説明

ローラユニット

【課題】コイルばね60が抜け出ることがなく、その巻きピッチも変動しない定着ローラ50を提供する。
【解決手段】コイルばね60の外周面のうち芯金52の内周面52aに接触する部分には、図4に示すように、多数の突起62が形成されている。これら多数の突起62は、芯金52が回転している(定着ローラ50が回転している)際にコイルばね60が片寄ることを阻止する方向に突出している。即ち、これら多数の突起62は、芯金52が回転中にコイルばね60に作用する力のうち芯金52の長手方向の力の向きと同一の方向に突出している。従って、定着ローラ50の回転中にコイルばね60が芯金52の長手方向に移動しようとした場合、多数の突起62が芯金52の内周面52aに引っ掛かる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、他のローラとで記録媒体などを挟持しながら搬送するローラユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータやワークステーションの出力装置として、粉体の現像剤(トナー)を用いて記録媒体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、例えば、画像情報を担持する光(例えばレーザ光)を感光ドラムなどの像担持体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に現像ローラを用いてトナーを供給して現像像を形成し、転写ローラなどを使用してこの現像像を記録媒体に転写して転写像(現像像)を形成する。転写像が形成された記録媒体は定着装置に搬送され、定着装置では転写像が記録媒体に定着される。定着装置には、通常、ヒータを内蔵した定着ローラとこの定着ローラに圧接する加圧ローラとが備えられている。転写像を記録媒体に定着する際は、定着ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持して搬送しながら転写像を所定の定着温度で加熱すると同時に加圧する。この加熱と加圧で転写像が記録媒体に定着される。転写像が定着された記録媒体は排紙ローラなどに挟持されながら排出される。
【0003】
図5を参照して、定着装置について説明する。
【0004】
図5は、従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【0005】
定着装置100は、記録紙などの記録媒体104にトナー(像)102を永久可視像化するためのものである。搬送部(図示せず)によって矢印A方向に搬送された記録媒体104は定着入口ガイド106に案内されて、定着ローラ120と加圧ローラ130の間のニップ部108に進入する。
【0006】
定着ローラ120はトナー102を加熱して溶融するためのものである。定着ローラ120の外周面(表面)にはサーミスタ140が接触しており、このサーミスタ140は定着ローラ120の外周面の温度を測定するように構成されている。また、定着ローラ120にはハロゲンヒータ122などの熱源(発熱体)が内蔵されている。サーミスタ140で測定された外周面温度に基づいて制御器(図示せず)がハロゲンヒータ122を制御し、これにより定着ローラ120の外周面温度が所定の定着温度に保持される。
【0007】
定着ローラ120としては、例えば鉄製やアルミニウム製のパイプ状部材からなる芯金124の外周面に、離型性の良いフッ素樹脂層126を被覆したものが一般的に用いられる。定着ローラ120は駆動源(図示せず)によって矢印B方向に回転する。
【0008】
加圧ローラ130は、定着ローラ120に記録媒体104を所定圧力で押し付けるためのものである。加圧ローラ130としては、例えば金属製の芯金132の外周面に、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体層134を所定の厚み被覆したものが一般的に用いられる。加圧ローラ130を定着ローラ120に所定圧力で押し付けて矢印C方向に回転させながら、記録媒体104にトナー102を定着させるための荷重を付与する。
【0009】
記録媒体104がニップ部108に進入すると、記録媒体104上のトナー102が上記の定着温度で溶融すると共にこの溶融しているトナー102が上記の荷重で記録媒体104に押さえ付けられてこの記録媒体104に定着される。トナー102が定着された記録媒体104は分離爪142によって定着ローラ120から分離されて排紙ローラ(図示せず)に到達し、この排紙ローラによって機外に排出される。
【0010】
上記した定着ローラ120には、待ち時間短縮の観点から素早い立ち上がりが求められている。このため、画像形成装置本体が完全に冷え切った状態からメインスイッチを入れて最初のコピーが排出されるまでの時間(立上り時間)が30秒間以下の画像形成装置がある。この立上り時間は年々短くなっている。
【0011】
また、省エネルギの観点から画像形成装置本体のメインスイッチが入っている待機状態において、定着装置を暖めておくための消費電力を極力少なくすることが求められている。このため、上記の待機状態では、定着装置のヒータを完全に切っておく必要に迫られている。このように待機状態で定着装置のヒータを完全に切っておく場合、ヒータをオンにするとほぼ同時に定着ローラの表面を所定温度にするためには、定着ローラの肉厚を薄くしてその熱容量を小さくしておく必要がある。このために、熱伝導率の良い薄肉のアルミニウム合金製の定着ローラが使用されることが多い。
【0012】
上記した立上り時間を短くするために、最近ではアルミニウム製の定着ローラ120の肉厚は0.8mm程度まで薄くなっている。定着ローラ120の肉厚をこれ以上薄くした場合、定着ローラ120と加圧ローラ130との間(ニップ部108)に記録媒体104を挟持して現像像を熱と圧力で定着するときに、定着ローラ120が変形するおそれがある。
【0013】
上記のような問題を解決するために、定着ローラ120の内部に螺旋状のコイルばねを差し込んで定着ローラ120を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
この技術を、図6から図9までを参照して説明する。
【0015】
図6は、コイルばねが差し込まれた定着ローラを示す断面図である。図7は、芯金から抜け出たコイルばねを示す模式図である。図8は、ストッパが形成された芯金を示す断面図である。図9は、巻きピッチが変動したコイルばねを示す断面図である。これらの図では、図5に示された構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0016】
芯金124の内部空間には、図6に示すように、螺旋状に巻かれたコイルばね150が差し込まれている。このコイルばね150は芯金124の長手方向に延びており、芯金124の内周面に接触してこの内周面を押圧している。芯金124は非常に薄いので定着ローラ120の外周面が受ける押圧力はコイルばね150にも影響が及ぶ。このため、定着ローラ120が回転し始めると共に加圧ローラ130が回転し始めることにより、押圧された定着ローラ120及びコイルばね150はその長手方向にもわずかに移動し始める。この場合、定着ローラ120の移動はローラストッパ(図示せず)によって抑えられるが、コイルばね150は定着ローラ120に差し込まれているだけなので、コイルばね150は矢印D方向に徐々に移動して芯金124から抜け出始める(図7参照)。定着ローラ120と加圧ローラ130が回転し続けた場合、コイルばね150は芯金124から抜け落ちてしまう。
【0017】
そこで、図8に示すように、芯金124の長手方向両端部にストッパ124aを形成しておき、コイルばね150が芯金124から抜け出ないようにする技術が提案されている。
【0018】
【特許文献1】
特開平10−116675号公報
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図8に示す技術では、コイルばね150は芯金124から抜け出ないものの、図9に示すように、コイルばね150が芯金124の内部で移動してその巻きピッチが変動することがある。このようにコイルばね150の巻きピッチが変動した場合、芯金124を補強する強度が芯金124の長手方向において変動してニップ圧が変ってくるので、記録媒体が斜行するなどの不都合が生じる。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑み、線材が抜け出ることがなく、その巻きピッチも変動しないローラユニットを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のローラユニットは、
(1)中空の円筒状ローラと、
(2)該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備え、
(3)該線材は、該線材の外周面のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分に突起が形成されたものであることを特徴とするものである。
【0022】
ここで、
(4)前記線材の前記突起は、前記円筒状ローラが回転している際に前記線材が片寄ることを阻止する方向に突出しているものである。
【0023】
また、
(5)前記線材の前記突起は、前記円筒状ローラが回転中に前記線材に作用する力のうち前記円筒状ローラの長手方向の力の向きと同一の方向に突出しているものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1を参照して本発明のローラユニットの一実施形態が組み込まれた画像形成装置の概略構造を説明する。
【0025】
図1は、本発明のローラユニットの一実施形態が組み込まれた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【0026】
複写機10の頂面には開閉自在な直方体状の原稿圧着板12が配置されている。原稿圧着板12の下には、原稿に記録された画像を読み取る画像読取装置14が配置されている。画像読取装置14の上面(上壁)は、原稿が載置される原稿台ガラス(図示せず)である。
【0027】
原稿圧着板12よりも手前側(正面側)には、複写枚数などが入力される操作パネル(図示せず)が配置されている。また複写機10の下部には、複数枚のカット紙が収容されるカセット16が複写機10に出し入れ自在に備えられている。また、複写機10の左側部分には空間が形成されており、排出された記録紙が積載される排紙トレイ18が形成されている。
【0028】
複写機10で画像を形成する手順等を説明する。
【0029】
原稿に記録された画像を記録媒体に形成するためには、原稿圧着板12を開き、原稿台ガラス(図示せず)の上面に、画像面が下になるように原稿を載置し、この原稿を原稿圧着板12で押さえて固定する。次に、所定の操作ボタン等を押すことにより、原稿に記録された画像は、画像読取装置14で読み取られる。読み取られた画像はデジタル信号に変換され、このデジタル信号は、レーザスキャナ20に送信される。
【0030】
レーザスキャナ20に送信された信号はレーザ光に変換されて、このレーザ光は、高速で回転するスキャナミラー20a、折り返しミラー20bを経由して感光ドラム22に照射される。感光ドラム22は帯電器24によって一様に帯電されており、レーザ光が照射された感光ドラム22には静電潜像が形成される。この静電潜像は現像ローラ26から供給された現像剤で現像されて現像像が形成される。
【0031】
一方、カセット16からは記録紙などの記録媒体が給紙ローラ28によって矢印E方向(給紙方向)に給紙され、搬送ローラ30とレジストローラ32によって転写ローラ34に搬送される。転写ローラ34は感光ドラム22と共に記録媒体を挟持しながら、この記録媒体に感光ドラム22の現像像を転写する。現像像が転写された記録媒体は搬送ガイド36によって定着装置40に案内される。定着装置40には定着ローラ50(本発明にいうローラユニットの一例である)と加圧ローラ70が配置されている。加圧ローラ70は加圧ばね72(図2参照)によって定着ローラ50に押し付けられている。記録媒体は2つのローラ50,70に挟持されながら搬送されて、現像像が記録媒体に定着される。このようにして現像像が定着された記録媒体は排紙ローラ80によって排出されて排紙トレイ18に積載される。
【0032】
上記した定着装置40の基本的な構成は、図5に示した従来の定着装置100の構成と同様である。定着装置40が定着装置100と異なる点は定着ローラ50にある。定着ローラの構造を、図2から図4までを参照して説明する。
【0033】
図2は、定着装置をその長手方向に切断して示す模式図である。図3は、図2の定着ローラの内部を示す拡大図である。図4は、図2の定着ローラの内部を示す斜視図である。
【0034】
定着ローラ50は、アルミニウムとマグネシウムの合金からなるパイプ状(中空円筒状)の芯金52(本発明にいう円筒状ローラの一例である)を備えている。芯金52の長手方向中央部の外径は長手方向両端部の外径よりも、小さい。このため、芯金52は逆クラウン形状になっている。このように芯金52が逆クラウン形状になっているので、定着ローラ50と加圧ローラ70とで形成されるニップ部のうち定着ローラ50の長手方向両端部の挟持力(記録媒体を圧接する力)が長手方向中央部よりも大きい。従って、定着ローラ50と加圧ローラ70に挟持されながら搬送される記録媒体にヨレや皺が発生しない。なお、芯金52の長手方向両端部の外径は長手方向中央部よりも0.07mm〜0.13mm程度大きい。
【0035】
また、芯金52は、その肉厚が全域に渡って0.3〜0.4mm前後になるように切削加工されている。芯金52の外周面には離型層54が形成されている。この離型層54は、高い離型性を有するフッ素樹脂、オイル含浸シリコーンゴム、又はシリコーンゴム層の表面にフッ素樹脂層が形成されたものである。
【0036】
芯金52の中空部(定着ローラ50の内部)には、螺旋状に巻かれたコイルばね60(本発明にいう線材の一例である)が配置されている。コイルばね60の外径は、芯金52の内径よりも0.1mm〜0.5mmほど大きい。このため、コイルばね60は、芯金52の中空部分を囲む内壁面(本発明にいう内周面の一例である)52aに接触してこの内壁面52aを外側に押している(押圧している)。このため、コイルばね60は芯金52と共に回転する。また、芯金52の長手方向両端部には、コイルばね60の長手方向両端部を固定してコイルばね60が芯金52から抜け出ないようにするストッパ52bが形成されている。なお、このストッパ52bを形成しなくてもよい。
【0037】
コイルばね60の外周面のうち芯金52の内周面52aに接触する部分には、図4に示すように、多数の突起62が形成されている。各突起62の先端はやや尖っている。これら多数の突起62は、芯金52が回転している(定着ローラ50が回転している)際にコイルばね60が片寄ることを阻止する方向に突出している。即ち、これら多数の突起62は、芯金52が回転中にコイルばね60に作用する力のうち芯金52の長手方向の力の向きと同一の方向に突出している。従って、定着ローラ50の回転中にコイルばね60が芯金52の長手方向に移動しようとした場合、多数の突起62が芯金52の内周面52aに引っ掛かる。このため、コイルばね60は芯金52の長手方向には移動できない。この結果、芯金52の内部でコイルばね60が片寄ったり芯金52からコイルばね60が飛び出したりしないので、定着ローラ50の剛性を長手方向に渡って均一に保てる。なお、芯金52の内部にコイルばね60を挿入する(差し込む)際は、多数の突起62が突出している方向とは反対の方向からコイルばね60を芯金52に挿入する。
【0038】
上記の実施形態では、定着ローラを例に挙げたが、感光ドラムや現像スリーブなど円筒状の薄肉ローラに本発明を適用できる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のローラユニットでは、線材が円筒状ローラの長手方向に移動しようとした場合、この線材の突起が円筒状ローラの内周面に引っ掛かるので、線材は円筒状ローラの長手方向には移動できない。従って、円筒状ローラの内部で線材が片寄ったり円筒状ローラから線材が飛び出したりしないので、円筒状ローラの剛性を長手方向に渡って均一に保てる。
【0040】
ここで、前記線材の前記突起は、前記円筒状ローラが回転している際に前記線材が片寄ることを阻止する方向に突出しているものである場合は、円筒状ローラの内部で線材が片寄ったり円筒状ローラから線材が飛び出したりすることをいっそう確実に防止できる。
【0041】
また、前記線材の前記突起は、前記円筒状ローラが回転中に前記線材に作用する力のうち前記円筒状ローラの長手方向の力の向きと同一の方向に突出しているものである場合は、円筒状ローラの内部で線材が片寄ったり円筒状ローラから線材が飛び出したりすることをいっそう確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のローラユニットの一実施形態が組み込まれた画像形成装置の一例であるデジタル複写機を示す模式図である。
【図2】定着装置をその長手方向に切断して示す模式図である。
【図3】図2の定着ローラの内部を示す拡大図である。
【図4】図2の定着ローラの内部を示す斜視図である。
【図5】従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【図6】コイルばねが差し込まれた定着ローラを示す断面図である。
【図7】芯金から抜け出たコイルばねを示す模式図である。
【図8】ストッパが形成された芯金を示す断面図である。
【図9】巻きピッチが変動したコイルばねを示す断面図である。
【符号の説明】
50 定着ローラ
52 芯金
52a 芯金の内周面
60 コイルばね
62 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部で螺旋状に巻かれながら該円筒状ローラの長手方向に延びると共に該円筒状ローラの内周面に接触してこの内周面を外側に押圧する線材とを備え、
該線材は、
該線材の外周面のうち前記円筒状ローラの内周面に接触する部分に突起が形成されたものであることを特徴とするローラユニット。
【請求項2】
前記線材の前記突起は、
前記円筒状ローラが回転している際に前記線材が片寄ることを阻止する方向に突出しているものであることを特徴とする請求項1に記載のローラユニット。
【請求項3】
前記線材の前記突起は、
前記円筒状ローラが回転中に前記線材に作用する力のうち前記円筒状ローラの長手方向の力の向きと同一の方向に突出しているものであることを特徴とする請求項1に記載のローラユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−170740(P2004−170740A)
【公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−337451(P2002−337451)
【出願日】平成14年11月21日(2002.11.21)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】