説明

ロープクリップ取付用の補助工具

【課題】ロープクリップを、ワイヤロープに対して簡単に且つ適切な位置に取り付けることができるロープクリップ取付用の補助工具を提供する。
【解決手段】本補助工具は、ワイヤロープ11をシンブル12に押し付けるための押付部1及び押付部2と、一端部側に押付部1が設けられた操作部3と、一端部側に押付部2が設けられた操作部4とを備える。押付部1は、シンブル12の一側に配置されたワイヤロープ11を、所定の長さに渡ってシンブル12に押し付けるための凹状の溝部を有する。押付部2は、シンブル12の他側に配置されたワイヤロープ11を、所定の長さに渡ってシンブル12に押し付けるための凹状の溝部を有する。押付部1の溝部と押付部2の溝部とは、その長手に渡って対向するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤロープにロープクリップを取り付ける際に使用される補助工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、小荷物用の昇降機において主ロープ(ワイヤロープ)の交換を行う場合、主ロープの端部を固定するために、ロープクリップが使用される。なお、下記特許文献1には、ロープクリップの一例が開示されている。
【0003】
図7はロープクリップの取付方法を説明するための図であり、上記主ロープを交換する際の状態を示している。
図7において、15は主ロープ16の端部を接続するための吊りボルトである。主ロープ16の交換作業では、吊りボルト15の環状部分にU字状のシンブル12を取り付け、上記環状部分に新規主ロープ16を通す。そして、主ロープ16をシンブル12に沿って折り返し、主ロープ16の端部をロープクリップ13(及び、ナット14)で固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−49908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロープクリップ13によって主ロープ16を固定する場合、ロープクリップ13をシンブル12側(図7の矢印B側)の適切な位置に配置しなければならない。従来では、主ロープ16の交換時、作業者は、主ロープ16をシンブル12に沿って屈曲させると、主ロープ16が広がらないように片手で主ロープ16の屈曲部分を絞り込み、その形状を保持したまま、もう片方の手でロープクリップ13の取り付けを行っていた。このため、作業性が著しく悪く、主ロープ16の交換に多大な時間と手間とを要するといった問題があった。また、主ロープ16の径が大きくなると主ロープ16を十分に絞り込むことができず、ロープクリップ13を適切な位置で取り付けることができないこともあった。
【0006】
なお、このような問題は、小荷物用の昇降機において主ロープの交換を行う場合だけでなく、ワイヤロープにロープクリップを取り付ける他の場合にも同様に発生し得る。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、ロープクリップを、ワイヤロープに対して簡単に且つ適切な位置に取り付けることができるロープクリップ取付用の補助工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るロープクリップ取付用の補助工具は、U字状のシンブルに沿って湾曲されたワイヤロープを、シンブルの近傍でロープクリップによって固定する際に使用される補助工具であって、ロープクリップの取付時に、シンブルの外側に配置されたワイヤロープに両側から接触して、ワイヤロープをシンブルに押し付けるための第1押付部及び第2押付部と、一端部側に第1押付部が設けられた第1操作部と、一端部側に第2押付部が設けられるとともに、他端部側が第1操作部の他端部側に接近及び離隔されることにより、第2押付部を第1押付部に接近及び離隔させる第2操作部と、を備え、第1押付部は、シンブルの一側に配置されたワイヤロープを、所定の長さに渡ってシンブルに押し付けるための凹状の第1溝部を有し、第2押付部は、シンブルの他側に配置されたワイヤロープを、所定の長さに渡ってシンブルに押し付けるための凹状の第2溝部を有し、第1溝部と第2溝部とは、その長手に渡って対向するように配置されたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るロープクリップ取付用の補助工具を使用することにより、ロープクリップを、ワイヤロープに対して簡単に且つ適切な位置に取り付けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるロープクリップ取付用の補助工具を示す全体図である。
【図2】図1に示す補助工具の要部斜視図である。
【図3】図1に示す補助工具の要部拡大図である。
【図4】図1に示す補助工具の使用方法を説明するための図である。
【図5】図1に示す補助工具の使用方法を説明するための図である。
【図6】図1に示す補助工具の使用方法を説明するための図である。
【図7】ロープクリップの取付方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるロープクリップ取付用の補助工具を示す全体図である。本補助工具は、U字状のシンブルに沿って湾曲されたワイヤロープを、シンブルの近傍でロープクリップによって固定する際に使用されるものである。本補助工具は、例えば、押付部1及び2、操作部3及び4、ロック機構部5、ロック解除部6、調節部7により、その要部が構成される。
【0013】
図2は図1に示す補助工具の要部斜視図、図3は図1に示す補助工具の要部拡大図である。図2及び図3は、押付部1及び2の詳細を示している。
以下に、図2及び図3も参照し、本補助工具の構成について具体的に説明する。
【0014】
押付部1及び2は、ロープクリップの取付時に、シンブルの外側に配置されたワイヤロープに両側から接触し、ワイヤロープをシンブルに押し付けるためのものである。具体的に、押付部1及び2の上記機能は、押付部1及び2に形成された凹状を呈する一対の溝部によって実現される。
【0015】
一方の押付部1に設けられた上記溝部は、ロープクリップの取付時に、シンブルの一側に配置されたワイヤロープを、所定の長さに渡ってシンブルに押し付けるためのものである。例えば、押付部1の溝部は、溝部の底面を形成する接触部1aと、溝部の側面を形成するストッパー部1bとにより構成される。
【0016】
接触部1aは、ロープクリップの取付時に、シンブルの一側に配置されたワイヤロープに対し、所定の長さに渡って一側から接触する。接触部1aは、シンブルの一側の広い範囲にワイヤロープを押し付けることができるように、ワイヤロープに接触する接触面(上記溝部の底面に相当)が、シンブルの外側面と同じように湾曲している。即ち、接触部1aの上記接触面は、シンブルの外側面に合わせて、長手中央部がへこんだ凹状を呈している。
【0017】
ストッパー部1bは、接触部1aによってワイヤロープを押さえた際に、ワイヤロープが接触部1aから外れてしまうことを防止するためのものである。ストッパー部1bは、例えば、接触部1aの両側に設けられており、シンブルの一側に配置されたワイヤロープに接触部1aが一側から接触した際に、ワイヤロープに沿ってその両側に配置される。
【0018】
押付部2に設けられた上記溝部は、ロープクリップの取付時に、シンブルの他側に配置されたワイヤロープを、所定の長さに渡ってシンブルに押し付けるためのものである。押付部2の溝部は、押付部1の溝部と同様の構成を有しており、例えば、溝部の底面を形成する接触部2aと、溝部の側面を形成するストッパー部2bとにより構成される。
【0019】
接触部2aは、ロープクリップの取付時に、シンブルの他側に配置されたワイヤロープに対し、所定の長さに渡って他側から接触する。接触部2aは、シンブルの他側の広い範囲にワイヤロープを押し付けることができるように、ワイヤロープに接触する接触面(上記溝部の底面に相当)が、シンブルの外側面と同じように湾曲している、即ち、接触部2aの上記接触面は、シンブルの外側面に合わせて、長手中央部がへこんだ凹状を呈している。
【0020】
ストッパー部2bは、接触部2aによってワイヤロープを押さえた際に、ワイヤロープが接触部2aから外れてしまうことを防止するためのものである。ストッパー部2bは、例えば、接触部2aの両側に設けられており、シンブルの他側に配置されたワイヤロープに接触部2aが他側から接触した際に、ワイヤロープに沿ってその両側に配置される。
【0021】
即ち、押付部1(の溝部)と押付部2(の溝部)とは、シンブルに巻き掛けられたワイヤロープを両側から挟み込み、ワイヤロープをシンブルの外側面に密着させるためのものである。このため、押付部1の溝部と押付部2の溝部とは対称に配置され、凹状部分の開口が互いに対向するように配置される。このため、ワイヤロープを押し付けるための接触部1a及び2aの各接触面も、その長手に渡って対向する。
【0022】
操作部3及び4は、ロープクリップの取付作業を行う作業者が把持して押付部1及び2を操作する部分を構成する。
例えば、一方の操作部3は、その一端部に、押付部1が設けられている。また、押付部2には、所定の支持部2cが上記溝部と一体的に備えられており、支持部2cの中間部が、操作部3の中間部に軸8を介して回転自在に固定されている。他方の操作部4は、その一端部が、支持部2cの先端部に軸9を介して回転自在に固定されている。
【0023】
即ち、作業者が操作部3及び4を握り締めると、操作部4の他端部側が操作部3の他端部側に接近して、押付部2が押付部1に接近するように移動する。これにより、接触部1a及び2aの各接触面の間隔を狭めることができる。一方、操作部4の他端部側を操作部3の他端部側から離隔させると、押付部2が押付部1から離隔するように移動する。これにより、接触部1a及び2aの各接触面の間隔を広げることができる。
【0024】
ロック機構部5は、作業者が操作部3及び4を握って一定以上締めた際に、その状態をロックするためのものである。即ち、ロック機構部5は、操作部4の他端部側が操作部3の他端部側に所定距離まで接近すると、その接近状態を固定し、操作部4が操作部3から離れる(即ち、接触部1a及び2aの各接触面の間隔が広がる)ことを阻止する。
【0025】
ロック解除部6は、ロック機構部5によるロック機能を解除するためのものである。ロック解除部6は、例えば、操作部4に設けられた解除レバーからなる。ロック解除部6は、例えば、図1のA方向に操作されることにより、ロック機構部5に係合して、ロック機構部5によって固定された状態を解除する。これにより、本補助工具を元の状態、即ち、操作部4の他端部側が操作部3の他端部側から離隔可能な状態に戻すことができる。
【0026】
調節部7は、押付部1及び2の可動範囲を調節するためのものである。調節部7は、例えば、操作部3に設けられた調節ネジからなる。調節部7を操作することにより、押付部1及び2の締め込み量(図3に示すα)を所定の範囲内で調節することができる。
【0027】
図1に示す10は、上記支持部2cと操作部3との間に設けられたスプリングである。スプリング10は、押付部1及び2の間隔が広がる方向に、常時一定の力を作用させている。
【0028】
次に、図4乃至図6も参照し、上記構成を有する補助工具を使用してワイヤロープにロープクリップを取り付ける時の動作について具体的に説明する。図4乃至図6は図1に示す補助工具の使用方法を説明するための図である。図4乃至図6において、11はワイヤロープ、12はU字状のシンブル、13はロープクリップ、14はナットを示している。
【0029】
図4はワイヤロープ11をシンブル12に巻き付け、ワイヤロープ11をシンブル12の外側面に沿って湾曲させた状態を示している。作業者は、このように配置されたワイヤロープ11に対し、その両側からワイヤロープ11の湾曲部分を挟み込むように押付部1及び2を当て、押付部1及び2の各溝部内にワイヤロープ11を配置する。この時、各溝部の一端部が、シンブル12の端部付近に配置されるようにする。そして、作業者はこの状態で操作部3及び4を強く握り締め、ワイヤロープ11をシンブル12の外側面に密着させる(図5参照)。
【0030】
操作部3及び4を強く握りしめることにより、ロック機構部5によるロック機能が作用して、ワイヤロープ11を強く締めこんだ状態で固定することができる。ロック機能が作用すれば手を放しても本補助工具がワイヤロープ11から外れる(本補助工具が落下する)ことはないため、作業者は、かかる状態で両手を使用してロープクリップ13をワイヤロープ11に固定する。また、ロープクリップ13の取り付けが完了すると、作業者は、ロック解除部6を操作してロック状態を解除し、本補助工具をワイヤロープ11から取り外す。
【0031】
本構成の補助工具であれば、ロープクリップ13を、ワイヤロープ11に対して簡単に取り付けることができる。また、作業性が大幅に向上するため、その作業時間も短縮させることができる。
本補助工具であれば、押付部1及び2によってシンブル12の端部近傍までワイヤロープ11を絞り込むことができるため、ロープクリップ13をシンブル12側の適切な位置に配置することができるようになる。
【符号の説明】
【0032】
1、2 押付部
1a、2a 接触部
1b、2b ストッパー部
2c 支持部
3、4 操作部
5 ロック機構部
6 ロック解除部
7 調節部
8、9 軸
10 スプリング
11 ワイヤロープ
12 シンブル
13 ロープクリップ
14 ナット
15 吊りボルト
16 主ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状のシンブルに沿って湾曲されたワイヤロープを、前記シンブルの近傍でロープクリップによって固定する際に使用される補助工具であって、
前記ロープクリップの取付時に、前記シンブルの外側に配置された前記ワイヤロープに両側から接触して、前記ワイヤロープを前記シンブルに押し付けるための第1押付部及び第2押付部と、
一端部側に前記第1押付部が設けられた第1操作部と、
一端部側に前記第2押付部が設けられるとともに、他端部側が前記第1操作部の他端部側に接近及び離隔されることにより、前記第2押付部を前記第1押付部に接近及び離隔させる第2操作部と、
を備え、
前記第1押付部は、前記シンブルの一側に配置された前記ワイヤロープを、所定の長さに渡って前記シンブルに押し付けるための凹状の第1溝部を有し、
前記第2押付部は、前記シンブルの他側に配置された前記ワイヤロープを、所定の長さに渡って前記シンブルに押し付けるための凹状の第2溝部を有し、
前記第1溝部と前記第2溝部とは、その長手に渡って対向するように配置されたロープクリップ取付用の補助工具。
【請求項2】
前記第1押付部は、
前記シンブルの一側に配置された前記ワイヤロープに対し、所定の長さに渡って一側から接触する第1接触部と、
前記シンブルの一側に配置された前記ワイヤロープに前記第1接触部が一側から接触した際に、前記ワイヤロープの両側に配置される第1ストッパー部と、
を備え、
前記第2押付部は、
前記シンブルの他側に配置された前記ワイヤロープに対し、所定の長さに渡って他側から接触する第2接触部と、
前記シンブルの他側に配置された前記ワイヤロープに前記第2接触部が他側から接触した際に、前記ワイヤロープの両側に配置される第2ストッパー部と、
を備え、
前記第1接触部と前記第2接触部とは、その長手に渡って対向するように配置された請求項1に記載のロープクリップ取付用の補助工具。
【請求項3】
前記第2操作部の他端部側が前記第1操作部の他端部側に所定距離まで接近すると、その接近状態を固定するロック機構部と、
前記ロック機構部によって固定された状態を解除し、前記第2操作部の他端部側を前記第1操作部の他端部側から離隔可能にするロック解除部と、
を更に備えた請求項1又は請求項2に記載のロープクリップ取付用の補助工具。
【請求項4】
前記第1操作部の他端部側と前記第2操作部の他端部側とを接近及び離隔させた時の前記第1押付部及び前記第2押付部の可動範囲を調節する調節部と、
を更に備えた請求項1から請求項3の何れかに記載のロープクリップ取付用の補助工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate