説明

ローラ

【課題】嵌合穴に嵌合軸を嵌合して接着剤にて接合するローラの嵌合穴と嵌合軸の接合面に接着剤が均一に行き渡り、十分な接合強度が得られるようにする。
【解決手段】ローラ本体1の端部に、この端部に設けた嵌合穴3a,3bに軸部材2a,2bの嵌合軸4a,4bを嵌合すると共に、接着剤にて接合することにより軸部材2a,2bを連結するようにしたローラであって、上記嵌合軸の嵌合面に円周方向にわたる溝5a〜5cを軸方向に複数設け、軸方向両側の一方端側の溝に接着剤注入口を、他方端側の溝に接着剤排出口をそれぞれ開口し、接着剤注入口から接着剤排出口に至る溝の相互を迷路状に連通し、上記接着剤注入口と接着剤排出口のそれぞれに連通する孔をローラ本体と軸部材との連結部の端面に設けた構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向端部に軸部材を有するローラであり、かつこの軸部材をローラ本体と別部材にし、この軸部材の基端部をローラ本体の端部に設けた穴内に嵌合すると共に、接着剤にて固定するようにしたローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のローラにあっては、例えば図1、図2に示すように、ローラ本体aの端部に嵌合穴bを設けておき、一方、軸部材cに上記嵌合穴bに嵌合する嵌合軸dを設け、この嵌合軸dの周面に接着剤を塗布して嵌合穴bに嵌合することにより、ローラ本体aの嵌合穴bに軸部材cの嵌合軸dを接着剤にて固定するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−48789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のローラにあっては、ローラ本体aの嵌合穴bの内周面と軸部材dの嵌合軸dの外周面は共に単純な円筒面になっているため、嵌合軸dの外周面に接着剤を塗布して、この嵌合軸dを嵌合穴bに嵌合したときに、嵌合面間において接着剤分布にムラが生じて接合が弱くなることがあった。
【0005】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、嵌合穴と嵌合軸との接合面に接着剤がムラなく均一に行き渡るようにして十分な接合強度が得られるようにしたローラを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るローラは、ローラ本体の端部に、この端部に設けた嵌合穴に軸部材の嵌合軸を嵌合すると共に、接着剤にて接合することにより軸部材を連結するようにしたローラであって、上記嵌合穴と嵌合軸の一方の嵌合面に円周方向にわたる溝を軸方向に複数設け、軸方向両側の一方端側の溝に接着剤注入口を、他方端側の溝に接着剤排出口をそれぞれ開口し、接着剤注入口から接着剤排出口に至る溝の相互を迷路状に連通し、上記接着剤注入口と接着剤排出口のそれぞれに連通する孔をローラ本体と軸部材との連結部の端面に設けた構成になっている。
【0007】
請求項2に係るローラは、上記請求項1に係るローラにおいて、溝が仕切りにて仕切られた複数の環状の溝であり、仕切りに溝間を連通する通路となる切り欠きを、接合剤注入口と接合剤排出口に対して円周方向に位置をずらせた位置に設けた構成になっている。
【0008】
請求項3に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、複数の溝を螺旋状に連通した構成になっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローラ本体と軸部材との連結部の端面に設けた孔から接着剤注入口に接着剤を注入し、この接着剤が接着剤排出口から排出されて、これが上記連結部の端面に設けた孔から押し出されてきたことを目視することにより、嵌合部の嵌合面に設けた溝内に接着剤が充満したことを確認することができる。そしてこのときの溝内の通路は迷路状になっていることにより、溝内の接着剤に一定の圧力が作用して接着剤は溝内に気泡が混入することがなくなって、嵌合穴と嵌合軸との接合面に接着剤をムラなく均一に行き渡らせることができて十分な接合強度を得ることができる。
【0010】
上記のように接合面への接着剤の塗布が一定圧力で機械的に行うことができることにより、この接合面の接着剤の塗布を熟練を要することなく誰でも容易に、かつ短時間に行うことができて、人員的な省力と作業時間の短縮を図ることができ、製造工数の削減によるコスト的効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のローラの嵌合穴と軸部材の嵌合前の状態を示す断面図である。
【図2】従来のローラの嵌合穴と軸部材の嵌合状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係るローラを示す一部破断面図である。
【図4】軸部材を示す正面図である。
【図5】軸部材の断面図である。
【図6】軸部材の図4に示した状態から90度回転した状態を示す正面図である。
【図7】軸部材の図6に示した状態から180度回転した状態を示す正面図である。
【図8】ローラ本体の嵌合面側に溝を設けた実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図3以下に基づいて説明する。図3において、1は中空構成(中実構成でもよい)のローラ本体、2a,2bはこのローラ本体1の両端に嵌合して接合される軸部材である。ローラ本体1の両端部には嵌合穴3a,3bが設けてあり、この嵌合穴3a,3bに上記軸部材2a,2bの各嵌合軸4a,4bが密に嵌合されている。
【0013】
上記ローラ本体1の嵌合穴3a,3bと各軸部材2a,2bとの接合構成は、基本的に同一なので、以下にその一方を図4から図7にて説明する。
【0014】
軸部材2aの嵌合軸4aは、ローラ本体1の嵌合穴3aに可及的に同径に近づけた外径を有して、これの内径に密に嵌合可能にした円柱状になっており、この嵌合軸4aの周面に環状で、かつ幅広の溝5a,5b,5cが軸方向に複数、例えば3本設けてある。そして各溝5a〜5cの間が外径が嵌合軸4aの外径と同径の環状の仕切り6a,6bとなっている。各溝5a〜5cは、図6、図7に示したところの上記各仕切り6a,6bに設けた切り欠き7a,7bにて連通されている。この切り欠き7a,7bの相互は、嵌合軸4aの周方向に大きな角度、例えば相互に180度ずれた位置に設けられている。
【0015】
上記複数の溝5a〜5cの、1番手前側の溝5aに例えば接着剤注入口9aが、1番奥側の溝5cに接着剤排出口9bが開口してある。そして各口9a,9bに連通する孔10a,10bが軸部材2aの手前側端面に設けてある。なお、接着剤注入口9aが1番奥側の溝に、接着剤排出口9bが1番手前側の溝にそれぞれ開口してもよい。この両口9a,9bは、上記仕切り6a,6bの切り欠き7a,7bと位相が大きく、例えば180度ずれた位置に開口されていて、接着剤注入口9aから接着剤排出口9bに至る溝相互間の通路は迷路状になっている。
【0016】
上記構成のローラ本体1と軸部材2a,2bとの結合作業を一方の軸部材2aにて説明する。
【0017】
ローラ本体1の嵌合穴3aに軸部材2aの嵌合軸4aを嵌合する。ついで孔10aに接着剤の供給ノズルを接続して接着剤を注入する。この孔10aから注入された接着剤は、接着剤注入口9aより1番手前側の溝5a内に注入される。
【0018】
そして接着剤がこの溝5a内に充満してから隣の溝5bとの間の仕切り6aに設けた切り欠き7aから隣の溝5bに流入し、順次各溝内に充満した状態で1番奥側の溝5cに充満して、これに連通している接着剤排出口9bより押し出されて軸部材2aの孔10bより手前側へ排出されてくる。そしてこの接着剤排出口9bに連通した孔10bから接着剤が排出してくることにより、上記各溝5a〜5c内にこの溝5a〜5cの空気を排除した状態で接着剤が均等に充満したことを確認することができる。この接着剤の充填完了後、接着剤の硬化時間を経ての接着剤の硬化により、各溝5a〜5cの部分の全面においてローラ本体1の嵌合穴3a,3bの内面との間でムラのない接合が行われる。
【0019】
上記実施の形態において、各溝5a〜5cを図示では比較的深くしたが、この溝5a〜5cの深さは略0.8mm程度が適当である。またこの溝5a〜5cは、それぞれ仕切り6a,6bで仕切った環状にした例を示したが、これは螺旋状にして全長にわたって連続した構成にしてもよい。この場合、仕切りも螺旋状になり溝の相互を連通する切り欠きは不要になる。そしてこの螺旋状の溝の一端部に接着剤注入口9aを、他端部に接着剤排出口9bを開口させる。
【0020】
本発明の構成では、互いに接着する相互の部材は金属同士に限らず、金属とプラスチック、プラスチックとプラスチック等、それぞれに適した接着剤の選定により、各種組み合わせの材料間での接合にも応用できる。
【0021】
また、上記実施の形態では接着剤充填用の溝5a〜5cを軸部材2a,2b側に設けた例を示したが、図8に示すように軸部材2a(2b)の嵌合軸4a′(4b′)を円筒状にし、ローラ本体1の嵌合穴3a′(3b′)側に上記環状の溝5a′〜5c′を、あるいは螺旋状に溝を設けるようにしてもよい。この場合も、ローラ本体1の端部の肉厚が薄いので、接着剤注入口9aと接着剤排出口9bは嵌合軸4a′(4b′)側に設けた方がよいが、これらをローラ本体1側に設けてもよいことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るローラは、輪転印刷機の引張りローラ、インクローラ、版胴、圧胴、ガイドローラ等のローラ部材に、さらには他の機械分野におけるローラ部材に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…ローラ本体、2a,2b…軸部材,3a,3b,3a′,3b′…嵌合穴、4a,4b,4a′,4b′…嵌合軸、5a,5b,5c,5a′,5b′,5c′…溝、6a,6b…仕切り、7a,7b…切り欠き、8…手前側端面、9a…接着剤注入口、9b…接着剤排出口、10a,10b…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ本体の端部に、この端部に設けた嵌合穴に軸部材の嵌合軸を嵌合すると共に、接着剤にて接合することにより軸部材を連結するようにしたローラであって、
上記嵌合穴と嵌合軸の一方の嵌合面に円周方向にわたる溝を軸方向に複数設け、
軸方向両側の一方端側の溝に接着剤注入口を、他方端側の溝に接着剤排出口をそれぞれ開口し、
接着剤注入口から接着剤排出口に至る溝の相互を迷路状に連通し、
上記接着剤注入口と接着剤排出口のそれぞれに連通する孔をローラ本体と軸部材との連結部の端面に設けた
ことを特徴とするローラ。
【請求項2】
溝が仕切りにて仕切られた複数の環状の溝であり、仕切りに溝間を連通する通路となる切り欠きを、接合剤注入口と接合剤排出口に対して円周方向に位置をずらせた位置に設けたことを特徴とする請求項1記載のローラ。
【請求項3】
複数の溝を螺旋状に連通したことを特徴とする請求項1記載のローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241966(P2011−241966A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117151(P2010−117151)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】