説明

ロール状熱収縮フィルムおよびロール状熱収縮性インクジェット記録媒体

【課題】ロール状熱収縮記録媒体の熱収縮履歴が簡単に目で確認できる方法の提供。
【解決手段】熱収縮フィルムのロールの巻き芯1の製造時は巻き重ねたインクジェット記録可能な熱収縮性の記録媒体3の下にあって、自然収縮を受けると記録部分が見えてくる位置にインクジェットマーカー2を付与する事を可能にしたインクジェット記録可能な熱収縮フィルムの記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性インクジェット記録媒体において、保存中の熱履歴を判定する目印を有するロール状熱収縮性インクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル、プラスチックケース等の各種成形物の包装用として、加熱により収縮する性質を利用した熱収縮性フィルムが広く用いられている。
【0003】
当該熱収縮性フィルムは、熱収縮性基材で筒状体を作り、ペットボトル、プラスチックケース等の成形物に被せたり、または接着ラベルとして成形物に貼着し、当該成形物に熱をかけて熱収縮性基材を収縮させ、成形物に密着させるものである。
【0004】
当該熱収縮性フィルムは、単に成形物を包装する目的だけでなく、成形物の保護や、画像印刷が可能といった、特定の機能で装飾することが一般的に行われている。
【0005】
このような熱収縮性フィルムとして、例えば、熱収縮性基材の片面若しくは両面に、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等により画像処理を施したものが提案されている。
【0006】
このような熱収縮性フィルムとして、例えば、熱収縮性基材の片面若しくは両面に、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等により画像処理を施したものが提案されている。
また、少量多品種の生産が可能なインクジェット記録媒体方式により画像処理を施すことが可能な熱収縮性インクジェット記録媒体が提案されている(特許文献1)。このようなインクジェット記録媒体は、確かに少量多品種の生産に適するものである。
【0007】
しかし熱収縮性インクジェット記録媒体は、保存中に高温に曝されると収縮して正常に使用できなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−224988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熱収縮インクジェット記録媒体が前記したように高温に曝されて使用できない状態であることが、包装を開いたときに簡単に判別できるようにすることが求められていた。これが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記の発明によって解決する。
(発明1)熱収縮フィルムをロール上に巻き重ねた円筒体と、前記熱収縮フィルムの端部を基準として、少なくとも一部が前記熱収縮フィルムを巻き重ねた部分の前記円筒体の所定の位置に設けられたマーカーとを有し、少なくとも前記マーカーの一部は、前記熱収縮フィルムが熱収縮を起こす熱を外部より受けた際に露出することを特徴とするロール状熱収縮フィルム。
(発明2)発明1において熱収縮フィルムの表面にインク受容層を設けてなるロール状インクジェット記録可能熱収縮フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱収縮インクジェット記録媒体が高温に曝されて使用できない状態であることが、包装を開いたときに簡単に判別できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で使用したマーカーが付与された芯の斜視図である。
【図2】マーカーが付与された芯に熱収縮性インクジェット記録媒体が巻き重ねられたロール状インクジェット記録媒体の斜視図(2A)と保存中に熱収縮を受けてマーカーが現れた状態の斜視図(2B)である。
【図3】芯の端から0.75mm内側に入った位置に幅0.75mmのマーカーが付与された芯に記録媒体を巻き重ねたものの断面図(3A)である。また保存中に熱収縮を受けて片側1.5mm収縮しマーカーが完全に現れてしまったものの断面図(3B)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、熱収縮を受けない状態の熱収縮インクジェット記録媒体を芯となる円筒体に巻き重ねたときの芯の端を基準としてマーカーをつける。所定の位置はマーカーから得たい情報によって決定される。例えば、保存中に熱収縮を受ける雰囲気に全く包まれていなかったことを知るにはマーカーは上記インクジェット記録媒体の端の位置、すなわち端から0mmが所定の位置となる(図1参照)。また少々の熱収縮は問題ないと言えるとき、例えば24インチ(610mm)ロールの場合で使熱収縮率が0.5%までは実用可能と設定するときは、両端のそれぞれの端から1.5mm内側に入ったところが所定の位置となり、そこにマーカーをつけることにより、マーカーがロールの下から見えていない限り使用可能と判断できる(図3A参照)。
本発明の芯となる円筒体は、所謂、中空の筒や管に限るものではなく、薄いフィルムを巻き重ねる際の巻き芯となりうる形状であればなんでも良い。即ち、円柱でもよいし、5角形以上の多角柱でも構わない。
製造時や輸送時の「巻きズレ」を考慮するときは、片方の端部にのみ、マーカーをつけることでも本発明の目的は達成される。
また一方の芯の端を基準とした場合、基準とした端の部分を固定することにより、反対側の端のみが収縮することになる。端部における固定方法は、ロール状の熱収縮フィルムの端部に接着剤、接着テープの貼り付ける等、固定できる方法であればなんでも良い。
また、マーカーとして目盛を設ける方法もある。この場合は所定の位置にマーカーが複数並んでいることになる。
マーカーは人が目印として認識できるものなら何でもよい。色がついた線が描かれていてもよいし、芯に切り込みのような物理的印が刻まれていてもよい。また、紙や目盛のついた紙をはりつけてもよいし、輸送時や収縮時に動いてしまうものでなければただ挟んでおくだけでもよい。
【0014】
本発明に用いられる熱収縮性基材とは、加熱により収縮する性能を有するものをいい、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂その他の樹脂からなるプラスチックフィルムを少なくとも一軸方向に延伸してなるものが挙げられる。二軸方向に延伸したものでもよい。
【0015】
熱収縮性基材の厚みとしては特に制限はないが、10〜300μm程度が好適である。
【0016】
熱収縮性基材の加熱収縮率は、熱収縮性基材を80℃の熱風中で10秒間収縮させたときに5〜80%程度であることが好ましく、30〜60%程度であることがより好ましい。
【0017】
本発明におけるインク受容層は、例えば、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジウムハライド、メラミン樹脂、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアクリル酸ナトリウム等の親水性合成高分子やゼラチン、でんぷん、セルロース誘導体セルロース、カゼイン、キチン、キトサン等の親水性天然高分子、ポリエチレンオキサイドやその共重合体等の高吸収性樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フェノール系樹脂等から形成されたものが使用できる。
【0018】
なかでも、インク吸収性、耐水性、透明性のよいインク受容層を作成することで知られているウレタンやアクリルなどの分散樹脂の使用が好ましく、またウレタンまたはアクリルなどの分散樹脂をカルボジイミドで架橋させたものも更に好ましく使用できる。特に、樹脂としてウレタン樹脂が広く使われている。
【実施例】
【0019】
実施例1
記録媒体の作成
基材として厚み50μmの熱収縮性PETフィルム(東洋紡績スペースクリーン)の片面に下記組成のインク受容層を乾燥膜厚20μmになるように塗布した。
<インク受容層形成組成物>
ポリエーテル系ウレタン樹脂
(第一工業製薬株式会社 スーパーフレックス600 固形分25%) 72質量部
アクリル・スチレン共重合樹脂
(中央理化工業株式会社 リカボンド FK -820 固形分39%) 24質量部
オキサゾリン基を有する水溶性ポリマー(固形分40%) 0.5質量部
アクリル系の水溶性自己乳化型エポキシ硬化剤として、メタクリル酸・アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル・スチレン共重合物とポリエチレンイミンのグラフト化物の塩化水素中和物(固形分49%) 3.5質量部
【0020】
保存試験
この熱収縮インクジェット記録媒体を幅24インチに裁断し、図1にあるように両端のそれぞれの端に幅1.5mmの赤いマーカーをつけたロールに巻き重ねた(図1および図2A参照)。
この熱収縮インクジェット記録媒体を巻き重ねたロールを40℃の雰囲気の中に550時間(約23日間)置いたものをみると、図2Bのごとくに赤いマーカーの内側の端が見えており自然収縮が0.5%起きたと判断できる。
【符号の説明】
【0021】
1 芯、 2 マーカー、 3 芯に巻き重ねられた熱収縮性記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮フィルムをロール上に巻き重ねた円筒体と、前記熱収縮フィルムの端部を基準として、少なくとも一部が前記熱収縮フィルムを巻き重ねた部分の前記円筒体の所定の位置に設けられたマーカーとを有し、少なくとも前記マーカーの一部は、前記熱収縮フィルムが熱収縮を起こす熱を外部より受けた際に露出することを特徴とするロール状熱収縮フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の熱収縮フィルムの表面にインク受容層を設けてなるロール状インクジェット記録可能熱収縮フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−197146(P2012−197146A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62522(P2011−62522)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】