説明

ローラーシューズ

【課題】簡単な操作でローラー走行用途と一般歩行用途の切り替えができ、利用者の意に反して用途の切り替えがなされるおそれがなく、安全に利用し得るローラーシューズを提供することを課題とする。
【解決手段】踵部後面に進退可能に設置される操作ボタン2の押圧操作により、踵部底面に形成されたローラー収納部3に収納されたローラー4の出没操作が可能にされる。ローラー収納部3の両側に、ローラー軸7が摺動する軸摺動溝10が形成され、軸摺動溝10のそれぞれにローラー軸7に対して常時付勢する押出部材11が配装され、操作ボタン2は、軸摺動溝10のそれぞれの中間部を横切って進退する遮止部12を有するストッパーに連結されていて、その押圧操作に伴って遮止部12が軸摺動溝10から外れることにより、ローラー軸7が、軸摺動溝10内における遮止部12の上側位置と下側位置との間を移動することで、ローラー4を出没させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーシューズに関するものであり、より詳細には、踵部に出没可能なローラーを有していて、該ローラーの出状態においてローラー走行ができ、該ローラーの没状態において通常のシューズとして歩行が可能なローラーシューズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、踵部底面、あるいは、底面の前後2箇所に出没可能なローラーを有していて、該ローラーの出状態においてローラー走行ができ、該ローラーの没状態において通常のシューズとして歩行が可能なローラーシューズとして種々のものが提唱され、製品化もされている(例えば、特開2001−252390号公報、実用新案登録第3060781号公報、実用新案登録第3084478号公報、実用新案登録第3084844号公報)。
【0003】
これらのうち前三者は、ローラーを指先で回動させてローラー収納部から引き出し、また、ローラー収納部へ押し戻すもので、その操作には手間と力が必要となり、また、機構も比較的複雑なものである。
【0004】
一方、実用新案登録第3084844号公報に記載のものは、踵部後面において進退する制限ピンの進退動作に伴い、ローラーブロックを踵部底面に脱着できるようにしたものであり、そのローラーブロックは、一面がローラー機能部となっていて、その反対面が靴底形成部となっている。そして、ローラー走行用途と歩行用途の切り換えは、制限ピンを進退させてローラーブロックを踵部から外し、いずれかの面を選択して再度踵部に装着することによって行うものであるので、その操作は手間がかかって煩わしいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−252390号公報
【特許文献2】実用新案登録第3060781号公報
【特許文献3】実用新案登録第3084478号公報
【特許文献4】実用新案登録第3084844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、上記従来のローラー走行用途と歩行用途の切り換えが可能なローラーシューズの場合は、いずれも用途の切り換え操作が面倒であるという問題があった。そこで本発明はそのような問題のない、即ち、単に手又は足により、あるいは、壁面等を利用して操作ボタンを押圧操作するだけで、ローラー走行用途と一般歩行用途の切り替え操作を容易に行うことができ、また、利用者の意に反して用途の切り替えがなされるおそれがなく、安全に利用し得るローラーシューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、踵部後面に進退可能に設置される操作ボタンの押圧操作により、前記踵部底面に形成されたローラー収納部に収納されたローラーの出没操作が可能であって、前記ローラーの出状態においてローラー走行が可能となり、前記ローラーの没状態において一般歩行が可能となるローラーシューズであって、前記ローラー収納部は前記ローラーの全体が没する深さに形成されて、その両側に、前記踵部底面から浅く窪む凹陥部が連設されて、そこにローラー軸を支持する軸支板が取り付けられ、前記凹陥部の内底面から前記ローラー収納部の中間部まで垂直方向に切除することにより、前記ローラー軸が摺動する軸摺動溝が形成されて、前記軸摺動溝のそれぞれに前記ローラー軸に対して常時付勢する押出部材が配装され、前記操作ボタンは、前記軸摺動溝のそれぞれの中間部を横切って進退する遮止部を有するストッパーに連結されていて、その押圧操作に伴って前記ストッパーの前記遮止部が前記軸摺動溝から外れて、前記ローラー軸が、前記軸摺動溝内における前記遮止部の上側位置と下側位置との間を移動することを許容することを特徴とするローラーシューズである。
【0008】
一実施形態においては、前記ストッパーは、前記操作ボタンが固定される連結板と、前記連結板から延びる一対の支持杆と、前記各支持杆に纏装されるリターンスプリングと、前記各支持杆の先端に連設されるコ字状部材とから成り、前記コ字状部材の上下いずれかの部分が前記遮止部となる。
【0009】
一実施形態においては、前記押出部材はスプリングとされ、あるいは、前記押出部材は弾性ブロックとされる。また、一実施形態においては、前記ローラーは、発光機能を有するものとされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るローラーシューズは上記のとおりのものであり、踵部後面に進退可能に設置される操作ボタンの押圧操作に伴い、ストッパーの遮止部が軸摺動溝から外れてローラー軸の軸摺動溝内における摺動動作を許容するので、単に、手又は足により、あるいは、壁面等を利用して操作ボタンを押圧操作するだけで、ローラー収納部に収納されているローラーの出没操作が可能であり、ローラー走行用途形態と一般歩行用途形態の切り替え操作を容易に行い得る効果がある。
【0011】
また、上記ローラー走行用途と一般歩行用途の切り替えは、操作ボタンを確実に押圧しないと行うことができないため、利用者の意に反して用途の切り替えがなされるおそれがなく、安全に利用し得る効果がある。特に、請求項5に記載の発明においては、ローラーが光ることによる装飾的効果が得られ、また、日没時や暗所においての安全使用が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るローラーシューズの要部分解斜視図である。
【図2】本発明に係るローラーシューズにおけるストッパーの構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るローラーシューズの歩行用途形態における各部の状態を示す要部断面図である。
【図4】本発明に係るローラーシューズの歩行用途形態からローラー走行用途形態へ移行する際の各部の状態を示す要部断面図である。
【図5】本発明に係るローラーシューズのローラー走行用途形態から歩行用途形態へ移行する際の各部の状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつより詳細に説明する。本発明に係るローラーシューズは、踵部1の後面に進退可能に設置される操作ボタン2の押圧操作に伴い、踵部1の底面に形成されたローラー収納部3内において保持されているローラー4が出没動作し、ローラー4の約3分の1が露出する出状態のときにローラー走行が可能となり、ローラー4が没状態のときに一般歩行が可能となるものである。
【0014】
図1は、本発明に係るローラーシューズの要部分解斜視図であり、そこに示されるように、ローラー収納部3はローラー4の全体が没する深さに形成される。ローラー収納部3は、単に踵部1を抉って形成することも可能であるが、通例、踵部1に形成した凹部内に、硬質プラスチック等製の収納部形成用ピース14を嵌合することによって画成する(図3乃至5参照)。
【0015】
ローラー収納部3の両側に、踵部1の底面から浅く窪む凹陥部5が連設され、そこに凹陥部5の深さに対応する厚さの軸支板6が、止めネジ9によるビス止め等により取り付けられる。軸支板6は、ローラー4が出状態にあるときにローラー軸7を受けてその抜けを防止するもので、通例、ローラー軸7が当接するその内面に、ローラー軸7の一部が収まる湾曲溝8が形成される(図1参照)。
【0016】
凹陥部5の内底面からローラー収納部3の中間部付近まで垂直方向に切除されて、ローラー軸7が摺動する軸摺動溝10が形成される。そして、各軸摺動溝10に連ねてその奥側(シューズの側方側)に、軸摺動溝10よりも深い支持孔10aが形成され(図3乃至5参照)、そこに、軸摺動溝10に収まっているローラー軸7を、常時溝外に押し出すように作用する押出部材の下半部が収装される。この押出部材としては、通例、スプリング11が用いられるが、ゴム又は弾性プラスチック製の弾性ブロックを用いることとしてもよい。
【0017】
操作ボタン2は、各軸摺動溝10の中程を横切って水平方向に進退する部分を有するストッパー13に連結されていて、その押圧操作に伴ってストッパー13の上記進退部分が軸摺動溝10から外れることにより、ローラー軸7の軸摺動溝10内における摺動動作が許容されるように構成される。
【0018】
図示した実施形態においては、ストッパー13は、操作ボタン2が固定される連結板15と、連結板15から延びる一対の支持杆16と、各支持杆16に纏装されるリターンスプリング17と、各支持杆16の先端に連設されるコ字状部材18とから成っていて、収納部形成用ピース14に組付けられる(特に図2参照)。
【0019】
収納部形成用ピース14はローラー4を収めるローラー収納部3と、ローラー収納部3に連設されていて連結板15とリターンスプリング17の一半部とを収め、且つ、ストッパー13の進退動作を支持する支持区画3aとを有している。支持区画3aは、ローラー収納部3よりも幅広に形成される。操作ボタン2は、支持区画を形成する後面壁21に形成された挿通孔22を通り抜け可能にされるが、連結板15は、後面壁21の内側に位置していて、挿通孔22を通り抜けることができない(図3参照)。
【0020】
また、支持区画3aを形成する中間壁23から、ローラー収納部3の両側(シューズの両側方側)において爪先方向に延びるように段付き挿通孔24が形成され、また、段付き挿通孔24に連通させて、コ字状部材18に対応する形状の空間部25が形成される。リターンスプリング17は、その一端面が連結板15に当接し、他端面は段付き挿通孔24の段部24aに当接するように配置される。
【0021】
このリターンスプリング17は、平時はその弾発力により連結板15を押圧して後面壁21に圧接させると共に、操作ボタン2の一部を踵部1の後面から突出させ、更に、操作ボタン2に一体化されているコ字状部材18が、空間部25に沿って踵部1の後面側に後退するように作用する(図3参照)。そして、操作ボタン2にその弾発力に抗する押し込み力が加えられると、連結板15側から押し縮められて、操作ボタン2及びストッパー13の内方向への移動を許容する(図4参照)。
【0022】
上述したように、コ字状部材18は空間部25内を前後動するが、操作ボタン2が押されていない後退時においては、その軸摺動溝10内を横切るように進退する遮止部12が軸摺動溝10内に露出するため、ローラー軸7は、その上下いずれの側からもその部分を通過することができなくなる(図3参照)。そして、コ字状部材18が、操作ボタン2がリターンスプリング17の弾発力に抗して押し込まれるに伴って内方向に前進すると、遮止部12が軸摺動溝10から引っ込んで隠れるため、ローラー軸7はその部分を通過することが可能となる(図4参照)。
【0023】
次に、上記構成のローラーシューズの使用方法について説明する。利用者は、図3に示すローラー4が引っ込んだ歩行用途形態からローラー走行用途形態に移行しようとする場合、手や足を用いて操作ボタン2を強く押し込む。この操作ボタン2の押し込み操作は、操作ボタン2を壁面等に当てた状態でシューズを壁面等に押し付けることによって行うこともできる。
【0024】
この操作ボタン2の押し込み操作前においては、遮止部12が軸摺動溝10内を横切るように露出しており、ローラー軸7はその上側に載っているため、ローラー4がローラー収納部3から出ることはない(図3参照)。そして、操作ボタン2の押し込み操作があると、ストッパー13は強制的に内方向へ移動させられ、それに伴って、軸摺動溝10内を横切るように露出していた遮止部12が奥に引っ込んで隠れるため、ローラー軸7はその部分を通過することが可能となる。
【0025】
ローラー軸7は、常時スプリング11によって外方向(図3〜5において下方)に付勢されているので、遮止部12が奥に引っ込むと同時に外方向に移動し、ローラー4の約3分の1の部分がローラー収納部3から出る(図4参照)。その後、操作ボタン2に対する押圧力が解除されると、リターンスプリング17の作用で直ちに、連結板15、ストッパー13及び操作ボタン2が一体となって、踵部1後面側に移動する。その結果、遮止部12が、ローラー軸7の上側を通って軸摺動溝10内を横切るように移動し、ローラー軸7の上方への移動を阻止する。かくして、ローラー4に踏圧がかかってもローラー4がローラー収納部3内に引っ込むおそれはなくなり、その状態で安全にローラー走行することが可能となる。
【0026】
このローラー走行用途形態から歩行用途形態に戻す場合には、ローラー4に踏圧を加えた状態で、上記同様にして操作ボタン2を押し込む。この操作ボタン2の押し込みによって遮止部12が奥に引っ込むと、ローラー軸7はその部分を自由に通過できるようになる。その際ローラー4には踏圧がかかっているので、ローラー軸7は軸摺動溝10内を上昇し、ローラー4はローラー収納部3内に収まる(図5参照)。
【0027】
そして、その後操作ボタン2に対する押圧力が解除されると、リターンスプリング17の作用で直ちに、連結板15、ストッパー13及び操作ボタン2が一体となって、踵部1後面側に移動する。その結果、遮止部12がローラー軸7の下側を通って軸摺動溝10内を横切るように移動し、ローラー軸7の下方への移動を阻止する(図3参照)。かくして、再度操作ボタン2が押圧されない限り、ローラー4がローラー収納部3から出るおそれはなくなり、その状態で安全に歩行することが可能となる。
【0028】
このように本発明に係るローラーシューズは、単なる操作ボタン2の押圧操作だけでローラー4をローラー収納部3から出没させることができ、ローラー走行用途形態と歩行用途形態のいずれかを選択して、楽しく安全に使用することができる利点のあるものである。
【0029】
なお、ローラー4に、例えば、LED、バッテリー、センサースイッチ等から成る発光回路を内蔵させることにより、発光機能を持たせることができ、そのようにした場合は、一層利用者の興味をそそるものとなるだけでなく、日没時や暗所においても安全に使用することが可能となる。
【0030】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 踵部
2 操作ボタン
3 ローラー収納部
3a 支持区画
4 ローラー
5 凹陥部
6 軸支板
7 ローラー軸
8 湾曲溝
9 止めネジ
10 軸摺動溝
11 スプリング
12 遮止部
13 ストッパー
14 収納部形成用ピース
15 連結板
16 支持杆
17 リターンスプリング
18 コ字状部材
21 後面壁
22 挿通孔
23 中間壁
24 段付き挿通孔
24a 段部
25 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踵部後面に進退可能に設置される操作ボタンの押圧操作により、前記踵部底面に形成されたローラー収納部に収納されたローラーの出没操作が可能であって、前記ローラーの出状態においてローラー走行が可能となり、前記ローラーの没状態において一般歩行が可能となるローラーシューズであって、
前記ローラー収納部は前記ローラーの全体が没する深さに形成されて、その両側に、前記踵部底面から浅く窪む凹陥部が連設されて、そこにローラー軸を支持する軸支板が取り付けられ、前記凹陥部の内底面から前記ローラー収納部の中間部まで垂直方向に切除することにより、前記ローラー軸が摺動する軸摺動溝が形成されて、前記軸摺動溝のそれぞれに前記ローラー軸に対して常時付勢する押出部材が配装され、
前記操作ボタンは、前記軸摺動溝のそれぞれの中間部を横切って進退する遮止部を有するストッパーに連結されていて、その押圧操作に伴って前記ストッパーの前記遮止部が前記軸摺動溝から外れて、前記ローラー軸が、前記軸摺動溝内における前記遮止部の上側位置と下側位置との間を移動することを許容することを特徴とするローラーシューズ。
【請求項2】
前記ストッパーは、前記操作ボタンが固定される連結板と、前記連結板から延びる一対の支持杆と、前記各支持杆に纏装されるリターンスプリングと、前記各支持杆の先端に連設されるコ字状部材とから成り、前記コ字状部材の上下いずれかの部分が前記遮止部である、請求項1に記載のローラーシューズ。
【請求項3】
前記押出部材はスプリングである、請求項1に記載のローラーシューズ。
【請求項4】
前記押出部材は弾性ブロックである、請求項1に記載のローラーシューズ。
【請求項5】
前記ローラーは、発光機能を有するものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のローラーシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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