するエアータンク20を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する筒状ドラム内において被調理材を連続的に調理するためのロータリー式調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱されかつ回転する筒状ドラム内に食材を収容し、かつ、筒状ドラム内に、食材を攪拌するための撹拌羽根を取り付け、食材が当該筒状ドラムの入口から出口まで移動する間に、食材を撹拌羽根によって撹拌しながら加熱調理するようにしたドラム形加熱調理器は知られている。また、上記の形態のドラム形加熱調理器において、筒状ドラムの内周面に付着した付着物を剥ぎ取るための剥ぎ取り手段を備えることも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軸線を水平方向に向けて配置した加熱ドラム内に、先端が加熱ドラム内周面に近接した羽根部材を有する撹拌羽根を配置し、前記撹拌羽根によって米飯原料を撹拌しながら炒め処理を行うようにした米飯の連続炒め装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、剥ぎ取り用スクレーパを筒状ドラムの軸線方向に向けて設置し、スクレーパ先端のエッジ部を、筒状ドラム内周面に常時接触させた状態で筒状ドラムを回転させ、エッジ部により筒状ドラム内壁面に付着した付着物を剥ぎ取るようにしたロータリー式調理器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−209754号公報
【特許文献2】特開2001−327409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1あるいは特許文献2に記載される形式の、撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段を備えたドラム型加熱調理器は、米飯等の連続炒め装置としてきわめて有効性が高い。しかし、従来の装置では、撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段として、金属材料あるいは樹脂材料等からなる構造部材を用いており、そのような材料からなる撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段で撹拌あるいは剥ぎ取りを行うと、場合によっては、それらの手段と筒状ドラムとが過度に接触して、ドラム面や撹拌あるいは剥ぎ取り手段の一部が削れる場合があり、相互の位地合わせに慎重な作業を要している。また、筒状ドラム内の処理スペースが、それら構造部材によって犠牲になることも起こっている。また、筒状ドラム内の適所に撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段を適切に配置するためには、機枠や支持部材などの多くの付加的構造物も必要となっている。特に、樹脂材料の撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段を用いて加熱処理を行う場合には、過度に加熱すると樹脂材料が部分的に溶融することも考えられることから、加熱温度についても慎重な対応が求められている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、装置全体は簡素化した構成でありながら、食品の加熱処理に必要とされる撹拌処理や剥ぎ取り処理を円滑に行いうるようにしたロータリー式調理器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるロータリー式調理器は、基本的に、中心軸線を横方向に向けて回転可能に取り付けられた筒状ドラムを少なくとも備えるロータリー式調理器において、前記筒状ドラムの内周面に沿って空気が流れることができるように空気を吐出する1本または2本以上のエアーノズルと前記各エアーノズルへ空気を送給する空気供給手段とを備え、前記各エアーノズルは前記筒状ドラムの内周面に接しない状態でかつ筒状ドラムと共に回転しない状態で適宜の支持フレームに取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
上記のロータリー式調理器では、エアーノズルから吐出する空気が筒状ドラムの内周面に沿って流れる過程で、筒状ドラム内に存在する例えば食材である被調理材に対して、空気の流れ方向下流側への押圧力を与え、また、筒状ドラム内壁面に付着した被調理材を含む付着物には、筒状ドラム内壁面から剥離する方向の力を与える。その力により、調理時に必要とされる、筒状ドラム内の被調理材に対する撹拌処理が進行し、また筒状ドラムの内周面に付着した付着物の剥離処理も進行する。従って、本発明によるロータリー式調理器では、筒状ドラム内にエアーノズルが存在するだけで、所望の加熱処理を進行させることが可能であり、構造部材としての撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段およびそれらを取り付けるための付加的構造物を必要としないので、ロータリー式調理器の全体構成はきわめて簡素化される。
【0010】
本発明によるロータリー式調理器での一態様では、前記エアーノズルとして、前記筒状ドラムの被調理材入口側に配置されかつ空気の吐出方向が筒状ドラムの被調理材出口側でかつ筒状ドラムの軸線方向である第1のエアーノズルを含む。上記の態様において、第1のエアーノズルから筒状ドラムの軸線方向に吐出する空気は、主に、被調理材に送り方向および反転方向の運動を与えるように作用し、また、被調理材を撹拌するように作用する。
【0011】
本発明によるロータリー式調理器での他の態様では、前記エアーノズルとして、空気の吐出方向が前記筒状ドラムの回転方向または反回転方向である第2のエアーノズルを含む。この態様において、前記第2のエアーノズルのノズル形状は筒状ドラムの軸心方向に沿ったスリット状であることは好ましい。上記の態様において、第2のエアーノズルから筒状ドラムの回転方向または反回転方向に吐出する空気は、主に、筒状ドラムの内周面に付着した被調理材等の付着物を剥離するように作用し、また、被調理材を撹拌するように作用する。さらに、筒状ドラム内のクリーニングにも効果的に機能する。特に、第2のエアーノズルのノズル形状が筒状ドラムの軸心方向に沿ったスリット状である場合には、筒状ドラムの内周面と被調理材との間に吐出空気が滑り込み易くなり、被調理材の剥ぎ取り効果が増大する。
【0012】
本発明によるロータリー式調理器でのさらに他の態様では、前記エアーノズルとして、前記筒状ドラムの被調理材出口側に配置された第3のエアーノズルを含む。第3のエアーノズルからの空気の吐出方向を適宜選択することにより、被調理材の筒状ドラムからの排出促進作用や、必要な場合に被調理材を筒状ドラム内へ戻して対流させる作用や、筒状ドラム内のクリーニング作用、などを効果的に行うことができる。
【0013】
なお、第1から第3のエアーノズルは、そのいずれか1種が筒状ドラム内に取り付けられていてもよく、いずれか選択された2種が筒状ドラム内に取り付けられていてもよく、3種のすべてが筒状ドラム内に取り付けられていてもよい。処理対象の被調理材の種類あるいは調理の態様等に応じて、そのいずれかの態様を適宜選択する。
【0014】
本発明によるロータリー式調理器でのさらに他の態様では、エアーノズルの少なくともいずれか1つは、その空気吐出口と筒状ドラムの内周面との距離が調整可能とされる。
【0015】
また、本発明によるロータリー式調理器でのさらに他の態様では、エアーノズルの少なくともいずれか1つは、その空気吐出口からの空気吐出角度が調整可能とされる。
【0016】
本発明によるロータリー式調理器でのさらに他の態様では、前記各エアーノズルへ空気を送給する空気供給手段は空気の吐出圧力を調整する手段を備える。吐出圧力を調整する手段の一例としては、空気配管に減圧弁を設けることが挙げられる。
【0017】
上記のようであり、本発明によるロータリー式調理器では、必要な場合には、適宜の制御機構によって、各エアーノズルからの吐出空気の量、吐出のタイミング、吐出の圧力などを適切に制御しながら調理を行うことにより、所期したとおりの加工済みの被調理材を得ることができる。
【0018】
本発明によるロータリー式調理器のさらに他の態様において、前記エアーノズルの少なくともいずれか1つへ水蒸気を供給する手段をさらに備えることもできる。この態様では、例えば筒状ドラム内周面を洗浄することが必要となったときに、エアーノズルから水蒸気を吐出させることで、必要な洗浄を行うことが可能となる。
【0019】
本発明によるロータリー式調理器の他の態様において、前記筒状ドラムの中心軸線の水平方向に対する傾斜角度が変更可能となっている。この態様では、被調理材の量や種類に応じて筒状ドラムの傾斜角度を調整することで、最適な調理時間等を設定できるようになる。
【0020】
また、本発明によるロータリー式調理器において、前記筒状ドラム内において被調理材を撹拌するための構造部材としての撹拌手段、あるいは、前記筒状ドラムの内周面に付着した付着物を剥ぎ取るための構造部材としての剥ぎ取り手段をさらに備えることもできる。この態様では、装置の簡素化は犠牲となるが、吐出するエアーと構造部材としての撹拌手段あるいは剥ぎ取り手段との双方で、撹拌あるいは剥ぎ取りを行うことで、より高い品質の加工済み被調理材を得ることができる。
【0021】
本発明によるロータリー式調理器において、前記筒状ドラムを加熱する加熱手段を備えることもできる。この場合には、被調理材は筒状ドラム内で加熱処理を受けることとなる。前記加熱手段に特に制限はないが、筒状ドラムの下部に配置したガスバーナやヒータなどであってもよく、筒状ドラムに通電コイルを巻き付けて電磁誘導による加熱を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ロータリー式調理器において、筒状ドラム内を簡素化することができ、内部空間を有効に利用して被調理材の調理加工を行うことができる。また、構造部材としての撹拌手段や剥ぎ取り手段を省略できるので、ロータリー式調理器の全体構成も簡素化することができ、かつ機器のメンテナンス等も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるロータリー式調理器の一例を示す側面図。
【図2】図1に示すロータリー式調理器を図で左側から見た状態を示す図。
【図3】筒状ドラム内での被調理材の一例である食材の動きとエアーとの関係をエアー関連設備とともに示す模式的な図。
【図4】筒状ドラム中央領域での食材の動きとエアーとの関係を模式的に示す図。
【図5】ロータリー式調理器の他の例を示す図。
【図6】ロータリー式調理器の一例を示す図2に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるロータリー式調理器の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、この実施の形態によるロータリー式調理器Aは、機枠1と、機枠1に回転自在に支持された筒状ドラム10と、筒状ドラム10を加熱するための加熱手段2と、筒状ドラム10を回転駆動するためモータ3とを備える。機枠1には、機枠1に固定されたナット4とそこに螺合する調整ボルト5とからなる上下位置調整手段(図2参照)が取り付けてあり、調整ボルト5を回転することにより、機枠1の水平面Hに対する傾斜角度が調整される。機枠1には、4個の支持ローラ6が回転自在な態様で取り付けてあり、該4個の支持ローラ6に外周面を支承された形で、前記した両端を開放した円筒状のドラム10が回転可能に支持されている。調理の態様によっては加熱手段2を省略することもできる。
【0025】
筒状ドラム10の一方端の外周面にはスプロケット状の歯11が全周に形成されており、モータ3の回転軸に取り付けたスプロケットと前記スプロケット状の歯11間にチェーンまたはタイミングベルト7が掛けられている。上記の構成であり、図示しない制御機構によりモータ3を適宜の速度で回転駆動すると、その回転力はチェーンまたはタイミングベルト7を介して筒状ドラム10に伝えられ、筒状ドラム10は例えば図2で示す矢印P方向に回転する。
【0026】
筒状ドラム10内には、図示しない適宜の機枠に支持された状態で、3つのエアーノズル12、14、16が配置されている。
【0027】
第1のエアーノズル12は、主に、筒状ドラム10に投入された被調理材(以下の説明では、単に食材という)に下流側へ向けての反転運動を付与するのに用いられるものであり、筒状ドラム10内の食材の食材入口側(図1で左側端部)において、好ましくはその最下位部近傍の位置に配置される。第1のエアーノズル12は、その空気a1の吐出方向が、筒状ドラム10の内周面側であり、筒状ドラム10の軸線方向であり、かつ食材の食材出口側(図1で右側端部)となるように設定されている。筒状ドラム10の内周面に対する吐出空気a1の傾斜角度は小さい角度、例えば10度以下であることが望ましい。また、この傾斜角度は、食材の種類や加工仕様に応じて調整可能であることが好ましい。なお、図示の例で、第1のエアーノズル12は1本のパイプとして示されるが、図示しないが、第1のエアーノズル12は、2本以上のパイプで構成されてもよく、また、筒状ドラム10の内周面に沿う曲率を持つ所要長さの曲管で構成してもよい。曲管の場合には、前記した空気の流れができるように、その軸線方向に沿って複数個の空気吐出孔が形成される。
【0028】
第2のエアーノズル14は、主に、筒状ドラム10の内周面に付着した食材等を、内周面から引き剥がすのに用いられるものであり、その空気吐出口15を筒状ドラム10の軸方向のほぼ全長にわたって形成している。第2のエアーノズル14は、筒状ドラム10の図2で左斜め上方位置において、筒状ドラム10の軸線方向に、かつ筒状ドラム10の内周面に近接して取り付けられている。この例において、第2のエアーノズル14には、筒状ドラム10の回転方向Pの上流側に面する位置に、軸心方向に沿ったスリット状の空気吐出口15として形成されている。それにより、第2のエアーノズル14に供給される空気a2は、該スリット状の空気吐出口15を通って、筒状ドラム10の回転方向Pと反対の方向に向けて、そのほぼ全幅領域に吐出する。そして、吐出した空気は、筒状ドラム10の内周面に沿って筒状ドラム10の回転方向上流側に向けて流れていく。
【0029】
第3のエアーノズル16は、主に、加工が進んだ食材を攪拌するために用いられるものであり、筒状ドラム10内の食材の食材出口側(図1で右側端部)において、好ましくは空気吐出口が筒状ドラム10の最下位部から上方に離間した位置となるようにして配置される。第3のエアーノズル16の場合も、その空気a3の吐出方向は、筒状ドラム10の内周面側であり、かつ筒状ドラム10の軸線方向であるが、第1のエアーノズル12とは異なり、食材の食材入口側に向くように、また、筒状ドラム10の内周面に対する吐出空気の傾斜角度が、第1のエアーノズル12の傾斜角度よりも大きい角度、例えば45度から70度程度となるようにされている。この傾斜角度は、食材に応じて調整可能であることが好ましい。なお、図示の例で、第3のエアーノズル16も1本のパイプとして示されるが、第1のエアーノズル12と同様に、2本以上のパイプで構成されてもよく、また、筒状ドラム10の内周面に沿う曲率を持つ所要長さの曲管で構成してもよい。この場合も、曲管の場合には、前記した空気の流れができるように、その軸線方向に沿って複数個の空気吐出孔が形成される。
【0030】
図3に示すように、この例において、ロータリー式調理器Aは、エアータンク20を備えている。エアータンク20内には、図示しないエアーコンプレッサーから空気が送り込まれ、常時、所定圧の空気が貯留されている。第1のエアーノズル12には、電磁弁31および減圧弁または開閉弁32を介して、エアータンク20内の加圧空気が送られる。第2のエアーノズル14には、電磁弁33および減圧弁または開閉弁34を介して、エアータンク20内の加圧空気が送られる。また、第2のエアーノズル14は、開閉弁40を介して、図示しない蒸気発生源にも接続している。第3のエアーノズル16にも、電磁弁35および減圧弁または開閉弁36を介して、エアータンク20内の加圧空気が送られる。また、ロータリー式調理器Aは、図示しない制御機構を有しており、各エアーノズル12、14、16からの加圧空気の吐出タイミングや吐出量が、食材の種類や加工仕様に応じて、それぞれ適宜制御されるようになっている。
【0031】
上記したロータリー式調理器Aは、多くの食品の加熱調理用機器として使用することができる。以下に、一例として、卵Fを加工する場合について、図3および図4を参照しながら説明する。加工に際し、装置全体を水平面に対してわずかに傾斜した姿勢とする。前記した上下位置調整手段を調整することで、適宜の傾斜姿勢とすることができる。筒状ドラム10の食材入口側、図に示す例では左側をわずかに高くした状態で、筒状ドラム10の食材入口側に油と液卵Fを投入する。図示しない制御機構を操作して、加熱手段2を稼働させるとともに、筒状ドラム10を前記した矢印P方向に回転させる。
【0032】
制御機構を用いて、開閉弁40を閉じ、減圧弁または開閉弁34を開いた状態とする。液卵Fは、筒状ドラム10の食材入口側で加熱を受け、わずかに固まった状態となる。制御機構により、電磁弁31、33、および35を制御し、第1のエアーノズル12、第2のエアーノズル14、および第3のエアーノズル16から、加圧された空気(圧縮空気)を間歇的に吐出させる。第1のエアーノズル12から間歇的に吐出する空気a1の作用によって、固まりつつある卵Fは、反転しながら下流側へ向けて送り出されていく。そして、下流側に移動する過程で、次第に加熱加工が進行する。また、図4に示すように、筒状ドラム10の回転とともに、その内周面に沿って上方に引き上げられていく液卵あるいは加工卵Fは、第2のエアーノズル14からの吐出空気a2が間歇的に吹き当たることにより、内周面から引き剥がされて剥離し、下方に落下していく。
【0033】
加工が進行した卵Fが筒状ドラム10の食材出口側に近づくと、第3のエアーノズル16から間歇的に吐出する空気a3の作用を受ける。吐出空気a3により、加工卵Fは攪拌され、また所望に細断される。それにより、均質に加熱加工されかつほぼ均一に細断された状態の加工卵が、筒状ドラム10から排出される。
【0034】
上記したロータリー式調理器Aでは、筒状ドラム10の内周面を洗浄することが必要となったとき、それを容易に行うことができる。すなわち、洗浄が必要となったときには、制御機構を操作して、減圧弁または開閉弁32、34、36を閉じ、すべての電磁弁31、33、35も閉じた状態で、蒸気発生源に繋がる開閉弁40を開く。それにより、第2のエアーノズル14から筒状ドラム10の内周面に向けて蒸気、望ましくは高圧水蒸気が噴射され、筒状ドラム10の内周面の洗浄が容易かつ迅速に進行する。必要な場合には、その後で、すべてのあるいは適宜のエアーノズル12、14、16から空気を吐出することにより、筒状ドラム10内からの洗浄物の排出や乾燥等の処理を迅速に行うことができる。
【0035】
なお、ロータリー式調理器Aを用いて、加湿した雰囲気で食材の加熱処理を行うことが求められるような場合には、前記した加熱処理中に、開閉弁40を開き、所望量の蒸気を第2のエアーノズル14から加圧空気と共に筒状ドラム10内に供給することもできる。
【0036】
上記の説明では、各エアーノズル12、14、16からの空気の吐出を、間歇的に行うようにしたが、間歇的にではなく、継続的に一定量の空気が吐出するように運転することもできる。しかし、本発明者の実験では、間歇的吐出の方が、攪拌あるいは剥離の効果が優れていることが示された。さらに、上記の説明では、第1から第3のエアーノズル12、14、16を配置するようにしたが、加熱処理の条件等によっては、そのいずれか1つまたは2つのエアーノズルのみを配置するようにしてもよい。3つのエアーノズルを配置する場合にも、そのいずれかを選択して、加圧空気を吐出させるようにしてもよい。
【0037】
図5は、本発明によるロータリー式調理器Aの他の形態を示している。ここでは、各エアーノズル12、14、16の筒状ドラム10の内周面からの距離、および空気の吐出角度が調整できるようになっている。より具体的には、筒状ドラム10の食材入口側と食材出口側に垂直方向の支柱を立設し、その支柱を利用して、各エアーノズル12、14、16のいずれかまたはすべてを、位置および空気の吐出角度を変更可能に取り付ける。なお、図5では、筒状ドラム10の食材入口側での構成のみが示されるが、食材出口側にも同様の構成か配置される。
【0038】
図示の例において、図1に示した機枠1を利用して、または図示しない独立した機枠を利用して、2本の支柱50、50が、筒状ドラム10の食材入口側に近接してかつ筒状ドラム10を挟むようにして、垂直方向に立てられている。各支柱50には、該軸に沿って上下方向に移動できかつ任意の位置で固定することのできる、第1のクランプ51および第2のクランプ52取り付けられている。
【0039】
左右2つの第1のクランプ51、51には第1の水平支軸53が水平姿勢となるようにして装着されており、該第1の水平支軸53には、第3のクランプ54が該軸に沿って左右方向に移動できかつ任意の位置で固定できるようにして取り付けられている。そして、前記第3のクランプ54には、前記した第2のエアーノズル14の一端が回動可能にかつ任意の回転位置で固定できるようにして装着されている。第2のエアーノズル14の他端側、すなわち筒状ドラムの食材出口側の端部は、図示を省略している同様な支持機構における図示しない第3のクランプ54によって、同じようにして支持されている。
【0040】
前記した左右2つの第2のクランプ52、52には第2の水平支軸55が水平姿勢となるようにして装着されており、該第2の水平支軸55には、第4のクランプ56が該軸に沿って左右方向に移動できかつ任意の位置で固定できるようにして取り付けられている。また、該第4のクランプ56は第2の水平支軸55を支軸として回転可能にかつ任意の回転位置で固定できるようにして取り付けられている。そして、前記第4のクランプ56には、前記した第1のエアーノズル12が筒状ドラム10の軸線に沿う方向にかつ前記軸線方向での位置を調整できるようにして装着されている。
【0041】
図示しないが、筒状ドラムの食材出口側の端部には、図示を省略している同様な支持機構における図示しない第5のクランプ57によって、前記した第3のエアーノズル16が第1のエアーノズル12と同様な態様で装着されている。
【0042】
上記の構成を備えたロータリー式調理器Aでは、食材の種類あるいは調理態様に合わせて、各エアーノズル12、14、16の位置や空気噴出角度を適宜調整することができる。例えば、第1のエアーノズル12の場合は、第4のクランプ56の第2の水平支軸55に対する取り付け角度を調整することで、筒状ドラム10の内周面に対する空気の吐出角度を調整することができ、また、第4のクランプ56の第2の水平支軸55での左右方向位置と、左右2つの第2のクランプ52、52の支柱50、50に対する上下方向位置を適宜調整することで、筒状ドラム10の内周面に対する配置位置を調整することができる。
【0043】
また、第2のエアーノズル14の場合は、食材入口側と食材出口側の第3のクランプ54を利用して、図5でP1に示すように適宜の角度に回転させ、その位置で固定することで、スリット状の空気吐出口15からの空気吐出方向の360度の範囲で調整することができ、さらに、第3のクランプ54の第1の水平支軸53での左右方向位置と、左右2つの第1のクランプ51、51の支柱50、50に対する上下方向位置を適宜調整することで、筒状ドラム10の内周面に対する配置位置を調整することができる。
【0044】
図6は、本発明によるロータリー式調理器Aの他の形態を示している。ここでは、前記した各エアーノズル12、14、図6では図示しない16に加えて、筒状ドラム10内において食材を撹拌するための構造部材としての撹拌手段60をさらに備えている。撹拌手段60は従来のロータリー式調理器で用いられている適宜の撹拌手段であってよいが、図示の例では、筒状ドラム10の回転軸線に沿う方向に延出する回転軸61とそこに取り付けられた撹拌羽根62とからなる撹拌手段60を備えている。前記回転軸61には適宜の駆動手段によって回転力が与えられる。撹拌羽根62は、複数の単位撹拌羽根が着脱自在に回転軸61に取り付けられることで構成される態様のものであってもよい。
【0045】
また、図示しないが、さらに、従来のロータリー式調理器で用いられている構造部材からなる引き剥がし手段を、エアーノズルに加えて併用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
A…ロータリー式調理器、
1…機枠、
10…筒状ドラム、
2…加熱手段、
3…モータ、
6…支持ローラ、
12…第1のエアーノズル、
14…第2のエアーノズル、
15…蒸気吐出しスリット、
16…第3のエアーノズル、
20…エアータンク、
31、33、35…電磁弁、
32、34、36、40…減圧弁または開閉弁、
F…食材の例としての卵。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を横方向に向けて回転可能に取り付けられた筒状ドラムを少なくとも備えるロータリー式調理器において、
前記筒状ドラムの内周面に沿って空気が流れることができるように空気を吐出する1本または2本以上のエアーノズルと前記各エアーノズルへ空気を送給する空気供給手段とを備え、前記各エアーノズルは前記筒状ドラムの内周面に接しない状態でかつ筒状ドラムと共に回転しない状態で適宜の支持フレームに取り付けられていることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリー式調理器であって、前記エアーノズルとして前記筒状ドラムの被調理材入口側に配置されかつ空気の吐出方向が筒状ドラムの被調理材出口側でかつ筒状ドラムの軸線方向である第1のエアーノズルを含むことを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項3】
請求項1に記載のロータリー式調理器であって、前記エアーノズルとして空気の吐出方向が前記筒状ドラムの回転方向または反回転方向である第2のエアーノズルを含むことを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリー式調理器であって、第2のエアーノズルのノズル形状は筒状ドラムの軸心方向に沿ったスリット状であることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項5】
請求項1に記載のロータリー式調理器であって、前記エアーノズルとして前記筒状ドラムの被調理材出口側に配置された第3のエアーノズルを含むことを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、エアーノズルの少なくともいずれか1つは、その空気吐出口と筒状ドラムの内周面との距離が調整可能となっていることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、エアーノズルの少なくともいずれか1つは、その空気吐出口からの空気吐出角度が調整可能となっていることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、前記各エアーノズルへ空気を送給する空気供給手段は空気の吐出圧力を調整する手段を備えることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、前記エアーノズルの少なくともいずれか1つへ水蒸気を供給する手段をさらに備えることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、前記筒状ドラムの中心軸線の水平方向に対する傾斜角度が変更可能となっていることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、さらに、加工食品に対する機械的な撹拌手段およびまたは剥ぎ取り手段を備えることを特徴とするロータリー式調理器。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載のロータリー式調理器であって、さらに、前記筒状ドラムを加熱する加熱手段を備えることを特徴とするロータリー式調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156103(P2011−156103A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19339(P2010−19339)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】