説明

ロータリ内燃エンジン

【課題】本発明は、コンパクトで軽く、効率的で高パワー出力であって、廃熱を利用するロータリ内燃エンジンを提供する。
【解決手段】前記エンジンは、ハウジング内に回転可能なロータをもつが、ピストンを持たない。ロータは複数の燃焼チャンバをもち、燃料の導入のための入口及び燃焼生成物排出のための出口を有する。前記排出はハウジング内のロータに回転を与える。固定エンドキャップはハウジングの各端部に設けられる。エンジンは蒸気、空気及び水で冷却される。エンジンは、航空機、船舶及び高荷重輸送のような、高効率、高パワー対重量比を必要とする応用のために適する。エンジンは、特殊処理された微粉炭を用いることにより、低セタン価の低グレード燃料を使うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリ内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に内燃エンジンには、往復ピストンとロータリピストンの2つのタイプがある。往復ピストンエンジンにおける燃料は、ガソリン又はディーゼルがありうる。従来のガソリンエンジンは4行程又は2行程のいずれかが可能で、その両者とも熱エネルギーを放出するように燃料を燃焼させ、その後熱エネルギーは機械エネルギーに変換される。往復ピストンのガソリンエンジンでは、ガソリンと空気の混合物がシリンダに引き込まれ、ピストンにより圧縮され、火花により点火される。ディーゼルエンジンでは、空気のみがシリンダに引き込まれ、ガソリンエンジンより高率に圧縮され、それによって空気温度を増加させ、その後ディーゼル燃料が自然発火するようシリンダに噴射される。
【0003】
ロータリピストンエンジンはガソリンエンジンと同じ燃料燃焼原理で動作するが、シリンダ内で加速減速を交互に繰り返さなければならない振動ピストンの代わりにロータリピストンを用いる。こうして、ロータリピストンエンジンは往復ピストンエンジンに関係する慣性力を除去し、結果的に高回転スピードをえる。往復ピストンエンジンと同様、ロータリピストンエンジンは燃料空気混合物を引き込み、その混合物を圧縮し、燃焼させ、燃焼したガスを排出するというステップを含む。ロータリエンジンの主な問題の一つは、3つの燃焼チャンバを相互の関係でシールすることである。
【0004】
従来の4行程の往復ピストンエンジンでは、エネルギーが第3パワー行程で作られ、取込と圧縮の行程のために、そしてガス爆発行程のためにエネルギーが必要となる。
【0005】
タービンは、水、水蒸気又は空気のような圧力に従う液体の流れの反作用又は衝動により作動され、通常は中央ロータリシャフト上の一連の曲線脈の形状で作られるロータリエンジンの別の形式である。蒸気タービンでは、加圧下の蒸気エネルギーが機械的なロータリ運動を作り出すために用いられ、その運動はよく発電のために用いられる。ガスタービンは燃焼ガスで駆動され、ロータ上に載置された環状の刃で燃焼ガスを偏向させることにより、回転運動を創り出す。ガス又は空気タービンはその全パワー出力を発電機に送ることができないが、これは、パワーの実質的な一部が圧縮機を駆動するために必要だからである。
【0006】
タービンと比較して、内燃機関は熱エネルギーを機械エネルギーに変換するのにより効率的である。高効率の主な理由は高い圧縮率であり、それが高い燃焼温度につながる。燃料チャンバのシリンダ壁及びピストンにおける燃料混合物は、短期間に非常に高い温度勾配にさらされ、その後新たなチャージにより急冷され、それによってシリンダ及びピストン材料の劣化を避ける。他方、タービンはいかなる往復部材も持たないため、非常に高速で稼働する。結果的に、タービンは、単位重さ当たり高いパワーを与える。内燃機関とは異なり、タービンの入口のみが、燃焼温度と等しい絶え間ない最高温度にさらされる。したがって、タービンの熱効率はその入口の最大耐久温度に制限される。蒸気タービンも高速で稼働し、高価でない残燃料で作動し、高いパワー出力を与える。ところが、蒸気タービンは、それらを発電所に適合させるコンデンサを冷却するために莫大な量の水を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特有な内燃エンジンに関し、エンジンの燃焼チャンバはいかなる往復又はロータリピストンも持たない。この構想における滑り運動は平面又は円筒面の間のいずれかで起こる。したがって、従来のロータリエンジンのシーリングの問題は、この設計では排除される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一部の実施形態によれば、本発明は、ケーシングと、前記ケーシングに回転可能に載置され、複数の燃焼チャンバを有するロータと、前記チャンバに空気及び燃料の混合物を導入するためのチャージ入口と、前記チャンバから燃焼生成物を排出するための燃焼生成物出口と、を含む内燃エンジンであって、前記燃焼生成物の排出は前記ケーシング内の前記ロータに回転を与える、内燃エンジンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aは、本発明のロータリ内燃エンジンの第1実施形態の分解斜視図である。図1Bは、エンジンの分解側部立面図である。
【図2】図2Aは、エンジンのロータの立面図である。図2Bは、ロータの断面図である。
【図3】図3は、エンジンの断面図である。
【図4】図4A、エンジンの1つのロータセグメントの斜視図である。図4Bは、ロータセグメントの上部平面図である。図4Cは、ロータセグメントの端部立面図である。図4Dは、ロータセグメントの側部立面図である。
【図5】図5Aは、エンジンの端部キャップの一つの斜視図である。図5Bは、端部キャップの端部立面図である。図5Cは、端部キャップの側部立面図である。
【図6】図6Aは、エンジンのケーシングの端部立面図である。図6Bは、ケーシングの断面図である。
【図7】図7は、ケーシングの断面図であり、その中に載置されたロータを備える。
【図8】図8Aは、ロータの一部の拡大端部である。図8Bは、ロータの一部の断面図である。
【図9】図9Aは、端部キャップの端部立面図である。図9Bは、端部キャップの1つの4分の1セグメントの拡大立面図である。
【図10】図10Aは、本発明によるロータリ内燃エンジンの第2実施形態の斜視図である。図10Bは、第2実施形態の側部立面図である。図10Cは、第2実施形態の上部平面図である。図10Dは、第2実施形態の端部立面図である。
【図11】図11Aは、第2実施形態の分解斜視図である。図11Bは、第2実施形態の分解立面図である。
【図12】図12A及び12Cは、第2実施形態のロータの反対端からみた斜視図である。図12B及び12Dは、第2実施形態のロータの反対端からみた立面図である。図12Eは、第2実施形態のロータの断面図である。図12Fは、第2実施形態のロータの一部の拡大断面図である。
【図13】図13Aは、第2実施形態のチャージャの斜視図である。図13Bは、当該チャージャの断面図である。図13Cは、図13BのラインCに沿ったチャージャの端部の拡大図である。図13Dは、当該チャージャの断面図である。
【図14】図14は、第2実施形態のケーシングの断面端部立面図である。
【図15】図15Aは、第2実施形態の端部フランジの斜視図である。図15B及び15Cは、当該フランジの反対側部からみた立面図である。図15Dは、図15Bの線Dに沿った拡大図である。図15Eは、第2実施形態のロータの一部の拡大図である。
【図16】図16は、第2実施形態の断面図である。
【図17】図17Aは、第2実施形態のエンジンの断面図である。図17Bは、第2実施形態のエンジンの1つの4分の1セグメントの拡大図である。
【図18】図18Aは、本発明のエンジンの空気標準サイクルを示すグラフである。図18Bは、図18Aの動作ポイント1−14と対応する、端部キャップの一つのチャンネル及び管路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1−9は本発明のエンジンの第1実施形態を示す。図10−17は本発明のエンジンの第2実施形態を示す。
【0011】
本発明のエンジンは、概して図の参照数字10で指定されている。エンジン10は、複数のセグメント13、2つのエンドキャップ14、16、及び円筒ケーシング18をもつロータ12からなる。シールリング26は、ロータ12及びエンドキャップ14、16の間に設けられる。ロータは、その両端のハブ30を介してシャフト32上に回転可能に載置されている。ロータ12は、「空気−燃料混合物チャージ」ウィンドウ20、点火スタートウィンドウ22、及びチャンバ出口28をそれぞれ有する複数の燃焼チャンバ52をもつ。各チャンバ52は、入口66及び出口24内に冷却水パイプ又は管路23、並びに入口68及び出口を有する冷気パイプ又は管路25をも有する。
【0012】
燃焼チャンバ52は同一の、等しい空間を有する。これらのチャンバ52は連続的に、チャージウィンドウ20を通じて、空気−燃料混合物、過熱蒸気及び冷気で(シーケンスで)チャージされる。図5は、燃焼チャンバ52の出口28に面するエンドキャップ14、16の面34を示す。エンドキャップ14、16は互いに鏡像になっている。燃焼チャンバ52の出口28に露出された平面34の一部は、点火スタートステージ36を規定する。燃焼生成物は、燃焼膨張ステージ38を規定する次の5つの管路内で膨張する。次の3つの管路内では、過熱蒸気の膨張が起こり、こうして蒸気膨張ステージ40を規定する。最後の2つの管路は、冷気の流れを許容し、冷気ステージ42を規定する。冷却水溝44及び冷気溝46は水及び空気がそれらを通して流れるのを許容する。
【0013】
図6及び7は、4グループの入口を有する外側ケーシング18を示す。各グループはチャージ供給口43、一対の点火スタート管路45、過熱蒸気入口47及び冷気入口49を含む。図4は、出口28を有する単一の燃焼チャンバ52を示す。湾曲した側壁50の前面は、冷気のための溝40をもつ。各燃焼チャンバ52の断面形状は(切断面は燃焼チャンバの動作軌道に直角である)台形である。どの台形部分の上端及び下端も湾曲していることが注目される。
【0014】
エンドキャップ14、16は、燃焼生成物、蒸気及び空気が流れる管路54をもつ。これらの管路54はチャンネル56を通して流れる水により冷却される。オリフィス58は連続する管路54に接続している。
【0015】
ハブ30の端面は複数の冷却水入口66、及び、その水入口66から半径方向外方に位置する複数の冷気入口68を有している。これらの入口66、68は正弦リングで形成される。
【0016】
(動作)
エンドキャップ14、16の平面34に面するロータ12の燃焼チャンバ52の一つを見る。最初の18°では、チャンバ52は空気−燃料混合物で満たされる。混合物は、好ましくは、燃焼チャンバ52への導入前に外部圧縮機(図示せず)により予備圧縮される。次の6°で、チャージ点火が火炎前面及び高圧燃焼生成物によって開始し、その後の6°で定容積の燃焼が続く。この段階で、燃焼チャンバ52の生成物はそれらの最高の温度及び圧力にある。これらの高温燃焼生成物のいくらかの部分は管路を通して導入され、燃焼のために準備されたチャンバで点火スタートする。この空気−燃料チャージは燃焼し続け、5個の連続セットの定容積燃焼プロセスの後に、次の30°間の定圧膨張が続く。高温の燃料生成物は、縦型のノズル管路54を介して、燃焼チャンバ52からエンドキャップ14、16に高速で流れる。管路54での圧力の低下は管路壁のオリフィス60のセットでコントロールされる。54−60°部分で燃焼チャンバに面する管路54は、燃焼生成物を収集し、補助装置にそれを方向づける。流れる燃焼生成物の高運動エネルギーはケーシング18内のロータ12をスピンさせるよう推力を与える。もし燃焼生成物がロータ12の軸に垂直な最大可能速度で排出されるなら、エネルギーの最大利用率が達成される。これは、全てのチャンバ54が半円、又は半円形にできるだけ近いものであるべきであり、燃焼チャンバの出口側が縦形ノズル又は円形ノズルであることを意味する。
【0017】
次の18°の間、チャンバ52は湿った蒸気又は過熱器からの高圧の過熱蒸気で満たされる。管路54への過熱蒸気の排出は、エンジン10の出力エネルギーの一部を与える。流れる過熱蒸気は残留燃焼生成物を排除し、燃焼チャンバ52の壁48を部分的に冷却する。最後の12°で、チャンバ52が冷気でチャージされ、残留蒸気を排除するとともにチャンバ壁を冷却乾燥させ、それらが新たな空気−燃料のチャージを受ける準備ができるようにする。
【0018】
空気−燃料混合物はチャージする前に加圧することができるが、圧縮する圧力は使用燃料のセタン価に依存する。4個の空気−燃料チャージが各360°回転(すなわち、1個の空気−燃料チャージが各4分の1)のために各燃焼チャンバで燃焼される。5500rpmで回転する60個の燃焼チャンバ52のロータの場合、22000空気−燃料チャージが秒あたり燃焼される。
【0019】
ロータ12のために、燃焼チャンバ52は放射方向に湾曲している。このケースでは、空気−燃焼混合物、過熱蒸気及び冷気は、ロータ12の中心から入り、半径方向外方に流れ、円筒ケーシング18から排出する。冷却水は、チャンバ52、円筒ケーシング18のチャンネルを冷却し、エンドキャップ14を通してエンジン10に入り、エンドキャップ16から出る。
【0020】
燃焼生成物は高い温度、圧力及び速度で排出する。図18A及びBはエンジン10のための空気標準サイクルを示す。空気及び燃料の混合物が図18A及びBの点1で各燃焼チャンバ52に導入された後、チャージが燃焼生成物により圧縮され燃焼チャンバから別チャンバに流れるまで時間遅れがあり、これは図18A及びBの点2、3及び4に一致する。点1及び2の間で、空気−燃料混合物が外部圧縮器により圧縮される。点2及び3の間で、当該混合物が回転ロータ12により圧縮される。点3及び4の間で、当該混合物は、管路45を通して1つの管路54から隣り合う燃焼チャンバ52に流れる高圧の燃焼生成物により、さらに圧縮される。図18Aのグラフに見られるように、点4−14を経て燃焼プロセスが継続するとき、定容積及び定圧の5セットの燃焼が空気−燃料混合物のチャージの完全な燃焼のために許容される。燃焼プロセスの定容積部分は点4−5、6−7、8−9、10−11及び12−13の間に延びる傾斜線で描かれ、当該プロセスの定圧部分は点5−6、7−8、9−10、11−12及び13−14の間に延びる垂直線で描かれている。図18Aのグラフで、X軸はエントロピー(S)を表し、Y軸は温度(T)を表す。次の表はさらに図18A及びBのプロセスを説明する:1−2圧縮器による圧縮、2−3ロータによる断熱圧縮、3−4’燃焼生成物による断熱圧縮。
【0021】
【表1】

【0022】
このように、エンジン10の燃焼プロセスは2フェーズ、すなわち、増加圧力での定容積及び増加容積での定圧を有する。チャージが圧縮されるとき、温度は自己燃焼の点に増加する。こうして、エンジン10は、火炎前面とチャージの増加圧の両者から燃焼の便益を持つ。
【0023】
(冷却システム)
燃焼チャンバ52は水、蒸気及び空気により冷却される。燃焼チャンバ52の側壁50はギャップ(添付図面17参照)を通して放射状に外部に流れる水により冷却される。第2冷却フェーズは、燃焼フェーズ52に蒸気をチャージし、その後冷気により、実行される。燃焼生成物は5000°F(2760°C)の温度を有し、他方蒸気は1000°F(約538°C)である。添付図面で最も良く理解できるように、エンドキャップ14、16の管路54が、高温の燃焼生成物を収集し、当該管路をサンドイッチするチャンネル内で流れる水により冷却される。水は一方の側から入り、他方の側から収集される。高温の管路54は、燃焼チャンバ52と接触する管路の前面側に面する溝を通して流れる空気により冷却される。空気は高温の燃焼生成物と混合し、エンドキャップ14、16の材料が耐えられる値に温度を低下させる。エンジン10を出る湿った蒸気(いくらかの量の水が冷却プロセス中蒸気に変換される)が蒸気分離器を通される。分離された蒸気は過熱器(図示せず)に指向され、水は水ポンプ(図示せず)により再循環される。添付図面19は、各1/4区間で1セットの点火スタートウィンドウ22が閉じられる、ロータ12の構造を示す。その設計は、ケーシング18の点火スタート管路の一つを不活発にする。不活発な管路は外部では水により、内部では空気により冷却される。
【0024】
空気−燃料混合物は、燃焼チャンバ52に導かれるとき、冷却機能を与えるように、比較的低温度でもある。
【0025】
(シーリングシステム)
エンジン10は、燃焼チャンバ52内にスライド運動を持たない。エンジン10内のスライド運動は回転ロータ12及び固定エンドキャップ14、16と、ケーシング18との間のみにある。2つの円筒面間、又は円筒面と平面との間のシーリングの問題は、広く研究され、種々の課題が機械工学設計の論文で提案されてきた。ところが、本ケースでは、正弦シールリング26(添付図面15参照)を用いる新たな課題が提示される。これらのシールリング26は蒸気で円滑化される。蒸気が使用できない領域では、オイル潤滑油が代替案として用いられるだろう。そのケースでは、シールリング26はペアで用いられ、オイルがシールリング26間の間隙に導入されるだろう。
【0026】
(負荷及びロータ回転速度制御)
空気−燃料混合物の変動及び空気−燃料混合物の圧縮圧は、エンジン10の速度及び負荷を制御するために、最も普通に用いられる方法である。これらの方法に加えて、負荷及び速度のコントロールは、回転当たりチャージされるチャンバの数を減じることにより達成することができる。チャージ及び点火シーケンスは、状況に応じ調整されるべきである。
【0027】
(モータスタート及び点火)
従来のガスタービンをスタートさせるために用いられる方法は、エンジン10をスタートさせるために用いることができる。一旦ロータ12が回転すると、燃焼チャンバ52は上述したように連続的に点火されるだろう。点火プロセスが圧縮点火及び火炎前面点火の両者を活用することは、注目することができる。圧力差に通じる点火スタート管路は、可燃性、高温、高圧の燃焼物の一部を、燃焼チャンバ52に導入し、点火準備状態とする。これらの高温、高圧の生成物の一部が導入されると、燃焼チャンバ52の異なる点において結果的に多くの第2自己点火及び火炎前面を発生する。
【0028】
このエンジン10は異なるタイプのオイル及びガス燃料を用いることができ、それらは低グレードの燃料、非常にセタン価の低い燃料、及び特殊処理された微粉炭を含む。当該特殊処理された微粉炭は、加圧下の乾燥炭を中程度のセタン価のガス状又はオイル燃料に浸すことにより得られる。この処理炭は非常に低いセタン価の燃料とともに用いられるだろう。火炎前面は、微粉炭の粒子を燃焼させるであろう細孔中で中程度のセタン価の燃料を燃焼させ、当該微粉炭周辺の低セタン価の燃料の燃焼を開始するだろう。そのような安価な燃料は、概して従来の燃焼エンジンでは用いることができないが、それはそういった燃料が十分に燃焼しないからである。
【0029】
(エンジンパワー出力の計算)
エンジン10及び燃焼チャンバ52の寸法は利用目的に依存する。例えば、発電所に対しては、1メートル長のロータ、0.45メートルのハブ半径及び0.3メートル長(半径方向に)の燃焼チャンバが合理的な寸法である。
【0030】
上記寸法に基づいて、エンジンの出力パワーが下記に記載されるように計算することができる。
【0031】
ロータ12内に60個の燃焼チャンバ52が存在する。各燃焼チャンバの断面は6°の角変位をカバーする。この角度‘θ’はラジアン(radian)で次のものに等しい。
【数1】

燃焼チャンバの領域は、
【数2】

である。燃焼チャンバの容積は、
【数3】

である。各燃焼チャンバは回転当たり4個のチャージを燃焼させるだろう。もしロータ速度が5500rpmであれば、1気圧で毎秒チャージされる空気−燃料の容積は、
【数4】

である。
【0032】
ところで、空気−燃料混合物はチャージの前に予備圧縮される。空気−燃料混合物が圧縮される圧力は燃料のセタン価に依存する。その圧力値は、通常15−35バール(bars)の範囲である。
【0033】
もし空気−燃料チャージが35バールに圧縮されると、燃焼チャンバの毎秒のチャージ容積は、
【数5】

である。
【0034】
もし過剰空気が15%、常温常圧における空気密度が1.03kg/m、完全燃焼のための空気−燃料比率が16であるなら、毎秒燃焼する燃焼重量は、
【数6】

である。
【0035】
もし使用燃料の発熱量が14000Kcal/Kgならば、解放された熱エネルギーは、
【数7】

1キロカロリー=426.8Kg−mであり、毎馬力=75Kg−m/sである。したがって、エンジンの出力パワーは、
【数8】

である。
【0036】
もし、圧縮された空気−燃料混合物が15バールであれば、
【数9】

もし、過剰空気が200%であるなら、
【数10】

である。
【0037】
(第2実施形態の詳細な説明)
本発明のエンジンの第1及び第2実施形態は同じ原理に基づいている。図10−17に示すように、第2実施形態のエンジン10Aにおいて、燃焼チャンバ52Aは半径方向に湾曲している。このケースで、空気−燃料混合物、過熱蒸気及び冷気はエンジン10Aの中心でチャージャ70からチャージされ、半径方向外方に流れ、円筒ケーシング18Aから排出する。
【0038】
円筒ケーシング18Aのチャンバ52A及び管路54Aを冷却する冷却水は、フランジ又はエンドキャップ14Aからエンジン10Aに入り、他のフランジ又はエンドキャップ16Aから去る。円筒ケーシング18Aの高温部を冷却する冷気は、ロータ12Aの側壁内に開けられた孔を通ってフランジ14A、16Aの両方から入り、ロータ12Aの円筒外面上の縦の開口を通して広がる。
【0039】
燃焼チャンバ52Aはチャンバ壁48A、冷却水管路56A及び冷気溝64Aをもつ。チャージャ70は潤滑オイルパイプ79をもつ。
【0040】
図13Bは隠れ線が示されるチャージャ70の縦断面である。部分AA、BB及びCCはチャージャ70の一部であり、そこから冷気、過熱蒸気及び空気燃料混合物が、チャージャ70内の特別スロットに流れ、燃焼チャンバ52Aに流れ込む。図13Dに見られるように、チャージャ70は、空気−燃料混合物、過熱蒸気及び冷気のためにそれぞれスロット94、96、98を備える本体92をもつ。チャージャ70の円筒部98は、空気−燃料混合物スロット92及び蒸気充填スロット94の間に存在する。空気−燃料スロット94及び蒸気チャージスロット96の各々は15°の角度をカバーするようになっており、他方、空冷スロット98は10°の角度をカバーする。隣接チャンバのスロット94及び98間のチャージャ本体92は、そこで点火が定容積の連続燃焼で開始し、その後膨張で定圧となり、48°をカバーする。
【0041】
図14は、円筒ケーシング18A及びモータベース100の断面である。チャージャ70及び円筒ケーシング18Aの両者において、4個の同一部分がある。空気−燃料チャージは18°の角度をカバーし、蒸気膨張は18°であり、空冷の角位置は12°であるよう示されている。点火及びその後の定容積燃焼はそれぞれ6°をカバーする。5個の連続する定容積燃料プロセスのそれぞれは、その後燃焼−膨張に続き定圧プロセスとなり、30°をカバーする。
【0042】
図15A−Dは冷却水供給点102をもつエンドキャップ14Aの側面図を示す。ロータ12A及び円筒ケーシング18Aを冷却するための冷却水ポケットは104で表される。空冷溝及び空冷入口パイプはそれぞれ46A及び68Aで表される。
【0043】
図16は組み立てエンジン10Aの断面を示し、そこではロータ12A、円筒ケーシング18A、フランジ14A、16A及びチャージャ70が断面で示される。エンジンベース100、燃焼チャンバ52A及び冷却水管路56Aが、ケーシング18A内の燃焼生成物収集管路54A及び冷水管路56Aとともに示される。図17Aは組み立てエンジンの断面を示す。火炎及び高温の燃焼生成物がチャージを発火するために燃焼チャンバに流入する管路は、110として表される。ケーシング内の冷却水管路は56Aとして表される。燃焼生成物収集管路54Aを接続するオリフィスは58Aで表される。燃焼生成物、蒸気及び空気のための出口パイプはそれぞれ82A、84A、86Aで表される。潤滑オイル通路は106である。
【0044】
図15Eは、フランジに面するロータの一部のための詳細図であり、そこで側壁、冷却水管路及び空冷供給点の入口の一部がそれぞれ50A、56A、及び68Aで表される。
【0045】
(動作)
図17Bは、組み立てエンジン10Aの4個の4分の1断面の1つを示す。回転燃焼チャンバ52Aの入口側が、固定チャージャ70の空気−燃料スロット94の一つの最初の部分により丁度カバーされ、そのチャンバの排出側が冷気収集管路104の最後の2°をカバーすることを想定する。この段階で、チャージャ70からの加圧された空気−燃料混合物は燃焼チャンバ52Aを満たし、捕捉された冷気を排除する。次の15°で、加圧された空気−燃料混合物でチャンバをチャージすることが続く。チャンバ52Aの入口側はその後、チャージ70の円筒部により完全にカバーされる。2°後に、空気−燃料の点火がチャージの作用により開始し、高圧下の燃焼可燃物がダクト82から排出される。この燃焼プロセスは6°の間、定容積で継続し、その後の6°の間、燃焼及び膨張が同時発生し定圧となる。この段階で、燃焼チャージの一部は縦ノズル又は円断面のノズルセットから第1燃焼生成物収集管路54Aに高速で排出される。排出されたガスのセグメントはダクト82を通じて流れ、次のチャンバに続くチャンバで燃焼準備にあるチャージに点火する。排出ガスの残部はオリフィスセットを通じて流れる。
【0046】
燃焼−膨張同時プロセスをその後に起こす、4セットの定容積のプロセスが次の24°で起こる。収集された燃料生成物は、出口82を通して過熱ヒータ(図示せず)にケーシング18Aからパイプで排出される。過熱器は、エンジン冷却水から分離された飽和蒸気を過熱するために用いられる。
【0047】
次の18°では、チャージャ70からの過熱蒸気がチャンバで膨張し、排出側より取り出される。ノズルを通過する存在ガス及び蒸気の高機械エネルギーはロータ12Aを回転させる推力を与える。燃焼チャンバ52A内で膨張する蒸気は、残留燃焼生成物を排除し、燃焼チャンバ壁を冷却する。
【0048】
次の12°で、チャンバ52Aはチャージャを通して冷気でチャージされ、捕捉された蒸気を排除し、チャンバ壁を冷却し乾燥させ、これによりそれらは新たな空気−燃料チャージを受ける準備状態になる。チャンバから流れる冷気は出口86から排出される。最大効率は、燃焼チャンバが燃焼生成物及び蒸気を排出し、最大可能速度でロータ軸に垂直方向にチャージされるとき、達成される。これは、チャンバがU字状又は半円であるべきであり、排出側がノズル形状であることを、意味する。
【0049】
第1実施形態のために上述したのと同じ手順に従えば、第2実施形態のためのパワー出力は88653.47ηh.p(馬力)である。このケースのロータは0.1mの長さであり、0.2mの内径をもつ。半径方向の燃焼チャンバの長さは0.1mである。空気−燃料混合物圧力は15barである。過剰空気は200%で、燃焼チャンバの全領域は燃焼チャンバ壁の全領域に等しい。
【0050】
カラー図面の添付が本発明の理解に役立つ。燃焼チャンバ52は各4分の1に対し次のように添付図面で色づけされている:チャージ3茶、点火及び燃焼7赤、過熱蒸気チャージ3白、冷気2灰。同じパターンが、空気−燃料チャージ混合物の茶色の例外とともにエンドキャップ14、16のために用いられる。先に述べたように、赤色として示された部分は非常に熱く、効果的な冷却システムを必要とする。
【0051】
本発明はより好適な実施形態とともに先に示され述べられてきて、多くの修正、置換、及び追加が、本発明の意図された精神及び範囲内でなされうることが理解される。上述したことから、本発明は少なくとも、その述べられた目的の全てを達成するということが理解できる。
【符号の説明】
【0052】
第1実施形態−部品リスト(図1−9)
10 エンジン
12 ロータ
13 ロータセグメント
14 エンドキャップ
16 エンドキャップ
18 円筒ケーシング
20 空気−燃料チャージウィンドウ
22 点火スタートウィンドウ
23 冷却水パイプ
24 燃焼チャンバの近接する壁面間の冷却水出口
25 冷気パイプ
26 シールリング
28 燃焼チャンバ出口
30 ハブ
32 シャフト
34 平面
36 点火スタートステージ
37 定容積での燃焼
38 定圧への燃焼膨張
40 超高温蒸気膨張ステージ
42 冷気ステージ
43 チャージ供給口
44 冷却水溝
45 点火スタート管路
46 冷気溝
47 過熱蒸気入口
48 燃焼チャンバの出口側の壁
49 冷気入口
50 燃焼チャンバ側壁
52 燃焼チャンバ
54 燃焼生成物収集管路
56 冷却水チャンネル
58 燃焼生成物収集管路に連結するオリフィス
59 蒸気収集オリフィス
60 管路58の圧力制御のためのオリフィス
62 冷却水が流れる近接する燃焼チャンバ間のギャップ
64 当該壁上の冷気溝
66 冷却水パイプの入口
67 冷却水チャンネル
68 冷気パイプの入口
69 冷却水チャンネル
【0053】
第2実施形態部品リスト(図10−17)
10A エンジン
12A ロータ
14A フランジ
16A フランジ
18A ケーシング
20A 空気−燃料混合物入口
23A 水入口パイプ
25A 空気入口パイプ
28A 燃焼チャンバ出口
46A 冷気溝
49A 冷気入口
50A 燃焼チャンバ壁
52A 燃焼チャンバ
54 燃焼生成物管路
56A 水管路
60A 燃焼管路用オリフィス
66A 燃焼チャンバ用冷却水入口
67A 水チャンネル
68A 冷気入口孔
69A 冷却水チャンネル
70 チャージャ
72 オイルパイプ
73 オイルブランチ
74 空気−燃料混合物入口パイプ
76 空気入口パイプ
78 蒸気入口パイプ
79 オイル出口
80 潤滑オイル入口パイプ
81 水ギャップ
82 燃焼生成物用出口パイプ
84 蒸気用出口パイプ
86 空気用出口パイプ
88 点火スタート導管
90 蒸気用オリフィス
94 空気−燃料混合物スロット
96 蒸気スロット
98 空気スロット
100 モータベース
102 水入口
103 水入口
104 冷却水ポケット
106 オイル通路
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに回転可能に載置され、複数の燃焼チャンバを有するロータと、
前記チャンバに空気及び燃料の混合物を導入するためのチャージ入口と、
前記チャンバから燃焼生成物を排出するための燃焼生成物出口と、
を含む内燃エンジンであって、前記燃焼生成物の排出は前記ケーシング内の前記ロータに回転を与える、内燃エンジン。
【請求項2】
各燃焼チャンバは固定容積を有する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
各燃焼チャンバは一対の湾曲した壁を含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
空気、水及び蒸気を含む冷却システムをさらに含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項5】
前記ロータは対向する端部をもつ円筒状であり、前記エンジンは前記ロータの各端部に固定されたエンドキャップをさらに含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記エンドキャップ及び前記ロータの間に正弦シールリングをさらに含む、請求項5に記載のエンジン。
【請求項7】
前記シールリングは蒸気で潤滑される、請求項6に記載のエンジン。
【請求項8】
前記シールリングはオイルで潤滑される、請求項6に記載のエンジン。
【請求項9】
前記ロータは点火スタート段階、燃焼生成物膨張段階、蒸気膨張段階、及び冷気段階に対応する4個の四分区間を規定する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項10】
前記燃焼チャンバのための火炎前面点火システムをさらに含む、請求項1に記載のエンジン。
【請求項11】
前記燃焼チャンバはピストンを有さない、請求項1に記載のエンジン。
【請求項12】
前記燃料は微粉炭である、請求項1に記載のエンジン。
【請求項13】
前記燃料は低セタン価をもつ、請求項1に記載のエンジン。
【請求項14】
ケーシング内に回転可能に載置されるロータであって、前記ロータの各端部にエンドキャップが固定され、前記ロータは複数の燃焼チャンバをもつ内燃エンジンを使用するエネルギー発生方法であって、前記方法は、
前記燃焼チャンバに空気及び燃料の混合物を導入することと、
点火段階で前記混合物を燃焼しそれにより燃焼生成物を生成することと、
前記ケーシング内の前記ロータに回転を与えるために前記燃焼チャンバから前記燃焼生成物を排出し、それにより燃焼からの熱エネルギーを機械エネルギーに変換することと、を含む方法。
【請求項15】
蒸気で前記燃焼チャンバを冷却することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
空気で前記燃焼チャンバを冷却することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記燃焼は、高圧及び高温の燃焼生成物を伴うチャージの火炎前面及び相互作用で開始される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記燃焼生成物は前記燃焼チャンバから前記ロータの各端部のエンドキャップに流れる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記燃焼チャンバの固定容積を維持することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記エンドキャップを水で冷却することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
正弦シールリングで前記ロータの端部の前記エンドキャップをシールすることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記シールリングを蒸気で潤滑することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記シールリングをオイルで潤滑することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記燃料は微粉炭である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記燃料は低セタン価をもつ、請求項14に記載の方法。




【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【公表番号】特表2010−533259(P2010−533259A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516036(P2010−516036)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/008327
【国際公開番号】WO2009/009026
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(510009441)
【Fターム(参考)】