説明

ロールプレス設備

【課題】
ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、長期の連続加工でも高精度に(巾方向の全範囲において厚みを目標厚み範囲内に)圧縮加工することが可能なロールプレス設備を提供する。
【解決手段】
ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、プレス加工された材料3の巾方向の複数個所で厚みを厚み計10により計測し、材料の巾方向の全範囲において目標厚み範囲内の厚さとなるように、複数個所での厚み測定値と目標厚みとの差の状態に応じて、ロールギャップの調整を行うプレス機構とロールのたわみを補正するベンド機構のフィードバック制御を単独又は組み合わせて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールプレス設備に係り、特に、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールプレス設備は、リチウムイオン二次電池用電極材料の圧縮加工等に使用されている。材料の圧縮加工後の要求厚み精度は、例えば、±2μm程度と厳しく、近年さらに高精度化が望まれている(±1〜2μm)。そのため、圧縮時に材料からうける反力によるロールのたわみを補正しないと、材料の両エッジ部が中央部付近より薄くなるといった、仕上げ厚みの巾方向にばらつきが発生する。そこで、例えば、特許文献1に記載のように、ロールのたわみを補正することで、材料の巾方向の厚みばらつきを抑え、高精度に加工を行うようにしている。
【0003】
また、ロール間隔の設定やロールのたわみ補正の設定は、プレス後の電極材の厚みを計測しながら手動にて油圧シリンダーの加圧力を調整することにより設定している。
【0004】
尚、厚みの測定結果をフィードバックしてロールギャップを調整制御することは、例えば、特許文献2〜5に記載のように、圧延機等において行われている。
【0005】
また、特許文献6には、不織布を加熱ロールにより熱圧着するものにおいて、幅方向3箇所で厚みを計測してロールクリアランス調整装置にフィードバックして幅方向の厚み調整を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3937561号公報
【特許文献2】特開平7−39914号公報
【特許文献3】特開平7−108551号公報
【特許文献4】特開2003−53759号公報
【特許文献5】特開2001−332248号公報
【特許文献6】特開平7−189137号公報
【特許文献7】特開2011−181348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リチウムイオン二次電池電極材の圧縮加工工程では、コイル状の電極材料を巻き出しロールプレス機にて連続的に圧縮加工を行う。圧縮加工後の厚み精度は、巾方向、流れ方向共に±1〜2μm程度と厳しい。また、1コイルの長さが長くなり、連続加工時間が長くなる傾向にある。連続加工中には、ロール回転や圧縮加工等により発生する熱によるロール内部の微小な温度変化により、微小なロールの形状変化がおこる。このロールの熱変形については例えば特許文献7に記載の方法により低減することができる。
【0008】
しかし、本発明者等の検討によると、連続加工時間が長くなると、圧縮後厚みに数μmの変化を発生させ、圧縮後厚みが目標厚み範囲(許容値)を外れることがあるということが判明した。これを防止するためには、1コイルの途中でラインを停止し、手動にて加圧条件を再設定し、厚みを目標厚み範囲内に調整し、ライン運転を再開するということが考えられるが、これでは、時間がかかり、歩留まりが悪くなる。
【0009】
尚、特許文献1では連続加工中に加圧条件を変更することは行われていない。また、特許文献2〜5では、入り側の板厚の変化に基づいて加圧条件が変化して出側の板厚が変化することを考慮し、加工後の厚みを測定してロールギャップを調整するようにしているが、幅方向の複数箇所の厚さを目標厚み範囲内に調整するという考えはなく、特に、連続加工中のロールの熱変形に基づく加圧条件(特にたわみ補正の加圧条件)の再設定については全く検討されていない。特許文献6では、幅方向3箇所で厚みを計測して、逆ベンドを行う装置とは別に電動式ウォームジャッキを設けてこの電動式ウォームジャッキにより撓みを与えてロールクリアランス調整することが記載されている。しかし、幅方向のばらつきをなくすようにするものであり、幅方向の何れもが目標厚み範囲内になるように調整することは考慮されていないし、連続加工中のロールの熱変形に基づく加圧条件の再設定については全く検討されていない。
【0010】
本発明の目的は、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、長期の連続加工でも高精度に(巾方向の全範囲において厚みを目標厚み範囲内に)圧縮加工(プレス)することが可能なロールプレス設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ロールのたわみを補正するベンド機構を備えるロールプレス設備において、圧縮加工された材料の巾方向の複数個所で厚みを計測し、材料の巾方向の全範囲において目標厚み範囲内の厚さとなるように、複数個所での厚み測定値と目標厚みとの差の状態に応じて、ロールギャップの調整を行うプレス機構とロールのたわみを補正するベンド機構のフィードバック制御を単独又は組み合わせて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期の連続加工でも、圧縮加工後の材料の厚み精度を巾方向、流れ方向共に良好にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例であるロールプレス設備におけるロールプレス機本体の正面図。
【図2】本発明の他の一実施例であるロールプレス設備におけるロールプレス機本体の正面図。
【図3】本発明の他の一実施例であるロールプレス設備におけるロールプレス機本体の正面図。
【図4】本発明の一実施例であるロールプレス設備のライン全体図。
【図5】本発明の一実施例であるロールプレス設備における制御フローを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
ロールプレス設備におけるロールプレス機本体は、上ロール1、下ロール2、上ロール及び下ロールをそれぞれ軸支する主軸受を内蔵保持する主軸受箱4、下ロールの主軸受箱に対して荷重を加え、上ロール1と下ロール2の間の材料3に対するプレス荷重を発生させるプレスシリンダー5を備えている。上ロールの主軸受箱とプレスシリンダーはハウジング(図示省略)により支持されている。上ロールと下ロールにはロール駆動機構(図示省略)がそれぞれ設けられている。また、ロールプレス機本体は、ベンドシリンダー7、ベンド軸受を内蔵保持するベンド軸受箱6からなるロールのたわみ補正を行うベンド機構を備えている。
【0016】
プレスシリンダー5はロールギャップの調整を行うプレス機構の主構成要素である。プレスシリンダー5は、後述する制御盤からの制御指令により位置制御可能に構成されている。即ち、プレスシリンダーは、内部もしくは外部にマグネスケール等の位置検出機(図示省略)を有し、油圧系にサーボ弁を用いた位置制御可能なシステムが採用されている。
【0017】
ベンドシリンダー7は、後述する制御盤からの制御指令により加圧力が設定可能となっている。ベンドシリンダーには、圧力設定に比例制御弁(電磁弁)が採用されている。ベンド軸受箱6は主軸受箱4の両外側に設けられている。本実施例のロールのたわみ補正を行うベンド機構は、ベンド突っ張りタイプであり、上ロールのベンド軸受箱と下ロールのベンド軸受箱の間にベンドシリンダー7が設けられ、材料への加工荷重によるロールたわみと逆方向にロールへ荷重をかけてロールのたわみの補正を行っている。図中の矢印は、各シリンダーによる荷重の方向と大きさのイメージしたものである。各シリンダーは油圧を用いている。油圧シリンダーは高い荷重に対応できること、また非圧縮性の流体(作動油)を用いることで安定した加工が行える。
【0018】
図4は本発明の一実施例であるロールプレス設備のライン全体図を示す。ロールプレス機本体の入り側にはリチウムイオン二次電池電極材などの材料3がコイル状に巻回されたプレス前コイル8を装着する巻出機12が設けられ、ロールプレス機本体の出側にはプレス後の材料を巻回しプレス後コイル9とする巻取機13が設けられている。また、ロールプレス機本体の出側にはプレスされた材料3の厚みを計測する厚み計10が設置されている。厚み計10からの厚み測定値に基づき、制御盤11においてプレスシリンダー位置制御とベンドシリンダー圧力制御の制御値(補正量)を求める演算を行い、制御値がロールプレス機本体に出力され、この制御値によってプレスシリンダーとベンドシリンダーの油圧が制御される。
【0019】
本実施例では、厚み計10は、巾方向において、操作側(ロール駆動機構がない側)、中央、駆動側(ロール駆動機構がある側)の3点(3領域又は3箇所)で厚みを計測するように構成されている。尚、厚み計測点は、巾方向に少なくとも2点以上であれば良いが、3点の厚みを計測することが望ましい。また、計測器を三箇所に固定して厚みを計測するようにしても良いし、巾方向に計測器を移動して厚みを計測するようにしても良い。巾方向に連続的に計測する場合は、操作側、中央、駆動側の3つの領域を設定し、その範囲の測定値の平均値を制御に用いるようにしても良い。
【0020】
また、厚み計10は、ライン運転中に材料厚みを連続または断続的に計測できるものであれば、計測方式に指定は無い。例えば、厚み計の計測方式としては、ガイドロール上の材料において、レーザーセンサーにより材料の上面位置を検出し、また、ガイドロールの位置を磁気センサーで検出し、それらの位置関係から材料厚みを計測する方法や、材料の両面の位置をレーザーセンサーにより計測し、それらの位置関係から材料の厚みを計測する方法等がある。
【0021】
次に、図5を用いて本発明の一実施例であるロールプレス設備における制御フローを説明する。
【0022】
本実施例では、操作側、中央、駆動側の3点で厚みを計測し、3点の厚みの状況に応じて、プレスシリンダー位置制御とベンドシリンダー圧力制御を行う。また、厚み制御は、目標厚み精度(目標厚み範囲)内にしきい値を設定し、厚み計からの厚み測定値が、しきい値を外れた場合に、しきい値内に入るよう、プレスシリンダー位置およびベンドシリンダー圧力を単独又は組み合わせて変更することにより行っている。
【0023】
図5に基づき制御フローを説明する。厚み計10からプレスロール機本体で圧縮加工された材料3の厚み測定値が主制御盤11-1に入力される。厚み測定値はプレス条件が変更された材料が厚み計10を通過してからのものが主制御盤で取得される。即ち、プレス機本体と厚み計のパスライン長をL1、プレス条件変更後の材料送り長さをL2とすると、L2≧L1の場合に厚み測定値を取得する。プレス条件変更後の材料送り長さL2は、ロールを駆動する駆動モータ15に取り付けられたパルスジェネレータ16と駆動モータ15を駆動するインバータ17からの情報に基づき検知される。
【0024】
本実施例では、巾方向に計測器を移動して巾方向に連続的に厚みを計測するようにしており、主制御盤において、厚み測定値に基づき、駆動側、中央、操作側の3つの領域の測定値(駆動側厚みTd,中央部厚みTc,操作側厚みTw)を抽出する。
【0025】
主制御盤からの3点の厚み測定値は、厚みフィードバック制御盤11-2に入力される。目標厚みをTa、目標厚み精度(目標厚み範囲)をTa±ΔPとすると、それぞれの厚み測定値が確実に目標厚み精度(目標厚み範囲)となるようにするため、本実施例では、目標厚み精度(目標厚み範囲)Ta±ΔPよりも小さいしきい値Ta±Δtを設定している(Δt<ΔPとなるしきい値を設定する)
また、本実施例では、厚み測定値がしきい値外となった場合に、三か所の厚み測定値の状況に応じて、ロールギャップの調整を行うプレス機構とロールのたわみを補正するベンド機構のフィードバック制御を単独又は組み合わせて行うようにしている。
【0026】
即ち、本実施例では、先ず、駆動側厚みTdと操作側厚みTwの何れか一方又は両方が、ロールの熱変形等により、厚み測定値と目標厚みTaとの差分(絶対値)がΔtよりも大きくなったときに、プレスシリンダー位置およびベンドシリンダー圧力の両方を変更(再設定)するようにしている。即ち、この場合は、ロールギャップが適切な範囲にないので、プレスシリンダー位置を再設定(補正量を演算)する。プレスシリンダー位置(ロールギャップ)が変更になるので、材料に対する圧力、プレス圧力(プレスシリンダー圧力)が変化することになる。また、この場合、たわみ補正量には変更を加えない(たわみ補正量を維持する)ように制御するので、たわみ補正量を維持するために、プレス圧力の変化に対応して、たわみ補正のためのベンドシリンダー圧力を改めて設定(ベンド圧力調整量を演算)する。
【0027】
駆動側厚みTdと操作側厚みTwの両方とも目標厚みTaとの差分(絶対値)がΔt以下のときには、中央部厚みTcと目標厚みTaとの差分(絶対値)とΔtを比較する。そして、差分がΔtより大きい場合、中央部のロール変形が大きくなっているので、たわみ補正量を変更するように、ベンドシリンダー圧力のみを再設定(ベンド圧力補正量を演算)する。なお、ベンドシリンダー圧力を変更すると、プレスシリンダーの圧力が変化するが、この場合、プレスシリンダーはその位置が変化しないように(下ロール位置が変化しないように)、油圧系にサーボ弁を用いたシステムにより位置制御が行われる。
【0028】
差分がΔt以下のときには、3つの領域の測定値(駆動側厚みTd,中央部厚みTc,操作側厚みTw)がいずれもしきい値以内、従って、目標厚み精度(目標厚み範囲)内なので、プレスシリンダー位置およびベンドシリンダー圧力のどちらも変更(再設定)しない。
【0029】
そして、次の厚み測定タイミングにおいて上述の制御フローを繰り返す。
【0030】
なお、ロールギャップ補正量の演算は、目標厚みTaと駆動側厚みTd又は操作側厚みTwの差分(正負含む)に応じて、開き方向(下ロール位置を下げる方向)か閉じ方向(下ロール位置を上げる方向)の移動量として演算する。駆動側及び操作側の両方のロールギャップを補正する場合と、どちらか一方を補正する場合とがある。差分をそのまま移動量としても良いし、差分に所定の係数を掛けたものを移動量としても良い。
【0031】
撓み補正ベンド圧力調整演算は、ロールギャップ補正量の演算をした後に行う。ここでは、直前のたわみ補正量が維持されるように、材料巾、ロールギャップ補正後のプレス圧力に基づき、従来のロールのたわみ補正と同じ演算方法で、直前のたわみ補正量と同じになるベンド圧力(ベンドシリンダー圧力)を演算する。
【0032】
ベンド圧力補正量演算では、目標厚みTaと中央部厚みTcとの差分(正負含む)に応じて、たわみ補正量を所定量大きくする方向又は小さくする方向に調整するため、材料巾、プレス圧力に基づき、従来のロールのたわみ補正と同じ演算方法で、変更後のたわみ補正量となるベンド圧力(ベンドシリンダー圧力)を演算する。
【0033】
厚みフィードバック制御盤11-2で演算されたロールギャップ補正量とベンド圧力補正量(又は撓み補正ベンド圧力調整量)は、主制御盤11-1のベンド圧力制御系とロールギャップ制御系に入力される。また、プレス条件変更後の材料送り長カウントをゼロリセットする(L2=0)。
【0034】
ロールギャップ制御系では、ロールギャップ補正量を反映した下ロール位置が求められ、この下ロール位置に下ロールが移動するように、油圧系にサーボ弁を用いたシステムにより、プレスシリンダーの位置制御を行う。
【0035】
ベンド圧力制御系では、ベンド圧力補正量を反映したベンド圧力となるように、比例制御弁(電磁弁)を用いたシステムにより、ベンドシリンダーの加圧力を制御する。
【0036】
本実施例では、プレス後の材料の厚みを三か所において測定し、厚み測定値がしきい値外となった場合に、三か所の厚み測定値の状況に応じて、プレス条件(ロールギャップ、即ち、下ロール位置と、ベンドシリンダーの圧力)を補正し、材料の厚みが巾方向において何れも目標範囲内に保持するようにしているので、長期の連続加工をした場合でも、圧縮加工後の材料の厚み精度を巾方向、流れ方向共に良好にすることが可能となる。
【0037】
上述の実施例では厚みフィードバック制御をライン運転中連続的に行うようにしているが、プレス後の材料の厚み変化はロールの熱変形が主な原因と考えられるので、厚みフィードバック制御は、ロールの熱変形の影響が大きくなる時期に行うようにしても良い。また、主軸受箱の温度上昇を監視し、所定温度以上、上昇したらフィードバック制御を行うようにしても良い。
【0038】
また、本実施例における厚み制御は、圧縮加工初期段階でも有効である。即ち、従来は、ライン運転の初期段階では、目標厚みまで荷重条件を繰り返し変更し、加工条件を設定することを手動で行っており、そのため時間かかり、また歩留まりが悪くなっている。本実施例の制御をコイルの圧縮加工初期段階で用いれば、圧縮加工初期段階での自動条件出しが可能となる。
【実施例2】
【0039】
本発明の他の実施例を図2に示す。本実施例におけるロールプレス機本体は、実施例1において、ベンドシリンダーを所謂ベンド突っ張りタイプからベンド引張りタイプとしたものである。その他は実施例1と同様である。本実施例でも実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の他の実施例を図3に示す。本実施例におけるロールプレス機本体は、実施例1において、上ロールのガタツキ防止を目的としたプレロードシリンダー14を設置したものである。
【0041】
上ロール1に対し上ロール1の自重を相殺する上方向に荷重をかける機構として、ロールのたわみ補正を行う機構とは別にプレロードシリンダー14が設けられている。本実施例では、プレロードシリンダー14を上ロールのベンド軸受箱6に設置しているが、上ロールの主軸受箱4とベンド軸受箱6の間にプレロード軸受箱を別個に設け、このプレロード軸受箱にプレロードシリンダー14を設置するようにしても良い。図中の矢印は、各シリンダーによる荷重の方向と大きさのイメージしたものである。プレロードシリンダーについては、油圧シリンダー以外に、エアシリンダー、バネ等他の手段でもかまわない。但し、安定性から油圧が望ましい。また、プレスシリンダーやベンドシリンダーのように荷重を変更する必要がないので、荷重を可変にする機構は不要である。
【0042】
また、プレロードシリンダーによるプレロード荷重は、プレス荷重、ベンド補正荷重に比べはるかに小さく、また変化させる必要が無いため、プレロードシリンダー径を調整することにより(小さくすることにより)、油圧の不安定な低い圧力領域を外し、安定した圧力領域での運用が可能となり、また微調整も行いやすい設備となっている。
【0043】
本実施例のプレロードシリンダー14は、上ロールに対して上方向に荷重をかけるようにベンド軸受箱6を引き上げている。これによって、上ロールのロール支軸を主軸受箱4の主軸受の上方に押し付け、ロール支軸と主軸受の上部のガタ(隙間)をなくしている。
【0044】
目標加工後厚み精度(例えば±2μm以下)との関係では、上ロールを確実に上方へ押し付け、揺動を抑えることが望ましい。即ち、上ロールの構造上のガタをなくし、さらに、軸受け内部での揺動も無くし、ロールの上下方向の位置を安定させ、精度の良いプレス加工を行うために、上ロールを上方に自重に勝ち、さらにある程度しっかり押し付けることが望ましい。従って、プレロードシリンダー7によるプレロード荷重は、ロールの自重分を持ち上げるだけでなく、さらにある程度しっかり押し付けるように設定される。但し、押し付け力はロールのたわみ量に影響するので、過剰に行わないようにする必要がある。
【0045】
このような観点から、プレロード荷重(押し付け力)は、ロール自重の1〜3倍程度の荷重が望ましい。3倍以上の荷重をかけると、たわみ補正効果が大きくなり、材料厚み精度に影響をあたえることとなるからである。また、1倍程度のロール自重相当であっても、材料3からの反力や、ベンドシリンダー7からの荷重を考慮すると、ガタつきや揺動を抑止することができる。プレロードシリンダーによるたわみ補正効果が大きくならないようにし、さらに揺動の抑制を確実にするためには、ロール自重の1.5〜2倍の荷重が最適である。
【0046】
プレロードシリンダーの荷重は、プレス機構やベンド機構と異なり、フィードバック制御では変更しない。その他は実施例1と同様である。
【0047】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、次のような効果を有する。従来のロールプレス設備では、ベンドシリンダー(たわみ補正シリンダー)力にて、上ロールに対して上方に荷重をかけ、上方へ押し付けている。しかし、たわみ補正荷重と材料からの反力の合計が、ロール自重と同等レベルの時にはロールのガタ分下方へ動くことや、軸の回転により軸受け部転動面での位置が若干動くことで、ロール位置が下方へ変化する不安定な運転となり、製品厚み精度が悪くなる。本実施例では、たわみ補正機構とは、別の独立した機構にて、上ロールを確実に上方へ押し付けることにより、たわみ補正に悪影響を与えることなく、安定した精度のよい加工を行える。
【0048】
また、油圧の減圧弁仕様の最大圧に比べ、15〜20%以下で設定するときには、油圧が不安定となる。例えば、減圧弁仕様の最大圧21MPaのときは、3MPa程度以下は不安定な領域となるため、上方への押し付け力が不安定となり、精度の良いプレス加工が行えない。本実施例では、独立したプレロードシリンダーを適正な小径シリンダーとすることで、油圧減圧弁の安定領域を使用し、確実に上ロールを上方に押さえることが可能となる
また、高線圧荷重用のロールプレス設備では、大きな加圧力が必要なので、大径シリンダーを用い、荷重の調整をしている。低線圧(軽荷重)設定時には、若干の圧力調整で荷重が大きく変化することから調整が行いにくい。本実施例では、独立したプレロードシリンダーを適正な小径シリンダーとすることで、ロールプレス設備の設定荷重に関係なく、確実に上ロールを上方に押さえることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1…上ロール、2…下ロール、3…材料、4…主軸受箱、5…プレスシリンダー、6…ベンド軸受箱、7…ベンドシリンダー、8…プレス前コイル、9…プレス後コイル、10…厚み計、11…制御盤、11-1…主制御盤、11-2…厚みフィードバック制御盤、12…巻出機、13…巻取機、14…プレロードシリンダー、15…駆動モータ、16…パルスジェネレータ、17…インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールのたわみを補正するベンド機構を備えるロールプレス機本体と、
前記ロールプレス機本体の出側に設置され、圧縮加工された材料の厚みを巾方向の複数個所で計測する厚み計と、
前記厚み計からの厚み測定値に基づき、前記ロールプレス機本体のロールギャップの調整を行うプレス機構と前記ベンド機構への制御値を演算する制御装置とを備え、
前記制御装置は、圧縮加工された材料の巾方向の全範囲において目標厚み範囲内の厚さとなるように、前記複数個所での厚み測定値と目標厚みとの差の状態に応じて、前記プレス機構と前記ベンド機構のフィードバック制御を単独又は組み合わせて行うことを特徴とするロールプレス設備。
【請求項2】
請求項1において、
前記厚み計は、駆動側、中央部、操作側の3か所の厚みを測定するものであり、
前記制御装置は、前記目標厚みをTa、前記目標厚み範囲をTa±ΔP、前記目標厚み範囲Ta±ΔPよりも小さいしきい値をTa±Δtとした場合、
前記駆動側の厚み測定値Tdと前記操作側の厚み測定値Twの何れか一方又は両方について、前記目標厚みTaとの差分がΔtよりも大きくなったときに、前記プレス機構と前記ベンド機構のフィードバック制御を組み合わせて行うことを特徴とするロールプレス設備。
【請求項3】
請求項1において、
前記厚み計は、駆動側、中央部、操作側の3か所の厚みを測定するものであり、
前記制御装置は、前記目標厚みをTa、前記目標厚み範囲をTa±ΔP、前記目標厚み範囲Ta±ΔPよりも小さいしきい値をTa±Δtとした場合、
前記駆動側の厚み測定値Tdと前記操作側の厚み測定値Twの両方とも前記目標厚みTaとの差分がΔt以下のときであって、前記中央部の厚みTcと前記目標厚みTaとの差分がΔtより大きくなったときに、前記ベンド機構のみフィードバック制御を行うことを特徴とするロールプレス設備。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記厚み計は、巾方向に計測器を移動して巾方向に連続的に厚みを計測するものであり、前記制御装置において、前記厚み測定値に基づき、前記駆動側、前記中央部、前記操作側の3か所の厚み測定値を抽出するようしたことを特徴とするロールプレス設備。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、
前記ロールプレス機本体の上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構を、前記ベンド機構とは別に設けたことを特徴とするロールプレス設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111647(P2013−111647A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263328(P2011−263328)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】