説明

ロータリ耕耘装置

【課題】耕耘爪の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバーと、ロータリカバー下面に近接又は接触状態で沿う防泥板とを備え、低コストで、効率的に、防泥板に付着した付着物の除去を行うことが可能なロータリ耕耘装置を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明は、耕耘爪8の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバー9と、ロータリカバー9下面に近接又は接触状態で沿う防泥板14とを備え、防泥板14に付着した付着物Aを除去する除去手段を設けたロータリ耕耘装置において、上下動又は前後動可能な可動状態と、ロータリカバー9下面側に沿って近接又は接触状態で固定された固定状態とに切換可能に前記防泥板14をロータリカバー9下面側に取付ける取付具31を設け、該取付具31によって前記除去手段を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等に連結されるロータリ耕耘装置に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘爪の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバーと、ロータリカバー下面に近接又は接触状態で沿う防泥板とを備え、該防泥板によって、ロータリカバー下面側への泥等の付着を防止したロータリ耕耘装置が従来公知である。
【0003】
ステンレス等からなる前記防泥板は、時間の経過に伴って、泥等が付着し易くなる。このような事情に鑑みて、防泥板に付着した泥等の付着物を除去する除去手段を設けた特許文献1に示すロータリ耕耘装置が開発され、公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3271308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献では、防泥板に取付けられる振動子と、振動子に電圧信号を出力することにより振動子を振動させる発振器とによって除去手段を構成し、振動子からの振動を防泥板に伝えることにより、付着物を振い落すか、或いは付着物の付着を防止しているため、装置が大掛かりになり、コストが高くなる。
本発明は、耕耘爪の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバーと、ロータリカバー下面に近接又は接触状態で沿う防泥板とを備え、低コストで、効率的に、防泥板に付着した付着物の除去を行うことが可能なロータリ耕耘装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1に、耕耘爪8の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバー9と、ロータリカバー9下面に近接又は接触状態で沿う防泥板14とを備え、防泥板14に付着した付着物Aを除去する除去手段を設けたロータリ耕耘装置において、上下動又は前後動可能な可動状態と、ロータリカバー9下面側に沿って近接又は接触状態で固定された固定状態とに切換可能に前記防泥板14をロータリカバー9下面側に取付ける取付具31を設け、該取付具31によって前記除去手段を構成したことを特徴としている。
【0007】
第2に、防泥板14がロータリカバー9下面に沿って前後動可能なように前記取付具31を構成し、防泥板14の前後の端部がそれぞれ挿入されて係止される一対の係止部21,23を、ロータリカバー9の下面側に設け、一方の係止部23に防泥板14を寄せた状態で、他方の係止部21から防泥板14の端部を抜取り可能なように該一対の係止部21,23の間隔を設定し、該他方の係止部21から端部を抜取ることにより防泥板14の上下動を可能にすることを特徴としている。
【0008】
第3に、ロータリカバー9に穿設された前後方向の長孔9aに前後及び上下動可能に挿通される取付具31によって、防泥板14を、ロータリカバー9の下面側で、係止部21,23に対して係脱可能に固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、ロータリカバー下面側に固定された防泥板を、取付具によって上下動可能な可動状態に切換え、防泥板自体を上下又は前後に振動させて付着物を振い落すことにより、該付着物を防泥板の下面側から容易に除去することが可能であり、防泥板に振動子を取付けた場合と比較して、低コストで効率的に上記付着物の除去を行うことができる。
【0010】
ちなみに、可動状態時に防泥板を上下動させることが可能な場合には、防泥板を下方に変位させて回転駆動する耕耘爪に近づけ、該耕耘爪によって付着物を掻き落すことも可能であり、該手段によっても、低コストで効率的に付着物の除去を行うことができる。
【0011】
また、防泥板の前後の端部がそれぞれ挿入されて係止される一対の係止部を、ロータリカバーの下面側に設け、一方の係止部に防泥板を寄せた状態で、他方の係止部から防泥板の端部を抜取り可能なように該一対の係止部の間隔を設定し、防泥板がロータリカバー下面に沿って前後動可能なように前記取付具を構成し、該他方の係止部から端部を抜取ることにより防泥板の上下動を可能にすれば、固定状態では前後の係止部によって防泥板が安定的にロータリカバーに固定されるとともに、可動状態時には、防泥板を前後及び上下に振動させることが可能であるため、効率的に付着物の除去を行うことが可能になる。
【0012】
さらに、ロータリカバーに穿設された前後方向の長孔に前後及び上下動可能に挿通される取付具によって、防泥板を、ロータリカバーの下面側で、係止部に対して係脱可能に固定すれば、より簡易な構造によって、防泥板を上下動及び前後動可能に構成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用したロータリ耕耘装置の側面図である。
【図2】本発明を適用したロータリ耕耘装置の平面図である。
【図3】ロータリカバーの分解斜視図である。
【図4】ロータリカバー前端側の係止部材である。
【図5】取付具によって前後可動状態から最大可動状態に切換える最中の様子を示すロータリ耕耘装置の側面図である。
【図6】最大可動状態時のロータリ耕耘装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1,2は、本発明を適用したロータリ耕耘装置の側面図及び平面図である。同図に示すロータリ耕耘装置1は、作業車両の一種であるトラクタ(図示しない)の後端部に、3点ヒッチ(図示しない)を介して、着脱可能に連結される。
【0015】
このロータリ耕耘装置1は、ギヤケース2と、ギヤケース2から左右両側にそれぞれ延びてフレーム部を構成する左右一対の横筒3,3と、左右一方側(図示する例では左側)の横筒3の左右外側端部から下方に一体的に延設された上下方向の伝動ケース4と、左右他方側の横筒3の左右外側端部から下方に一体的に延設された上下方向のサイドプレート6と、伝動ケース4下端部とサイドプレート6下端部との間に自身の軸回りに回転可能に架設された左右方向のロータリ軸7と、該ロータリ軸7に軸装されて一体回転する複数の耕耘爪8と、耕耘爪8の回転軌跡(具体的には、ロータリ軸7を中心とした円形の回転軌跡)の上方を覆うロータリカバー9と、ロータリ軸7に軸装された複数の耕耘爪8の左右側方をそれぞれ覆う一対のサイドカバー11,11と、ロータリカバー9の後端部から後方斜め下方に延出するリヤカバー12とを備えている。
【0016】
上記ギヤケース2からは前方に向かって前後方向の入力軸13が自身の軸回りに回転可能に突設される一方で、トラクタの後端部から後方に向かって前後方向の図示しないPTO軸が自身の軸回りに回転可能に突設されている。このPTO軸と入力軸13とをスプライン結合によって、一体回転するように着脱自在に連結することにより、トラクタ側のエンジン動力がギヤケース2内に入力される。ギヤケース2側に入力された動力は、横筒3内から、伝動ケース4内に伝動される。伝動ケース4内に入力された動力は、ロータリ軸7にチェーン伝動され、ロータリ軸7の軸回りに、複数の耕耘爪8を回転駆動させる。そして、トラクタは、ロータリ耕耘装置1を下降させ、耕耘爪8を回転駆動させた状態で、圃場を走行することにより、圃場の耕耘作業を行う。
【0017】
上記ロータリカバー9は、左右のサイドカバー11等を介して、ロータリ軸7の軸回りに前後回動調整に、サイドプレート6及び伝動ケース4に支持されている。このロータリカバー9の下面には、耕耘爪8の回転軌跡に近接するように、ステンレス製又は樹脂製の防泥板14が設けられている。
【0018】
上記リヤカバー12は、左右方向の回動軸16を介して、ロータリカバー9上面の後端側に上下回動自在に支持されている。このリヤカバー12は、図示しない付勢手段によって下方回動側に付勢され、該付勢によって、耕耘爪8により耕耘された土等の均平作業を後方側で行う。
【0019】
次に、図1乃至6に基づいて、ロータリカバー9の構成を詳述する。
図3は、ロータリカバーの分解斜視図であり、図4は、ロータリカバー前端側の係止部材である。ロータリカバー9は、側面視上方に盛上って円弧状をなすように湾曲形成されている。このロータリカバー9の上面後端部には、上述した回動軸16が取付支持される支持部材17が設けられ、ロータリカバー9下面の前後の各端部には、防泥板14の前後の端部をそれぞれ係止する左右方向の係止部材18F,18Rが設けられている他、ロータリカバー9の左右対称位置には、前後方向に延びる長孔9a,9aがそれぞれ穿設されている。
【0020】
防泥板14は、側面視ロータリカバー9に沿って円弧状に湾曲形成されており、防泥板14においてロータリカバー9に固定した際に前記長孔9a,9aが位置する各箇所には、取付ネジ19,19が設けられている。該取付ネジ19は、ネジ部19aがロータリカバー9の上面から上方に突出するようにヘッド部19bがロータリカバー9の下面側に当接した状態で、該ロータリカバー9に固定されている。また、取付ネジ19のネジ部19aの径は、該ネジ部19aを前記長孔9aに挿通させることができる長さに設定されている。
【0021】
ロータリカバー9後端側の係止部材18Rは、後半部がロータリカバー9の下面に溶接等で固着される一方で、前半部がロータリカバー9下面から所定距離だけ下方に離間するように、側面視クランク状に屈曲形成された左右方向に長いプレート材である。言換えると、係止部材18Rの前半部と、ロータリカバー9後端部との間には、防泥板14の後端部を嵌合状態で差込み挿入可能なように前方が開放された左右方向の係止溝(係合部)21が形成されている。
【0022】
ロータリカバー9前端側の係止部材18Fは、側面視V字状に曲げ形成された左右方向に長い板材であり、ロータリカバー9の前端部は側面視で上方側に盛上るように曲げ形成され、山部22を構成している。そして、係止部材18Fと、ロータリカバー9の山部22とによって上下がカバーされた袋部(係止部)23を形成するように、該係止部材18Fを、ブラケット24を介して、前記山部22に取付固定している。具体的には、ブラケット24がロータリカバー9の山部22に溶接等で固着され、ボルト26によって、該係止部材18Fがブラケット24に取付固定されている。このようにして形成された袋部23の後端部に、防泥板14の前端部を差込み可能な左右方向に細長い差込み口23aが形成され、この差込み口23aを介して、防泥板14の前端部が袋部23内に位置決め挿入される。
【0023】
ロータリカバー9の下面側に防泥板14を支持させる際には、まず、左右の取付ネジ19を下側から上方に向かってそれぞれ左右の長孔9aに挿通させ、続いて、防泥板14の前端部を差込み口23aから袋部23内に最大限差込み、続いて、防泥板14の後端部を係止溝21内に差込む。これによって、上下動が規制されるとともに前後スライドが許容され、且つロータリカバー9の下面側に近接又は接触した状態で、防泥板14がロータリカバー9の下面側に支持される。
【0024】
すなわち、袋部23の底側端(前端)から、係止溝21の底側端(後端)までの前後方向の長さは、防泥板14の前後長よりも長く設定され、袋部23の開放端(後端)から、係止溝21の開放端(前端)までの前後方向の長さは、防泥板14の前後長よりも短く設定され、袋部23内の底側端から係止溝21の開放端までの前後方向の長さは、防泥板14の前後長よりも長く設定され、袋部23内の開放端から係止溝21の底側端までの前後方向の長さは、防泥板14の前後長よりも短く設定されている。
【0025】
言換えると、防泥板14の前後の端部をそれぞれ同時に係止可能であるとともに、一方の係止部(図示する例では前側の係止部)18Fに防泥板を寄せた状態で、他方の係止部18Rから防泥板14の端部を抜取ることが可能なように、前後一対の係止部18F,18Rの間隔が設定されている。ちなみに、ここでの前後方向の長さ、前後長及び間隔なる用語は、円弧状のロータリカバー9の沿った前後方向の距離を意味するものとする。
【0026】
また、上述の構成により、ロータリカバー9上面から上方に向かって取付ネジ19のネジ部19aが突出するようにして、各取付ネジ19は、対応する各長孔9aに前後動可能且つ上下動可能に挿通される。
【0027】
これに対応して、取付ネジ19のネジ部19aを係合挿入させるネジ孔27aを内周側に有する筒状の固定部材27が、左右の取付ネジ19毎に各別に用意されている。この固定部材27について詳述すると、該固定部材27の一端側は、ネジ部19aを挿入可能なように開放されるとともに、固定部材27の他端側には、締付固定作業及び締付解除作業時に用いる六角状のヘッド28及び把持部29が一体的に設けられている。
【0028】
そして、左右の取付ネジ19,19におけるロータリカバー9上面から突出したネジ部19aを、左右の固定部材27,27のネジ孔27a,27aにそれぞれ係合挿入させることにより、取付ネジ19と固定部材27とがネジ係合され、防泥板14が、固定部材27と一体的に前後及び上下に移動する状態になり、続けて、取付ネジ19と固定部材27との締付けを行うことにより、防泥板14が、ロータリカバー9に固定される。
【0029】
すなわち、防泥板14をロータリカバー9下面側で上下動又は前後動可能に支持する可動状態と、防泥板14をロータリカバー9下面に沿って近接又は接触状態で固定する固定状態との切換を行う取付具31を、上述した取付ネジ19及び固定部材27によって構成している。
【0030】
次に、図1,5及び6に基づき、取付具31による防泥板14の状態切換について詳述する。
図1に示すとおり、左右の取付ネジ19,19を左右の長孔9a,9aにそれぞれ挿通させ、防泥板14の前端部を袋部23に挿入して係止するとともに、防泥板14の後端部を係止溝21に挿入して係止した後、取付ネジ19と固定部材27をネジ係合させて締付けることにより、該防泥板14が、ロータリカバー9下面に近接又は接触した状態で、該ロータリカバー9に固定される固定状態に切換えられる。
【0031】
前記固定状態から、取付ネジ19と固定部材27のネジ係合を保持した状態で、両者の締付固定を解除すると、ロータリカバー9の下面側に位置する防泥板14が、袋部23の底側端と係止溝21の底側端との間で、ロータリカバー9の円弧形状に沿って前後スライド可能な前後可動状態(可動状態)に切換えられる。ちなみに、防泥板14の前後スライド量は、ネジ孔9aの前後長の範囲内に限定される。
【0032】
図5は、取付具によって前後可動状態から最大可動状態に切換える最中の様子を示すロータリ耕耘装置の側面図である。同図に示す通り、前記前後可動状態時、防泥板14の後端部が係止溝21から抜出すように、該防泥板14を前方にスライド移動させると、防泥板14が、取付ネジ19及び固定部材27の軸方向の沿って上下動可能、且つネジ孔9aの前後長の範囲内で前後スライド可能な最大可動状態(可動状態)に切換えられる。
【0033】
図6は、最大可動状態時のロータリ耕耘装置の側面図である。該構成のロータリ耕耘装置1によれば、耕耘作業や路上走行等においては、通常使用する際には、防泥板14を固定状態に切換える一方で、防泥板14の下面側に付着した泥等の付着物Aを除去するメンテナンスの際には、防泥板14を可動状態に切換え、取付具31の把持部29を把持して、防泥板14を前後又は上下に震動させることにより、付着物Aを防泥板14から振い落す。
【0034】
また、メンテナンス時、防泥板14を可動状態でも特に最大可動状態に切換え、耕耘爪8側に近づけるように、該防泥板14を下方に移動させ、耕耘爪8を回転駆動させれば、防泥板14に付着した付着物Aを耕耘爪8によって掻き落すことも可能である。
【符号の説明】
【0035】
8 耕耘爪
9 ロータリカバー
9a 長孔
14 防泥板
21 係止溝(係止部)
23 袋部(係止部)
31 取付具
A 付着物(泥)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪(8)の回転軌跡の上方側を覆うロータリカバー(9)と、ロータリカバー(9)下面に近接又は接触状態で沿う防泥板(14)とを備え、防泥板(14)に付着した付着物(A)を除去する除去手段を設けたロータリ耕耘装置において、上下動又は前後動可能な可動状態と、ロータリカバー(9)下面側に沿って近接又は接触状態で固定された固定状態とに切換可能に前記防泥板(14)をロータリカバー(9)下面側に取付ける取付具(31)を設け、該取付具(31)によって前記除去手段を構成したロータリ耕耘装置。
【請求項2】
防泥板(14)がロータリカバー(9)下面に沿って前後動可能なように前記取付具(31)を構成し、防泥板(14)の前後の端部がそれぞれ挿入されて係止される一対の係止部(21),(23)を、ロータリカバー(9)の下面側に設け、一方の係止部(23)に防泥板(14)を寄せた状態で、他方の係止部(21)から防泥板(14)の端部を抜取り可能なように該一対の係止部(21),(23)の間隔を設定し、該他方の係止部(21)から端部を抜取ることにより防泥板(14)の上下動を可能にする請求項1に記載のロータリ耕耘装置。
【請求項3】
ロータリカバー(9)に穿設された前後方向の長孔(9a)に前後及び上下動可能に挿通される取付具(31)によって、防泥板(14)を、ロータリカバー(9)の下面側で、係止部(21),(23)に対して係脱可能に固定する請求項2に記載のロータリ耕耘装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate