説明

ローラ部材の製造方法

【課題】本発明の目的は、リングヘッドによる乾燥工程において、塗工欠陥による外観不良を抑えることで画像不良を防ぎ、高品質なローラ部材を安定して製造するローラ部材の製造方法を提供することである。
【解決手段】軸芯体と、その外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周に形成された表面層とを有するローラ部材の該表面層を、リングヘッドにより形成するローラ部材の製造方法において、表面層形成用塗料を塗布するのと同時に塗布表面層に気体を吹きかけ乾燥させる乾燥工程を有し、該表面層形成用塗料の主溶剤の相対蒸発速度rと、該塗料が塗布された直後のゴムローラ近傍の風速vが、
5≦rv≦200
r:主溶剤の相対蒸発速度(酢酸ブチルを1とする)
v:ゴムローラ近傍の風速(m/min)
を満たすことを特徴とするローラ部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にLBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等のOA機器における、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いるローラ部材(帯電ローラ等)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リングヘッドによる軸芯体表面への薄膜層の形成は、リングヘッドの内周面の全周にわたって開口されたスリットから円周均一に塗料を吐出して、リングヘッドと軸芯体を相対的に移動させることにより行うことができる(特許文献1、2)。しかし、薄膜層を形成するために低粘度で垂れやすい塗料を塗布する場合、軸芯体上での塗料の垂れによる外観不良が発生しやすくなる。
【0003】
また従来のリングヘッドを用いた塗布方法では、弾性層を有する軸芯体(ゴムローラ)に表面層を形成する場合、軸芯体のマスキングを兼ねたゴムローラの把持部材表面へも同時に塗料を塗布する。このため、塗料が把持部材に付着してしまうことがあり、把持手段に付着した塗料がゴムローラの弾性層上へ流れ出すことによる外観不良も発生しやすくなる(特許文献3)。
【0004】
ローラ部材を電子写真装置や複写機などの画像形成装置において帯電ローラとして使用する場合、ローラ部材は、感光ドラムに圧接させられ、表面に所定の極性の電位で一様に帯電処理がなされる。そのため、ローラ部材の外径精度、表面粗さの均一性、さらには弾性層上に形成された表面層の均一性は重要である。しかし、上記のように塗料の塗りムラがあると表面層が不均一になるため、ローラ部材の抵抗値にばらつきが生じ、感光ドラム表面を均一に帯電することができずに画像不良が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−95440号公報
【特許文献2】特開昭61−8164号公報
【特許文献3】特開2006−17154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リングヘッドは、上記したように、当該リングヘッドから塗料を吐出させて弾性層の周面に表面層を形成することの他に、当該リングヘッドから空気などの気体を吐出させて弾性層の周面に形成した塗布表面層を乾燥することなどにも利用されている。塗布表面層の乾燥工程は表面層の均一性に大きく影響する工程である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、リングヘッドによる塗布工程、乾燥工程において、塗工欠陥による外観不良を抑えることで画像不良を防ぎ、高品質なローラ部材を安定して製造するローラ部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るローラ部材の製造方法は、
軸芯体と、その外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周に形成された表面層とを有するローラ部材の該表面層を、リングヘッドにより形成するローラ部材の製造方法において、
該表面層形成用塗料を塗布するのと同時に塗布表面層に気体を吹きかけ風乾させる塗布・乾燥工程を有し、
該表面層形成用塗料の主溶剤の相対蒸発速度rと、該塗料が塗布された直後のゴムローラ近傍の風速vが、
5≦rv≦200
r:主溶剤の相対蒸発速度(酢酸ブチルを1とする)
v:ゴムローラ近傍の風速(m/min)
を満たすことにより達成される。
【0009】
また、前記乾燥工程が、前記ゴムローラの外周に配置されて、リングヘッドの内周面の全周にわたって開口された吐出口から気体を吐出して塗布表面層を乾燥する工程であることを特徴とする。
【0010】
さらに、前記主溶剤の相対蒸発速度rは、前記表面層形成用塗料の供給路における溶剤の温度を測定し、該供給路に設けた温度調節手段により、制御されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リングヘッドによる塗布工程、乾燥工程において、塗工欠陥による外観不良を抑えることで画像不良を防ぎ、高品質なローラ部材を安定して製造するローラ部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るローラ部材の製造方法により製造されるローラ部材は、図1に示される構造を有する。図1においてローラ部材1は、軸芯体1a、弾性層1b、表面層1cで構成される。軸芯体1aの外周には弾性層1bが設けられており、更に弾性層1bの外周には表面層1cが設けられている。
【0013】
以下、本発明に係るローラ部材の製造方法を、ゴムローラ成形後、本発明のリングヘッドによる塗布工程、乾燥工程により弾性層上に塗布表面層を形成し、乾燥させて製造する例で更に詳細に説明する。
【0014】
[ゴムローラの作製]
まず、軸芯体上に弾性層を成形してゴムローラを製造する方法としては、円筒金型に同心に軸状の軸芯体を保持する2つの円筒駒を組み、弾性層材料を注入後加熱することにより材料を硬化させてゴムローラを成形する射出成形がある。また、弾性層材料をチューブ状に押出した後、軸芯体にチューブ状の弾性層材料を被せる、或いは軸芯体と弾性層材料を一体に押出して弾性ローラを成形する押出成形、トランスファー成形、プレス成形等がある。しかし、特に限定されるものではない。製造時間の短縮を考えると弾性層材料を軸芯体と一体に押出してゴムローラを成形する押出成形が好ましい。
【0015】
前記押出成形は、クロスヘッドを備えた押出機により行うことができ、軸芯体送りローラによって送られた軸芯体をクロスヘッドの後ろから挿入し、軸芯体と同時に円筒状の弾性層材料を一体に押出す。その後、端部を切断・除去処理を行い、ゴムローラが得られる。
【0016】
ゴムローラの加熱方法に関しては、熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線による加熱、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、更に加熱状態の円筒状又は平面状の部材に回転させながら押し当てる方法を用いても良い。また、加熱後に所望のローラ形状、ローラ表面粗さにするために回転砥石を用いた乾式研磨をする場合もある。
【0017】
前記のゴムローラの軸芯体として使用する材質は、ニッケルメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレススチール棒、リン青銅棒、アルミニウム棒、耐熱樹脂棒が好ましい。
【0018】
また、軸芯体上に設けられた弾性層は導電性の弾性層である。このような弾性層を構成するゴム材料の例としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム、熱可塑エラストマー等が挙げられる。
【0019】
弾性層中に分散させる導電剤の例としては、カーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、金属粉、導電性の繊維、酸化スズ等の半導電性金属酸化物粉体、更にこれらの混合物等が挙げられる。
【0020】
[表面層の形成方法]
次に、本発明に係るゴムローラへのリングヘッドによる塗布方法について詳細に説明する。
【0021】
図2において、3は塗布用のリングヘッド、1dは、軸芯体1aの周面に弾性層1bが形成されているゴムローラである。また、8は、弾性層1bの周面に形成された塗布表面層である。また、2は、ゴムローラ1dを把持し、塗布用のリングヘッド3に対して移動させるゴムローラ搬送手段である。
【0022】
ゴムローラ1dは、塗布用のリングヘッド3と同心となるように配置する。また、ゴムローラ1dは、ゴムローラ1dの把持部材2に固定して垂直状態に保持する。更に、ゴムローラ1dと塗布用スリット4は所定の間隔をなすよう配置されている。
【0023】
まず、塗布用のリングヘッド3の外部にある、不図示の液供給手段(シリンジポンプ、不図示)から、液供給口7に塗料を供給する。
【0024】
供給された塗料は、液分配室6の全周にわたって、ほぼ充填される。その後、塗布用スリット4に向けて流動するが、液絞り部5を通過することで、流速が上昇し、周方向の塗料のより一層の均一化が図られる。そして、塗布用スリット4から、弾性層1bの表面に吐出される。
【0025】
ゴムローラ1d表面への塗料の吐出速度は、0.023mL/sが好ましい。
【0026】
また、ゴムローラ1dの把持部材2表面への吐出量とゴムローラ1d表面への吐出量を変化させても良い。
【0027】
例えばゴムローラ1dの弾性層1b表面への吐出量を所望の塗布膜厚等より算出し、これよりも少ない吐出量でゴムローラ1dの保持部材2表面に塗布する。これにより、ゴムローラ1dの保持部材2から塗料がゴムローラ1dの表面に垂れるのを有効に抑えられる。
【0028】
さらに、弾性層1bの表面に塗布された塗布表面層8には、塗料の塗布と同時に塗布用のリングヘッド3の上部に配置された乾燥用のリングヘッド9の乾燥用スリット10から吐出された気体が吹きかれられ、塗布表面層8の乾燥を行う。
【0029】
図2に乾燥用のリングヘッド9を示した。10はリングヘッドの内周面の全周に開口された気体の吐出口(乾燥用スリット)、11は気体の供給口、である。本実施形態において、乾燥用のリングヘッド9は、塗布用のリングヘッド3上にスペーサ12を挟んで配置しているが、これに限ったものではない。
【0030】
このとき、本発明において表面層形成用塗料の主溶剤の相対蒸発速度rと該塗料が塗布された直後のゴムローラ近傍の風速vは、
5≦rv≦200
r:主溶剤の相対蒸発速度(酢酸ブチルを1とする)
v:ゴムローラ近傍の風速(m/min)
である。
【0031】
塗布用のリングヘッドにより弾性層上に塗料を塗布した直後には、塗布された塗料表面から溶剤の蒸発が起こる。このとき溶剤の蒸発が速い方が、塗布された塗料の濃度上昇にともなう粘度上昇も速いため、垂れを抑制する効果が大きい。またこの溶剤の蒸発は表面近傍の風速の影響を受ける。蒸発が進むにつれ表面近傍では溶剤蒸気の濃度が上昇し、溶剤の蒸気圧が飽和蒸気圧に近づく。蒸発は、溶剤蒸気圧とその飽和蒸気圧の差が大きいほど速く進行するので、溶剤の液面近傍の蒸気を拡散させ、溶剤蒸気圧の上昇を防げば蒸発は促進される。
【0032】
鋭意検討を行った結果、rv値が前記の範囲以内であれば、ゴムローラの弾性層上に塗布された塗料の乾燥が適度となる。これにより、弾性層上での塗料の垂れ、又は把持部材に付着した塗料がゴムローラの弾性層上へ流れ出すことによる塗工欠陥による外観不良が発生することなく表面層を形成することができるため、高品質なローラ部材が得られる。
【0033】
rv値が5を下まわる場合には、塗料の乾燥が遅くなり前記垂れが発生する。これに対し、rv値が200を超える場合には、塗料の乾燥が速すぎるため塗工スジ等の塗工不良が発生する。
【0034】
塗料の主溶剤の相対蒸発速度rは、塗料の温度管理によって制御することが可能である。すなわち、表面層形成用材料の溶解性や塗布性を満足するために蒸発の遅い垂れやすい溶剤を使用する場合、溶剤温度を上げることで相対蒸発速度を高くすることができる。これにより、rv値が前記範囲内に入るため、垂れを生じることなくローラ部材を得ることができる。
【0035】
溶剤温度を管理する手段は特に限定されるものではないが、たとえば、塗料の供給路において、温度センサーを配置し、測定した温度と設定値とを比較し温度調節を行う温度調節手段を配置することで達成される。
【0036】
主溶剤、酢酸ブチルの蒸発速度は、面積が既知の容器に溶剤を量り取り、所定時間蒸発させた後再び計量して蒸発量を求めることにより測定する。なお、基準とした酢酸ブチルの蒸発速度は0.8mg/(cm2・min)である。
【0037】
塗布表面層を形成している瞬間のゴムローラ近傍の風速vは、リングヘッドに供給する気体の供給速度により制御することができる。ゴムローラ近傍の風速vは、風速計により測定する。ここで、塗布被覆層を形成している瞬間のゴムローラ近傍とは、ゴムローラ表面から20mmの範囲を指す。
【0038】
塗布用のリングヘッドの内周面の全周にわたって開口された吐出口の幅は0.01mm以上1.0mm以下が好ましく、塗料の液粘度、塗料への添加材料によって選択・決定される。
【0039】
表面層形成用材料としては、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系、アクリル系、ウレタン変性アクリル系、シリコーン変性ウレタン系材料が用いられる。特にフッ化アルキル基及びオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有する材料が好ましい。
【0040】
本発明に使用できる溶剤としては、前記rv値の範囲を満たすことができ、かつ、前記表面層形成材料に対して溶解性が良好な溶剤が用いられる。例えば、エタノール、2−ブタノールなどのアルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン等、或いは、これらを混合したものが挙げられる。
【0041】
塗料の粘度は、10nm以上1000nm未満の表面層を形成するためには低粘度の塗料の方が好ましく、B型粘度計の値で0.5〜2.0mPa・sが好ましい。
【0042】
本発明における塗料の濃度は、10nm以上1000nm未満の薄膜層を形成する観点及び表面層形成材料の溶解性の観点から、主溶剤の含有量が50〜99質量%であることが好ましい。
【0043】
ゴムローラとリングヘッドの相対移動速度は、1〜200mm/sが好ましい。前記範囲内では、ゴムローラ表面への円周方向の塗布の均一性及び乾燥の均一性が高い。
【0044】
乾燥用の気体としては化学的に不活性で安定な気体が好適である。例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。
【0045】
また気体の温度、湿度を任意に設定しても良い。
【0046】
更に、供給側圧力ラインのドレンやゴミなどを防止するために供給側圧力ラインと精密レギュレータの間にエアーフィルタ、ミストセパレイタを入れることが好ましい。
【0047】
また、本発明のローラ部材の表面層について、層厚は電気特性或いは強度の上で、薄膜である方が良く、10nm以上1000nm未満とする。ここで、例えば、表面層の層厚が10nm未満の場合、表面層としての電気特性や表面自由エネルギー特性を満足しきれない可能性がある。また、表面層の層厚が1000nm以上の場合、表面層の硬度が大きいと表面層が弾性層に追従しきれずに割れる可能性がある。
【0048】
次に、ゴムローラ表面に塗料を吐き出して形成した塗布表面層の硬化方法について説明する。塗布表面層は加熱硬化させても良い。この場合は、熱風炉、熱盤、遠・近赤外線による加熱、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、或いはこれらの加熱方法を併用しても良い。また、活性エネルギー線を照射して硬化させても良く、この場合は短時間での硬化が可能になる。活性エネルギー線は紫外線でも電子線でも良い。また、塗布表面層を活性エネルギー線で照射する場合は弾性層も同時に改質・硬化される。特に、弾性層が二重結合を有するゴムの場合は活性エネルギー線での照射による改質・硬化の効果が大きいため好ましい。
【0049】
本発明のローラ部材の製造方法により得られたローラ部材は、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等の画像形成装置の電子写真用部材として用いられる。ここでは、帯電ローラとして用いた場合の使用形態を図3に示した。画像形成装置は、回転ドラム型・転写方式の電子写真装置であって、13は像担持体としての電子写真感光体(感光ドラム)であり、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光ドラム13は、その回転過程で帯電手段としての電源E1から帯電バイアスを印加した帯電ローラ14により周面が所定の極性・電位(本実施例では−600V)に一様帯電処理される。次いで露光系15により目的の画像情報に対応したネガ画像露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて周面に目的画像情報の静電潜像が形成される。その後、静電潜像がマイナストナーによる反転現像方式のトナー現像ローラ16によりトナー画像として現像される。そしてそのトナー画像が感光ドラム13と転写手段としての転写ローラ17との間の転写部に不図示の給紙手段から所定のタイミングで転写材が給送される。転写ローラ17に対して電源E2から約+2〜3KVの転写バイアスが印加され感光ドラム13面の反転現像されたトナー像が転写材に対して順次転写されていく。トナー画像の転写を受けた転写材は、感光ドラム13面から分離されて不図示の定着手段へ導入されて像定着処理を受ける。トナー画像転写後の感光ドラム13面は、クリーニング手段18で転写残りトナー等の付着汚染物の除去処理を受けて清浄面化されて繰り返して作像に供される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
各実施例及び比較例において形成したローラ部材表面層の外観上の欠陥(塗工むら、液垂れ等)は、目視にて下記のように評価を行った。
評価A:塗工むら等の欠陥が全く無い
評価B:塗工むら等の欠陥がほとんどない
評価C:塗工むら等の欠陥がある。
【0052】
また、製造したローラ部材を帯電ローラとして用いた際の画像の欠陥は、ローラ部材を電子写真用カートリッジに組み込み、23℃、湿度60%の環境でハーフトーンの画像を出力し、これを目視にて下記のように評価を行った。
評価A:画像むら等の欠陥が全く無い
評価B:画像むら等の欠陥がほとんどなく、実用上問題ない
評価C:画像むら等の欠陥がある(実用上不具合がある)。
【0053】
(実施例1)
<リングヘッド>
本実施例で用いたリングヘッドは、図2に示されるリングヘッドを用いた。
【0054】
(塗布用のリングヘッド)
塗布用のリングヘッド3は外径42mm、内径8.7mmであり、全周に開口された吐出口(塗布用スリット)4は幅0.1mmである。
【0055】
(乾燥用のリングヘッド)
乾燥用のリングヘッド9は外径42mm、内径10mmであり、全周に開口された気体の吐出口(乾燥用スリット)10は幅0.35mmである。
【0056】
(スペーサ)
スペーサ12は高さ10mmのものを使用した。
【0057】
<ゴムローラの作製>
以下の原料を加圧式ニーダーで15分間混練した。
・NBR(アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム) 100質量部
(商品名:「Nipol DN219」、日本ゼオン(株)製)
・カーボンブラック1 14質量部
(商品名:「旭HS−500」、旭カーボン(株)製)
・カーボンブラック2 4質量部
(商品名:「ケッチェンブラックEC600JD」、ライオン(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 1質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・炭酸カルシウム 30質量部
(商品名:「ナノックス#30」、丸尾カルシウム(株)製)
【0058】
更に加硫促進剤(DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫促進剤(TBzTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド)3質量部及び加硫剤(イオウ)1.2質量部を加え、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。次いで、外径φ6mm、長さ252mmのステンレス棒の軸芯体を用意した。ここで、クロスヘッド押出機を用いて上記軸芯体と未加硫ゴム組成物とを一体に押出してゴムローラを成形した。その後160℃、1時間の加熱加硫を行い、更に回転砥石を用いた乾式研磨、端部の切断・除去処理により、厚み1.25mm、長さ232mmのゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
【0059】
<表面層の形成>
下記原料を用意した。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES):12.47g(0.045mol)
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES):43.08g(0.179mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS):13.21g(0.064mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6):16.32g(0.032mol)(加水分解性シラン化合物総量に対して10mol%相当)
・水:25.93g
・エタノール:74.16g
【0060】
上記原料を混合した後、室温で撹拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物を加水分解し、縮合して加水分解性縮合物を得た。この加水分解性縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤(2−ブタノール/エタノール=10/65(質量比))に添加することによって、固形分7質量%の加水分解性縮合物含有アルコール溶液を調製した。上記固形分7質量%の加水分解性縮合物含有アルコール溶液を28g、主溶剤であるエタノール72gを混合・撹拌し、固形分2質量%のエタノール溶液を作製した。この加水分解性縮合物含有エタノール溶液100gに対して0.4gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:「アデカオプトマーSP−150」、旭電化工業(株)製)を添加し表面層用の塗料を調製した。
【0061】
先に作製したゴムローラを、前記リングヘッドと同心となるように配置し、リングヘッドの液供給口に、先に調製した塗料を供給して、ゴムローラの弾性層の周面に塗布表面層を形成した。また、同時に気体の供給口から空気を供給し、塗布表面層を乾燥した。
【0062】
ゴムローラの表面に対してリングヘッドを85mm/sの一定の速度で垂直移動すると同時に、前記塗料を0.07mL、0.023mL/sの吐出速度で塗布した。
【0063】
その際、塗料の液温は20.1℃であり、主溶剤であるエタノールの相対蒸発速度は1.5であった。また、ゴムローラ近傍の風速は52m/sであった。したがって、rv=80.1であった。
【0064】
その後、低圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング製)による紫外線照射を5分間行った。低圧水銀ランプに関しては、主に254nmの波長を代表とする紫外線で、この時の紫外線積算光量は約10000mJ/cm2であった(紫外線強度は35mW/cm2)。
【0065】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には塗工むら等による外観不良は見られなかった(評価:A)。
【0066】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本実施例のローラ部材は良好な画像が得られた(評価:A)。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
ゴムローラ近傍の風速を8m/sにした以外は、実施例1と同様にしてローラ部材を作製した。その際、液温は19.9℃であり、主溶剤であるエタノールの相対蒸発速度は1.5であった。したがってrv=12.3であった。
【0068】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には塗工むら等による外観不良は見られなかった(評価:A)。
【0069】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本実施例のローラ部材は良好な画像を得ることができた(評価:A)。結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
塗料の主溶剤としてエタノールの代わりにメチルエチルケトンを用いた以外は、実施例1と同様にしてローラ部材を作製した。その際、液温は20.0℃であり、主溶剤であるメチルエチルケトンの相対蒸発速度は3.7であった。したがってrv=192.4であった。
【0071】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には極薄いスジ状の塗工むらが見られた(評価:B)。
【0072】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本実施例のローラ部材は良好な画像を得ることができた(評価:A)。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
塗料の主溶剤としてエタノールの代わりに2−ブタノールを用い、ゴムローラ近傍の風速を8m/sとした以外は、実施例1と同様にしてローラ部材を作製した。その際、液温は20.2℃であり、主溶剤である2−ブタノールの相対蒸発速度は0.6であった。したがってrv=5.2であった。
【0074】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には極僅かな液垂れが見られた(評価:B)。
【0075】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本実施例のローラ部材は液垂れによる画像欠陥が僅かに見られた(評価:B)。結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
塗料の主溶剤としてエタノールの代わりに酢酸エチルを用いた以外は、実施例1と同様にしてローラ部材を作製した。その際、液温は20.2℃であり、主溶剤である酢酸エチルの相対蒸発速度は4.2であった。したがってrv=218.4であった。
【0077】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には液垂れによる外観不良が見られた(評価:C)。
【0078】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本比較例のローラ部材は外観上の欠陥による画像欠陥が見られた(評価:C)。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
塗料の主溶剤としてエタノールの代わりに2−ブタノールを用い、ゴムローラ近傍の風速を5m/sにした以外は、実施例1と同様にしてローラ部材を作製した。その際、液温は20.2℃であり、主溶剤である2−ブタノールの相対蒸発速度は0.6であった。したがってrv=3.2であった。
【0080】
本実施例のローラ部材表面を目視で評価した結果、ローラ部材表面には液垂れによる外観不良が見られた(評価:C)。
【0081】
更に、このローラ部材を図5に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光ドラムの両端に500gずつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による初期画像評価を行った。この評価において、本比較例のローラ部材は外観上の欠陥による画像欠陥が見られた(評価:C)。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】ローラ部材
【図2】リングヘッドによる塗布、乾燥の模式図
【図3】画像形成装置の概略を示す構成図
【符号の説明】
【0084】
1 ローラ部材
1a 軸芯体
1b 弾性層
1c 表面層
1d ゴムローラ
2 ゴムローラの把持部材(ゴムローラ搬送手段)
3 塗布用のリングヘッド
4 全周に開口された吐出口(塗布用スリット)
5 液絞り部
6 液分配室
7 液供給口
8 塗布表面層
9 乾燥用のリングヘッド
10 全周に開口された気体の吐出口(乾燥用スリット)
11 気体の供給口
12 スペーサ
13 電子写真感光体(感光ドラム)
14 帯電ローラ(帯電手段)
15 露光系
16 現像ローラ(現像手段)
17 転写ローラ(転写手段)
18 クリーニング手段
E1、E2、E3 バイアス印加用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、その外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周に形成された表面層とを有するローラ部材の該表面層をリングヘッドにより形成するローラ部材の製造方法において、
表面層形成用塗料を塗布するのと同時に塗布表面層に気体を吹きかけ乾燥させる乾燥工程を有し、
該表面層形成用塗料の主溶剤の相対蒸発速度rと、該塗料が塗布された直後のゴムローラ近傍の風速vが、
5≦rv≦200
r:主溶剤の相対蒸発速度(酢酸ブチルを1とする)
v:ゴムローラ近傍の風速(m/min)
を満たすことを特徴とするローラ部材の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程が、前記ゴムローラの外周に配置されて、リングヘッドの内周面の全周にわたって開口された吐出口から気体を吐出して塗布表面層を乾燥する工程であることを特徴とする請求項1に記載のローラ部材の製造方法。
【請求項3】
前記主溶剤の相対蒸発速度rは、前記表面層形成用塗料の供給路における溶剤の温度を測定し、該供給路に設けた温度調節手段により、制御されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のローラ部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のローラ部材の製造方法により製造された10nm以上1000nm未満の表面層を有することを特徴とするローラ部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−109737(P2009−109737A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281852(P2007−281852)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】