説明

ロール媒体繰り出し装置、記録装置

【課題】重量の重いロール媒体であっても、ユーザーが重労働無くロール媒体ホルダーにロール媒体を装着することを考慮したロール媒体繰り出し装置を提供すること。
【解決手段】ロール媒体繰り出し装置(26)は、ロール媒体Rを仮置きする仮置き部(5)と、ロール媒体の幅方向Xに移動可能でありロール媒体の芯口12に嵌合する嵌合部13を有し、ロール媒体を繰り出し可能に保持するロールホルダー(3)と、前記仮置き部に仮置きされたロール媒体の位置から該ロール媒体の芯口が前記嵌合部と対向する位置となるまで該ロール媒体を持ち上げる昇降手段(2)と、を備え、該昇降手段(2)は、前記載置部を有し上下方向に昇降可能な昇降部16と、支点を中心にして回動し、該回動により前記昇降部を移動させる操作レバー6と、該操作レバーの自由端側に設けられたペダル14と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール媒体の芯口に嵌合する嵌合部を有するロール媒体繰り出し装置および該ロール媒体繰り出し装置を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、プリンターは、ロール紙を繰り出す繰り出し装置を有していた。該繰り出し装置は、ロール紙の芯に嵌る軸を有しており、該軸によってロール紙を支持していた。
そして、大型のインクジェットプリンター等の記録装置では、下記の特許文献1に示すようにロール紙の重量が重いことからロール紙を一旦、記録装置の仮置き台に置いてから、記録装置に取り付けられているロール紙ホルダーに装着する。
従来は、前記ロール紙を仮置き台に置いてから、ロール紙ホルダーの軸部の高さ位置まで、ユーザーが手で約2〜5cm程度持ち上げてロール芯の芯口と前記軸部との位置合わせを行う。その後、ロール紙ホルダーを軸方向に水平にスライドさせて前記軸部を前記芯口に装着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロール紙の重量は20〜30kg、更に40kg、50kgのものまであり、このようなロール紙の高重量化に伴い、前記人手によるロール紙の持ち上げ作業をユーザーに委ねることは、ユーザーに重労働を強いることになるという問題が顕在化してきた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ロール媒体の高重量化に対応して重量の重いロール媒体であっても、ユーザーが重労働無くロールホルダーにロール媒体を装着することを考慮したロール媒体繰り出し装置および該ロール媒体繰り出し装置を備えた記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様のロール媒体繰り出し装置は、ロール媒体を仮置きする仮置き部と、ロール媒体の幅方向に移動可能でありロール媒体の芯口に嵌合する嵌合部を有し、ロール媒体を繰り出し可能に保持するロールホルダーと、前記仮置き部に仮置きされたロール媒体の位置から該ロール媒体の芯口が前記嵌合部と対向する位置となるまで該ロール媒体を持ち上げる昇降手段と、を備え、該昇降手段は、前記載置部を有し上下方向に昇降可能な昇降部と、支点を中心にして回動し、該回動により前記昇降部を移動させる操作レバーと、該操作レバーの自由端側に設けられたペダルと、を有することを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、ユーザーは、足で前記ペダルを踏んで前記操作レバーを操作することができる。この際、ユーザーの両手が空くので、前記ペダルを有さない構成と比較して、ロール媒体を前記ロールホルダーへ取り付けることが容易となる。
また、ロール媒体を持ち上げた状態でユーザーは手を使用して前記ロールホルダーを前記幅方向へ移動させ、前記嵌合部をロール媒体の前記芯口にしっかりと嵌めることができる。この際、一方の手をロール媒体に添えて、他方の手で前記ロールホルダーを移動させる。そして両者を接近させる方向へユーザーが力を作用させて前記嵌合部を前記芯口にしっかりと嵌める。
【0008】
つまり、一方の手で前記昇降手段の前記操作レバーを操作しながら他方の手で前記ロールホルダーを移動させる構成と比較して、ユーザーは力を入れやすいのでその分しっかりと嵌めることができる。
尚、ロール媒体の種類やサイズを変更するために、前記ロールホルダーに取り付けたロール媒体を取り外して前記仮置き部へ下ろす際も同様である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ペダルを少なくとも鉛直方向下方のベクトル成分を有する方向へ移動させると、前記昇降部が上方へ移動する関係であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、ユーザーは前記ペダルを下方へ踏むことにより、ロール媒体を持ち上げることができる。仮に前記ペダルを上方へ移動させてロール媒体を持ち上げる構成とした場合と比較して、ユーザーは体重を前記ペダルにかけることができるので、容易にロール媒体を持ち上げることができる。
また、体重のかけ具合を調整することにより、ロール媒体の持ち上げ具合を調整することができるので、仮に前記ペダルを上方へ移動させてロール媒体を持ち上げる構成とした場合と比較して、操作が容易である。つまり、上下方向におけるロール媒体の位置を、前記嵌合部と前記芯口とが対向する位置に調整しやすい。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記操作レバーの前記支点寄りの位置において、当該操作レバーの上下方向の回動を前記昇降部の上下動に変換して動力伝達するカム部が設けられており、前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させ始めてから、前記操作レバーが停止し前記昇降部の上方への移動が停止するまでの間、前記カム部における前記昇降部と当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とする。
ここで、「当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いている」は、厳密に方向が一致していなくてもよく、誤差を含んで略移動方向を向いていればよい。
【0011】
本態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記カム部から前記昇降部に対しては、前記当接する箇所の法線方向への力が大きく作用する。そのため、上方へ移動する方向の力が前記昇降部に対して大きく作用する。一方、上下方向に対する横方向の力は前記昇降部に対して殆ど作用しない。従って、前記昇降手段における前記昇降部およびカム部以外の部材と前記昇降部との間の摩擦力を略無にすることができる。その結果、前記昇降部を上昇させる際の力の伝達効率がよく、容易にロール媒体を持ち上げることができる。
【0012】
本発明の第4の態様の記録装置は、ロール媒体を繰り出し可能な繰り出し手段と、ロール媒体に対して記録する記録部と、を備えた記録装置であって、前記繰り出し手段は、第1から第3のいずれか一の態様のロール媒体繰り出し装置を有していることを特徴とする。
本態様によれば、前記繰り出し手段は、第1から第3のいずれか一の態様のロール媒体繰り出し装置を有している。従って、前記記録装置において、上記第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例のプリンターの全体構成の概略を示す側断面図。
【図2】本実施例のプリンターの全体構成の概略を示す正面図。
【図3】本実施例の媒体繰り出し手段のロール媒体ホルダー装置を示す斜視図。
【図4】本実施例の持ち上げ手段の内部を示す側断面図(持ち上げ前)。
【図5】本実施例のロール媒体持ち上げ前のホルダー装置を示す正面図。
【図6】本実施例の持ち上げ手段の内部を示す側断面図(持ち上げ途中)。
【図7】本実施例の持ち上げ手段の内部を示す側断面図(持ち上げ途中)。
【図8】本実施例の持ち上げ手段の内部を示す側断面図(持ち上げた状態)。
【図9】本実施例のロール媒体持ち上げ時のホルダー装置を示す正面図。
【図10】本実施例の第1ホルダー部を摺動させた際の状態を示す正面図。
【図11】本実施例の第1ホルダー部へのロール媒体の取り付けが完了した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の記録装置としての大型のインクジェットプリンター1(以下、単にプリンターという。)の全体構成の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、媒体繰り出し手段26と、記録部28と、巻き取り手段37と、を備えている。このうち、媒体繰り出し手段26は、ロール状に巻かれたロール媒体Rを解いて送り方向Qへ送り出すことができる。具体的には、送り出し側ロールホルダーである第1ホルダー部3と、ローラー対29と、を有している。
【0015】
このうち、第1ホルダー部3は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができる。第1ホルダー部3は、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌る嵌合部13を有している。嵌合部13は、回動自在な構成でも、図示しないモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、送り方向下流側の駆動するローラー対29によってロール媒体Rが引っ張られて解かれるからである。
【0016】
また、嵌合部13が前記モーターの動力によって駆動する場合、媒体繰り出し手段26はローラー対29を有していない構成でもよい。
尚、第1ホルダー部3は、向い合わせで一対配設されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部3が、ロール媒体Rの幅寸法の違いに対応してガイド部材7に対して幅方向Xにスライドし取付け位置を調整できる。
【0017】
また、第1ホルダー部3の下方には、仮置き部としての仮置き台5と、昇降手段としての持ち上げ手段2とが設けられている。仮置き台5は、ロール媒体Rを第1ホルダー部3に取り付ける前に仮に置くための台である。一例として、持ち上げ手段2の後述する昇降部16の載置部22によって構成されている。仮置き台5を持ち上げ手段2と別に構成してもよいのは勿論である。また、持ち上げ手段2は、仮置き台5に置かれた重たいロール媒体Rを容易に上方に持ち上げ、ロール媒体Rの端部を容易に第1ホルダー部3に取り付けることができる。
【0018】
具体的に、持ち上げ手段2は、ガイド部材7としての二本の第1管部材7a、第2管部材7bに対して幅方向Xに摺動可能な基体部8と、操作レバー6と、昇降部16と、ペダル14と、を備えている。そして、操作レバー6の自由端側に設けられたペダル14をユーザーが足で踏んで操作して、操作レバー6を一方向へ回動させることにより、昇降部16は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー6を反対方向へ回動させることにより、昇降部16は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。つまり、操作レバー6のレバー比の大きさを利用して比較的小さい力で、比較的重いロール媒体Rを上げ下げすることができる。
【0019】
また、記録部28は、プリンター本体19を有している。プリンター本体19には、幅方向Xに延設されたキャリッジガイド軸21と、キャリッジ23と、記録ヘッド25と、媒体支持部27とが設けられている。キャリッジ23は、キャリッジガイド軸21にガイドされながら幅方向Xへ移動可能に設けられている。また、記録ヘッド25は、キャリッジ23における媒体支持部27と対向する位置に設けられ、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができる。またさらに、媒体支持部27は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド25との間の距離を所定の距離にすることができる。
【0020】
尚、ローラー対29は、プリンター本体19の内部に設けたが、外部でもよい。ロール媒体Rを送り方向Qへ送ることができればよいからである。
また、プリンター本体19より送り方向上流側にはプレヒーター31が設けられている。ロール媒体Rに対して記録を実行する前の段階で予めロール媒体Rを温めることにより、記録を実行した際、ロール媒体Rに着弾したインクが乾燥しやすくするためである。
【0021】
またさらに、プリンター本体19より送り方向下流側にはアフターヒーター33が設けられている。ロール媒体Rに着弾したインクを、記録を実行した後から巻き取り手段37によって巻かれる前までの間に、確実に乾燥させるためである。
またさらに、巻き取り手段37は、図示しないモーターの動力によってロール媒体Rを巻き取ることができる。具体的には、ガイド部材39としての二本の第3管部材39a、第4管部材39bに取り付けられた巻き取り側ロールホルダーとしての第2ホルダー部40を有している。そして、第2ホルダー部40に巻き取ったロール媒体Rを保持することができる。
【0022】
尚、プリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を有する側面視逆T字形の支持フレーム17を対向するように左右両端部に備えている。そして、支持フレーム17の上部にプリンター本体19が設けられている。また、支持フレーム17に取り付けられたサブフレーム35に、ガイド部材7が取り付けられている。またさらに、第3管部材39a、第4管部材39bの両端は、支持フレーム17から延びた保持部24によって保持されている。
また、図中のZ軸方向は、鉛直方向である。
【0023】
図2に示すのは、本実施例のプリンター1の全体構成の概略を示す正面図である。
図2に示す如く、プリンター1の支持フレーム17を基準とした前側には、第1ホルダー部3が設けられ、後側には、第2ホルダー部40が設けられている。第1ホルダー部3は、前述したように、サブフレーム35によって両端が保持されたガイド部材7としての第1管部材7a、第2管部材7bに対して、スライド可能に設けられている。同様に、第2ホルダー部40は、保持部24によって両端が保持されたガイド部材39としての第3管部材39a、第4管部材39bに対して、スライド可能に設けられている。
【0024】
ここで、第2ホルダー部40の第3管部材39a、第4管部材39bに対する固定の仕方は、第1ホルダー部3の第1管部材7a、第2管部材7bに対する固定の仕方と同様である。以下、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して固定する構造について説明するものとし、第2ホルダー部40を第3管部材39a、第4管部材39bに対して固定する構造についての説明は省略する。
【0025】
図3に示すのは、本実施例の媒体繰り出し手段26におけるロール媒体ホルダー装置51を示す斜視図である。
図3に示す如く、媒体繰り出し手段26は、ロール媒体ホルダー装置51を備えている。ロール媒体ホルダー装置51は、ガイド部材7(ガイド部)として二本の第1管部材7a、第2管部材7bと、嵌合部13を有した第1ホルダー部3と、持ち上げ手段2とを備えている。
【0026】
そして、つまみ付きのねじ(図示せず)のつまみ部36を、ねじを緩める方向へ回転させることにより、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動させることができる。具体的には、第1ホルダー部3の下方に設けられたベース部4が第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動する。一方、ねじを締める方向へ回転させることにより、第1ホルダー部3を第1管部材7a、第2管部材7bに対して固定することができる。従って、ロール媒体Rの幅サイズに応じて一対の第1ホルダー部3の位置を調整することができる。
【0027】
尚、持ち上げ手段2は、一対の第1ホルダー部3の間において、第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能に設けられている。持ち上げ手段2については、第1管部材7a、第2管部材7bに対して摺動可能な状態と固定した状態とを切り替え可能に構成する必要はない。ロール媒体Rのサイズに応じてロール媒体Rの側端近傍の下方へ摺動させ、ロール媒体Rの側端を持ち上げることができればよいからである。
【0028】
続いて、持ち上げ手段2の内部構造について説明する。
図4に示すのは、本実施例の持ち上げ手段2の内部を示す側断面図である。
図4に示す如く、持ち上げ手段2は、操作レバー6と、基体部8と、昇降部16と、ペダル14と、を備えている。このうち、操作レバー6には、穴部9と、カム部10と、ペダル14とが設けられている。穴部9には、第2管部材7bが挿通されており、操作レバー6は、第2管部材7bを中心に回動する。また、基体部8には、第1管部材7aおよび第2管部材7bが挿通されている。またさらに、昇降部16は、基体部8の内側に組み込まれており、基体部8によって鉛直方向Zに案内される。
【0029】
また、昇降部16の上方には、仮置き台5としてロール媒体Rが載置される載置部22が設けられている。
さらに、昇降部16の下方には、カムフォロア部18が設けられている。そして、カムフォロア部18は、操作レバー6のカム部10と接触している。また、昇降部16の載置部22の近傍と、基体部8との間には、カバー部材20が配設されている。カバー部材20は、昇降部16が上昇したとき、昇降部16と基体部8との隙間E(図8参照)を覆うために設けられている。
【0030】
また、載置部22は、第1管部材7aおよび第2管部材7bの軸方向(X)から見て、中央に対して両側が高く形成されている。言い換えると、ロール媒体Rと接触する上側の二つの辺22a、22bがV字状に見えるように、載置部22の上面が形成されている。これにより、ロール媒体Rを載置したとき、ロール媒体Rが転がらないようにして、ロール媒体Rの位置を安定させることができる。技術的思想としては、V字状でなくても、軸方向(X)から見て、上側の二つの辺22a、22bが、下方に進むに従って互いの距離が短くなり、該二つの辺22a、22bがロール媒体Rの外周面と接触する構成であればよい。
【0031】
続いて、持ち上げ手段2を使用して、ロール媒体Rの芯口12に嵌合部13を嵌める動作について説明する。
図5に示すのは、本実施例のロール媒体Rを持ち上げる前のロール媒体ホルダー装置51を示す正面図である。尚、図5に示すのは、一対のうちの一方の第1ホルダー部3である。他方の第1ホルダー部(3)も同様であるので、一方のみについて説明することとし、他方についての説明は省略する。
【0032】
また、本実施例の嵌合部13は、第1支持部13aと、第2支持部13bと、傾斜部13cと、段差13dとを有している。このうち、第1支持部13aは、第1のサイズのロール媒体(R)のロール芯(11)の芯口(12)に嵌り、第1のサイズのロール媒体(R)を支持する。一方、第2支持部13bは、第1のサイズより芯口が大きい第2のサイズのロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌り、第2のサイズのロール媒体Rを支持する。
【0033】
第1支持部13aおよび第2支持部13bは、嵌合部13の先端側(ロール媒体R側)へ向かって徐々に細くなるように幅方向Xに対して若干傾いている。つまり、円錐の外周面のように若干傾斜している。
また、第1支持部13aと第2支持部13bとの間には段差13dが形成されている。そして、第1支持部13aと第2支持部13bとを繋ぐように傾斜部13cが形成されている。これは、第2のサイズのロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌合部13の第2支持部13bをスムーズにはめ込むためである。
尚、本実施例では、第2のサイズのロール媒体Rとして説明する。
【0034】
図6に示すのは、本実施例の持ち上げ手段2の持ち上げ途中の動作を示す側断面図である。
図6に示す如く、図4の状態から操作レバー6を一の棒体7aを中心に図中の時計方向へ回動させる。具体的には、ユーザーは、足でペダル14を踏むことにより、操作レバー6を回動させる。この際、てこの原理に基づいて、操作レバー6の回動中心である支点Bから操作レバー6に力を加える力点Cまでの距離は、操作レバー6の回動中心(支点B)からカム部10におけるカムフォロア部18と当接する箇所10aである作用点Dまでの距離と比較して、十分に長いものとする。
【0035】
操作レバー6の回動に伴い、カム部10が回動する。そして、カム部10が昇降部16のカムフォロア部18に対して上方へ押し上げる力を作用する。これにより、昇降部16は上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rを上方へ移動させる。この際、持ち上げ手段2は、ユーザーの比較的小さい力をてこの原理により大きな力に変換し、重たいロール媒体Rを上方へ持ち上げることができる。
【0036】
また、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、カム部10がカムフォロア部18に対して作用する力の向きは、昇降部16の移動方向Zである。言い換えると、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。従って、昇降部16と基体部8との間の摩擦抵抗を限りなく小さくすることができる。その結果、力のロスを最小にすることができ、その分容易にロール媒体Rを持ち上げることができる。
尚、カム部10が回転運動することに対して、カムフォロア部18は直線運動をする。そのため、カム部10とカムフォロア部18との間に摩擦が生じるが、当接箇所10aを滑らかにすることにより、殆ど影響がないようにすることができる。
【0037】
図7に示すのは、本実施例の持ち上げ手段2の持ち上げ途中の動作を示す側断面図である。
図7に示す如く、図6の状態から操作レバー6を図中の時計方向へさらに回動させる。すると、カム部10がさらに回動する。これにより、昇降部16はさらに上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。この際、昇降部16と基体部8との間に取り付けられたカバー部材20は、昇降部16と当接する。本実施例では、昇降部16の外側面とカバー部材20の内側面とが当接する。
尚、突起等を設けてカバー部材20と昇降部16とが当接する構成でもよい。
また、このときも、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。
【0038】
図8に示すのは、持ち上げた状態の持ち上げ手段2を示す側断面図である。また、図9に示すのは、図8の状態の正面図である。
図8に示す如く、図7の状態から操作レバー6の図8中の時計方向へさらに回動させる。すると、カム部10がさらに回動する。これにより、昇降部16はさらに上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。このときも、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。
【0039】
また、このとき、カバー部材20は、昇降部16と一体となって上方へ移動する。そして、カバー部材20は、昇降部16が上方へ移動することによって生じる昇降部16と基体部8との間の隙間Eを塞ぐ。従って、前記隙間Eに物が入り込む虞がない。また、誤って前記隙間Eに手を挟んでしまうような事故が生じる虞もない。特に、昇降部16が移動する距離が比較的長い場合に前記隙間Eが生じるので、カバー部材20を有する構成は有効である。
【0040】
また、ロール媒体Rの重量が重たい場合に事故につながる虞があるので、カバー部材20を有する構成は有効である。
そして、図9に示す如く、第1ホルダー部3の嵌合部13の高さまで、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12が移動したとき、操作レバー6の回動を停止させ、ロール媒体Rの持ち上げを停止させる。
【0041】
図10に示すのは、本実施例の第1ホルダー部3を摺動させた際の状態を示す正面図である。
また、図11に示すのは、第1ホルダー部3へのロール媒体Rの取り付けが完了した状態を示す正面図である。
尚、図10および図11に示すのは、一対のうちの一方の第1ホルダー部3である。
【0042】
図10に示す如く、前記一端側の第1ホルダー部3の嵌合部13の高さと、ロール媒体Rの前記一端側のロール芯11の芯口12の高さとを同じにしたら、前記一端側の第1ホルダー部3をロール媒体R側へ摺動させる。そして、ロール芯11の芯口12に前記一方の第1ホルダー部3の嵌合部13をはめ込む。
【0043】
さらに、ユーザーが所定の大きさの力で第1ホルダー部3をロール媒体R側へ押す。すると、嵌合部13の第2支持部13bがロール媒体Rのロール芯11の芯口12にぴったりとはめ込まれる。
そして、前述したようにつまみ部36を回転させて第1管部材7a、第2管部材7bに対して前記一方の第1ホルダー部3を固定する。
【0044】
その後、図11に示す如く、持ち上げ手段2の操作レバー6のペダル14から足を離して操作レバー6を元の姿勢(図4参照)に戻して、昇降部16を下げる。
尚、二人で協働して一対の第1ホルダー部3の嵌合部13をロール媒体Rの両側の芯口12に略同じタイミングではめ込んでもよいのは勿論である。また、一人で片側ずつ嵌合部13を芯口12にはめ込んでもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施例の持ち上げ手段2はペダル14を有しているので、ユーザーは、足でペダル14を踏んで操作レバー6を操作することができる。この際、ユーザーの両手が空くので、ペダル14を有さない構成と比較して、ロール媒体Rの取り付けが容易となる。また、ユーザーの体重をペダル14にかけることができるので、手で操作する場合と比較して操作レバー6に力を加えやすい。つまり、容易に、ロール媒体Rを持ち上げることができる。
【0046】
また、ロール媒体Rを持ち上げた状態でユーザーは手を使用して第1ホルダー部3をロール媒体R側へ移動させ、嵌合部13をロール媒体Rの芯口12にしっかりと嵌めることができる。この際、一方の手をロール媒体Rに添えて、他方の手で第1ホルダー部3を移動させる。そして両者を接近させる方向へユーザーが力を作用させて嵌合部13を芯口12にしっかりと嵌めることができる。
【0047】
つまり、仮に一方の手で持ち上げ手段2の操作レバー6を操作しながら他方の手で第1ホルダー部3を移動させる構成である場合と比較して、ユーザーは力を入れやすいのでその分しっかりと嵌めることができる。
尚、ロール媒体Rを第1ホルダー部3から取り外す際は、第1ホルダー部3を幅方向外側へ摺動させ、嵌合部13をロール芯11の芯口12から引き抜く。この際、持ち上げ手段2によってロール媒体Rを支えながら前記引き抜くと、嵌合部13とロール芯11との間の摩擦力を低減させることができるので、引き抜きやすくなる。
【0048】
また、少なくとも鉛直方向下方のベクトル成分を有する方向へペダル14を移動させると、昇降部16が上方へ移動する関係である構成が望ましい。ユーザーの体重をペダル14にかけることによりロール媒体Rを持ち上げることができるからである。尚、技術的思想としては、ユーザーの足でペダル14を操作して操作レバー6を回動させて、ロール媒体Rを持ち上げることができればよい。従って、ロール媒体Rを持ち上げる際のペダル14の移動方向は、鉛直方向下方のベクトル成分を有する方向でなくてもよい。
【0049】
またさらに、ペダル14を有する操作レバー6が回動してカム部10が昇降部16を上方へ移動させる構成としたが、これに限らない。動力を伝達する機構として、リンク機構や、ラックアンドピニオン機構を採用してもよい。つまり、動力を伝達する手段はカム機構に限らない。また、昇降部16が直線移動する構成としたが、直線移動しなくてもよい。例えば、弧を描くように移動してもよい。
また、本実施例のペダル14は操作レバー6の自由端に一体に形成したが、ペダル14は操作レバー6と一体でなくてもよい。操作しやすいように操作レバー6に対して回動可能な構成でもよい。
【0050】
尚、本実施例では、媒体繰り出し手段26である第1ホルダー部3の下方に昇降手段としての持ち上げ手段2を設けたが、巻き取り手段37である第2ホルダー部40の下方に昇降手段としての持ち上げ手段2を設けてもよい。係る場合、第2ホルダー部40から取り外して下ろしてそっと所定の場所に置くことができる。巻き取ったロール媒体Rは重量が重いため、第2ホルダー部40の下方に持ち上げ手段2を設けた構成は有効である。
【0051】
本実施例のロール媒体繰り出し装置としての媒体繰り出し手段26は、ロール媒体Rを仮置きする仮置き部としての仮置き台5と、ロール媒体Rの幅方向Xに移動可能でありロール媒体Rの芯口12に嵌合する嵌合部13を有し、ロール媒体Rを繰り出し可能に保持するロールホルダーとしての第1ホルダー部3と、仮置き台5に仮置きされたロール媒体Rの位置からロール媒体Rの芯口12が嵌合部13と対向する位置となるまでロール媒体Rを持ち上げる昇降手段としての持ち上げ手段2と、を備え、持ち上げ手段2は、載置部22を有し上下方向に昇降可能な昇降部16と、支点Bを中心にして回動し、該回動により昇降部16を移動させる操作レバー6と、操作レバー6の自由端側に設けられたペダル14と、を有することを特徴とする。
【0052】
また、本実施例において、ペダル14を少なくとも鉛直方向下方のベクトル成分を有する方向へ移動させると、昇降部16が上方へ移動する関係であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、操作レバー6の前記支点B寄りの位置において、操作レバー6の上下方向の回動を昇降部16の上下動に変換して動力伝達するカム部10が設けられており、操作レバー6が回動しカム部10が昇降部16を上方へ移動させ始めてから、操作レバー6が停止し昇降部16の上方への移動が停止するまでの間、カム部10における昇降部16と当接する箇所10aが、昇降部16が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とする。
本実施例の記録装置であるプリンター1は、ロール媒体Rを繰り出し可能な繰り出し手段と、ロール媒体Rに対して記録する記録部28と、を備えていることを特徴とする。
【0053】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンター、2 持ち上げ手段(昇降手段)、
3 第1ホルダー部(ロールホルダー)、4 ベース部、5 仮置き台(仮置き部)、
6 操作レバー、7 ガイド部材、7a 第1管部材、7b 第2管部材、8 基体部、
9 穴部、10 カム部、10a 当接する箇所、11 ロール芯、12 芯口、
13 嵌合部、13a 第1支持部、13b 第2支持部、13c 傾斜部、
13d 段差、14 ペダル、15 キャスター、16 昇降部、17 支持フレーム、
18 カムフォロア部、19 プリンター本体、20 カバー部材、
21 キャリッジガイド軸、22 載置部、22a 辺、22b 辺、
23 キャリッジ、24 保持部、25 記録ヘッド、26 媒体繰り出し手段、
27 媒体支持部、28 記録部、29 ローラー対、31 プレヒーター、
33 アフターヒーター、35 サブフレーム、36 つまみ部、37 巻き取り手段、
39 ガイド部材、39a 第3管部材、39b 第4管部材、40 第2ホルダー部、
51 ロール媒体ホルダー装置、B 支点、C 力点、D 作用点、
E 隙間、Q 送り方向、R ロール媒体、X 幅方向、Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体を仮置きする仮置き部と、
ロール媒体の幅方向に移動可能でありロール媒体の芯口に嵌合する嵌合部を有し、ロール媒体を繰り出し可能に保持するロールホルダーと、
前記仮置き部に仮置きされたロール媒体の位置から該ロール媒体の芯口が前記嵌合部と対向する位置となるまで該ロール媒体を持ち上げる昇降手段と、を備え、
該昇降手段は、前記載置部を有し上下方向に昇降可能な昇降部と、
支点を中心にして回動し、該回動により前記昇降部を移動させる操作レバーと、
該操作レバーの自由端側に設けられたペダルと、を有するロール媒体繰り出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロール媒体繰り出し装置において、前記ペダルを少なくとも鉛直方向下方のベクトル成分を有する方向へ移動させると、前記昇降部が上方へ移動する関係であるロール媒体繰り出し装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロール媒体繰り出し装置において、前記操作レバーの前記支点寄りの位置において、当該操作レバーの上下方向の回動を前記昇降部の上下動に変換して動力伝達するカム部が設けられており、
前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させ始めてから、前記操作レバーが停止し前記昇降部の上方への移動が停止するまでの間、前記カム部における前記昇降部と当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とするロール媒体繰り出し装置。
【請求項4】
ロール媒体を繰り出し可能な繰り出し手段と、
ロール媒体に対して記録する記録部と、を備えた記録装置であって、
前記繰り出し手段は、請求項1から3のいずれか1項に記載のロール媒体繰り出し装置を有していることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−40020(P2013−40020A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178397(P2011−178397)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】