説明

ロール紙切断ローラ

【課題】 切断刃の交換が容易で経済性に優れたロール紙切断ローラを提供する。
【解決手段】 略正三角形の断面をもつ柱状部を含み、当該柱状部の各稜線部分21〜23に切断刃が成形される複数のロール紙切断用チップ20を用いる。これらのチップ20をカッタドラム10の外周面上でその周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ着脱可能に装着してチップ20の稜線部分21〜23のうちの任意の稜線部分が当該カッタドラム10の径方向外側に突出するようにする。そして、その突出した稜線部分に成形した切断刃でロール紙の切断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を適当な寸法に切断することによりチップペーパー片を切り出すためのロール紙切断ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙からチップペーパー片を切り出すための裁断装置としては、下記特許文献1に示されるように、所定のギャップを保って互いに反対方向に回転する一対のロール(受けロールと刃付ロール)を備え、そのギャップ中に帯状のロール紙を供給してこれを前記刃付ロールの切断刃により連続的に定寸に切断するものが知られている。そして、前記刃付ロールすなわちロール紙切断ローラとしては、例えば下記特許文献2に示されるものが知られている。
【0003】
同文献に示される切断用ローラは、回転駆動されるドラムと、その外周部に嵌合される円筒状の裁断部材を備えている。この裁断部材は、超硬合金により一体成形されたものであり、その外周面から径方向外側に複数の裁断刃が突出する形状を有している。
【特許文献1】特公平61−54559号公報(第2〜3頁,第2〜4図)
【特許文献2】特開平6−7140号公報(0030,図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献2に示される切断用ローラでは、その複数の裁断刃のうちのいずれか一つが損傷しただけでも裁断部材全体(場合によってはローラ全体)を交換しなければならず、しかも、当該裁断部材は大型でかつその全体を高価な超硬合金で一体成形したものであるため、総じて経済性に難がある。また、裁断部材の内周面はドラム軸と高精度で嵌合する必要があるため、その研削加工には長時間を要することになり、製作コストも非常に高くなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、回転駆動されるカッタドラムの外周面上に着脱可能に装着され、かつ、当該カッタドラムの軸方向に延びる切断刃を備えたロール紙切断用チップであって、略正三角形の断面をもつ柱状部を含み、当該柱状部の各稜線部分が切断刃成形部とされているものである。
【0007】
また本発明は、中心軸回りに回転駆動されるカッタドラムと、このカッタドラムの外周面上の複数の位置にそれぞれ装着される請求項1記載のロール紙切断用チップとを備えたロール紙切断ローラであって、前記カッタドラムの外周面上には、前記ロール紙切断用チップの柱状部の任意の稜線部分が当該カッタドラムの径方向外側に突出しかつ当該稜線部分が当該カッタドラムの回転軸と略平行となる姿勢で当該ロール紙切断用チップが着脱可能に装着される複数のチップ装着部が当該カッタドラムの周方向に並ぶ複数の位置に設けられているものである。
【0008】
以上の構成によれば、カッタドラムの各チップ装着部にそれぞれロール紙切断用チップが装着された状態で、ローラ全体を回転駆動することにより、各チップの稜線部分に形成された切断刃を用いてロール紙の切断を行うことができる。しかも、いずれかの切断刃の交換時期が到来したときは、その切断刃をもつロール紙切断用チップをチップ装着部から取り外し、当該切断刃が成形されている稜線部分とは別の稜線部分が新しく径方向外側に突出する姿勢で当該チップを再装着することにより、その新しい稜線部分に成形される切断刃を用いてロール紙の切断を再開することができる。
【0009】
すなわち、部品を交換することなく切断刃または切断刃成形部のみを交換することが可能であり、従来のようにドラム外周面に切断刃が一体成形されているものに比べて経済性は飛躍的に向上する。また、各ロール紙切断用チップは小型でその加工も容易であり、製作コストも低い。
【0010】
前記各チップ装着部としては、前記カッタドラムの回転軸と略平行な方向に延びて前記ロール紙切断ローラの柱状部の任意の稜線部分が嵌入可能な形状をもつチップ嵌入溝を有するものが、好適である。
【0011】
この構成によれば、前記チップ嵌入溝にロール紙切断用チップの適当な稜線部分を嵌入することにより、当該稜線部分に隣接する稜線部分をカッタドラムの径方向外側に突出させることができる。
【0012】
その場合、前記各チップ嵌入溝に対して周方向に隣接する位置に押え部材嵌入溝が形成されるとともに、この押え部材嵌入溝に嵌入された状態で前記カッタドラムに締結されることにより前記ロール紙切断用チップの柱状部の面のうち前記チップ嵌入溝に嵌入されていない面を当該チップ嵌入溝に向けて押える押え面をもつ押え部材を備えるようにすれば、当該押え部材を前記押え部材嵌入溝内に嵌入してカッタドラムに締結するだけの簡単な操作で、前記ロール紙切断用チップを安定した状態でカッタドラムに固定することができる。
【0013】
前記ロール紙切断ローラに用いられる各ロール紙切断用チップの稜線部分に切断刃を成形する方法としては、当該ロール紙切断用チップを前記カッタドラムのチップ装着部に装着した状態で当該カッタドラムの外周面から突出する稜線部分に砥石を接触させることにより当該稜線部分を研削して切断刃を成形するものが、好適である。
【0014】
この方法によれば、各切断刃を効率良く成形することができるとともに、当該切断刃を前記ロール紙切断用チップが前記カッタドラムに装着された状態、すなわち使用時の状態に近似した状態で成形することができるため、より精度の高いロール紙切断を実現することができる。
【0015】
この成形方法としては、前記カッタドラムの各チップ装着部にそれぞれロール紙切断用チップを装着した状態で当該カッタドラムを回転駆動しながら各ロール紙切断用チップの柱状部の稜線部分の先端に砥石を接触させることにより切断刃の先端面を形成する工程を含むものが、より好適である。
【0016】
この方法によれば、単一の工程で各チップ装着部に装着されているロール紙切断用チップの稜線部分の先端を一度に加工することができる。
【0017】
また本発明は、前記ロール紙切断ローラを使用する方法であって、当該ロール紙切断ローラにおけるカッタドラムのチップ装着部にロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの稜線部分に砥石を接触させることにより当該切断刃を成形し、かつ、その成形時に前記ロール紙切断用チップを装着したチップ装着部と同じ装着部に当該ロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの切断刃を用いてロール紙の切断を行うものである。
【0018】
この方法によれば、カッタドラムにおける各チップ装着部の位置(特にドラム回転中心からチップ装着部までの距離)にばらつきがあっても、当該チップ装着部に装着されるロール紙切断用チップに成形される切断刃の位置(特にドラム回転中心から切断刃までの距離である切断刃回転半径)を一定に揃えることが可能であり、これによってさらに精度の高いロール紙切断に寄与することができる。
【0019】
特に、前記ロール紙切断ローラにおけるカッタドラムのチップ装着部にロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの稜線部分に砥石を接触させることにより当該切断刃を成形した後、その装着状態のまま当該切断刃を用いてロール紙の切断を行うようにすれば、チップ装着のためのボルトの締め付け力等による当該チップの変形やチップ装着部における異物の噛み込み等に起因する切断刃の位置ずれも防止することが可能になる。
【0020】
その一方、前記ロール紙切断ローラの使用方法として、前記各ロール紙切断用チップを使用する前に予め当該ロール紙切断用チップの全ての稜線部分に切断刃を成形しておくようにすれば、切断刃の交換時にはその切断刃をもつロール紙切断用チップの姿勢を替える(具体的には60°回転させる)だけで新しい切断刃を直ちに使用に供することができ、迅速でより効率の高いロール紙切断作業を実現することができる。
【0021】
なお、ロール紙切断用チップをチップ装着部に装着した状態でこれに切断刃を成形した後、当該チップを一旦取り外してから再度チップ装着部に装着する場合、各ロール紙切断用チップの形状及びチップ装着部の形状が同一であると、各ロール紙切断用チップに対応するチップ装着部の識別が難しくなるが、前記各ロール紙切断用チップに互いに異なる識別表示が設けられるとともに、前記カッタドラムの各チップ装着部またはその近傍部分に当該チップ装着部に装着されるロール紙切断用チップに設けられた識別表示に対応する識別表示が設けられている構成とすれば、各ロール紙切断用チップを間違いなく適正なチップ装着部に装着することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明は、略正三角形の断面をもつ柱状部を含み、当該柱状部の各稜線部分に切断刃が形成されているロール紙切断用チップを用い、同チップをカッタドラムの外周面上でその周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ着脱可能に装着して当該チップの稜線部分に成形される切断刃でロール紙の切断を行うようにしたものであるので、切断刃の交換を容易にし、かつ、経済性に優れたロール紙切断手段を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すロール紙切断ローラは、カッタドラム10と、これに装着される複数個(図例では6個)のロール紙切断用チップ20とを備えている。
【0025】
前記カッタドラム10は、一方向に延びる中心軸部12を有し、この中心軸部12の両端部分が図略の軸受を介して駆動装置本体に保持されるようになっている。中心軸部12の両端には雄ねじ14が形成され、これらの雄ねじ14に螺合される図略のナットによって前記軸受が軸方向両外側から拘束される。
【0026】
なお、駆動装置全体の構成については前記特許文献1,2に記載されたものをはじめとして従来から周知のものがそのまま適用可能である。
【0027】
前記中心軸部12の軸方向中間部には、当該中心軸部12から径方向外側に突出する大径円柱状のドラム本体部16が形成されている。そして、このドラム本体部16の外周面上に複数(図例では6つ)のチップ装着部18が形成され、これらのチップ装着部18にそれぞれ前記ロール紙切断用チップ20(以下「チップ20」と略称する。)が着脱可能に装着されるようになっている。
【0028】
各チップ20は、略正三角形状の断面をもつ三角柱状に形成され、その3つの稜線部分21,22,23にそれぞれ切断刃が形成されている。各チップ20は前記ドラム本体部16の軸長よりも大きな全長を有しており、当該ドラム本体部16への装着時に当該ドラム本体部16から軸方向両側にはみ出す部分に複数の位置決め用凹部25が形成されている。これらの位置決め用凹部25は、前記稜線部分21,22,23の間にそれぞれ位置し、図例では軸方向からみて弓型の形状を有している。
【0029】
なお、図例ではチップ20全体が柱状部であるものを示しているが、本発明は当該柱状部に加えて他の形状部分を含むチップを特に除外するものではない。
【0030】
一方、前記チップ装着部18は、ドラム本体部16の軸方向と略平行な方向に延びる形状を有し、具体的には、チップ嵌入溝18aとこれに隣接する押え部材嵌入溝18bとが合体した溝状をなしている。
【0031】
前記チップ嵌入溝18aは、前記稜線部分21,22,23のうちの任意の稜線部分が嵌入可能な形状(60°の角度を挟むアリ溝状)に形成され、このチップ嵌入溝18aにいずれかの稜線部分(図2では稜線部分22)が嵌入された状態でこれに隣接する稜線部分(図2では稜線部分23)がドラム本体部16の外周面から径方向外側に突出し、かつ当該稜線部分がカッタドラム10の回転中心軸と略平行となる姿勢をとるようになっている。
【0032】
前記押え部材嵌入溝18bは、ドラム本体部16の軸方向と平行な方向に延びる押え部材32が嵌入可能な形状を有している。この押え部材32は、前記チップ嵌入溝18a内に嵌入されたチップ20の3つの面のうち当該チップ嵌入溝18aに嵌入されていない面(図2では右側面)に対して面接触可能な傾きをもつ押え面32aと、この押え部材32を厚み方向に貫通する段付きのボルト挿通孔32bとを有している。そして、前記押え面32aが前記チップ20の面に当接した状態で前記ボルト挿通孔32bに外側からボルト34が挿入され、ドラム本体部16側に形成されたねじ孔16aにねじ込まれることにより、当該押え部材32がドラム本体部16側に締結され、かつ、その締結に伴って前記押え面32aがチップ20をチップ嵌入溝18aの奥方へ押圧して当該チップ20をチップ嵌入溝18a内に固定するようになっている。
【0033】
すなわち、各チップ装着部18では、前記押え部材32の着脱によってチップ20が着脱可能に装着される。
【0034】
なお、押え部材32の外周面は、その装着状態においてドラム本体部16の外周面と略合致する円筒面とされている。
【0035】
一方、ドラム本体部16の軸方向両端面において各チップ装着部18の底部に相当する部分にもねじ孔16bが設けられている。そして、これらのねじ孔16bに適当な直径の頭部30bをもつ位置決め用ボルト30の雄ねじ部30aをねじ込むことにより、当該頭部30bがチップ20の底側の位置決め用凹部25に嵌まり込んで当該チップ20を軸方向外側から拘束する(すなわち軸方向の位置決めを行う)ようになっている。
【0036】
前記各チップ20の端面中央部には、当該チップ20同士を識別するための識別表示20m(図2に示す例では連続番号「1」「2」…)が設けられるとともに、ドラム本体部16の端面にも各チップ装着部18の近傍部分に識別表示16m(同図の例では連続番号「1」「2」…)が設けられ、各チップ20に対応するチップ装着部18を一目で識別できるようになっている。また、各チップ20の端面には、稜線部分21,22,23の近傍位置にそれぞれ識別表示21m(図例では「A」)、識別表示22m(図例では「B」)、及び識別表示23m(図例では「C」)も設けられ、稜線部分21〜23同士の識別もできるようになっている。
【0037】
次に、このロール紙切断ローラの使用方法について説明する。
【0038】
まず、ドラム本体部16の各チップ装着部18に当該チップ装着部18に対応するチップ20をそれぞれ装着する。具体的には、チップ20におけるいずれか一つの稜線部分(図2に示す例では稜線部分22)をチップ装着部18のチップ嵌入溝18a内に嵌入し、これに隣接する押え部材嵌入溝18b内に押え部材32を嵌入してボルト34で締め付ける。これにより、押え部材32の押え面32aがチップ20の面のうち前記チップ嵌入溝18に嵌入されていない面(図2では稜線部分21,23で挟まれた面)をチップ嵌入溝18に向けて押圧する状態となる。
【0039】
このようにして各チップ20を装着した後、その使用の前に、当該装着状態のまま各チップ20の稜線部分(図例では稜線部分23)に切断刃を成形する工程を行う。この実施の形態では、図2及び図4〜5に示すように、先端側に向かうに従って幅が狭くなる台形断面の切断刃を形成するようにし、その切断刃成形工程は、図3に示す先端面形成工程と図4に示す側面形成工程とに分けられる。
【0040】
先端面形成工程は、図3(a)(b)に示すように、全てのチップ20を各チップ装着部18に装着し、かつ、カッタドラム10の回転中心軸部12の両端を図略の駆動装置に装着した状態で、当該カッタドラム10を回転駆動する一方、先端面研削用の円筒状の砥石40を前記カッタドラム10の回転方向と逆方向に高速回転させながら当該砥石40の外周面を前記チップ20の稜線部分(図例では稜線部分23)に当てることにより行う。この工程により、全てのチップ20の稜線部分23の先端が同時研削されて当該先端に切断刃先端面が形成されることとなる。
【0041】
これに対して側面形成工程は、図4(a)(b)に示すように外周部両面に切断刃側面の傾きに対応した傾きをもつ傾斜面41,42が形成された砥石40を用い、その傾斜面41,42を稜線部分(図例では稜線部分23)の両側面に順次あてがい、かつ、稜線部分長手方向に当該砥石40を送ることにより行う。あるいは図5に示すように外周面にV溝44が形成された砥石40を用いてもよく、その場合には、当該V溝部分を稜線部分23に圧接させることにより両側面を同時に研削加工することが可能になる。
【0042】
なお、砥石40の具体的な材質については、チップ20の材質等に応じて適宜選定すればよい。チップ20の材質としては、超硬合金、セラミックス、超硬合金からなる本体の稜線部分(切断刃が形成される部分)にダイヤモンドを固着させたもの等が好適であり、これに用いる砥石40としては、ダイヤモンドやCBNを砥粒として含む超砥粒砥石等が好適である。また、例えば超硬合金製のチップ20に対して前記砥石40で切断刃を成形した後に当該切断刃の表面にDLC等をコーティングしたものも好適である。
【0043】
以上のように各チップ20をドラム本体部16に装着した状態で切断刃を成形した後、その装着状態のまま使用する(すなわち各切断刃を用いてロール紙を切断する)。具体的には、前記特許文献1,2にも示される装置と同様、図示のロール紙切断ローラと図略の送りローラとを微小隙間をおいて対向させ、両ローラを互いに逆向きに回転させながら前記微小隙間にロール紙を供給することにより、このロール紙をチップ20の配列ピッチに相当する寸法でチップペーパーの切り出しを行うことが可能になる。
【0044】
なお、本発明は、必ずしも切断刃の成形直後にその使用を行うものに限らず、切断刃成形後に一旦チップ20をチップ装着部18から取り外した後に再度チップ装着部18に装着するようにしてもよい。例えば使用前に予めチップ20の全ての稜線部分21〜23に切断刃を形成しておけば、チップ20の装着姿勢を替えるだけで切断刃の交換を迅速に行うことが可能となり、加工効率を向上させることが可能になる。
【0045】
ただし、前記チップ20を切断刃成形後にチップ装着部18から一旦取り外した場合、当該チップ20をチップ装着部18に再装着する際、原装着状態と再装着状態とのずれによってチップ20の切断刃の位置等に誤差が生じるおそれがあるが、前記のように各チップ20をカッタドラム10に装着した状態で切断刃を成形してからそのまま使用に供すれば、前記切断刃の位置ずれなどを伴うことなくより高い精度でロール紙の切断を行うことが可能になる。
【0046】
例えば、図1(b)に示すように、ドラム中心からチップ20の底面までの距離をA、チップ20の高さ寸法をBとすると、チップ20の切断刃の回転半径HはH=A+Bで表されることになるが、ここで前記ボルト34の締め付け等でチップ20の高さ寸法Bが変化したり、チップ20とチップ嵌入溝18aの底面との間に異物が噛み込まれたりすると、切断刃の回転半径Hが切断刃成形直後の回転半径から変化してしまうおそれがあるのに対し、チップ20を装着した状態で切断刃の成形を行ってそのまま使用に供すれば、前記切断刃回転半径Hを切断刃成形時の寸法に保ったまま高精度でロール紙の切断を行うことが可能になる。
【0047】
なお、前記切断刃成形後にチップ20を一旦チップ装着部18から取り外す場合でも、各チップ20の成形時に当該チップ20が装着されたチップ装着部18と同じチップ装着部18に当該チップ20を装着して使用に供するのが好ましい。これにより、ドラム中心からチップ20の底面までの距離Aにばらつきがある場合でも、ドラム回転中心から切断刃までの距離(切断刃回転半径)Hを一定に揃えることが可能になる。
【0048】
特に、図示のように各チップ装着部18またはその近傍部分と各チップ20とに相互の対応関係を識別するための識別表示16m,20mが設けられたものでは、その識別表示を頼りに各チップ20を間違いなく当該チップ20に対応するチップ装着部18(当該チップ20の成形時に当該チップ20が装着されたチップ装着部18)に装着できる利点が得られる。
【0049】
以上示したいずれの使用方法においても、前記チップ20及びカッタドラム10からなるロール紙切断ローラを用いることによって、一つのチップ20で3つの切断刃を用いることが可能になり、従来のようにドラム外周面に切断刃が一体成形されているものに比べ、製造コスト及び経済性は格段に向上する。すなわち、いずれかの切断刃に損傷が生じ、あるいは切れ味が低下した場合には、その切断刃が成形されたチップ20を取り外して当該切断刃が成形された稜線部分とは別の稜線部分が新しく径方向外側に突出する姿勢に替えて(具体的には60°回転させて)当該チップ20を再装着することにより、特に部品の交換を行わずして稜線部分の交換(すなわち切断刃または切断刃成形部の交換)が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本発明の実施の形態にかかるロール紙切断ローラの断面側面図、(b)は同ローラの正面図である。
【図2】前記ロール紙切断ローラの要部を示す一部断面正面図である。
【図3】(a)は前記ロール紙切断ローラにおける切断刃の成形工程であって先端面形成工程を示す一部断面側面図、(b)はその正面図である。
【図4】(a)(b)は前記ロール紙切断ローラにおける切断刃の成形工程であって側面形成工程を示す断面正面図である。
【図5】前記側面形成工程の変形例を示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 カッタドラム
16 ドラム本体部
18 チップ装着部
18a チップ嵌入溝
18b 押え部材嵌入溝
20 ロール紙切断用チップ
21,22,23 稜線部分
32 押え部材
32a 押え面
40 砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるカッタドラムの外周面上に着脱可能に装着され、かつ、当該カッタドラムの軸方向に延びる切断刃を備えたロール紙切断用チップであって、略正三角形の断面をもつ柱状部を含み、当該柱状部の各稜線部分が切断刃成形部とされていることを特徴とするロール紙切断用チップ。
【請求項2】
中心軸回りに回転駆動されるカッタドラムと、このカッタドラムの外周面上の複数の位置にそれぞれ装着される請求項1記載のロール紙切断用チップとを備えたロール紙切断ローラであって、前記カッタドラムの外周面上には、前記ロール紙切断用チップの柱状部の任意の稜線部分が当該カッタドラムの径方向外側に突出しかつ当該稜線部分が当該カッタドラムの回転軸と略平行となる姿勢で当該ロール紙切断用チップが着脱可能に装着される複数のチップ装着部が当該カッタドラムの周方向に並ぶ複数の位置に設けられていることを特徴とするロール紙切断ローラ。
【請求項3】
請求項2記載のロール紙切断ローラにおいて、前記各チップ装着部は、前記カッタドラムの回転軸と略平行な方向に延びて前記ロール紙切断ローラの柱状部の任意の稜線部分が嵌入可能な形状をもつチップ嵌入溝を有することを特徴とするロール紙切断ローラ。
【請求項4】
請求項3記載のロール紙切断ローラにおいて、前記各チップ嵌入溝に対して周方向に隣接する位置に押え部材嵌入溝が形成されるとともに、この押え部材嵌入溝に嵌入された状態で前記カッタドラムに締結されることにより前記ロール紙切断用チップの柱状部の面のうち前記チップ嵌入溝に嵌入されていない面を当該チップ嵌入溝に向けて押える押え面をもつ押え部材を備えたことを特徴とするロール紙切断ローラ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載のロール紙切断ローラにおいて、前記各ロール紙切断用チップに互いに異なる識別表示が設けられるとともに、前記カッタドラムの各チップ装着部またはその近傍部分に当該チップ装着部に装着されるロール紙切断用チップに設けられた識別表示に対応する識別表示が設けられていることを特徴とするロール紙切断ローラ。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載のロール紙切断ローラに用いられる各ロール紙切断用チップの稜線部分に切断刃を成形する方法であって、当該ロール紙切断用チップを前記カッタドラムのチップ装着部に装着した状態で当該カッタドラムの外周面から突出する稜線部分に砥石を接触させることにより当該稜線部分を研削して切断刃を成形することを特徴とするロール紙切断ローラの切断刃成形方法。
【請求項7】
請求項6記載のロール紙切断ローラの切断刃成形方法において、前記カッタドラムの各チップ装着部にそれぞれロール紙切断用チップを装着した状態で当該カッタドラムを回転駆動しながら各ロール紙切断用チップの柱状部の稜線部分の先端に砥石を接触させることにより切断刃の先端面を形成する工程を含むことを特徴とするロール紙切断ローラの切断刃成形方法。
【請求項8】
請求項2〜5のいずれかに記載のロール紙切断ローラを使用する方法であって、当該ロール紙切断ローラにおけるカッタドラムのチップ装着部にロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの稜線部分に砥石を接触させることにより当該切断刃を成形し、かつ、その成形時に前記ロール紙切断用チップを装着したチップ装着部と同じチップ装着部に当該ロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの切断刃を用いてロール紙の切断を行うことを特徴とするロール紙切断ローラの使用方法。
【請求項9】
請求項8記載のロール紙切断ローラの使用方法であって、当該ロール紙切断ローラにおけるカッタドラムのチップ装着部にロール紙切断用チップを装着した状態で当該ロール紙切断用チップの稜線部分に砥石を接触させることにより当該切断刃を成形した後、その装着状態のまま当該切断刃を用いてロール紙の切断を行うことを特徴とするロール紙切断ローラの使用方法。
【請求項10】
請求項2〜5のいずれかに記載のロール紙切断ローラを使用する方法であって、前記各ロール紙切断用チップを使用する前に予め当該ロール紙切断用チップの全ての稜線部分に切断刃を成形しておくことを特徴とするロール紙切断ローラの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2004−330407(P2004−330407A)
【公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−313503(P2003−313503)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)