ローラ装置
【課題】被処理物の傷及び皺の発生を防止しつつ、種々のパスライン又は種々の被処理物に対応可能にする。
【解決手段】ローラ本体2と、ローラ本体2の中空内に設けられる加熱又は冷却機構3と、ローラ本体2の側周壁21全周に亘り間隔を空けて設けられて軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路201と、各気体流通路201に対応して設けられてローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202と、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を選択して、気体吹き出し口202から気体が吹き出す気体吹き出し領域Xを周方向において変更する吹き出し領域変更機構8とを具備する。
【解決手段】ローラ本体2と、ローラ本体2の中空内に設けられる加熱又は冷却機構3と、ローラ本体2の側周壁21全周に亘り間隔を空けて設けられて軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路201と、各気体流通路201に対応して設けられてローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202と、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を選択して、気体吹き出し口202から気体が吹き出す気体吹き出し領域Xを周方向において変更する吹き出し領域変更機構8とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔や樹脂フィルム等の被処理物を加熱するための加熱ローラ装置又は冷却するための冷却ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば樹脂がコーティングされた金属箔を加熱又は乾燥する装置又は金属箔を熱処理するための加熱装置として、例えば特許文献1に示す誘導発熱ローラ装置を用いたものが考えられている。具体的には、金属箔を誘導発熱ローラ装置のローラ本体に金属箔を接触させながら移送することによって金属箔を熱、乾燥又は熱処理するようにしている。
【0003】
しかしながら、金属箔の加熱、乾燥又は熱処理を誘導発熱ローラのローラ本体に接触させて行った場合、金属箔の熱膨張係数が大きいことから、金属箔がローラ本体に接触した直後に急激に熱膨張し、ローラ本体の表面上で横滑りが生じ、金属箔表面に傷がつくといった問題がある。また、ローラ本体の表面上で横滑りがスムーズにいかない場合には、皺が発生するという問題もある。さらにローラ本体の回転速度と金属箔のスピードに差が生じると、金属箔表面に傷がつくといった問題がある。
【0004】
なお、特許文献2に示すように、被加熱物を加熱するものではないが、帯状部材を誘導するための誘導ロールにおいて、回転するロール本体と静止した形成部材との間に設けられたエア室にエア源からエアを供給することで、ロール本体に形成された孔からエアを噴射して、帯状部材とロール本体とを離脱するものが考えられている。
【0005】
しかしながら、金属箔の処理工程を変更する等により金属箔のパスラインを変更する場合において、金属箔とローラ本体との接触面積が変化する場合などには、別途専用の誘導ローラを用意する必要があり、設備投資が多大となってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−269826号公報
【特許文献2】特開2005−113223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、加熱又は冷却される被処理物の傷及び皺の発生を防止しつつ、種々のパスラインに容易に対応可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るローラ装置は、回転自在に支持されるローラ本体と、前記ローラ本体の中空内に設けられて、前記ローラ本体を加熱又は冷却する機構と、前記ローラ本体の側周壁の全周に亘り間隔を空けて設けられて、軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路と、前記各気体流通路に対応して設けられて、当該気体流通路に連通して前記ローラ本体の表面に開口する複数の気体吹き出し口と、前記複数の気体流通路のうち気体を導入する気体流通路を変更して、前記気体吹き出し口から気体が吹き出す気体吹き出し領域を周方向において変更する吹き出し領域変更機構とを具備することを特徴とする。ここで、吹き出し領域変更機構が周方向において気体吹き出し領域を変更することには、気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更すること、及び、気体吹き出し領域の周方向における位置を変更することを含む。
【0009】
このようなものであれば、ローラ本体の全周に気体吹き出し口が設けられており、被処理物をローラ本体から部分的又は完全に浮かすことができ、急激な熱膨張によってローラ本体表面との滑りにより生じる傷や皺の発生を防止することができる。また、完全に浮かせた場合には、ローラ本体の回転速度と被処理物とのスピードの差により生じる傷を防止することができる。さらに、吹き出し領域変更機構により、気体吹き出し領域が周方向において変更されるので、前記被処理物を部分的に浮かせる又は完全に浮かせるといった処理変更を容易に行うことができるだけでなく、被処理物とローラ本体との接触面積が異なるといった種々のパスラインに容易に対応することができる。
【0010】
吹き出し領域変更機構の具体的な実施の態様としては、前記吹き出し領域変更機構が、周方向に連続する気体流通路に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体流通路の本数を変更して、前記気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更するものであることが望ましい。これならば、吹き出し領域変更機構によって周方向の角度範囲が変更できるので、被処理物の接触が開始する接触開始部分、被処理物とローラ本体との接触領域の中央部分、被処理物の接触が終了する接触終了部分又は被処理物とローラ本体との接触領域全体など種々の部分を用途に応じて選択的に浮かせることができる。
【0011】
前記ローラ本体の軸方向端部に固定され、機台により回転自在に支持されるジャーナルと、前記ジャーナルの側周壁に設けられて、一端が前記気体流通路に連通するとともに他端が前記ジャーナルの側周面に開口する複数の気体導入路とを備え、前記吹き出し領域変更機構が、前記複数の気体導入路のうち気体を導入する気体導入路を変更することにより、気体を導入する気体流通路を変更するものであることが望ましい。これならば、吹き出し領域変更機構がジャーナルの側周面に開口する気体導入路を変更することから、ローラ本体付近に吹き出し領域変更機構を設ける必要が無く、ローラ本体から受ける熱影響を可及的に小さくすることができるだけでなく、ローラ本体を最大限に負荷接触領域として使用することができる。
【0012】
ジャーナルの外径はロール本体の外径よりも小さく、ロール本体の1つの気体流通路に対応して1つの気体導入路を設けることは物理的に難しく、又はジャーナルの機械的強度を損ねてしまう恐れがある。このため、前記各気体導入路が、2以上の気体流通路に接続されていることが望ましい。これならば、ジャーナルの側周壁における気体導入路の本数を少なくすることができ、無理なく気体導入路を設けることができるとともに、ジャーナルの機械的強度を損ねることもない。
【0013】
前記吹き出し領域変更機構が、前記ジャーナルに対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体を有し、前記スライド体が、気体源から供給される気体を前記気体導入路に導入するものであり、その内面に前記ジャーナルの側周面との間に気体供給空間を形成する凹部が形成されており、前記ジャーナルに対する軸方向の位置に応じて、前記凹部に連通する気体導入路の開口数が変更されるものであることが望ましい。これならば、ジャーナルが回転している状態において、一度凹部に連通した気体導入路の開口は、凹部との連通が終了するまで、凹部に連通した状態を保ったまま回転するので、吹き出し領域にある気体吹き出し口から連続的に気体を吹き出すことができる。
【0014】
前記複数の気体吹き出し口が、前記ローラ本体の軸方向において、被処理物が接触しうる負荷接触領域全体に亘って形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、加熱又は冷却される被処理物の傷及び皺の発生を防止しつつ、種々のパスラインに容易に対応可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の模式的構成図。
【図2】同実施形態の内部構造を省略したA断面図。
【図3】同実施形態の内部構造を省略したB断面図。
【図4】同実施形態の内部構造を省略したC断面図。
【図5】同実施形態のスライド体の内周面の展開図。
【図6】同実施形態の内部構造を省略したD断面図(θmaxの場合)。
【図7】同実施形態の内部構造を省略したD断面図(θminの場合)。
【図8】変形実施形態における誘導発熱ローラを組み込んだシステムの模式図。
【図9】変形実施形態におけるスライド体の内周面の展開図。
【図10】変形実施形態における気体吹き出し領域の変更態様を示す図。
【図11】変形実施形態における吹き出し領域変更機構を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えば金属箔等の被加熱物Wの連続熱処理工程等において用いられるものであり、図1に示すように、回転可能に設けられた中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2内に収容される加熱機構としての磁束発生機構3と、を備えている。
【0019】
ローラ本体2の両端部には、ジャーナル4が一体的に取り付けられている。このジャーナル4は、中空の駆動軸41とフランジ42が一体に構成されたものである。このジャーナル4は、ローラ本体2の端部開口を覆うように当該ローラ本体2の軸方向端面に接続されている。また、駆動軸41は、転がり軸受等の軸受51を介して基台52に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、ジャーナル4の駆動軸41を例えばモータ等により外部からの駆動力によって回転させることによって回転する。
【0020】
また、ローラ本体2の側周壁21には、長手方向(軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室21Aが、周方向全体に間隔を空けて複数形成されている。当該複数のジャケット室21Aの端部は、隣接するジャケット室21Aの端部と連通している。このジャケット室21A内に封入した気液二相の熱媒体の潜熱移動によりローラ本体2の表面温度を均一化する。
【0021】
磁束発生機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とから構成されている。円筒状鉄心31の両端にはそれぞれ、支持ロッド6が取り付けられている。この支持ロッド6は、それぞれ駆動軸41の内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受7を介して駆動軸41に対して回転自在に支持されている。これにより、磁束発生機構3は、ローラ本体2の内部において、宙づり状態で支持されることになる。また、磁束発生機構3は、図示しない廻り止めにより架台との間で回転が拘束されている。誘導コイル32には、リード線L1が接続されており、このリード線L1には、交流電圧を印加するための交流電源(不図示)が接続されている。
【0022】
このような磁束発生機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁21を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。ローラ本体2は、内部に設けられたジャケット室21Aにより、ローラ本体2の軸方向の表面温度を均一化する。
【0023】
しかして本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2の表面における金属箔Wが接触しうる負荷接触領域から気体を吹き出して、ローラ本体2から金属箔Wを部分的又は完全に浮かすことが可能に構成されている。なお吹き出す気体としては、例えば窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスが考えられる。
【0024】
具体的には、図1及び図2に示すように、ローラ本体2の側周壁21に設けられた複数の気体流通路201と、各気体流通路201に対応して設けられて、気体流通路201に連通してローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202と、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を変更して、気体吹き出し口202から気体が吹き出す気体吹き出し領域Xを周方向において変更する吹き出し領域変更機構8とを備える。なお、この気体吹き出し領域Xは、吹き出し領域変更機構8による変更を行わない場合には、ローラ本体2の回転に関わらず周方向に移動することなく同一位置となる。
【0025】
複数の気体流通路201は、図2に示すように、ローラ本体2の側周壁21の全周に亘り等間隔に設けられている。そして各気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向に沿って延び設けられて、ローラ本体2の軸方向に沿って気体を流通するものである。この各気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向において、ローラ本体2の軸方向一端から負荷接触領域全体に亘って延びている。
【0026】
なお、これら気体流通路201は、ローラ本体2の側周壁21に設けられたジャケット室21Aとは異なる位置に設けられている。例えばジャケット室21A及び気体流通路201が相互に与える温度影響を考慮して隣接する気体流通路201の中央部にジャケット室21Aを設けることが望ましい。
【0027】
また、各気体流通路201には、図1及び図2に示すように、当該気体流通路201からローラ本体2の側周壁21内において径方向外側に延び、ローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202が形成されている。各気体流通路201に連通する複数の気体吹き出し口202は、ローラ本体2の軸方向において、負荷接触領域全体に亘って例えば等間隔に設けられている。
【0028】
そして、複数の気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向一端面に開口しており、この気体流通路201は、ジャーナル4の側周壁に形成された気体導入路401に連通している。
【0029】
気体導入路401は、図1に示すように、一端がジャーナル4のフランジ42のローラ本体側端面に開口しており、他端がジャーナル4の駆動軸41の側周面411に開口している。この気体導入路401は、図3に示すように、駆動軸41の側周壁全周において等間隔に形成されるとともに、フランジ42の側周壁において放射状に形成されている。
【0030】
気体導入路401の一端開口401aは、ローラ本体2に設けられた2本の気体流通路201と連通するように構成されている。具体的には、図1及び図3に示すように、ローラ本体2の軸方向一端面において、周方向に隣接する2つの気体流通路201を連通する連通凹部2Mが形成されており、ローラ本体2の軸方向一端面にジャーナル4のフランジ42を接続した状態で、1つの気体導入路401の一端開口401aが連通凹部2Mに繋がるように構成されている。これにより、1つの気体導入路401に対して2つの気体流通路201が接続されることになる。また、気体導入路401の他端開口401bは、後述するスライド体81の設置スペースを考慮して、軸受51を介して機台52により回転自在に支持されている支持部分よりも外側で開口している。さらに気体導入路401の他端開口401bは、駆動軸41の周方向において等間隔且つ軸方向において同一位置に形成されている。
【0031】
吹き出し領域変更機構8は、ジャーナル4に形成された複数の気体導入路401のうち気体を導入する気体導入路401を変更することにより、気体を導入する気体流通路201を変更するものである。なお、本実施形態では1つの気体導入路401に2つの隣接する気体流通路201が接続されていることから、2つ単位で気体を導入する気体流通路201が変更される。
【0032】
この吹き出し領域変更機構8は、周方向に連続する気体導入路401に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体導入路401の本数を変更して、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を変更し、気体吹き出し領域Xの周方向の角度範囲θを変更する(図2参照)。
【0033】
具体的な構成としては、図1に示すように、ジャーナル4の駆動軸41に対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体81と、当該スライド体81を静止側である機台52に対して駆動軸41の軸方向に移動させる移動機構82とを有する。なお、移動機構82は図1に示すように、ボルトを用いたねじ機構によって軸方向に移動させるものであるが、その他エアシリンダ等を用いたものであっても良い。
【0034】
スライド体81は、図1に示すように、気体源9からの気体を供給する気体供給管91が接続されており、供給された気体をジャーナル4の駆動軸41に開口した気体導入路401に導入するものである。具体的にスライド体81は、図4に示すように、ジャーナル4の駆動軸41の側周面に若干のガタつきを持って嵌る概略筒形状をなすものであり、その内周面に駆動軸41の外周面との間に気体供給空間Sを形成する凹部811が形成されている。なお、スライド体81及び駆動軸41の間には軸方向において凹部811を挟んで両側にベアリング83が設けられている(図1参照)。
【0035】
凹部811は、図4に示すように、周方向に形成されており、その凹部底面には、気体供給管91からの気体が流入する流入路812が形成されている。また、この凹部811の外側には、気体供給空間Sを気密にするために、Oリング等のシール部材813が設けられている。このように凹部811が周方向の所定角度範囲に形成されていることから、ジャーナル4が回転している状態において、一度凹部811に連通した気体導入路401の開口401bは、所定角度回転するまで凹部811と連通し続けることになる。つまり、ローラ本体2が回転している状態において、気体吹き出し領域Xに含まれる気体吹き出し口202は、連続的に気体を吹き出しながら回転することになる。なお、凹部811に連通しない気体導入路の開口401bは、スライド体81の内周面に覆われて閉塞され、気体は導入されない。
【0036】
そしてスライド体81は、ジャーナル4に対する軸方向の位置に応じて、凹部811に連通する気体導入路401の開口数が変更されるように構成されている。具体的には図5に示すように、スライド体81を展開した状態において、凹部811の開口形状が台形形状をなすものである。
【0037】
例えば、図5において、気体吹き出し領域Xを周方向において最大角度範囲θmax(図6参照)とするためには、スライド体81を軸方向に沿って左側に移動させる。なお、図6における最大角度範囲θmaxは、負荷接触領域全体に気体を吹き出し、金属箔W全体がローラ本体2に対して浮かせる角度範囲である。一方、気体吹き出し領域Xを周方向において最小角度範囲θmin(図7参照)とするためには、スライド体81を軸方向に沿って右側に移動させる。なお、図7における最小角度範囲θminは、負荷接触領域における接触開始部分から中央部分までの領域に気体を吹き出し、金属箔Wを部分的にローラ本体2に対して浮かせる角度範囲である。このようにスライド体81を軸方向に移動させることによって、気体吹き出し領域Xを最大角度範囲θmax及び最小角度範囲θminの間で変更することができる。なお最大角度範囲θmax及び最小角度範囲θminは、凹部811の周方向における幅寸法によって適宜変更可能である。
【0038】
次に、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100を用いた加熱システムについて説明する。この加熱システムは、図8に示すように、ロール本体表面と負荷(金属箔W)との距離を検出する距離検出部11と、負荷張力を検出する負荷張力検出部と、前記距離検出部11により検出されたロール本体表面と負荷との距離及び負荷張力検出部により得られた負荷張力、及びモータ12によって検出されるロール回転速度に基づいて、気体の吹き出し量又は気体の供給圧力によりロール本体表面と金属箔Wとの距離を調節する距離調節部13とを有する。また、この加熱システムにおいては、気体供給管91上に気体吹き出し口202に供給される気体を例えばローラ本体の表面温度等に予備加熱するための予備加熱器14が設けられている。
【0039】
距離検出部11は、例えば距離検出部11が設けられた位置から負荷までの距離を検出することにより、ローラ本体表面と負荷との距離を検出するものであり、例えば超音波距離センサやレーザ距離センサ等を用いることができる。距離調節部13は、例えば専用乃至汎用のコンピュータを用いて構成されるものであり、距離検出部11の距離検出信号、負荷張力検出部の張力検出信号及びモータの回転速度信号を受信して、気体源9又は気体供給管91に設けられた流量調整弁等の流量調節器(不図示)を制御して気体の吹き出し量又は気体の供給圧力を調節する。なお、気体の吹き出し量又は供給圧力は、ロール本体2の回転速度の関数で決まる量で調節される。
【0040】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、ローラ本体2の全周に気体吹き出し口202が設けられており、金属箔Wをローラ本体2から部分的又は完全に浮かすことができ、急激な熱膨張によってローラ本体表面との滑りにより生じる傷や皺の発生を防止することができる。また、完全に浮かせた場合には、ローラ本体2の回転速度と金属箔Wとのスピードの差により生じる傷を防止することができる。さらに、吹き出し領域変更機構8により、気体吹き出し領域Xの周方向における角度範囲θが変更されるので、金属箔Wを部分的に浮かせる又は完全に浮かせるといった変更を容易に行うことができる。その上、1つの誘導発熱ローラ100により、金属箔Wとローラ本体2との接触面積が異なるといった種々のパスラインに容易に対応することができる。
【0041】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、凹部811の展開した状態の開口形状としては、前記実施形態の他に、図9(A)に示すように、軸方向において一方から他方に行くにしたがって段階的に縮小するものであっても良いし、図9(B)に示すように、軸方向において中央部から一方及び他方に行くにしたがって縮小するものであっても良い。また、図9(C)に示すように、概略平行四辺形状をなすものであっても良いし、図9(D)に示すように、下底が周方向に沿って延びる概略台形状をなすものであっても良い。
【0043】
また、前記実施形態のスライド体81は、ジャーナル4に対して周方向に固定されているが、周方向にスライド可能に構成しても良い。これならば、スライド体81を周方向にスライドさせることによって、図10に示すように、気体吹き出し領域Xを、例えばその周方向寸法を保ったまま周方向に移動させることができる。
【0044】
さらに、前記実施形態の他に、図11に示すように、駆動軸41が回転可能となるように嵌り、駆動軸41の側周面に開口した気体導入路401に対応する複数の導入孔84aを有する例えば円筒状の第1のブロック体84と、当該ブロック体84を包囲して気体供給管からの気体を前記導入孔84aに導入するための導入空間S1を形成する第2のブロック体85を有し、前記導入口84aを蓋部材86によって閉塞することにより、気体を導入する気体導入路401を変更可能にすることもできる。これならば、ジャーナル4が回転する段階で、気体導入路401と導入孔84aとが連通しない状態が生じるものの、気体吹き出し領域Xを変更することができる。なお、ジャーナル4の外側周面に底面が気体導入路401と連通し、気体導入孔401の開口よりも大きい溝4mを設けることで、気体導入路401と導入孔84aとが連通しない状態を可及的に短くしている。
【0045】
その上、前記実施形態ではジャーナルに側周面に開口した気体導入路に気体を導入するものであったが、気体流通路がローラ本体の側周面に開口するものの場合には、スライド体をローラ本体の側周面に設けることで気体吹き出し領域を変更可能にすることができる。
【0046】
また、1つの気体導入路に2つの気体流通路を接続する構成の他、1つの気体導入路に1つの気体流通路又は3つ以上の気体流通路を接続するようにしても良い。なお、1つの気体導入路に1つの気体流通路を接続した場合には、気体吹き出し領域を周方向に細かく変更することができる。
【0047】
加えて、前記実施形態は加熱ローラ装置として誘導発熱ローラ装置について説明したが、その他、ローラ本体の中空内にヒータ等の加熱機構を配置した加熱ローラ装置、又はローラ本体の中空内に熱媒体を通流させることによってローラ本体を加熱又は冷却する熱媒体通流機構を有する流体通流ローラ装置についても適用可能である。
【0048】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・誘導発熱ローラ装置(ローラ装置)
W ・・・金属箔(被加熱物)
2 ・・・ローラ本体
21 ・・・ローラ本体の側周壁
201・・・気体流通路
202・・・気体吹き出し口
3 ・・・誘導発熱機構(加熱機構)
4 ・・・ジャーナル
401・・・気体導入路
51 ・・・機台
X ・・・気体吹き出し領域
θ ・・・周方向の角度範囲
8 ・・・吹き出し領域変更機構
81 ・・・スライド体
811・・・凹部
S ・・・気体供給空間
9 ・・・気体源
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属箔や樹脂フィルム等の被処理物を加熱するための加熱ローラ装置又は冷却するための冷却ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば樹脂がコーティングされた金属箔を加熱又は乾燥する装置又は金属箔を熱処理するための加熱装置として、例えば特許文献1に示す誘導発熱ローラ装置を用いたものが考えられている。具体的には、金属箔を誘導発熱ローラ装置のローラ本体に金属箔を接触させながら移送することによって金属箔を熱、乾燥又は熱処理するようにしている。
【0003】
しかしながら、金属箔の加熱、乾燥又は熱処理を誘導発熱ローラのローラ本体に接触させて行った場合、金属箔の熱膨張係数が大きいことから、金属箔がローラ本体に接触した直後に急激に熱膨張し、ローラ本体の表面上で横滑りが生じ、金属箔表面に傷がつくといった問題がある。また、ローラ本体の表面上で横滑りがスムーズにいかない場合には、皺が発生するという問題もある。さらにローラ本体の回転速度と金属箔のスピードに差が生じると、金属箔表面に傷がつくといった問題がある。
【0004】
なお、特許文献2に示すように、被加熱物を加熱するものではないが、帯状部材を誘導するための誘導ロールにおいて、回転するロール本体と静止した形成部材との間に設けられたエア室にエア源からエアを供給することで、ロール本体に形成された孔からエアを噴射して、帯状部材とロール本体とを離脱するものが考えられている。
【0005】
しかしながら、金属箔の処理工程を変更する等により金属箔のパスラインを変更する場合において、金属箔とローラ本体との接触面積が変化する場合などには、別途専用の誘導ローラを用意する必要があり、設備投資が多大となってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−269826号公報
【特許文献2】特開2005−113223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、加熱又は冷却される被処理物の傷及び皺の発生を防止しつつ、種々のパスラインに容易に対応可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るローラ装置は、回転自在に支持されるローラ本体と、前記ローラ本体の中空内に設けられて、前記ローラ本体を加熱又は冷却する機構と、前記ローラ本体の側周壁の全周に亘り間隔を空けて設けられて、軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路と、前記各気体流通路に対応して設けられて、当該気体流通路に連通して前記ローラ本体の表面に開口する複数の気体吹き出し口と、前記複数の気体流通路のうち気体を導入する気体流通路を変更して、前記気体吹き出し口から気体が吹き出す気体吹き出し領域を周方向において変更する吹き出し領域変更機構とを具備することを特徴とする。ここで、吹き出し領域変更機構が周方向において気体吹き出し領域を変更することには、気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更すること、及び、気体吹き出し領域の周方向における位置を変更することを含む。
【0009】
このようなものであれば、ローラ本体の全周に気体吹き出し口が設けられており、被処理物をローラ本体から部分的又は完全に浮かすことができ、急激な熱膨張によってローラ本体表面との滑りにより生じる傷や皺の発生を防止することができる。また、完全に浮かせた場合には、ローラ本体の回転速度と被処理物とのスピードの差により生じる傷を防止することができる。さらに、吹き出し領域変更機構により、気体吹き出し領域が周方向において変更されるので、前記被処理物を部分的に浮かせる又は完全に浮かせるといった処理変更を容易に行うことができるだけでなく、被処理物とローラ本体との接触面積が異なるといった種々のパスラインに容易に対応することができる。
【0010】
吹き出し領域変更機構の具体的な実施の態様としては、前記吹き出し領域変更機構が、周方向に連続する気体流通路に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体流通路の本数を変更して、前記気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更するものであることが望ましい。これならば、吹き出し領域変更機構によって周方向の角度範囲が変更できるので、被処理物の接触が開始する接触開始部分、被処理物とローラ本体との接触領域の中央部分、被処理物の接触が終了する接触終了部分又は被処理物とローラ本体との接触領域全体など種々の部分を用途に応じて選択的に浮かせることができる。
【0011】
前記ローラ本体の軸方向端部に固定され、機台により回転自在に支持されるジャーナルと、前記ジャーナルの側周壁に設けられて、一端が前記気体流通路に連通するとともに他端が前記ジャーナルの側周面に開口する複数の気体導入路とを備え、前記吹き出し領域変更機構が、前記複数の気体導入路のうち気体を導入する気体導入路を変更することにより、気体を導入する気体流通路を変更するものであることが望ましい。これならば、吹き出し領域変更機構がジャーナルの側周面に開口する気体導入路を変更することから、ローラ本体付近に吹き出し領域変更機構を設ける必要が無く、ローラ本体から受ける熱影響を可及的に小さくすることができるだけでなく、ローラ本体を最大限に負荷接触領域として使用することができる。
【0012】
ジャーナルの外径はロール本体の外径よりも小さく、ロール本体の1つの気体流通路に対応して1つの気体導入路を設けることは物理的に難しく、又はジャーナルの機械的強度を損ねてしまう恐れがある。このため、前記各気体導入路が、2以上の気体流通路に接続されていることが望ましい。これならば、ジャーナルの側周壁における気体導入路の本数を少なくすることができ、無理なく気体導入路を設けることができるとともに、ジャーナルの機械的強度を損ねることもない。
【0013】
前記吹き出し領域変更機構が、前記ジャーナルに対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体を有し、前記スライド体が、気体源から供給される気体を前記気体導入路に導入するものであり、その内面に前記ジャーナルの側周面との間に気体供給空間を形成する凹部が形成されており、前記ジャーナルに対する軸方向の位置に応じて、前記凹部に連通する気体導入路の開口数が変更されるものであることが望ましい。これならば、ジャーナルが回転している状態において、一度凹部に連通した気体導入路の開口は、凹部との連通が終了するまで、凹部に連通した状態を保ったまま回転するので、吹き出し領域にある気体吹き出し口から連続的に気体を吹き出すことができる。
【0014】
前記複数の気体吹き出し口が、前記ローラ本体の軸方向において、被処理物が接触しうる負荷接触領域全体に亘って形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、加熱又は冷却される被処理物の傷及び皺の発生を防止しつつ、種々のパスラインに容易に対応可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の模式的構成図。
【図2】同実施形態の内部構造を省略したA断面図。
【図3】同実施形態の内部構造を省略したB断面図。
【図4】同実施形態の内部構造を省略したC断面図。
【図5】同実施形態のスライド体の内周面の展開図。
【図6】同実施形態の内部構造を省略したD断面図(θmaxの場合)。
【図7】同実施形態の内部構造を省略したD断面図(θminの場合)。
【図8】変形実施形態における誘導発熱ローラを組み込んだシステムの模式図。
【図9】変形実施形態におけるスライド体の内周面の展開図。
【図10】変形実施形態における気体吹き出し領域の変更態様を示す図。
【図11】変形実施形態における吹き出し領域変更機構を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えば金属箔等の被加熱物Wの連続熱処理工程等において用いられるものであり、図1に示すように、回転可能に設けられた中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2内に収容される加熱機構としての磁束発生機構3と、を備えている。
【0019】
ローラ本体2の両端部には、ジャーナル4が一体的に取り付けられている。このジャーナル4は、中空の駆動軸41とフランジ42が一体に構成されたものである。このジャーナル4は、ローラ本体2の端部開口を覆うように当該ローラ本体2の軸方向端面に接続されている。また、駆動軸41は、転がり軸受等の軸受51を介して基台52に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、ジャーナル4の駆動軸41を例えばモータ等により外部からの駆動力によって回転させることによって回転する。
【0020】
また、ローラ本体2の側周壁21には、長手方向(軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室21Aが、周方向全体に間隔を空けて複数形成されている。当該複数のジャケット室21Aの端部は、隣接するジャケット室21Aの端部と連通している。このジャケット室21A内に封入した気液二相の熱媒体の潜熱移動によりローラ本体2の表面温度を均一化する。
【0021】
磁束発生機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とから構成されている。円筒状鉄心31の両端にはそれぞれ、支持ロッド6が取り付けられている。この支持ロッド6は、それぞれ駆動軸41の内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受7を介して駆動軸41に対して回転自在に支持されている。これにより、磁束発生機構3は、ローラ本体2の内部において、宙づり状態で支持されることになる。また、磁束発生機構3は、図示しない廻り止めにより架台との間で回転が拘束されている。誘導コイル32には、リード線L1が接続されており、このリード線L1には、交流電圧を印加するための交流電源(不図示)が接続されている。
【0022】
このような磁束発生機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁21を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。ローラ本体2は、内部に設けられたジャケット室21Aにより、ローラ本体2の軸方向の表面温度を均一化する。
【0023】
しかして本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2の表面における金属箔Wが接触しうる負荷接触領域から気体を吹き出して、ローラ本体2から金属箔Wを部分的又は完全に浮かすことが可能に構成されている。なお吹き出す気体としては、例えば窒素、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスが考えられる。
【0024】
具体的には、図1及び図2に示すように、ローラ本体2の側周壁21に設けられた複数の気体流通路201と、各気体流通路201に対応して設けられて、気体流通路201に連通してローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202と、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を変更して、気体吹き出し口202から気体が吹き出す気体吹き出し領域Xを周方向において変更する吹き出し領域変更機構8とを備える。なお、この気体吹き出し領域Xは、吹き出し領域変更機構8による変更を行わない場合には、ローラ本体2の回転に関わらず周方向に移動することなく同一位置となる。
【0025】
複数の気体流通路201は、図2に示すように、ローラ本体2の側周壁21の全周に亘り等間隔に設けられている。そして各気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向に沿って延び設けられて、ローラ本体2の軸方向に沿って気体を流通するものである。この各気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向において、ローラ本体2の軸方向一端から負荷接触領域全体に亘って延びている。
【0026】
なお、これら気体流通路201は、ローラ本体2の側周壁21に設けられたジャケット室21Aとは異なる位置に設けられている。例えばジャケット室21A及び気体流通路201が相互に与える温度影響を考慮して隣接する気体流通路201の中央部にジャケット室21Aを設けることが望ましい。
【0027】
また、各気体流通路201には、図1及び図2に示すように、当該気体流通路201からローラ本体2の側周壁21内において径方向外側に延び、ローラ本体2の表面に開口する複数の気体吹き出し口202が形成されている。各気体流通路201に連通する複数の気体吹き出し口202は、ローラ本体2の軸方向において、負荷接触領域全体に亘って例えば等間隔に設けられている。
【0028】
そして、複数の気体流通路201は、ローラ本体2の軸方向一端面に開口しており、この気体流通路201は、ジャーナル4の側周壁に形成された気体導入路401に連通している。
【0029】
気体導入路401は、図1に示すように、一端がジャーナル4のフランジ42のローラ本体側端面に開口しており、他端がジャーナル4の駆動軸41の側周面411に開口している。この気体導入路401は、図3に示すように、駆動軸41の側周壁全周において等間隔に形成されるとともに、フランジ42の側周壁において放射状に形成されている。
【0030】
気体導入路401の一端開口401aは、ローラ本体2に設けられた2本の気体流通路201と連通するように構成されている。具体的には、図1及び図3に示すように、ローラ本体2の軸方向一端面において、周方向に隣接する2つの気体流通路201を連通する連通凹部2Mが形成されており、ローラ本体2の軸方向一端面にジャーナル4のフランジ42を接続した状態で、1つの気体導入路401の一端開口401aが連通凹部2Mに繋がるように構成されている。これにより、1つの気体導入路401に対して2つの気体流通路201が接続されることになる。また、気体導入路401の他端開口401bは、後述するスライド体81の設置スペースを考慮して、軸受51を介して機台52により回転自在に支持されている支持部分よりも外側で開口している。さらに気体導入路401の他端開口401bは、駆動軸41の周方向において等間隔且つ軸方向において同一位置に形成されている。
【0031】
吹き出し領域変更機構8は、ジャーナル4に形成された複数の気体導入路401のうち気体を導入する気体導入路401を変更することにより、気体を導入する気体流通路201を変更するものである。なお、本実施形態では1つの気体導入路401に2つの隣接する気体流通路201が接続されていることから、2つ単位で気体を導入する気体流通路201が変更される。
【0032】
この吹き出し領域変更機構8は、周方向に連続する気体導入路401に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体導入路401の本数を変更して、複数の気体流通路201のうち気体を導入する気体流通路201を変更し、気体吹き出し領域Xの周方向の角度範囲θを変更する(図2参照)。
【0033】
具体的な構成としては、図1に示すように、ジャーナル4の駆動軸41に対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体81と、当該スライド体81を静止側である機台52に対して駆動軸41の軸方向に移動させる移動機構82とを有する。なお、移動機構82は図1に示すように、ボルトを用いたねじ機構によって軸方向に移動させるものであるが、その他エアシリンダ等を用いたものであっても良い。
【0034】
スライド体81は、図1に示すように、気体源9からの気体を供給する気体供給管91が接続されており、供給された気体をジャーナル4の駆動軸41に開口した気体導入路401に導入するものである。具体的にスライド体81は、図4に示すように、ジャーナル4の駆動軸41の側周面に若干のガタつきを持って嵌る概略筒形状をなすものであり、その内周面に駆動軸41の外周面との間に気体供給空間Sを形成する凹部811が形成されている。なお、スライド体81及び駆動軸41の間には軸方向において凹部811を挟んで両側にベアリング83が設けられている(図1参照)。
【0035】
凹部811は、図4に示すように、周方向に形成されており、その凹部底面には、気体供給管91からの気体が流入する流入路812が形成されている。また、この凹部811の外側には、気体供給空間Sを気密にするために、Oリング等のシール部材813が設けられている。このように凹部811が周方向の所定角度範囲に形成されていることから、ジャーナル4が回転している状態において、一度凹部811に連通した気体導入路401の開口401bは、所定角度回転するまで凹部811と連通し続けることになる。つまり、ローラ本体2が回転している状態において、気体吹き出し領域Xに含まれる気体吹き出し口202は、連続的に気体を吹き出しながら回転することになる。なお、凹部811に連通しない気体導入路の開口401bは、スライド体81の内周面に覆われて閉塞され、気体は導入されない。
【0036】
そしてスライド体81は、ジャーナル4に対する軸方向の位置に応じて、凹部811に連通する気体導入路401の開口数が変更されるように構成されている。具体的には図5に示すように、スライド体81を展開した状態において、凹部811の開口形状が台形形状をなすものである。
【0037】
例えば、図5において、気体吹き出し領域Xを周方向において最大角度範囲θmax(図6参照)とするためには、スライド体81を軸方向に沿って左側に移動させる。なお、図6における最大角度範囲θmaxは、負荷接触領域全体に気体を吹き出し、金属箔W全体がローラ本体2に対して浮かせる角度範囲である。一方、気体吹き出し領域Xを周方向において最小角度範囲θmin(図7参照)とするためには、スライド体81を軸方向に沿って右側に移動させる。なお、図7における最小角度範囲θminは、負荷接触領域における接触開始部分から中央部分までの領域に気体を吹き出し、金属箔Wを部分的にローラ本体2に対して浮かせる角度範囲である。このようにスライド体81を軸方向に移動させることによって、気体吹き出し領域Xを最大角度範囲θmax及び最小角度範囲θminの間で変更することができる。なお最大角度範囲θmax及び最小角度範囲θminは、凹部811の周方向における幅寸法によって適宜変更可能である。
【0038】
次に、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100を用いた加熱システムについて説明する。この加熱システムは、図8に示すように、ロール本体表面と負荷(金属箔W)との距離を検出する距離検出部11と、負荷張力を検出する負荷張力検出部と、前記距離検出部11により検出されたロール本体表面と負荷との距離及び負荷張力検出部により得られた負荷張力、及びモータ12によって検出されるロール回転速度に基づいて、気体の吹き出し量又は気体の供給圧力によりロール本体表面と金属箔Wとの距離を調節する距離調節部13とを有する。また、この加熱システムにおいては、気体供給管91上に気体吹き出し口202に供給される気体を例えばローラ本体の表面温度等に予備加熱するための予備加熱器14が設けられている。
【0039】
距離検出部11は、例えば距離検出部11が設けられた位置から負荷までの距離を検出することにより、ローラ本体表面と負荷との距離を検出するものであり、例えば超音波距離センサやレーザ距離センサ等を用いることができる。距離調節部13は、例えば専用乃至汎用のコンピュータを用いて構成されるものであり、距離検出部11の距離検出信号、負荷張力検出部の張力検出信号及びモータの回転速度信号を受信して、気体源9又は気体供給管91に設けられた流量調整弁等の流量調節器(不図示)を制御して気体の吹き出し量又は気体の供給圧力を調節する。なお、気体の吹き出し量又は供給圧力は、ロール本体2の回転速度の関数で決まる量で調節される。
【0040】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、ローラ本体2の全周に気体吹き出し口202が設けられており、金属箔Wをローラ本体2から部分的又は完全に浮かすことができ、急激な熱膨張によってローラ本体表面との滑りにより生じる傷や皺の発生を防止することができる。また、完全に浮かせた場合には、ローラ本体2の回転速度と金属箔Wとのスピードの差により生じる傷を防止することができる。さらに、吹き出し領域変更機構8により、気体吹き出し領域Xの周方向における角度範囲θが変更されるので、金属箔Wを部分的に浮かせる又は完全に浮かせるといった変更を容易に行うことができる。その上、1つの誘導発熱ローラ100により、金属箔Wとローラ本体2との接触面積が異なるといった種々のパスラインに容易に対応することができる。
【0041】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、凹部811の展開した状態の開口形状としては、前記実施形態の他に、図9(A)に示すように、軸方向において一方から他方に行くにしたがって段階的に縮小するものであっても良いし、図9(B)に示すように、軸方向において中央部から一方及び他方に行くにしたがって縮小するものであっても良い。また、図9(C)に示すように、概略平行四辺形状をなすものであっても良いし、図9(D)に示すように、下底が周方向に沿って延びる概略台形状をなすものであっても良い。
【0043】
また、前記実施形態のスライド体81は、ジャーナル4に対して周方向に固定されているが、周方向にスライド可能に構成しても良い。これならば、スライド体81を周方向にスライドさせることによって、図10に示すように、気体吹き出し領域Xを、例えばその周方向寸法を保ったまま周方向に移動させることができる。
【0044】
さらに、前記実施形態の他に、図11に示すように、駆動軸41が回転可能となるように嵌り、駆動軸41の側周面に開口した気体導入路401に対応する複数の導入孔84aを有する例えば円筒状の第1のブロック体84と、当該ブロック体84を包囲して気体供給管からの気体を前記導入孔84aに導入するための導入空間S1を形成する第2のブロック体85を有し、前記導入口84aを蓋部材86によって閉塞することにより、気体を導入する気体導入路401を変更可能にすることもできる。これならば、ジャーナル4が回転する段階で、気体導入路401と導入孔84aとが連通しない状態が生じるものの、気体吹き出し領域Xを変更することができる。なお、ジャーナル4の外側周面に底面が気体導入路401と連通し、気体導入孔401の開口よりも大きい溝4mを設けることで、気体導入路401と導入孔84aとが連通しない状態を可及的に短くしている。
【0045】
その上、前記実施形態ではジャーナルに側周面に開口した気体導入路に気体を導入するものであったが、気体流通路がローラ本体の側周面に開口するものの場合には、スライド体をローラ本体の側周面に設けることで気体吹き出し領域を変更可能にすることができる。
【0046】
また、1つの気体導入路に2つの気体流通路を接続する構成の他、1つの気体導入路に1つの気体流通路又は3つ以上の気体流通路を接続するようにしても良い。なお、1つの気体導入路に1つの気体流通路を接続した場合には、気体吹き出し領域を周方向に細かく変更することができる。
【0047】
加えて、前記実施形態は加熱ローラ装置として誘導発熱ローラ装置について説明したが、その他、ローラ本体の中空内にヒータ等の加熱機構を配置した加熱ローラ装置、又はローラ本体の中空内に熱媒体を通流させることによってローラ本体を加熱又は冷却する熱媒体通流機構を有する流体通流ローラ装置についても適用可能である。
【0048】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100・・・誘導発熱ローラ装置(ローラ装置)
W ・・・金属箔(被加熱物)
2 ・・・ローラ本体
21 ・・・ローラ本体の側周壁
201・・・気体流通路
202・・・気体吹き出し口
3 ・・・誘導発熱機構(加熱機構)
4 ・・・ジャーナル
401・・・気体導入路
51 ・・・機台
X ・・・気体吹き出し領域
θ ・・・周方向の角度範囲
8 ・・・吹き出し領域変更機構
81 ・・・スライド体
811・・・凹部
S ・・・気体供給空間
9 ・・・気体源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されるローラ本体と、
前記ローラ本体の中空内に設けられて、前記ローラ本体を加熱又は冷却する機構と、
前記ローラ本体の側周壁の全周に亘り間隔を空けて設けられて、軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路と、
前記各気体流通路に対応して設けられて、当該気体流通路に連通して前記ローラ本体の表面に開口する複数の気体吹き出し口と、
前記複数の気体流通路のうち気体を導入する気体流通路を変更して、前記気体吹き出し口から気体が吹き出す気体吹き出し領域を周方向において変更する吹き出し領域変更機構とを具備するローラ装置。
【請求項2】
前記吹き出し領域変更機構が、周方向に連続する気体流通路に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体流通路の本数を変更して、前記気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更するものである請求項1記載のローラ装置。
【請求項3】
前記ローラ本体の軸方向端部に固定され、機台により回転自在に支持されるジャーナルと、
前記ジャーナルの側周壁に設けられて、一端が前記気体流通路に連通するとともに他端が前記ジャーナルの側周面に開口する複数の気体導入路とを備え、
前記吹き出し領域変更機構が、前記複数の気体導入路のうち気体を導入する気体導入路を変更することにより、気体を導入する気体流通路を変更するものである請求項1又は2記載のローラ装置。
【請求項4】
前記各気体導入路が、2以上の気体流通路と接続されている請求項3記載のローラ装置。
【請求項5】
前記吹き出し領域変更機構が、前記ジャーナルに対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体を有し、
前記スライド体が、気体源から供給される気体を前記気体導入路に導入するものであり、その内面に前記ジャーナルの側周面との間に気体供給空間を形成する凹部が形成されており、前記ジャーナルに対する軸方向の位置に応じて、前記凹部に連通する気体導入路の開口数が変更されるものである請求項3又は4記載のローラ装置。
【請求項1】
回転自在に支持されるローラ本体と、
前記ローラ本体の中空内に設けられて、前記ローラ本体を加熱又は冷却する機構と、
前記ローラ本体の側周壁の全周に亘り間隔を空けて設けられて、軸方向に沿って気体を流通する複数の気体流通路と、
前記各気体流通路に対応して設けられて、当該気体流通路に連通して前記ローラ本体の表面に開口する複数の気体吹き出し口と、
前記複数の気体流通路のうち気体を導入する気体流通路を変更して、前記気体吹き出し口から気体が吹き出す気体吹き出し領域を周方向において変更する吹き出し領域変更機構とを具備するローラ装置。
【請求項2】
前記吹き出し領域変更機構が、周方向に連続する気体流通路に気体を導入するものであり、その周方向に連続する気体流通路の本数を変更して、前記気体吹き出し領域の周方向の角度範囲を変更するものである請求項1記載のローラ装置。
【請求項3】
前記ローラ本体の軸方向端部に固定され、機台により回転自在に支持されるジャーナルと、
前記ジャーナルの側周壁に設けられて、一端が前記気体流通路に連通するとともに他端が前記ジャーナルの側周面に開口する複数の気体導入路とを備え、
前記吹き出し領域変更機構が、前記複数の気体導入路のうち気体を導入する気体導入路を変更することにより、気体を導入する気体流通路を変更するものである請求項1又は2記載のローラ装置。
【請求項4】
前記各気体導入路が、2以上の気体流通路と接続されている請求項3記載のローラ装置。
【請求項5】
前記吹き出し領域変更機構が、前記ジャーナルに対して周方向に固定されるとともに軸方向にスライド可能に装着されたスライド体を有し、
前記スライド体が、気体源から供給される気体を前記気体導入路に導入するものであり、その内面に前記ジャーナルの側周面との間に気体供給空間を形成する凹部が形成されており、前記ジャーナルに対する軸方向の位置に応じて、前記凹部に連通する気体導入路の開口数が変更されるものである請求項3又は4記載のローラ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−184086(P2012−184086A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48865(P2011−48865)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】
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