説明

ロールブランケット乾燥装置

【課題】 乾燥効率を高める。
【解決手段】 ブランケットロール1のロール軸心方向と平行な方向にブランケット2の幅寸法に応じて延び、底面をブランケット2の外周面に沿う湾曲形状の流路形成面4とし、その湾曲方向の中央部にロール軸心方向と平行な方向に延びるスリット状の吸込口6を備えてなる乾燥ブロック3を、ブランケット2の外側に配置して、流路形成面4とブランケット2の外周面との間に、空気流路5を形成する。流路形成面4には、ロール軸心方向と平行な方向に延びる乱流形成溝11を設ける。吸引手段9により吸込口6を減圧して空気流路5に両端の空気取入口5aより吸込口6へ向けて空気12を流通させるときに、乱流形成用溝11により空気流れ方向に垂直な乱流の渦を発生させることで、ブランケット2の外周面近傍の空気12を撹拌し、ブランケット2の表面付近の溶剤蒸気圧を常に低減させることで、溶剤の蒸発を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷の実施時に印刷インクの溶媒を吸収して膨潤するブランケットロールのブランケットを乾燥させるために用いるロールブランケット乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の1つの形式として知られているオフセット印刷装置では、版の印刷パターン溝(凹部)に付けた印刷インクをブランケットロールの外周面へ一旦転写(受理)処理し、次いで、上記ブランケットロールより印刷対象の表面へ印刷インクの再転写(印刷)処理を行う印刷サイクルを繰り返し行うと、該ブランケットロールの外周部に設けてあるブランケットが次第に上記印刷インクの溶媒(溶剤)を吸収し(ブランケットに印刷インクの溶媒が次第に染み込んで)、該ブランケットが膨潤するという現象が生じることが知られている。
【0003】
ところで、近年、金属蒸着膜のエッチング等による微細加工に代えて、導電性ペーストを印刷用のインクとして用いた印刷技術、たとえば、凹版オフセット印刷技術を用いて基板上に液晶ディスプレイ等の画像表示素子の電子回路を印刷して形成する手法が提案されてきている。
【0004】
上記基板上に電子回路を印刷により形成する場合は、電極となる線幅として、たとえば、10μm程度と微細なものが要求されることがあり、よって、紙等に文字や画像を印刷する通常のオフセット印刷に比して高い印刷精度が要求される。
【0005】
そのため、この種の高い印刷精度が要求されるオフセット印刷装置では、印刷処理時に前記したような印刷インクの溶媒の吸収によりブランケットが許容以上に膨潤すると、版からの転写(受理)ができなくなることがあり、又、ブランケットの膨潤によりブランケットの厚み寸法が変化すると、ブランケットロールの外径寸法に変化が生じ、更には、上記ブランケットにおける膨潤した部分が柔らかくなってしまうため、該ブランケットロールの周速や、該ブランケットロールを版や印刷対象に接触させるときの印圧(接触圧力)が変化して、高い印刷精度を満足させることができなくなり、又、ブランケット自体の寿命が短くなる虞が懸念される。
【0006】
そこで、微細(高精細)な印刷パターンを高い印刷精度で印刷することが求められるオフセット印刷装置において、上記ブランケットの膨潤に起因する問題を回避するために、印刷処理時に、ブランケットロールによる版及び印刷対象との印刷インクの転写及び再転写の印刷サイクルが終了すると、次の印刷サイクルに入るまでの間に、ブランケットロールの外周部のブランケットに対し、空気接触手段の空気噴出口部より空気を吹き付けて、該ブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を乾燥させるようにすることが従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
又、別の手法として、オフセット印刷装置において、ブランケットロールのブランケットと、該ブランケットの外周表面に沿わせて配置した円弧状に延びるカバー部材との間に形成した流路の一端側と他端側に、送風ブロワーと排気ブロワーを接続して、版より上記ブランケットロールのブランケットの外周表面に印刷パターンを転写(受理)した状態のときに、該印刷パターンを上記流路に臨む位置に配置させてから、上記送風ブロワーより供給される乾燥した空気を、上記流路に流通させることにより、上記ブランケットの外周表面の印刷パターンを或る程度乾燥させて、印刷インクの溶媒によるブランケットの膨潤を防止できるようにすることが従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0008】
更に、真空吸引カバーをブランケットの外周面に近接させて配置し、該真空吸引カバーの真空排気流路に接続した真空ポンプによって上記真空排気流路を真空に引くことにより、上記ブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を吸引して除去することも従来提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−231683号公報
【特許文献2】特開2008−254415号公報
【特許文献3】特開2000−135852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記特許文献1に示されたものは、ブランケットの外周面に空気を吹き付けるようにしてブランケットに吸収された印刷インクの溶媒を乾燥させるものであり、該ブランケットの外周面に吹き付けられた空気が衝突する個所においては、空気の流れを乱すことはできると考えられるが、上記ブランケットの外周面に衝突した後の空気はそのままブランケットの外周面に沿い流すだけであり、しかも、上記ブランケットの外周面と空気接触手段との間には、一様な隙間が形成されているのみであるため、上記ブランケットに衝突した後の空気が上記隙間を通るときには、空気の流れが層流となり易い。そのため、ブランケットの表面より印刷インクの溶媒の蒸気(蒸発溶媒)が空気中へ放散されるときに該ブランケットの表面近傍における上記溶媒の蒸気圧を常に下げて乾燥効率の向上化を図るという効果を得ることは難しい。
【0011】
更に、特許文献1に示されたものでは、空気をブランケットの外周面に吹き付けて流すものであるため、ブランケットの乾燥に供された後のインクの溶媒の蒸気を含んだ空気が周辺環境に放出されてしまい、該周辺環境の悪化が懸念される。
【0012】
一方、引用文献2に示されたものは、ブランケットと、円弧状のカバー部材との間に形成した流路へ流通させる空気によって上記ブランケットの外周表面に転写(受理)された印刷パターンの印刷インクの溶媒を乾燥させるためのものであるため、該ブランケットの外周表面に対して接触させる空気の流速は、上記印刷パターンに乱れが生じない程度に制限されてしまう。
【0013】
又、上記流路は、ブランケットの外周表面に沿って一様に形成されているに過ぎないため、前記特許文献1に記載されたものと同様の問題がある。
【0014】
上記特許文献3に示されたものは、真空吸引カバー内を減圧することでブランケットの外周面からのインクの溶媒の蒸発を促すものであるが、ブランケットの外周面を空気の流れを利用して乾燥させるというものではない。
【0015】
そこで、本発明は、オフセット印刷装置での印刷処理の実施時にブランケットロールのブランケットに染み込む印刷インクの溶媒を、該ブランケットの表面付近に乱流を発生させながら流通させる空気の流れにより効率よく乾燥させることができ、しかも、印刷インクの溶媒の蒸気を含んだ空気の周辺環境への放出を防止できるロールブランケット乾燥装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ブランケットロールのロール軸心方向と平行な方向に延び且つ底面を上記ブランケットロールの外周部に設けてあるブランケットの外周面に沿う湾曲形状の流路形成面としてなる乾燥ブロックを、上記ブランケットの外周面の乾燥対象位置の外側に配置して、上記乾燥ブロックの流路形成面と上記ブランケットとの間に、空気取入口より上記乾燥ブロックの流路形成面に設けた吸込口まで該ブランケットの外周面に沿って空気を流通させるための空気流路を形成し、空気が上記空気流路に入り上記吸込口に至る間の上記流路形成面に、上記ロール軸心方向と平行な方向に延びる乱流形成部を備え、上記空気流路を流通する空気の流れに上記乱流形成部により乱流を生じさせて、上記空気流路におけるブランケットの外周面近傍の空気を撹拌できるようにしてなる構成を有するロールブランケット乾燥装置とする。
【0017】
又、上記構成において、乾燥ブロックの流路形成面に設ける吸込口を、ブランケットロールのロール軸心方向と平行な方向に延びるスリット状とし、且つ該吸込口を吸引手段に接続した構成とする。
【0018】
更に、上記各構成において、空気流路の空気取入口に、空気供給手段を接続するようにした構成とする。
【0019】
更に又、上記各構成において、乱流形成部を、乾燥ブロックの流路形成面に乱流形成用溝と、乱流形成用凸部のいずれか一方からなる構成、又は、乱流形成用溝と乱流形成用凸部を交互に設けてなる構成とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロールブランケット乾燥装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。(1)ブランケットロールのロール軸心方向と平行な方向に延び且つ底面を上記ブランケットロールの外周部に設けてあるブランケットの外周面に沿う湾曲形状の流路形成面としてなる乾燥ブロックを、上記ブランケットの外周面の乾燥対象位置の外側に配置して、上記乾燥ブロックの流路形成面と上記ブランケットとの間に、空気取入口より上記乾燥ブロックの流路形成面に設けた吸込口まで該ブランケットの外周面に沿って空気を流通させるための空気流路を形成し、空気が上記空気流路に入り上記吸込口に至る間の上記流路形成面に、上記ロール軸心方向と平行な方向に延びる乱流形成部を備え、上記空気流路を流通する空気の流れに上記乱流形成部により乱流を生じさせて、上記空気流路におけるブランケットの外周面近傍の空気を撹拌できるようにしてなる構成としてあるので、空気流路を流通する空気の流れ、及び、該空気の流れに対して乱流形成部によって形成させる乱流により、上記空気流路に臨む上記ブランケットの外周面近傍に、印刷インクの溶媒の蒸気濃度が低い空気の流れを常に存在させることができるため、該印刷インクの溶媒のブランケットの表面からの蒸発を促進させて、該ブランケットに染み込んだ印刷インクの溶媒を効率よく乾燥させることができる。
(2)したがって、オフセット印刷装置におけるオフセット印刷処理を実施する際に、上記ブランケットが印刷インクの溶媒によって膨潤する虞を抑制できるようになることから、上記オフセット印刷処理の連続性を向上させることが可能になる。
(3)上記空気流路を流通させることによりブランケットからの印刷インクの溶媒の乾燥に供された後の該溶媒の蒸気を含む空気を、吸込口より回収することにより、上記印刷インクの溶媒の蒸気によって周辺環境が悪化する虞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のロールブランケット乾燥装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は概略切断側面図、(ロ)は乾燥ブロックの流路形成面に設けた乱流形成用溝を拡大して示す切断側面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】本発明の実施の他の形態を示す図2に対応する図である。
【図4】本発明の実施の更に他の形態を示す概略切断側面図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態を示す概略切断側面図である。
【図6】本発明の実施の更に他の形態として、流路形成面に設ける乱流形成用溝の別の例を示すもので、(イ)は側面矩形状の乱流形成用溝を、(ロ)は側面半円形状の乱流形成用溝を、(ハ)は側面形状を三角形状とした乱流形成用溝を、それぞれ流路形成面に設けた場合を示す切断側面図である。
【図7】本発明の実施の更に他の形態として、流路形成面に設ける乱流形成部の他の例を示すもので、(イ)は側面直角三角形状の乱流形成用凸部を、(ロ)は側面矩形状の乱流形成用凸部を、(ハ)は側面略半円形状の乱流形成用凸部を、それぞれ流路形成面に設けた場合を示す切断側面図である。
【図8】本発明の実施の更に他の形態として、流路形成面に設ける乱流形成部の更に他の例を示すもので、(イ)は側面直角三角形状の乱流形成用溝と乱流形成用凸部を、(ロ)は側面矩形状の乱流形成用溝と乱流形成用凸部を、(ハ)は側面略半円形状の乱流形成用溝と乱流形成用凸部を、それぞれ流路形成面に交互に設けた場合を示す切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1(イ)(ロ)及び図2は本発明のロールブランケット乾燥装置の実施の一形態を示すもので、以下のような構成としてある。
【0024】
すなわち、本発明のロールブランケット乾燥装置Iは、ブランケットロール1のロール軸心方向(以下、単に、ロール軸心方向と云う)と平行な方向に長尺寸法を有し、ブランケットロール1の周方向(回転方向)に沿う前後方向を所定の領域に亘る幅寸法としてあり、更に、底面側を、ブランケットロール1の外周部に設けてあるブランケット2の外周面に沿う湾曲形状(円弧形状)の流路形成面4とし且つロール軸心方向と平行な方向の寸法として上記ブランケット2における図示しない版より印刷パターンを転写する領域のロール軸心方向と平行な方向の幅寸法よりも若干長い寸法としてなる乾燥ブロック3を備えて、ブランケット2の外周面とその近傍に配置する上記乾燥ブロック3の流路形成面4との間の空間に、ブランケット2の外周面に沿って周方向に延びる空気流路5を形成できるようにする。
【0025】
上記乾燥ブロック3の流路形成面4には、湾曲方向の途中の個所に、ロール軸心方向と平行な幅方向に延びるスリット状の吸込口6を開口させて設けると共に、該吸込口6を乾燥ブロック3の内部に設けた空気排出路7及び空気出口8を介し外部に連通させて、該空気出口8に、排気ブロワや吸引ポンプ等の吸引手段9を、吸引ライン10を介して接続する。
【0026】
更に、上記乾燥ブロック3の流路形成面4における湾曲方向の別の個所に、ロール軸心方向と平行な幅方向に延びる乱流形成部としての乱流形成用溝11を設け、これにより、該乾燥ブロック3の流路形成面4と上記ブランケット2の外周面との間に形成させる上記空気流路5をブランケット2の外周面に沿って上記吸込口6に向けて流れる空気12の流れに対し、該乱流形成用溝11により乱流を発生させることができるようにした構成とする。
【0027】
詳述すると、上記乾燥ブロック3は、前後方向と高さ方向を或る寸法として側面形状を略矩形状とすると共に、ロール軸心方向と平行な方向にブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の幅寸法よりも若干長い寸法備えるようにしてある。
【0028】
更に、上記乾燥ブロック3のロール軸心方向と平行な方向の両端部における上記ブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の両端より外側へ突出する部分には、底部側の端部を該乾燥ブロック3の流路形成面4よりもブランケットロール1に近接する側へ突出させて、その突出端面を上記ブランケットロール1の外周面に近接して沿う湾曲形状(円弧形状)としてなるサイドプレート13が一体に取り付けてある。これにより、上記サイドプレート13の突出端面を、ブランケットロール1の周方向における所要個所、たとえば、図1(イ)に示すように周方向における上端部となる個所の外周面に、該ブランケットロール1の製造精度における外周面のぶれを考慮しても非接触状態を維持可能なクリアランスとして、たとえば、0.5mm程度のクリアランスを隔てた状態に配置すると、上記乾燥ブロック3の流路形成面4と、上記ブランケットロール1の外周部に設けてあるブランケット2の外周面との間に、上記サイドプレート13の突出端面とブランケットロール1の外周面とのクリアランスよりも大きな、たとえば、2mm程度のクリアランスを保持することができるようにしてある。よって、この2mm程度のクリアランスとした乾燥ブロック3の流路形成面4と上記ブランケット2の外周面との間の空間に、湾曲方向の両端に空気取入口5aを備え且つロール軸心方向の両側に設けてある上記各サイドプレート13の外側から内側への空気12の吹き抜けを抑制した状態で、空気12をブランケット2の外周面に沿って周方向に或る長さ寸法に亘り流通させることが可能な空気流路5を形成できるようにしてある。
【0029】
上記乾燥ブロック3の吸込口6は、上記乾燥ブロック3の流路形成面4における湾曲方向の中央部にロール軸心方向と平行な方向に延びるように設けてある。
【0030】
上記乾燥ブロック3の内部における上記吸込口6と対応する個所には、断面形状を該吸込口6と同様のロール軸心方向と平行な方向に延びるスリット状とし、且つ該吸込口6から乾燥ブロック3の頂部寄り位置までロール軸心方向と直交する方向に延びる空気排出路7を設け、該空気排出路7の頂部寄りの端部におけるロール軸心と平行な方向の所定間隔の複数個所、たとえば、図2に示すような3個所に、上記乾燥ブロック3の外部に連通する空気出口8が設けてある。
【0031】
更に、上記吸引手段9に一端部を接続した吸引ライン10の他端側を、上記乾燥ブロック3における上記空気出口8の数に対応させて分岐させると共に、該各分岐端部を、上記空気出口8に個別に接続してある。
【0032】
これにより、上記吸引手段9の運転によって上記吸引ライン10と乾燥ブロック3の空気出口8及び空気排出路7を介して上記吸込口6を減圧することにより、上記乾燥ブロック3の流路形成面4とブランケット2の外周面との間に形成してある空気流路5にて、該空気流路5の湾曲方向の両端の上記空気取入口5aを通して吸い込む空気12を、上記吸込口6まで上記ブランケット2の外周面に沿わせて流通させることができるようにしてある。
【0033】
上記乾燥ブロック3の流路形成面4に設ける乱流形成用溝11は、上記流路形成面4の湾曲方向中間部の上記吸込口6が設けてある個所から、上記空気流路5の空気取入口5aとなる該流路形成面4の湾曲方向の両端部までの間の領域における湾曲方向の1個所又は複数個所、たとえば、図1(イ)に示すような2個所に、該流路形成面4のロール軸心方向と平行な幅方向の全長に亘り設けるようにしてある。
【0034】
上記乱流形成用溝11は、図1(ロ)に示すように、上記空気流路5の空気取入口5aに近接する側の端縁、すなわち、空気流れ方向の上流側に位置する端縁に、90度〜135度程度の角度で屈曲する角部cを備え、且つ流路形成面4の湾曲方向に沿う方向の寸法に対して、溝の深さ寸法が1/2以上となるように設定してあるものとする。たとえば、上記乱流形成用溝11の流路形成面4の湾曲方向の寸法を10mmとした場合は、溝の深さ寸法を5mm以上に設定するようにすればよい。
【0035】
より具体的には、上記乱流形成用溝11は、たとえば、図1(ロ)に示すように、上記空気流路5の空気取入口5a(図1(イ)参照)に近接する側の端縁に、90度の角度で屈曲する角部cを備えて側面より見て直角三角形状の溝としてある。これにより、上記空気流路5にて空気取入口5aより上記吸込口6へ向けて空気12が流れるときに、上記流路形成面4と乱流形成用溝11の内面の角度が上記角部cで急に変化することに伴って、該空気12の流れが上記乱流形成用溝11の内面より剥離して、該乱流形成用溝11の内側に巻き込まれる流れを形成するようにしてある。よって、この乱流形成用溝11の内側に巻き込まれる空気12の流れにより、上記空気取入口5aから上記吸込口6へ向かう空気12の流れに対して、その流れ方向に垂直な乱流の渦を形成させることができるようにしてある。したがって、上記空気流路5を空気12が流通するときには、上記乱流形成用溝11が設けてある個所で空気12の流れに生じる上記乱流の渦により、該空気流路5における空気12の流れが層流になることを防止して、上記ブランケット2の外周面の近傍に存在している空気12を効率よく撹拌することができるようにしてある。
【0036】
14は上記吸引ライン10における他端部側の各分岐ラインの分岐個所よりも一端部寄りとなる個所に設けた電磁弁等の流量調整弁であり、該流量調整弁14の開度を制御することにより、上記吸引手段9の運転により吸引ライン10と空気出口8と空気排出路7を介して上記吸込口6を減圧するときの割合を変化させて、上記空気流路5にて空気取入口5aより上記吸込口6へ向けて流通させる空気12の流速を調整することができるようにしてある。
【0037】
以上の構成としてある本発明のロールブランケット乾燥装置Iを使用する場合は、図示しないクリーンルームに設置されたオフセット印刷装置について、予め、該本発明のロールブランケット乾燥装置Iを、ブランケットロール1のブランケット2の外周面における周方向の1個所に設定した乾燥対象位置の外側に、上記乾燥ブロック3の流路形成面4とブランケット2との間に上記空気流路5を形成させ、且つ各サイドプレート13の突出端面が、前述した所定のクリアランスで上記ブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の両側位置のブランケットロール1の外周面に近接する状態で配置しておく。
【0038】
その後、オフセット印刷処理における版(図示せず)よりブランケットロール1のブランケット2の表面への印刷パターンの転写(受理)処理と、該ブランケットロール1のブランケット2の表面から基板等の印刷対象(図示せず)への再転写(印刷)処理の印刷サイクルを終了した後、次の印刷サイクルに入るまでの間に、上記ブランケットロール1を図1(イ)における矢印rで示す方向へ或る一定の速度で回転させた状態で、上記吸引手段9を運転する。
【0039】
これにより、上記吸引手段9の吸引作用によって上記吸引ライン10と空気出口8と空気排出路7を介して上記吸込口6が減圧されるため、上記空気流路5に、その両端の空気取入口5aを通して上記図示しないクリーンルーム内の清浄化されている空気12が取り込まれると共に、該空気取入口5aより取り込まれた空気12が、上記空気流路5内を通して上記吸込口6へ向けて流通させられるようになる。なお、この際、上記流量調整弁14の開度を制御することにより、上記空気流路5にて空気取入口5aより吸引口6に向けて流通する空気12の流速を、およそ10〜20m/sとなるように調整すればよい。
【0040】
上記のようにして空気流路5に空気取入口5aより吸込口6へ向かう空気12の流れを形成させると、上記ブランケット2の外周面における上記空気流路5に臨む個所では、該ブランケット2の外周面より蒸発した印刷インクの溶媒の蒸気が、該空気流路5を流通する空気12の流れによってブランケット2の表面近傍より直ちに除去されるようになる。
【0041】
更に、この際、上記空気流路5を流通する空気12は、上記乱流形成用溝11が設けてある個所を通過するときに、吸込口6へ向かう空気12の流れ方向に垂直な乱流の渦が生じるため、この乱流の渦により上記ブランケット2の外周面近傍に存在する空気12が効率よく撹拌されるようになる。このため、上記空気流路5に臨む上記ブランケット2の外周面近傍には、上記印刷インクの溶媒の蒸気濃度(蒸気圧)が低い空気12の流れが常に存在するようになることから、該印刷インクの溶媒のブランケット2の表面からの蒸発が促進させられるようになる。
【0042】
したがって、上記ブランケット2は、その外周面における上記空気流路5に臨む配置となる個所が、上記ブランケットロール1の回転により順次変更されることに伴って、該ブランケット2は、外周面の全体が、上記空気流路5を流通する空気12によって連続的に乾燥されるようになる。
【0043】
上記空気流路5に流通することで上記ブランケット2からの印刷インクの溶媒の乾燥に供された後の空気12には、上記印刷インクの溶媒の蒸気が含まれているが、本発明のロールブランケット乾燥装置Iでは上記吸引手段9の吸引力により上記空気流路5に空気12を流通させるようにしてあるため、この溶媒の蒸気を含んだ空気12は、上記吸込口6より乾燥ブロック3の空気排出路7と空気出口8、及び、吸引ライン10を通して上記吸引手段9へ導いて回収されるようになる。
【0044】
このように、本発明のロールブランケット乾燥装置によれば、ブランケット2に染み込んだ印刷インクの溶媒を、上記空気流路5を流通する空気12の流れ、及び、該空気12の流れに対して乱流形成用溝11によって形成させる乱流の渦を利用して効率よく蒸発させることができて、上記ブランケット2を効率よく乾燥させることができる。
【0045】
よって、上記オフセット印刷装置におけるオフセット印刷処理を実施する際に、上記ブランケット2が印刷インクの溶媒によって膨潤する虞を抑制できるようになることから、上記オフセット印刷処理の連続性を向上させることが可能になる。
【0046】
更に、上記空気流路5を流通させることにより上記ブランケット2からの印刷インクの溶媒の乾燥に供した後の該溶媒の蒸気を含む空気12は、その全量を上記吸引手段9に導いて回収することができるため、上記印刷インクの溶媒の蒸気によって上記ブランケット2やブランケットロール1の周辺環境が悪化する虞を防止することができる。
【0047】
上記実施の形態においては、乾燥ブロック3を、ロール軸心方向と平行な方向にブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の幅寸法よりも若干長い寸法を備えるものとして示したが、上記ブランケット2におけるロール軸心方向と平行な方向の幅寸法が、図示しない版より印刷パターンを転写する領域よりも大きくて、該ブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の両端縁部に上記印刷パターンが転写されない余白領域(図示せず)が存在する場合は、図3に示すように、乾燥ブロック3のロール軸心方向と平行な方向の長さ寸法を、該乾燥ブロック3のロール軸心方向と平行な方向の両端部に設けるサイドプレート13が上記ブランケット2における上記ロール軸心方向と平行な方向の両端縁部の余白領域に対応して配置されるような長さ寸法に設定してもよい。
【0048】
この場合は、上記各サイドプレート13の底部側の突出端面を、上記ブランケット2の外周面に沿う湾曲形状(円弧形状)とすればよく、該各サイドプレート13の突出端面を、上記ブランケット2のロール軸心方向と平行な方向の両端縁部の余白領域に対し、該ブランケット2の製作精度における外周面のぶれを考慮しても非接触状態を維持可能なクリアランスとして、たとえば、1mm程度のクリアランスを隔てた状態に配置することに伴って、上記乾燥ブロック3の流路形成面4と、上記ブランケットロール1の外周部に設けてあるブランケット2の外周面との間に、上記サイドプレート13の突出端面とブランケット2の外周面とのクリアランスよりも大きな、たとえば、5mm程度のクリアランスを保持することができるような構成とすればよい。これにより、上記5mm程度のクリアランスとした乾燥ブロック3の流路形成面4と上記ブランケット2の外周面との間の空間に、ロール軸心方向の両側に設けてある上記各サイドプレート13の外側から内側への空気12の吹き抜けを抑制した状態で、空気12をブランケット2の外周面に沿わせて流通させることが可能な空気流路5を形成することができる。
【0049】
次に、図4は本発明の実施の他の形態を示すものである。本実施の形態のロールブランケット乾燥装置Iは、図1(イ)(ロ)及び図2に示した乾燥ブロック3と同様に底面側をブランケット2の外周面に沿う湾曲形状(円弧形状)の流路形成面4としてある乾燥ブロック3Aを、上記流路形成面4における湾曲方向の一端寄り、たとえば、該乾燥ブロック3Aの前端寄り(図4における左端寄り)となる個所に、ロール軸心方向と平行な幅方向に延びるスリット状の吸込口6を開口させて設けてなる構成とする。
【0050】
上記吸込口6は、該吸込口6と対応する上記乾燥ブロック3Aの内部における前端寄り個所に設けた図1(イ)(ロ)及び図2に示したものと同様に該乾燥ブロック3Aの底部側から頂部側へロール軸心方向とほぼ直交する方向に延びる空気排出路7及び空気出口8を介して乾燥ブロック3Aの外部に連通させて、吸引手段9に吸引ライン10を介して接続してある。
【0051】
更に、上記乾燥ブロック3Aにおける上記吸込口6よりも前端側となる前端部の底部には、上記流路形成面4よりもブランケット2に近接する側に突出させた板状のシール部15をロール軸心方向と平行な方向の全長に亘り設ける。これにより、上記乾燥ブロック3Aの流路形成面4とブランケット2の外周面との間に周方向に延びる空気流路5を形成するときに、上記シール部15の突出端面(底面)を、上記流路形成面4とブランケット2の外周面とのクリアランスに比して狭いクリアランスで上記ブランケット2の外周面に非接触で近接配置することにより、上記シール部15の外側から内側への空気12の吹き抜けを抑制できるようにしてある。よって、上記空気流路5にて、該空気流路5の湾曲方向の他端のみを空気取入口5aとして、該空気取入口5aより吸い込む空気12を上記吸込口6までブランケット2の外周面に沿わせて流通させることができるようにしてある。
【0052】
上記空気流路5を形成している上記乾燥ブロック3Aの流路形成面4には、上記空気取入口5aから上記吸込口6までの間の領域における湾曲方向の1個所又は複数個所、たとえば、図4に示すような4個所に、図1(イ)(ロ)に示したものと同様に上記空気流路5の空気取入口5aに近接する側、すなわち、空気流れ方向の上流側に位置する端縁に角部cを備えた側面直角三角形状の乱流形成用溝11が設けてある。
【0053】
その他の構成は図1(イ)(ロ)及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0054】
以上の構成としてある本実施の形態のロールブランケット乾燥装置によっても、ブランケットロール1を図4における矢印rで示す方向へ或る一定の速度で回転させた状態で、吸引手段9を運転すると、該吸引手段9の吸引作用により上記吸込口6が減圧されるため、上記空気流路5にて、その空気取入口5aを通して取り込まれた図示しないクリーンルーム内の清浄な空気12を、上記吸込口6へ向けてブランケット2の外周面に沿って流通させることができると共に、該空気12の流れが上記乱流形成用溝11が設けてある個所を通過するときに、上記吸込口6に向かう空気12の流れ方向に対して垂直な乱流の渦を発生させることができる。このため、上記空気流路5に臨む上記ブランケット2の外周面近傍には、印刷インクの溶媒の蒸気濃度(蒸気圧)が低い空気12の流れを常に存在させることができるようになることから、該印刷インクの溶媒のブランケット2の表面からの蒸発を促進させることができる。
【0055】
したがって、本実施の形態によっても、図1(イ)(ロ)及び図2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
次いで、図5は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、本実施の形態のロールブランケット乾燥装置Iは、図1(イ)(ロ)及び図2に示した乾燥ブロック3と同様に底面側をブランケット2の外周面に沿う湾曲形状(円弧形状)の流路形成面4としてある乾燥ブロック3Bを、上記流路形成面4における湾曲方向の前端寄り(図5における左端寄り)個所及び後端寄り(図5における右端寄り)個所に、ロール軸心方向と平行な方向に延びるスリット状の吸込口6a,6bを開口させて設けてなる構成とする。
【0057】
上記吸込口6aと6bは、上記乾燥ブロック3Bの前端寄り個所と後端寄り個所の内部にそれぞれ設けた図1(イ)(ロ)及び図2に示したものと同様に該乾燥ブロック3Bの底部側から頂部側へロール軸心方向とほぼ直交する方向に延びる空気排出路7及び空気出口8を介して乾燥ブロック3Aの外部に連通させて、吸引手段9に吸引ライン10を介して接続してある。
【0058】
上記乾燥ブロック3Bにおける上記前側の吸込口6aよりも前端側となる前端部の底部と、上記後側の吸込口6bよりも後端側となる後端部の底部には、上記流路形成面4よりも或る寸法ブランケット2に近接する側に突出する板状のシール部15をロール軸心方向と平行な方向の全長に亘り設ける。
【0059】
更に、上記流路形成面4における湾曲方向の中央部に、ロール軸心方向と平行な幅方向に延びるスリット状の空気取入口5bを設けて、上記乾燥ブロック3Bの内部における該空気取入口5bと対応する個所に、該乾燥ブロック3Bを底部側から頂部側に貫通するように延びて外部に連通させる空気導入路16を設けた構成とする。これにより、上記乾燥ブロック3Bの流路形成面4とブランケット2の外周面との間に周方向に延びる空気流路5を形成するときに、上記乾燥ブロック3Bの前後のシール部15の突出端面(底面)を、上記流路形成面4とブランケット2の外周面とのクリアランスに比して狭いクリアランスで上記ブランケット2の外周面に非接触で近接配置することにより、上記シール部15の外側から内側への空気12の吹き抜けを抑制できるようにしてある。よって、上記空気流路5にて、上記空気導入路16を経て該空気流路5の湾曲方向の中央部に配されている上記空気取入口5bより吸い込む空気12を、上記吸込口6までブランケット2の外周面に沿わせて流通させることができるようにしてある。
【0060】
上記空気流路5を形成している上記乾燥ブロック3Bの流路形成面4には、上記空気取入口5bから上記吸込口6a,6bまでの間の領域における湾曲方向の1個所又は複数個所、たとえば、図5に示すような2個所ずつに、図1(イ)(ロ)に示したものと同様に上記空気流路5の空気取入口5bに近接する側である空気流れ方向の上流側に位置する端縁に角部cを備えた側面直角三角形状の乱流形成用溝11が設けてある。
【0061】
その他の構成は図1(イ)(ロ)及び図2に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0062】
以上の構成としてある本実施の形態のロールブランケット乾燥装置によっても、ブランケットロール1を図5における矢印rで示す方向へ或る一定の速度で回転させた状態で、吸引手段9を運転すると、該吸引手段9の吸引作用により上記各吸込口6a,6bが減圧されるため、上記空気導入路16と空気取入口5bを通して空気流路5に取り込まれる図示しないクリーンルーム内の清浄な空気12を、該空気流路5にて、上記吸込口6aと6bへ向けてブランケット2の外周面に沿って流通させることができると共に、該空気12の流れが上記乱流形成用溝11が設けてある個所を通過するときに、上記吸込口6aと6bに向かう空気12の流れ方向に対して垂直な乱流の渦を発生させることができる。このため、上記空気流路5に臨む上記ブランケット2の外周面近傍には、印刷インクの溶媒の蒸気濃度(蒸気圧)が低い空気12の流れを常に存在させることができるようになることから、該印刷インクの溶媒のブランケット2の表面からの蒸発を促進させることができる。
【0063】
したがって、本実施の形態によっても、図1(イ)(ロ)及び図2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
上記図1(イ)(ロ)及び図2の実施の形態、図4の実施の形態、図5の実施の形態では、いずれも空気流路5における吸込口6,6a,6b側に接続した吸引手段9の吸引作用により該吸込口6,6a,6bを減圧することで、上記空気流路5に空気12を流通させる場合について示したが、たとえば、図5に二点鎖線で示すように、上記空気流路5における空気取入口5bの上流側、具体的には、乾燥ブロック3Bにおける上記空気取入口5bの上流側に設けてある空気導入路16の上流側端部に、空気供給手段17を接続してなる構成として、該空気供給手段17による上記空気取入口5aへの空気12の供給と、上記吸込口6側に接続した吸引手段9の吸引作用を併用することによって上記空気流路5に空気12を流通させるようにしてもよい。
【0065】
なお、かかる構成とする場合は、上記吸引手段9による空気12の吸引量が、上記空気供給手段17による空気供給量をやや上るように設定するものとする。これにより、上記空気流路5を流通することで上記ブランケット2の乾燥に供された後の印刷インクの溶媒の蒸気を含む空気12を、上記吸引手段9に吸引して回収できるようにして、該印刷インクの溶媒の蒸気を含む空気12が周辺環境へ放出されないようにする。
【0066】
上記のように、空気流路5における空気取入口5a側に、空気供給手段17を接続してなる構成とすることにより、上記空気流路5の吸込口6側に接続した吸引手段9の負担を低減させることができるため、該吸引手段9に要求される吸引能力を引き下げることが可能になるという効果が期待できる。
【0067】
図示してないが、図1(イ)(ロ)及び図2の実施の形態における空気流路5の空気取入口5aの上流側に上記と同様の空気供給手段17(図5参照)を接続するようにしてもよく、この場合にも、上記空気流路5の吸込口6側に接続した吸引手段9の負担を低減させる効果が期待できる。
【0068】
又、上記各実施の形態では、いずれも、乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4に側面直角三角形状の乱流形成用溝11を設けてなる構成を示したが、上記流路形成面4に設ける乱流形成用溝は、空気流路5における空気取入口5a,5b側、すなわち、空気12の流れ方向の上流側に位置する端縁に90度〜135度程度の角度で屈曲する角部cを備え、且つ流路形成面4の湾曲方向に沿う方向の寸法に対して、溝の深さ寸法がおよそ1/2以上となるように設定してあって、上記空気流路5を流通する空気12の流れに対して、その流れ方向に垂直な乱流の渦を発生させることができるようにしてあれば、たとえば、図6(イ)に示す如き側面矩形状の乱流形成用溝11a、図6(ロ)に示す如き側面半円形状の乱流形成用溝11b、図6(ハ)に示す如き側面形状を三角形状とした乱流形成用溝11c等、側面直角三角形状以外の形状を採用するようにしてもよい。
【0069】
更に、上記空気流路5を流通する空気12の流れに対して、その流れ方向に垂直な乱流の渦を発生させることができるようにしてあれば、乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4に設ける乱流形成部としては、たとえば、図7(イ)に示す如き側面直角三角形状の乱流形成用凸部18aや、図7(ロ)に示す如き側面矩形状の乱流形成用凸部18bや、図7(ハ)に示す如き側面略半円形状の乱流形成用凸部18c等の乱流形成用凸部を採用してもよい。更には、流路形成面4に設ける乱流形成部として、図8(イ)に示すように、側面直角三角形状の乱流形成用溝11と乱流形成用凸部18aを空気12の流れ方向に交互に設ける構成、図8(ロ)に示すように、側面矩形状の乱流形成用溝11aと乱流形成用凸部18bを空気12の流れ方向に交互に設ける構成、図8(ハ)に示すように、側面略半円形状の乱流形成用溝11bと乱流形成用凸部18cを空気12の流れ方向に交互に設ける構成等、乱流形成用溝と乱流形成用凸部を組み合わせたものを採用するようにしてもよい。なお、図6(イ)(ロ)(ハ)乃至図8(イ)(ロ)(ハ)において図1(イ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0070】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、乾燥ブロック3,3a,3bの側面形状は、ブランケットロール1のブランケット2の径寸法や、該ブランケット2の外周面における周方向の一部に設定する乾燥対象位置の面積に応じて適宜変更してもよい。
【0071】
乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4に設ける乱流形成部の数は、空気流路5にてブランケット2の外周面に沿って空気12を流通させる距離の長短に応じて適宜増減してもよい。この場合、上記空気流路5における吸込口6,6a,6bに近い位置では、たとえ、乱流形成部によって乱流を発生させても、その乱流が上記空気流路5における空気12の流れの撹拌効果を十分に発揮しないうちに吸込口6,6a,6bに達してしまうと考えられることから、上記乱流形成部は、乾燥ブロック3の流路形成面4における上記空気流路5の空気12の流れ方向の上流側寄り個所と対応する位置に設けることが望ましい。
【0072】
上記乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4に設ける乱流形成部のサイズは、上記空気流路5に流通させる空気の流速に応じて適宜変更してもよい。
【0073】
乾燥ブロック3,3A,3Bのサイドプレート13やシール部15の突出端面と、ブランケットロール1やブランケット2の外周面の対応する個所との隙間は、上記乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4と上記ブランケット2の外周面との間に空気流路5を形成するために確保するクリアランスよりも狭くなるようにして内外での空気12の吹き抜けを抑えることができるようにしてあれば、該隙間の寸法をブランケットロール1やブランケット2の製作精度による回転時のぶれを考慮して適宜変更してもよい。
【0074】
オフセット印刷装置におけるブランケットロール1の周辺に設ける機器と上記乾燥ブロック3,3A,3Bとの干渉を避けることができるようにしてあれば、本発明のロールブランケット乾燥装置Iの配置は、ブランケット2の周方向の上端部以外のいかなる個所としてもよい。この場合、乾燥ブロック3,3A,3Bを、該乾燥ブロック3,3A,3Bの流路形成面4と、上記ブランケット2の外周面の周方向の1個所に設定する乾燥対象位置との間に所定のクリアランスで空気流路5を形成できるような姿勢で設けるようにすればよい。
【0075】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
I ロールブランケット乾燥装置
1 ブランケットロール
2 ブランケット
3,3A,3B 乾燥ブロック
4 流路形成面
5 空気流路
5a,5b 空気取入口
6,6a,6b 吸込口
9 吸引手段
11,11a,11b,11c 乱流形成用溝(乱流形成部)
12 空気
17 空気供給手段
18a,18b,18c 乱流形成用凸部(乱流形成部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケットロールのロール軸心方向と平行な方向に延び且つ底面を上記ブランケットロールの外周部に設けてあるブランケットの外周面に沿う湾曲形状の流路形成面としてなる乾燥ブロックを、上記ブランケットの外周面の乾燥対象位置の外側に配置して、上記乾燥ブロックの流路形成面と上記ブランケットとの間に、空気取入口より上記乾燥ブロックの流路形成面に設けた吸込口まで該ブランケットの外周面に沿って空気を流通させるための空気流路を形成し、空気が上記空気流路に入り上記吸込口に至る間の上記流路形成面に、上記ロール軸心方向と平行な方向に延びる乱流形成部を備え、上記空気流路を流通する空気の流れに上記乱流形成部により乱流を生じさせて、上記空気流路におけるブランケットの外周面近傍の空気を撹拌できるようにしてなる構成を有することを特徴とするロールブランケット乾燥装置。
【請求項2】
乾燥ブロックの流路形成面に設ける吸込口を、ブランケットロールのロール軸心方向と平行な方向に延びるスリット状とし、且つ該吸込口を吸引手段に接続した請求項1記載のロールブランケット乾燥装置。
【請求項3】
空気流路の空気取入口に、空気供給手段を接続するようにした請求項1又は2記載のロールブランケット乾燥装置。
【請求項4】
乱流形成部を、乾燥ブロックの流路形成面に乱流形成用溝と、乱流形成用凸部のいずれか一方からなる構成、又は、乱流形成用溝と乱流形成用凸部を交互に設けてなる構成とした請求項1、2又は3記載のロールブランケット乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−111064(P2012−111064A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259889(P2010−259889)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】