説明

ロール及び洗浄装置

【課題】優れた耐熱性と吸液性を有するロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置を提供する。
【解決手段】鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール1において、前記ロール1はロール部2及び台座3を有し、前記台座3は前記ロール部2が外周に形成される本体部7、及び前記本体部7の両端に連接される継ぎ手部8及び継ぎ手部9を有し、前記ロール部2は不織布からなる複数の概円環状のロール片4a、4bが積層されて形成されてあると共に、前記不織布は多数の極細繊維が束状に形成された繊維束が立体的に絡み合った繊維集合体からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールに関しては、ドーナツ型に打ち抜かれた不織布を複数枚心棒に嵌入させて積層されてなるロールであって、該不織布がアクリル系樹脂を含有していることを特徴とする不織布ロール(例えば、特許文献1参照)がある。
【0003】
また、合成繊維を交絡させてなる不織布で構成されたディスク状物を、多数枚重畳させてなるロールであって、該合成繊維がスパンボンド長繊維であり、かつ、該ロールの表面硬度がJISK6301におけるスプリング式C型ゴム硬度計で測定したときに50°以上であることを特徴とする不織布ロール(例えば、特許文献2参照)もある。
【0004】
さらに、合成繊維からなる不織布で構成されたディスク状物を多数枚重畳させてなるロールにおいて、該不織布が親水性極細長繊維を含む長繊維絡合体で構成されていることを特徴とする不織布ロール(例えば、特許文献3参照)も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−101711号公報
【特許文献2】特開平6−280854号公報
【特許文献3】特開2004−28162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の不織布ロールは、アクリル樹脂が繊維を結合しているバインダー含有不織布である。従って、不織布を構成する繊維の交点や接触部分等にアクリル樹脂が固着していることから、耐熱性に劣り、不織布ロールに熱が加わると、不織布が収縮し、吸液性が低下するという問題を有していた。バインダー含有不織布を製造する際には、繊維にバインダーを固着させるのに、加熱してバインダーである樹脂を溶融し、その後冷却して樹脂を固める必要がある。その為、バインダーに使用する樹脂は、繊維よりも融点の低い樹脂が用いられるので、一般的に、バインダー含有不織布は、バインダーを含有しないノーバインダー不織布に比べて、耐熱性が劣ることになるのである。
【0007】
特許文献2の不織布ロールは、合成繊維からなるスパンボンド長繊維にて不織布が形成されたノーバインダー不織布なので、上記特許文献1の不織布ロールに用いられているバインダー含有不織布に比べて、耐熱性には優れている。しかしながら、スパンボンド長繊維の繊度は1〜10デニールと太く、繊度が1デニール未満の極細繊維に比べて、毛細管現象が弱く、吸液性に劣るという課題を有していた。なお、1デニールとは9000mで1gとなる繊維の繊度のことをいい、デニール数が大きくなれば繊維は太くなる。
【0008】
特許文献3の不織布ロールは、親水性極細長繊維を含む長繊維絡合体にて不織布が構成されているので、上記特許文献2の不織布ロールに比べて、毛細管現象が発現しやすく、吸液性に優れている。しかしながら、極細長繊維を得るのに、繊維に高圧水流を噴射して、細分割する必要があり、高圧水流が繊維に均一に当たらないと、繊維が細分割されず、極細長繊維が形成されない。その為、吸液ムラを発生させやすいという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、優れた耐熱性と吸液性を有するロール、及びそのロールを搭載した洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は前記ロール部が外周に形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記ロール部は不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあると共に、前記不織布は多数の極細繊維が束状に形成された繊維束が立体的に絡み合った繊維集合体からなるもので、不織布は繊維を結合させるバインダーとして繊維よりも融点の低い樹脂が用いられていないことから、耐熱性に優れる。
【0011】
また、繊維集合体は極細繊維からなる繊維束が立体的に絡合されて形成されていることから、毛細管現象が発揮されやすく、吸液性に優れる。なお、極細繊維は低融点の樹脂の中に、高融点の樹脂を入れ、加熱することにより、低融点の樹脂を溶かし、高融点の樹脂を極細繊維として形成する為、確実に極細繊維が形成され、前記極細繊維からなる不織布がロールに成形された場合、吸液ムラが発生しにくい。低融点の樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が挙げられ、高融点の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド等が挙げられる。
【0012】
請求項2の発明のロールは、特に、請求項1のロールにおいて、本体部は開口部が形成されてあると共に、外周に前記開口部に連通する孔部が開設されてあり、継ぎ手部A及び/又は継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあるもので、継ぎ手部A及び/又は継ぎ手部Bの端部にロータリージョイントと配管を介して真空ポンプやコンプレッサーなどに接続することにより、ロール部に吸収された液体を、外部に排出することができる。その為、ロールの吸液性能が長期間に亘って持続するので、ロールの耐久性が向上する。
【0013】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項1から2のロールにおいて、ロール片は内周に切欠き部が設けられ、前記切欠き部が本体部の長手方向に連なることにより流体溝部が形成されると共に、孔部は前記流体溝部と対置するもので、例えば、ロールを真空ポンプと接続すると、ロール部に吸収された液体は流体溝部を介して、孔部に迅速且つ確実に吸引され、ロールの外部に排出される。その為、ロールの耐久性が大幅に向上する。
【0014】
また、ロールをコンプレッサーに接続すると、圧縮流体は孔部から流体溝部を介してロール部に均一に流入し、ロール部に吸収された液体は、圧縮流体と共に、効率よく確実にロールの外部に排出される。
【0015】
請求項4の発明のロールは、特に、請求項1から3のロールにおいて、不織布の密度は0.15g/cm以上0.50g/cm以下であるもので、吸液性と耐摩耗性に優れたロールを安価にて提供することができる。不織布の密度が0.15g/cmより低いと、繊維量が少なく、吸液性及び耐摩耗性が劣ることになる。繊維量を増やす為、ロール片の積層枚数を増やすと、ロールのコストの上昇につながる。一方、不織布の密度が0.50g/cmを超えると、低硬度のロールの製作が難しくなる。高硬度のロールは、液体の通気性が悪く、吸液性が劣ることになる。なお、ロール部の表面部の硬度は40°〜80°程度に設定されるのが望ましい。
【0016】
請求項5の発明の洗浄装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段を少なくとも有するもので、耐熱性と吸液性に優れた洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明のロールは、耐熱性と吸液性に優れる。
【0018】
請求項2の発明のロールは、ロールの吸液性能が長期間に亘って持続するので、ロールの耐久性が向上する。
【0019】
請求項3の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、確実に外部に排出することができるので、ロールの耐久性が大幅に向上する。
【0020】
請求項4の発明のロールは、吸液性と耐摩耗性に優れたロールを安価にて提供することができる。
【0021】
請求項5の発明の洗浄装置は、耐熱性と吸液性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のロールの正面図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】(a)本体部の両端部の近傍に積層されるロール片の平面図、(b)本体部の略中央部の近傍に積層されるロール片の平面図である。
【図4】不織布を構成する繊維集合体の拡大図である。
【図5】本発明のロールが搭載された洗浄装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1から図4を用いて、実施例1のロールについて説明する。
【0025】
図1、及び図2において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4a、4bからなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されてあると共に、開口部10を有する本体部7、及び本体部7の一方の端部に連接され中空部11を有する継ぎ手部A8、及び本体部7の他方の端部に連接される中実状の継ぎ手部B9から形成されている。ロール部2は、複数のロール片4a、4bが台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5は、ネジ止めのロックナットが使用されている。なお、本実施例では、継ぎ手部A8が中空状、継ぎ手部B9が中実状としたが、継ぎ手部A8、継ぎ手部B9が共に中空状であっても構わない。
【0026】
図2において、台座3を構成する本体部7の外周には、複数の円形の孔部14が千鳥状に開設されている。孔部14は、本体部7の有する開口部10に連通している。また、継ぎ手部A8は、中空部11が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント(図示せず)が接続されるネジ部A12が形成されてあり、他方は本体部7の端部に、溶接による接合部15を介して連接されている。継ぎ手部B9は中実状で、一方の端部が本体部7の端部に、溶接による接合部15を介して連接されている。
【0027】
また、本体部7と継ぎ手部A8の接合部15の近傍には、傾斜面を有して徐変部13が形成されている。従って、本体部7と継ぎ手部A8の接合部15の近傍は、開口部10の開口面積が、本体部7の略中央部の開口面積より小さくなる。徐変部13が形成されていることから、ロール1を真空ポンプ等の液体の吸引装置と接続すると、ロール部2に吸収された液体は、吸引力により、2点鎖線矢印の如く孔部14を介して開口部10に流れ込み、接合部15の近傍で滞留することなく中空部11を通過してロール1の外部に排出される。
【0028】
ロール部2の両端部に固定されるプレート6、及び止め金具5は鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなると共に、概円環状に形成されてあり、止め金具5の内周に形成されたネジ部C26は、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の外周に形成されたネジ部B25に嵌合され、固定される。
【0029】
図3(a)において、ロール片4aは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。ロール片4aは、図1、及び図2の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍に積層される。
【0030】
図3(b)において、ロール片4bは、中心部に穴部18、外周に側縁部19が形成された概円環状の不織布17からなる。また、ロール片4bは、内周の等分6箇所に、概U字状の切欠き部20が形成されている。ロール片4bは、図1、及び図2の如く、台座3を構成する本体部7の長手方向に亘る両端部の近傍を除く孔部14が外周に開設された略中央部に積層される。そして、切欠き部20が本体部7の長手方向に亘って連なることにより、図2の如く、複数の流体溝部16が形成されると共に、孔部14のロール部2側に流体溝部16が位置するよう設定される。すなわち、孔部14と、流体溝部16は対置するよう形成される。ロール片4bの内周に形成される切欠き部20の数は、本体部7の外周に開設される孔部14の円周上の数に応じて変更される。さらに、切欠き部20の形状は、概U字状以外にも、概V字状、概凹状等であっても構わない。
【0031】
上記の如く、切欠き部20を有しないロール片4aを、本体部7の両端部に配置することにより、ロール1はロール部2とプレート6の接触部分から真空漏れを防ぐことができる。また、切欠き部20を有するロール片4bを本体部7の略中央部に配置し、孔部14と対置する形で流体溝部16を形成することにより、ロール部2に吸収された液体は、流体溝部16を介して、迅速且つ確実に孔部14に流れ込むことができる。
【0032】
孔部14の直径については、特に限定されるものではないが、例えば、孔部14の直径は1〜8mm程度に設定されるのが望ましい。孔部14の直径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく液体を開口部10に流出することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの液体を吸引する力が弱くなる。
【0033】
次に、図4を用いて、不織布17について詳説する。
【0034】
不織布17は、16本の極細繊維23が絡み合った複数の繊維束22が、立体的に絡合した繊維集合体21からなるノーバインダー不織布である。隣り合う極細繊維23の間に生じる空隙部24において、繊維が液体を吸い上げる毛細管現象が発現する。不織布17の重量は200g/m、厚みは1mm、密度は0.2g/cmである。また、不織布17を構成する極細繊維23の材質はポリエステルで、繊度は0.15デニールである。不織布17は、ポリエチレン樹脂の中に、ポリエチレンテレフタレート樹脂を入れ、加熱することにより、低融点のポリエチレン樹脂を溶かし、高融点のポリエチレンテレフタレート樹脂を極細繊維23のポリエステル繊維として形成すると共に、1束16本の繊維束22とする。複数の繊維束22は、平板状に集積させて布状体とし、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された繊維集合体21からなる不織布17を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。
【0035】
上記に示した不織布17、及び極細繊維23の物性、製造方法等は一例であり、ロール片4a、4bに用いられる不織布17の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度、除去対象となる液体の性状等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものであるが、不織布17の密度は0.15g/cm以上0.50g/cm以下、極細繊維23の繊度は1デニール未満であることが望ましい。不織布17の密度が0.15g/cmより低いと、繊維量が少なく、吸液性及び耐摩耗性が劣ることになる。繊維量を増やす為、ロール片4a、4bの積層枚数を増やすと、ロール1のコストの上昇につながる。一方、不織布17の密度が0.50g/cmを超えると、低硬度のロール1の製作が難しくなる。高硬度のロール1は、液体の通気性が悪く、吸液性が劣ることになる。また、極細繊維23の繊度が1デニール以上であると、空隙部24が少なくなり、毛細管現象が発揮しにくく、吸液性が劣ることになる。
【0036】
なお、ロール部2の表面部の硬度は、40°〜80°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が80°を超えると、硬度が高すぎて、液体の通気性が悪く、吸液性が劣る。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0037】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0038】
最初に、外周に孔部14が形成され、開口部10を有する略円筒形状の本体部7を用意する。次いで、徐変部13が形成された中空部11を有する中空状の継ぎ手部A8、及び中実状の継ぎ手部B9を、本体部7の両方の端部に挿入し、圧入、あるいは焼きバメすると共に、溶接による接合部15を介して本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9を一体化し、台座3を形成する。本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の連接方法は、台座3の強度が保持されるのであれば、ネジ止め、ボルト締め等の方法であっても構わない。
【0039】
次に、平板状の不織布17を用意し、不織布17をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部18、及び側縁部19を有する概円環状のロール片4aに打ち抜く。同様に、6箇所の切欠き部20を有するロール片4bを打ち抜く。次いで、ロール片4a、4bを複数枚重ね合わせて、穴部18を台座3にたいして貫通させ、積層する。台座3を構成する本体部7の両端部の近傍にはロール片4a、略中央部の近傍にはロール片4bが位置するように積層する。その時、ロール片4bは切欠き部20が本体部7の長手方向に亘って連なると共に、孔部14に対置するように積層する。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4a、4bを挟み付けて固定する。その際、止め金具5の内周に形成されたネジ部C26を、継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の外周に形成されたネジ部B25に嵌合し、固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4a、4bの内部応力を均一化させ、側縁部19を切削加工及び研磨加工し、台座3を構成する本体部7の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0040】
上記の如く構成されたロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0041】
ロール1はロール部2及び台座3を有し、台座3はロール部2が外周に形成される本体部7、及び本体部7の両端に連接される継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9を有し、ロール部2は不織布17からなる複数の概円環状のロール片4a、4bが積層されて形成されてあると共に、不織布17は多数の極細繊維23が束状に形成された繊維束22が立体的に絡み合った繊維集合体21からなり、不織布17は繊維を結合させるバインダーとして樹脂が用いられていないことから、耐熱性に優れる。
【0042】
また、繊維集合体21は極細繊維23からなる繊維束22が立体的に絡合されて形成されていることから、空隙部24による毛細管現象が発揮されやすく、吸液性に優れる。なお、極細繊維23は低融点のポリエチレン樹脂の中に、高融点のポリエチレンテレフタレート樹脂を入れ、加熱することにより、低融点のポリエチレン樹脂を溶かし、高融点のポリエチレンテレフタレート樹脂を極細繊維23のポリエステル繊維として形成する為、確実に極細繊維23が形成され、前記極細繊維23からなる不織布17がロール1に成形された場合、吸液ムラが発生しにくい。
【0043】
本体部7は開口部10が形成されてあると共に、外周に開口部10に連通する孔部14が開設されてあり、継ぎ手部A8には中空部11が形成され、中空部11は開口部10と連通されていることから、継ぎ手部A8の端部のネジ部A12にロータリージョイントを嵌合し、配管を介して真空ポンプと接続することにより、ロール部2に吸収された液体を、外部に排出することができる。その為、ロール1の吸液性能が長期間に亘って持続するので、ロール1の耐久性が向上する。
【0044】
ロール片4bは内周に切欠き部20が設けられ、切欠き部20が本体部7の長手方向に連なることにより流体溝部16が形成されると共に、孔部14は流体溝部16と対置することから、ロール1を真空ポンプと接続すると、ロール部2に吸収された液体は流体溝部16を介して、孔部14に迅速且つ確実に吸引され、ロール1の外部に排出される。その為、ロール1の耐久性が大幅に向上する。
【0045】
不織布17の密度は0.2g/cmなので、吸液性と耐摩耗性に優れたロール1を安価にて提供することができる。
【実施例2】
【0046】
図5を用いて、実施例2の洗浄装置について説明する。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。また、ロールは、鋼板に付着した油分除去用として用いられるものとする。
【0047】
ロール61a、61bは、洗浄装置60に上下一対で設置され、上部に位置するロール61aの台座63の両端部、すなわち継ぎ手部A68、及び継ぎ手部B69に一定の圧力が加えられ、駆動手段64により矢印の方向に回転駆動し、上部のロール61aと下部のロール61bの間を、両面に油分(図示せず)が付着したピース状の鋼板70が白抜き矢印の方向に送出されている。また、継ぎ手部A68の端部にはロータリージョイント66が挿入されると共に、配管65を介して真空ポンプ67に連接されている。上部に位置するロール61aは鋼板70の表面から油分を除去し、下部に位置するロール61bは鋼板70の裏面から油分を除去する。油分が付着した鋼板70は、ロール部62と接触し、ロール部62を構成する不織布の有する極細繊維間に発生する空隙部による毛細管現象により、油分がロール部62に吸い上げられると共に、ロール部62の空隙に放出される。なお、ロール61a、61bは、上記に示した実施例1のロール1と同一である。
【0048】
上記の如くのロール61a、61bの状態において、真空ポンプ67を稼働して真空吸引力を作用させると、ロール部62に負圧が付加され、ロール部62に吸収された油分は、流体となり、流体は、流体溝部、及び孔部を通り、開口部に流れ込み、継ぎ手部A68に形成された中空部から配管65を通り、ロール61a、61bの外部に吸引されて、放出される。流体は、真空ポンプ67にてフィルター(図示せず)を介し、図示しない配管を通り、洗浄油タンクへ再び送出される。従って、ロール部62の吸液飽和状態が解消され、吸排機能が持続する為、ロール61a、61bは長期間に亘って、鋼板70に付着した油分を、確実に除去することができる。
【0049】
上記の如く構成された洗浄装置60の動作、作用は下記の通りである。
【0050】
洗浄装置60は、長期間に亘って、鋼板70から油分を確実に除去することができるロール61a、61bが搭載されていることから、優れた油分除去性能が発揮される。
【0051】
また、ロール部62を構成する不織布は、ノーバインダー不織布であることから、上側のロール61aと下側のロール61bのロール部62同士が接触したり、ロール部62が鋼板70と接触し、摩擦熱が発生しても、耐熱性に優れていることから、熱によりロール部62が収縮することがない。その為、長期間に亘り、良好な油分除去性能が発揮される洗浄装置60を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、長期間に亘り、高温下で優れた液体の除去性能を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、61a、61b ロール
2、62 ロール部
3、63 台座
4a、4b ロール片
5 止め金具
6 プレート
7 本体部
8、68 継ぎ手部A
9、69 継ぎ手部B
10 開口部
11 中空部
12 ネジ部A
13 徐変部
14 孔部
15 接合部
16 流体溝部
17 不織布
18 穴部
19 側縁部
20 切欠き部
21 繊維集合体
22 繊維束
23 極細繊維
24 空隙部
25 ネジ部B
26 ネジ部C
60 洗浄装置
64 駆動手段
65 配管
66 ロータリージョイント
67 真空ポンプ
70 鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状の被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記台座は前記ロール部が外周に形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記ロール部は不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあると共に、前記不織布は多数の極細繊維が束状に形成された繊維束が立体的に絡み合った繊維集合体からなることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、本体部は開口部が形成されてあると共に、外周に前記開口部に連通する孔部が開設されてあり、継ぎ手部A及び/又は継ぎ手部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記開口部と連通されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片は内周に切欠き部が設けられ、前記切欠き部が本体部の長手方向に連なることにより流体溝部が形成されると共に、孔部は前記流体溝部と対置することを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、不織布の密度は0.15g/cm以上0.50g/cm以下であることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載されたロールと、前記ロールを回転駆動する駆動手段を少なくとも有する洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45471(P2012−45471A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188957(P2010−188957)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】