説明

ロープ登攀補助具

【課題】ロープを登る際のバランスがとりやすく、足をロープに保持させることも容易で、ロープを速やかに登ることができる。
【解決手段】靴Sに装着される基体1と、基体1に対して基端41が回動可能に連結され、上下方向へ延びるロープRに側方から係止される係止凹所42を先端側面に形成した筒状の旋回体4と、旋回体4を上下方向に対し傾斜した姿勢に付勢保持するバネ部材8と、旋回体4の筒内に摺動可能に挿入された棒状の押圧部材と、一端が押圧部材の基端に回動可能に連結され、他端が基体1に回動可能に連結されて、旋回体4が傾斜姿勢から上下方向に沿った姿勢へ旋回するにつれて押圧部材の先端53を係止凹所42内に進出させてロープRに圧接させるリンク部材6とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロープ登攀補助具に関し、特にツリークライミングを行う場合等に好適に使用できるロープ登攀補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ツリークライミングをスポーツとして行うことが人気を博しつつある。この場合の登り方の一手法として、予め木の枝に引っ掛けて上下方向へロープを垂らしておき、両手にもった登高器をロープに係止して、これら登高器から垂下させた一定長さの縄梯子にそれぞれ左右の足を掛け、左右の登高器を交互に上昇させながら尺取虫のように登る方法がある。なお、登高器は例えば、カム内蔵で力のかかった方向(下方向)ではロープを押さえて止まり、力のかからない方向(上方向)では自由に可動する構造のもので、ペツル(PETZL)社製のもの等が知られている。なお、特許文献1にはスチールワイヤを利用した木登り用具が示されている。
【特許文献1】特開2006−14712
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、登高器から垂下させた縄梯子に足を掛ける上記従来の方法では、縄梯子が安定せず、身体のバランスが取りにくいという問題や、揺れている縄梯子に足を掛けることが難しくロープを登るのに手間取るという問題があった。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、ロープを登る際のバランスがとりやすく、足をロープに保持させることも容易で、ロープを速やかに登ることができるロープ登攀補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、靴(S)に装着される基体(1)と、基体(1)に対して基端(41)が回動可能に連結され、上下方向へ延びるロープ(R)に側方から係止される係止凹所(42)を先端側面に形成した筒状の旋回体(4)と、旋回体(4)を上下方向に対し傾斜した姿勢に付勢保持する付勢部材(8)と、旋回体(4)の筒内に摺動可能に挿入された棒状の押圧部材(5)と、一端が押圧部材(5)の基端に回動可能に連結され、他端が基体(1)に回動可能に連結されて、旋回体(4)が傾斜姿勢から上下方向に沿った姿勢へ旋回するにつれて押圧部材(5)の先端(53)を係止凹所(42)内に進出させてロープ(R)に圧接させるリンク部材(6)とを備えている。
【0006】
本発明において、ロープ登攀補助具の係止凹所を、上下方向へ延びるロープに対して側方から嵌合係止させる。この状態でロープ登攀補助具に体重を掛けると、旋回体が傾斜姿勢から上下方向に沿った姿勢へ旋回させられ、これに伴い、リンク部材によって押圧部材の先端が係止凹所内へ進出させられてロープに圧接する。これにより、足がロープに吊り下げ保持される。ロープ登攀補助具にかけた体重を抜くと、旋回体が付勢部材の付勢力によって傾斜姿勢に戻され、押圧部材が旋回体内へ退入してその先端の係止凹所内への突出が解消される。これにより、ロープから係止凹所を離脱させることができる。このようなロープ登攀補助具によって左右の足を交互にロープに保持させることで、例えば登高器と併用して木等から垂下させたロープを速やかに登ることができる。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のロープ登攀補助具によれば、ロープを登る際のバランスがとりやすく、足をロープに保持させることも容易で、ロープを速やかに登ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1にはロープ登攀補助具(以下、単に補助具という)Dを装着した左足用靴Sの全体斜視図を示す。図1において、補助具Dはやや上方へ湾曲した板状の基体1を備え、基体1の中央には軸受け部材2が装着されている。軸受け部材2には上下位置に回転軸31,32が水平方向へ貫通設置されて、旋回体4の基端41が下側回転軸31に結合されている。旋回体4は図2に示すように内部を中空とした筒状体で、その先端部は側方から大きく抉られて係止凹所42になるとともに、先端43は係止凹所42に沿ってその開口を狭めるように湾曲するフック状となっている。
【0010】
旋回体4の筒内には、これに沿って直進摺動可能に棒状の押圧部材5が挿入されている。押圧部材5は図3に示すように、基端部が平行な対向壁51を形成した二股状となっており、これら対向壁51に設けた取付孔52間にピン体33(図2)が架設されている。軸受け部材2に設置された上側回転軸32に一端が結合されてリンク部材6が設けてあり、リンク部材6の他端に形成された長孔61内に上記ピン体33が挿通されてリンク部材6と押圧部材5が連結されている。
【0011】
軸受け部材2に設けた取付孔21(図2)に一端が挿入固定されて棒状のバネ部材8(図1)が設けてあり、バネ部材8は旋回体4の基端切欠き面411に沿って湾曲させられて、その側面が切欠き面411に弾接している。そしてバネ部材8の直線復元力によって、旋回体4は図1に示すように、上下方向に対し大きく傾斜した姿勢に付勢保持されており、この状態では押圧部材5は、その先端53の一部のみが僅かに係止凹所42内へ突出する退入位置にある。
【0012】
このような構造の補助具Dには、基体1裏面の通し穴(図示略)に輪状にした公知のバンド(テープスリング)Bを予め通しておく。このバンドBは靴Sの断面外周よりも大きくしてあり、これを靴Sのつま先から甲の位置まで入れて、図1に示すように補助具を靴Sの甲の上に位置させる。この後、以下に説明する締め具7でバンドBの弛みを解消して補助具Dを靴Sに装着する。締め具7の詳細を図4に示す。
【0013】
締め具7は長板状の基板71と、当該基板71に基部721の間隙が挿通されて基板71に沿って移動可能なブラケット72とを備えている。基板71上には本実施形態では板面の二箇所にストッパ部711,712が形成されている。なお、ブラケット72は締め具7を使用する前にストッパ部711,712を越えて移動させることが可能であり、靴Sの大きさに応じてブラケット72を適当に移動させておく。基板71の一端713裏面には、その一側縁(紙面向こう側)から立ち上げられて基板面と平行に他端縁(紙面手前側)方向へ延びる係止片714が形成されており、一方、基板71の他端715表面にはその両側縁から平行に立ち上がるガイド部716が形成されている。上記ブラケット72は基部721の両側に立壁722を形成した略U字形のもので、立壁722間には折返しピン723が架設されている。折返しピン723の端部が挿通される立壁722の取付孔724のうち一方には、その一部に径方向外方へ開放する切欠き725が形成されている。
【0014】
締め具7をバンドBに取り付ける場合には、図5に示すようにこれを裏向きにし、折返しピン723の一端を切欠き725を経て取付孔724から一旦離脱させてバンドBを折返しピン723の周囲に引っ掛け、この後再び折返しピン723の一端を取付孔724内に戻す。そして図6に示すように、基板71の他端715を中心に締め具7全体を持ち上げ回動させると、この部分でバンドBは折返し状態で重ねられてその実質長が短くなり、弛みが解消される(図1の状態)。この状態で、基板71の一端に形成された係止片714をバンドBの側縁から差し込んでこれに係止する。なお、右足用靴Sに装着する場合には、図7に示すように、以上に説明した補助具Dに対して対称形とした補助具Dを使用する。
【0015】
本発明の補助具Dを使用して木の枝から垂下させたロープを登る場合には、左右の靴Sに補助具Dを取り付けるとともに、両手に登高器をもってこれらをロープに係止する。続いて例えば左足の補助具Dの係止凹所42を、上下方向へ垂れたロープR(図1)に対して側方から嵌合係止させる。この状態で左足に体重を掛けると、旋回体4が傾斜姿勢から上下方向に沿った起立姿勢へ旋回させられる(図7)。これに伴い、リンク部材6(図2参照)によって押圧部材5の先端53が係止凹所42内へ進出させられてロープRに圧接する。これにより、左足がロープRに吊り下げ保持される。
【0016】
この後、右足を同様に補助具Dによって左足より高い位置でロープRに保持させる。続いて、登高器と右足の補助具Dで体重を支持しつつ身体を持ち上げ、左足にかけた体重を抜くと、左足の補助具Dの旋回体4がバネ部材の付勢力によって傾斜姿勢に戻され、押圧部材5が旋回体4内へ退入してその先端53の係止凹所42内への突出が解消される(図1参照)。これにより、係止凹所42をロープRから離脱させることができる。その後、左足を右足より高い位置に持ち上げて、ロープRにその係止凹所42を係止させ、左足に体重を掛けて押圧部材5を進出させて左足をロープに保持させた状態で、登高器と左足の補助具Dで体重を支持しつつ身体を持ち上げる。このような動作を繰り返すことによってロープRを登ることができる。
【0017】
本実施形態によれば、従来のような縄梯子ではなく、補助具Dによって直接ロープRに足を保持させるから、身体のバランスがとり易い。また、加重と抜重によってロープRへの補助具Dの係止ないし係止解消を容易に行うことができるから、ロープRへの足の保持およびその解消も簡易である。したがって、登高器と併用することによってロープを使用した木登りを速やかに行うことができる。なお、登高器に代えて、バンドB内に手先を差し込んでバンドBを握ることによって補助具Dを両手にそれぞれ装着し、左右の補助具Dの係止凹所42を交互にロープRに係止させるようにすれば、左右の足と左右の手に装着した補助具Dでロープを登攀することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示す、補助具を左足用靴に設けた状態の全体斜視図である。
【図2】補助具の部分断面斜視図である。
【図3】押圧部材の斜視図である。
【図4】締め具の全体斜視図である。
【図5】締め具の使用行程を示す斜視図である。
【図6】締め具の使用行程を示す斜視図である。
【図7】補助具を右足用靴に設けた状態の全体斜視図である。
【図8】作動時の補助具の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
D…補助具、1…基体、4…旋回体、41…基端、42…係止凹所、5…押圧部材、53…先端、6…リンク部材、8…バネ部材(付勢部材)、R…ロープ、S…靴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴に装着される基体と、前記基体に対して基端が回動可能に連結され、上下方向へ延びるロープに側方から係止される係止凹所を先端側面に形成した筒状の旋回体と、旋回体を上下方向に対し傾斜した姿勢に付勢保持する付勢部材と、旋回体の筒内に摺動可能に挿入された棒状の押圧部材と、一端が前記押圧部材の基端に回動可能に連結され、他端が前記基体に回動可能に連結されて、前記旋回体が傾斜姿勢から上下方向に沿った姿勢へ旋回するにつれて前記押圧部材の先端を前記係止凹所内に進出させて前記ロープに圧接させるリンク部材とを備えるロープ登攀補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−272309(P2008−272309A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121394(P2007−121394)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(507145330)
【Fターム(参考)】