説明

ローヤルゼリー含有液体組成物

【課題】ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を抑制し、長期間安定なローヤルゼリー含有液体組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ローヤルゼリー、並びに(b)ヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする液体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローヤルゼリーを配合した液体組成物に関し、医薬品、指定医薬部外品及び食品の分野に応用できるものである。
【背景技術】
【0002】
ローヤルゼリーは古くから栄養価の高い生薬として、健康食品や医薬品、指定医薬部外品として利用されてきた。その効果としては抗腫瘍、高脂血症や糖尿病の予防・改善、精神的疲労の予防・改善、抗酸化、老化抑制など種々の生理活性作用が報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
ローヤルゼリーは、医薬品、指定医薬部外品及び食品の分野に属する各種飲料に配合されているが、そのまま添加しても、含有されている蛋白質、脂質等が製造時の加熱殺菌によって凝集・沈殿を起こしたり、また、飲料のpHや他の配合成分であるクエン酸、乳酸などの酸類、多価フェノール、金属イオン等の影響によって、経時的に凝集、沈殿、相分離等を起こすことがある。飲料中のローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物は、有効性等に直接影響するものではないが、異物として消費者からのクレームの対象となることもあり、商品性という点では好ましいものではなかった。
【0004】
そこで、従来ローヤルゼリーを飲料等に配合する場合には、その飲料製品の外観を損なわないように、プロテアーゼにより可溶化処理する方法(特許文献1参照)などが提案されている。しかし、この可溶化による方法では、前処理として高濃度の分散剤と混合後、超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザー等の強力な分散装置が必要であり(特許文献2及び3参照)、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を抑制する簡便な方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−123119号公報
【特許文献2】特開平4−23956号公報
【特許文献3】特開平5−9125号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中島将次 New Food Industry,VOL3,No3,54,(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を簡易に抑制し、長期間保存しても安定なローヤルゼリー含有液体組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ローヤルゼリーにヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を配合することにより、沈殿や浮遊物の発生を抑制し、長期間保存しても安定なローヤルゼリー含有液体組成物を調製できることを見出した。
【0009】
かかる知見に基づく本発明の態様は、
(1)(a)ローヤルゼリー、並びに(b)ヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする液体組成物。
(2)ローヤルゼリーが、ローヤルゼリーのエタノール抽出物、又はローヤルゼリーのエタノールと水の混液抽出物である(1)に記載の液体組成物。
(3)ローヤルゼリーがローヤルゼリーチンキである(1)に記載の液体組成物。
(4)pHが1.5〜6である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の液体組成物。
(5)ローヤルゼリー含有液体組成物に、ヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を配合することを特徴とする、該液体組成物中の沈殿及び浮遊物の発生を抑制する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、液体組成物中のローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を簡易に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における「ローヤルゼリー」は、特に限定されるものではなく、例えば、「ローヤルゼリーの表示に関する公正競争規約」で定義されている「生ローヤルゼリー」、「乾燥ローヤルゼリー」、「調製ローヤルゼリー」のいずれも使用可能である。「生ローヤルゼリー」、又は「乾燥ローヤルゼリー」をエタノール又はエタノールと水の混液で抽出したエタノール抽出物又はエタノールと水の混液抽出物も使用可能である。また、日本薬局方の製剤総則のチンキ剤に該当するローヤルゼリーチンキ、又はそれに準じた方法で調製されたローヤルゼリーチンキも使用可能である。
【0012】
ローヤルゼリーの配合(含有)量は、ローヤルゼリーの配合目的により異なり、液体組成物中に均質に溶解又は配合できる量であれば特に制限はない。
【0013】
本発明における「ヒプロメロース」とは、セルロースのブドウ糖残基をメチルエーテル及びヒドロキシプロピルエーテルの形に置換したものである。ヒプロメロースは、1828、2208、2906及び2910の置換度タイプがある。置換度タイプの数字は、メトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基の順に含量規格範囲の中心値を並べて付けており、置換度タイプ2208の場合、メトキシ基の平均置換度は約1.1〜2.0、ヒドロキシプロポキシ基の平均付加モル数は約0.10〜0.34であり、それぞれ含量規格19.0〜24.0%(中心22%)、4.0〜12.0%(中心8%)である。
【0014】
本発明の液体組成物中におけるヒプロメロースの配合(含有)量は、ローヤルゼリーの1質量部に対して0.02質量部以上が好ましく、0.04質量部以上がさらに好ましく、0.08質量部〜20質量部であることがよりさらに好ましい。0.02質量部未満であるとローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を抑制する作用が充分でないことがあるからである。本発明において、ヒプロメロースは1種類でも、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
本発明における「プルラン」とは、Aureobasidium pullulansを培養するとき、菌体外に生産される中性単純多糖で、その構造はα−1・4結合による3個のグルコースよりなるマルトトリオースがα−1・6結合で繰り返し鎖状に結合したものである。
【0016】
プルランの配合(含有)量は、ローヤルゼリーの1質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましく、0.4質量部以上がよりさらに好ましく、1.0質量部〜20質量部であることが最も好ましい。0.1質量部未満であるとローヤルゼリーに起因する沈殿や浮遊物の発生を抑制する作用が充分でないことがあるからである。
【0017】
本発明の液体組成物はいずれのpHでも安定であるが、飲料として用いるには、特に酸性から中性域、pH1.5〜7、好ましくはpH1.5〜6とすることで服用性が良好である。このpHの調整には、可食性の酸を用いることができ、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、アスコルビン酸などの有機酸及びそれらの塩類、塩酸、リン酸などの無機酸及びそれらの塩類などが挙げられる。これらのpH調整剤は1種を用いるだけでなく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
また、本発明の液体組成物には、水、アルコール、ビタミン及びその塩類、ミネラル、アミノ酸又はその塩類、生薬又は生薬抽出物、カフェイン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、甘味剤、矯味剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、抗酸化剤、着色剤、香料等の飲食品または製剤に一般に使用される物質を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができ、常法により混合することで、飲料等の飲食品、シロップ剤、液剤などの経口製剤とすることができる。
【0019】
本発明における「液体組成物」には、内服液剤、ドリンク剤等の医薬品及び指定医薬部外品の他、栄養機能食品、特定保健用食品等の食品領域における各種飲料が含まれる。
【0020】
本発明の液体組成物を調製する方法は特に限定されるものではない。通常、ローヤルゼリー、並びにヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を含む各成分を適量の精製水で溶解した後、pHを調整し、更に精製水を加えて容量調整し、必要に応じて濾過、滅菌処理を施すことにより、ローヤルゼリー含有液体組成物として提供することができる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に何ら限定されるものではない。実施例で使用したローヤルゼリーチンキは、生ローヤルゼリーを乾燥後、エタノール(99.5)で抽出し、ろ過して得られたチンキ剤であって、生ローヤルゼリー1gから約1gのチンキ剤を得たものである。また、実施例で使用したヒプロメロースは、置換度タイプ2208である。
【0022】
実施例1−18
表1−1から1−3に示す処方の液体組成物を製造した。表1−1から1−3に記載の成分を精製水に溶解した後、希塩酸および/又は4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを1.5〜6.0に調整し、更に精製水を加えて100mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し殺菌後、実施例1〜18とした。
【0023】
これら実施例を5℃恒温槽及び65℃恒温槽にて4週間保管後、性状安定性を目視により評価した。表中の○は、商品性上問題が無いことを示し、×は商品性上問題となる浮遊物、又は沈殿があることを示す。
【0024】
【表1−1】

【0025】
【表1−2】

【0026】
【表1−3】

【0027】
実施例1−18は、ヒプロメロースを配合することにより、ローヤルゼリーに起因する沈殿及び浮遊物の発生が抑制されることが確認された。実施例1−18は製造直後は勿論のこと、長期間安定保管した場合であっても商品性上問題となる沈殿や浮遊物を生じることはなかった。
【0028】
実施例19−31
表2−1及び2−2に示す処方の液体組成物を製造した。表2−1及び2−2に記載の成分を精製水に溶解した後、希塩酸および/又は4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを1.5〜6.0に調整し、更に精製水を加えて100mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し殺菌後、実施例19−31とした。これらを5℃恒温槽及び65℃恒温槽にて4週間保管後、性状安定性を実施例1−18と同様の指標で評価した。
【0029】
【表2−1】

【0030】
【表2−2】

【0031】
実施例19−31は、プルランを配合することにより、ローヤルゼリーに起因する沈殿及び浮遊物の発生が抑制されることが確認された。実施例19−31は製造直後は勿論のこと、長期間安定保管した場合であっても商品性上問題となる沈殿や浮遊物を生じることはなかった。
【0032】
比較例1−6
表3に示す処方の液体組成物を製造した。表3に記載の成分を精製水に溶解した後、希塩酸および/又は4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを3.0に調整し、更に精製水を加えて100mLとした。これらをガラス瓶に充填してキャップを施し殺菌後、比較例1−6とした。これらを5℃恒温槽及び65℃恒温槽にて4週間保管後、実施例1−31と同様にして性状安定性を評価した。
【0033】
【表3】

【0034】
比較例1−6では、ヒプロメロース、プルランを配合していないので、ローヤルゼリーに起因する沈殿及び浮遊物の発生を長期間安定に抑制することができず、濁りや沈殿、浮遊物を生じた。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、沈殿や浮遊物の発生が抑制され、長期間安定に保存できるローヤルゼリー含有液体組成物を簡易に製造することが可能となったので、商品性の高いローヤルゼリー含有液体組成物を医薬品、指定医薬部外品及び食品の分野において提供することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ローヤルゼリー、並びに(b)ヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
ローヤルゼリーが、ローヤルゼリーのエタノール抽出物、又はローヤルゼリーのエタノールと水の混液抽出物である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
ローヤルゼリーがローヤルゼリーチンキである請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
pHが1.5〜6である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
ローヤルゼリー含有液体組成物に、ヒプロメロース、及びプルランから選ばれる少なくとも一種を配合することを特徴とする、該液体組成物中のローヤルゼリーに起因する沈殿及び浮遊物の発生を抑制する方法。