説明

ローラ転写装置

【目的】 レーザプリンタ、静電複写機等、静電転写プロセスを利用した画像記録装置に使用されるローラ転写装置に関し、転写ローラへの回転力の伝達に際して、転写ローラのトナー像担持体への押圧力に変動を与えることを防止し、転写画像の画質向上を目的とする。
【構成】 トナー像担持体1に対して付勢しつつ、該トナー像担持体上に形成したトナー像を転写媒体10上に転写する転写ローラ5と、該転写ローラ5と同心状に該転写ローラに対して一体化されている回転力受け装置16と、動力源15からの駆動力を前記回転力受け装置に直接に伝達する伝達装置18とを備えたローラ転写装置において、前記伝達装置の前記回転力受け装置への駆動力の伝達方向F2が、前記転写ローラ5のトナー像担持体1に対する付勢力の方向F1に対して直交する位置に、前記伝達装置18を前記回転力受け装置16に対して配設するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザプリンタ、静電複写機等、静電転写プロセスを利用した画像記録装置に使用されるローラ転写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】いわゆるカールソン法等の電子写真画像形成法によりトナー像担持体上に形成したトナー像を転写媒体上に転写する装置として、従来よりコロナ転写方式とバイアスローラ転写方式が良く知られている。コロナ転写方式は構造が簡単なためプリンタ・複写機等で広く使用されているが、高湿時に記録紙が吸湿して低抵抗になり転写不良を起こすこと、人体に有害なオゾンが発生すること、像担持体から記録紙を分離する際にトナーが飛散しシャープな画像が得られないこと等の問題点がある。一方、ローラ転写方式は圧力によりトナーが転写されるため、紙の吸湿状態に左右されにくく高湿時も安定した転写画像が得られ、トナーの飛散が少ないシャープな画像が得られる。またコロナ放電によるオゾンの発生がないため、ローラ転写法は上記のコロナ転写法における欠点を補う転写法と言える。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のローラ転写法では以下に述べるような問題点があり、実用化の障害になっていた。図4はローラ転写の転写部を拡大したものである。1は感光体ドラム、5は転写ローラ、10は記録紙、11はトナー像である。またAは感光体ドラムとトナー像との接触面、Bはトナー層間におけるトナー同士の接触面、Cはトナー像と記録紙10との接触面、Dは記録紙10と転写ローラ5との接触面を示す。感光体ドラム1は駆動手段であるモータ等(図示せず)から動力を受けて矢印方向に回転するようになっている。また転写ローラ5には駆動系が連結されておらず、感光体ドラム1に従動でき、転写ローラ5はトナー像と記録紙10を介して回転する力を受けて、矢印方向に回転することになる。したがって面A,面B,面C,面Dのうち、摩擦係数の小さい部分があれば、滑りが起こりやすいことになる。この滑りやすさは使用した感光体ドラム1、トナー、記録媒体10(紙やOHPシート等)、転写ローラ5の材料・表面形状等によって異なるが、一般に面Dの摩擦係数は比較的高くなるように設定されており、相対的に面A,面B,面Cのどこかで、部分的あるいは同時に滑りが発生しやすい。面A,面B,面Cのどこかで滑りが起こると、転写後の画像は、いわゆる転写ずれ・転写抜けが発生したり画像の縮みが発生しやすい。
【0004】このような問題を回避するためには、転写ローラ5に駆動系を連結すればよいが、この際不必要な力が発生して安定した転写画像が得られなかった。これについて図3を用いて説明する。図において1は感光体ドラム、5は転写ローラ、12は転写ローラの軸に直結したギア、13はモータ(図示せず)から転写ローラ5に駆動力を伝達するギアである。またαはギアの圧力角である。転写ローラ5はドラム1の法線方向に適正な圧力F1が作用するようにスプリング等(図示せず)により調整されている。また伝達ギア13はドラムの法線と角度αを成す位置に配置してある。これは、ギア13からギア12に駆動力を伝達する際に発生する力F2がドラムの法線に対して直角方向になるようにするためである。すなわち、このように配置することにより、転写圧力F1の変動をなくそうとすることを意図している。
【0005】しかし実際には、転写ローラは記録媒体の厚さに対応してドラム法線方向に動くため、ギア12とギア13との噛み合い位置が変動し、したがって回転伝達力F2の方向も変動して、ドラム法線方向に力が発生していた。その結果転写ローラ5のギア12の側の転写圧力F1だけが高くなり、転写むらや転写抜けが発生する。またギア12とギア13との噛み合い位置の変動が比較的大きい場合には、回転負荷が大きくなったり、歯の噛み合いが悪くなったりして転写ローラ5の回転変動を起こす。このような回転変動は、転写画像のピッチむらの原因になる。その他、転写ローラ5を配置する際にも、転写ローラは圧力により弾性変形するためギア12とギア13の噛み合い位置を最適な位置に設定することが困難である。
【0006】依って本発明は、転写ローラへの回転力の伝達に際して、転写ローラのトナー像担持体への押圧力に変動を与えることを防止し、転写画像の画質向上を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明は、トナー像担持体に対して付勢しつつ、該トナー像担持体上に形成したトナー像を転写媒体上に転写する転写ローラと、該転写ローラと同心状に該転写ローラに対して一体化されている回転力受け装置と、動力源からの駆動力を前記回転力受け装置に直接に伝達する伝達装置とを備えたローラ転写装置において、前記伝達装置の前記回転力受け装置への駆動力の伝達方向が、前記転写ローラのトナー像担持体に対する付勢力の方向に対して直交する位置に、前記伝達装置を前記回転力受け装置に対して配設したローラ転写装置を提供する。
【0008】
【作用】転写ローラを直接に回転駆動する力の方向が、該転写ローラのトナー像担持体に対する押圧方向に対して直交するため、転写圧力に影響を与えることはない。また、押圧方向に転写ローラが滑らかに移動するため押圧力は常に適正値になり、転写ローラの設定も容易になる。
【0009】
【実施例】以下、図面を用いながら本発明の実施例について詳細に説明する。図1は、本発明を用いた電子写真装置の一実施例を示す。図において、1は感光体ドラム、2は帯電器、3は露光器、4は現像器、5は転写ローラ、6は軸受、7はスプリング、8はバイアス電源、9はクリーナ、10は記録紙、14は転写ローラ5の軸受のガイド、15は駆動モータ、16は転写ローラ5に直結した同軸のプーリ、17はモータ15に直結したプーリ、18はタイミングベルトである。図において、転写ローラ5は、感光体ドラム1に対する圧力を、軸受6を介してスプリング7によって受けている。なお軸受はガイド14により押圧方向に滑らかに移動するようになっている。転写圧力は転写特性、特に転写効率に影響するため、1〜 500×10-3kgW/cm2 の範囲で良好な転写特性が得られる圧力になるようにスプリング7の変位量を変えることによって調整されている。また、バイアス電源8は転写ローラ5にバイアス電圧を印加するもので、感光体ドラム1から記録紙10にトナーを転写する時にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を発生する。バイアス電圧は圧力と同様に転写特性に大きく影響するため、転写ローラの抵抗率や転写媒体の抵抗率等を考慮して、転写時には 0.1〜4kVの範囲で良好な転写特性が得られる電圧に常時調整されている。
【0010】転写ローラ5は、図2にその断面図を示すように、ステンレス等の金属の芯金5a(外径8mm) に弾性体層5bとしての微小な気孔をもつ導電性の連続気孔体をライニングしたものである。本実施例では連続気孔体として、トーヨーポリマー製のポリウレタンスポンジ、ルビセル(登録商標)を用い、導電性を付与するためにカーボンブラック等の導電性付与剤を添加してある。弾性体層5bの体積抵抗率は、転写特性を大きく左右するので、102 〜1013Ωcmの範囲で調整され、本実施例では106 〜109 Ωcmとした。また硬度は、転写時の紙とトナー像との密着性に関係して転写特性に影響するため、十分な密着性が確保できる硬度として10〜40度(ASKER-C) という比較的低硬度に調整され、本実施例では30度(ASKER-C) にしてある。弾性体層5bの厚さは、硬度と同様に転写時の紙とトナー像との密着性に関与するため、1〜15mm程度の範囲で適宜決められ、本実施例では6mmとしている。
【0011】また本実施例では、プーリ16の中心とプーリ17の中心を結ぶ線が感光体ドラム1の法線と垂直関係になるようにプーリ16及びモータ15を配置してある。モータの回転速度は、感光体ドラム1の周速と転写ローラ5の周速がほぼ一致するように調整してある。以上のような構成の装置において、まず感光体ドラム1は、帯電器2により一様に帯電される。次に露光器3により静電潜像が形成され、現像器4により可視化されてトナー像となる。感光体上のトナー像が転写ローラ5との接触領域に達すると、それと同期して搬送されてきた記録紙10にトナー像が押圧され、同時に転写ローラ5にバイアス電源8から電圧が印加され、トナー像は感光体ドラム1から記録紙側に転写される。なお、転写されずに感光体ドラム上に残留したトナーはクリーナ9によって清掃され、帯電から始まる次のサイクルに備える。
【0012】本装置では、転写ローラ5の駆動伝達手段、即ち、回転力受け装置であるプーリ16への回転力伝達装置がタイミングベルト18であり、転写ローラ5と同心のプーリ16の中心とプーリ17の中心を結ぶ線が転写ローラ5と感光体ドラム1の共通法線(F1の方向)と垂直になっているため、駆動するときに発生する力F2は転写ローラ5の押圧方向(F1方向)に対して垂直方向になる。さらに厚みの異なる記録媒体が通過する際にも、転写ローラ5は押圧方向(F1方向)に滑らかに動くことができるので、常に一定の転写圧力を印加することが可能となる。ここで、転写ローラ5は、理論的には固定されているプーリ17の回転軸を中心として円弧状を移動することになるが、転写ローラ5の移動距離はプーリ16とプーリ17との距離に比べて相当に小さいため、近似的に転写ローラは直線運動をすると見なすことができる。
【0013】本装置において、上記のようなプロセスで印字評価を行ったところ、転写ローラ5を駆動する際に発生していた転写むらや転写抜け及び転写画像のピッチむらは発生しなかった。なお、本実施例では転写ローラ5の駆動伝達手段にタイミングベルト18を用いたが、駆動伝達手段はチェーン状のものでも良いし、孔,突起,凹凸等を有するベルト状のものでも良い。
【0014】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、転写ローラを駆動する時に発生する力の方向が、転写ローラの押圧方向に対して常に垂直となるように駆動伝達手段を設けているので、転写圧力変動によって起こる転写むらや転写抜けが発生することがなく、転写ローラの回転変動によって起こる転写画像のピッチむらも防止できる。また転写ローラの設定は、弾性変形量を気にする必要がないので、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るローラ転写装置の略示図である。
【図2】図1の装置に使用する転写ローラの断面図である。
【図3】従来のローラ転写装置の要部の作用説明図である。
【図4】ローラ転写装置による転写領域拡大図である。
【符号の説明】
1…感光体ドラム
5…転写ローラ
10…記録紙
15…駆動モータ
16…転写ローラと同軸のプーリ
18…タイミングベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トナー像担持体(1)に対して付勢しつつ、該トナー像担持体上に形成したトナー像を転写媒体(10)上に転写する転写ローラ(5)と、該転写ローラ(5)と同心状に該転写ローラに対して一体化されている回転力受け装置(16)と、動力源(15)からの駆動力を前記回転力受け装置に直接に伝達する伝達装置(18)とを備えたローラ転写装置において、前記伝達装置の前記回転力受け装置への駆動力の伝達方向(F2)が、前記転写ローラ(5)のトナー像担持体(1)に対する付勢力の方向(F1)に対して直交する位置に、前記伝達装置(18)を前記回転力受け装置(16)に対して配設したことを特徴とするローラ転写装置。
【請求項2】 前記回転力受け装置が歯付きプーリ(16)であり、前記伝達装置がタイミングベルト(18)であり、該タイミングベルトの張架方向が前記付勢力方向(F1)に対して直交して成る請求項1のローラ転写装置。
【請求項3】 前記回転力受け装置がスプロケットであり、前記伝達装置がチェーンであり、該チェーンの張架方向が前記付勢力方向(F1)に対して直交して成る請求項1のローラ転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−11637
【公開日】平成5年(1993)1月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−165674
【出願日】平成3年(1991)7月5日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)