説明

ロール研磨方法

【課題】真円度の良いロールを得るためのロール研磨方法を提供する。
【解決手段】第一のロール(17)のセンターだしを行ない、該第一のロール(17)の外周面(17c)と両端の軸受け部(17b)とを研削装置(31)で研削して室温における該第一のロール(17)の真円度を25μm以内にする第一の工程と、該軸受け部(17b)に軸受け(19)及び軸受けハウジング(23)を装着する第二の工程と、該軸受けハウジング(23)をベース(5)に固定する第三の工程と、該第一のロール(17)を回転させる第四の工程と、3μm以内の真円度を有し且つ外周面(3c)上に研磨手段(29)を備えた第二のロール(3)を回転させ、該第一のロール(17)の該外周面(17c)に該第二のロール(3)を押し当てて該第一のロール(17)の該外周面(17c)を研磨する第五の工程とを備えた研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧延機のロール研削においては、ワークロールをロールチョックに組み込まれたままの状態で研削できるロール研削装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
また、圧延機に組み込まれたワークロール及びバックアップロールを研削することができるオンラインロールグラインダがある(例えば、特許文献2参照。)。
これらは、ロールの組み替えやロールの整備工場への搬送による生産効率の低下を防止するために、ロールを圧延機に組み込んだ状態でロールを研削するものである。
【0003】
また、圧延機から取り出した圧延ロールをより短時間のうちに再研削するために、温度制御した研削剤を圧延ロールの胴部表面全長にわたって吹き掛けることにより、圧延ロールを圧延作業時の温度に比較的近い温度に保ち、砥石を圧延ロールの胴部表面に接触させて研削を行うロールの研削方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
また、研磨ヘッドと被加工物との間の接触面温度を制御して接触面応力分布を変えることにより、被加工物の平滑度、平面度、及び平行度のばらつき発生を抑制するために、研磨ヘッドに加熱流体を供給して加熱するための加熱装置を有する研磨装置がある(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
また、研磨布紙を表面に吸着するための多数の細孔と、冷却水用の通路が設けられた研磨ロールがある(例えば、特許文献5参照。)。
【0006】
【特許文献1】特公平5−32124号公報
【特許文献2】特開平5−237521号公報
【特許文献3】特開昭58−4343号公報(第4頁右上欄第9行〜第17行)
【特許文献4】特開2002−83791号公報
【特許文献5】特開2002−355765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6は、バックロール上を走行するウエブに流体を塗布するスロットノズルを示す図である。
バックロール101は、矢印Aで示す方向に回転する。ウエブ103は、バックロール101上に巻き付いて、矢印Bで示す方向に搬送される。スロットノズル105は、バックロール101との間にわずかな隙間Gを空けて配置されている。スロットノズル105から吐出される流体は、ウエブ103上に塗布される。
【0008】
(幾何学形状の影響)
ウエブ103上に流体を均一の厚さで塗布するためには、スロットノズル105とバックロール101との間の隙間Gが、バックロール101の一回転中常に一定であることが望ましい。もし、バックロール101の真円度が悪いと、バックロール101の一回転中に隙間Gがバックロール101の回転に伴い変化してしまう。隙間Gが変化すると、ウエブ103上に塗布される流体の厚さが変化する。したがって、ウエブ103上に流体を均一の厚さで塗布するためには、バックロール101の真円度をよくすることが望ましい。
【0009】
また、スロットノズル105の長さ全体にわたって、隙間Gが均一であることが望ましい。もし、バックロール101の円筒度がわるいと、スロットノズル105の長さ方向で隙間Gが変化してしまう。隙間Gが変化すると、ウエブ103上に塗布される流体の厚さが変化する。したがって、スロットノズル105の長さ全体にわたって、すなわち、バックロール101のロール面長の全範囲にわたって隙間Gを均一にするためには、バックロール101の円筒度をよくすることが望ましい。
【0010】
(取付誤差の影響)
一方、バックロール101は、軸受け(不図示)及び軸受ハウジング(不図示)により回転可能に保持されている。
軸受けには、許容誤差がある。軸受けの内輪には、精度等級が良く小径の呼び内径のものでも例えば約2.5マイクロメートル(μm)の許容誤差があり、軸受けの外輪にも、精度等級が良く小径の呼び外径のものでも例えば約4〜5マイクロメートルの許容誤差がある。さらに、軸受けを保持する軸受けハウジングにも約3〜5マイクロメートルの許容誤差がある。例えば、軸受けの許容誤差について、JIS B 1514に規定されている内輪及び外輪の寸法精度を見てみれば分かるように、円すいころ軸受けを除くラジアル軸受けでは、内輪では、呼び軸受け内径18〜30mmの場合、精度等級2級で平均内径寸法差が上0〜下−2.5μmであり、精度等級5級では上0〜下−6μmである。また呼び軸受け内径80〜120mmの場合、精度等級2級で平均内径寸法差が上0〜下−5μmであり、精度等級5級では上0〜下−10μmである。外輪では、呼び軸受け外径50〜80mmの場合、精度等級2級で平均外径寸法差が上0〜下−4μmであり、精度等級5級では上0〜下−9μmである。また呼び軸受け外径150〜180mmの場合、精度等級2級で平均外径寸法差が上0〜下−7μmであり、精度等級5級では上0〜下−13μmである。
したがって、バックロール101が軸受けを介して軸受けハウジングに取り付けられたときに、これらの許容誤差のために、バックロール101の回転に振れが生じる。たとえ、バックロール101の真円度及び円筒度をよくしたとしても、軸受け及び軸受けハウジングの取付誤差のために、バックロール101の回転に振れが生じることがある。バックロール101の振れは、バックロール101とスロットノズル105との間の隙間Gを変化させる。これによって、隙間Gがバックロール101のロール面長の全範囲にわたって一定でなくなり、ウエブ103上に塗布される流体の厚さが変化する。
【0011】
(温度による影響)
バックロール101は、スロットノズル105から流体が塗布されるときに、所定温度に加熱されることがある。室温において真円度及び円筒度の良いバックロール101であっても、温度上昇のために、バックロール101がねじれるという問題がある。室温で研削したロールは、所定の使用温度にまで加熱されると、真円度のばらつきを生じることがある。例えば、温度が60℃上昇すると、真円度の誤差は、±30マイクロメートルも生じることがある。
特に、バックロール101の構造が複雑である場合には、温度上昇によるバックロール101の変形が大きくなることがある。バックロールの構造が単純であれば、温度の影響は少ないが、バックロールの構造が複雑である場合には、温度の影響が大きい。
【0012】
(圧力による影響)
バックロール101は、加熱媒体又は冷却媒体を通すための通路を設けて、温度を調整する。
例えば、熱媒は、約0.1〜0.7MPaの圧力でバックロールの通路へ供給される。通路に熱媒の圧力がかかると、バックロールが膨張して変形する。
【0013】
そこで、本発明は、真円度の良いロールを得るためのロール研磨方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、軸受組立体に取り付けられたロールの振れを小さくすることができるロール研磨方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、温度によるロールの変形の影響が少ないロール研磨方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、圧力によるロールの変形の影響が少ないロール研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した課題を解決する為に本発明では次のような研磨方法とした。
すなわち、ロール研磨方法において、
第一のロール(17)のセンターだしを行ない、該第一のロール(17)の外周面(17c)と両端の軸受け部(17b)とを研削装置(31)で研削して室温における該第一のロール(17)の真円度を25μm以内にする第一の工程と、
該軸受け部(17b)に軸受け(19)及び軸受けハウジング(23)を装着する第二の工程と、
該軸受けハウジング(23)をベース(5)に固定する第三の工程と、
該第一のロール(17)を回転させる第四の工程と、
3μm以内の真円度を有し且つ外周面(3c)上に研磨手段(29)を備えた第二のロール(3)を回転させ、該第一のロール(17)の該外周面(17c)に該第二のロール(3)を押し当てて該第一のロール(17)の該外周面(17c)を研磨する第五の工程とを設けた。
これによって、第一のロール(17)を軸受け組立体(24)に取り付けて、実際に使用する状態にある第一のロール(17)を研磨することができる。よって、第一のロール(17)の回転振れを小さくすることができる。
なお、前記したように軸受けは、その内輪、外輪に精度等級によって寸法差があり、精度等級の良い、例えば5級に比べて2級の軸受けを購入し使用する場合は、一般的に納期が長くかつ価格も高価であるが、本発明では、精度等級の低い例えば5級の寸法差の大きい軸受け(19)を軸受け組立体(24)に用いても、実際に使用する状態にある第一のロール(17)を研磨することができので、短納期で安価な軸受けで以って第一のロール(17)の回転振れを小さくすることができる。
【0018】
該第一のロール(17)の直径(d1)は、該第二のロール(3)の直径(d2)の2倍以上であるとよい。
第二のロール(3)の直径(d2)を小さくすることにより、真円度の良い第二のロールの作成を容易にすることができる。
【0019】
該第一のロール(17)の該外周面(17c)は、加熱手段(27)により加熱または冷却手段(27)により冷却されるとよい。
これによって、第一のロール(17)の外周面(17c)の温度を実際の使用温度に調整することができる。第一のロール(17)の外周面(17c)を実際の使用温度で研磨することにより、温度変化が第一のロール(17)の変形に与える影響を小さくすることができる。
【0020】
該第二のロール(3)の該外周面(3c)は、加熱手段(25)により加熱または冷却手段(25)により冷却されるとよい。
これによって、第二のロール(3)の外周面(3c)の温度を、第一のロール(17)の実際の使用温度と同じ或いはそれよりも20℃ぐらい低い温度に調整することができる。
【0021】
該第一のロール(17)及び/又は該第二のロール(3)の内部は、該第一のロール(17)及び/又は該第二のロール(3)の内部に熱媒を循環させる該加熱手段(25、27)により加熱又は該冷却手段(25、27)により冷却されるとよい。
熱媒の温度を制御することにより、第一のロール(17)及び/又は第二のロール(3)の温度を調整することができる。
【0022】
該第一のロール(17)の内部は、複数の流体流路(37、38、39)が層状(35a、35b、35c)に形成されているとよい。
熱媒を使用する時の熱媒の圧力(例えば、0.2MPa)を第一のロール(17)にかけて研磨することにより、圧力による変形の影響を少なくすることができる。さらに、ウエブを吸着するための真空圧力を第一のロール(17)にかけて研磨することにより、圧力による変形の影響を少なくすることができる。
【0023】
該第一のロール(17)と該第二のロール(3)との温度差は、20℃以内であるとよい。
【0024】
該第一のロール(17)の面長(L1)は、該第二のロール(3)の面長(L2)の1/2以下であるとよい。
【0025】
該研磨手段は、該第二のロール(3)に螺旋に巻きつけてセットされた研磨テープ(29)であるとよい。
【0026】
前記第五の工程は、最初に、粗い砥粒の研磨テープで該第一のロール(17)の該外周面(17c)を研磨する工程と、その後に、細かい砥粒の研磨テープで該第一のロール(17)の該外周面(17c)を仕上げる工程とを含むとよい。
【0027】
前記第五の工程は、該第一のロール(17)の振れを5μm以内になるまで該第一のロール(17)の該外周面(17c)を研磨する工程を含むとよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施例により研磨された第一のロールは、回転振れが小さくなる。これによって、第一のロールをスロットノズルのバックロールとして使用したときに、ウエブ上へ流体を均一な膜厚で塗布することができる。
【0029】
本発明の一実施例によれば、真円度の良いロールを得ることができる。
【0030】
また、本発明の一実施例によれば、軸受組立体に取り付けられたロールの回転振れを小さくすることができる。
【0031】
また、本発明の一実施例によれば、温度によるロールの変形の影響を少なくすることができる。
【0032】
また、本発明の一実施例によれば、圧力によるロールの変形の影響を少なくすることができる。
【0033】
また、本発明の一実施例によれば、複雑な構造のロールを研磨することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0035】
(研磨装置)
図1は、研磨装置1を示す斜視図である。
【0036】
研磨装置1は、研磨ロール(第二のロール)3を備えている。研磨ロール3は、軸線X1を中心に回転可能に基礎台(ベース)5の上に設けられている。研磨ロール3は、両端部を軸受け7により支持されている。軸受け7は、軸受けハウジング9により保持されている。軸受けハウジング9は、テーブル11に固定されている。テーブル11は、両端部がレール13により支持されている。レール13は、基礎台5に固定されている。テーブル11は、駆動装置15により、レール13上を軸線Yに沿って摺動する。軸線Yは、研磨ロール3の軸線X1に対して垂直である。
【0037】
研磨すべきロール(第一のロール)17は、軸線X2を中心に回転可能に基礎台5の上に取り付けられる。研磨すべきロール17の軸線X2は、研磨ロール3の軸線X1とほぼ平行に配置される。研磨すべきロール17は、両端の軸受け部17bを軸受け19により支持されている。軸受け19は、軸受けハウジング23により保持されている。軸受け19及び軸受けハウジング23は、軸受け組立体24を構成する。軸受け組立体24は、基礎台5に取り付けられて、研磨すべきロール17は、実際に使用する状態になる。
【0038】
研磨ロール3及び研磨すべきロール17は、モーター(不図示)により回転させられる。
【0039】
研磨ロール3は、熱媒供給管25に接続されている。熱媒は、熱媒供給管25から研磨ロール3の内部へ供給される。研磨すべきロール17は、熱媒供給管27に接続されている。熱媒は、熱媒供給管27からロール17の内部へ供給される。
【0040】
研磨ロール(第二のロール)3は、真円度が3マイクロメートル以内である。研磨ロール3は、研磨テープ29が螺旋状に巻かれている。
【0041】
図2は、研磨すべきロール(第一のロール)17のロール部分17aの直径d1と研磨ロール(第二のロール)3のロール部分3aの直径d2を示す図である。研磨ロール3の真円度をよくするためには、研磨ロール3の直径d2は小さい方が良い。したがって、研磨ロール3の直径d2は、研磨すべきロール17の直径d1より小さい方が良い。より好ましくは、研磨すべきロール(第一のロール)17の直径d1は、研磨ロール(第二のロール)3の直径d2の2倍以上であるとよい。
【0042】
図3は、研磨すべきロール(第一のロール)17の面長L1と研磨ロール(第二のロール)3の面長L2を示す図である。ここで、ロール面長は、軸受け部(ジャーナル)3b,17bを含まないロール部分3a,17aの軸方向の長さをいう。本実施例においては、研磨すべきロール(第一のロール)17の面長L1は、研磨ロール(第二のロール)3の面長L2の二分の一以下に設定した。
【0043】
(研磨方法)
図4は、円筒研削盤で研削されているロールを示す図である。図4に示すように、円筒研削盤(不図示)のセンター33により研磨すべきロール(第一のロール)17のセンターだしを行う。研磨すべきロール17のロール部分17aの外周面17cと両端の軸受け部17bとを円筒研削盤(不図示)の砥石車31で研削する。これにより、ロール17の外周面17cの真円度を、室温で25マイクロメートル以内にする。
【0044】
図1に示すように、円筒研削盤で研削したロール(第一のロール)17の軸受け部17bに軸受け19を取り付ける。
軸受け19を軸受けハウジング23に装着する。
【0045】
軸受けハウジング23を基礎台5に取り付ける。これによって、研磨すべきロール17は、実際に使用する状態になる。
【0046】
研磨すべきロール(第一のロール)17をモーター(不図示)により回転させる。
【0047】
真円度が3μm以内の研磨ロール(第二のロール)3の外周面3cに研磨テープ29を螺旋状に巻き付け、研磨ロール3をモーター(不図示)により回転する。テーブル11を駆動装置15により研磨すべきロール(第一のロール)17へ向けて移動して、回転している研磨ロール3を回転しているロール17の外周面17cに当接させ、外周面17cを研磨する。
【0048】
研磨ロール3により外周面17cを研磨する工程において、最初に、粗い砥粒の研磨テープでロール17の外周面17cを研磨し、その後に、粗い砥粒の研磨テープを細かい砥粒の研磨テープと交換して、細かい砥粒の研磨テープでロール17の外周面17cを仕上げてもよい。例えば、最初に番手(#)が320メッシュ若しくは320メッシュ以下の粗い粒度(砥粒)の研磨テープで研磨し、その後に400メッシュ若しくは400メッシュ以上の細かい粒度の研磨テープで仕上げるようにしてもよい。また、さらに好ましくは、最初に320メッシュ若しくは320メッシュ以下の粗い粒度の研磨テープで研磨し、次に400〜600メッシュの細かい粒度の研磨テープで中間研磨をし、次に1000メッシュ若しくは1000メッシュ以上のさらに細かい粒度の研磨テープで仕上げ研磨をするようにするとよい。このようにすれば、粗い砥粒から細かい砥粒の研磨テープを段階的に用いて表面傷を直していくようにして最終的に良好な仕上げ研磨面を得ることができ、全体的な研磨時間を短くして研磨を早く行うことができる。なお、該番手の数値(メッシュ)は、本来1インチ(25.4mm)平方当りの篩の目の数を表し、砥粒(研磨材)の粒の大きさを示す単位であり、粗めの砥粒のもの程、数値が少なくなり、細かい砥粒のもの程、数値が大きくなるものである。研磨テープの種類としては、例えば三共理化学株式会社製のミラーフィルム(商品名)シリーズ等を用いることができる。
【0049】
本実施例においては、研磨すべきロール(第一のロール)17の振れが5マイクロメートル以内になるまで該ロール17の外周面17cを研磨ロール3で研磨する。ここで、ロールの真円度は、ロールをセンタリングしてそれを基準にしたものであり、一方、ロールの振れは、ロールを軸受け組立体24に組み込んで軸受け19を介して回転させたときのロール表面の振れをいう。
【0050】
なお、研磨すべきロール(第一のロール)17を加熱又は冷却して、研磨すべきロール(第一のロール)17の外周面17cの温度を実際の使用温度に調整するとよい。研磨すべきロール(第一のロール)17は、熱媒供給管27からロール17の内部へ加熱媒体を供給して加熱することができる。あるいは、熱媒供給管27からロール17の内部へ冷却媒体を供給してロール17を冷却することができる。これにより、研磨すべきロール(第一のロール)17を研磨する際に、ロール17の外周面17cの温度を実際の使用温度に調整することができる。実際の使用温度でロール17を研磨することにより、ロール17の研磨精度に対する温度の影響を小さくすることができる。
【0051】
また、研磨ロール(第二のロール)3を加熱又は冷却して、研磨ロール3のロール部分3aの外周面3cの温度を調整するとよい。研磨ロール(第二のロール)3は、熱媒供給管25からロール3の内部へ加熱媒体を供給して加熱することができる。あるいは、熱媒供給管25からロール3の内部へ冷却媒体を供給してロール3を冷却することができる。これにより、研磨すべきロール(第一のロール)17を研磨する際に、ロール3の外周面3cの温度を調整することができる。研磨する際に、研磨ロール3の温度を研磨すべきロール17の温度と同じにするとよい。研磨ロール3の温度は、研磨すべきロール17の実際の使用温度との差が同じ或いはそれよりも20℃ぐらい低くてもよい。すなわち、研磨する際に、研磨ロール3と研磨すべきロール17との温度差が0℃〜20℃の範囲内であるとよい。
【0052】
図5は、研磨すべきロール(第一のロール)のロール部分の部分断面図である。
研磨すべきロール(第一のロール)17のロール部分17aの内部は、複数の流体流路が層状に形成されている。ロール部分17aの内側層35aは、熱媒を通すための熱媒流路37が螺旋状に形成されている。加熱媒体又は冷却媒体が熱媒流路37へ供給されて、研磨すべきロール(第一のロール)17の温度を調整する。熱媒は、約0.1〜0.7MPaの圧力で供給される。ロール17に熱媒の圧力がかかるとロール17は膨張して変形する。研磨精度に対する圧力の影響を小さくするために、ロール17の使用時の圧力(例えば、0.2MPa)を流体流路にかけてロール17を研磨する。
【0053】
ロール部分17aの中間層35bは、真空圧力を供給するための吸引通路38を形成している。吸引通路38には、約−90kPaの真空圧力が供給される。ロール部分17aの外側層35cには、多数の吸引孔39が設けられている。吸引孔39は、吸引通路38に連通している。これによって、ロール17上を搬送されるウエブは、ロール17に吸着される。
【0054】
なお、本実施例において、研磨すべきロール(第一のロール)17は、円筒度が低くてもよい。ロールに振れが無ければ、円筒度は特に問わない。
【0055】
本実施例により研磨された第一のロールを、スロットノズルのバックロールとして使用したときに、ウエブ上へ流体を均一な膜厚で塗布することができる。流体をホットメルト材料とした場合には、10マイクロメートル以下の安定した膜厚でホットメルト材料をウエブ上に塗布することができる。
【0056】
(研磨ロール3の作成)
研磨ロール3の作成においては、研磨ロール3の直径が小さければ、従来の研削方法で真円度及び円筒度のよいロールを作成することができる。しかし、従来の研削方法では、直径の大きなロールを精度良く作成することが困難である。
しかし、直径の大きな研磨ロール3が要求されることもある。直径の大きな研磨ロールを作成するためには、まず、真円度の高い直径の小さなマザーロールを作成する。そして、このマザーロールを研磨ロールとして、本発明の研磨方法により、直径の大きなロールを研磨する。マザーロールの直径は、50mm〜200mmのものを使用すると良い。マザーロールの直径が小さい方が、マザーロールの真円度の精度を出しやすい。マザーロールは、単純な構造がよい。熱変形しにくいからである。マザーロールは、膨張してもよい。マザーロールは、回転軸線に沿って貫通孔を設け、貫通孔に油を流すことにより加熱してもよい。
研磨される直径の大きなロールは、1回転/分の回転速度で回転させ、マザーロールは、数百回転/分の回転速度で回転させる。マザーロールの回転速度を200rpmぐらいまでに抑えるためには、マザーロールの直径をあまり小さくできない。
直径の大きなロールをマザーロールとして、さらに大きい直径のロールを本発明の研磨方法により研磨して直径の大きなマザーロールを作成することもできる。
このようにして、直径の大きな研磨ロール3を作成することができる。
【0057】
(変形例)
上記実施例を参照して、本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。
【0058】
本実施例においては、研磨テープを巻き付けたロールを研磨ロールとして使用した。一般に、通常の研磨ロールの真円度をよくすることは、難しい。これに対して、本実施例の研磨ロール3は、ロールに研磨テープを巻きつけたものである。ロールは、一般に、精度良く作成することができる。また、研磨テープの厚さのばらつきは、主に、研磨テープのアンカー材から飛び出した砥粒の高さのばらつきであるので、研磨テープの厚さのばらつきは、±1マイクロメートルぐらいの範囲内にある。研磨テープをロールに螺旋状に巻き付けて、研磨すべきロールに当てると、研磨テープの表面の凸部が押し下げられて、研磨テープの表面は、さらにフラットになる。よって、本実施例の研磨ロールは、通常の研磨ロールに比べて、真円度をよくすることができる。
【0059】
研磨テープは、粘着テープ又はバンドで両端をロールに留めることができる。
【0060】
本発明は、研磨テープに限定されるものではなく、ロールに研磨材を塗ったものでもよい。研磨材は、螺旋状である必要はない。
【0061】
ロールの加熱には、熱風を使用することもできる。
熱媒が熱風の場合は、軸受け部を暖めないように、ロールを囲んで熱風の通路を作り熱風が軸受け部にかからないようにするとよい。
【0062】
本実施例においては、ロールは、ウエブを吸着するための吸引孔を設けている。しかし、ロールは、エアーの吹き出しのための構造を有していてもよい。
【0063】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その特徴事項から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】研磨装置を示す斜視図。
【図2】研磨すべきロール(第一のロール)の直径と研磨ロール(第二のロール)の直径を示す図。
【図3】研磨すべきロール(第一のロール)の面長と研磨ロール(第二のロール)の面長を示す図。
【図4】円筒研削盤で研削されているロールを示す図。
【図5】研磨すべきロール(第一のロール)のロール部分の部分断面図。
【図6】バックロール上を走行するウエブに流体を塗布するスロットノズルを示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 研磨装置
3 研磨ロール(第二のロール)
3a ロール部分
3b 軸受け部分
3c 外周面
5 基礎台(ベース)
7 軸受け
9 軸受けハウジング
11 テーブル
13 レール
15 駆動装置
17 研磨すべきロール(第一のロール)
17a ロール部分
17b 軸受け部
17c 外周面
19 軸受け
23 軸受けハウジング
24 軸受け組立体
25 熱媒供給管
27 熱媒供給管
29 研磨テープ
31 砥石車
33 センター
35a 内側層
35b 中間層
35c 外側層
37 熱媒流路
38 吸引通路
39 吸引孔
101 バックロール
103 ウエブ
105 スロットノズル
d1 第一のロールの直径
d2 第二のロールの直径
G 隙間
L1 研磨すべきロールの面長
L2 研磨ロールの面長
X1 研磨ロールの軸線
X2 研磨すべきロールの軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のロールのセンターだしを行ない、該第一のロールの外周面と両端の軸受け部とを研削装置で研削して室温における該第一のロールの真円度を25μm以内にする第一の工程と、
該軸受け部に軸受け及び軸受けハウジングを装着する第二の工程と、
該軸受けハウジングをベースに固定する第三の工程と、
該第一のロールを回転させる第四の工程と、
3μm以内の真円度を有し且つ外周面上に研磨手段を備えた第二のロールを回転させ、該第一のロールの該外周面に該第二のロールを押し当てて該第一のロールの該外周面を研磨する第五の工程とを備えることを特徴とする研磨方法。
【請求項2】
該第一のロールの直径(d1)は、該第二のロールの直径(d2)の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
該第一のロールの該外周面は、加熱手段により加熱または冷却手段により冷却されることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨方法。
【請求項4】
該第二のロールの該外周面は、加熱手段により加熱または冷却手段により冷却されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の研磨方法。
【請求項5】
該第一のロール及び/又は該第二のロールの内部は、該第一のロール及び/又は該第二のロールの内部に熱媒を循環させる該加熱手段により加熱又は該冷却手段により冷却されることを特徴とする請求項3又は4に記載の研磨方法。
【請求項6】
該第一のロールの内部は、複数の流体流路が層状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5に記載の研磨方法。
【請求項7】
該第一のロールと該第二のロールとの温度差は、20℃以内であることを特徴とする請求項1乃至6に記載の研磨方法。
【請求項8】
該第一のロールの面長(L1)は、該第二のロールの面長(L2)の1/2以下であることを特徴とする請求項1乃至7に記載の研磨方法。
【請求項9】
該研磨手段は、研磨テープを該第二のロールに螺旋に巻きつけてセットすることを特徴とする請求項1乃至8に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記第五の工程は、最初に、粗い砥粒の研磨テープで該第一のロールの該外周面を研磨する工程と、その後に、細かい砥粒の研磨テープで該第一のロールの該外周面を仕上げる工程とを含むことを特徴とする請求項9に記載の研磨方法。
【請求項11】
前記第五の工程は、該第一のロールの振れを5μm以内になるまで該第一のロールの該外周面を研磨する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至10に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−149257(P2010−149257A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332328(P2008−332328)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】