説明

ロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法

【課題】被洗物の乾燥時間の短縮などの作業効率を向上させることができるロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法を提供する。
【解決手段】回転する加熱ロール2と、この加熱ロールに巻き付けられて周回するベルト3とを備え、加熱ロールとベルトとの間に被洗物を挟み込んでプレスするロール仕上げ機1において、ベルトを加熱ロールと同等の幅径を有する1枚シートから構成するととともに、ベルトの幅方向の蛇行を検出する検出器7と、検出器が検出したベルトの幅方向の変位量に応じてベルトを逆方向に変位させるべくベルトが案内されるガイドローラ9をベルト走行方向に対して傾ける自動ガイド8とからなるベルト蛇行防止装置6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続洗濯設備において、連続洗濯機で洗濯され、その後、脱水機により脱水された被洗物を、連続して自動的に乾燥、プレス仕上げするロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、連続洗濯設備において、洗濯・脱水された被洗物を、連続してプレス仕上げする装置としてロール仕上げ機が用いられている。このロール仕上げ機は、回転する加熱ロールと、この加熱ロールに密接して移動する耐熱性の無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んで押さえながら回転移送することにより、被洗物の皺を伸ばしてプレス仕上げして乾燥させるものである。
このロール仕上げ機に用いられるベルトは、図4に示すように、加熱ロール21の幅径(3〜4m)に合わせて、例えば幅8〜10cmの帯状のベルト22を30〜40本横に並設するものである。
このように帯状のベルト22を用いる理由の一つとしては、ベルトの蛇行防止がある。すなわち、回転する加熱ロール21に巻き付くことにより搬送駆動されるベルトを、横幅が3〜4mの1枚物とした場合には、その両端に規制部材を設けたとしてもベルトの蛇行を防ぐことは困難であり、そのため案内するガイドロール(図示せず)表面に突条の仕切りをベルト22の幅径で一定間隔に設けてベルト22を1本ごとに規制することにより、ベルト全体を蛇行せずに直進させることができる。このように上述した従来のロール仕上げ機は、ベルト22が蛇行しないので、被洗物に皺を作ることなく好適にプレス仕上げすることができる。
【0003】
しかしながら、従来のロール仕上げ機に用いていたベルト22は、厚めの布素材からなるもので、強度については重視されるものの通気性についてはあまり考慮されておらず、またベルトのテンションについても、必要最低限の低い値に設定されていた。そのため、加熱ロールとベルト22によりプレスされている状態の被洗物にあっては、水蒸気を放出しづらいとともに、加熱ロールに強く圧接されないので乾燥に時間がかかることとなっていた。
そこで、本願出願人は、このような従来のロール仕上げ機を改良すべく、ベルトを通気度が高く、かつ高いテンションに耐えられる強度からなる素材とし、通気度の高いベルトを高いテンションで用いることにより被洗物の乾燥時間を短縮することができるロール仕上げ機を案出した(特許文献1参照)。
このロール仕上げ機にあっては、通気度が20000cm/cm・min以上、30000cm/cm・min以下(ベルトの走行速度が24m/min未満の場合)、もしくは30000cm/cm・min以上、50000cm/cm・min以下(ベルトの走行速度が24m/min以上の場合)という、高い通気度を有する素材からなるベルトを用い、かつそのベルトを0.15kg/cm以上、1.8kg/cm以下という高いテンションで使用することにより、被洗物の乾燥時間を短縮できるものであった。(通気度は、JIS L10968.27.1に規定されているA法(フラジール形法)による。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−119455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、このような新しい素材のベルト用いるロール仕上げ機においても、更に改良すべき点があった。それは、以前のロール仕上げ機のように帯状のベルトを30〜40本並設した場合に、隣接するベルトの隙間部分は被洗物をプレスすることができず、これにより被洗物の乾燥ムラ、プレスムラが生じるものであった。このため、加熱ロールの本数を3本、4本と増やして多段式としたり、加熱ロールの本数を増やさない場合には被洗物の搬送速度(すなわちベルトの走行速度、加熱ロールの回転速度)を遅くさせたりしていた。
このような現状のロール仕上げ機に対し、乾燥時間の短縮、装置の小型化、省エネルギー対策などの作業効率の向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、被洗物の乾燥時間の短縮などの作業効率を向上させることができるロール仕上げ機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解決課題に鑑みて鋭意研究の結果、本発明者は、ロール仕上げ機に用いるベルトを通気度に優れ、かつテンションに耐えられる素材とするとともに、1枚ベルトとしつつもベルトの蛇行を防止することにより、被洗物の乾燥効率を向上させることができるロール仕上げ機を案出するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、回転する加熱ロールと、該加熱ロールに巻き付けられて周回する無端ベルトとを備え、前記加熱ロールと無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んでプレスするロール仕上げ機において、前記無端ベルトを前記加熱ロールと同等の幅径を有する1枚シートから構成するととともに、前記無端ベルトの幅方向の蛇行を検出する検出器を備え、かつ該検出器が検出した無端ベルトの幅方向の変位量に応じて前記無端ベルトを逆方向に変位させるべく前記無端ベルトが案内されるガイドローラを無端ベルト走行方向に対して傾けるガイドローラ制御手段を備えることを特徴とするロール仕上げ機を提供するものである。
【0009】
本発明のロール仕上げ機は、無端ベルトの通気度を20000cm/cm・min以上、50000cm/cm・min以下とすることを特徴とする。
【0010】
本発明のロール仕上げ機は、無端ベルトのテンションを0.15kg/cm以上、2.0kg/cm以下とすることを特徴とする。
【0011】
本発明のロール仕上げ機は、検出器は無端ベルトの側辺に常に当接するべく付勢されて無端ベルトの幅方向の位置を検出することを特徴とする。
【0012】
本発明のロール仕上げ機は、被洗物を無端ベルトと加熱ロールとの間に挟み込む投入部の前に、加熱ロールに圧接して回転する圧迫ロールと、該圧迫ロールの異状動作を検知する検知手段を設置し、該圧迫ロールと加熱ロールとの間を通す被洗物中に異物が存在した場合に前記検知手段が前記圧迫ロールの異状動作を検知して装置を停止させることを特徴とする。
【0013】
本発明のロール仕上げ機のベルト蛇行防止方法は、回転する加熱ロールと、該加熱ロールと同等の幅径を有し該加熱ロールに巻き付けられて周回する無端ベルトとを備え、前記加熱ロールと無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んでプレスするロール仕上げ機における前記無端ベルトの蛇行を防止する方法であって、走行中の前記無端ベルトの幅方向の所定位置からの変位量を検出し、前記加熱ロールの回転軸と平行に設定されて前記無端ベルトを案内するガイドローラの回転軸を、前記変位量に応じて無端ベルト走行方向に対して傾けて前記無端ベルトを幅方向の所定位置に戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明のロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法によれば、ベルトを1枚ものとすることにより、従来のロール仕上げ機におけるベルト間の隙間をなくして被洗物の乾燥ムラをなくすことができ、これにより被洗物の乾燥時間の短縮などの作業効率を向上させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のロール仕上げ機の概略説明図であり、図1(A)は側面図、図1(B)はテンションローラ部分を示す部分平面図である。
【図2】本発明のロール仕上げ機に用いるベルト蛇行防止装置を示す説明図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図である。
【図3】本発明のロール仕上げ機に用いる圧迫ロールを示す説明図である。
【図4】従来のベルト構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法を実施するための形態を詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0017】
図1は、本発明に係るロール仕上げ機1の第1の実施例を示し、このロール仕上げ機1は、図示しない連続洗濯機、脱水機から送られてくる、洗濯・脱水された布製等の被洗物を取り入れて自動的にロールプレスするという連続洗濯設備の一工程を担うものであり、本実施例にあっては、加熱ロール2を1本備えたカレンダー式のロール仕上げ機を例にとって説明する。もちろん、加熱ロールを複数本備えて、その加熱ロールに被洗物を連続して通してプレス仕上げするロール仕上げ機においても本発明を適用することができるものである。
図1(A)は、加熱ロール2とベルト3についての駆動系、及び搬送路をわかりやすく示す側面図であり、圧迫ロール、支持構造等については省略している。
【0018】
本実施例に用いるベルト3は、蒸気を内部に注入することで加熱される直径約0.6〜1.2m、横幅3〜4mの加熱ロールに対し、半周以上巻き付いて回転駆動される横幅3〜4m、全長5〜7mの長尺な1枚ものの無端ベルトであり、その通気性能は20000cm/cm・min以上、50000cm/cm・min以下という、高い通気度を有する素材からなるものである。そして、そのベルト3をテンションローラ4により0.15kg/cm以上、2.0kg/cm以下という、従来と較べて高いテンションを掛けて用いる。このような通気度が高い素材は、一般に密度が小さく隙間が大きいことから、高いテンションを掛けることが難しいのであるが、本発明にあっては、従来のロール仕上げ機に用いられていなかった、通気度が高く、かつ高いテンションを掛けられる新たな素材をベルトとして適用するものである。
このような高い通気度を有し、かつ高いテンションで用いられるベルト3の仕様、性能については、上述した従来技術の特開2008−119455号公報に記載された内容と同様である。
【0019】
テンションローラ4の両端には、図1(B)に示すごとく、エアシリンダ5が設置され、減圧弁(図示せず)によりベルト3を図1の下方向に常に付勢している。これにより、ベルト3は常に所定のテンションを与えられるとともに、上記減圧弁の設定を変えることによりテンションを所望する値に設定することができる。
【0020】
このような幅広のベルト3は、走行が安定せず蛇行しやすいものであった。そこで、本発明のロール仕上げ機1にあっては、ベルト3を安定して走行させるべく、図1(A)における被洗物の投入部の近傍に、ベルト3の水平方向の蛇行を防止するためのベルト蛇行防止装置6の検出器7を設置し、そしてベルト3の走行方向における検出器7の上流側には検出器7が検出したベルト3の蛇行量をゼロにすべく、ベルト3はガイドローラ9に直交するように進行するという原理を応用して、ベルト3をガイドするガイドローラ9を制御する自動ガイド8を設置している。このベルト蛇行防止装置6の構造及び動作について、図2に基づいて以下に詳述する。
【0021】
図2(A)は、図1(A)に示すベルト蛇行防止装置6を上方から見た図であり、図2(B)は図2(A)に示す検出器7がベルト3に当接する様子をベルトの進行方向から見た図である。
検出器7は、上部を支点として振り子状に移動可能な当接片10が、走行するベルト3の一端に常に接触するように付勢される構造である。そして、走行中のベルト3は、被洗物を挟み込むなどの負荷で幅方向にテンションのムラが生じたり、経時的にベルト3に伸びが生じたりした場合に図2の左右方向に蛇行することがあるが、そのベルト3の蛇行に倣って当接片10が上端を支点として移動し角度が変化することにより、この角度変化を検出器7は、ベルト3の標準設定位置での値を「0」としてそれから変位するベルト3の蛇行量を±の極性を有する電気信号に変換するなどして、これを自動ガイド8に送る。
【0022】
自動ガイド8は、検出器7が検出した蛇行量に応じて、ベルト3をガイドするガイドローラ9の図2(A)に示す右端を上下方向に移動させて蛇行するベルト3を元の位置に戻すものである。
ガイドローラ9の左端は、ロール仕上げ機1の基台に固定された軸受け11に回転自在に軸支され支点となる一方、右端は基台に対してベルト3を送る平面に沿って移動可能な軸受け12を備えた自動ガイド8に軸支されている。自動ガイド8の軸受け12は、その両端に備えたエアシリンダを伸長・収縮させることにより図2(A)の上下方向に移動する。
そして、ベルト3が図2の右方向に変位したことを検出器7が検出すると、自動ガイド8は軸受け12を図2(A)の下方向に移動させる。これにより、ガイドローラ9が図2(A)の右下がりに傾き、それに倣ってベルト3は図2(A)の左方向に移動する。そして今度は、検出器7はベルト3が左方向に移動したことを検出して、自動ガイド8は軸受け12を図2(A)の蛇行する前の元の位置方向の上方向に移動させ、ベルト3が所定位置に戻ったところで自動ガイド8は軸受け12を停止させるものである。
【0023】
また、ベルト3が図2の左方向に変位した場合には、自動ガイド8は軸受け12を図2(A)の上方向に移動させて、ガイドローラ9が図2(A)の右上がりに傾き、それに倣ってベルト3は図2(A)の右方向に移動する。このように、ベルト蛇行防止装置6はベルト3が蛇行してもすぐに元の位置に戻すことができるものである。
【0024】
図3は、本発明のベルト蛇行防止装置6の第2の実施例を表し、これは本発明に用いる1枚もののベルト3が従来の帯状のベルトと比較すると高価であることから、できるだけ損傷することがないようにと案出したものである。
すなわち、ロール仕上げ機1の被洗物の投入口の手前に、加熱ロール2に当接して回転する圧迫ロール13を配置して、被洗物をベルト3に接触する前に加熱ロール2との間で圧迫することにより、被洗物の小じわを一定程度伸ばす作用を発揮するとともに、被洗物内に混入する異物を検出してロール仕上げ機1を停止させるものである。
【0025】
そして、圧迫ロール13を加熱ロール2表面に所定の圧力で押し付けるエアシリンダ14には、圧迫ロール13が加熱ロール2表面から急に持ち上がるなどの異常な動きをした場合に、それを検知してロール仕上げ機1を停止させるスイッチ部材15を備える。被洗物の中でも特に包布の場合には中に硬い金属等が入っていることがあり、そのままロール仕上げ機1を異物が通過した場合に、1枚もので高価なベルト3を損傷するおそれがあった。
【0026】
以上、本発明のロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法について、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態におけるロール仕上げ機の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のロール仕上げ機及びそのベルト蛇行防止方法は、連続洗濯設備を製造する産業において利用することができるものである。
【符号の説明】
【0028】
1 ロール仕上げ機
2 加熱ロール
3 ベルト
4 テンションローラ
6 ベルト蛇行防止装置
7 検出器
8 自動ガイド
9 ガイドローラ
10 当接片
11 軸受け
12 軸受け
13 圧迫ロール
14 エアシリンダ
15 スイッチ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する加熱ロールと、該加熱ロールに巻き付けられて周回する無端ベルトとを備え、前記加熱ロールと無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んでプレスするロール仕上げ機において、
前記無端ベルトを前記加熱ロールと同等の幅径を有する1枚シートから構成するととともに、
前記無端ベルトの幅方向の蛇行を検出する検出器を備え、かつ該検出器が検出した無端ベルトの幅方向の変位量に応じて前記無端ベルトを逆方向に変位させるべく前記無端ベルトが案内されるガイドローラを無端ベルト走行方向に対して傾けるガイドローラ制御手段を備えることを特徴とするロール仕上げ機。
【請求項2】
無端ベルトの通気度を20000cm/cm・min以上、50000cm/cm・min以下とすることを特徴とする請求項1に記載のロール仕上げ機。
【請求項3】
無端ベルトのテンションを0.15kg/cm以上、2.0kg/cm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のロール仕上げ機。
【請求項4】
検出器は無端ベルトの側辺に常に当接するべく付勢されて無端ベルトの幅方向の位置を検出することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のロール仕上げ機。
【請求項5】
被洗物を無端ベルトと加熱ロールとの間に挟み込む投入部の前に、加熱ロールに圧接して回転する圧迫ロールと、該圧迫ロールの異状動作を検知する検知手段を設置し、該圧迫ロールと加熱ロールとの間を通す被洗物中に異物が存在した場合に前記検知手段が前記圧迫ロールの異状動作を検知して装置を停止させることを特徴とする請求項1に記載のロール仕上げ機。
【請求項6】
回転する加熱ロールと、該加熱ロールと同等の幅径を有し該加熱ロールに巻き付けられて周回する無端ベルトとを備え、前記加熱ロールと無端ベルトとの間に被洗物を挟み込んでプレスするロール仕上げ機における前記無端ベルトの蛇行を防止する方法であって、
走行中の前記無端ベルトの幅方向の所定位置からの変位量を検出し、前記加熱ロールの回転軸と平行に設定されて前記無端ベルトを案内するガイドローラの回転軸を、前記変位量に応じて無端ベルト走行方向に対して傾けて前記無端ベルトを幅方向の所定位置に戻すことを特徴とするロール仕上げ機のベルト蛇行防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−75768(P2012−75768A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225450(P2010−225450)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)