説明

ロール支持装置

【課題】 使用時に回転する外筒1の軸方向端部内周面に端部開口に向かう程拡径したテーパ面部24を設けた構造で、耐久性をより向上させる。
【解決手段】 ロール軸2の端部で上記テーパ面部24と対向する部分に、リング状部材7aを外嵌固定する。このリング状部材7aに設けた鍔部9aの外周面に、一端に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜した第二テーパ面部32を設ける。この第二テーパ面部32と上記テーパ面部24とを、この第二テーパ面部32の外周面に形成した凹溝34、34を除いた軸方向の全長で径方向の厚さを同じとした、部分円すい筒状の微小隙間37を介して互いに対向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に鉄鋼設備等に使用され、薄板材等の被矯正材のそりや歪みを矯正する目的で、この被矯正材に曲げ方向と引っ張り方向との力を加える事により塑性伸びを生じさせる為のテンションレベラーに組み込むワークロール、中間ロール、バックアップロール等のロール支持装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記テンションレベラーには、ワークロール、中間ロール、バックアップロール等の複数のロール支持装置を組み込んでいる。例えば、図5は、これらロール支持装置のうち、バックアップロールの従来構造の1例を示している。ロールである外筒1は、固定のロール軸2に対し、複数の針状ころ軸受3と玉軸受4とにより回転自在に支持している。このうちの玉軸受4を構成する内輪5の軸方向内(軸方向に関して「内」とは、外筒1及びロール軸2の軸方向中央側を言い、図1〜3、5の左側。本明細書全体で同じ。)端面は、上記ロール軸2の外周面に形成した段差面6に突き当てており、上記内輪5の軸方向外(軸方向に関して「外」とは、外筒1及びロール軸2の軸方向端側を言い、図1〜3、5の右側。本明細書全体で同じ。)端面は、上記ロール軸2の端部に外嵌したリング状部材7の内端面(図5の左端面)に突き当てている。このリング状部材7は、円筒状の本体部8の外端部(図5の右端部)外周面に外向フランジ状の鍔部9を設けている。そして、このリング状部材7の外端面に、上記ロール軸2の端部外周面に係止した止め輪10を抑え付ける事により、このリング状部材7の上記玉軸受4から離れる方向への変位を阻止している。この構成により、上記内輪5は、上記ロール軸2に対する軸方向の変位が阻止される。
【0003】
又、上記リング状部材7の中間部内周面に係止溝11を全周に亙って形成すると共に、この係止溝11に係止したOリング12を、この係止溝11の底面と上記ロール軸2の外周面との間で弾性的に圧縮して、上記リング状部材7の内周面と上記ロール軸2の外周面との間を密封している。又、上記玉軸受4を構成する外輪13は、外輪間座14を介して、上記外筒1の中間部内周面に形成した段差面18に突き当てている。
【0004】
更に、この外筒1の端部内周面に、ゴム製の筒部15と摺接板16とにより構成した当て部材17を圧入固定している。又、上記リング状部材7の本体部8にゴム製のシールリング19を外嵌固定すると共に、このシールリング19に設けたシールリップ20の先端縁を、上記摺接版16の片面に摺接させている。そしてこの構成により、上記外筒1の外部から、この外筒1内に存在する、軸受3、4を設置した内部空間25内に、冷却水等の異物が進入する事を阻止している。即ち、バックアップロールは前記テンションレベラーに組み込んで使用するが、被矯正材の矯正に伴う温度上昇を抑えるべく、この被矯正材に冷却水を注ぐ必要がある。但し、この冷却水がバックアップロール内に入り込むと、軸受3、4の潤滑性が悪化して耐久性の低下を招く可能性がある。この為、従来構造の場合には、上記当て部材17の片面に上記シールリング19に設けたシールリップ20の先端縁を摺接させる事により、上記内部空間25内に冷却水等の異物が進入する事を阻止している。
【0005】
又、上記リング状部材7に設けた鍔部9の外周面は、軸方向外端(図5の右端)に向かう程直径が小さくなる方向に傾斜したテーパ面部21としている。更に、上記鍔部9の下端部外周面に、軸方向全長に亙る水抜き溝22を設けている。従って、上記外筒1の端部内周面と上記鍔部9の外周面との間を通じて、この鍔部9よりも上記軸受3、4側の内部空間内に冷却水等の水が進入した場合でも、この水を上記水抜き溝22を通じて上記外筒1外に排出し易くできる。尚、図示の例の場合には、上記リング状部材7に設けた鍔部9の外周面を、軸方向外端に向かう程直径が小さくなる方向に傾斜したテーパ面部21としているが、この外周面を単なる円筒面とする事も、従来から考えられている。
【0006】
上述の様に構成するロール支持装置であるバックアップロールは、ロール軸2の両端部を固定の支持部に固定した状態で、図示しない中間ロール、ワークロール等と組合せ、テンションレベラーとして使用する。この場合、上記外筒1の外周面には中間ロールを構成する外筒を押し付け、摩擦により、バックアップロールの外筒1を回転させる。尚、テンションレベラーの種類により中間ロールを省略し、ワークロールを構成する外筒の外周面をバックアップロールの外筒1に、直接押し付ける場合もある。又、バックアップロールの使用時には、被矯正材の温度上昇を抑えるべく、この被矯正材に冷却水を注ぐ。
【0007】
上述の図5に示した従来構造の場合には、条件の過酷さによっても異なるが、場合により、上記外筒1内へ冷却水等の水が進入する可能性がある。そして、この水が、上記シールリング19のシールリップ20と当て部材17との摺接部が存在する空間内に進入した場合には、この当て部材17の摩耗が促進され、上記軸受3、4を設置した内部空間25内にまで水が進入する可能性がある。
【0008】
これに対して、特許文献1には、上述の図5に示した従来構造の場合と異なり、外筒の軸方向端部内周面に、端部開口に向かう程拡径したテーパ面部を設けた構造が記載されている。この特許文献1に記載された構造によれば、外部から外筒の軸方向端部内に水が進入した場合でも、この外筒の回転に伴う遠心力の作用により、冷却水等の水を直径方向外方に振り飛ばして、上記外筒外に排出し易くできる。但し、この様な特許文献1に記載された構造の場合、この外筒の内周面と対向する、リング状部材の外周面を、外筒の開口端に向かう程直径が小さくなる方向に傾斜したテーパ面、又は円筒面部の途中に山形の凸部を設けた形状としている。この為、上記リング状部材の外周面と上記外筒の内周面との間の軸方向の極く狭い範囲にしか微小隙間が形成されず、冷却水等の異物が軸受を設置した内部空間内へ進入する事を防止し、耐久性の向上を図る事に対して未だ改良の余地がある。
尚、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に特許文献2、3がある。
【0009】
【特許文献1】実公平5−20891号公報
【特許文献2】実開平5−28504号公報
【特許文献3】実開平6−32731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明のロール支持装置は、この様な事情に鑑みて、使用時に回転する外筒の軸方向端部内周面に端部開口に向かう程拡径したテーパ面部を設けた構造で、耐久性をより向上させるべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のロール支持装置は、特許文献1に記載され、従来から知られているロール支持装置と同様に、使用時に回転する外筒と、この外筒の内径側に設けられ使用時にも回転しないロール軸と、これら外筒の内周面とロール軸の外周面との間に設けられた複数個の軸受と、上記外筒の両端部のうち、少なくとも一端部内周面に設けられ、一端開口に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜したテーパ面部とを備えている。
又、上記ロール軸の一端部で上記テーパ面部と対向する部分にリング状部材を外嵌支持すると共に、このリング状部材の外周面の少なくとも一部に、一端に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜した第二テーパ面部を設けており、この第二テーパ面部と上記テーパ面部とを、径方向の厚さが軸方向全長で実質的に同じである部分円すい筒状の微小隙間を介して互いに対向させている。
尚、本明細書及び特許請求の範囲で、「径方向の厚さが実質的に同じ」とは、第二テーパ面部に円周方向の凹溝を形成する場合に、この凹溝から外れた部分で同じである事を意味する。
【発明の効果】
【0012】
上述の様に構成する本発明のロール支持装置の場合、使用時に回転する外筒の軸方向端部内周面に端部開口に向かう程拡径したテーパ面部を設けた構造で、このテーパ面部と、リング状部材の外周面に設けた第二テーパ面部とを、径方向の厚さが軸方向全長で実質的に同じである部分円すい筒状の微小隙間を介して互いに対向させている。この為、外筒の軸方向端部内周面とリング状部材の外周面との間に形成される微小隙間の全長を十分に長くできる。しかも、この微小隙間が部分円すい筒状である為、万が一この微小隙間内に水等の異物が入り込んだ場合でも、外筒の回転に伴う遠心力の作用により、この異物を外筒外に迅速に排出し易くできる。この為、この異物が、上記部分円すい筒状の微小隙間を通じて、軸受を設置した内部空間にまで達する事をより抑える事ができ、耐久性の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、軸受の一端面にロール軸の外周面に係止した止め輪を、直接又は他の部材を介して突き当てる事により、この軸受の軸方向の変位を阻止する。
【0014】
又、より好ましくは、請求項3に記載した様に、リング状部材の外周面に1本又は複数本の円周方向の第一溝部を形成すると共に、このリング状部材の下端部外周面に、その一端をこのリング状部材の一端面に通じさせた第二溝部を形成し、上記第一溝部の円周方向一部とこの第二溝部とを通じさせる。
このより好ましい構成によれば、外筒の軸方向端部内周面とリング状部材の外周面との間の空間内に水が進入した場合でも、この水を上記第一溝部に沿って流下させ、上記リング状部材の下端部に形成した第二溝部を通じて外部に排出し易くできる。この為、上記外筒の軸方向端部内周面とリング状部材の外周面との間の空間内に水が溜まった状態のままとなる事を防止でき、この水が軸受設置部分に進入し易くなる事を防止できて、耐久性をより向上させる事ができる。
【0015】
又、より好ましくは、請求項4に記載した様に、リング状部材の外周面に設けられた第二テーパ面部の大径側端縁を、外筒の内周面に設けられたテーパ面部の大径側端縁よりもこの外筒の軸方向中央側に位置させる。
このより好ましい構成によれば、外筒の軸方向端部内周面とリング状部材の外周面との間に水が入り込んだ場合で、この水を上記外筒の回転に伴う遠心力の作用により、テーパ面部の大径側端縁周辺部からこの外筒外に振り飛ばして排出する際に、固定側のリング状部材の端部が、飛び散った水の一部を受け皿的に受け止めてしまう事を防止できる。即ち、テーパ面部よりも軸方向外側に突出したリング状部材の端部が水を受け止めてしまった場合には、外筒内にこの水が進入する機会を与える原因となるが、請求項4に記載した構成によれば、この様な不都合をなくせる。この為、上記外筒の軸方向端部内周面と上記リング状部材の外周面との間に水が入り込んだ場合でも、この水を外筒外に、より有効に排出し易くでき、耐久性をより向上させる事ができる。
【0016】
更に、より好ましくは、請求項5に記載した様に、リング状部材の外周面に設けられた第二テーパ面部の小径側端縁を、外筒の内周面に設けられたテーパ面部の小径側端縁よりも上記外筒の軸方向中央側に位置させる。
このより好ましい構成によれば、使用時に回転する外筒のテーパ面部の小径側端縁部にまで、リング状部材の外周面に設けた第二テーパ面部を対向させる事ができ、部分円すい筒状の微小隙間の長さを十分に確保できる。又、この第二テーパ面部の小径側端縁から円周方向の凹溝を連続させる事により、この第二テーパ面部の小径側端縁周辺部で受けた水を、この凹溝に沿って流下させる事ができる。この為、上記外筒の軸方向端部内周面と上記リング状部材の外周面との間に水が入り込んだ場合でも、この水を外筒外に、より有効に排出し易くでき、耐久性をより向上させる事ができる。
【実施例】
【0017】
図1〜2は、本発明の実施例を示している。尚、本実施例の特徴は、使用時に回転する外筒1の軸方向端部内周面に端部開口に向かう程拡径したテーパ面部24を設けた構造で、耐久性をより向上させるべく、ロール軸2に外嵌支持したリング状部材7aの形状を工夫した点にある。本実施例に於いて、リング状部材7aと、外筒1の軸方向端部内周面との構造以外は、前述の図5に示した従来構造とほぼ同様である為、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分、並びに、前述の図5に示した従来構造と異なる部分を中心に説明する。
【0018】
本実施例の場合、外筒1の軸方向両端寄り部分内周面に、玉軸受4を構成する外輪13を内嵌する為の小径部26と、この小径部26から段差面27を介して外筒1の開口端側に連続する大径部28とを、それぞれ設けている。又、上記外筒1の軸方向両端部内周面で、上記大径部28の開口端寄り部分に、この開口端に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜したテーパ面部24を設けている。又、上記大径部28に当て部材17aを内嵌固定している。この当て部材17aは、断面コ字形で全体を円環状に形成して成る、ゴム等の弾性材製の支持板29と、良好な摺動性及び潤滑性を有する金属、合成樹脂等の材料製の円板状の摺接板30とを備える。この摺接板30は、上記支持板29の片面(図2の右側面)に、接着等により結合している。この様な当て部材17aは、上記支持板29の他面(図2の左側面)を上記段差面27に突き当てた状態で、上記大径部28に圧入により内嵌固定している。そして、リング状部材7aを構成する本体部8にシールリング19aを外嵌固定すると共に、このリング19aに設けたシールリップ20aの先端縁を、上記当て部材17aを構成する摺接板30の片面に、全周に亙り摺接させている。
【0019】
特に、本実施例の場合には、上記リング状部材7aに設けた外向フランジ状の鍔部9aの外周面に、円筒面部31と、第二テーパ面部32とを、外筒1の軸方向中央側から順に設けている。このうちの第二テーパ面部32は、上記外筒1の開口端に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜している。又、上記リング状部材7aの外周面で、上記円筒面部31と第二テーパ面部32との間部分に凹溝33を、全周に亙り形成している。又、上記第二テーパ面部32の軸方向複数個所に、それぞれが請求項3に記載した第一溝部に相当する凹溝34、34を、それぞれ全周に亙り形成している。これら各凹溝34、34同士での底面の直径は、上記第二テーパ面部32の傾斜に応じて、上記外筒1の開口端に近いものから順に大きくしている。そして、上記第二テーパ面部32の下端部外周面に、請求項3に記載した第二溝部である第二凹溝35(図1)を、軸方向に形成すると共に、この第二テーパ面部32に形成した各凹溝34、34の円周方向一部をこの第二凹溝35に通じさせている。この第二凹溝35の軸方向外端(図1の右端)は、上記リング状部材7aの外端面(図1〜3の右端面)に通じさせている。そして、本実施例の場合には、上記外筒1の軸方向端部内周面に設けたテーパ面部24と、上記第二テーパ面部32とを、部分円すい筒状の微小隙間37を介して互いに対向させている。又、この微小隙間37の径方向の厚さを、軸方向全長に亙り実質的に(凹溝34、34から外れた部分で)同じとしている。この為に、互いに対向する上記第二テーパ面部32とテーパ面部24との母線の直線部分は、互いにほぼ平行にしている。
【0020】
更に、本実施例の場合には、前記ロール軸2の外周面で上記リング状部材7aよりも外端側(図1、2の右端側)に外れた部分に係止溝36を、全周に亙り形成すると共に、この係止溝36にC字形の止め輪10を係止している。そして、この止め輪10により上記リング状部材7aの端面を抑え付けている。この構成により、上記ロール軸2の中間部外周面に形成した段差面6と上記止め輪10との間で、前記玉軸受4を構成する内輪5と上記リング状部材7aとが挟持される。言い換えれば、上記内輪5の外端面(図1、2の右端面)に上記止め輪10が、このリング状部材7aを介して突き当てられ、これにより上記玉軸受4の軸方向の変位が阻止される。
【0021】
又、本実施例の場合には、図3に詳示する様に、上記リング状部材7aの鍔部9a外周面に設けた第二テーパ面部32の大径側端縁(図3の点Pが位置する端縁)を、上記外筒1の端部内周面に設けたテーパ面部24の大径側端縁(図3の点Qが位置する端縁)よりも、この外筒1の軸方向中央側(図3の左側)に位置させている。更に、上記第二テーパ面部32の小径側端縁(図3の点Rが位置する端縁)を、上記テーパ面部24の小径側端縁(図3の点Sが位置する端縁)よりも、上記外筒1の軸方向中央側に位置させている。
【0022】
上述の様に構成する本実施例のロール支持装置の場合には、外筒1の軸方向端部内周面に端部開口に向かう程拡径したテーパ面部24を設けた構造で、リング状部材7aの外周面に設けた第二テーパ面部32とこのテーパ面部24とを、径方向の厚さが軸方向全長で実質的に同じである部分円すい筒状の微小隙間37を介して互いに対向させている。この為、外筒1の軸方向端部内周面とリング状部材7aの外周面との間に形成される微小隙間37の全長(異物の進入経路に関する長さ)を十分に長くできる。しかも、この微小隙間37が部分円すい筒状である為、万が一この微小隙間37内に冷却水等の異物が入り込んだ場合でも、外筒1の回転に伴う遠心力の作用により、この異物を外筒1外に迅速に排出し易くできる。この為、この異物が、上記部分円すい筒状の微小隙間37を通じて、軸受3、4を設置した内部空間25にまで達する事をより抑える事ができ、耐久性の向上を図れる。
【0023】
又、本実施例の場合には、リング状部材7aの外周面に複数本の円周方向の凹溝34、34を形成すると共に、このリング状部材7aの下端部外周面に、その外端をこのリング状部材7aの外端面に通じさせた第二凹溝35を形成し、上記各凹溝34、34の円周方向一部とこの第二凹溝35とを通じさせている。この為、外筒1の軸方向端部内周面とリング状部材7aの外周面との間の空間内に冷却水等の水が進入した場合でも、この水を上記凹溝34、34に沿って流下させ、上記リング状部材7aの下端部に形成した第二凹溝35を通じて外部に排出し易くできる。この為、上記外筒1の軸方向端部内周面とリング状部材7aの外周面との間で、当て部材17aとシールリング19aのシールリップ20aとの摺接部が存在する空間内に水が溜まった状態のままとなる事を防止でき、この水が軸受3、4設置部分に進入し易くなる事を防止できる共に、結果的に軸受3、4内からのグリース漏れを防止する事もでき、耐久性をより向上させる事ができる。
【0024】
更に、本実施例の場合には、上記リング状部材7aの第二テーパ面部32の大径側端縁を、上記外筒1のテーパ面部24の大径側端縁よりもこの外筒1の軸方向中央側に位置させると共に、上記第二テーパ面部32の小径側端縁を、上記テーパ面部24の小径側端縁よりも上記外筒1の軸方向中央側に位置させている。この為、この外筒1の軸方向端部内周面と上記リング状部材7aの外周面との間に水が入り込んだ場合で、この水を上記外筒1の回転に伴う遠心力の作用により、上記テーパ面部24の大径側端縁周辺部からこの外筒1外に振り飛ばして排出する際に、固定側の上記リング状部材7aの端部が、飛び散った水の一部を受け皿的に受け止めてしまう事を防止できる。又、使用時に回転する外筒1のテーパ面部24の小径側端縁部にまで、リング状部材7aの外周面に設けた第二テーパ面部32を対向させる事ができ、部分円すい筒状の微小隙間の長さを十分に確保できる。又、本実施例の様にこの第二テーパ面部32の小径側端縁から円周方向の凹溝33を連続させた場合には、この第二テーパ面部32の小径側端縁周辺部で受けた水をこの凹溝33に沿って流下させる事ができ、下端部から外筒1外に排出させる事ができる。この結果、この外筒1の軸方向端部内周面と上記リング状部材7aの外周面との間に水が入り込んだ場合でも、この水を外筒1外に、より有効に排出し易くでき、耐久性をより向上させる事ができる。
尚、図示の例の場合には、バックアップロールの一端部の構造のみを示しているが、他端部の構造に就いても、一端部と同様に構成できる事は勿論である。
【0025】
次に、本実施例の効果を確認すべく行なった実験結果に就いて説明する。実験は、前述の図5に示した従来構造と同様の構造を有する従来品と、上述の実施例の構造と同様の構造を有する本発明品とのバックアップロールを用いて、流量1L/min で冷却水を吹き付けた状態で、外筒1を1000min-1 の回転速度で回転させた。そして、所定時間経過後での内部に封入したグリース中の水分の含有量を測定した。図4は、この様にして行なった実験結果を示している。図4に示した実験結果から明らかな様に、本実施例の場合には、従来構造の場合に比べて、グリース中の水分の含有量を約1/2〜1/3と、十分に少なくでき、内部への水の進入を十分に抑える事ができる事を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例を示す部分断面図。
【図2】図1の半部拡大断面図。
【図3】第二テーパ面部に形成する凹溝の本数を少なくすると共に各凹溝の幅を誇張して示す、図2のA部拡大断面図。
【図4】実施例の効果を確認すべく行なった実験結果を、内部に封入したグリース中の水分の含有量に関して示す線図。
【図5】従来構造の1例を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 外筒
2 ロール軸
3 針状ころ軸受
4 玉軸受
5 内輪
6 段差面
7、7a リング状部材
8 本体部
9、9a 鍔部
10 止め輪
11 係止溝
12 Oリング
13 外輪
14 外輪間座
15 筒部
16 摺接版
17、17a 当て部材
18 段差面
19、19a シールリング
20、20a シールリップ
21 テーパ面部
22 水抜き溝
24 テーパ面部
25 内部空間
26 小径部
27 段差面
28 大径部
29 支持板
30 摺接版
31 円筒面部
32 第二テーパ面部
33 凹溝
34 凹溝
35 第二凹溝
36 係止溝
37 微小隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に回転する外筒と、この外筒の内径側に設けられ使用時にも回転しないロール軸と、これら外筒の内周面とロール軸の外周面との間に設けられた複数個の軸受と、上記外筒の両端部のうち、少なくとも一端部内周面に設けられ、一端開口に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜したテーパ面部とを備えたロール支持装置であって、
上記ロール軸の一端部で上記テーパ面部と対向する部分にリング状部材を外嵌支持すると共に、このリング状部材の外周面の少なくとも一部に、一端に向かう程直径が大きくなる方向に傾斜した第二テーパ面部を設けており、この第二テーパ面部と上記テーパ面部とを、径方向の厚さが軸方向全長で実質的に同じである部分円すい筒状の微小隙間を介して互いに対向させているロール支持装置。
【請求項2】
軸受の一端面にロール軸の外周面に係止した止め輪を、直接又は他の部材を介して突き当てる事により、この軸受の軸方向の変位を阻止している、請求項1に記載したロール支持装置。
【請求項3】
リング状部材の外周面に1本又は複数本の円周方向の第一溝部を形成すると共に、このリング状部材の下端部外周面に、その一端をこのリング状部材の一端面に通じさせた第二溝部を形成しており、上記第一溝部の円周方向一部と上記第二溝部とを通じさせている、請求項1又は請求項2に記載したロール支持装置。
【請求項4】
リング状部材の外周面に設けられた第二テーパ面部の大径側端縁を、外筒の内周面に設けられたテーパ面部の大径側端縁よりもこの外筒の軸方向中央側に位置させている、請求項1〜3の何れか1項に記載したロール支持装置。
【請求項5】
リング状部材の外周面に設けられた第二テーパ面部の小径側端縁を、外筒の内周面に設けられたテーパ面部の小径側端縁よりも上記外筒の軸方向中央側に位置させている、請求項1〜4の何れか1項に記載したロール支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−250198(P2006−250198A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65230(P2005−65230)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】