説明

ローラの製造方法

【課題】 表面が平滑な弾性層を生産性よく製造することのできるローラの製造方法を提供すること。
【解決手段】 液状ゴム組成物を、金型と金型内に装着された軸体2とで形成されたキャビティの常温における容積に対して95.4%以上100%未満の注入量で、前記キャビティに注入する工程と、前記キャビティに注入された前記液状ゴム組成物を加熱成形して、前記軸体2の外周面に弾性層3を形成する工程とを有するローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの製造方法に関し、さらに詳しくは、表面が平滑な弾性層を生産性よく製造することのできる、例えば画像形成装置に装着されるローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。
【0003】
これらの各種ローラは、通常、軸体を作製し、この軸体が装着された金型内に液状ゴム組成物を注入し、この液状ゴム組成物を加熱成形して、軸体の外周面に弾性層を形成することによって、製造される。例えば、特許文献1の請求項1には、「液状シリコーンゴムを成形金型内に射出注入し、硬化させて得られる導電性ゴムローラの製造方法において、該液状シリコーンゴムには、体積抵抗率が10〜1010Ω・cmの範囲の導電性フィラーが配合され、パルス制御手段を用いた該液状シリコーンゴムの射出工程で、該液状シリコーンゴムの射出量が予定の全射出量の85〜98%に達した時点で該液状シリコーンゴム材料の射出圧力が任意の設定値以下になるように該パルス制御手段を用いて射出速度をコントロールすることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法」が記載されている。
【0004】
このような、金型内に液状ゴム組成物を注入して加熱成形するローラの製造方法においては、液状ゴム組成物を金型内に注入するときに、液状ゴム組成物内に気体が出現することがある。気体が出現した液状ゴム組成物を加熱成形して弾性層を形成すると、出現した気体に由来する気泡が弾性層に発生し、及び/又は、気泡周辺の弾性層が陥没して、形成される弾性層は、その表面の平滑性を維持することができず、凸部と凹部とが混在する凹凸形状になってしまう。弾性層がこのような凹凸形状に形成されると、例えば、画像形成装置にローラを装着しても、ローラは所期の目的を達成することができず、高品質の画像を形成することができなくなる。したがって、ローラの製造方法においては、加熱成形される弾性層の平滑性を維持することができる条件及び方法が要求される。
【0005】
また、前記ローラの製造方法においては、形成される弾性層がその軸線方向にわたって外径が均一な高い外径精度を有していること等の形状安定性を確保できる条件及び方法が要求される。
【0006】
加熱成形される弾性層の平滑性及び/又は弾性層の形状安定性を維持することができる手段の一つとして、液状ゴム組成物を金型内に過剰に注入する手段が採られている。例えば、特許文献1の実施例(段落番号0012欄参照。)によれば、「内面形状が内径φ16mm、長さ260mmの金型本体に、・・・、φ8mm、長さ275mmの軸体を配置し、40ccの材料を射出している」。すなわち、この実施例によれば、金型と軸体とからなる、容積39.2cm((0.8×0.8−0.4×0.4)π×26)のキャビティに40ccの材料を射出しているから、材料は、前記キャビティの容積に対して約102%の割合で射出されている。
【0007】
このように、液状ゴム組成物を金型内に過剰に注入すれば、加熱成形される弾性層の平滑性及び/又は弾性層の形状安定性をある程度維持することができる可能性はあるが、液状ゴム組成物を過剰に使用するため、加熱成形後に弾性層に形成された金型跡、ウェルドライン及び/又は不要部分等のバリを大量に除去する必要があり、液状ゴム組成物の消費量が多く、また、バリの処分量も増大し、生産性に問題が生じていた。しかし、これまで、ローラの生産性を犠牲にしても、加熱成形される弾性層の平滑性及び/又は弾性層の形状安定性を維持することに注力されていた。
【0008】
【特許文献1】特開2006−95843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、表面が平滑な弾性層を生産性よく製造することのできるローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、金型と金型内に装着された軸体とで形成されたキャビティの常温における容積に対して95.4%以上100%未満の注入量で、液状ゴム組成物を前記キャビティに注入する工程と、前記キャビティに注入された前記液状ゴム組成物を加熱成形して、前記軸体の外周面に弾性層を形成する工程とを有するローラの製造方法であり、
請求項2は、前記金型は、筒状中空体と、前記筒状中空体の一端部に装着され、液状ゴム組成物を注入可能なスプルーを有する一端部駒と、前記筒状中空体の他端部に装着され、液状ゴム組成物を排出可能なベントを有する他端部駒とを備えた筒状金型である請求項1に記載のローラの製造方法であり、
請求項3は、前記液状ゴム組成物は、液状導電性ゴム組成物である請求項1又は2に記載のローラの製造方法であり、
請求項4は、前記液状導電性ゴム組成物は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である請求項3に記載のローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るローラの製造方法は、金型と軸体とで形成されたキャビティの容積に対して95.4%以上100%未満の注入量で液状ゴム組成物を注入し、この液状ゴム組成物を加熱成形するから、加熱成形により生じるバリの発生量を低減することができると共に、加熱成形される弾性層の平滑性をも維持することができる。したがって、この発明によれば、表面が平滑な弾性層を生産性よく製造することのできるローラの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係るローラの製造方法により製造されるローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された表面が平滑な弾性層3とを備え、所望により、図2に示されるように、弾性層3の外周面に形成されたコート層4とを備え、例えば、図5に示される画像形成装置等に配設される。
【0013】
このようなローラ1A及び1B(以下、ローラ1と称することがある。)は、例えば、従来の製造方法により製造されることができるが、金型と金型内に装着された軸体とで形成されたキャビティの常温における容積に対して95.4%以上100%未満の注入量で、液状ゴム組成物を前記キャビティに注入する液状ゴム組成物注入工程と、前記キャビティに注入された前記液状ゴム組成物を加熱成形して、前記軸体の外周面に弾性層を形成する弾性層成形工程とを含む、この発明に係るローラの製造方法によって製造されるのが、弾性層3を形成した後に外径及び/又は表面状態を調整する処理等を必須の処理としなくても表面が平滑な弾性層3が生産性よく形成される点で、好ましい。
【0014】
この発明に係るローラの製造方法においては、まず、軸体2を準備する。軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0015】
この発明に係る製造方法においては、後述する成形工程を行う前に、このようにして作製した軸体2にプライマーを塗布するプライマー塗布工程を行うこともできる。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はなく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でもアミノ基及び/又は水酸基を有するプライマーが好ましい。また、これらの樹脂を硬化及び/又は加硫する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0016】
また、この発明に係る製造方法においては、金型を準備する。弾性層成形工程に使用される金型は、軸体2を保持し、弾性層3よりもわずかに長い中空空間14、例えば、弾性層3の軸線長さに対して100%を超え103%程度以下の長さを有する中空空間14を有する金型であればよいが、中空空間14の内表面が鏡面構造とされた金型であるのが好ましく、このような特性を有する円筒状金型であるのが特に好ましい。具体的には、特に好ましい金型として、図3に示されるように、中空空間14を有する筒状中空体11と、筒状中空体11の一端部に装着され、液状ゴム組成物を注入可能なスプルー16を有する一端部駒12(以下、下端駒と称することがある。)と、前記筒状中空体11の他端部に装着され、液状ゴム組成物を排出可能なベント18を有する他端部駒13(以下、上端駒と称することがある。)とを備えた筒状金型10が挙げられる。なお、金型は、軸体2を装着したときに形成されるキャビティ20が所定の容積を有するように、中空空間14の径及び長さが決定される。
【0017】
この一端部駒12のスプルー16は、図3に示されるように、その形状が、原料入口側から中空空間14側に向かって広がった円錐台状等の、その軸線に直交する断面形状が中空空間14に向って徐々に拡大する円形又は楕円形等に形成されている。スプルー16における開き角は、通常の場合1〜10度であるのが好ましく、2〜8度であるのがより好ましく、3〜6度であるのが特に好ましい。スプルー16の開き角とは、スプルー16の中心を通る一端部駒12の断面図において、スプルー16の両側面を表す直線の交わる角度をいう。また、スプルー16の原料入口側(最も径が小さい部分)の直径は1〜10mmであるのが好ましく、2〜5mmであるのが特に好ましい。スプルー16をこのような形状にすることにより、液状ゴム組成物はスプルー16から中空空間14内に静かに、かつ滑らかに流入し、液状ゴム組成物内に気泡が発生することを防止することができる。前記他端部駒13のベント18の形状は、図3に示されるように、原料流出側から中空空間14側に向かって広がった円錐台状等の、その軸線に直交する断面形状が中空空間14に向って徐々に拡大する円形又は楕円形等に形成されている。ベント18の形状は、前記スプルー16の形状と基本的に同様である。ベント18は、液溜り部19に接続している。この液溜り部19は、過剰な液状ゴム組成物が中空空間14から流出した場合に、一時貯蔵する凹部である。
【0018】
さらに、この発明に係る製造方法においては、液状ゴム組成物を準備する。弾性層3を形成する液状ゴム組成物を構成するゴムは、液状ゴムであればよく、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等の液状ゴムが挙げられる。これらのゴムは、付加硬化型であるのが、加熱成形時の寸法精度に優れる点で、好ましい。
【0019】
液状ゴム組成物は、ローラの用途等に応じて、導電性付与剤を含有する液状導電性ゴム組成物とされてもよい。導電性付与剤としては、例えば、導電性粉末、イオン導電性物質等が挙げられる。導電性粉末としては、より具体的には、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、又は、金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられ、イオン導電性物質としては、より具体的には、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等が挙げられる。導電性付与剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて、所望の電気抵抗値を示すように、適宜の含有量で添加される。
【0020】
液状ゴム組成物は、ゴム又はゴム及び導電性付与剤に加えて、通常、ゴム組成物に含有される各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、硬化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0021】
液状導電性ゴム組成物は、特に、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物であるのが、表面が平滑な弾性層3を容易に成形することができる点で、好ましい。液状導電性ゴム組成物は、例えば、(A)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(C)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材と、(D)導電性付与剤と、(E)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
【0022】
前記(A)オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式(1)RSiO(4−a)/2で示される化合物が好適である。ここで、Rは、互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
【0023】
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
【0024】
は、そのうちの少なくとも2個は、炭素原子数2〜8、好ましくは炭素原子数2〜6のアルケニル基、特にビニル基であるのが好ましく、また、その90%以上がメチル基であるのが好ましい。前記アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10−6mol/gより少ないと、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、5.0×10−3mol/gを超えると、圧縮永久ひずみが低下することがあるだけでなく、架橋後のゴムが脆くなることがある。前記アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖内のケイ素原子に結合していても、また、両者のケイ素原子に結合していてもよい。
【0025】
前記オルガノポリシロキサン(A)は、基本的には、ジオルガノシロキサン単位を繰り返し単位とする主鎖に、トリオルガノシロキシ基が結合した分子鎖両末端を有する直鎖状構造を有するが、部分的に分岐状構造又は環状構造等となっていてもよい。
【0026】
オルガノポリシロキサン(A)の重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。平均重合度が100未満であると、架橋後のゴム弾性が不十分となることがあり、一方、800を超えると、オルガノポリシロキサン(A)が生ゴム状になり、圧縮永久ひずみが低下することがある。
【0027】
前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式(2)RSiO(4−b−c)/2で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子中に存在するケイ素原子に結合した水素原子が前記(A)オルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合したアルケニル基とヒドロシリル付加反応して、架橋する硬化剤(架橋剤)として作用する。
【0028】
前記平均組成式(2)において、前記Rは炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。前記Rは、前記前記Rと同様であるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、bは好ましくは0.8〜2.0、cは好ましくは0.01〜1.0、b+cは好ましくは1.0〜2.5を満足する正数であり、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状又は三次元網目状のいずれの構造であってもよい。前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状であるのが好ましい。なお、水素原子が結合するケイ素原子は、分子鎖末端、分子鎖内のいずれにあってもよく、両方にあってものであってもよい。
【0029】
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。前記水素原子の含有量が0.001mol/g未満であると、架橋が不十分でゲル状になることがあり、一方、0.017mol/gを超えると、架橋密度が高くなりすぎて、架橋後のゴムが脆くなることがある。
【0030】
この(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0031】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が0.1質量部未満であると、架橋が不十分でゲル状になり、ゴム状の硬化物を与えることができないことがあり、一方、30質量部を越えると、硬化物の強度と耐圧縮永久ひずみが著しく低下することがある。また、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
【0032】
前記(C)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm、好ましくは0.15〜0.45g/cmである。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、一方、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cmより小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、一方、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
【0033】
このような無機質充填材としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
【0034】
無機質充填材の配合量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。前記配合量が5質量部未満であると、十分なローラ耐久性が発現しないことがあり、一方、100質量部を越えると、圧縮永久ひずみが低下すると共に、均一に配合することが困難になることがある。
【0035】
また、無機質充填材(C)は、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されてもよい。これらの表面処理は、無機質充填材自体を予め処理しても、又はオイルと無機質充填材との混合時に処理を行ってもよい。
【0036】
無機質充填材(C)の混合方法は、常温でプラネタリーミキサー又はニーダー等の機器を用いて、前記(A)オルガノポリシロキサン及び前記(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと混合してもよいし、又は、100〜200℃の高温で混合してもよい。
【0037】
なお、前記無機質充填材(C)以外にも、例えば、石英粉、球状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機粉体を、低圧縮永久ひずみ、経時で安定した体積抵抗率、ローラ耐久性を損なわない範囲で添加してもよい。特に圧縮永久ひずみ及び体積抵抗率の経時変化に影響が大きいヒュームドシリカ及び沈降性シリカは、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、8質量部以下、特に0〜5質量部を配合するのが好ましい。
【0038】
前記(D)導電性付与剤については既に説明した通りである。前記(D)導電性付与剤の配合量は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の硬化物が、10kΩ・m以下、好ましくは0.1〜10kΩ・m、特に好ましくは1Ω・m〜5kΩ・m以下の体積抵抗率を有する量である。具体的には、導電性付与剤の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、0.5〜50質量部であるのが好ましく、特に1〜20質量部であるのが好ましい。配合量が0.5質量部未満であると、所望の導電性を得ることができないことがあり、一方、50質量部を超えると、圧縮永久ひずみが低下することがある。
【0039】
前記(E)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、前記(A)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
【0040】
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性及び成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物、各種反応制御剤等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
【0041】
前記液状導電性ゴム組成物及び前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、二本ローラ、三本ローラ、ローラミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、ゴム及び導電性付与剤、所望により添加された各種添加剤等が均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0042】
前記液状導電性ゴム組成物及び前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、後述する金型に容易にかつ均質に注入することができる点で、例えば、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、10〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。前記液状導電性ゴム組成物及び前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の粘度は、通常、それらに含まれる各成分の種類及び/又は配合量によって、調整することができる。必要により、溶剤等により、粘度を調整することもできる。
【0043】
この発明に係る製造方法における液状ゴム組成物注入工程においては、図4に示されるように、作製した軸体2と準備した金型10とを組み立てる。すなわち、図4に示されるように、円筒状中空体11の下側に下端駒12、その上側に上端駒13を配置し、軸体2を円筒状中空体11に通して、軸体2の両端部を下端駒12の保持穴15と上端駒13の保持穴17とで挟持するようにして、金型10を組み立てる。言うまでもないが、軸体2は、中空空間14の軸線に一致するように配置される。このとき、金型10と金型10内に装着された軸体2とで形成されたキャビティ20の常温(例えば、25℃)における容積を求めておく。
【0044】
次いで、キャビティ20の常温における容積に対して95.4%以上100%未満の容積の液状ゴム組成物を金型10における下端駒12のスプルー16から金型10とこの金型10に保持された前記軸体2とで形成されたキャビティ20内に、定法により注入又は射出する。
【0045】
このときの注入量は、前記範囲であれば、この発明の目的を達成することができるが、高い歩留まりでこの発明の目的を十分に達成することができる点で、キャビティ20内に注入される液状ゴム組成物は、キャビティ20の常温における容積に対して、95.4〜99.9%であるのが好ましく、97.4〜99.9%であるのがより好ましく、99.4〜99.9%であるのが特に好ましい。
【0046】
この発明において、前記注入量以外の注入条件は、特に限定されないが、以下の注入条件を満足すると、例えば、液状ゴム組成物内に溶解又は混入していた気体成分が液状ゴム組成物から分離して、液状ゴム組成物内に気泡が発生すること、液状ゴム組成物を金型10に注入する際に、金型10及び/又は液状ゴム組成物に気体が外部から混入すること等を防止することができ、その結果、キャビティ20に注入された液状ゴム組成物内に気泡が出現することを防止することができると共に、液状ゴム組成物を均一にキャビティ20に注入することができる点で、好ましい。
【0047】
例えば、液状ゴム組成物をキャビティ20に注入するときの注入速度は、0.001〜1000mL/secであるのが好ましく、0.01〜100mL/secであるのがより好ましく、0.1〜50mL/secであるのが特に好ましい。液状ゴム組成物をキャビティ20に注入するときの注入速度が前記範囲内であると、キャビティ20内に注入された液状ゴム組成物内に気体が出現することを効果的に防止することができると共に、液状ゴム組成物を均一に注入することができる。
【0048】
また、液状ゴム組成物をキャビティ20に注入するときの液状ゴム組成物の温度は、液状ゴム組成物の粘度が調整されることにより、キャビティ20内に注入された液状ゴム組成物内に気体が出現することを効果的に防止することができると共に、液状ゴム組成物を均一に注入することができる点で、例えば、85℃以下であるのが好ましく、0〜60℃であるのがより好ましく、5〜40℃であるのが特に好ましい。
【0049】
注入方法は、定法であれば何れの方法も採用することができ、例えば、射出成形機による注入、注入機による注入等が挙げられる。
【0050】
このようにして、所定量の液状ゴム組成物を、気泡の発生も巻き込みもなく、また、均一にキャビティ20内に注入することができる。
【0051】
この発明に係る製造方法における弾性層成形工程においては、次いで、キャビティ20内に注入された液状ゴム組成物を加熱成形する。キャビティ20内に注入された液状ゴム組成物を加熱成形する条件は、液状ゴム組成物が加硫可能な条件であればよい。液状ゴム組成物として、前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を使用する場合は、例えば、加熱温度は100〜300℃、好ましくは110〜200℃に設定することができ、加熱時間は1分から1時間、好ましくは3〜30分間に設定することができる。
【0052】
金型10を加熱する方法は、前記液状ゴム組成物を加熱成形することのできる条件に金型ごと加熱することができる加熱手段であればよく、例えば、加熱オーブン等の加熱器、熱風加熱器、遠赤外線又は赤外線ヒータ等の遠赤外線加熱器又は赤外線加熱器、マイクロ波加熱炉、高周波加熱器及び過熱水蒸気炉等が挙げられる。
【0053】
この発明に係る製造方法においては、圧縮永久ひずみを低下させることができ、また、液状ゴム組成物として前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を選択した場合には、低分子シロキサン成分を低減させることができる等の点で、弾性層成形工程後に、さらに、例えば、120〜250℃の加熱温度で、30分から70時間程度の二次加硫を行うこともできる。
【0054】
この発明に係る製造方法においては、所望により、弾性層成形工程後に、又は、後述するコート層形成工程後に、弾性層成形工程で形成された弾性層3の後処理工程を行うことができる。弾性層3の後処理としては、例えば、弾性層3を所定の軸線方向の長さに調整する弾性層切断工程、弾性層3の表面状態を調整する弾性層表面調整工程等が挙げられる。前記弾性層切断工程及び弾性層表面調整工程は、例えば、研磨装置、研削装置及び切削装置等の機械処理装置又は器具等を用いて、弾性層3を所望の寸法に調整し、及び/又は、弾性層3の表面状態を所望の状態等に調整する工程である。後処理は、例えば、研磨加工、研削加工及び切削加工等が挙げられる。
【0055】
この発明に係る製造方法においては、所望により、弾性層成形工程により形成された弾性層3の外周面に、コート層4を形成することもできる。コート層4を形成する場合には、弾性層3の外周面に紫外線処理及び/又はプライマーを塗布してから、コート層4を形成することが好ましい。弾性層3の外周面に紫外線処理及び/又はプライマーを塗布することにより、弾性層3の外周面とコート層4との密着性を向上させることができる。紫外線処理及び/又はプライマーの塗布は、それぞれ単独で実施してもよいが、両方を組み合わせて実施することがより好ましい。コート層4は、後述する材料を所望により溶剤等に溶解し、定法、例えば、スプレーコーティング、ディッピング、インモールドコート法等によって、弾性層3の外周面に塗布され、後述する材料を硬化及び/又は加硫して、形成される。また、コート層4は、予め円筒状に成形されたシュリンクチューブ内に弾性層3を挿入して、シュリンクチューブを加熱収縮させることによって、形成することもできる。コート層4は、後述する材料を所望により溶剤等に溶解し、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、弾性層3の外周面に塗布され、前記材料を硬化及び/又は加硫して、形成される。コート層4を形成する材料としては、特に制限するものではないが、図5に示される画像形成装置等にローラ1Bが使用される場合には、ローラ1Bは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。コート層4は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。
【0056】
このようにして、前記軸体2の外周面に、表面が平滑で形状安定性に優れた弾性層3を生産性よく形成することができる。
【0057】
すなわち、弾性層3は、キャビティ20に注入する液状ゴム組成物の容積が前記範囲内にあるから、弾性層成形工程で成形される弾性層3の不要部分(この発明において、バリと称することがある。)を大きく切断することがなく、液状ゴム組成物の使用量及びバリ切断量をいずれも低減させることができ、液状ゴム組成物の使用量に対する生産性が大幅に改善される。
【0058】
また、弾性層3は、液状ゴム組成物をキャビティに注入するときに出現した気泡に由来する凹部及び凸部がなく、その外周面全域にわたって平滑な表面を有し、また、その軸線方向にわたって均一な外径を有し、形状安定性にも優れる。したがって、弾性層成形工程で成形される弾性層3を後処理しなくてもよく、又は、後処理する場合にも、後処理により除去される弾性層3の量を低減することができる。
【0059】
次に、この発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラを備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図5を参照して、説明する。
【0060】
この発明に係る画像形成装置30は、図5に示されるように、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31を帯電させる帯電手段32例えば帯電ローラと、像担持体31の上方に設けられ、像担持体31に静電潜像を形成する露光手段33と、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に一定の層厚で現像剤42を供給し、静電潜像を現像する現像手段40と、像担持体31の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体31から記録紙36上に転写する転写手段34例えば転写ローラと、記録紙36の搬送方向の下流に設けられ、記録紙36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させる定着手段35例えば定着器と、記録紙36に転写されず像担持体31に残留した現像剤42及び/又は像担持体31に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段37とを備えている。すなわち、像担持体31は、その回転方向において、上流側から順に、クリーニング手段37、帯電手段32、露光手段33、現像手段40及び転写手段34によって、各作用を受ける。この画像形成装置30は、像担持体31の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段37と帯電手段32との間又は転写手段34とクリーニング手段37との間に、備えていてもよい。
【0061】
画像形成装置30における前記現像手段40は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されている。例えば、前記現像手段40は、図5に示されるように、像担持体31に対向する位置に開口部を有し、現像剤42を収納する現像剤収納部41と、現像剤収納部41内に設けられ、現像剤42を均一に攪拌する攪拌機43と、現像剤収納部41の開口部に、像担持体31に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体31に現像剤42を一定の層厚で現像剤42を供給する回転可能な現像剤担持体44と、現像剤担持体44の上方に設けられ、現像剤担持体44に当接して現像剤42の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。具体的には、現像剤規制部材45は、ブレード46が所定の圧力で現像剤担持体44の表面に当接するように、ブレード46が湾曲されて、現像手段40の開口部に、配置されている。前記現像剤収納部41に収納される現像剤42、すなわち、この発明に係る画像形成装置30に使用される現像剤42としては、摩擦により帯電可能で、記録紙36に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0062】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電手段32の帯電ローラ、現像手段40の現像ローラ、転写手段34の転写ローラ、定着手段35の定着ローラ、クリーニング手段のクリーニングローラ(図示しない。)、加圧ローラ(図示しない。)、紙送り搬送ローラ(図示しない。)等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されている。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ及び定着ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されている。
【0063】
この発明に係る画像形成装置30は、次にように作用する。まず、像担持体31が、図5の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段37により、その表面の現像剤42及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段32により、一様に帯電される。次いで、露光手段33により画像が露光され、像担持体31の表面に静電潜像が形成される。
【0064】
一方、現像手段40において、攪拌機43により均一に混合された現像剤42が、現像剤担持体44に供給され、現像剤担持体44が図6に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体44の表面に付着した現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤担持体44に当接した現像剤規制部材45のブレード46との間を通過する。このとき、現像剤42は、所望の層厚に規制されると共に、現像剤42を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤42が、現像剤担持体44と現像剤規制部材45のブレード46との間を通過することによって、現像剤担持体44の表面上における現像剤42の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材45のブレード46と現像剤担持体44及び/又は現像剤42との摩擦帯電等により、現像剤担持体44上の現像剤42が所望のように帯電される。
【0065】
次いで、このようにして現像手段40から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42が像担持体31に供給され、像担持体31に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段40は、像担持体31に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤42を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体31上に現像された現像剤像は、図示しない搬送手段により、像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録紙36上に、像担持体31及び/又は転写手段34によって転写される。次いで、現像剤像が転写された記録紙36は、図示しない搬送手段により定着手段35に搬送され、定着手段35により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として記録紙36に定着される。このようにして、記録紙36に画像を形成することができる。
【0066】
この発明に係る画像形成装置30は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、クリーニングローラ(図示しない。)、加圧ローラ(図示しない。)、紙送り搬送ローラ(図示しない。)等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されているので、この発明に係るローラの製造方法によって製造されたローラ1が装着されたローラは、被当接体に対して均一に作用することができ、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0067】
この発明に係る画像形成装置30において、像担持体31、帯電手段32、露光手段33、転写手段34、定着手段35及びクリーニング手段37は、図5に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0068】
また、画像形成装置30は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は、現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【0069】
また、画像形成装置30において、現像剤42は、一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。二成分系の現像剤は、通常、10〜25μC/g程度の帯電特性を有している。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
まず、図3に示される金型を準備した。すなわち、図3に示される円筒状中空体11、下端駒12及び上端駒13からなり、直径(外径)35mm、(内径)20.7mm、長さ240mmの中空空間14を有する金型10を作製した。下端駒12及び上端駒13はそれぞれ25mmの肉厚を有し、その内側中心部に直径7.5mmの保持穴15及び17が形成されている。また、下端駒12は、その中心軸から8.25mmの位置に中心軸を持つ円錐台形のスプルー16が形成されており、このスプルー16は、原料入口側の直径が2.5mm、中空空間14側の直径が3.0mmとされている。上端駒13は、図3に示されるように、その中心軸から8.25mmの位置に中心軸を持つ円錐台形のベント18及びその上部に液溜り部19が設けてあり、液溜り部19の深さは20mm、ベント18は長さ5mm、液溜り部19側の開口径が2.5mm、中空空間14側の開口径が3.0mmとされている。スプルー16とベント18はそれぞれ8個ずつ円周方向に均等に配置されている。なお、円筒状中空体11の内表面を定法に従い鏡面処理した。
【0071】
次いで、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(SUM22製、直径7.5mm、長さ281.5mm)をトルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体2の表面にプライマー層を形成した。
【0072】
次いで、前記金型10に離型剤(ダイキン工業株式会社製 商品名「ダイフリー」)を塗布して、下端駒12の保持穴15と上端駒13の保持穴17とで作製した軸体を中空空間14の中央に保持して、金型10を組み立てた。このとき、金型10と軸体2とで形成されるキャビティ20の容積は、70.2cm([(2.07/2)−(0.75/2)]×π×24)であった。
【0073】
一方、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を以下のようにして調整した。すなわち、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(A)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(C)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(D)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(B)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(E)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練した。
【0074】
次いで、前記キャビティ20に、25℃に調節した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物67.0cm(前記キャビティ20の容積に対して95.4%)を、1つのスプルー16から6.7mL/secの注入速度で、注入した。
【0075】
次いで、金型10の外部から、150℃に加熱して、同温度で10分間保持し、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を加熱成形した。次いで、金型10を放冷して成形体を金型10から取り出し、加熱炉で200℃、4時間にわたって二次加熱した後、スプルー16及びベント18の部分のゴムが付着している部分を切断除去して、軸線長さが235mmの弾性層を備えたローラを作製した。
【0076】
このローラの外径をレーザー測長機で測定した。測定位置は弾性層の全長を均等に4等分した5点(弾性層の円周)とした。5点の平均外径は20.00mmであった。
【0077】
このようにして、ローラを100本製造したところ、成形体の切断除去部分は、100本平均で、キャビティ20の容積に対して約5.2%(約3.7cm)であった。また、弾性層の表面を目視により評価したところ、その表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは27本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは73本であった。
【0078】
(実施例2)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、96.4%(67.7cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。このローラの5点の平均外径は20.00mm、成形体の切断除去部分の平均量はキャビティ20の容積に対して約6.2%であり、弾性層の表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは33本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは67本であった。
(実施例3)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、97.4%(68.4cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。このローラの5点の平均外径は20.00mm、成形体の切断除去部分の平均量はキャビティ20の容積に対して約7.2%であり、弾性層の表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは67本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは33本であった。
(実施例4)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、98.4%(69.1cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。このローラの5点の平均外径は20.00mm、成形体の切断除去部分の平均量はキャビティ20の容積に対して約8.2%であり、弾性層の表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは84本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは16本であった。
(実施例5)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、99.4%(69.8cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。このローラの5点の平均外径は20.00mm、成形体の切断除去部分の平均量はキャビティ20の容積に対して約9.2%であり、弾性層の表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは98本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは2本であった。
【0079】
(比較例1)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、95%(66.7cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。形成された弾性層は、その軸線方向の長さが235mm未満であり、所定の弾性層を形成することができなかった。
(比較例2)
付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の注入量を、100.4%(70.5cm)に変更した以外は、実施例1と同様にして、ローラを作製した。このローラの5点の平均外径は20.00mm、成形体の切断除去部分の平均量はキャビティ20の容積に対して約10.2%であり、弾性層の表面に凹凸を確認できず、平滑であったローラは98本であり、その表面にわずかな凹凸が認められたローラは2本であった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、ローラの別の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、この発明に係る製造方法に好適に用いられる金型を組み立てた状態を示す断面図である。
【図4】図4は、この発明に係る製造方法に好適に用いられる金型に軸体を装着したときの状態を示す断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
1A、1B ローラ
2 軸体
3 研磨レス弾性層
4 コート層
10 金型
11 円筒状中空体
12 下端駒
13 上端駒
14 中空空間
15、17 保持穴
16 スプルー
18 ベント
18d 開口
19 液溜り部
20 キャビティ
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 転写紙
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 攪拌機
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
46 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と金型内に装着された軸体とで形成されたキャビティの常温における容積に対して95.4%以上100%未満の注入量で、液状ゴム組成物を前記キャビティに注入する工程と、
前記キャビティに注入された前記液状ゴム組成物を加熱成形して、前記軸体の外周面に弾性層を形成する工程とを有するローラの製造方法。
【請求項2】
前記金型は、筒状中空体と、前記筒状中空体の一端部に装着され、液状ゴム組成物を注入可能なスプルーを有する一端部駒と、前記筒状中空体の他端部に装着され、液状ゴム組成物を排出可能なベントを有する他端部駒とを備えた筒状金型である請求項1に記載のローラの製造方法。
【請求項3】
前記液状ゴム組成物は、液状導電性ゴム組成物である請求項1又は2に記載のローラの製造方法。
【請求項4】
前記液状導電性ゴム組成物は、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である請求項3に記載のローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−114381(P2008−114381A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297001(P2006−297001)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】