説明

ロープブレーキ

【課題】 シーブ42に巻き付けられてかご1等を往復移動させる主ロープ3と、この主ロープ3の円弧領域をシーブ42に向かって押圧して駆動するベルト伝動機構51を有する駆動装置40を備えたものにおいて、ロープブレーキ52の作動時にシューが主ロープ3に衝突するときの作動音を小さくすること。
【解決手段】 ロープブレーキ52のシューを、ベルト伝動機構51のベルト50と同一又は類似の構造のベルトの短辺であって、ゴム硬度が約50〜90度に設定されているものにすることによって、ロープブレーキ52が動作したときの作動音を低減させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのかご等を往復移動させるための主ロープ等と、この主ロープ等を拘束するロープブレーキとを備えたものにおいて、ロープブレーキのシューの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、出願人が提案している方式の駆動機構を備えた駆動装置であり(特許文献1参照)、図4はこの駆動装置を使用したエレベータの例である。図において、10は昇降路であり、かご1、その案内シーブ11,12、カウンターウェイト2、その吊りシーブ21、駆動装置40、シーブ42などが配置されている。3は主ロープで、各シーブ21,42,11,12を経由して、ロープエンド31,32が昇降路の固定側に固定されている。13は乗場ドア、14は駆動装置40を設置したビーム、15はカウンターウェイト2のガイドレールであり、かご1のガイドレールは図示省略している。
【0003】
駆動装置40はフレーム41にシーブ42を取り付けるとともに、該シーブ42の上方と両側の3箇所にプーリ43,44,45を配置し、これらのプーリ43,44,45にベルト46を張設してベルト伝動機構70を構成し、このベルト46によってシーブ42に巻き付けられた主ロープ3をシーブ42に押圧する。上方のプーリ43はフレーム41の背面に取り付けられたモータ(図示省略)に連結されており、ベルト46の周回移動により、シーブ42と主ロープ3を移動させてかご1を昇降させる構成になっている。また両側のプーリ44,45はそれぞれ位置調節機構47によって、フレーム41に対して高さ位置の調節が可能に取り付けられており、これら高さ位置を調節することによってベルト46の張力を調節することができる。48は非常時等に主ロープ3を挟持するロープブレーキで油圧等によって動作する。49はモータの回動状態を検出する検出装置、例えばロータリーエンコーダ、71はモータの回転を停止させるモータブレーキである。
【0004】
この駆動装置40では、ベルト46が弛緩又は切断した場合、かご1とカウンターウェイト2とのアンバランスが大きいと、かご1又はカウンターウェイト2が落下(他方は上昇)する可能性がある。そのため異常を検出するとロープブレーキ48を作動させて主ロープ3を挟持するようにしている。ロープブレーキ48の挟持力が十分あればかご1とカウンターウェイト2のアンバランスが大きくても確実に停止させることができる。
【特許文献1】国際公開第02/064482号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ロープブレーキ48に使用されているシューは、一般に硬質合成樹脂製であるため、ロープブレーキ48の作動時にシューが主ロープ3に衝突するときの作動音がが大きい。そのためにロープブレーキ48を常用ブレーキとして使用することができなかった。そこで常用ブレーキとして、モータの回転を停止させるモータブレーキ71が別途必要となり、スペース面及びコスト面で問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エレベータのかご等を往復移動させるためのロープ状又はベルト状の張力部材と、この張力部材を拘束するロープブレーキとを備えたものにおいて、前記ロープブレーキのシューはゴムを含んでおり、そのゴム硬度が約50〜90度に設定されているものである。
また本発明は、シーブに巻き付けられてエレベータのかご等を往復移動させるためのロープ状又はベルト状の張力部材と、前記シーブに巻き付けられた張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧して駆動するベルト伝動機構と、前記張力部材を拘束するロープブレーキとを備えたものにおいて、前記ロープブレーキのシューは、前記ベルト伝動機構を構成するベルトと同一又は類似の構造のベルトの短辺であって、ゴム硬度が約50〜90度に設定されているものである。
更に本発明は、前記ロープブレーキは、前記張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧するブレーキであり、前記張力部材の長手方向に前記ベルト伝動機構と直列に配置したものである。
更に又、前記ロープブレーキは、前記張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧するブレーキであり、前記張力部材は複数設けられており、その一部は前記ベルト伝動機構によって駆動され、他部は前記ロープブレーキに対向して配置されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロープブレーキの作動音を低減することができるという効果がある。そのため、ロープブレーキを常用ブレーキとして使用することが可能になり、更に従来のモータブレーキを省略することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図3により説明すると、ロープブレーキ48の主ロープ3に接するシューとして、ベルト46と同一のベルトを切断した短辺をを使用したものである。このベルト46はゴム等から成っており、このゴムの材質としては、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、EPDM、H−NBR、ミラブルウレタン又はこれらを複数複合したものなどがある。更にゴムの硬度は、主ロープ3との摩擦力の確保及び停止時のせん断歪によるクリープ抑制を考慮して、約50〜90度に設定してある。
【0009】
本実施の形態によれば、シューとしてゴム硬度が約50〜90度に設定されているベルトの短辺を使用しているため、ロープブレーキ48の作動時にシューが主ロープ3に衝突するときの作動音を小さくすることができる。そのためにロープブレーキ48を常用ブレーキとして使用することができるため、モータブレーキ71を省略することが可能になる。
この実施の形態では、ロープブレーキ48のシューとしてベルト46と同一のベルトの短辺を使用しているが、ゴム硬度が約50〜90度のものであればベルト46以外の他のゴムを使用することもできる。
【0010】
図1は本発明の他の実施の形態を示す図で、図3の装置からプーリ45を廃止して、プーリ43と44とに短いベルト50を張設したものをベルト伝動機構51としたものである。そしてベルト50を周回移動させて主ロープ3を駆動している。このベルト50は前記ベルト46と同じ構造のものであり、ゴムの硬度は約50〜90度に設定してある。
また、シーブ42に巻き付けられた主ロープ3と対向する位置にロープブレーキ52を設置しており、このロープブレーキ52は、作動すると主ロープ3をシーブ42に押圧して主ロープ3の動きを停止させる。図1に示すように、ロープブレーキ52とベルト伝動機構51とは、主ロープ3の長手方向に直列に配置される。
そしてこのロープブレーキ52のシューには、前記実施の形態と同様に、ベルト51と同一のベルトの短辺を使用している。
【0011】
本実施の形態によれば、前記実施の形態と同様に、ロープブレーキ52の作動時にシューが主ロープ3に衝突するときの作動音を小さくすることができ、ロープブレーキ52を常用ブレーキとして使用することができるため、モータブレーキ71を省略することが可能になる。
また、前記の実施の形態と同様に、ロープブレーキ52のシューとして、ゴム硬度が約50〜90度のものであればベルト以外の他のゴムを使用することもできる。
【0012】
図2は本発明の他の実施の形態を示す図で、図1に相当する正面図とその右側面図であり、図1,図3と同一符号は同一部分を示している。主ロープ3は6本ありシーブ42に巻き付けられているが、そのうちの4本(3A)を駆動用とし、2本(3B)をブレーキ用としている。通常の運転時には、ベルト46で主ロープ3Aを駆動する。そしてブレーキを掛けるときは、ロープブレーキ52が主ロープ3Bをシーブ42に押圧するものである。
そしてこのロープブレーキ52のシューには、ベルト46と同一のベルトの短辺を使用している。
【0013】
本実施の形態によれば、前記実施の形態と同様に、ロープブレーキ52の作動時にシューが主ロープ3に衝突するときの作動音を小さくすることができ、ロープブレーキ52を常用ブレーキとして使用することができるため、モータブレーキ71を省略することが可能になる。
また、前記の実施の形態と同様に、ロープブレーキ52のシューとして、ゴム硬度が約50〜90度のものであればベルト以外の他のゴムを使用することもできる。
【0014】
前記の各実施の形態では、ロープブレーキ48,52のシューは、ベルト46,50と同一のベルトの短辺を使用しているが、エレベータの種類によってベルトに種類がある場合、ベルト伝動機構のベルトとシューのベルトは必ずしも同一のものである必要はなく、ゴム硬度が約50〜90度に設定されているものであれば良い。
また、かご1とカウンターウェイト2とを主ロープ3で連結したエレベータについて説明しているが、主ロープ3の代りにベルト等他の張力部材を使用した場合も同様に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図3】従来の駆動装置を示す図である。
【図4】図3の駆動装置を使用したエレベータの例である。
【符号の説明】
【0016】
1 かご
2 カウンターウェイト
3,3A,3B 主ロープ
40 駆動装置
42 シーブ
46,50 ベルト
48,52 ロープブレーキ
51,70 ベルト伝動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかご等を往復移動させるためのロープ状又はベルト状の張力部材と、この張力部材を拘束するロープブレーキとを備えたものにおいて、
前記ロープブレーキのシューはゴムを含んでおり、そのゴム硬度が約50〜90度に設定されていることを特徴とするロープブレーキ。
【請求項2】
シーブに巻き付けられてエレベータのかご等を往復移動させるためのロープ状又はベルト状の張力部材と、前記シーブに巻き付けられた張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧して駆動するベルト伝動機構と、前記張力部材を拘束するロープブレーキとを備えたものにおいて、
前記ロープブレーキのシューは、前記ベルト伝動機構を構成するベルトと同一又は類似の構造のベルトの短辺であって、ゴム硬度が約50〜90度に設定されているものであることを特徴とするロープブレーキ。
【請求項3】
前記ロープブレーキは、前記張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧するブレーキであり、前記張力部材の長手方向に前記ベルト伝動機構と直列に配置していることを特徴とする請求項2に記載のロープブレーキ。
【請求項4】
前記ロープブレーキは、前記張力部材の円弧領域を前記シーブに向かって押圧するブレーキであり、前記張力部材は複数設けられており、その一部は前記ベルト伝動機構によって駆動され、他部は前記ロープブレーキに対向して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のロープブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−105339(P2006−105339A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295500(P2004−295500)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】