説明

ローラコンベヤ装置

【課題】従来より簡易な構成にすることができるだけでなく、柔らかい被搬送物でもスムーズに搬送することができるローラコンベヤ装置を提供すること。
【解決手段】複数配列されて被搬送物を搬送するローラ5と、前記ローラ5の中央部において前記ローラ5の配列方向Dに隣り合うローラ5にわたって取り付けられる複数の連結ベルト6と、前記ローラ5を回転させる駆動部と、前記配列方向Dにおける前記ローラ5の位置を変更させる位置変更手段と、前記位置変更手段によって、前記配列方向Dにおける前記連結ベルト6のテンションを調整する位置に変更された前記ローラ5を固定または解除する固定解除手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のローラによって被搬送物を搬送するローラコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被搬送物を搬送するものとして、パレタイザの供給コンベヤを含め種々のローラコンベヤ装置が利用されている(例えば、特許文献1参照。)。
これらローラコンベヤ装置としては、例えば図8および図9に示すような、以下の構成が知られている。
ローラコンベヤ装置100は、直方体形状の本体部102を備えている。本体部102の底面には、床に設置するための設置部101が設けられている。本体部102の上面は開放されいる。そして、この上面には、本体部102の幅方向の全長にわたって延びる複数のローラ104が設けられている。これら複数のローラ104は、本体部102の奥行方向に所定の間隔を空けて配列されている。さらに、これら複数のローラ104の間の下方には、複数の補助ローラ105が設けられている。
【0003】
また、本体部102の上面のうち、奥行方向の手前側(搬送方向Mの下流側)には、ローラ104上を搬送される被搬送物Bを止めるストッパ部材109が設けられている。
さらに、本体部102の内方には、ローラ104を回転させる駆動部103が設けられている。そして、駆動部103には、連結ベルト108が架け渡されており、この連結ベルト108は、さらに複数のローラ104の長手方向の一端部において架け渡されている。具体的には、連結ベルト108は、駆動部103を介して、複数のローラ104と補助ローラ105とにわたって交互に櫛状に架け渡されている。
なお、連結ベルト108がローラ104の長手方向の一端部において架け渡されているのは、連結ベルト108のテンションにより、ローラ104が奥行方向にたわんでしまうことを防止するためである。
また、符号200は、マニピュレータを示している。マニピュレータ200は、矩形板状の把持本体部201と、この把持本体部201の幅方向の両端辺部に設けられた複数の把持爪部202とを備えている。
【0004】
このような構成のもと、以下のようにして被搬送物Bが搬送される。
すなわち、駆動部103が駆動されると、連結ベルト108を介してローラ104と補助ローラ105とが回転する。これにより、搬送方向Mの上流から被搬送物Bが搬送されてくると、ローラ104の回転により、被搬送物Bが下流側に搬送される。そして、被搬送物Bが本体部102の下流側の端部に到達すると、不図示の検出装置が被搬送物Bを検出し、駆動部103の駆動を停止する。なお、このとき、被搬送物Bがストッパ109に当接することにより、当該被搬送物Bが確実に止められる。
【0005】
それから、本体部102の上方に配されたマニピュレータ200が下方に降ろされて、把持爪部202が、被搬送物Bを把持する。このとき、把持爪部202は、搬送方向Mに隣り合うローラ104同士の間を移動するものの、連結ベルト108が櫛状に架け渡されていることから、連結ベルト108に干渉することはない。
そして、把持爪部202が被搬送物Bを把持した状態で、マニピュレータ200が上昇し、さらに他の搬入口まで運ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−197104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなローラコンベヤ装置100では、連結ベルト108と把持爪部202との干渉を防止するために、補助ローラ105などが必要となってしまい、部品点数が増大し構造が複雑になってしまうという問題がある。
また、被搬送物Bが柔らかい物であった場合、被搬送物Bが自重により、ローラ104の間において下方に垂れ下がってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、従来より簡易な構成にすることができるだけでなく、柔らかい被搬送物でもスムーズに搬送することができるローラコンベヤ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、複数配列されて被搬送物を搬送するローラと、前記ローラの中央部において前記ローラの配列方向に隣り合うローラにわたって取り付けられる複数の連結ベルトと、前記ローラを回転させる駆動部と、前記配列方向における前記ローラの位置を変更させる位置変更手段と、前記位置変更手段によって、前記配列方向における前記連結ベルトのテンションを調整する位置に変更された前記ローラを固定または解除する固定解除手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、被搬送物が柔らかい物であっても、ローラの中央部において連結ベルトが下方から被搬送物を支持することができる。そのため、被搬送物の垂れ下がりを防止することができ、被搬送物をスムーズに効率よく搬送することができる。
また、連結ベルトがローラの中央部に設けられていることから、把持部の把持爪部などが連結ベルトに干渉することを防止することができ、従来の補助ローラなどの部品を減少させることができる。
さらに、連結ベルトがローラの中央部に設けられていることから、ローラが配列方向にたわむことが考えられるが、位置変更手段と固定解除手段により、ローラを配列方向に位置変更して固定することができ、ローラの搬送方向のたわみを調整することができる。
【0011】
また、本発明は、前記ローラの長手方向の両端に設けられて、前記ローラが回転可能に取り付けられるコンベヤフレームを備え、前記位置変更手段は、前記コンベヤフレームにおいて前記配列方向に延ばされ、かつ前記ローラの軸が貫通する貫通長孔を備え、前記固定解除手段は、前記貫通長孔を貫通した前記ローラの軸を回転可能に支持する支持孔と、前記支持孔の中心からの距離寸法がそれぞれ異なり、かつ前記コンベヤフレームの被取付部に選択的に取り付けられる複数の取付部とを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、複数の取付部を選択的に被取付部に取り付けるだけで、ローラの軸の配列方向における位置を変更した状態で、ローラをコンベヤフレームに容易に取り付けることができる。
【0013】
また、本発明は、前記被取付部が、前記支持孔の近傍に設けられたネジ穴であり、前記取付部が、貫通孔からなる取付貫通孔であり、前記固定解除手段は、前記取付貫通孔が前記ネジ穴に選択的に配されて、前記取付貫通孔を貫通して前記ネジ穴に締められるネジを備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ネジ穴からネジを外してローラの軸を配列方向にスライドさせるという簡易な動作だけで、ローラの位置変更を容易に行うことができるだけでなく、ネジ穴にネジを締めるだけで、容易にローラを固定することができる。
【0015】
また、本発明は、複数の前記取付部が、前記支持孔の周辺に前記距離寸法の順に周方向に設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、取付部を回転させて被取付部に一致させるという簡易な動作だけで、ローラの位置変更を大きい距離から小さい距離へと(または小さい距離から大きい距離へと)容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明は、前記支持孔と前記取付部とが設けられた取付本体部を備え、前記取付本体部に、当該取付本体部の表裏を識別するための識別部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、識別部を識別するだけで、取付本体部の表裏を容易に認識することができ、取付本体部の取付作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
また、本発明は、前記被取付部が、前記支持孔に対して前記配列方向に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、取付部と被取付部による取付耐性を増大させることができる。
【0021】
また、本発明は、前記被取付部が、前記支持孔に対して前記配列方向の上流側に設けられていることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、ローラが配列方向の下流側に引っ張られたとしても、配列方向の上流側で引っ張り力によって抗することができ、取付部と被取付部による取付耐性をさらに増大させることができる。
【0023】
また、本発明は、前記駆動部に駆動ベルトを介して連結され、前記ローラの長手寸法より小さくされた駆動ローラを備え、前記駆動ローラが、前記ローラの長手方向の中央に配置され、下流側の前記ローラにわたって前記連結ベルトが架け渡されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、駆動ローラの剛性を上げることができ、駆動ローラの回転力をローラに適切に伝えることができる。そのため、迅速かつ確実に被搬送物を搬送することができる。
【0025】
また、本発明は、前記駆動ローラが、前記ローラに対して下流側に設けられており、前記駆動ローラの上流側に、前記被搬送物を止めるストッパが設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、長手寸法が小さいために被搬送物の搬送に寄与しにくい駆動ローラを搬送には直接利用せず、上流のローラに対して被搬送物の搬送を直接行わせることにより、被搬送物の搬送を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、従来より簡易な構成にすることができるだけでなく、柔らかい被搬送物でもスムーズに搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態におけるローラコンベヤ装置を示す図であって、支持部材を破断した様子を示す平面図である。
【図2】図1のローラコンベヤ装置を側面から示す図であって、側壁部を透過させた様子を示す側面図である。
【図3】図1のP1−P1矢視図である。
【図4】図1のP2−P2矢視図である。
【図5】図1の取付部品を拡大して示す平面図である。
【図6】図2のコンベヤフレームの一部を拡大して示す側面図である。
【図7】図6の軸部をスライドさせ、取付部品を取り付けた様子を示す側面図である。
【図8】従来のローラコンベヤ装置を示す説明図である。
【図9】従来のローラコンベヤ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態におけるローラコンベヤ装置について、図面を参照して説明する。
図1から図4に示すように、ローラコンベヤ装置1は、直方体形状の本体部2を備えている。なお、符号Wは本体部2の幅方向を示し、符号Dは本体部2の奥行方向(配列方向)を示し、さらに符号Hは本体部2の高さ方向を示している。また、被搬送物Bは、奥行方向Dの奥側から手前側に向かって(図1に示す右から左に向かって)搬送されるものであり、奥行方向Dのうち奥側から手前側の向きを搬送方向Mとする。
本体部2の底面には、床に設置するための設置部4が設けられている。また、本体部2の幅方向Wの両側壁部2aには、上方に突出したコンベヤフレーム10が奥行方向Dに一定の間隔を空けて複数形成されている。すなわち、複数のコンベヤフレーム10が、両側壁部2aの上端において奥行方向Dに櫛歯状に配列されている。さらに、両側壁部2aに形成されたコンベヤフレーム10は、それぞれ幅方向Wに対向して配列されている。
【0030】
また、本体部2の上面は開放されており、幅方向Wに対向するコンベヤフレーム10の間には、幅方向Wの全長にわたって延びるローラ5が設けられている。すなわち、ローラ5は、奥行方向Dに一定の間隔を空けて複数配列されている。すなわち、奥行方向Dがローラ5の配列方向となる。なお、ローラ5の位置変更手段および固定解除手段については後述するものとする。
本体部2の上面のうち奥行方向Dの手前側の端部には、幅方向Wの全長にわたって延ばされた矩形板状の支持部材7が設けられている。支持部材7には、奥行方向Dに貫通する一対の貫通孔(不図示)が形成されており、これら貫通孔には、奥行方向Dの奥側に向けられたストッパ部材8が通されている。ストッパ部材8は、幅方向Wに延ばされたストッパ8aを備えており、不図示の弾性部材によって、奥行方向Dの奥側に付勢されている。
【0031】
さらに、支持部材7の底面のうち、幅方向Wの中央には、一対の取付金具18によって駆動ローラ16が取り付けられている。すなわち、駆動ローラ16は、ストッパ8aおよびローラ5よりも奥行方向Dの手前側(搬送方向Mの下流側)に設けられ、正面視してローラ5の長手方向の中央に配置されている。なお、ストッパ8aは、駆動ローラ16と奥行方向Dの最も手前側のローラ5との間に配されている。
この駆動ローラ16の長手寸法d1(図4に示す)は、ローラ5の長手寸法d2(図3に示す)よりも短くなっている。例えば、駆動ローラ16の長手寸法d1は40mmに設定され、ローラ5の長手寸法d2は500mmに設定されている。
【0032】
取付金具18は、板状本体部18aと板状支持部18bとが直角に配されて、平面視してL字状に形成されている。板状支持部18bには、駆動ローラ16を支持する不図示の貫通孔が形成されている。
これら板状本体部18aと板状支持部18bとは、一体に形成されている。そして、板状本体部18aは、支持部材7の底面のうち、幅方向Wの中心線を挟んで対向した位置に固定されている。そのため、板状支持部18bに形成された貫通孔は、幅方向Wに対向して配置されている。これら貫通孔に、駆動ローラ16の軸部が貫通されている。これにより、駆動ローラ16が、支持部材7の底面のうち、幅方向Wの中央において、回転可能に支持されている。
【0033】
また、本体部2の内部には、板状の設置台12が設けられている。設置台12は、両側壁部2aの内面のうち、高さ方向Hの中央に設けられている。そして、設置台12には、モータなどの駆動部3が設けられている。駆動部3は、設置台12上に設置されることにより、駆動ローラ16に近接して配置されるようになっている。
また、駆動部3と駆動ローラ16とにわたって、駆動ベルト6aが架け渡されている。駆動ベルト6aは、駆動ローラ16のうち中心線Aより長手方向に所定の間隔を空けて一端側に架けられている。なお、中心線Aとは、駆動ローラ16およびローラ5の長手方向の中心点を通って奥行方向Dに延ばされた仮想線である。
【0034】
また、駆動ローラ16と奥行方向Dに隣り合うローラ5とにわたって、連結ベルト6が奥行方向Dに架け渡されている。連結ベルト6は、図1に示すように、駆動ローラ16およびローラ5のうち中心線Aより長手方向に所定の間隔を空けて他端側に架けられている。さらに、当該ローラ5と奥行方向Dに隣り合うローラ5とにわたって、連結ベルト6が奥行方向Dに架け渡されている。この連結ベルト6は、それぞれのローラ5のうち中心線Aより長手方向に所定の間隔を空けて一端側に架けられている。すなわち、駆動ベルト6aと連結ベルト6は、それぞれ駆動ローラ16およびローラ5の長手方向の中央部において架け渡されており、さらに、当該中央部において、中心線Aに対して一端側と他端側とに同一寸法だけ離されて互い違いに(千鳥状に)架け渡されている。したがって、中心線Aに対して一端側に配された駆動ベルト6aおよび連結ベルト6は、全体として奥行方向Dに直線上に配列され、中心線Aに対して他端側に配された連結ベルト6も、全体として奥行方向Dに直線上に配列されている。
なお、中央部とは、中心線Aだけでなく、中心線Aから長手方向の両端側に広がる領域を意味するものであることは言うまでもない。
【0035】
ここで、ローラ5の位置変更手段および固定解除手段について、図5から図7を参照して説明する。
コンベヤフレーム10には、コンベヤフレーム10を幅方向Wに貫通する貫通長孔13が形成されている。貫通長孔13は、奥行方向Dに延ばされた矩形状の長孔として形成されている。そして、貫通長孔13の高さ方向Hの高さ寸法d3(図6に示す)は、ローラ5の軸部(ローラの軸)5aの外径d5(図6に示す)とほぼ同一になっており、貫通長孔13の奥行方向Dの開口寸法d4(図6に示す)は、軸部5aの外径d5よりも大きくなっている。
そして、軸部5aが貫通長孔13を貫通した状態で、軸部5aが回転するようになっている。また、軸部5aが貫通長孔13を貫通した状態で、軸部5aが奥行方向Dにスライドするようになっている。すなわち、貫通長孔13は、ローラ5の位置変更手段として機能する。
なお、貫通長孔13の中心から奥行方向Dに隣り合う貫通長孔13の中心まで、例えばすべて120mmに設定される。また、コンベヤフレーム10の奥行方向Dの長さ寸法は60mmに設定され、貫通長孔13の中心からコンベヤフレーム10の奥行方向Dの端辺までは30mmとなる。
【0036】
また、コンベヤフレーム10のうち幅方向Wの外面には、ネジ穴(被取付部)14が形成されている。ネジ穴14は、貫通長孔13の近傍に形成されている。具体的には、ネジ穴14は、貫通長孔13の高さ方向Hの中央において、奥行方向Dの奥側(搬送方向Mの上流側)に形成されている。なお、貫通長孔13の中心点からネジ穴14の中心点までは14mmに設定され、ネジ穴14の中心点からコンベヤフレーム10の奥行方向Dの端辺までは16mmに設定されている。
さらに、コンベヤフレーム10のうち幅方向Wの外面には、軸部5aをコンベヤフレーム10に回転可能に取り付ける取付部品11が固定されている。取付部品11は、円形板状部材が略半円状に切り欠かれた取付本体部111を備えている。取付本体部111は、円弧状の円形部11aと、直線上の直線部11bとが一体に形成されている。なお、円形部11aは、周上において半円を超えた位置まで延ばされており、直線部11bの長手寸法は、当該円の直径よりも小さくなっている。
【0037】
取付本体部111のうち円弧状の円の中心部には、取付本体部111を貫通する円形の支持孔113が形成されている。支持孔113の内径は、軸部5aの外径とほぼ同一になっている。また、取付本体部111のうち、支持孔113の周辺には、取付本体部111を貫通する円形の取付孔(取付貫通孔,取付部)112a,112b,112c,112d,112eが形成されている。取付孔112aの中心点と支持孔113の中心点との距離寸法d11は14mmになっている。さらに、取付孔112b,112c,112d,112eの中心点と支持孔113の中心点とのそれぞれの距離寸法d12,d13,d14,d15は、順に15mm,16mm,17mm,18mmになっている。すなわち、取付孔112a,112b,112c,112d,112eは、支持孔113の中心点からの距離寸法d11,d12,d13,d14,d15がそれぞれ異なっている。そして、取付孔112a,112b,112c,112d,112eは、支持孔113の周辺において、時計回りに距離寸法d11,d12,d13,d14,d15の小さい順に周方向に形成されている。
【0038】
また、取付本体部111の表裏面に形成された取付孔112aの円形の縁部のうち、表面側の縁部には、他の取付孔112b,112c,112d,112eの縁部とは異なる太線部(識別部)17がマーキングされている。この太線部17により、取付本体部111の表裏面と取付孔112aとが目視により容易に認識することができるようになっている。そして、貫通長孔13を貫通した軸部5aが支持孔113を貫通した状態で、取付孔112a,112b,112c,112d,112eのいずれか一つとネジ穴14とが一致した位置に配されて、いずれか一つの取付孔112a,112b,112c,112d,112eを貫通してネジ穴14にネジ19が締められるようになっている。これにより、支持孔113が軸部5aを回転可能に支持した状態で、コンベヤフレーム10の外面に取り付けられるようになっている。すなわち、ネジ穴14と、取付孔112a,112b,112c,112d,112eと、支持孔113と、ネジ19は、ローラ5の固定解除手段として機能する。
【0039】
次に、このように構成されたローラコンベヤ装置1の動作について説明する。
まず、図6に示すように、すべてのネジ穴14には取付孔112aが合わされているものとする。この場合、貫通長孔13とネジ穴14の中心点との距離寸法は、距離寸法d11とともに14mmで一致していることから、軸部5aは、貫通長孔13の奥行方向Dの中心に配され、すべてのローラ5が120mmごとに設置される。
この状態から、駆動部3が駆動されると、駆動ベルト6aを介して駆動ローラ16が回転し、さらに連結ベルト6を介してすべてのローラ5が回転する。そして、奥行方向Dの奥側から被搬送物Bが搬送されてくると、ローラ5の回転によって、被搬送物Bが搬送方向Mに搬送される。被搬送物Bが、搬送方向Mの端部に到達すると、不図示の検出部が被搬送物Bを検出し、駆動部の駆動を停止する。なお、このとき、被搬送物Bがストッパ8aに当接することにより、当該被搬送物Bが確実に止められる。そして、不図示のマニピュレータによって被搬送物Bが把持されて、他の搬入口に搬送されていく。それから、駆動部3が再度駆動され、同様の動作を繰り返すことにより、被搬送物Bが連続的に他の搬入口に搬送される。
【0040】
ここで、従来は、被搬送物Bが柔らかい物であった場合、奥行方向Dに隣り合うローラ5同士の間で、被搬送物Bが自重により、下方に垂れ下がってしまっていた。
しかしながら、ローラコンベヤ装置1では、以下のようにして、被搬送物Bの垂れ下がりが防止される。
すなわち、連結ベルト6がローラ5の中央部に設けられていることから、被搬送物Bが柔らかい物であっても、連結ベルト6が、幅方向Wの中央において、かつ奥行方向Dに隣り合うローラ5同士の間において、下方から被搬送物Bを支持する。そのため、自重によって下方に下がろうとする被搬送物Bが連結ベルト6によって下方から抑えられる。
【0041】
一方、連結ベルト6をローラ5の中央部に設けると、連結ベルト6のテンションにより、ローラ5が奥行方向Dにたわんでしまう場合がある。
その場合、以下のようにして、連結ベルト6のテンションが調整される。
例えば、搬送方向Mの下流側のローラ5により強いテンションがかかるものとする。
まず、テンションの強いローラ5の両端のネジ19を取り外す。ここでは、図6の左端のネジ19を取り外す。これにより、ローラ5が搬送方向Mにフリーにスライドするようになる。そこで、ローラ5を搬送方向Mの下流側にスライドさせると、軸部5aが貫通長孔13内において搬送方向Mの下流側にスライドする。そして、取付本体部111を左に回転させて、例えば取付孔112dを択一的に選択し、取付孔112dを通してネジ19をネジ穴14に締め付ける。取付孔112dの距離寸法d14は17mmになっているため、軸部5aが搬送方向Mの下流側に3mm(17mm−14mm)スライドした時点で回転可能に取り付けられる。
【0042】
それから、図6の左端から2番目のネジ19を取り外し、軸部5aを搬送方向Mの下流側にスライドさせる。そして、取付孔112cを択一的に選択し、ネジ19をネジ穴14に締め付ける。取付孔112cの距離寸法d13は16mmになっているため、軸部5aが搬送方向Mの下流側に2mm(16mm−14mm)スライドした時点で回転可能に取り付けられる。
さらに、図6の左端から3番目のネジ19を取り外し、軸部5aを搬送方向Mの下流側にスライドさせる。そして、取付孔112bを択一的に選択し、上記と同様にして、ネジ19をネジ穴14に締め付ける。取付孔112bの距離寸法b12は15mmになっているため、軸部5aが搬送方向Mの下流側に1mm(15mm−14mm)スライドした時点で回転可能に取り付けられる。
これにより、テンションのかかっている方向にローラをスライドさせることにより、連結ベルト6のテンションが調整される。
【0043】
以上より、本実施形態におけるローラコンベヤ装置1によれば、連結ベルト6がローラ5の中央部に設けられていることから、被搬送物Bが柔らかい物であっても、中央部において下方から被搬送物Bを支持することができる。そのため、被搬送物Bの垂れ下がりを防止することができ、スムーズに効率よく搬送することができる。
また、連結ベルト6がローラ5の中央部に設けられていることから、マニピュレータの把持爪部などが連結ベルト6に干渉することがないため、連結ベルト6を上下に櫛歯状に配するための補助ローラなどを不要にすることができる。そのため、従来より部品点数を減少させることができ、構成を簡易にすることができる。なお、従来のように、連結ベルトをローラの一端部に設ける場合、ローラの中央部にさらに連結用ベルトを設けることも考えられるが、この場合、把持爪部などとの干渉を回避するために補助ローラなどの部品が増大してしまうことに変わりはない。
【0044】
また、連結ベルト6をローラ5の中央部に設けることにより、ローラ5が奥行方向Dにたわむことが考えられるが、ネジ19を外し軸部5aを貫通長孔13内でスライドさせることにより、ローラ5を奥行方向Dに位置変更することができる。そのため、ローラ5の奥行方向Dのたわみを調整することができる。
また、貫通長孔13、ネジ穴14、ネジ19、支持孔113および取付孔112a,112b,112c,112d,112eが設けられていることから、ローラ5の位置変更、固定および解除を確実に行うことができる。
また、軸部5aを貫通長孔13に貫通させたまま取り付けるので、ローラ5の位置変更のときに、ネジ19を外して軸部5aを奥行方向Dにスライドさせるという簡易な動作だけで、ローラ5の位置変更を容易に行うことができるだけでなく、ネジ穴14にネジ19を締めるだけで、容易にローラ5を固定することができる。
【0045】
また、取付孔112a,112b,112c,112d,112eが、支持孔113の周辺において時計回りに距離寸法の小さい順に周方向に設けられていることから、取付本体部111を回転させてネジ穴14と取付孔112a,112b,112c,112d,112eのいずれか一つを一致させるという簡易な動作だけで、ローラ5の位置変更を小さい距離から大きい距離へと(または逆回転により大きい距離から小さい距離へと)容易に行うことができる。
また、取付孔112aの縁部に太線部17が設けられていることから、太線部17を目視するだけで、取付本体部111の表裏や取付孔112aを容易に認識することができる。そのため、取付本体部111の取付作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0046】
また、ネジ穴14が支持孔113に対して奥行方向Dに設けられていることから、取付部品11による取付耐性を増大させることができる。すなわち、駆動ローラ16が搬送方向Mの下流側に設けられ、この駆動ローラ16から連結ベルト6によって搬送方向Mの上流側に順に連結されていることから、駆動ローラ16の回転力を上流側のローラ5に適切に伝えるためには、駆動ローラ16により近い下流側のローラ5に、より強いテンションがかかることになる。そのため、それぞれのローラ5は、全体として搬送方向Mの下流側に、より強いテンションがかかることになる。
ここで、ネジ穴14が、支持孔113に対して奥行方向Dの線上から外れていると、ローラ5が搬送方向Mの下流側に引っ張られることから、取付部品11にネジ穴14およびネジ19を回転中心とした回転力が加えられてしまう。
一方、本実施形態におけるローラコンベヤ装置1では、ネジ穴14が支持孔113に対して奥行方向Dの線上に設けられていることから、ローラ5が搬送方向Mの下流側に引っ張られたとしても、取付部品11に上記のような回転する力が加えられることなく、奥行方向Dの線上において抗することができ、取付部品11による取付耐性を増大させることができる。また、軸部5aの外周面と貫通長孔13の内周面とが接触することによる摩擦力の増加を防止することができ、ローラ5の回転をスムーズにすることができる。
【0047】
また、ネジ穴14が支持孔113に対して搬送方向Mの上流側に設けられていることから、ローラ5が搬送方向Mの下流側に引っ張られたとしても、奥行方向Dの線上における上流側で引っ張り力によって抗することができ、取付部品11による取付耐性をさらに増大させることができる。
また、駆動ローラ16の長手寸法d1がローラ5の長手寸法d2よりも小さくなっており、駆動ローラ16が正面視してローラ5の長手方向の中央に配置されていることから、駆動ローラ16の剛性を上げることができる。すなわち、駆動ローラ16には、駆動部3からの駆動ベルト6aと連結ベルト6の2つのベルトが、奥行方向Dおよび下方に架け渡されていることから、テンションによる負荷が増大してしまう。
しかし、本実施形態にローラコンベヤ装置1では、駆動ローラ16の剛性を上げることができることから、駆動ローラ16の回転力をローラ5に適切に伝えることができ、迅速かつ確実に被搬送物Bを搬送することができる。
【0048】
また、駆動ローラ16の上流側にストッパ8aが設けられていることから、長手寸法d1が小さいために被搬送物Bの搬送に寄与しにくい駆動ローラ16を搬送には直接利用せず、上流のローラ5に対して被搬送物Bの搬送を直接行わせることにより、被搬送物Bの搬送を効果的に行うことができる。
【0049】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、位置変更手段として、貫通長孔13を設けるとしたが、これに限ることはなく、その構成は適宜変更可能である。すなわち、貫通長孔13に代えて、長溝や固定用のネジ穴であってもよいし、奥行方向Dに複数の孔を設けるようにしてもよい。
また、固定解除手段として、ネジ穴14と、取付孔112a,112b,112c,112d,112eと、支持孔113と、ネジ19を設けるとしたが、これに限ることはなく、その構成は適宜変更可能である。例えば、ネジ穴14に代えて雌ネジの無い穴であってもよいし、ネジ19に代えて雄ネジの無い棒状部材であってもよい。
【0050】
また、取付孔112a,112b,112c,112d,112eが支持孔113の周辺において時計回りに距離寸法の小さい順に周方向に設けるとしたが、これに限ることはなく、形成位置は適宜変更可能である。例えば、時計回りに大きい順に設けても良い。なお、時計回りに距離寸法の小さい順というのは、反時計回りに距離寸法の大きい順と同義であることはいうまでもない。
また、取付孔112aの縁部に太線部17を設けるとしたが、これに限ることはなく、太線部17の位置は適宜変更可能である。例えば、取付本体部111のいずれかに設けても良いし、取付孔112b,112c,112d,112eのいずれかに設けても良い。さらに、太線部17に代えて、例えば凹凸などの形状、色、文字、記号などの他の識別部であっても良いし、太線部17を設けることなく省略しても良い。
また、ネジ穴14の形成位置は、適宜変更可能である。例えば、支持孔113に対して搬送方向Mの下流側に設けても良いし、奥行方向Dの線上を外した位置に設けても良い。
【0051】
また、駆動ローラ16の長手寸法d1をローラ5の長手寸法d2よりも小さくしたが、これに限ることはなく、適宜変更可能である。例えば、長手寸法d1とd2を同一としても良い。
また、駆動ローラ16が、正面視してローラ5の長手方向の中央に配置されているとしたが、これに限ることはなく、その位置は適宜変更可能である。
また、ストッパ8aが、駆動ローラ16よりも上流側に設けられるとしたが、これに限ることはなく、その位置は適宜変更可能である。例えば、駆動ローラ16上であっても良いし、駆動ローラ16よりも下流側であっても良い。さらに、ストッパ部材8を設けることなく省略しても良い。
また、本実施形態において、各寸法を明記しているが、この寸法は適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 ローラコンベヤ装置
3 駆動部
5 ローラ
5a 軸部(ローラの軸)
6 連結ベルト
6a 駆動ベルト
8a ストッパ
10 コンベヤフレーム
13 貫通長孔(位置変更手段)
14 ネジ穴(被取付部)
16 駆動ローラ
17 太線部(識別部)
19 ネジ(固定解除手段)
111 取付本体部
112a,112b,112c,112d,112e 取付孔(取付貫通孔,取付部,固定解除手段)
113 支持孔(固定解除手段)
B 被搬送物
d11,d12,d13,d14,d15 距離寸法
D 奥行方向(配列方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数配列されて被搬送物を搬送するローラと、
前記ローラの中央部において前記ローラの配列方向に隣り合うローラにわたって取り付けられる複数の連結ベルトと、
前記ローラを回転させる駆動部と、
前記配列方向における前記ローラの位置を変更させる位置変更手段と、
前記位置変更手段によって、前記配列方向における前記連結ベルトのテンションを調整する位置に変更された前記ローラを固定または解除する固定解除手段と
を備えることを特徴とするローラコンベヤ装置。
【請求項2】
前記ローラの長手方向の両端に設けられて、前記ローラが回転可能に取り付けられるコンベヤフレームを備え、
前記位置変更手段は、
前記コンベヤフレームにおいて前記配列方向に延ばされ、かつ前記ローラの軸が貫通する貫通長孔を備え、
前記固定解除手段は、
前記貫通長孔を貫通した前記ローラの軸を回転可能に支持する支持孔と、
前記支持孔の中心からの距離寸法がそれぞれ異なり、かつ前記コンベヤフレームの被取付部に選択的に取り付けられる複数の取付部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項3】
前記被取付部が、前記支持孔の近傍に設けられたネジ穴であり、
前記取付部が、貫通孔からなる取付貫通孔であり、
前記固定解除手段は、
前記取付貫通孔が前記ネジ穴に選択的に配されて、前記取付貫通孔を貫通して前記ネジ穴に締められるネジを備えることを特徴とする請求項2に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項4】
複数の前記取付部が、前記支持孔の周辺に前記距離寸法の順に周方向に設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項5】
前記支持孔と前記取付部とが設けられた取付本体部を備え、
前記取付本体部に、当該取付本体部の表裏を識別するための識別部が設けられていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項6】
前記被取付部が、前記支持孔に対して前記配列方向に設けられていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項7】
前記被取付部が、前記支持孔に対して前記配列方向の上流側に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項8】
前記駆動部に駆動ベルトを介して連結され、前記ローラの長手寸法より小さくされた駆動ローラを備え、
前記駆動ローラが、前記ローラの長手方向の中央に配置され、下流側の前記ローラにわたって前記連結ベルトが架け渡されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のローラコンベヤ装置。
【請求項9】
前記駆動ローラが、前記ローラに対して下流側に設けられており、
前記駆動ローラの上流側に、前記被搬送物を止めるストッパが設けられていることを特徴とする請求項8に記載のローラコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75738(P2013−75738A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216108(P2011−216108)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(511237081)不二技研工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】