説明

ロールの内側よりも厚い縁端部を有するポリビニルブチラールロール、およびその製造方法

本発明は、内側領域よりも厚い縁端部を有するポリビニルブチラールの押出シートに関し、それによって、エージング中にロール縁端部の円周が減少することによりロールが円筒形状になるように、そのシートをロール上に巻き取り、エージングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2004年1月23日に出願された米国仮出願第60/538,904号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックシートまたはプラスチックフィルムの層(中間層)を含む透明合わせガラスの製造において、中間層を製造するための製造工程において、製造後工程の欠陥によって問題が発生する場合がある。これらの問題は、これらの欠陥のある工程を使用して製造された中間体を使用して製造される合わせガラスの視覚的性質に影響を与えうる。少なくとも、得られる合わせガラスは、同一ではないにしても類似している工程履歴を有する積層体の品質において不整合性の問題を有しうる。
【0003】
視覚的欠陥は、合わせガラスの製造工程における予備プレスの脱気不十分により生じることがある。このような視覚的欠陥の1つは、積層体の予備プレスが効果的に脱気されない場合に得られることがある「虎の皮」の外観である。この虎の皮の現象は、積層中、ガラスパネルの間に中間層シーティングが平坦に配置されなかった場合に生じうる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、シートが押し出されるときに、中間層の厚さが内側領域よりも縁端部の方で厚くなる中間層材料の押出ポリマーシートに関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、円筒形状のポリマーロールの製造方法であって、ポリマーシートの最縁端部が、ポリマーシートの中間部分よりも厚くなるようにポリマーシートを押し出すステップと、最初にロールの縁端部がロールの中間よりも大きな円周を有するように、押し出されたシートを巻き取りロール上に巻き取ることによって、押し出されたポリマーからロールを形成するステップと、縁端部におけるポリマーロールの円周が、ポリマーロールの中間の円周の10%以内となるのに十分な時間の間ポリマーロールを巻き取りロール上に維持するステップとを含む方法に関する。
【0006】
別の態様において、本発明は、本発明の方法により製造された中間層を含む改善された積層体に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
少なくとも1枚のガラスを含む層状構造中に使用すると好適な可塑化PVBシーティングおよびその他の熱可塑性中間層などの中間層は、当技術分野において公知の方法によって製造される。可塑化PVBの製造は、たとえばPhillips(フィリップス)の米国特許第4,276,351号明細書(Phillips(フィリップス))、およびHussey(ハッセイ)らの国際公開第96/28504号パンフレット(Hussey(ハッセイ))に開示されている。Phillips(フィリップス)の文献においては、相溶化量のテトラエチレングリコールジエチルヘキサノエートがPVBとの混合に使用されて樹脂が可塑化されている。Hussey(ハッセイ)の文献においては、PVBシートを製造するために可塑剤に加えて接着調整剤が使用される。多種多様の接着調整剤をポリビニルブチラールシーティングに使用することができる。本発明においては、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエートおよびテトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエートからなる群より選択される相溶化量のグリコールエステル、あるいはトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレートおよびトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートなどの相溶化量の分岐または未分岐のジエステルを使用してPVBシートが可塑化され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のカルボン酸塩、たとえばギ酸塩、酢酸塩など、またはそれらの組み合わせを接着調整剤として含有する。このようなシーティングの製造方法は、Moynihan(モイナハン)の米国特許第4,292,372号明細書(Moynihan(モイナハン))に開示されている。
【0008】
Moynihan(モイナハン)の文献に記載されている中間層は、自動車フロントガラスおよびサイドウインドウ、ならびに列車およびバスなどの自動車以外の輸送用車両の窓および風防ガラス中の本体ガラス、ならびにビルおよび建築物の窓ガラス要素における使用に好適となる場合がある。
【0009】
これらの用途の大部分での使用に適した積層体は、積層前または積層中に予備積層構造から空気および取り込まれた気体を除去するステップである脱気ステップを必要とする1つ以上の工程によって製造することができる。PVB層状構造中の表面の間から大部分の空気を効率的に除去するには、予備積層体を出るのに十分な排出通路を形成するために、PVBシーティングの表面を粗面化するべきであることが知られている。機械的エンボス加工によって、または中間層シートの押出中にメルトフラクチャーを形成させた後冷却して取り扱い中に粗さを維持することによって実施することができる。表面粗さの維持は、積層準備中に取り込まれた空気の効率的な除去を促進するため、本発明の実施において重要である。しかし、驚くべきことに表面粗さの維持だけでは、空気の効率的な除去を保証できないことが分かった。
【0010】
中間層材料を後に積層する場合の問題に、製造後の取り扱いおよび保管手順が寄与する場合がある。このことは、中間層材料がポリビニルブチラール(PVB)ポリマーである場合に特に当てはまる場合がある。積層中に、ガラスなどの積層される表面の表面上にPVBが平坦に配置されない場合に特に問題となりうる。これは、PVBが平坦でない場合に積層体中に空気が取り込まれやすくなるためである。本発明においては、驚くべきことに、ガラスに対して平坦に配置されにくくなるPVBの時として発生する傾向が、時間が経過すると縁端部の領域の長さが短くなるPVBシートの傾向によるものとして特定できた。言い換えると、押出PVBシートをロール形態でエージングすると、ロールは、内側領域よりもシートの周辺部において円周(すなわち直径)が短くなりうる。シートの内側よりも短い円周を有するPVBでは、積層のためのPVBの取り付けにおいて平坦に配置しにくくなり、そのため積層中の非効率的な脱気の原因となりうる。
【0011】
エージング時にPVBロールがより円筒形状に近づくように、内側領域よりも周辺部が厚くなるように設計されたPVBシーティングは、従来の押出装置を使用して製造することができる。縁端部がシートの内側よりも厚くなるようにシートを押し出すためのあらゆる公知の方法が、本発明の実施のための使用に好適となる。たとえば、中央部よりも縁端部の方が高くなるように押出ダイを設定することができ、可変性収縮など縁端部を厚くするための他の技術を使用することもできる。
【0012】
シーティング中央と縁端部との間の厚さの差は、シーティング公称厚さ、シーティング幅、表面パターン構造、およびシーティングの残留張力に依存して変動する。さらに、シーティングの中央および縁端部からの厚さの断面の変化は、エージング時のロール全体の円周の減少を補正するように制御する必要がある。厚さ補償前にエージングしたロールの円周の減少を測定することによって、この円周の減少の良い初期推定値を容易に求めることができる。
【実施例】
【0013】
以下の実施例および比較例は本発明の説明を意図しており、本発明の範囲の限定を意図するものでは決してない。
【0014】
PVBシーティングの一般押出手順
非ブチラール化ビニルアルコール基が公称23重量%の100部の乾燥PVBフレークを、2軸スクリュー押出機中で、1種類以上の光安定剤および酸化防止剤とあらかじめ混合されている35〜40部のテトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエートまたはPVBと併用すると有用であることが知られている他の可塑剤と連続的に混合する。得られた溶融物を、スロットダイに通して、シーティングの内側の公称厚さ0.038mmおよび縁端部の公称厚さ0.040mmのシーティングを形成する。
【0015】
室温における脱気効率
組立体中の間隙空間の絶対圧力を測定することが可能な装置を使用して、特殊なパターンを有する中間層の脱気効率を求める。上部ガラス板の中央に孔を開けたことを除けば、通常の組立体として試験する中間層を組み立てる。ガラス、中間層、およびすべての補助設備は、試験前に22.5±2.5℃で1時間平衡化させる必要がある。中間層が両面で2つの明確に異なるパターンを有する場合は、評価すべき表面パターンを有する面を、孔を有するガラス板と接触させる。圧力(または真空)カプラーの底部を、ガラスの孔の周囲に取り付けて封止する(真空カプラーは、接続した場合に、密閉物と外側との間で空気を移動可能にする装置である)。織物片(幅約30mm)を組立体の縁端部周囲に巻き付ける。別の真空カプラープレートの底部を、コーナーの1つの2層の綿織物(50mm×50mm)の表面に配置する。次に、周囲が通気性である組立体、およびカプラーの2枚の底部プレートとを厚さ0.1mmのナイロン袋の中に入れる。次にこの袋をヒートシールする。底部プレートのすぐ上で袋に十字に切り込みを入れる。図1に示されるようにナイロン袋を介して真空カプラーを取り付け、漏れがないように注意する。コーナープレートを真空源(大気圧基準で公称−84kPa)に取り付け、そのコーナープレートを真空計または較正した圧力変換器に取り付ける。真空を適用した後に所与の間隔で、真空計の読み取り値(または変換器の出力)を記録する。記録データは、真空適用後最初の1分間で10秒間隔、その後1/2分間で15秒間隔、その後さらに1/2分間で30秒間隔、さらに減圧適用から最大10分間で1分間隔での絶対間隙圧力を含む。効率的な真空脱気が可能な表面では、数分以内に絶対間隙圧力が急激に低下する。減圧90秒後における間隙圧力は、中間層の脱気がいかにうまく行えるかの指標となる。減圧90秒後において、絶対間隙圧力が53.3kPaを超える場合は、脱気が不十分であり、その中間層は真空脱気に適していない。
【0016】
高い周囲温度における脱気効率
高い周囲温度における脱気効率の測定は、試験する中間層、ガラス、カプラーのすべてを試験前に30.5±2.5℃で平衡化させることを除けば室温における測定と同様である。減圧90秒後における、絶対間隙圧力が53.3kPaを超える場合は、脱気が不十分であり、その中間層は、夏期のような周囲温度が高い場合の真空脱気に適していない。
【0017】
実施例1
ポリビニルブチラールシーティングを前述の一般手順により押し出す。このシーティングはテトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエートで可塑化される。このシーティングについて、前述の手順により22.5℃および30.5℃において脱気効率を試験する。
【0018】
実施例2
ポリビニルブチラールシーティングを前述の一般手順により押し出す。このシーティングはトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートで可塑化される。このシーティングについて、前述の手順により22.5℃および30.5℃において脱気効率を試験する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間層材料の押出ポリマーシートであって、前記シートが押し出されるときに、前記中間層は、その内側領域よりも縁端部の方が厚くなる押出ポリマーシート。
【請求項2】
円筒形状のポリマーロールの製造方法であって、ポリマーシートの最縁端部が、前記ポリマーシートの中間部分よりも厚くなるようにポリマーシートを押し出すステップと、最初にロールの前記縁端部がロールの前記中間よりも大きな円周を有するように、前記押し出されたシートを巻き取りロール上に巻き取ることによって、前記押し出されたポリマーからロールを形成するステップと、縁端部における前記ポリマーロールの円周が、前記ポリマーロールの前記中間の円周の10%以内となるのに十分な時間の間ポリマーロールを巻き取りロール上に維持するステップとを含む方法。
【請求項3】
本発明の方法により製造された中間層を含む積層体。

【公表番号】特表2007−518610(P2007−518610A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551421(P2006−551421)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/002413
【国際公開番号】WO2005/070651
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】