説明

ロール紙分離機構

【課題】
新規ロール紙のセット時にロール紙先端に先の尖った分離ガイド等を直接接触させてロール紙先端を自動的に分離する機構において、ロール紙先端が内側にカールしている場合や、ロール紙自体が静電気を帯びている場合に、ロール紙先端がロール紙に張り付き、分離ガイド先端がロール紙先端を引っ掛けることが出来ず、分離失敗となる場合がある。
【解決手段】
分離ガイド接触前にロール紙両端を内側に押さえロール紙先端を剥がすことにより、ロール紙先端と分離ガイド先端が当たるときに、ロール紙とロール紙先端の隙間を大きくしておく。これにより、ロール紙先端が内側にカールしている場合や、ロール紙自体が静電気を帯びている場合等のロール紙先端が張付きやすい条件のロール紙についても、ロール紙先端の分離を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等で使用されている現金自動預払機に搭載されている、取引内容を明細票(レシート)に印字して発行するレシートプリンタに適用する。
【背景技術】
【0002】
一般的に金融機関等で使用されている現金自動預払機(ATM)のレシートプリンタには、連続用紙を巻いたロール紙を使用している。ロール紙に取引内容を印字し、所定の長さでカットし、レシートとして顧客操作部へ搬送、発行している。
【0003】
ATMは、無人で連続運転できるよう構成されており、ロール紙を使いきった場合、あらかじめセットされている予備のロール紙を自動で補充する機構を有している。この補充機構部は、ロール紙に印字やカットを行う機構を備えた搬送路へロール紙先端を引き込むための分離機構を備えている。
【0004】
このような分離機構の一例としては、特開平5-246610号公報のようにロール紙の下部にゴムローラを配置し、ロール紙を用紙先端方向に回転させ、薄い分離ガイドをロール紙先端とロール紙の隙間に入り込むようロール紙に接触させておくことで、ロール紙から浮いた先端を分離したり、ロール紙先端に分離ガイド先端を当てて、用紙先端を剥がして分離する機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-246610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
未使用のロール紙を装置へセットする際には、予め、係員等が先端部を剥がして分離しやすいようにセットするのが通常であるが、前述の機構では、ロール紙先端が内側に強くカールしている場合や、ロール紙自体が静電気を帯びている場合に、ロール紙先端がロール紙に張り付き分離ガイド先端がロール紙先端を引っ掛けることが出来ず、分離に失敗することがある。
【0007】
分離性能を改善するためには、分離ガイド先端の厚みを薄くすることが効果的であり、例えば分離ガイド先端の厚みが用紙の厚み(ATM用レシート紙の場合は約0.06mm)より小さくすれば、ロール紙先端がロールに張り付いていても分離ガイド先端に当てて引っ掛けることが可能となるが、薄くするほど分離ガイド先端の強度が落ちて破損し易くなり、加工も困難となる。また、レシートに傷をつけたり、分離ガイドが触手可能部にある場合は、指で触った場合に切り傷等を起こす虞もあって必ずしも適当でない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、分離ガイド接触前にロール紙の幅方向の両端を内側に押さえロール紙先端をたわませて剥がすことにより、ロール紙先端分離ガイド先端がロール紙とロール紙先端の隙間に入り易くする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロール紙先端が内側に強くカールしている場合や、ロール紙自体が静電気を帯びている場合等の、ロール紙先端がロール紙に張り付きやすい条件でも、ロール紙先端の分離を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の構造図
【図2】実施例1の後方からの図
【図3】ロール紙のたわみの説明図
【図4】実施例1を下からみた図
【図5】実施例1を上からみた図
【図6】実施例1にたわみ矯正ガイドを追加した図
【図7】図6のC部拡大図
【図8】明細票発行機構の側面構成図
【図9】実施例2の構造図
【図10】実施例2を正面からみた図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について、ATMに搭載されている取引内容をロール紙に印字して発行する明細票発行機構(レシートプリンタ)を例に図8を用いて説明する。図8は本発明の明細票発行機構の側面から見た内部構成図である。
【0012】
まず、基本的な構造と動作について説明する。
【0013】
基本的な明細票発行機構の構造としては、予備のロール紙37を保管し、先の分離機構部31へ搬送する補充機構部30と、使用中のロール紙7を保持し、ロール紙7の使用開始時にその先端を分離して搬送路に引き込む分離機構部31と、サーマルヘッド32とプラテンローラ33とで構成されロール紙へ印字を行う印字機構部34と、印字されたロール紙を所定の長さにカットし明細票(レシート)とするカット機構部35と、レシートを排出するための搬送ローラやガイドを配置した排出機構部36とから構成されている。
【0014】
予備のロール紙37は係員等によってその先端が剥がされて補充機構部30にセットされる。使用中である分離機構部31にセットされているロール紙7を使い切った際、図示しない機構によって仕切り板38を図中前後(紙面の垂直方向)もしくは上下方向に退避させ、傾斜面39上のロール紙37を先の分離機構部31に転がして分離機後部への補充を行う。補充機構部30から補充されたロール紙7は、駆動ローラ1にて、図中、反時計回りに回転させ、分離ガイド2を用いてロール紙先端をロール紙から分離し、印字機構部34へ搬送する。印字機構部34は、図示しないセンサにより用紙の位置を確認し、レシートをプラテンローラ33で搬送しながら、印字ヘッド32により取引内容を印字する。印字後、カット機構部35にて所定の長さにカットし、カットしたレシートを排出機構部36により搬送し、顧客へ排出される。上記の構成にて、レシートの補充や、顧客へのレシート発行が行われる。
【実施例1】
【0015】
分離機構31の第1の実施例について図1、2を用いて説明する。なお、図2は図1のA方向から見た構造図である。
本発明のロール紙分離機構は、ロール紙7を回転させるための駆動ローラ1と、駆動ローラ1を回転させるステッピングモータ等のアクチュエータ15と、ロール紙先端を引っ掛け分離するための分離ガイド2と、分離したロール紙先端を挟持し搬送するための圧接した一対の搬送ローラ3と、搬送ローラ3にて用紙を挟持していることを検知する分離検知センサ4と、ロール紙のたるみを規制する規制ガイド5と、ロール紙の左右方向に対しての動きを規制する搬送ガイド16とで構成している。ここで駆動ローラ1は、図2に示すように円錐形状になっており、ロール紙両端が駆動ローラ1の傾斜部に圧接するように設置する。
【0016】
次に、本分離機構における用紙先端を分離する動作を説明する。
使用中のロール紙が使い切られ、補充機構部30からの予備のロール紙7が分離機構部31にセットされると、ステッピングモータ等のアクチュエータ15により駆動ローラ1を回転し、ロール紙7をB方向に回転させる。この時、駆動ローラ1は、ロール紙7の自重により常にロール紙7の印刷面の横幅方向両端を下方向から押さえており、図2及び図3に示すように用紙先端10を内側にたるませて剥がす。この時、用紙先端10は図3に示すように中央部から剥がれるため、図4(図1を下側から見た図)のように分離ガイド2の先端を中央部ほど細くなるような形状にし、剥れた部分にその先端部を差し込むように分離する。分離後は、搬送ローラ3により搬送され、分離検知センサ4にて分離した用紙先端を検知して、分離動作が完了する。なお、分離部2の先端形状は図4に示した台形の形状に限らず、中央部ほど細くなるような先細りの形状であれば他の形状、例えば、三角形や角を丸めた三角形、あるいは卵型形状のようなものでもよい。
【0017】
また、本実施例においては駆動ローラ1を円錐形状としてロール紙の横幅方向両端を押さえるように構成したが、駆動ローラの駆動軸そのものを正面から見て逆ハの字形に傾けて構成することも可能である。
【0018】
なお、ロール紙のたるみが必要以上に大きくなった場合、搬送路内で用紙が引っ掛りジャムとなる懸念があるが、本実施例の分離機構の場合、図5(図1を上から見た図)に示すように、搬送ローラ3にてロール紙の横幅方向の全面を押さえる形状にすることにより、たるみを矯正できる。また、下流の印字機後部34においても、ロール紙の横幅方向全てを印字ヘッド(32)とプラテンローラ(33)で挟み込むため、同様の効果を期待できる。
【0019】
また、他のたるみを矯正する手段としては、図6に示すようにガイド部材11を搬送ローラ3通過後に設置する。駆動ローラ1にて発生したたるみをガイド部材11が搬送路上部側にガイドする。図7は、このガイド部材11がたるみを矯正する状態を説明するための図であり、図6のC部を拡大した図である。図7に示すようにガイド部材11を斜めに、隙間20をあけて設置している。この隙間20を通過することでたるみを矯正する。ガイド部材11の素材としては、好ましくは絶縁性のある軟性のものが適している。同様に、搬送路そのものの隙間を狭くすることでもたるみを矯正できる。
【0020】
本発明は、ロール紙両端を押さえることにより、ロール紙を中央にたわませ分離ガイドにて分離を行う機構としている。他にロール紙をたるませる機構として、スプリングを利用した機構を以下第2の実施例にて説明する。
【実施例2】
【0021】
分離機構の他の実施例について図9、図10を用いて以下に説明する。図9、図10は、それぞれ第1の実施例の図1、図2に対応しており、同一部分には同一の符号を記した。
【0022】
第1の実施例では、駆動ローラ1の形状を円錐型にすることによりロール紙中央部付近をたわませていた。本実施例では、図9に示すように駆動ローラ1と分離ガイド2の間とに分離補助用ガイド12を取付ける。第1の実施例と第2の実施例との相違点は、図9〜10において、分離補助用ガイド12を備えたこと、駆動ローラ1の配置と形状を変えた点にある。本例の駆動ローラ1の形状は図10に示すように、円柱形状であってロール紙の横幅方向のほぼ中央に配置する。分離補助用ガイド12はスプリング13等でロール紙7の横幅方向側面の下側両端に押し当て、ロール紙両端を内側に押す機構となっている。以下、この構成で、分離機構で用紙先端を分離する動作を説明する。
【0023】
駆動ローラ1は、ステッピングモータ等のアクチュエータ(図示省略)により駆動する。駆動ローラ1を時計回りに回転させることによりロール紙7を半時計方向(B方向)に回転させる。この際、分離補助用ガイド12がロール紙両端を下から押さえることにより、用紙先端を内側にたるませて剥がし、分離ガイド2の下に入り込ませるよう分離する。分離後は、搬送ローラ3により搬送され、分離検知センサ4にて分離した用紙先端を検知して、分離動作が完了する。
【0024】
このように、本発明はロール紙の横幅方向両端を下側から押すことによりロール紙先端を剥がし、ロール紙先端とロール紙に隙間をつくり分離するものであり、同様の原理を用いた機構であれば、他の構成でも構わない。例えば、ロール紙の片側を壁などで規制し、片側のみを押してたわみを作り出すことでも同様の効果を期待できる。
【符号の説明】
【0025】
1:駆動ローラ
2:分離ガイド
3:搬送ローラ
4:センサ
5:たるみ規制ガイド
7:ロール紙
8:ロール紙中心部のたるみ
10:ロール紙先端
11:たるみ規制ガイド
12:分離補助用ガイド
13:スプリング
15:アクチュエータ
16:搬送ガイド
20:隙間
30:補充機構部
31:分離機構部
32:サーマルヘッド
33:プラテンローラ
34:印字機構部
35:カット機構部
36:排出機構部
37:補充ロール紙
38:仕切り板
39:傾斜面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を回転させその先端を分離して搬送路へ引き込むロール紙分離装置であって、
前記ロール紙の下方に配置され、前記ロール紙を回転させる駆動ローラと、
前記駆動ローラよりも前記搬送路側に配置され、回転する前記ロール紙とその先端部との間に生じる空間に挿入される分離ガイドと、
前記分離ガイドよりも前記搬送路側に配置され、前記分離されたロール紙の先端を搬送路へ引き込む搬送ローラと、
前記ロール紙の自重により、前記ロール紙の横幅方向両端の縁を下側から押すことによってロール紙の先端部とロール紙本体との間に空間を生じさせる分離補助手段と、
からなることを特徴とするロール紙分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロール紙分離装置であって、
前記分離補助手段は、前記ロール紙の横幅方向両端の下方のそれぞれに設けられ、それぞれ相対する側の径が小さくなるような円錐形状の前記駆動ローラであることを特徴とするロール紙分離装置。
【請求項3】
請求項1に記載のロール紙分離装置であって、
前記分離補助手段は、前記ロール紙の横幅方向両端の下方のそれぞれの異なる回転軸に設けられた前記駆動ローラによって構成され、
前記2つの回転軸は、前記2つの駆動ローラが前記ロールの横幅方向両端を内側に押すように、ロール紙の回転軸に対して斜め方向に取り付けられていることを特徴とするロール紙分離装置。
【請求項4】
請求項1に記載のロール紙分離装置であって、
前記分離補助手段は、前記駆動ローラと前記分離ガイドとの間に設けられ、前記ロール紙の側面を下方から挟み込むようにした1対の壁状のガイド部材であることを特徴とするロール紙分離装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のロール紙分離装置であって、
前記分離ガイドは、その先端部の横幅が後端部よりも小さいことを特徴とするロール紙分離装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のロール紙分離装置であって、
前記搬送ローラは、前記分離されたロールの横幅方向全面を上下方向から挟み込むように構成された一対のローラであることを特徴とするロール紙分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162337(P2012−162337A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22252(P2011−22252)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】