説明

ロール紙供給装置

【課題】ロール紙の装填作業時において、収容部内にセットされるロール紙の向きを速やかに検知して、印字障害や搬送異常等の不具合を未然に抑制できるロール紙供給装置を提供する。
【解決手段】分離ローラ22に対して正転方向Tの手前側にロール紙先端部P1を第1搬送路23へ案内する第1セパレータ41を設ける一方、逆転方向Fの手前側にロール紙先端部P1を第2搬送路24へ案内する第2セパレータ42を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(現金自動預払機)等の自動取引機には、取引内容を印字して表示したレシートを発行するレシート発行ユニット(ロール紙供給装置)が搭載されている。レシート発行ユニットの印刷方式としては、感熱方式等が採用されており、自動取引機での取り引きの上位制御部の指示によってロール紙を取引の都度繰り出しながらその取引情報を印字し、所定事項の印字が終了した後、これを所定長さに切断して発行している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図4〜図6に基づいて、従来のロール紙発行ユニットについて説明する。
図4に示すように、レシート発行ユニット100(以下、発行ユニット100という)は、ロール紙Pが収容されるドーム101と、ドーム101内に収容されたロール紙Pを正転方向T及び逆転方向Fに回転可能に保持する駆動ローラ102及び分離ローラ103と、分離ローラ103に対して正転方向Tの手前側に配置され、ロール紙外周面(ロール紙本体部P2)からロール紙先端部P1を分離するセパレータ104と、分離されたロール紙先端部P1が搬送されるロール紙搬送路105とを主に備えている。また、ロール紙搬送路105には、ロール紙搬送路105内に搬送されるロール紙Pを両面側から挟持した状態で印字部(不図示)に向けて送り出す一対のクランプローラ106と、ロール紙Pの搬送方向に沿うクランプローラ106の両側に配置された搬送センサ(第1搬送センサ107及び第2搬送センサ108)とが設けられている。
【0004】
次に、上述した発行ユニット100へのロール紙Pの装填方法について説明する。
まずロール紙Pを正常な向き(ロール紙先端部P1とセパレータ104とがロール紙Pの周方向で対向する向き)でドーム101内にセットする。そして、駆動ローラ102及び分離ローラ103を正転方向T及び逆転方向Fに交互に回転させることで、ドーム101内でロール紙Pを正転及び逆転させる。この時、ローラ102,103の逆転時の回転角度を、正転時に比べて大きく設定することで、ドーム101内のロール紙Pは除々に逆回転する。すなわち、ロール紙先端部P1が逆転方向Fに沿って移動する。そして、逆転時にロール紙先端部P1が分離ローラ103を乗り越えると、次の正転時の動作でロール紙先端部P1がセパレータ104によってロール紙本体部P2から分離される。
【0005】
ロール紙本体部P2から分離されたロール紙先端部P1は、セパレータ104によってロール紙搬送路105内に案内され、ロール紙搬送路105内を搬送される。そして、ロール紙先端部P1が搬送センサ107を通過することで、第1搬送センサ107は、ロール紙搬送路105内にロール紙Pが搬送されていることを検知する。その後、駆動ローラ102、分離ローラ103及びクランプローラ106がロール紙Pを送り出す方向に向けて同期回転して、ロール紙先端部P1を第2搬送センサ108で検知できる位置まで搬送する。これにより、ロール紙Pの装填作業が完了したと判断される。その後、自動取引機で取引が行われた場合に、図示しない印字部までロール紙Pが搬送され、取引情報の印字が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−165926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した発行ユニット100では、装填作業中におけるロール紙Pの巻き緩みを防止するため、正転起動時の角加速度及び逆転停止時の角減速度を、正転停止時の角減速度及び逆転起動時の角加速度に比べて大きく設定している。
【0008】
しかしながら、図5(a)に示すように、ドーム101内にロール紙Pが逆向き(正常な向きに対してロール紙Pの巻回方向が逆向き)にセットされた場合、上述した正逆転時の角加減速度の大小関係によりロール紙Pに巻き緩みが生じる。ロール紙Pの巻き緩みは、ロール紙Pの外周側から除々に生じていくため、巻き緩みとともにロール紙本体部P2の外径が大きくなる。その結果、ロール紙本体部P2がドーム101内周面に接触し、ロール本体部P2とドーム101内周面との間にロール紙先端部P1が挟まれることで、ロール紙先端部P1がドーム101内でスムーズに移動できなくなるという問題がある。
【0009】
この状態でローラ102,103を逆転させると、ロール紙先端部P1の移動が制限された状態でロール紙本体部P2が回転(逆転)するため、ロール紙本体部P2に比べてロール紙先端部P1の回転角度が小さくなる。すると、例えば駆動ローラ102に対して逆転方向Fの奥側で、ロール紙Pの外周部分に座屈折れKが発生する。そして、座屈折れKが発生した状態で、さらにローラ102,103が逆転方向Fに回転すると、図5(b)に示すように座屈折れKが大きくなり、最終的には図6(a)に示すようにロール紙先端部P1のみがロール紙Pの巻回方向とは逆方向に折り返されてしまう(図6(a)中L参照)。
【0010】
折り返されたロール紙先端部P1は、正常な向きにセットされたロール紙先端部P1と同じ向きになる(図4参照)。すると、次の正転時において、図6(b)に示すように、セパレータ104でロール紙先端部P1とロール紙本体部P2とが分離され、ロール紙先端部P1がロール紙搬送路105内へ案内されてしまう。その後、ローラ102,103の正転動作によりロール紙先端部P1がロール紙搬送路105内に搬送され、第1搬送センサ107により検知されると、上述したように駆動ローラ102、分離ローラ103及びクランプローラ106がロール紙Pを送り出す方向に向けて同期回転して、巻き緩んだロール紙Pを引き出しながら、ロール紙先端部P1が第2搬送センサ108で検知されるまで搬送される。すなわち、実際はロール紙Pが逆向きでセットされているにも関わらず、正常な向きでロール紙Pがセットされたと判断されて、装填作業が正常終了してしまう。
【0011】
その後、自動取引機が運用状態になった時、発行ユニット100は上位制御部の指示によってロール紙Pへの印字・切断・発行の動作を行うが、ロール紙Pが逆向きにセットされている場合には、印字が発色せず、印字障害が発生する。さらに、発行ユニット100には、一般的に印字障害を検知する機能を有していないため、上位制御部はロール紙Pの向きに関わらず、継続的に印字命令を出力する。これに伴い、ローラ102,103,106が、印字のためにロール紙Pを送り出す方向に向けて同期回転するが、ロール紙Pを正転方向T(ロール紙Pが正常な向きにセットされた場合の搬送方向)に回転させても、ロール紙Pは巻き取り方向に回転する。その結果、ロール紙Pの巻き緩みがなくなった時点でロール紙Pの搬送ができなくなり、搬送異常となる。
【0012】
さらに、近時では、複数個のドームを備え、これら各ドーム内にロール紙をそれぞれセットしておくことで、複数のロール紙をセットしておくことができる複数ドームタイプの発行ユニットの構成も知られている。この複数ドームタイプの発行ユニットにおいては、印字障害や搬送異常を回避する冗長機能を実現させるため、異常が発生したドームを切り離す制御を行う場合がある。この場合、搬送異常となったレシートを回収するリカバリー動作を行う際、ロール紙を逆転方向に回転させるが、逆向きにセットされたロール紙を逆転方向に回転させても、ロール紙が搬送方向に回転する。そのため、ロール紙を巻き取ることができず、ロール紙搬送路内にロール紙先端部が残留(残留異常)するという問題がある。
その結果、発行ユニット全体が休止し、さらには、自動取引機全体が休止してしまうという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ロール紙の装填作業時において、収容部内にセットされるロール紙の向きを速やかに検知して、印字障害や搬送異常等の不具合を未然に抑制できるロール紙供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するために、本発明のロール紙供給装置は、ロール紙がセットされる収容部と、前記収容部にセットされた前記ロール紙を、第1方向及び第2方向に回転可能に保持するローラと、先端が前記ロール紙の外周面に接触し、回転する前記ロール紙の外周面から前記ロール紙の先端を分離するセパレータと、分離された前記ロール紙の先端が搬送されるロール紙搬送路とを有するロール紙供給装置において、前記セパレータは、前記ローラに対して前記第1方向手前側に配置され、巻回方向が前記第1方向と同一方向を向いた状態で前記収容部内にセットされた前記ロール紙の先端を分離する第1セパレータと
、前記ローラに対して前記第2方向手前側に配置され、巻回方向が前記第2方向と同一方向を向いた状態で前記収容部内にセットされた前記ロール紙の先端を分離する第2セパレータとを有し、前記ロール紙搬送路は、前記第1セパレータにより分離された前記ロール紙の先端が搬送される第1搬送路と、前記第2セパレータにより分離された前記ロール紙の先端が搬送される第2搬送路とを有し、前記第1搬送路及び前記第2搬送路のうち、少なくとも一方の前記搬送路には、該搬送路内での前記ロール紙の有無を検知するセンサが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローラに対して第1方向手前側及び第2方向手前側にそれぞれ第1セパレータと第2セパレータとを設けることで、ロール紙の巻回方向が第1方向と同一方向を向いた状態で収容部にセットされた場合には、ロール紙の先端が第1セパレータにより分離されて第1搬送路に搬送される。一方、ロール紙の巻回方向が第2方向と同一方向を向いた状態で収容部にセットされた場合には、ロール紙の先端が第2セパレータにより分離されて第2搬送路に搬送される。そして、第1搬送路及び第2搬送路のうち、少なくとも一方の搬送路に搬送路内でのロール紙の有無を検知するセンサを設けることで、ロール紙が何れの搬送路に搬送されたかを判断できる。これにより、ロール紙の先端がセンサに検知された時点で、収容部にセットされたロール紙の向き(巻回方向)を判断できる。
よって、ロール紙の装填作業時において、仮にロール紙が逆向きにセットされた場合に、これを速やかに発見して対処できる。したがって、その後の印字動作時における印字障害や搬送異常等の不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における発行ユニットの断面図である。
【図2】ロール紙が正常にセットされた状態でのロール紙の装填作業を説明する説明図であって、発行ユニットの部分断面図である。
【図3】ロール紙が逆向きにセットされた状態でのロール紙の装填作業を説明する説明図であって、発行ユニットの部分断面図である。
【図4】従来の発行ユニットの断面図である。
【図5】座屈折れの発生を説明するための説明図であって、従来の発行ユニットの部分断面図である。
【図6】折り返しの発生を説明するための説明図であって、従来の発行ユニットの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(発行ユニット)
図1は、ロール紙が正常にセットされた状態を示す発行ユニットの断面図である。
図1に示すように、本実施形態の発行ユニット(ロール紙供給装置)10は、例えばATM等の自動取引機(不図示)内に搭載されるものであって、記録紙(例えば、感熱紙等)が巻回されてなるロール紙Pを収容するためのドーム(収容部)11を備えている。ドーム11は、ホルダ部12とホルダ部12を開閉可能とするカバー13とで分割構成され、両者が組み合わされることでロール紙Pの外周面を覆う略円筒形状に形成されている。具体的に、ホルダ部12は、略半円筒形状に形成されており、その開放部分がロール紙Pをドーム101内に投入するための投入口14を構成している。カバー13は、略半円筒形状に形成されており、例えばホルダ部12の周方向一端側に図示しないヒンジ部等により連結されている。これにより、カバー13は、投入口14を開閉可能に構成されている。そして、ロール紙Pは、その軸方向がドーム11の軸方向と平行になるように、ドーム11内に収容されている。
【0018】
ホルダ部12の底部側には、ドーム11内に収容されるロール紙を正転方向T及び逆転方向Fの双方向に回転可能に支持する駆動ローラ21及び分離ローラ(ローラ)22が配置されている。各ローラ21,22は、軸方向がドーム11の軸方向に沿って互いに平行に配置されるとともに、ホルダ部12の底部において周方向に沿って間隔を空けて並んで配置されている。各ローラ21,22の外周面は、ホルダ部12の底部から径方向内側に向けて僅かに突出しており、この突出部分とロール紙Pの外周面とが接触することで、ドーム11内でロール紙Pを保持している。そして、ローラ21,22は、図示しないモータ等の駆動手段に連結されており、駆動手段の駆動により各ローラ21,22が回転することで、各ローラ21,22の外周面とロール紙Pの外周面との間の摩擦力によりロール紙Pを回転させるようになっている。
【0019】
ここで、分離ローラ22に対してホルダ部12の周方向両側には、ロール紙Pを下流側に向けて搬送するためのロール紙搬送路(第1搬送路23及び第2搬送路24)が形成されている。具体的に、第1搬送路23は分離ローラ22に対して正転方向Tの手前側に形成される一方、第2搬送路24は分離ローラ22に対して正転方向Tの奥側に形成されている。そして、これら搬送路23,24は、互いの下流端でメイン搬送路25に合流している。
【0020】
メイン搬送路25には、メイン搬送路25内に案内されるロール紙Pの厚さ方向両側に対向配置された搬送ローラ31及び押圧ローラ32と、ローラ31,32に対してロール紙Pの搬送方向両側に配置された搬送センサ(第1搬送センサ33及び第2搬送センサ34)とが設けられている。
【0021】
搬送ローラ31及び押圧ローラ32は、軸方向が互いに平行に配置されるとともに、互いの外周面同士が接触した状態で、図示しないモータ等の駆動手段により回転可能に構成されている。また、押圧ローラ32は、メイン搬送路25内に向けて(搬送ローラ31に向けて)付勢されている。すなわち、搬送ローラ31及び押圧ローラ32は、メイン搬送路25内に案内されたロール紙Pを互いの外周面間に挟持した状態で、ロール紙Pとローラ31,32との摩擦力(グリップ力)により、下流側に配置されたサーマルプリンタ等の印字部(不図示)に向けて搬送しうるように構成されている。
【0022】
第1搬送センサ33及び第2搬送センサ34は、メイン搬送路25内でのロール紙Pの有無を検知するものであり、ロール紙先端部P1が各搬送センサ33,34を通過することで、メイン搬送路25内における各搬送センサ33,34の位置にロール紙先端部P1が存在することを検知する。なお、発行ユニット10は、上述したセンサ33,34や後述する誤装填検知センサ(センサ)45等の検知結果に基づいて、発行ユニット10を統括的に制御する図示しない制御部を備えている。
ロール紙Pの装填作業時において、第1搬送センサ33によりロール紙先端部P1を検知すると、制御部はロール紙Pの向き(巻回方向)が正常な向き(ロール紙Pの巻回方向)でセットされ、ロール紙先端部P1がロール紙本体部P2から分離されたと判断する。この場合、制御部は、駆動ローラ21、分離ローラ22、搬送ロ―ラ31及び押圧ローラ32がロール紙Pを送り出す方向に向けて同期回転させ、ロール紙先端部P1を下流側へ送り出すように構成されている。
そして、第2搬送センサ34によりロール紙先端部P1を検知すると、制御部はロール紙Pの装填作業が正常に完了したと判断するようになっている。これにより、今後、自動取引機で取引が行われた場合に、図示しない印字部までロール紙Pが搬送され、取引情報の印字が行われる。
【0023】
ここで、上述した第1搬送路23及び第2搬送路24の上流端(入口側)には、ロール紙先端部P1をロール紙本体部P2から分離させて、ロール紙先端部P1をそれぞれの搬送路23,24内へ案内するセパレータ(第1セパレータ41及び第2セパレータ42)が設けられている。
【0024】
各セパレータ41,42のうち、第1セパレータ41は、分離ローラ22に対してロール紙Pの正転方向Tにおける手前側に設けられ、逆転方向Fに向けて先細るように延在する爪状の部材であり、その先端部分がロール紙本体部P2の外周面に接触している。一方、第2セパレータ42は、分離ローラ22に対してロール紙Pの正転方向Tにおける奥側に設けられ、正転方向Tに向けて先細るように延在する爪状の部材であり、その先端部分がロール紙本体部P2の外周面に接触している。すなわち、第1セパレータ41は、ロール紙Pが正常な向き(ロール紙先端部P1が正転方向Tと同一方向を向いた状態)でドーム11内にセットされた場合には、ロール紙先端部P1とロール紙Pの周方向で対向するように形成されている。一方、第2セパレータ42は、ロール紙Pが逆向き(ロール紙先端部P1が逆転方向Fと同一方向を向いた状態)でドーム11内にセットされた場合には、ロール紙先端部P1とロール紙Pの周方向で対向するように形成されている。
【0025】
また、上述した第2搬送路24内には、第2搬送路24内でのロール紙先端部P1の有無を検知するための誤装填検知センサ45が設けられている。ロール紙Pの装填作業時において、誤装填検知センサ45によりロール紙先端部P1を検知すると、制御部はロール紙Pが誤装填(逆向きにセット)されていると判断する。この場合は、発行ユニット10に設置された図示しないアラームランプや、ATM等の自動取引機に設置された上位制御装置を介して装填作業者に向けて誤装填が通知される。
【0026】
(ロール紙の装填方法)
次に、上述した発行ユニットへのロール紙の装填方法について説明する。まず、ロール紙Pを正常な向きにセットした場合について説明する。図2はール紙が正常にセットされた状態でのロール紙の装填作業を説明する説明図であって、発行ユニットの部分断面図である。
まず、図2に示すように、ドーム11のカバー13を開き、ホルダ部12の投入口14からロール紙Pを投入する。この時、ロール紙先端部P1が正転方向Tを向いた状態(周方向において、ロール紙先端部P1が第1セパレータ41の先端に対向した状態)で投入する。その後、カバー13を閉じることで、ドーム11内において、ロール紙Pが駆動ローラ21及び分離ローラ22に保持される。
【0027】
次に、駆動手段を駆動させ、駆動ローラ21及び分離ローラ22を正転方向T及び逆転方向Fに交互に回転させる。この時、駆動ローラ21及び分離ローラ22の逆転時の回転角度を、正転時に比べて大きく設定することで、ドーム11内のロール紙Pは除々に逆回転する。すなわち、ロール紙先端部P1が逆転方向Fに沿って移動する。そして、逆転時にロール紙先端部P1が第1セパレータ41を乗り越えると、次の正転時の動作でロール紙先端部P1が第1セパレータ41に向かって移動する。この時、第1セパレータ41の先端はロール紙Pの外周面に接触しているため、第1セパレータ41は、その先端からロール紙本体部P2の外周面とロール紙先端部P1との間に入り込む。これにより、ロール紙先端部P1がロール紙本体部P2から分離される。なお、本実施形態では、装填作業中におけるロール紙Pの巻き緩みを防止するため、駆動ローラ21及び分離ローラ22における正転起動時の角加速度と逆転停止時の角減速度とを、正転停止時の角減速度と逆転起動時の角加速度とに比べて大きく設定している。
【0028】
ロール紙本体部P2から分離されたロール紙先端部P1は、第1セパレータ41によって第1搬送路23内に案内され、第1搬送路23内を搬送される。その後、第1搬送路23内を搬送されたロール紙Pは、メイン搬送路25へ搬送される。そして、第1搬送センサ33によりロール紙先端部P1を検知することで、制御部はロール紙Pが正常な向きでセットされ、ロール紙先端部P1がロール紙本体部P2から分離されたと判断する。すると、ローラ21,22,31,32が正転方向Tに同期回転して、ロール紙先端部P1が下流側へ搬送される。そして、ロール紙先端部P1がローラ31,32を通過して、第2搬送センサ34で検知されることで、制御部はロール紙Pの装填作業が正常に完了したと判断する。その後、自動取引機で取引が行われた場合に、図示しない印字部までロール紙Pが搬送され、取引情報の印字が行われる。なお、正常な向きにセットされたロール紙Pに対して、装填作業完了直後にロール紙先端部P1を発行ユニット10の印字部付近まで予め搬送しておくことによって、自動取引機が運用を開始する際に即座に印字したレシートを顧客へ提供できる。
【0029】
次に、ロール紙Pが逆向きにセットされた場合について説明する。図3は、ロール紙が逆向きにセットされた状態でのロール紙の装填作業を説明する説明図であって、発行ユニットの部分断面図である。
ところで、上述した図5,図6に示すように、ドーム101内にロール紙Pが逆向き(ロール紙Pの巻回方向が逆転方向Fと同一方向)にセットされた場合、上述した正逆転時の角加減速度の大小関係によりロール紙Pに巻き緩みが生じる。その結果、最終的には図6(a)に示すようにロール紙先端部P1のみがロール紙Pの巻回方向とは逆方向に折り返されてしまう。
【0030】
これに対して、本実施形態では図3(a)に示すように、ロール紙Pが逆向き(周方向において、ロール紙先端部P1が第2セパレータ42の先端に対向した状態)にセットされた状態で、ローラ21,22の逆転方向Fへの回転によりロール紙本体部P2が逆転すると、これに追従するようにロール紙先端部P1もドーム11内周面に沿って徐々に移動する。すなわち、ロール紙先端部P1が第2セパレータ42に向かって移動する。この時、第2セパレータ42の先端はロール紙Pの外周面に接触しているため、ロール紙先端部P1が第2セパレータ42に差し掛かると、第2セパレータ42は、その先端からロール紙本体部P2の外周面とロール紙先端部P1との間に入り込む。これにより、ロール紙先端部P1がロール紙本体部P2から分離され、第2搬送路24内に案内される。
【0031】
そして、ロール紙Pがさらに逆転することで、ロール紙先端部P1は第2搬送路24内に設けられた誤装填検知センサ45で検知される。誤装填検知センサ45によりロール紙先端部P1を検知すると、制御部はロール紙Pが逆向きにセットされたと判断する。
【0032】
この場合、上述したアラームランプを点灯、または点滅させて装填作業者に誤装填を通知したり、自動取引機に含まれる上位制御装置に誤装填検知を通知し、上位制御装置を通して装填作業者に誤装填を通知したりする。これらの通知により、装填作業者はロール紙Pが誤装填されていることを認識できる。この場合、カバー13を開けて投入口14からロール紙Pを取出し、ロール紙Pの向きを正常な向きに変えた状態で、再度ドーム11内にロール紙Pをセットする。そして、再度ロール紙Pの装填作業を行うことで、装填作業が正常に完了する。
【0033】
なお、ロール紙Pが逆むきにセットされた場合、誤装填センサ45によりロール紙先端部P1を検知した後であって、アラームランプや上位制御装置を用いて装填作業者に誤装填を通知する前に、ローラ21,22を駆動してロール紙Pを正転方向Tに所定の角度だけ回転させることが好ましい。これにより、第2搬送路24内に搬送されたロール紙先端部P1を所定距離だけ、引き戻すことができるため、ロール紙Pが取り出し易くなる。
【0034】
このように、本実施形態では、分離ローラ22に対して正転方向Tの手前側にロール紙先端部P1を第1搬送路23へ案内する第1セパレータ41を設ける一方、逆転方向Fの手前側にロール紙先端部P1を第2搬送路24へ案内する第2セパレータ42を設ける構成とした。
この構成によれば、ロール紙Pが正常な向きでドーム11にセットされた場合には、ロール紙先端部P1が第1セパレータ41により分離されて第1搬送路23に搬送される一方、ロール紙Pが逆向きでドーム11にセットされた場合には、ロール紙先端部P1が第2セパレータ42により分離されて第2搬送路24に搬送される。そして、第2搬送路24に設けられた誤装填検地センサ45でロール紙先端部P1を検知された時点で、ドーム11にセットされたロール紙Pの誤装填を判断できる。すなわち、ロール紙Pの装填作業時において、仮にロール紙Pが逆向きにセットされた場合に、これを自動取引機の運用開始前に速やかに発見して対処できる。したがって、その後の印字動作時における印字障害や搬送異常、ジャム(ロール紙の噛み込み)、ロール紙先端部P1の残留異常等の不具合の発生を抑制できる。その結果、上述した不具合により発行ユニット10全体が休止したり、ひいては自動取引機の全体が休止したりするのを抑制できる。
【0035】
なお、上述したように本実施形態では、逆向きにセットされたロール紙先端部P1を分離する第2セパレータ42が設けられているが、ロール紙Pが正常な向きにセットされた場合は、ロール紙先端部P1と第2セパレータ42の先端が向き合った状態になることがない。そのため、第2セパレータ42により正常な向きにセットされたロール紙Pの回転が妨げられることはなく、またロール紙先端部P1が第2セパレータ42によりロール紙本体部P2から分離されることもない。また、同様の理由により、第2セパレータ42がロール紙先端部P1の回転移動と第1セパレータ41による分離動作を妨げることはない。
【0036】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、第2搬送路24に誤装填検知センサ45を設け、誤装填検知センサ45によりロール紙先端部P1が検知された場合に、ロール紙Pが逆向きにセットされていると判断したが、これに限らず第1搬送路23及び第2搬送路24の両方にセンサを設け、ロール紙先端部P1がどちらの搬送路を通過したかによって、ロール紙Pの向きを判断しても構わない。
また、第1搬送路23のみに誤装填検知センサを設け、誤装填検知センサ及び第1搬送センサ33によりロール紙先端部P1が検知された場合には、ロール紙Pが正常な向きにセットされたと判断しても構わない。
【0037】
また、上述した実施形態では、本発明を、ドーム11が1つのみの構成の発行ユニットに採用した場合について説明したが、複数個のドームを備え、これら各ドーム内にロール紙をそれぞれセットされた複数ドームタイプの発行ユニットに採用することも可能である。
さらに、本発明の発行ユニットは、ATMに限らず、例えば駐車場或いはセルフ式のガソリンスタンドにおける給油機の精算機や、各種の飲食店舗内等に設置される券売機等の自動取引機や、その他の機器に搭載して、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…レシート発行ユニット(ロール紙供給装置) 11…ドーム(収容部) 22…分離ローラ(ローラ) 41…第1…セパレータ 42…第2セパレータ 23…第1搬送路 24…第2搬送路 45…誤装填検知センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙がセットされる収容部と、
前記収容部にセットされた前記ロール紙を、第1方向及び第2方向に回転可能に保持するローラと、
先端が前記ロール紙の外周面に接触し、回転する前記ロール紙の外周面から前記ロール紙の先端を分離するセパレータと、
分離された前記ロール紙の先端が搬送されるロール紙搬送路とを有するロール紙供給装置において、
前記セパレータは、
前記ローラに対して前記第1方向手前側に配置され、巻回方向が前記第1方向と同一方向を向いた状態で前記収容部内にセットされた前記ロール紙の先端を分離する第1セパレータと、
前記ローラに対して前記第2方向手前側に配置され、巻回方向が前記第2方向と同一方向を向いた状態で前記収容部内にセットされた前記ロール紙の先端を分離する第2セパレータとを有し、
前記ロール紙搬送路は、
前記第1セパレータにより分離された前記ロール紙の先端が搬送される第1搬送路と

前記第2セパレータにより分離された前記ロール紙の先端が搬送される第2搬送路とを有し、
前記第1搬送路及び前記第2搬送路のうち、少なくとも一方の前記搬送路には、該搬送路内での前記ロール紙の有無を検知するセンサが設けられていることを特徴とするロール紙供給装置。
【請求項2】
前記センサは、前記第2搬送路に設けられ、
前記ロール紙供給装置は、前記センサにより前記ロール紙が検知された場合に、前記ロール紙が逆向きにセットされていると判断することを特徴とする請求項1記載のロール紙供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−230885(P2011−230885A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102116(P2010−102116)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】