説明

ロータ部品、モータおよび記録ディスク駆動装置

【課題】記録ディスク駆動装置のモータにおいて、ロータハブのシャフトに対する垂直度を向上するとともに、ロータハブに対するシャフトの圧入に要する力を適正な大きさとする。
【解決手段】ロータ部品30では、シャフト32の圧入部322がブッシュ312の穴部3125に圧入されてシャフト32がロータハブに対して固定される。このとき、圧入部322の上当接部3221および下当接部3223のみが穴部3125の内側面3126と摩擦するため、上当接部3221および下当接部3223の合計長を適切な長さとすることにより、シャフト32の圧入に要する力を適正な大きさとすることができる。また、穴部3125の内側面3126と接触しない中間部3222を設けることにより、圧入時にシャフト32に過剰な荷重を加えることなく、シャフト32とロータハブとの締結長を大きくして、ロータハブのシャフト32に対する垂直度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ディスクが取り付けられるロータ部品、当該ロータ部品を備えるモータ、および、当該モータを備える記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハードディスク装置等の記録ディスク駆動装置は、記録ディスクを回転駆動するスピンドルモータ(以下、「モータ」という。)を備えており、当該記録ディスクはモータのロータハブに取り付けられる。そして、モータの軸受機構の1つとして、ロータハブに固定されたシャフトと、ベースプレートに固定されるとともにシャフトが挿入されるスリーブ部との間における潤滑油の動圧を利用した軸受機構(いわゆる、流体動圧軸受)が利用されている。
【0003】
このようなモータでは、ロータハブに形成された取付穴にシャフトを取り付ける際に、隙間嵌めした上での接着剤による固定や圧入による固定が行われている。しかしながら、接着固定では、ロータハブとシャフトとを垂直な状態で固定するために、接着剤が硬化するまでロータハブおよびシャフトを治具等により固定しておく必要がある。また、圧入による固定では、圧入長が短いとシャフトとロータハブとの間の締結力が小さくなり、シャフトに対するロータハブの垂直度が低下してしまう恐れがある。しかしながら、圧入長を長くすると、圧入の際にシャフトに大きな荷重が加わってシャフトが変形してしまう可能性がある。
【0004】
そこで、ロータハブにシャフトを固定するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1のモータでは、記録ディスク載置用のターンテーブルに形成された回転軸(シャフト)が挿入される貫通穴において、軸方向の一方の端部側の径をシャフトの外径よりも小さくすることにより、シャフトを貫通穴に圧入して仮固定し、他の部分の径をシャフトの外径よりも大きくすることによりシャフトとの間に隙間を設け、当該隙間に接着剤を充填してシャフトを接着固定する技術が開示されている。
【0005】
これにより、ターンテーブルとシャフトとの間の締結力が確保されるとともにシャフトを圧入する際の圧入力が過剰に大きくなることが防止される。また、接着剤が硬化するまでのターンテーブルの保持を省略して作業性の向上が図られている。特許文献1のモータでは、ターンテーブルにシャフトを仮固定した後に、シャフトの位置を再度調整することもできる。
【0006】
特許文献2でも、特許文献1と同様に、ロータフレームの貫通穴の一方の端部側においてシャフトがロータフレームに対して軽圧入され、他の部分においてシャフトとロータフレームとの隙間に充填された接着剤によりシャフトがロータフレームに対して接着固定される。
【0007】
一方、特許文献3では、ベースプレートにシャフトが固定されるタイプのモータにおいて、シャフトの端部近傍の外側面を周状に切削し、当該シャフトをベースプレートの穿孔に圧入した際に、切削部の上下においてのみシャフトと穿孔の内壁とを接触させることにより、シャフトとベースプレートとの締結力を確保するとともにシャフトを僅かな押圧力にてベースプレートに圧入する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−178078号公報
【特許文献2】特開2002−136031号公報
【特許文献3】特開2003−204651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1および特許文献2のモータでは、シャフトの取り付けに際して、シャフトの軽圧入による仮固定が不十分である場合には、接着剤の硬化までの間にロータフレーム等がシャフトに対して傾いてしまう恐れがある。また、ロータフレームとシャフトとの間の圧入長が短いため、ロータフレームのシャフトに対する垂直度を機械的に決定することが難しい。
【0009】
このように、ロータフレームがシャフトに対して傾くと、ロータフレームに取り付けられている記録ディスクがシャフトに垂直な面からずれた状態で回転し(いわゆる、面振れが生じ)、記録ディスクに対する情報の読み書きに影響を与えることがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、記録ディスク駆動装置のモータにおいて、記録ディスクが取り付けられるロータハブのシャフトに対する垂直度を向上するとともに、ロータハブに対するシャフトの圧入に要する力を適正な大きさとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、記録ディスク駆動装置にて記録ディスクの回転に使用される電動式のモータにおいて、前記記録ディスクが取り付けられるロータ部品であって、記録ディスクが取り付けられるロータハブと、前記ロータハブの中央に形成された穴部に所定の中心軸に沿って圧入されたシャフトとを備え、前記シャフトの前記穴部に圧入される圧入部が、前記中心軸方向に並ぶとともに前記穴部の内側面に当接する2つの当接部と、前記2つの当接部の間において前記穴部の前記内側面と非接触とされる非当接部とを備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータ部品であって、前記非当接部と前記穴部の前記内側面との間の隙間において前記圧入部と前記穴部の前記内側面とを接着する接着剤層をさらに備える。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のロータ部品であって、前記穴部の径が一定であり、前記圧入部の前記非当接部の径が、前記2つの当接部の径よりも小さい。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のロータ部品であって、前記2つの当接部のうち、前記シャフトの自由端側の当接部の前記中心軸方向の長さが、他方の当接部の前記中心軸方向の長さよりも長い。
【0015】
請求項5に記載の発明は、記録ディスク駆動装置にて記録ディスクの回転に使用される電動式のモータであって、請求項1ないし4のいずれかに記載のロータ部品、および、前記ロータ部品に取り付けられて前記中心軸の周囲に配置される界磁用磁石を有するロータ部と、前記ロータ部品の前記シャフトが挿入されるスリーブ部、前記界磁用磁石との間で前記中心軸を中心とするトルクを発生する電機子、並びに、前記スリーブ部および前記電機子が取り付けられるベース部を有し、前記中心軸を中心に前記ロータ部を回転可能に支持するステータ部とを備える。
【0016】
請求項6に記載の発明は、記録ディスク駆動装置であって、情報を記録する記録ディスクを回転する請求項5に記載のモータと、前記記録ディスクに対する情報の読み出しおよび/または書き込みを行うヘッドと、前記ヘッドを前記モータおよび前記記録ディスクに対して移動するヘッド移動機構とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ロータハブのシャフトに対する垂直度を向上することができるとともに、ロータハブに対するシャフトの圧入に要する力を適正な大きさとすることができる。請求項2の発明では、シャフトをより強固にロータハブに固定することができる。請求項3の発明では、シャフトの圧入部とロータハブとの間の隙間を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動式のスピンドルモータ1(以下、「モータ1」という。)を備える記録ディスク駆動装置60の内部構成を示す図である。記録ディスク駆動装置60はいわゆるハードディスク装置であり、情報を記録する円板状の2枚の記録ディスク4、記録ディスク4に対する情報の書き込みおよび(または)読み出しを行うアクセス部63、記録ディスク4を保持して回転する電動式のモータ1、並びに、記録ディスク4、アクセス部63およびモータ1を内部空間110に収容するハウジング61を備える。
【0019】
図1に示すように、ハウジング61は、上部に開口を有するとともにモータ1およびアクセス部63が内側の底面に取り付けられる無蓋箱状の第1ハウジング部材611、並びに、第1ハウジング部材611の開口を覆うことにより内部空間110を形成する板状の第2ハウジング部材612を備える。記録ディスク駆動装置60では、第1ハウジング部材611に第2ハウジング部材612が接合されてハウジング61が形成され、内部空間110は塵や埃が極度に少ない清浄な空間とされる。
【0020】
2枚の記録ディスク4は、スペーサ622を介して上下に配置されるとともに、モータ1上に載置されてクランパ621によりモータ1に固定される。アクセス部63は、記録ディスク4に近接して情報の読み出しおよび書き込みを磁気的に行うヘッド631、ヘッド631を支持するアーム632、並びに、アーム632を移動することによりヘッド631を記録ディスク4およびモータ1に対して相対的に移動するヘッド移動機構633を有する。これらの構成により、ヘッド631は回転する記録ディスク4に近接した状態で記録ディスク4の所要の位置にアクセスし、情報の書き込みおよび読み出しを行う。
【0021】
図2は、記録ディスク駆動装置60にて記録ディスク4の回転に使用されるモータ1の構成を示す縦断面図である。図2に示すように、モータ1はアウターロータ型のモータであり、固定組立体であるステータ部2、および、回転組立体であるロータ部3を備える。ロータ部3は、作動流体である潤滑油による流体動圧を利用した軸受機構を介して、モータ1の中心軸J1(後述するロータハブ31およびシャフト32の中心軸でもある。)を中心にステータ部2に対して回転可能に支持される。以下の説明では、便宜上、中心軸J1に沿ってロータ部3側を上側、ステータ部2側を下側として説明するが、中心軸J1は必ずしも重力方向と一致する必要はない。
【0022】
ステータ部2は、ステータ部2の各部を保持するベース部であるベースプレート21、ロータ部3を回転可能に支持する軸受機構の一部である略有底円筒状のスリーブ部22、および、スリーブ部22の周囲にてベースプレート21に取り付けられる電機子24を備える。
【0023】
ベースプレート21は、第1ハウジング部材611(図1参照)の一部であり、アルミニウム、アルミニウム合金、または、磁性もしくは非磁性の鉄系金属の板状部材をプレス加工することにより第1ハウジング部材611の他の部位と一体的に形成される。スリーブ部22は、ロータ部3のシャフト32が挿入される略円筒状のスリーブ221、スリーブ221の下側の開口を封止する略円板状のシールキャップ222を備える。スリーブ部22は、その下部がベースプレート21の開口に圧入されることにより、ベースプレート21に取り付けられている。電機子24は、複数の珪素鋼板を積層してなるコア241、および、コア241の複数のティースに巻装されるコイル242を備える。
【0024】
ロータ部3は、記録ディスク4(図1参照)が取り付けられるとともにロータ部3の各部を保持するロータハブ31、中心軸J1を中心とする略円柱状であってロータハブ31から下側(すなわち、ステータ部2側)に突出するシャフト32、および、円環状のヨーク331を介してロータハブ31に取り付けられて中心軸J1の周囲に配置される界磁用磁石33を備える。界磁用磁石33は、多極着磁された円環状の磁石であり、電機子24との間で中心軸J1を中心とする回転力(トルク)を発生する。
【0025】
ロータハブ31は、略有蓋円筒状のハブ本体311、および、ハブ本体311の天蓋部3111の略中央に形成された開口(すなわち、後述する内筒部3113の内側)に固定される略有蓋円筒状のブッシュ312を備える。ハブ本体311は、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金等により形成されており、略円環板状の天蓋部3111、天蓋部3111の外周から下側に突出する略円筒状の外筒部3112、および、天蓋部3111の内周から下側に突出する略円筒状の内筒部3113を備える。外筒部3112の内側面には、ステンレス鋼等の強磁性体により形成されたヨーク331が取り付けられる。
【0026】
ブッシュ312はステンレス鋼により形成されており、略円筒状のブッシュ天蓋部3121、および、ブッシュ天蓋部3121の外周から下側に突出する略円筒状のブッシュ側壁部3122を備える。ブッシュ天蓋部3121の中央には、円形の開口を有するとともにブッシュ天蓋部3121を貫通する穴部3125が形成されている。
【0027】
シャフト32も、ブッシュ312と同様にステンレス鋼により形成されており、下端部に略円環板状のスラストプレート321を備える。モータ1では、シャフト32の上端部が、ブッシュ312の中央(すなわち、ロータハブ31の中央)に形成された穴部3125に中心軸J1に沿って圧入されることにより、シャフト32がロータハブ31に対して固定される。以下の説明では、シャフト32の穴部3125に圧入される部位を、「圧入部322」という。また、ロータハブ31とシャフト32とをまとめて「ロータ部品30」と呼ぶ。
【0028】
図3は、ロータ部品30の穴部3125および圧入部322近傍を拡大して示す図である。図3に示すように、ロータ部品30では、中心軸J1方向において、ブッシュ312の穴部3125の最も上側の上部31251および最も下側の下部31253の径は、上部31251および下部31253の間の中間部31252の径よりも小さくされる。また、シャフト32の圧入部322の外径は一定とされる。以下の説明では、圧入部322において、穴部3125の上部31251、中間部31252および下部31253に対向する部位をそれぞれ、圧入部322の上部3221、中間部3222および下部3223という。
【0029】
ロータ部品30では、圧入部322が穴部3125に圧入される前の状態において、圧入部322の外径は穴部3125の上部31251および下部31253の径よりも僅かに大きく、穴部3125の中間部31252の径よりも小さい。したがって、穴部3125に圧入部322が圧入された状態では、圧入部322の上部3221および下部3223の外側面は穴部3125の内側面3126に当接し、中間部3222の外側面は穴部3125の内側面3126には接触しない。
【0030】
換言すれば、圧入部322の上部3221および下部3223は、中心軸J1方向に並ぶとともに穴部3125の内側面3126に当接する2つの当接部であり、以下の説明では、圧入部322の上部3221および下部3223をそれぞれ、「上当接部3221」および「下当接部3223」という。圧入部322では、上当接部3221および下当接部3223の中心軸J1方向の長さが等しくされる。また、圧入部322の中間部3222は、当該2つの当接部の間において穴部3125の内側面3126と非接触とされる非当接部であり、ロータ部品30では、中間部3222の外側面と穴部3125の内側面3126との間に隙間300が形成される。
【0031】
図2に示すモータ1では、ブッシュ側壁部3122の内側面とスリーブ221の外側面との間、ブッシュ天蓋部3121の下面とスリーブ221の上側の端面との間、スリーブ221の内側面とシャフト32の外側面との間、スラストプレート321の上面とスリーブ221の下側の端面との間、および、スラストプレート321の下面とシールキャップ222の上面との間に微小な間隙が設けられ、ブッシュ312およびシャフト32とスリーブ部22との間(すなわち、ロータ部品30とスリーブ部22との間)に設けられたこれらの間隙に潤滑油が連続して充填されて軸受機構が構成される。
【0032】
スリーブ221の外側面およびブッシュ側壁部3122の内側面は、上側に向かうに従って中心軸J1から離れる方向に傾斜している。スリーブ221の外側面の中心軸J1に対する傾斜角(すなわち、中心軸J1を含む縦断面における傾斜角)は、約2°〜30°(好ましくは、5°〜20°)とされ、ブッシュ側壁部3122の内側面の中心軸J1に対する傾斜角は、約0°〜20°(本実施の形態では、5°〜10°)とされる。モータ1では、下側に向かうに従ってブッシュ側壁部3122の内側面がスリーブ221の外側面から離れ、ブッシュ側壁部3122とスリーブ221との間の間隙に形成されたテーパーシールにより、潤滑油の流出が防止される。
【0033】
スリーブ221の下側の端面には、ロータ部3の回転時に潤滑油に対して中心軸J1側に向かう圧力を発生させるための溝(例えば、スパイラル状の溝)が形成されており、当該端面および当該端面に対向するスラストプレート321の上面によりスラスト動圧軸受部が構成される。また、シャフト32およびスリーブ221の互いに対向する面には、潤滑油に流体動圧を発生させるための溝(例えば、中心軸J1の向く方向に関して、スリーブ221の内側面の上下に設けられたヘリングボーン溝等)が形成されており、これらの面によりラジアル動圧軸受部が構成される。
【0034】
モータ1では、流体動圧を利用する軸受機構によりロータ部3を潤滑油を介して非接触にて支持することにより、ロータ部3およびロータ部3のロータ部品30に取り付けられる記録ディスク4を高精度、かつ、低騒音にて回転することができる。
【0035】
次に、モータ1のロータ部品30の組み立てについて説明する。図4は、ロータ部品30の組み立ての流れを示す図であり、図5.Aないし図5.Cは、組み立て途上のロータ部品30(および、その周辺部品)を示す断面図である。ロータ部品30を組み立てる際には、まず、図5.Aに示すように、シャフト32がスリーブ221の下側の開口から挿入される(ステップS11)。
【0036】
続いて、図5.Bに示すように、シャフト32の圧入部322が、ブッシュ312の穴部3125に下側から圧入されることにより、シャフト32がブッシュ312に対して固定される(ステップS12)。シャフト32の圧入時には、圧入部322のうち、図3に示す上当接部3221および下当接部3223のみが、穴部3125の内側面3126と摩擦する。図5.Bに示すように、ブッシュ312では、ブッシュ側壁部3122の内径がスリーブ221の上端部の外径よりも大きくされているため、シャフト32のブッシュ312への圧入時に、スリーブ221がブッシュ側壁部3122の内側面と接触することなく、ブッシュ側壁部3122の内側に挿入される。
【0037】
次に、図5.Cに示すように、シールキャップ222がスリーブ221にレーザ溶接により固定されることにより、スリーブ221の下側の開口が封止される(ステップS13)。そして、ハブ本体311が別途加熱された後、ハブ本体311の下側から内筒部3113の内側にブッシュ312が挿入され、内筒部3113の内側面とブッシュ312の外側面とが対向する。このとき、ハブ本体311は熱膨張しているため、内筒部3113の内径はブッシュ312の外径よりも僅かに大きくなっている。
【0038】
その後、ハブ本体311を冷却して収縮させることにより、ブッシュ312の外側面に対してハブ本体311の内筒部3113の内側面が当接し、さらに、中心軸J1に向けてブッシュ312を締め付ける。このとき、ブッシュ側壁部3122は、ハブ本体311の内筒部3113の収縮により中心軸J1に向けて押圧され、下端部が中心軸J1側へと変形する。これにより、ブッシュ側壁部3122の内側面が中心軸J1に対して(さらに)傾斜し、上記の傾斜角度となってスリーブ221の外側面との間にテーパーシールとなる間隙を形成する。このように、ブッシュ312がハブ本体311に焼き嵌めにより固定されることにより、ロータ部品30の組立が終了する(ステップS14)。
【0039】
以上に説明したように、モータ1では、シャフト32の圧入時に、圧入部322の上当接部3221および下当接部3223のみが穴部3125の内側面3126と摩擦する。このため、上当接部3221および下当接部3223の中心軸J1方向における合計長(すなわち、圧入部322の当接部の合計長)を適切な長さとすることにより、シャフト32の圧入に要する力を適正な大きさとすることができ、圧入時の過剰な荷重によるシャフト32の変形等を防止することができる。
【0040】
また、シャフト32の圧入部322において、上当接部3221と下当接部3223との間に、穴部3125の内側面3126と接触しない非接触部である中間部3222を設けることにより、当接部の合計長をあまり大きくすることなく(すなわち、圧入時にシャフト32に過剰な荷重を加えることなく)、圧入部322の長さ(すなわち、圧入部322の上当接部3221の最上部から下当接部3223の最下部までの距離であり、シャフト32とロータハブ31との締結長である。)を大きくすることができる。これにより、シャフト32をロータハブ31に対して取り付ける際に、ロータハブ31のシャフト32に対する垂直度を向上することができる。また、ロータ部品30においてロータハブ31に荷重が加えられた際に、シャフト32に対してロータハブ31が傾くことを抑制することができる。
【0041】
このように、モータ1のロータ部品30では、シャフト32の圧入に要する力を適正な大きさとしつつ、シャフト32に対するロータハブ31の垂直度を向上することができる。その結果、ロータ部品30に取り付けられた記録ディスク4が中心軸J1に垂直な面からずれることを抑制し、記録ディスク駆動装置60における記録ディスク4に対する情報の読み書きを適切に行うことができる。
【0042】
ロータ部品30の組み立てでは、ブッシュ側壁部3122の内側へのスリーブ221の挿入後に、ブッシュ312が焼き嵌めにてハブ本体311に固定され、このとき、ブッシュ側壁部3122が中心軸J1側に変形することによりテーパーシールが形成される。このように、ロータ部品30の組み立てでは、ブッシュ312の固定と並行して、かつ、ロータハブ31とは別体の部材を使用することなく、テーパーシールを容易に形成することができる。また、ブッシュ側壁部3122にスリーブ221を挿入した後にブッシュ側壁部3122を変形させてテーパーシールを形成することにより、ブッシュ側壁部3122を変形させない場合に比べて、テーパーシールの角度(すなわち、ブッシュ側壁部3122の内側面とスリーブ221の外側面との為す角度)の調整の自由度を向上することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るモータについて説明する。図6は、第2の実施の形態に係るモータのロータ部品30の穴部3125および圧入部322近傍を拡大して示す図である。第2の実施の形態に係るモータでは、中心軸J1方向において、ブッシュ312の穴部3125の径は一定とされ、シャフト32の圧入部322の上当接部3221および下当接部3223の外径が、中間部3222の外径よりも大きくされる。そして、圧入部322における非当接部である中間部3222の外側面と穴部3125の内側面3126との間に形成された隙間300aに、圧入部322と穴部3125の内側面3126とを接着する接着剤層301を備える。その他の構成は図2および図3と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0044】
第2の実施の形態に係るモータのロータ部品30の組み立ての流れは、第1の実施の形態(図4参照)とほぼ同様であるが、シャフト32のブッシュ312の穴部3125への挿入(ステップS12)よりも前であって、好ましくは、シャフト32のスリーブへの挿入(ステップS11)よりも後に、圧入部322の中間部3222に対して接着剤の塗布が行われる点が異なる。
【0045】
第2の実施の形態に係るモータのロータ部品30でも、第1の実施の形態と同様に、シャフト32の圧入に要する力を適正な大きさとしつつ、シャフト32に対するロータハブ31(図2参照)の垂直度を向上することができる。
【0046】
第2の実施の形態に係るロータ部品30では、特に、微小な隙間300aに充填された接着剤層301による強い接着力(いわゆる、アンカー効果)により、シャフト32をより強固にロータハブ31に固定することができる。また、シャフト32とロータハブ31との接合部をより確実に封止することができ、流体動圧軸受機構の作動流体(すなわち、潤滑油)の流出をより確実に防止することができる。なお、第1の実施の形態に係るモータ1のロータ部品30においても、シャフト32とブッシュ312との間の隙間300に接着剤層301が設けられることにより、シャフト32がより強固にロータハブ31に固定されてもよい。
【0047】
また、第2の実施の形態に係るロータ部品30では、ブッシュ312の穴部3125の内径が一定であり、シャフト32の圧入部322の非当接部である中間部3222の外径が、2つの当接部である上当接部3221および下当接部3223の外径よりも小さくされる。このように、穴部3125の内側面3126に比べて加工の自由度が高い(すなわち、加工がより容易な)シャフト32の外側面に凹凸を形成することにより、シャフト32の圧入部322とロータハブ31との間に隙間300aを容易に形成することができる。
【0048】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るモータについて説明する。図7は、第3の実施の形態に係るモータのロータ部品30の穴部3125および圧入部322近傍を拡大して示す図である。第3の実施の形態に係るモータでは、圧入部322の下当接部3223(すなわち、シャフト32の自由端側の部位)の中心軸J1方向の長さが、上当接部3221の中心軸J1方向の長さよりも長くされる。その他の構成は図2および図3と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0049】
第3の実施の形態に係るモータのロータ部品30でも、第1の実施の形態と同様に、シャフト32の圧入に要する力を適正な大きさとしつつ、シャフト32に対するロータハブ31(図2参照)の垂直度を向上することができる。
【0050】
第3の実施の形態に係るロータ部品30では、特に、シャフト32の圧入部322において、2つの当接部である上当接部3221および下当接部3223のうち、下当接部3223の中心軸J1方向の長さが上当接部3221の中心軸J1方向の長さよりも長くされる。このように、シャフト32のロータハブ31に対する圧入時に、長い当接部(すなわち、下当接部3223)の方が短い当接部(すなわち、上当接部3221)よりも穴部3125の内側面3126に摩擦される時間を短くすることにより、シャフト32を容易に圧入することができる。また、ロータ部3(図2参照)の中心軸J1方向の重心に近い側の当接部を長くすることにより、ロータ部3の回転時におけるシャフト32とロータハブ31との締結をより強固なものとすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0052】
圧入部322では、穴部3125の内側面3126に当接する複数の当接部と内側面3126に非接触とされる複数の非接触部とが、中心軸J1方向において交互に設けられてもよい。あるいは、圧入部322の外側面を螺旋状に回る非接触部が設けられてもよい。
【0053】
シャフト32が圧入される穴部3125は、必ずしもブッシュ天蓋部3121を貫通する貫通穴である必要はなく、ブッシュ天蓋部3121の下面側から形成された凹部であってもよい。
【0054】
上記実施の形態に係るロータ部品30では、ハブ本体311およびブッシュ312は、必ずしも上述の材料により形成される必要はなく、それぞれ、アルミニウム、アルミニウム合金、磁性体もしくは非磁性体のステンレス、または銅合金等の様々な材料により形成されてよい。
【0055】
ロータ部品30の組み立てでは、ブッシュ312のハブ本体311に対する固定方法は、必ずしも焼き嵌めには限定されず、例えば、隙間嵌め後の接着固定や圧入であってもよい。また、ハブ本体311とブッシュ312とは一体物として形成されてもよい。
【0056】
上記実施の形態に係るモータでは、スリーブ部22は、例えば、略円筒状のスリーブと、当該スリーブの外側に取り付けられてスリーブの外側面および下端部を覆う略有底円筒状のスリーブハウジングにより構成されてもよい。
【0057】
上記実施の形態に係るモータは、必ずしも界磁用磁石32が電機子24の外側に配置された、いわゆるアウターロータ型である必要はなく、界磁用磁石32が電機子24の内側に配置されたインナーロータ型であってもよい。軸受機構は、例えば、空気を作動流体とした、いわゆるエア動圧軸受が用いられてもよい。また、軸受機構は、必ずしも流体動圧を利用するものである必要はなく、例えば、ボールベアリングであってもよい。
【0058】
上述のモータを備える記録ディスク駆動装置60は、磁気ディスクのみならず、光ディスク、光磁気ディスク等の他のディスク状の記録媒体を駆動する装置として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施の形態に係る記録ディスク駆動装置の内部構成を示す図である。
【図2】モータの構成を示す縦断面図である。
【図3】ロータ部品の一部を拡大して示す図である。
【図4】ロータ部品の組み立ての流れを示す図である。
【図5.A】組み立て途上のロータ部品を示す断面図である。
【図5.B】組み立て途上のロータ部品を示す断面図である。
【図5.C】組み立て途上のロータ部品を示す断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係るロータ部品の一部を拡大して示す図である。
【図7】第3の実施の形態に係るロータ部品の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 モータ
2 ステータ部
3 ロータ部
4 記録ディスク
21 ベースプレート
22 スリーブ部
24 電機子
30 ロータ部品
31 ロータハブ
32 シャフト
33 界磁用磁石
60 記録ディスク駆動装置
300,300a 隙間
301 接着剤層
322 圧入部
631 ヘッド
633 ヘッド移動機構
3125 穴部
3126 内側面
3221 上当接部
3222 中間部
3223 下当接部
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスク駆動装置にて記録ディスクの回転に使用される電動式のモータにおいて、前記記録ディスクが取り付けられるロータ部品であって、
記録ディスクが取り付けられるロータハブと、
前記ロータハブの中央に形成された穴部に所定の中心軸に沿って圧入されたシャフトと、
を備え、
前記シャフトの前記穴部に圧入される圧入部が、
前記中心軸方向に並ぶとともに前記穴部の内側面に当接する2つの当接部と、
前記2つの当接部の間において前記穴部の前記内側面と非接触とされる非当接部と、
を備えることを特徴とするロータ部品。
【請求項2】
請求項1に記載のロータ部品であって、
前記非当接部と前記穴部の前記内側面との間の隙間において前記圧入部と前記穴部の前記内側面とを接着する接着剤層をさらに備えることを特徴とするロータ部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータ部品であって、
前記穴部の径が一定であり、前記圧入部の前記非当接部の径が、前記2つの当接部の径よりも小さいことを特徴とするロータ部品。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のロータ部品であって、
前記2つの当接部のうち、前記シャフトの自由端側の当接部の前記中心軸方向の長さが、他方の当接部の前記中心軸方向の長さよりも長いことを特徴とするロータ部品。
【請求項5】
記録ディスク駆動装置にて記録ディスクの回転に使用される電動式のモータであって、
請求項1ないし4のいずれかに記載のロータ部品、および、前記ロータ部品に取り付けられて前記中心軸の周囲に配置される界磁用磁石を有するロータ部と、
前記ロータ部品の前記シャフトが挿入されるスリーブ部、前記界磁用磁石との間で前記中心軸を中心とするトルクを発生する電機子、並びに、前記スリーブ部および前記電機子が取り付けられるベース部を有し、前記中心軸を中心に前記ロータ部を回転可能に支持するステータ部と、
を備えることを特徴とするモータ。
【請求項6】
記録ディスク駆動装置であって、
情報を記録する記録ディスクを回転する請求項5に記載のモータと、
前記記録ディスクに対する情報の読み出しおよび/または書き込みを行うヘッドと、
前記ヘッドを前記モータおよび前記記録ディスクに対して移動するヘッド移動機構と、
を備えることを特徴とする記録ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5.A】
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【図5.B】
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【図5.C】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−282374(P2007−282374A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105165(P2006−105165)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】