説明

ロールペーパーホルダー

【課題】 芯有りのロールペーパーを使用時には、ロールペーパーの引出端部を簡単に引出口から引出してセットすることができ、また、芯無しのロールペーパーを使用時には、引出口からロールペーパーが落ちる心配の無いロールペーパーホルダーを提供する。
【解決手段】 ロールペーパーの軸心を横にした状態で載置してペーパーを繰り出し可能としたロールペーパーホルダーであって、載置部は、壁面に沿って固定される固定部と、この固定部から前方に下り傾斜となる下降部と、この下降傾斜面の前方から上り傾斜となる上昇部と、前記下降部と前記上層面との両側に形成された側壁部とを備え、更に、前記下降部と前記上昇部との変曲位置にペーパーを引き出すために幅広に開口した引出口を備え、前記引出口の前方の上昇部、又は、後方の下降部に、前後にスライド移動可能な調整部材を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回されたロールペーパーを載置し、そこから任意の量だけ引出されたペーパーを切断するためのロールペーパーホルダーに関するものであり、例えば、トイレ空間の壁面に取り付けてロールペーパーを保持・切断するのに利用可能なロールペーパーホルダーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロールペーパーとしてトイレで利用されているロールペーパーを保持・切断するのに現在最も汎用されているものは、ロール芯を回転可能に支持しておき、そのロールペーパーの上面に揺動可能に当接している紙切板の先端に設けられた切断歯によってペーパーを切断するタイプのものである。このロール芯を回転可能に支持するタイプにおいては、紙切板の自重を増やしたりバネによって紙切板をロールペーパー上に押付けることによってロールペーパーとの当接力を増して切断性を向上させるための工夫がされているが、紙切板は、ロールペーパーに対して押さえつけられる構造であるため、切断時のみならず引出時にもロールペーパーに当接するものであり、切断時の押付け力を増そうとれば引出時の抵抗が大きくなって、ペーパーが千切れてしまい、引出性が悪くなるものであり、切断性能と引出性能の両立が難しかった。
【0003】
そこで、ロールペーパーを載置する構成とし、引出時にロールペーパーが接触する載置部と、切断時に接触する切断部とを分離するロールペーパーホルダーが提案されている。(特許文献1,特許文献2参照)
【0004】
これら先行特許文献に記載されているロールペーパーホルダーは、ロールを載置する載置部の底面にペーパーを引出す引出口を形成しておき、そこから手前にペーパーを引出し、載置部の前方に設けられた切断歯によってペーパーを切断する構成であり、切断性能と引出性能の両立が図りやすく、しかも、引出口と切断歯との間に残ったペーパーが次回引出時の摘み代となるため使い勝手の良いものである。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された従来の載置式のロールペーパーホルダーにおいては、ロールペーパーとしてエコロジーの観点から最近利用が進んできている芯無し(コアレス)タイプのロールペーパーを載置して使用し、使用に伴ってロールペーパーの径が小さくなってきても引出口からロールペーパーが落ちることを防ぐために、ペーパー引出口の前後方向の長さは短く構成されていた。そのため、芯有りのロールペーパーを載置部にセットする場合でも、その前後方向に短い引出口へペーパー引出端部を手で持って引出口へ誘導する必要があり、そのセット作業が行い辛かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−28615号公報(図3,図4参照)
【特許文献2】特開2006−75567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、芯有りのロールペーパーを使用時には、ロールペーパーの引出端部を簡単に引出口から引出してセットすることができ、また、芯無しのロールペーパーを使用時にその径が減ったとしても、引出口からロールペーパーが落ちる心配の無いロールペーパーホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1記載のロールペーパーホルダーでは、ロールペーパーの軸心を横にした状態で載置する載置部を備え、この載置部上でロールペーパーを転動させてペーパーを繰り出し可能としたロールペーパーホルダーであって、前記載置部は、壁面に沿って固定される固定部から前方に下り傾斜となる下降部と、この下降部の前方からのぼり傾斜となる上昇部と、前記下降部と前記上昇部との両側に形成された側壁部とを備え、更に、前記下降部と前記上昇部との変曲位置に幅広に開口したペーパーを引出すための引出口と、この引出口よりも前方であって前記上昇部の下側面に設けられたペーパー切断歯とを備え、前記引出口の前方の上昇部、又は、後方の下降部の少なくとも一方に、前後にスライド移動可能な調整部材を備えたことを特徴とするとする。
【0008】
本発明によれば、調整部材をスライドさせることにより、引出口の前後方向の隙間が変更可能である。従って、ロールペーパーが芯有りの場合は、引出口の前後方向の長さを長くして、引出口へのペーパー引出端の挿入作業性を向上して、ロールペーパーを簡単にセットすることが可能であり、一方、ロールペーパーが芯無しの場合は、引出口の前後方向の長さを短くして、終わりまでその芯無しロールペーパーが引出口から落ちることなく保持しておくことが可能である。
【0009】
請求項2記載のロールペーパーホルダーでは、前記調整部材は、前記下降部の引出口側にロールペーパーの転動方向に沿ってスライド可能に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ペーパーの引出し端部が上昇部側となるようにセットしてペーパー引出時に、そのペーパーが当接する上昇部の引出口側と切断歯との位置関係は不変であり、ペーパーを狙い通りの状態で切断歯へ押し当てることができ、ペーパーを確実にカットすることができる。
【0011】
請求項3記載のロールペーパーホルダーでは、前記調整部材の下面には、下方に突出する摘み部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、摘み部を手掛かりとして調整部材をスライドできるため、スライドの作業性が良い。また、摘み部が引出口より後方であって載置面の裏側に位置するため、ロールペーパーの転動やペーパーの引き出し時に邪魔になることがない。
【0013】
請求項4記載のロールペーパーホルダーでは、前記調整部材は、前記固定部側の下降部上に重合してスライド可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ペーパーの引出し端部が上昇部側となるようにセットして使用時に、調整部材と下降部との繋ぎ目にペーパーロールが引っかかることがなく転動し、ペーパーを滑らかに引き出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロールペーパーホルダーによれば、芯有りのロールペーパーを使用時には、ロールペーパーの引出端部を簡単に引出口から引出してセットすることができ、また、芯無しのロールペーパーを使用時にその径が減ったとしても、引出口からロールペーパーが落ちる心配の無いロールペーパーホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のロールペーパーホルダーの斜視図である。
【図2】図1においてロールペーパーを除いた状態を示す図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】図1におけるA−A断面図である。
【図5】図1の側面図である。
【図6】図2の底面斜視図である。
【図7】図2の上面図である。
【図8】図4の引出口を拡大した図である。
【図9】図4においてロールペーパーが減少した図である。
【図10】図4においてペーパー切断状態を示す図である。
【図11】図10におけるB−B端面図である。
【図12】第1実施形態のロールペーパーホルダーの変形例を示す斜視図である。
【図13】図12におけるC−C断面図である。
【図14】本発明のロールペーパーホルダーの第2実施形態を示す斜視図である。
【図15】図14の側面図である。
【図16】図14におけるD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明におけるロールペーパーホルダーの第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態のロールペーパーホルダー1の斜視図である。上面が開放された箱形状のロールペーパーホルダー1にロールペーパー2の軸心を横にした状態で載置して使用される。
【0018】
図2は、図1においてロールペーパー2を除いた状態を示す図である。ロールペーパーホルダー1の上面は、ロールペーパー2を載置するための載置部3となっている。この載置部3は、トイレ壁面Wに沿って固定される固定部4と、この固定部4から前方に下り傾斜となる下降部5と、下降部5の前方から手前側に上り傾斜となる上昇部6と、下降部5と前記上昇部6との両側に形成された側壁部7によって囲まれた空間である。そして、下降部5と上昇部6との変曲位置、即ち、載置部3の最下点となる位置には、ロールペーパー2からペーパーPを引出すために幅広に開口した引出口8を形成している。また、引出口8よりも前方であって上昇部6の下側面に切断歯としてのペーパー切断部9を備えている。
【0019】
図3,4を用いて更にロールペーパーホルダー1の詳細について説明する。図3は図2に示すロールペーパーホルダー1の分解斜視図であり、図4は図1におけるA−A断面図である。この図3に示すように、ロールペーパーホルダー1は、ホルダー本体10と、調整部材11と、紙切板12と、固定ねじ13と、ねじカバー14とから構成されている。
【0020】
固定ねじ13は、ホルダー本体10のトイレ壁面Wに沿って固定される板状の固定部4に3箇所設けられた開口部4aに挿入されてホルダー本体10を壁面に固定するものであり、ねじカバー14は、固定ねじ13を隠すために固定部4の載置部3側に挿入固定される。
【0021】
調整部材11は、ホルダー本体10の固定部4の下端から下り傾斜となるよう形成されている本体下降部5aの上面に、前後方向にスライド可能に配置される。具体的には、ホルダー本体10の本体下降部5aの上方であって側壁部7の下端には、本体下降部5aに沿ってスライド溝7aが形成されており、このスライド溝7aに調整部材11がスライド可能に配置されている。そして、この調整部材11の底面に凸設された突起(図示せず)が本体下降部5aに凹設された凹溝5bに嵌り込んでおり、凹溝5bの形成された範囲内で前後方向にスライド可能となっている。また、凹溝5bには、3箇所の窪穴が形成されており、突起(図示せず)がこの窪穴に嵌まり込むことで、スライド時にクリック感を得られるようになっている。なお、調整部材11の前端には下方に伸びる摘み部11aが設けられており、この摘み部11aを持って前後にスライド可能となっており、また、本体下降部5aの上面には、スライド可能範囲を表示する表示部5cが設けられており、調整部材11の調整が容易となるように構成されている。
【0022】
このように、本体下降部5aの上面に調整部材11が重合するように配置されていることにより、調整部材11の上面と、この調整部材11が重合していない本体下降部5aの上面が下降部5となり、本体下降部5aの裏面(載置部と反対側の面)と、この本体下降部5aと重合していない調整部材11の裏面が下降部の底面となっている。そして、調整部材11の前端と、上昇部6の下端との間がペーパーPの引出口8となるものであり、調整部材11をスライドさせることにより、引出口8の前後方向の開口長さを変更することが可能である。
【0023】
また、ホルダー本体10には、前傾した板状の上昇部6が一体に成形されており、この上昇部6の手前側には固定部4と平行となるように、即ち、トイレ壁面Wと平行となる前壁6aが成形されている。そして、上昇部6と前壁6aとの間には、梁部材6bが成形されており、前壁6aと梁部材6bとの間に紙切板12が取り付けられる。このため、上昇部6の下端から梁部材6bの下端を経由して前壁6aの下端に至る面が上昇部6の底面となっている。
【0024】
このため、図1の側面図である図5に示すように、下降部5の底面と上昇部6の底面は、固定部4側から手前側に連続して下るように傾斜しており、側壁部7の上面も下降部5の底面と上昇部6の底面の傾斜と同様に傾斜しており、側面視は略並行四辺形となっている。従って、ロールペーパーホルダー1は、全体として薄型でコンパクトに構成することができ、設置空間での干渉が少なく、固定位置の自由度が確保できる。しかも、シンプルな構造であるため意匠性も高い。さらに、正面より直接ホルダー本体10をトイレ壁面Wにねじ固定できるため、施工性が向上し、ホルダー本体10が樹脂製であっても強固に取付可能であり、ホルダー本体10を安価に製造することが可能である。
【0025】
また、紙切板12は、図3の分解斜視図と底面斜視図である図6に示すように、前端のペーパー切断部9と、このペーパー切断部9の後方(引出口8側)に突出形成された複数の凸部12aと、この紙切板12をホルダー本体10に嵌め込み固定するための複数の固定突起12bとから形成されている。紙切板12の材質は、ゴム系やエラストマー樹脂他の摩擦力の大きい材料が考えられる。
【0026】
さらに、図2の上面図である図7に示すように、上昇部6には、ロールペーパー2の転動方向Nに沿うように、上昇部6の上端から下端位置まで凸状部としてのリブ6rが複数形成されている。さらに、下降部5においても、調整部材11の上面に凸状部としてのリブ5rが複数形成されている。なお、下降部5側のリブ5rの幅は、固定部4側よりも引出口8側の方が幅広となっている。一方、上昇部6側のリブ6rの幅は前後方向で同じであり、リブ5rの狭い部分の幅と同じである。その結果、下降部5側リブ5rは、上昇部6側のリブ6rと同じか、それよりも幅広に形成されている。
【0027】
以上に説明してきたロールペーパーホルダー1において、図4に示すように、引出口8からみた上昇部6の傾斜角度α2は、下降部5の傾斜角度α1よりも大きく、引出口8からみた上昇部6の上端までの長さL2は、引出口8から下降部5の上端となる固定部4までの長さL1よりも短い。このことによって、引出口8が、載置部3の前後方向の長さの中心に対して手前側に位置することになるため、ロールペーパー2から引き出されるペーパーPの引出端部が使用者に近くて見えやすい手前側となり、使用者に近い側に位置する引出口8へと挿入することができるので、ロールペーパー2をセットする作業が容易に行える。さらに、側壁部7や前壁6aの高さを低く抑えることができる構造のため、引出口8を容易に確認することができる。さらに、載置部3は開放された空間であって、上方を閉塞するような蓋部材を有しておらず、載置部3に前記ロールペーパー2を置くだけの簡単な作業であるため、片手でも簡単にセットすることができる。
【0028】
なお、上記した実施形態では、本体下降部5aの上面と調整部材11の上面が下降部5となる訳であるが、調整部材11の上面の長さが上昇部6の長さよりも長く形成されているため、この下降部5の長さとしては、調整部材11を最も後ろ側へスライドさせて調整部材11と本体下降部5aとの重合範囲が最も大きくなったとしても、引出口8からみた上昇部6の長さは、引出口8から下降部5の固定部4までの長さよりも短くなるものである。
【0029】
以下に前記の構成を有したロールペーパーホルダー1の使用状態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
まず、ロールペーパー2をロールペーパーホルダー1にセットするときにおいて、図4に示すように、ペーパーPの引出し端部が前記上昇部6側となるようにして引出口8に通し、載置部3にロールペーパー2をセットする訳であるが、ロールペーパー2を載置部3にセットする前に、調整部材11に備えられている摘み部11aを手で掴んで固定部4側へ移動させておくと、引出口8の前後方向の開口長さが長くなり、ロールペーパー2がさらにセットしやすくなる。
【0031】
一方、芯無しロールペーパーの場合は、芯有りのロールペーパー2よりも引出口8の開口面が狭くなるように調整部材11を手前側に移動させて引出口8の前後方向の開口長さが短くなるようにしておく。このように調整部材11をスライドさせて引出口8の前後方向長さを調整できる構成であるため、芯無しのロールペーパーの場合でも、引出口8からロールペーパーが落ちることがなく、載置部3は最後までペーパーを保持することができ、セットするロールペーパー2が芯有りの場合でも芯無しの場合でも使用することができる。
【0032】
また、調整部材11が本体下降部5aの上に載るように重合しているので、ペーパーPの引出時にロールペーパー2がNの方向に転動したとしても、調整部材11と下降部5の接続部にペーパーが引っかかることが無く、滑らかに引出すことができる。さらに、摘み部11aは、引出口8より後方であって、載置面3の裏側に位置するため、ロールペーパー2の転動や、ペーパーPの引出の邪魔になることがない。なお、表示部5cにスライド位置をガイドしているので、使用者はロールペーパーの種類(芯の有無など)によって調整部材11のスライド位置を適切に調整できる。
【0033】
なお、調整部材11を上昇部6側に形成することや、下降部5と上昇部6の両方に形成することも可能であるが、上昇部6の下端の位置が変わると、ロールペーパー2から引出されたペーパーPとの接触位置も変わってしまい、ペーパーPの引出し時や切断時に使用者に与える感覚が大きく変化してしまう恐れがある。よって、調整部材11は下降部5側に形成することが好ましい。また、調整部材11を下降部5や上昇部6に形成する以外に、上昇部6の全体を下降部5に対して前後方向にスライド可能に構成することも考えられる。
【0034】
次に、ペーパーPの引出し動作について説明する。載置部3にセットされたロールペーパー2から引出口8を介してペーパーPを手前側に引出すときには、載置部3にセットされたロールペーパー2は手前側に向かうモーメントが作用するが、傾斜角度α2が大きい上昇部6によって、ロールペーパー2の手前側への移動を規制してロールペーパー2の載置部3からの飛び出しを防止しながら、傾斜角度α1が小さい下降部5によってロールペーパー2の奥側への移動をある程度許容していることで、ロールペーパー2の転動に大きな抵抗が発生せず、ペーパーPを滑らかに引出すことが可能となる。さらに、ロールペーパー2をセットする方向が、従来のロールペーパーホルダーと変わらないので、使用者が従来のペーパーホルダーと変わらない感覚でセットすることができる。
【0035】
また、ロールペーパー2の引出時には、図4の引出口8を拡大した図8に示すように、ロールペーパー2は、上昇部6の下端位置に形成されているリブ6rと接触しており、上昇部6とロールペーパー2との接触面積が減るため、引出し時に生じる摺動抵抗を低減させることができ、ペーパーPを滑らかに引出すことができる。
【0036】
一方、図7に示すように、下降部5においても、リブ5rが形成されており、リブ5rはリブ6rと同じ幅かそれよりも幅広に形成されているため、ロールペーパー2を引出し、転動するときに強く押付けられる上昇部6の摺動抵抗を低減させ、一方で、下降部5には適度な摺動抵抗を与えながらも、傾斜角度が緩やかであるため、セットしたロールペーパー2が固定部4側へ動き出すことを許容しているため、ロールペーパー2をさらに滑らかに引出すことができる。
【0037】
さらに、下降部5に設けられたリブ5rは、固定部4側よりも、引出口8側の方が幅広に形成されている。そのため、図9に示すようにロールペーパー2の残量が少なくなった場合において、ロールペーパー2の径が小さくなり自重による摺動抵抗が減少しても、ロールペーパー2と下降部5との接触位置は、引出口8側に移動しており(図4参照)、ロールペーパー2とリブ5rとの接触面積は増加するので、接触による摺動抵抗は増加し自重による摺動抵抗の減少を打ち消すこととなり、ロールペーパー2の径が変わっても引出しによる転動時に不要な移動が発生することはなく、使用者はロールペーパー2の状態によらず常にロールペーパー2を引出やすい。
【0038】
なお、上昇部6のリブ6rの幅をより狭くして、リブ6rの全体に亘って下降部5のリブ5rよりも幅が狭くなるようにしても良い。また、上昇部6のリブ6rと下降部5のリブ5rとは同じ間隔で形成されている必要はなく、下降部5のリブ5rをより密な間隔で形成して、ロールペーパー2との接触面積を増やして摺動抵抗を増やすようにしても良い。また、上昇部6にはリブを設けず(又は、引出口8側の一部しかリブ6rを設けず)、下降部5のみ全体に亘ってリブ5rを設けることで、上昇部6よりも下降部5の接触面積が大きくなるようにしてもよい。すなわち、ロールペーパー2は使用に伴いその径が小さく変化する訳であるが、その径変化の何れかの時期において、ロールペーパー2と接触する下降部5のリブ5rの幅が上昇部6のリブ6rの幅よりも広くなるようになっていればよい(径変化の全ての時期でそうなっていることが好ましい)。更に、下降部5に設けられた複数のリブ5rの幅は全て同じである必要はなく、また、上昇部6の複数のリブ6rの幅もそうであり、中央側を両端側よりも狭くするといった変形は可能である。以上の説明で明らかなように、本発明でいうリブの幅とは、リブ5r、6rのひとつひとつの幅ではなく、ロールペーパー2と接触する幅方向の合計の幅を指すものである。
【0039】
次に、引出したペーパーPの切り取り動作について説明する。図4においてペーパー切断状態を示す図10、及び、図10におけるB−B端面図である図11に示すように、引出されたペーパーPを紙切板12側へ引上げて凸部12aに当接させ、さらにペーパー切断面をペーパー切断部9に当接させて、ペーパーPの先端が載置部3の上方を向くようにしてカットする。ペーパーPは、凸部12aによって引出しが規制された状態でペーパー切断部9に当接するため、片手で簡単にカットすることができる。即ち、切断時において、凸部12aはペーパーの繰り出しを防ぐストッパーとしての機能を果たす。
【0040】
また、紙切板12のペーパーPと当接する面には、図6に示すように、複数の凸部12aが備えられており、従って、切断時には図11に示すように、紙切板12の表面12cとペーパーPとの間には隙間が形成され、カットした後に当接したペーパーPが紙切板12の表面12cに貼り付いたままとなることを防止し、ペーパーPは下方に垂れ下がるため、次回ペーパーPを引出すときの摘み代を確保することができる。
【0041】
さらに、凸部12aは、ペーパーPの繰り出し方向に沿って長いリブ状に形成されているため、ペーパーPをカットするときにおいても、ペーパーPが幅方向にずれることを防止する効果もあり、ペーパーPをより確実にカットすることがきる。しかも、凸部12aは、繰り出し方向の断面が曲面となるよう突出しているため、ペーパーPはこの曲面に倣って当接するため、ペーパーPの切断時において、そのペーパーPの繰り出し方向の一箇所に力が作用してペーパーPが破れてしまうことがないように配慮されている。
【0042】
次に本実施形態の変形例を図12に示す。図12はロールペーパーホルダー1に蓋部材16を有したものである。ホルダー本体10と蓋部材16とは別体であって着脱可能に構成されており、上記した実施形態と同様にしてロールペーパー2をセットした上で、蓋部材16の下端の内周面とホルダー本体10の上端の外周面とが嵌め合わせられることで、蓋部材16をセットする。蓋部材16を備えることで、ロールペーパー2が露出せず、トイレ空間内の隣接する手洗器からの飛水や埃等の汚れがペーパーに付着せず衛生的である。また、外観がシンプルな箱型となるので意匠性も高い。蓋部材16は図12のC−C断面図である図13に示すようにロールペーパー2を覆っているが、未使用のロールペーパー2であっても蓋部材16とロールペーパー2との間には隙間が形成されるようになっており、ロールペーパー2と蓋部材16との接触による摺動抵抗は常時発生しないものである。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態では、図14及び図15に示すように、ホルダー本体20の側面視において、前面は壁面と平行であり、上面と底面とは壁面に対して直交するものであり、ホルダー本体20は略長方形となっている。しかしながら、図14のD−D断面図である図16に示すように、本実施形態においても実施形態1と同様に、壁面Wに沿って固定される固定部24と、固定部24から前方に下り傾斜となる下降部25と、下降部25の前方から上り傾斜となる上昇部26と、下降部25と上昇部26との変曲位置にペーパーを引出すために幅広に開口した引出口28を備えている。また、引出口28よりも前方であって上昇部26の下側面に切断歯としてのペーパー切断部29を備えている。その上で、外観が方形となるように形成されている。
【0044】
このような構成とすることで、下降部25と上昇部26の傾斜形状を保ちながら、前記ロールペーパーホルダー1を長方形の箱型とすることができ、ロールペーパー2の引出やすさを損なわずに外観を変えることができる。
【0045】
以上、本発明について実施形態を通して説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想から逸脱しない範囲で適宜設計変更してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・ロールペーパーホルダー
2・・・ロールペーパー
3、23・・・ 載置部
4、24・・・固定部
5、25・・・ 下降部
5r・・・リブ
6、26・・・上昇部
6r・・・リブ
7、27・・・側壁部
8、28・・・引出口
9、29・・・ペーパー切断部(切断歯)
10、20・・・ホルダー本体
11・・・調整部材
11a・・・摘み部
12・・・紙切板
12a・・・凸部
13・・・ 固定ねじ
14・・・ ねじカバー
16・・・蓋部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールペーパーの軸心を横にした状態で載置する載置部を備え、この載置部上でロールペーパーを転動させてペーパーを繰り出し可能としたロールペーパーホルダーであって、
前記載置部は、壁面に沿って固定される固定部から前方に下り傾斜となる下降部と、この下降部の前方からのぼり傾斜となる上昇部と、前記下降部と前記上昇部との両側に形成された側壁部とを備え、
更に、前記下降部と前記上昇部との変曲位置に幅広に開口したペーパーを引出すための引出口と、この引出口よりも前方であって前記上昇部の下側面に設けられたペーパー切断歯とを備え、
前記引出口の前方の上昇部、又は、後方の下降部の少なくとも一方に、前後にスライド移動可能な調整部材を備えたことを特徴とするロールペーパーホルダー。
【請求項2】
前記調整部材は、前記下降部の引出口側にロールペーパーの転動方向に沿ってスライド可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載のロールペーパーホルダー。
【請求項3】
前記調整部材の下面には、下方に突出する摘み部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のロールペーパーホルダー。
【請求項4】
前記調整部材は、前記固定部側の下降部上に重合してスライド可能であることを特徴とする請求項2記載のロールペーパーホルダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−19596(P2011−19596A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165581(P2009−165581)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)