説明

ロール媒体ホルダー装置、記録装置

【課題】ガイド部に対して摺動可能なホルダー部を該ガイド部に対して固定する際の前記ガイド部の破損を考慮したロール媒体ホルダー装置を提供すること。
【解決手段】ロール媒体ホルダー装置51は、ガイド部材7と、ロール状のロール媒体を保持する軸部を有し、前記ガイド部材に対して摺動可能なホルダー部(3)と、該ホルダー部に設けられ、前記ガイド部材の外周面と面接触するストッパー部材47と、を備え、該ストッパー部材における前記ガイド部材の周方向において異なる二点(点A、点B)の間で、該ストッパー部材47が前記ガイド部材7の外周面に対して押し付け力Fを調整可能に作用させる構成であり、前記押し付け力が強まることにより、固定された状態となり、前記押し付け力が弱まることにより、摺動可能な状態になる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の媒体を保持するロール媒体ホルダー装置および該ロール媒体ホルダー装置を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、ロール状のロール紙を保持するホルダー装置を備えていた。該ホルダー装置は、ロール紙の両側に一対のホルダーを有していた。そして、一対のホルダーのうち少なくとも一方が、ロール紙の幅方向に延設されたガイド部に沿ってスライド可能に設けられていた。従って、ロール紙のサイズに応じて、少なくとも一方のホルダーをスライドさせることにより、一対のホルダーが、ロール紙の両側に嵌りロール紙を保持することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−234668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、幅方向におけるロール紙の位置を安定させるため、スライド可能なホルダーを記録装置の使用時に固定する必要がある。従来では、ガイド部が非常に固い材質で形成されていたので、ホルダーに設けたねじの先端をガイド部に突き当てて点接触させていた。そして、その点接触した箇所の摩擦力を所定以上の大きさにすることにより、ホルダーをガイド部に対して固定する構成が一般的であった。
【0005】
しかしながら、記録装置およびホルダー装置の軽量化やコストを考慮して、ガイド部を中空に構成すること、肉薄に構成することや材質を変更することが考えられる。係る場合、ガイド部におけるねじの先端によって突き当てられた箇所が、傷ついたり変形したりする虞がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ガイド部に対して摺動可能なホルダー部を該ガイド部に対して固定する際の前記ガイド部の破損を考慮したロール媒体ホルダー装置および該ロール媒体ホルダー装置を備えた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のロール媒体ホルダー装置は、ロール媒体の幅方向に延設されたガイド部材と、ロール状のロール媒体を保持する軸部を有し、前記ガイド部材に対して摺動可能なホルダー部と、該ホルダー部に設けられ、前記ガイド部材の外周面と面接触するストッパー部材と、を備え、該ストッパー部材における前記ガイド部材の周方向において異なる二点の間で、該ストッパー部材が前記ガイド部材の外周面に対して押し付け力を調整可能に作用させる構成であり、前記押し付け力が強まることにより、前記ガイド部材に対する前記ホルダー部の位置が固定された状態となり、該固定された状態から前記押し付け力が弱まることにより、前記ホルダー部が前記ガイド部材に対して摺動可能な状態になる構成であることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記ストッパー部材が前記ガイド部材の外周面と面接触するので、前記ストッパー部材が前記ガイド部材の外周面を傷つける虞がない。また、前記押し付け力が一点に集中することがないので、前記ガイド部材が破損してしまう虞がない。特に、前記ガイド部材が軽量化のため中空であり肉薄である場合であっても破損させずに前記ホルダー部を前記ガイド部材に対して固定することができる。
またさらに、前記ガイド部材の外周面に傷が生じる虞がないため、前記固定された状態、前記摺動可能な状態の切り替えを繰り返した場合であっても、前記摺動可能な状態にした際、滑らかに前記ホルダー部を前記ガイド部材に対して摺動させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ガイド部材は、中空であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記ガイド部材が中空である場合に前記ガイド部が破損する虞がある。係る場合に、前記ストッパー部材が前記面接触する構成は特に有効である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記ストッパー部材における前記二点のうちの少なくとも一方の位置を変えることにより、前記押し付け力の大きさを変化させる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、簡単な構成で、前記固定された状態、前記摺動可能な状態の切り替えを容易に行うことができる。また、前記ホルダー部を前記ガイド部材に対して摺動させてから固定する前記ホルダー部の位置調整を容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記ストッパー部材は可撓性を有する材料で形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記面接触する箇所における前記押し付け力を略均一にすることができる。その結果、より確実に前記ガイド部材の破損を防止することができる。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記ガイド部材と前記ホルダー部とが周方向において少なくとも二点で接触し、該二点の間に向かって前記押し付け力が作用する構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記ガイド部材に対する前記ホルダー部の位置および姿勢を精度よく決めることができる。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記ストッパー部材は、リング状に形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、ストッパー部材を容易に構成することができる。
【0014】
本発明の第7の態様の記録装置は、ロール状のロール媒体を送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段と、繰り出されたロール媒体に対して記録する記録部と、記録されたロール媒体を巻き取る巻き取り手段と、を備えた記録装置であって、前記繰り出し手段および前記巻き取り手段のうち少なくとも一方が、上記第1から第6のいずれか一の態様のロール媒体ホルダー装置を有していることを特徴とする。
本態様によれば、前記繰り出し手段および前記巻き取り手段のうち少なくとも一方が、上記第1から第6のいずれか一の態様のロール媒体ホルダー装置を有している。従って、前記記録装置において、上記第1から第6のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例のプリンターの全体構成の概略を示す側断面図。
【図2】本実施例のプリンターの全体構成の概略を示す正面図。
【図3】本実施例の媒体繰り出し手段のロール媒体ホルダー装置を示す斜視図。
【図4】本実施例のロール媒体ホルダー装置のストッパー部材を示す斜視図。
【図5】本実施例のロール媒体ホルダー装置のストッパー部材を示す斜視図。
【図6】本実施例のロール媒体ホルダー装置のストッパー部材を示す側断面図。
【図7】他の実施例のストッパー部材を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の記録装置としての大型のインクジェットプリンター1(以下、単にプリンターという。)の全体構成の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、媒体繰り出し手段26と、記録部28と、巻き取り手段37と、を備えている。このうち、媒体繰り出し手段26は、ロール状に巻かれたロール媒体Rを解いて送り方向Qへ送り出すことができるように構成されている。具体的には、第1ホルダー部3と、ローラー対29と、を有している。
【0017】
このうち、第1ホルダー部3は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができるように設けられている。第1ホルダー部3は、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌る軸部13と、ロール媒体Rの端部と接触可能なフランジ部9と、を有している。軸部13は、回動自在な構成でも、図示しないモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、送り方向下流側の駆動するローラー対29によってロール媒体Rが引っ張られて解かれるからである。
尚、第1ホルダー部3は、向い合わせで一対配設されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部3が、ロール媒体Rの幅寸法の違いに対応してガイド部材7に対して幅方向Xにスライドし取付け位置を調整できるように構成されている。
【0018】
また、第1ホルダー部3の下方には、仮置き部としての仮置き台5と、持ち上げ手段2とが設けられている。仮置き台5は、ロール媒体Rを第1ホルダー部3に取り付ける前に仮に置くための台である。一例として、幅方向Xに延設された二本の第1管部材7a、第2管部材7bによって構成されている。また、持ち上げ手段2は、仮置き台5に置かれた重たいロール媒体Rを容易に上方に持ち上げ、ロール媒体Rの端部を容易に第1ホルダー部3に取り付けることができるように構成されている。
【0019】
具体的に、持ち上げ手段2は、ガイド部材7としての二本の第1管部材7a、第2管部材7bに対して幅方向Xに摺動可能な基体部8と、操作レバー6と、昇降部16と、を備えている。そして、操作レバー6を一方向へ回動させることにより、昇降部16は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー6を反対方向へ回動させることにより、昇降部16は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。
【0020】
また、記録部28は、プリンター本体19を有している。プリンター本体19には、幅方向Xに延設されたキャリッジガイド軸21と、キャリッジ23と、記録ヘッド25と、媒体支持部27とが設けられている。キャリッジ23は、キャリッジガイド軸21にガイドされながら幅方向Xへ移動可能に設けられている。また、記録ヘッド25は、キャリッジ23における媒体支持部27と対向する位置に設けられ、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができるように構成されている。またさらに、媒体支持部27は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド25との間の距離を所定の距離にすることができるように設けられている。
【0021】
尚、ローラー対29は、プリンター本体19の内部に設けたが、外部でもよい。ロール媒体Rを送り方向Qへ送ることができればよいからである。
また、プリンター本体19より送り方向上流側にはプレヒーター31が設けられている。ロール媒体Rに対して記録を実行する前の段階で予めロール媒体Rを温めることにより、記録を実行した際、ロール媒体Rに着弾したインクが乾燥しやすくするためである。
またさらに、プリンター本体19より送り方向下流側にはアフターヒーター33が設けられている。ロール媒体Rに着弾したインクを、記録を実行した後から巻き取り手段37によって巻かれる前までの間に、確実に乾燥させるためである。
【0022】
またさらに、巻き取り手段37は、図示しないモーターの動力によってロール媒体Rを巻き取り、ガイド部材39としての二本の第3管部材39a、第4管部材39bに取り付けられた第2ホルダー部40に巻き取ったロール媒体Rを保持することができるように構成されている。
尚、プリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を有する側面視逆T字形の支持フレーム17を対向するように左右両端部に備えている。そして、支持フレーム17の上部にプリンター本体19が設けられている。また、支持フレーム17に取り付けられたサブフレーム35に、仮置き台5が取り付けられている。またさらに、第3管部材39a、第4管部材39bの両端は、支持フレーム17から延びた保持部24によって保持されている。
【0023】
図2に示すのは、本実施例のプリンター1の全体構成の概略を示す正面図である。
図2に示す如く、プリンター1の支持フレーム17を基準とした前側には、第1ホルダー部3が設けられ、後側には、第2ホルダー部40が設けられている。第1ホルダー部3は、前述したように、サブフレーム35によって両端が保持されたガイド部材7としての第1管部材7a、第2管部材7bに対して、スライド可能に設けられている。同様に、第2ホルダー部40は、保持部24によって両端が保持されたガイド部材39としての第3管部材39a、第4管部材39bに対して、スライド可能に設けられている。
【0024】
ここで、第2ホルダー部40の第3管部材39a、第4管部材39bに対する固定の仕方は、第1ホルダー部3の第1管部材7a、第2管部材7bに対する固定の仕方と同様である。以下、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して固定する構造について説明するものとし、第2ホルダー部40を第3管部材39a、第4管部材39bに対して固定する構造についての説明は省略する。
【0025】
図3に示すのは、本実施例の媒体繰り出し手段26におけるロール媒体ホルダー装置51を示す斜視図である。
図3に示す如く、媒体繰り出し手段26は、ロール媒体ホルダー装置51を備えている。ロール媒体ホルダー装置51は、ガイド部材7として二本の第1管部材7a、第2管部材7bと、軸部13を有した第1ホルダー部3と、ストッパー部材47(図4〜図6参照)と、を備えている。
【0026】
そして、詳しくは後述するが、つまみ付きのねじ50(図6参照)のつまみ部36を、ねじを緩める方向へ回転させることにより、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動させることができる。具体的には、第1ホルダー部3の下方に設けられたベース部4が第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動する。一方、ねじを締める方向へ回転させることにより、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して固定することができるように構成されている。従って、ロール媒体Rの幅サイズに応じて一対の第1ホルダー部3の位置を調整することができる。
【0027】
尚、持ち上げ手段2は、一対の第1ホルダー部3の間において、第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能に設けられている。持ち上げ手段2については、第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能な状態と固定した状態とを切り替え可能に構成する必要はない。ロール媒体Rのサイズに応じてロール媒体Rの側端近傍の下方へ摺動させ、ロール媒体Rの側端を持ち上げることができればよいからである。
【0028】
続いて、ロール媒体ホルダー装置51のストッパー部材47の構造について詳しく説明する。
図4に示すのは、本実施例のロール媒体ホルダー装置51のストッパー部材47等を斜め上方から見た断面斜視図である。また、図5に示すのは、ストッパー部材47等を斜め下方から見た断面斜視図である。またさらに、図6に示すのは、ストッパー部材47等を示す側断面図である。
【0029】
図4〜図6に示す如く、ロール媒体ホルダー装置51の第1ホルダー部3の下方に設けられたベース部4が第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能に設けられている。ベース部4には、例えばリング形状のストッパー部材47が取り付けられており、ストッパー部材47のリング内に二本の第1管部材7a、第2管部材7bのうちの一本の第1管部材7aが通されている。ここで、ストッパー部材47は、第1管部材7aの外周と面接触することができるように形成されている。
【0030】
そして、前述したつまみ付きのねじ50(図6参照)のつまみ部36を回転させることにより、ストッパー部材47が接触する第1管部材7aに対して作用する押し付け力F(図6参照)の大きさが変化するように構成されている。押し付け力Fの大きさが所定の大きさより大きいときは、摩擦力が大きくなることによって、第1ホルダー部3は第1管部材7a(および第2管部材7b)に対して固定された状態となる。一方、押し付け力Fの大きさが前記所定の大きさより小さいときは、摩擦力が小さくなることによって、第1ホルダー部3は第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能な状態となる。
【0031】
以下、詳しい構造について説明する。
ベース部4には、第1穴部44〜第3穴部46が形成されている(図5参照)。そして、リング形状のストッパー部材47の一部がそれぞれ第1穴部44〜第3穴部46に嵌るようにして、ストッパー部材47がベース部4に取り付けられている。一方、ストッパー部材47には、第1当接部48と、第2当接部49とが形成されている。
【0032】
このうち、第1当接部48は、第1穴部44に嵌ると共に、第1穴部44またはその近傍と当接する(図6参照)。また、第2当接部49は、ストッパー部材47のリング内の第1管部材7aの周方向において、第1当接部48と異なる位置に形成されている。さらに、第2当接部49は、前述したつまみ付きのねじ50の平らな先端と当接するように設けられている。ベース部4には、前述したつまみ付きのねじ50が取り付けられており、ベース部4における取り付けられている箇所には、メスねじ部10が埋め込まれている。従って、つまみ部36を操作してつまみ付きのねじ50を回すことにより、つまみ付きのねじ50の先端が移動する。そして、第2当接部49の位置を移動させることができる。
【0033】
また、ベース部4には、第1位置決め部材41〜第3位置決め部材43が設けられている。このうち、第1位置決め部材41および第2位置決め部材42は、ストッパー部材47と接触する第1管部材7aの外周と接触する。そして、第1位置決め部材41は、上下方向であるZ軸方向において、第1管部材7aに対する第1ホルダー部3の位置を精度よく決めることができるように配設されている。
【0034】
また、第2位置決め部材42は、Y軸方向において、第1管部材7aに対する第1ホルダー部3の位置を精度よく決めることができるように配設されている。一方、第3位置決め部材43は、ストッパー部材47と接触しない第2管部材7bの外周と接触するように構成されている。そして、第3位置決め部材43は、X軸を中心とした第1管部材7a、第2管部材7bに対する第1ホルダー部3の姿勢を精度よく決めることができるように配設されている。
【0035】
ねじを締める方向へつまみ部36を回転させることにより、つまみ付きのねじ50が回転する。これにより、つまみ付きのねじ50の先端が、ストッパー部材47の第2当接部49へ接近する方向へ移動し、第2当接部49を押圧しながら第2当接部49をY軸の矢印方向へ移動させる。ここで、第1当接部48は、点A(図6参照)において、ベース部4の第1穴部44またはその近傍と接触している。そのため、ストッパー部材47は、図6中の第1管部材7aを中心とした反時計方向への回転が規制される。
尚、第2当接部49の点Bにおいて、ねじを締める方向へつまみ部36を回転させることによりつまみ付きのねじ50の先端が第2当接部49を押圧する方向は、第1管部材7aの外周に沿って図6中の第1管部材7aを中心とした反時計方向へのベクトル成分を有していればよい。これにより、後述する点Aと、点Bとの間の区間における押し付け力Fを大きくすることができるからである。
【0036】
従って、ストッパー部材47における、第1管部材7aの周方向における点Aと、第2当接部49の点Bとの間の区間において、点A−B間の外側へ引っ張られるように力が作用する。その結果、ストッパー部材47は、点A−B間の区間において、第1管部材7aの外周と面接触して、第1管部材7aに対して押し付け力Fを作用させることができる。そして、押し付け力Fによって、ストッパー部材47のリングの内側と第1管部材7aの外周面との間において生じる摩擦力が所定の大きさ以上となることにより、第1ホルダー部3は第1管部材7a(および第2管部材7b)に対して固定された状態となる。
【0037】
その結果、この状態では、ストッパー部材47が第1管部材7aの外周面と面接触しているので、第1管部材7aの外周面を傷つける虞がない。また、中空の第1管部材7aをへこましてしまう虞や、穴を開けてしまう虞もない。
尚、ストッパー部材47は、可撓性を有する材料で形成することが望ましい。前記面接触した箇所における押し付け力Fを略均等にすることができる。これにより、第1管部材7aを傷つける虞をより確実に無にすることができるからである。
【0038】
また、このとき、押し付け力Fの向きは、Y軸の矢印方向より少し上を向いた方向である。この理由は、つまみ付きのねじ50の先端が移動することによって、第2当接部49がY軸の矢印方向の力を受けてY軸の矢印方向へ移動する。このとき、点Aは固定であるのに対して、点Bが移動するので、リングの内側の形状によって第1管部材7aをすくい上げるように力が作用するからである。
【0039】
そして、押し付け力Fによって、第1管部材7aは、第1位置決め部材41および第2位置決め部材42に押し付けられる。つまり、押し付け力Fの向きは、第1管部材7aの周方向において、第1位置決め部材41と第1管部材7aとの面接触箇所である点Cと、第2位置決め部材42と第1管部材7aとの面接触箇所である点Dとの間へ向かって、第1管部材7aを押すように構成されている。このとき、点Aおよび点Bと、点Cおよび点Dとの関係は、点A−Bの区間の位置と点C−Dの区間の位置とが第1管部材7aの中心を基準とした点対称の関係またはそれに近い関係を有していればよい。
ここで、第3位置決め部材43は、第1ホルダー部3の自重によって常に第2管部材7bの外周と接触している。従って、第1ホルダー部3が固定された状態では、第1管部材7a、第2管部材7bに対する第1ホルダー部3の位置および姿勢を精度よく決めることができる。
【0040】
一方、ねじを緩める方向へつまみ部36を回転させることにより、つまみ付きのねじ50が回転する。これにより、つまみ付きのねじ50の先端が、ストッパー部材47の第2当接部49から離間する方向へ移動し、第2当接部49をY軸の矢印と反対方向へ移動させる。従って、ストッパー部材47が第1管部材7aに対して作用する押し付け力Fは小さくなる。その結果、ストッパー部材47のリングの内側と第1管部材7aの外周面との間において生じる摩擦力が所定の大きさ未満となることにより、第1ホルダー部3は第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能な状態となる。
【0041】
尚、本実施例では、点Aを動かさずに、点Bのみを動かすことにより、押し付け力Fの大きさが変わる構成としたがこれに限らない。点Aおよび点Bの両方を動かして押し付け力Fの大きさを変える構成でもよい。技術的思想としては、ストッパー部材47と第1管部材7aの外周とが面接触し、周方向に位置が異なる点A、点Bの少なくとも一方を動かして、押し付け力Fの大きさを変えることができる構成であればよい。
【0042】
また、本実施例では、ストッパー部材47をリング形状に形成したが、リング形状でなくてもよい。技術的思想としては、前述したように、周方向に位置が異なる点A、点Bの少なくとも一方を動かして、押し付け力Fの大きさを変えることができる構成であればよいからである。本実施例において、リング形状としたのは、ストッパー部を成形した際の部材精度を考慮したためである。リング形状とすることにより、リング形状でない場合と比較して、歪みや変形等の影響を殆ど無にすることができる。
またさらに、本実施例では、ガイド部材7を中空の第1管部材7aおよび第2管部材7bとして説明したが、中空に限らない。外周面に傷が付く虞や破損する虞がある部材であれば、ストッパー部材が面接触する構成は特に有効である。
【0043】
本実施例のロール媒体ホルダー装置51は、ロール媒体Rの幅方向Xに延設されたガイド部材7と、ロール状のロール媒体Rを保持する軸部13を有し、ガイド部材7に対して摺動可能なホルダー部としての第1ホルダー部3と、第1ホルダー部3に設けられ、ガイド部材7の外周面と面接触するストッパー部材47と、を備え、ストッパー部材47におけるガイド部材7の周方向において異なる二点である点A−Bの間で、ストッパー部材47がガイド部材7の外周面に対して押し付け力Fを調整可能に作用させる構成であり、押し付け力Fが強まることにより、ガイド部材7に対する第1ホルダー部3の位置が固定された状態となり、該固定された状態から押し付け力Fが弱まることにより、第1ホルダー部3がガイド部材7に対して摺動可能な状態になる構成であることを特徴とする。
【0044】
また、本実施例において、ガイド部材7は、中空であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、ストッパー部材47における点Aおよび点Bのうちの少なくとも一方としての点Bの位置を変えることにより、押し付け力Fの大きさを変化させる構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、ストッパー部材47は可撓性を有する材料で形成されていることを特徴とする。
【0045】
また、本実施例において、ガイド部材7と第1ホルダー部3とが周方向において少なくとも二点である点C、点Dで接触し、点C−Dの間に向かって押し付け力Fが作用する構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、ストッパー部材47は、リング状に形成されていることを特徴とする。
【0046】
本実施例の記録装置としてのプリンター1は、ロール状のロール媒体Rを送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段である媒体繰り出し手段26と、繰り出されたロール媒体Rに対して記録する記録部28と、記録されたロール媒体Rを巻き取る巻き取り手段37と、を備えたプリンター1であって、媒体繰り出し手段26および巻き取り手段37のうち少なくとも一方が、ロール媒体ホルダー装置51を有していることを特徴とする。
【0047】
[他の実施例]
図7に示すのは、他の実施例のストッパー部材52およびその周辺を示す側断面図である。
図7に示す如く、他の実施例のストッパー部材52は、第1管部材7aの軸方向からみて、略C字形状、言い換えると第1管部材7aの外周に沿う略弧状に形成されている。
尚、その他の部材については、前述した実施例と同様であるので同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0048】
他の実施例のストッパー部材52は、周方向に位置が異なる点Aと、点Bとの間の押し付け力Fが作用する箇所を有している。言い換えると、前述した実施例のストッパー部材47(図6参照)と異なり、点D近傍には形成されていない。
係る場合であっても、前述した実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンター、2 持ち上げ手段、3 第1ホルダー部、4 ベース部、
5 仮置き台、6 操作レバー、7 ガイド部材、7a 第1管部材、
7b 第2管部材、8 基体部、9 フランジ部、10 メスねじ部、11 ロール芯、
12 芯口、13 (第1ホルダー部の)軸部、15 キャスター、
17 支持フレーム、19 プリンター本体、21 キャリッジガイド軸、
23 キャリッジ、24 保持部、25 記録ヘッド、26 媒体繰り出し手段、
27 媒体支持部、28 記録部、29 ローラー対、31 プレヒーター、
33 アフターヒーター、35 サブフレーム、36 つまみ部、37 巻き取り手段、
39 ガイド部材、39a 第3管部材、39b 第4管部材、40 第2ホルダー部、
41 第1位置決め部材、42 第2位置決め部材、43 第3位置決め部材、
44 第1穴部、45 第2穴部、46 第3穴部、47 ストッパー部材、
48 第1当接部、49 第2当接部、50 つまみ付きのねじ、
51 ロール媒体ホルダー装置、52 (他の実施例の)ストッパー部材、
A 点、B 点、C 点、D 点、F 押し付け力、Q 送り方向、R ロール媒体、
X 幅方向、Z 上下方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体の幅方向に延設されたガイド部材と、
ロール状のロール媒体を保持する軸部を有し、前記ガイド部材に対して摺動可能なホルダー部と、
該ホルダー部に設けられ、前記ガイド部材の外周面と面接触するストッパー部材と、を備え、
該ストッパー部材における前記ガイド部材の周方向において異なる二点の間で、該ストッパー部材が前記ガイド部材の外周面に対して押し付け力を調整可能に作用させる構成であり、
前記押し付け力が強まることにより、前記ガイド部材に対する前記ホルダー部の位置が固定された状態となり、
該固定された状態から前記押し付け力が弱まることにより、前記ホルダー部が前記ガイド部材に対して摺動可能な状態になる構成であるロール媒体ホルダー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロール媒体ホルダー装置において、前記ガイド部材は、中空であることを特徴とするロール媒体ホルダー装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロール媒体ホルダー装置において、前記ストッパー部材における前記二点のうちの少なくとも一方の位置を変えることにより、前記押し付け力の大きさを変化させる構成であるロール媒体ホルダー装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロール媒体ホルダー装置において、前記ストッパー部材は可撓性を有する材料で形成されていることを特徴とするロール媒体ホルダー装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のロール媒体ホルダー装置において、前記ガイド部材と前記ホルダー部とが周方向において少なくとも二点で接触し、該二点の間に向かって前記押し付け力が作用する構成であるロール媒体ホルダー装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のロール媒体ホルダー装置において、前記ストッパー部材は、リング状に形成されていることを特徴とするロール媒体ホルダー装置。
【請求項7】
ロール状のロール媒体を送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段と、
繰り出されたロール媒体に対して記録する記録部と、
記録されたロール媒体を巻き取る巻き取り手段と、を備えた記録装置であって、
前記繰り出し手段および前記巻き取り手段のうち少なくとも一方が、請求項1から6のいずれか1項に記載のロール媒体ホルダー装置を有していることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162333(P2012−162333A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21853(P2011−21853)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】