説明

ローラ軸受

【課題】ローラジャーナル或いはローラの支承がローラジャーナルと軸受面の間の斜め状態でも悪影響を受けないように、溶融浸漬被覆装置内のローラ用のローラ軸受を改良すること。
【解決手段】溶融浸漬被覆装置のローラアーム(300)にローラ(200)のローラジャーナル(210)を支承するローラ軸受(100)であって、ローラ(200)がローラアーム(300)によって金属浴(400)に浸漬でき、金属浴を通過するストリップ(500)を案内するのに用いられる。支承がローラアームの斜め状態によって劣化されないように、溶融浸漬被覆装置の公知のローラ軸受を改良するために、この発明によると、ローラ軸受がカルダン式に形成されることが提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶融浸漬被覆装置のローラアームにローラのローラジャーナルを支承するローラ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
金属被膜用の溶融浸漬被覆を備えるストリップ装置では、次の金属浴が被覆浴と呼ばれていて、浴を通してストリップを案内する転向ローラ、修正ローラと安定化ローラが利用される。これらローラは先行技術に基づいてセラミック滑り軸受に支承されている。このための例は、ドイツ特許出願公開第19511943号明細書(特許文献1)、ドイツ特許出願公開第10227778号明細書(特許文献2)とドイツ特許第10236113号明細書(特許文献3)に公表されている。
【0003】
公知のローラ軸受は溶融浸漬被覆装置の所謂ローラアームに配置されていて、ローラアームによって各ローラが金属浴に浸漬される。この場合には、ローラがそのローラジャーナルを介してローラ軸受に支承されている。ローラアームに取付けられたローラ軸受は先行技術では通常は固定式に或いは一方向のみに移動自在に吊り下げられている。ローラジャーナルと軸受面の間の斜め状態では、この斜め状態が例えば整列ミス或いは熱変形によって生じ得るように、ローラジャーナルがもはや完全にローラ軸受に載置されない。その結果、より高い面圧とそれに関連したローラ軸受の摩耗とが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第19511943号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第10227778号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第10236113号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故に、この発明の課題は、ローラジャーナル或いはローラの支承がローラジャーナルと軸受面の間の斜め状態でも悪影響を受けないように、溶融浸漬被覆装置内のローラ用のローラ軸受を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、この発明によると、ローラ軸受がローラジャーナルをカルダン式に支承するためにカルダン式に形成されていることによって解決される。
【発明の効果】
【0007】
ローラ軸受のカルダン式構成は、ローラ軸受内のローラ或いはローラジャーナルがローラ軸線を中心に回転自在に支承されず、むしろ、追加的に少なくとも一つの別の自由度で移動でき、支承の品質が例えば増加した摩擦によって欠点として影響されなかったという利点を提供する。
【0008】
固有のローラ軸線を中心とするローラを回転させる可能性が次に第一自由度として述べられている。
【0009】
ローラ軸受の第一実施例によると、このローラ軸受はローラジャーナルと取付け部材を収容する開口を備えるローラアームに支承されたブッシュを備えていて、ブッシュ内の取付け部材が第一旋回軸線S1を中心に旋回自在に支承される。旋回軸線S1を中心に旋回させる可能性がローラ用の第二自由度を表わす。
【0010】
一つの他の実施例によると、ローラ軸受がローラジャーナル、取付け部材とローラジャーナル用の少なくとも一つの軸受部材を収容する開口を備えるローラアームに支承されたブッシュを備えていて、ブッシュ内の取付け部材が第二旋回軸線S2を中心に旋回自在に支承される。第二旋回軸線S2を中心に旋回させる可能性がローラ用の第三自由度を表わす。
【0011】
二つの上記に記載された実施例は、好ましくはローラ軸受の互いに組み立てでき、ローラがこの場合に三つの上げられた自由度を利用される。
【0012】
軸受部材に二つのV状に配置された軸受面の構成は、ローラジャーナルが軸受部材にそのローラジャーナルの支承では場所的或いは立体的位置で実施される回転運動中も安定化されるという利点を提供する。
【0013】
軸受部材、けれども、少なくともセラミック製軸受面の構成は、同じ高い温度硬度で僅かな摩耗しか生じないという利点を提供する。
【0014】
好ましくは軸受部材、けれども、少なくとも軸受面が摩耗部材として交換できる。
【0015】
取付け部材及び/又は軸受部材がブッシュの開口の縁に全く適合せずに、むしろ、ローラ軸受の負荷側にのみ配置されていて、そこでのみ溶融浸漬被覆装置の作動中、即ちローラによって金属浴に金属ストリップの転向中に力が軸受面に及ぼされる。
【0016】
円筒状ブッシュの中心軸線を中心に所定旋回角度αだけローラ軸受におけるブッシュ内に支承された取付け部材と軸受部材と一緒にブッシュを旋回させる可能性は、軸受面を備えるローラ軸受が力発生に対して対称的に整列され得て、力発生は転向された金属ストリップからローラへ及ぼされた引張力に基づいて調整されてローラ軸受に作用する。発生する力は浴表面に垂直に上方へいつも作用せずに、むしろ、その力方向が一次的にローラを中心に金属ストリップの入口と出口角度に依存し、それ故に、ローラ軸線を中心にローラジャーナル或いはローラの回転運動をさせる。むしろ、ローラジャーナルがローラブッシュの開口において緩く、即ち自由回転可能に支承される。負荷の場合には、即ち転向された金属ストリップによって生じる引張力の発生の際にローラジャーナルが下から上記軸受面に対して押圧され;この発生する引張力の欠陥の際に、即ち溶融浸漬被覆装置の非作動中、ローラを備えるローラジャーナルがブッシュの開口の最も深い点に下降し、ローラジャーナルが通常には軸受面に対してもはや接触しない。ブッシュの開口がローラジャーナルの直径より大きいので、可動ローラ軸線が通常には円筒状ブッシュの中心軸線と一致しない。
【0017】
この発明による記載されたローラ軸受が転向ローラに適用されず、むしろ、金属浴の内部或いは外部に金属ストリップを案内する修正ローラ或いは安定化ローラに適用される。
【0018】
この発明の別の好ましい構成は従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】溶融浸漬被覆装置の金属浴に浸漬されたローラを備えるローラアームを示す。
【図2】この発明のローラ軸受の構成を詳細に示す。
【図3】ローラアームに支承されたローラの第一横断面図を示す。
【図4】ローラアームに支承されたローラの第二横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明は、次に実施例の形態の図に基づいて詳細に記載されている。
【実施例】
【0021】
図1は、溶融浸漬被覆装置の本質的部分、即ちストリップ500、特に金属ストリップを被覆させる液状金属を収容させた金属浴400を示す。ローラアーム300にはローラ200が支承されて、金属浴400に浸漬される。ローラがこの発明によるローラ軸受100を介してローラアーム300に支承されている。図1におけるローラ200が金属浴内に金属ストリップ500を転向させるのに用いられる。大きなローラアーム300の傍には、図1では、より小さいローラアーム310、320が示され、これらローラアームにはこの発明によるローラ軸受100により金属ストリップ500を案内する修正ローラ或いは安定化ローラが支承されている。
【0022】
図2はこの発明によるローラ軸受100の構造的構成を具体的に説明する。このローラ軸受100はカルダン式に形成されて、ローラ200或いはローラジャーナル210用の運動可能性を複数自由度で提供する。
【0023】
図2には、ブッシュ110がローラジャーナル210を収容する開口112により支承されているローラアーム300の下端が示されている。ローラジャーナル210は開口112でローラ軸線Rを中心に自由回転自在に支承されている。ローラジャーナルの外面と開口の内面の間の場合によっては存在する遊びが有害ではない。ローラ軸線を中心に回転させる可能性がローラ200の運動用の第一自由度を表わす。
【0024】
第一実施例によると、ブッシュには取付け部材120が第一旋回軸線S1を中心に回転自在に支承されている。回転は例えば回転ボルトDを中心に行われる。この場合には、第一旋回軸線に対して対向位置して回転対称的に配置された面Fが丸くされるか、或いは円筒状に形成されて、ブッシュ内部で取付け部材の旋回運動を主として可能とする。第一旋回軸線S1を中心に回転させる可能性がローラ200用の第二自由度を表す。
【0025】
別の実施例によると、ローラジャーナル用の軸受部材130が取付け部材120内で第二旋回軸線S2を中心に旋回自在に支承されている。この旋回運動を可能とするために、取付け部材120と軸受部材130の対向位置する面が丸くされる、即ち円筒状に第二旋回軸線S2に対して形成されている。第二旋回軸線S2を中心に旋回させる可能性がローラ用の第三自由度を表す。
【0026】
第二自由度と第三自由度を実現させる上記実施例は、それぞれ個々に、しかし、互いに組合せて、ローラ軸受に実現され得て、図2ではこれが具体的に説明される。
【0027】
軸受部材130は二つのV状に配置された軸受面132a,132bを有し、これら軸受面にはローラジャーナル210が特に転向された金属ストリップ500による負荷の際に回転自在に支承されている。図2に示された実施例の場合には、ローラジャーナル210が下からV状に配置された軸受面132a,132bに対して押圧される。ローラジャーナル或いはローラのこの押圧は発生する力Fk によって行われ、その発生力がローラにより転向された金属ストリップによってローラとローラジャーナル上に及ぼされ、図2には例えば垂直上方に矢印方向に作用する。この作動状態では、開口112の底に対して完全に遊びが存在し、これは図2に示されている。軸受部材130は一部材或いは特に二部材に形成され得て、軸受部材のそれぞれ一部が軸受面132a,132bを有する。特に、軸受部材、だが少なくとも軸受面が摩耗部材として交換可能にローラ軸受に配置されている。軸受部材130、だが少なくとも軸受面132a,132bが特にセラミックから製造されていて、というのは、セラミックは一方では硬く、それで耐摩耗性であり、他方では金属浴内部に保持されるように、高い周辺温度に耐え得るからである。取付け部材と軸受部材は固定手段140によってブッシュ110の開口112の負荷側に固定されている。負荷側は同じ側であり、それに対してローラジャーナルが金属ストリップの転向の際に発生する引張力Fk に基づいて押圧される。
【0028】
図2には、ブッシュ110がローラアームに回転可能に支承されることが認識される。具体的にはブッシュが予め決定可能な回転角度αで整列できる。この際に、ブッシュが発生する引張力Fk の方向に整列されていて、この発生する引張力の方向は、金属ストリップがローラ200により転向される前に金属ストリップが金属浴に浸漬される角度と、金属ストリップが金属浴を去り、その後に金属ストリップがローラ200により転向された反射角度とに依存している。第一旋回軸線S1の方向が引張力Fk の方向と一致するときに、この発明によるローラ軸受は整列されている。整列は、両V状軸受面132a,132bが溶融浸漬被覆装置の作動中にローラジャーナルによる負荷の際に金属ストリップ500の転向の際に同様に強力に負荷される利点を有する。
【0029】
図3は図1による切断平面III−IIIにおけるローラアーム間に支承されたローラ200を備えるローラアーム300を通る横断面を示す。
【0030】
図3は視線方向IIIにおけるローラアーム300の斜め状態を示す。図3は、どのようにこの場合に、ローラ軸受100がローラアーム300の斜め状態を補償するかを示し、それによりローラ200或いはローラジャーナル210の支承が影響されなかった。具体的にはこの場合には、特に第三自由度が有効であり、この第三自由度では、軸受部材130が取付け部材に対して第二旋回軸線S2を中心に角度Aだけ旋回される。
【0031】
図3との差異では、図4は切断平面IV−IVにおいて図1の示された配列の正面図を
示す。ローラアーム300の斜め状態では、この斜視図から即ちX−Z平面において第二自由度が有効になり、この自由度では取付け部材120がブッシュ110に対して第一旋回軸線S1を中心に回転可能に支承される。この場合にも、カルダン式ローラ軸受によるローラアーム300の上記斜め状態の補償が行われる。図2に示された実施態様によるローラ軸受における第一、第二と第三の自由度の実現の際に、ローラの改良された摩擦のない支承がローラアームの斜め状態に依存して可能である。
【符号の説明】
【0032】
100.....ローラ軸受
110.....ブッシュ
120.....取付け部材
130.....軸受部材
140.....固定手段
132a,132b....V状軸受面
200.....ローラ
210.....ローラジャーナル
300、310、320.....ローラアーム
500.....金属ストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融浸漬被覆装置のローラアーム(300)にローラ(200)のローラジャーナル(210)を支承するローラ軸受(100)であって、ローラ(200)がローラアーム(300)によって金属浴(400)に浸漬でき、金属浴を通過するストリップ(500)を案内するのに用いられるローラ軸受において、ローラ軸受(100)がカルダン式にローラジャーナル(210)を支承するように、カルダン式に形成されていることを特徴とするローラ軸受(100)。
【請求項2】
ローラアーム(300)に支承されたブッシュ(110)がローラジャーナル(210)と取付け部材(120)を収容する開口(112)を備えて、取付け部材がブッシュ内に第一旋回軸線(S1)を中心に旋回自在に支承されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ軸受(100)。
【請求項3】
ローラアーム(300)に支承されたブッシュ(110)がローラジャーナル(210)、取付け部材(120)とローラジャーナル(210)用の少なくとも一つの軸受部材(130)を収容する開口(112)を備えて、軸受部材(130)が取付け部材(120)内で第二旋回軸線(S2)を中心に旋回自在に支承されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ軸受(100)。
【請求項4】
取付け部材(120)がブッシュ(110)内で第二旋回軸線(S2)に垂直に立つ第一旋回軸線(S1)を中心に旋回自在に支承されていることを特徴とする請求項3に記載のローラ軸受(100)。
【請求項5】
軸受部材(130)が二つのV状に配置された軸受面(132a,132b)を有し、それら軸受面上にローラ(200)のローラジャーナル(210)が特に転向された金属ストリップ(500)による負荷の際に回転可能に支承されていることを特徴とする請求項3或いは4に記載のローラ軸受(100)。
【請求項6】
軸受部材(130a,130b)が二部材に形成されていて、両軸受面(132a,132b)が軸受部材のそれぞれ一部に組み込まれていることを特徴とする請求項5に記載のローラ軸受(100)。
【請求項7】
軸受部材(130)だが、少なくとも軸受面がセラミックから仕上げられていることを特徴とする請求項5或いは6に記載のローラ軸受(100)。
【請求項8】
少なくとも一つの軸受部材(130)が摩耗部材として交換可能であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載のローラ軸受(100)。
【請求項9】
取付け部材(120)及び/又は軸受部材(130)が金属ストリップの転向の際にローラジャーナル(210)の押圧力を受けるローラ軸受の負荷側にのみ形成されていて; 取付け部材(120)と軸受部材(130)が固定手段(140)によってローラ軸受の負荷側に固定されていることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載のローラ軸受(100)。
【請求項10】
ブッシュ(110)がブッシュに支承された取付け部材(120)と軸受部材(130)と一緒に、軸線S1とS2に垂直に立つ軸線(R)を中心に旋回可能に支承されて、特定回転角度(α)に一定に調整できることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか一項に記載のローラ軸受(100)。
【請求項11】
回転角度(α)は、両V状軸受面(132a,132b)が溶融浸漬被覆装置の作動中にローラジャーナル(210)による負荷の際に金属ストリップ(500)の転向の際に均一強力に負荷されるように選定されていることを特徴とする請求項10に記載のローラ軸受(100)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−518253(P2010−518253A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547574(P2009−547574)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000449
【国際公開番号】WO2008/098661
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)
【Fターム(参考)】