ロール装置を用いて軟質支持体を架橋性液状シリコーン組成物でコーティングする際のミストの出現を防止する方法
本発明は、紙又は合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル等)又はさもなくば織物(テキスタイル)のシートのような様々な軟質支持体を、高速ロールを使用してシリコーンでコーティングする一般的な分野に関する。本発明は、高速度で運転されるロールコーティング装置によって軟質支持体を架橋コーティングの前駆体である液状シリコーン組成物でコーティングする際のミストの出現を防止するための効果的な方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙又は合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル等)又はさもなくば織物(テキスタイル)のシートのような様々な軟質支持体を、高速ロールを使用してシリコーンでコーティングする一般的な分野に関する。
【0002】
より正確に言えば、本発明は、軟質材料を重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートによって架橋できる1種以上のポリオルガノシロキサンを含有する液状組成物でコーティングして、特に剥離性(非粘着性)及び/又は撥水性(疎水性)の特性を有する保護フィルム又はコーティングを形成させることに関する。
【背景技術】
【0003】
軟質支持体は、紙、板紙、プラスチックフィルム又は金属フィルムであることができる。これらのシリコーンコーティングされた支持体の用途は、例えば、食品用の紙(菓子用の型、包装)、粘着ラベル/テープ、パッキング及びシール材料等である。
【0004】
架橋性の液状シリコーンによるこれらの軟質支持体のコーティングは、連続的に且つ非常に高速で運転されるコーティング装置によって実施される。これらの装置は、特にプレスロール及びコーティングロールを含む数個のロールから成るコーティングヘッドを含み、これに、互いに結びつけられた一連のロールによって架橋性液状シリコーン組成物が連続的に供給される。軟質支持体のウェブは、プレスロールとコーティングロールとの間を高速度で走行し、それによりその面の少なくとも一方を、コーティングヘッドの下流に位置した架橋手段によって架橋されるように予定されたシリコーンフィルムでコーティングされる。これらの架橋手段は、例えば、熱エミッター、放射線(例えば紫外線)エミッター又は電子線エミッターであることができる。
【0005】
生産性の競争において、剥離性シリコーンでコーティングされた軟質支持体の製造業者は、軟質支持体ウェブをさらに高い線速度で走行させるのに好適な液状シリコーンコーティング配合物を求めている。高速コーティングのための新規のシリコーン配合物についてのこの探求において、経済的要因はもちろん取るに足らないことではない。
【0006】
しかしながら、連続式コーティング機における高速度は、コーティングロールから走行している軟質支持体ウェブへの液状シリコーンフィルムの転写の問題と同義であることが知られている。これらの転写(層剥離)の問題は、特に、コーティングヘッド周辺の領域、より詳しくは回転ロールの間及び/又はコーティングロールとコーティングされるべき軟質支持体との間の接触部におけるミスト又はエーロゾルの出現(「ミスティング」又は「フォギング」)となって現れてくる。このミスト又はこのエーロゾルの密度は、走行線速度が増大し、従ってロールの回転速度が増大する時に、大きくなる。
【0007】
この現象は、まず第1に、消耗品の損失という結果を招き、そして特に下流(例えばオーブン内)での支持体へのコーティング液の液滴の付着を結果として招き、これは、コーティングの品質に非常に有害である。
【0008】
さらに、この望ましくないミストの形成は、ロールコーティング装置の近くで多量のエーロゾルに曝される作業者の労働衛生及び安全性という観点から、有害な結果を及ぼす。このエーロゾルは有毒なことがある。
【0009】
さらに、このミスティングは、ロールコーティング装置の急速な汚染をもたらし、メンテナンスの点での制約及び早期の損耗をもたらす。
【0010】
このミストの結果を未然に防ぐために、コーティングヘッドの周囲に該ミストを捕捉するための吸気装置を設置することが一般的に行われている。
【0011】
さらに、当業者であれば、この現象を防止するためのコーティングヘッドに対する多数の調整法を知っている。これらの数例として、以下のものが挙げられる:
A.速度を低下させる(これは生産性にとって不利である)、
B.シリコーンの付着率を低下させる(これは、得ることが望まれる軟質シリコーン支持体の特性(外観、被覆性、剥離性、機械的性質)にとって不利である)、
C.コーティングロールの接線速度と紙の線速度との間の相違を増大させる(しかしながら、ある一定の相違を超えると、被覆された層の均一性がひどく損なわれる。さらに、この手段によってミストの密度を減少させることはできるが、コーティング速度を有意に増大させるほど充分にミストを取り除けるわけではない。)、及び
D.コーティングロールとプレスロールとの間の圧力を大きくする(この場合もまた、ある一定の制限内であり、そしてこのミスト形成現象を有利に抑制するわけではない)。
【0012】
ロールコーティング機でのミストの形成を制御するための別の方法は、液状シリコーンコーティング組成物の配合を手を加えることから成る。
【0013】
この方法に従えば、液状シリコーンコーティング液を構成するポリオルガノシロキサンの数平均重合度を減少させ、その結果、シリコーンコーティング浴の粘度を低下させてミストの密度を抑制することが知られている。
【0014】
これらの周知の方法には、得ることが望まれるシリコーン軟質支持体の特性、特に剥離性を実質的に変性させるという重大な欠点がある。
【0015】
シリコーン配合によるこの方法の例示として、国際公開WO2004/046248号を挙げることができる。この国際公開には、軟質(可撓性)支持体上のコーティング用途のためのミスティング防止添加剤として用いられる星形枝分かれシリコーンポリマーの使用が記載されている。これらの星形枝分かれシリコーンポリマーを調製するための方法は、反応性≡SiH単位を含有するポリオルガノシロキサンと長鎖オレフィンとを(ヒドロシリル化によって)不完全に反応させて部分置換ポリヒドロオルガノシロキサンを得て、これを次いでヒドロシリル化によりMQタイプのビニルシリコーン樹脂及び長鎖ジオレフィンと反応させることから成る。このような組成物は比較的複雑であり、それ故に得るのに費用がかかることは明らかである。さらに、これらのものは、高速度ロールを使用してシリコーンで被覆する時のミスティングを制御することに関して、いまだ改善の余地が残っている。
【0016】
欧州特許出願公開第0716115号には、高速度ロールコーティング用のシリコーン組成物の製造方法が開示されており、この組成物は、ミストの密度を低下させることができると示されている。この方法によれば、トリメチルシリルを末端基とする重合度12のポリジメチルメチルヒドロシロキサン、末端基がジメチルビニルシロキシ基であり且つペルフルオロエチルブチル官能基及びメチルビニル官能基で置換された重合度300のポリジメチルシロキサン0.01%、ポリプロピレングリコール並びに随意としてステアリルアルコール又はオレイルアルコールが用いられる。これは、ポリオキシプロピレン基によって官能化されたポリジメチルシロキサンを生じさせる。これらの官能化ポリジメチルシロキサンは、ミスト形成を減らすシリコーンコーティング組成物を形成させるために、他の官能化ポリジメチルシロキサン(例えばヘキセニル単位によって官能化されたもの)及び白金をベースとしたヒドロシリル化触媒と組み合わされる。この官能化単位は、ステアリン酸又はオレイン酸残基のような疎水性残基であることができる。
【0017】
米国特許第4808391号は、シリコーンをベースとしたインク及びワニスに関し、より正確には、これらのインク/ワニスを高速度で運転されるロールコーティング機を使用して基材に塗布する方法に関する。この特許文献は、特に、ビニルを末端基とし、25℃で15000〜50000mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンを含む組成物を開示している。これらの液状コーティング組成物は、白金をベースとした触媒及び高い比表面積を有するシリカ(特にヒュームドシリカ)から成る流動学的添加剤をさらに含む。
【0018】
米国特許第6057033号には、軟質支持体上にコーティングして、UV下でカチオン架橋させた後に剥離性コーティングを形成させるためのシリコーン組成物が開示されている。これらの組成物は、ポリオルガノシロキサンに加えて、15〜100μmの平均長さ及び5〜40μmの平均厚さを有するセルロース繊維を含む。使用されるポリオルガノシロキサンは、UV下でラジカル架橋するのを可能にさせるアクリルオキシ又はメタクリルオキシタイプの架橋性基で官能化されたポリオルガノシロキサンである。
【0019】
組成物中に組み込まれるセルロース繊維は、非脆性の架橋されたシリコーン剥離コーティングを得るという技術上の課題に対する解決策を提供することができる。セルロース繊維は、支持体へのシリコーンコーティングフィルムの転写、打抜き抵抗、機械的特性(引張り抵抗及び引裂抵抗)、紙に対するコーティングの付着性、紙内へのコーティング液の吸収の減少及び付随的にはミスト形成の減少に関して改善をもたらすことが示されている。
【0020】
この最後の点について、米国特許第6057033号には、セルロース繊維がもたらしたミストの減少を評価するための定量的要素は何ら与えられていない。この減少は全く不充分なままであると考えるだけの充分な理由がある。
【0021】
また、参考までに、特開昭62−64011号公報が挙げられる。この特許文献には、フィルム形成用樹脂と溶剤とを含有するコーティング液が開示されており、このコーティング液はさらに、1〜10μmの直径を有するワックス粒子であって最も粗大な粒子の直径が支持体に適用された未乾燥コーティングフィルムの厚さの150%以下であるものも含有する。この種のコーティング液は、一見したところではミストの形成が抑制されるため、少なくとも10〜30m/分のコーティング速度の増大を可能にするようだが、この特許文献の教示はシリコーンコーティングに関するものではないので無視すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開WO2004/046248号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0716115号
【特許文献3】米国特許第4808391号
【特許文献4】米国特許第6057033号
【特許文献5】特開昭62−64011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
このような従来技術の記述に対して、本発明の本質的な目的の一つは、高速度で運転されるロールコーティング装置によって軟質支持体を架橋コーティングの前駆体である液状シリコーン組成物でコーティングする時のミスティングを制御するための効果的な方法を提供することにある。
【0024】
本発明の別の本質的な目的は、高速度で運転されるロールコーティング装置によって軟質支持体を架橋させることが予定されるシリコーン組成物でコーティングする時のミスティングを制御するための簡単且つ経済性のよい方法を提供することにある。
【0025】
本発明の別の本質的な目的は、シリコーンコーティングの前駆体であって高速ロールコーティングの際にミスティングをもはや示さない新規の液状シリコーン組成物Xを提供することにある。
【0026】
本発明の別の本質的な目的は、ロールコーティング装置を用いて軟質支持体を架橋して剥離性コーティングになることができるシリコーン組成物でコーティングする際のミスティングを抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの全ての目的及び他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、まず最初に、軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法を提供する。この方法は、次の工程(I)及び(II):
(I)次の成分:
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含み、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程;
(II)この液状シリコーン組成物Xをロールコーティング装置によって軟質支持体上にコーティングする工程:
を含み、
この方法は、工程(a)において前記液状シリコーン組成物Xに下記の特徴を有するミスティング防止用添加剤Eを混合することを特徴とする。このミスティング防止用添加剤Eの特徴とは、
●(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈した又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈した)液体の形にあり、そして
●次の手順(1)及び(2):
(1)下記化合物(a)〜(d):
(a)次式:
・(R1)3SiO1/2(M単位)、
・(R1)2SiO2/2(D単位)、
・R1SiO3/2(T単位)及び
・SiO4/2(Q単位)
(これら単位中、
基R1は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基及び3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される)
のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を構造中に含む有機ケイ素樹脂F(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈したもの又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈したもの)
(ここで、
・前記の単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位であり、
・この有機ケイ素樹脂Fは基≡SiOH及び/又は≡SiOR2を含み、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲であり、R2は直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基である);
(b)次の一般式:
R3dSiX4-d
(ここで、R3は1〜5個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、dは1以下の平均値を有する)
の有機ケイ素化合物N;
(c)前記有機ケイ素化合物Nの部分加水分解縮合物L;
(d)前記有機ケイ素樹脂Fと前記有機ケイ素化合物N又は前記縮合物Lとの縮合物M:
から選択される1種以上の化合物と、
(e)反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(ここで、RはC1〜C40カルビノール基である)を1分子当たりに少なくとも1個有する少なくとも1種のオルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーG
とを、
・少なくとも1種の重縮合触媒H、
・随意としてのフィラーZ、及び
・随意としての1種以上の希釈剤J'又は溶剤J''
の存在下で好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において反応させ;そして
(2)随意に縮合触媒Hを除去し且つ/又は脱蔵(揮発成分除去)を行い且つ/又は中和した後に、前記ミスティング防止用添加剤Eを単離する:
によって得られたものであることである。
【0028】
有機ケイ素樹脂Fの例には、当業者に周知の方法によってアルコキシシラン群又は式(R1)3SiCl、(R1)2Si(Cl)2、R1Si(Cl)3及びSi(Cl)4のものより成る群から選択されるクロロシラン群を同時加水分解及び/又は同時縮合することによって調製される有機ケイ素樹脂が包含される。これらの樹脂は、商品として入手できる周知の分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、式(R1)3SiO0.5(M単位)、(R1)2SiO(D単位)、R1SiO1.5(T単位)及びSiO2(Q単位)のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を有し、これらの単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位である。基R1は、該樹脂がケイ素原子1個当たりに約0.8〜1.8個の基R1を含有するように分配される。さらに、これらの樹脂は完全には縮合しておらず、ケイ素原子1個当たりに約0.001〜1.5個のOH基及び/又はアルコキシ基OR2を依然として有する。基R1及びR2は上で規定した通りである。
【0029】
有機ケイ素樹脂Fの例には、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂並びにMDT、MvinylQ、MDvinylQ及びQQOH樹脂が包含され、基OH及び/又はOR2はM、D及び/又はT単位が有し、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲である。
【0030】
有機ケイ素化合物Nの例には、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、(CH2=CH)Si(OCH3)3、C6H5Si(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、(CH2=CH)Si(OC2H5)3及びSi(OC2H4OC2H5)4が包含される。
【0031】
化合物Gは、1分子当たりに少なくとも1個の反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(Rはカルビノール基である)を有し、式(I)及び(II)の化合物より成る群から選択される:
【化1】
(ここで、
i、j、k、l、m及びnは0以上の数であり、i+kは0より大きく、好ましくはm=0であり且つs=0であり、
o、p、q、r、s及びtは0以上の数であり、p+tは0より大きく、
MはR10R11R12SiO1/2であり、
DはR13R14SiO2/2であり、
DRはRR15SiO2/2であり、
TはR16SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
MRはRR17R18SiO1/2であり、
DOHはR19R20(OH)SiO1/2であり、
TOHはR21(OH)SiO2/2であり、
RはC1〜C40カルビノール基であり、そして
記号R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれ、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル又は3,3,3−トリフルオロプロピル)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、
・アルケニル、好ましくはビニル又はアリル、
・エポキシド−エーテル又はポリエーテルタイプの1種以上の官能基を含む基、並びに/或は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/又はアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす)。
【0032】
1つの好ましい実施態様において、オルガノシロキサンGは、オルガノシロキサンポリマー、好ましくは線状ポリジメチルシロキサンであって、少なくとも1個の鎖末端単位≡SiOHを有するものである。
【0033】
化合物Gとして本発明にとって特に好適なものは、次式の化合物である。
【化2】
(ここで、fは1≦f≦2000、好ましくは1≦f≦1000である。)
【0034】
ミスティング防止用添加剤Eの調製方法において規定された条件、即ち反応の性状(縮合反応)が、非常に顕著なミスティング防止特性を有する液体の形の添加剤を得ることを可能にする。いずれか1つの科学理論やメカニズムに限定されることは望まないが、本発明に従うミスティング防止用添加剤Eのこの特性は、伴われる反応の性状(縮合反応)によるものであるように思われ、これが高速度で運転されるロールコーティングシステムにおいてミスティングを制御するのに有用な粘弾性を有する分岐状ポリマーを得ることを可能にする。これらの粘弾性は、ミスティング防止用添加剤Eの非常に粘りけのある外観によって特徴付けられる。
【0035】
本発明に従うミスティング防止用添加剤Eは、コーティングの際のミスティングの量を減らすのに充分な量で用いられる。当業者はもちろん、通常の試験によって難なくこれらの量を決定することができる。例えば、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xの総重量に対して0.1〜15重量部の量で、本発明に従う添加剤を用いることができる。
【0036】
「縮合」とは、≡SiOH(又は≡SiOR)単位間の反応を意味し、シロキシ結合≡Si−O−Si≡の生成及び水(又はアルコール)の遊離をもたらすものである。この反応は、有効量の縮合触媒Hによって触媒される。
【0037】
当業者は、用いる触媒のタイプに従って縮合触媒Hの有効量を決定する方法を知るだろう。本発明の目的のための有効量は、反応を開始させるのに足りる量である。この量は、できるだけ最少量で組成物を経時的に効率良く保存することが可能になるように決定するのが好ましい。有効触媒濃度は、反応させるべきオルガノシロキサンポリマーの重量に対して1×10-6〜5重量部の範囲、好ましくは1×10-5〜2重量部の範囲にある。縮合反応を開始させることができる任意の触媒が好適であろう。縮合又は重縮合触媒は、スズ、チタン及びジルコニウムから選択される金属の化合物であるのが一般的である。従って、スズのモノカルボキシレート及びジカルボキシレート、例えば2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、原子価IVのスズの六配位キレート等、例えば欧州特許公開第036769号公報又はNollの著書"Chemistry and technology of silicones"、Academic Press社、1968年、第2版、P205、307に記載されたものを用いることができる。
【0038】
また、以下のものを用いることもできる:
・塩基性触媒、例えば水酸化カリウムKOH、カリウムシリコネート、ホスファゼン類、カルベン類、KOHとkryptofixのようなクリプタンドとの組合せ物、又は
・酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、Tonsil(登録商標)及びAmberlyst(登録商標)タイプのスルホン樹脂。
【0039】
架橋禁止剤Dは、所定のポットライフを有するすぐ使用できる組成物を提供するために一般的に用いられる。組成物中の触媒系の性状及びその濃度に作用する(所定の架橋速度をもたらす)と共に、遅延剤の性状及びその濃度にも作用することで、ポットライフを調節することが可能となる。触媒系の活性は、加熱することによって回復する(熱活性化)。
【0040】
架橋禁止剤Dは、好ましくは、アセチレン性アルコール(エチニルシクロヘキサノール:ECH)、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、マレイン酸ジアルキル(マレイン酸ジエチル若しくはジアルキルアルキニルジカルボキシレート)(ジエチルアセチレンジカルボキシレート)又はポリオルガノシロキサン(有利には環状であり且つ少なくとも1個のアルケニルで置換されたもの)(テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい)、又はマレイン酸アルキルから選択される。
【0041】
アセチレン性アルコール(例えば仏国特許第1528464B号及び仏国特許第2372874A号を参照されたい)は、本発明に従って有用な遅延剤である。その例には、次のものが包含される:
・1−エチニルシクロヘキサン−1−オール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
【0042】
これらのα−アセチレン性アルコールは、商品となっている。
【0043】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物X中には、架橋したシリコーンコーティングの剥離特性を調節することを可能にするために、少なくとも1種の粘着性調整剤系Kを用いるのが有利である。
【0044】
ポリマー系支持体を有する粘着テープや剥離紙用のシリコーン配合物中の粘着性調整剤系Kの例として、欧州特許公開第0601938A号公報を挙げることができる。その開示内容すべてを本明細書に取り入れる。
【0045】
1つの態様において、粘着性調整剤系Kは、
・重付加によって架橋する配合物の場合には:式MDViQ;MMViQ;MMViDViQ;MMViDDViQ;MDHQ又はMMHQ(ここで、Viはビニル基である)のポリオルガノシロキサン樹脂であり、
・重縮合によって架橋する配合物の場合には:式MOHQのポリオルガノシロキサン樹脂であり、そして
・放射線下で架橋する配合物の場合には:式MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂である。
【0046】
希釈剤J'及び/又は溶剤J''の例には、脂肪族及び芳香族溶剤、塩素化溶剤、例えばホワイトスピリット、ケトン類、例えばメチルエチルケトン及びアセトン、アルコール類、例えばイソプロパノール及びn−ブチルアルコール、飽和、不飽和又は芳香族炭化水素、有利にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン及びベンゼン、「ナフサ」と称される石油留分;C7〜C8石油留分、縮合反応に対して反応性ではないポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、及びハロゲン化炭化水素、並びにそれらの混合物が包含される。
【0047】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物XのポリオルガノシロキサンAは、周囲温度又は加熱条件下においてこの場合には白金をベースとする金属触媒の存在下で重付加反応によって架橋するタイプのものであることができる。これらは、RTV(「室温加硫性」)と称される架橋性ポリオルガノシロキサン組成物又は「熱加硫性エラストマー」の略語であるHVEと称される重付加ポリオルガノシロキサン組成物である。
【0048】
二成分型又は一成分型RTV又は重付加HVEポリオルガノシロキサン組成物は、本質的に、一般的に金属触媒(好ましくは白金触媒)の存在下におけるヒドロシリル基とシリルアルケニル基との反応によって硬化又は架橋する。これらは、例えば米国特許第3220972号、同第3284406号、同第3436366号、同第3697473号及び同第4340709号の各明細書に記載されている。
【0049】
ポリオルガノシロキサンAはまた、湿分の作用下で一般的に金属触媒、例えばスズ化合物の存在下で重縮合反応によって室温において架橋するタイプのものであることもできる(重縮合RTV)。このタイプのポリオルガノシロキサンを用いた組成物は、例えば米国特許第3065194号、同第3542901号、同第3779986号及び同第4417042号の各明細書、並びに仏国特許第2638752号明細書(一成分型組成物)並びに米国特許第3678002号、同第3888815号、同第3933729号及び同第4064096号の各明細書(二成分型組成物)に記載されている。
【0050】
これらの重縮合RTV組成物に用いられるポリオルガノシロキサンAは、ヒドロキシル基又は加水分解性基(例えばアルコキシ基)を有する直鎖状、分岐鎖状又は架橋したポリシロキサンである。この種の組成物は追加的に架橋剤を含有していてもよく、この架橋剤は特に少なくとも3個の加水分解性基を有する化合物、例えばシリケート、アルキルトリアルコキシシラン又はアミノアルキルトリアルコキシシランである。
【0051】
液状シリコーン組成物Xはまた、
・有効量のカチオン系開始剤系(熱開始剤及び/又は光開始剤)−有機金属錯体又はオニウムホウ酸塩タイプの開始剤、プロトン供与性有機溶剤(イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等)の存在下で、且つ/或は
・適宜にフリーラジカル開始剤の存在下で、化学線(UV)又は電子ビームによる活性化を介して、
カチオンルート又はラジカルルートによって架橋可能な1種以上のポリオルガノシロキサンAを含むこともできる。
【0052】
これらのポリオルガノシロキサンは例えば、直鎖状又は環状のビニルエーテルシリコーン及び/又はエポキシシリコーンである。これらの種類のエポキシ官能性又はビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、より特定的には独国4009889号明細書、欧州特許公開第0396130号、同第0355381号、同第0105341号の各公報、仏国特許第2110115号及び同第2526800号の両明細書に記載されている。エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、≡SiH単位を含有するオイルと1,2−エポキシ−4−ビニル−4−シクロハン(VCMX)又はアリルグリシジルエーテル等のエポキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。ビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、SiH単位を含有するオイルとアリルビニルエーテル又はアリルビニルエトキシベンゼン等のビニルオキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。
【0053】
本発明の方法の1つの好ましい態様において、シリコーンコーティングの前駆体であり、ミスティング防止用添加剤Eと混合される前記液状シリコーン組成物Xは、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・少なくとも1種の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0054】
この好ましい態様に従えば、ポリオルガノシロキサンAは、重付加によって架橋するタイプのものであって、式(III)のシロキシ単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IV)のシロキシ単位であるものである。
【化3】
{これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基であり、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である。}
【0055】
重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAの例には、ジメチルビニルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー、及びジメチルビニルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマーがある。
【0056】
架橋用有機ケイ素化合物Bは、式(V)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VI)の単位であるものである。
【化4】
(ここで、記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である。}
【0057】
架橋用有機ケイ素化合物Bの例には、例えば次のものがある。
・ヒドロジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサンポリマー、
・ポリ(ジメチルシロキサン)(メチルヒドロシロキシ)−α,ω−ジメチルヒドロシロキサンポリマー、
・MDDH:(ジメチル)ジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を含有し且つトリメチルシリル末端基を有するコポリマー、
・MHDDH:ジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を含有し且つヒドロメチルシリル末端基を有するコポリマー、
・MDH:トリメチルシリル末端基を有するヒドロメチルポリシロキサン。
【0058】
重付加触媒C1は、例えば白金族に属する少なくとも1種の金属から成る。この触媒は、より特定的には白金の化合物及びロジウムの化合物から選択される。特に、米国特許第3159601号、同第3159602号及び同第3220972号の各明細書並びに欧州特許公開第0057459A号、同第0188978A号及び同第0190530A号の各公報に記載された白金と有機物質との錯体、並びに米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号及び同第3814730号の各明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金金属の重量によって計算した重付加触媒C1の重量による量は、2〜400ppmの範囲であるのが一般的である。
【0059】
これらの成分に加えて、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xにはさらに、重付加により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋するシリコーン組成物において一般的な少なくとも1種の添加剤を含ませることができる。例えば顔料等を挙げることができる。
【0060】
フィラーZは、無機フィラーであるのが好ましい。これらのフィラーは、非常に微細に粉砕した製品の形を呈することができる。これらのフィラーには、熱分解法シリカ及び沈降シリカが包含される。これらの比表面積は、例えば40m2/g以上、通常は40〜300m2/gの範囲である。
【0061】
これらのフィラーZはまた、もっと粗大な製品の形、例えば1μm超の平均粒子直径を有する製品の形にあることもできる。斯かるフィラーの例には、粉砕石英、ケイ藻土シリカ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、様々な形のアルミナ(水和又は非水和)が包含される。それらの比表面積は、例えば30m2/g以下である。
【0062】
フィラーZは、様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面変性されていることができる。この有機ケイ素化合物は、この目的のために通常用いられるものであり、例えばオルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであることができる。被処理フィラーは、多くの場合、それらの重量の2%〜20%の有機ケイ素化合物を含有する。
【0063】
フィラーZは、粒度が異なる2タイプ以上のフィラーの混合物から成ることができる。従って、これらは例えば、40m2/g以上の比表面積を有する微粉砕シリカ30%〜70%と、30m2/g以下の比表面積を有する粗大シリカ70%〜30%とから成ることができる。
【0064】
本発明はさらに、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xであって、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む前記液状シリコーン組成物Xを提供する。
【0065】
1つの好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0066】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0067】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・少なくとも1種の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0068】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・少なくとも1種の粘着性調整剤系K、及び
・少なくとも1種の架橋禁止剤D
を含む。
【0069】
本発明は最後に、軟質支持体をシリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすために、前記のミスティング防止用添加剤Eを使用することにも関する。
【0070】
従って、本発明は、高速で運転されるロールコーティング装置を用いた軟質支持体(例えば紙、フィルム又はポリマーフィルム)のコーティングにおけるミストの生成を抑制するための、独創的であり、簡単であり、経済性がよく且つ信頼できる手段を提供するものである。実際の産業上の結果として、コーティングの品質にとって有害なこのミスティング現象を起こすことなく、運転速度をさらに高めることができる。本発明が提供する制御手段は、軟質支持体の少なくとも一方の面の上で得ることが望まれる架橋したコーティングの外観品質、被覆性、剥離性及び機械的特性(擦り落ち)に影響を及ぼさないという、無視できない利点をも有する。
【0071】
さらに、ミスティングが減少すれば、高速で運転されるロール上でのシリコーンコーティングのための工業用装置の周辺にいる作業員にとっての衛生上及び安全上の環境が有意に向上する。
【0072】
以下の実施例は、本発明の特定実施態様を例示するためのものであり、本発明の範囲をこれらの実施態様に限定するものではない。
【実施例】
【0073】
シロキシ単位:
M=(CH3)3SiO1/2
Q=SiO4/2
【0074】
(I)ミスティング防止用添加剤Eの調製:
【0075】
粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)DV-I+粘度計(スピンドルS34)を用いて25±2℃において測定した。
【0076】
例1:本発明のミスティング防止用添加剤E1の調製:
【0077】
アンカー型撹拌機を備え且つ窒素流出入り口を備えた1リットルの三つ口フラスコに、トリメチルシリル鎖末端を有するポリジメチルシロキサン(粘度:25℃において1000cP)150g、25℃において14000cPの粘度を有する鎖末端ヒドロキシル官能基含有ポリジメチルシロキサン72g及びケイ酸エチルの部分加水分解縮合物(部分加水分解ポリエチルシリケートと通常称される)7.2gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.9gを添加する。この混合物を130℃に加熱する。撹拌及び加熱を続ける。次いでシリカ(日本アエロジェル社から入手した200m2/gの比表面積を有する「Aerogel(登録商標)200」)5g及び25℃において50cPの粘度を有する鎖末端ヒドロキシル官能基含有ポリジメチルシロキサン4.7gを添加し、ホモミキサーを用いて均質に分散させる。180℃において4時間加熱を続けて反応を完了させる。次いで反応生成物を冷まして周囲温度にし、25℃において2600cPの粘度を有する粘りけのある透明な無色のミスティング防止用添加剤を得た。この全プロセスは、窒素雰囲気下で実施した。
【0078】
例2:本発明のミスティング防止用添加剤E2の調製
【0079】
ミスティング防止用添加剤を2工程で調製する。工程1では、超高分子量樹脂を得る。
【0080】
工程1:
【0081】
ディーン・スターク装置と一般的に称される装置及び凝縮器を備えた三つ口フラスコ中で、分子量(Mw)12900を有する一般式SiO1.3(OH)1.28Me0.12の固体状MQ樹脂(A)と、≡SiOH鎖末端を有する式HO(Me2SiO)15Hの線状ポリジメチルシロキサン(B)及びキシレンとを反応させることによって、超高分子量MQ樹脂を調製する。化合物(A)の分子量(Mw)は12900だった。化合物Bは、≡SiOH鎖末端を有する式HO(Me2SiO)15Hの線状ポリジメチルシロキサンであるのが好ましい。(A)/(B)の重量比は15.7/1とする。この反応混合物を撹拌しながら24時間加熱還流し(140℃)、その間にアンモニアガス、触媒を連続的に反応混合物に吹き込み、反応によって生成した水をディーン・スターク装置によって取り除く。反応終了時に、反応器を窒素でパージし、反応生成物(1)を含有する混合物を冷まして周囲温度にする。得られた樹脂のMwは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定して665000だった。
【0082】
工程2:
【0083】
上で調製したキシレン中に超高分子量MQ樹脂を56%含有する混合物52.2gを含有させた2リットルの三つ口フラスコに、トリメチルシロキシを末端基とするポリジメチルシロキサン771.6gを撹拌しながら装填する。この混合物を撹拌しながら5320Paにおいて180℃に1時間加熱してキシレンを除去する。次いでこの混合物を90℃まで冷まし、次いでシラノールを末端基とするポリジメチルシロキサン(3)384g及びイソプロパノール中のKOHの溶液(溶液1リットル当たりにKOH1.7モル)1.8gを添加する。この混合物を所望の粘度が得られるまで5330Pa下で90℃に加熱する。反応終了時に、KOH触媒を水1.92g中の酢酸0.18gで中和し、この混合物を冷めて周囲温度になるまで0.5時間撹拌する。得られた生成物は、粘りけがあり、25℃において31800cPの粘度を有していた。次いでTS-350シリカ(Cabot Corp.より入手したヘキサメチルジシラザンHMDZで処理したヒュームドシリカ)35gを添加し、ホモミキサーによって均質に分散させる。
【0084】
例3:本発明のミスティング防止用添加剤E3の調製:
【0085】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた1リットルの三つ口フラスコに、25℃において100mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン280g、25℃において14000mPa・sの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン505g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン165gを装填する。この混合物を撹拌し、次いでアルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)30.7gを添加する。45分間撹拌を続け、次いでシリカ(Rhodia社から入手した沈降シリカTixosil-365(登録商標))38.4gを添加し、ホモミキサーを用いて均質に分散させる。この混合物を次いで160℃に1時間加熱して反応を完了させ、次いで冷まして周囲温度にする。25℃において70000cP付近又はそれ以下の粘度を有する粘りけのある生成物が得られた。貯蔵時の粘度増大の問題を抑制するために、この生成物を、酢酸AcOHやポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和したり、非反応性ポリシロキサン中に希釈したりすることができる。
【0086】
例4:本発明のミスティング防止用添加剤E4の調製:
【0087】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた1リットルの三つ口フラスコに、25℃において100cPの粘度を有するトリメチルシリル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン280g、25℃において14000cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン505g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン165gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.76gを添加する。 この混合物を所望の粘度に達するまで110℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において68000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0088】
例5:本発明のミスティング防止用添加剤E5の調製:
【0089】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた350ミリリットルの三つ口フラスコに、25℃において14000cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン161g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン13.6gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.024gを添加する。この混合物を所望の粘度に達するまで130℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において91000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0090】
例6:本発明のミスティング防止用添加剤E6の調製:
【0091】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた350ミリリットルの三つ口フラスコに、25℃において3500cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン108g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン67gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.051gを添加する。この混合物を所望の粘度に達するまで110℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において100000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0092】
(II)ミスティング防止用添加剤としての試験
【0093】
(I)で調製したミスティング防止用添加剤E1〜E6を、ミスティング防止用途について試験した。観察された結果を、様々なロール回転速度について添加剤を用いて又は添加剤を用いずに測定されたミスティング量(mg/m3)として又はミスティングの比の形で、下記の表にまとめる。
【0094】
試験の説明
【0095】
高速で運転されるロールコーティング装置において生成するミストを分析して定量化するために、実験室規模で、再現性のある態様で運転され、900m/分超の線速度で紙テープを前進させることができる2本ロール装置(フランス国所在のErmap社から入手)を用いた。プレスロール/コーティングロールの2本のロールは、10cmの直径を有する。プレスロールはゴムで被覆されたものであり、コーティングロールはクロムで被覆されたものである。コーティングロールは、2本のロールの速度が同調するように、ダンベル形状にカットされたものである。プレスロールはモーターで駆動させることができ、コーティングロールと一定圧力で接触する。シリコーンコーティング液は、2本のロールの間隙に直接注がれる。この液の使用量は0.25ミリリットルとする。
【0096】
次いで、シリコーンポリマーA1(末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた、粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサン)と例1〜6に上記した生成物とを、ポリマー100重量部中に該生成物1〜4重量部の割合で混合することによって、様々な組成物を調製した。これらの組成物を、バレルローリング装置を用いて必要な時間均質化させる。上記の回転システムを用い、ロール上に対象製剤を塗り広げる。次いでロールの回転速度を次第に高める。同時に、ロール間の接触点付近に配置させた粒子カウンターと称される測定装置(フランス国所在のITS社より販売されているもの)によって、ミストの密度を測定する。ミスト密度測定結果は、所定測定速度における空気1m3当たりのシリコーンエーロゾルのmg数で表わされる。下記の表に、得られた結果をまとめる。
【0097】
【表1】
【0098】
例1の添加剤E1も、試験した添加剤E2〜E6と同様に、良好な結果を与える。
【0099】
紙支持体上のシリコーン剥離性コーティングの製造
【0100】
下記の物質を順次混合することによって、浴を得る。
・末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマー、
・本発明に従う添加剤(例2、3及び4)、
・ポリヒドロメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンコポリマーから成るオイル混合物(これら2つのタイプのコポリマーは、トリメチルシロキサン基でブロックされたものである)、
・ジビニルテトラメチルジシロキサン中の溶液状のPt含有触媒(カーステッド触媒)。
【0101】
混合物の割合は、最終浴中で、ビニル基の総モル数とヒドロシロキサン基の総モル数との間の比が1.8となり、白金濃度が50ppmとなり、エチニルシクロヘキサン−1−オール含量が配合物の重量に対して約0.15重量%となるように、計算する。さらに、本発明に従うミスティング防止用添加剤は、前記の末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマーに、配合物の総重量に対して1〜2重量%の割合で、添加する。これらの浴を次いで、コーティングヘッドが4本の湿式ロールを供えたヘッドであるコーティング基を用いて、「グラシン紙」と称される紙支持体をコーティングするために連続的に用いる。このヘッドの下流に、約195℃において空気が循環する乾燥ステーションを用い、130〜160℃の範囲の最高温度にすることによってシリコーンコーティングを硬化させる。
【0102】
上記の浴を連続的に用いて実施したコーティング操作の後に、コーティングの際のミストの減少に関して匹敵しうる結果が得られつつ、指触乾燥状態であり且つ剥離性のコーティングが得られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙又は合成ポリマー(ポリオレフィン、ポリエステル等)又はさもなくば織物(テキスタイル)のシートのような様々な軟質支持体を、高速ロールを使用してシリコーンでコーティングする一般的な分野に関する。
【0002】
より正確に言えば、本発明は、軟質材料を重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートによって架橋できる1種以上のポリオルガノシロキサンを含有する液状組成物でコーティングして、特に剥離性(非粘着性)及び/又は撥水性(疎水性)の特性を有する保護フィルム又はコーティングを形成させることに関する。
【背景技術】
【0003】
軟質支持体は、紙、板紙、プラスチックフィルム又は金属フィルムであることができる。これらのシリコーンコーティングされた支持体の用途は、例えば、食品用の紙(菓子用の型、包装)、粘着ラベル/テープ、パッキング及びシール材料等である。
【0004】
架橋性の液状シリコーンによるこれらの軟質支持体のコーティングは、連続的に且つ非常に高速で運転されるコーティング装置によって実施される。これらの装置は、特にプレスロール及びコーティングロールを含む数個のロールから成るコーティングヘッドを含み、これに、互いに結びつけられた一連のロールによって架橋性液状シリコーン組成物が連続的に供給される。軟質支持体のウェブは、プレスロールとコーティングロールとの間を高速度で走行し、それによりその面の少なくとも一方を、コーティングヘッドの下流に位置した架橋手段によって架橋されるように予定されたシリコーンフィルムでコーティングされる。これらの架橋手段は、例えば、熱エミッター、放射線(例えば紫外線)エミッター又は電子線エミッターであることができる。
【0005】
生産性の競争において、剥離性シリコーンでコーティングされた軟質支持体の製造業者は、軟質支持体ウェブをさらに高い線速度で走行させるのに好適な液状シリコーンコーティング配合物を求めている。高速コーティングのための新規のシリコーン配合物についてのこの探求において、経済的要因はもちろん取るに足らないことではない。
【0006】
しかしながら、連続式コーティング機における高速度は、コーティングロールから走行している軟質支持体ウェブへの液状シリコーンフィルムの転写の問題と同義であることが知られている。これらの転写(層剥離)の問題は、特に、コーティングヘッド周辺の領域、より詳しくは回転ロールの間及び/又はコーティングロールとコーティングされるべき軟質支持体との間の接触部におけるミスト又はエーロゾルの出現(「ミスティング」又は「フォギング」)となって現れてくる。このミスト又はこのエーロゾルの密度は、走行線速度が増大し、従ってロールの回転速度が増大する時に、大きくなる。
【0007】
この現象は、まず第1に、消耗品の損失という結果を招き、そして特に下流(例えばオーブン内)での支持体へのコーティング液の液滴の付着を結果として招き、これは、コーティングの品質に非常に有害である。
【0008】
さらに、この望ましくないミストの形成は、ロールコーティング装置の近くで多量のエーロゾルに曝される作業者の労働衛生及び安全性という観点から、有害な結果を及ぼす。このエーロゾルは有毒なことがある。
【0009】
さらに、このミスティングは、ロールコーティング装置の急速な汚染をもたらし、メンテナンスの点での制約及び早期の損耗をもたらす。
【0010】
このミストの結果を未然に防ぐために、コーティングヘッドの周囲に該ミストを捕捉するための吸気装置を設置することが一般的に行われている。
【0011】
さらに、当業者であれば、この現象を防止するためのコーティングヘッドに対する多数の調整法を知っている。これらの数例として、以下のものが挙げられる:
A.速度を低下させる(これは生産性にとって不利である)、
B.シリコーンの付着率を低下させる(これは、得ることが望まれる軟質シリコーン支持体の特性(外観、被覆性、剥離性、機械的性質)にとって不利である)、
C.コーティングロールの接線速度と紙の線速度との間の相違を増大させる(しかしながら、ある一定の相違を超えると、被覆された層の均一性がひどく損なわれる。さらに、この手段によってミストの密度を減少させることはできるが、コーティング速度を有意に増大させるほど充分にミストを取り除けるわけではない。)、及び
D.コーティングロールとプレスロールとの間の圧力を大きくする(この場合もまた、ある一定の制限内であり、そしてこのミスト形成現象を有利に抑制するわけではない)。
【0012】
ロールコーティング機でのミストの形成を制御するための別の方法は、液状シリコーンコーティング組成物の配合を手を加えることから成る。
【0013】
この方法に従えば、液状シリコーンコーティング液を構成するポリオルガノシロキサンの数平均重合度を減少させ、その結果、シリコーンコーティング浴の粘度を低下させてミストの密度を抑制することが知られている。
【0014】
これらの周知の方法には、得ることが望まれるシリコーン軟質支持体の特性、特に剥離性を実質的に変性させるという重大な欠点がある。
【0015】
シリコーン配合によるこの方法の例示として、国際公開WO2004/046248号を挙げることができる。この国際公開には、軟質(可撓性)支持体上のコーティング用途のためのミスティング防止添加剤として用いられる星形枝分かれシリコーンポリマーの使用が記載されている。これらの星形枝分かれシリコーンポリマーを調製するための方法は、反応性≡SiH単位を含有するポリオルガノシロキサンと長鎖オレフィンとを(ヒドロシリル化によって)不完全に反応させて部分置換ポリヒドロオルガノシロキサンを得て、これを次いでヒドロシリル化によりMQタイプのビニルシリコーン樹脂及び長鎖ジオレフィンと反応させることから成る。このような組成物は比較的複雑であり、それ故に得るのに費用がかかることは明らかである。さらに、これらのものは、高速度ロールを使用してシリコーンで被覆する時のミスティングを制御することに関して、いまだ改善の余地が残っている。
【0016】
欧州特許出願公開第0716115号には、高速度ロールコーティング用のシリコーン組成物の製造方法が開示されており、この組成物は、ミストの密度を低下させることができると示されている。この方法によれば、トリメチルシリルを末端基とする重合度12のポリジメチルメチルヒドロシロキサン、末端基がジメチルビニルシロキシ基であり且つペルフルオロエチルブチル官能基及びメチルビニル官能基で置換された重合度300のポリジメチルシロキサン0.01%、ポリプロピレングリコール並びに随意としてステアリルアルコール又はオレイルアルコールが用いられる。これは、ポリオキシプロピレン基によって官能化されたポリジメチルシロキサンを生じさせる。これらの官能化ポリジメチルシロキサンは、ミスト形成を減らすシリコーンコーティング組成物を形成させるために、他の官能化ポリジメチルシロキサン(例えばヘキセニル単位によって官能化されたもの)及び白金をベースとしたヒドロシリル化触媒と組み合わされる。この官能化単位は、ステアリン酸又はオレイン酸残基のような疎水性残基であることができる。
【0017】
米国特許第4808391号は、シリコーンをベースとしたインク及びワニスに関し、より正確には、これらのインク/ワニスを高速度で運転されるロールコーティング機を使用して基材に塗布する方法に関する。この特許文献は、特に、ビニルを末端基とし、25℃で15000〜50000mPa・sの粘度を有するポリジメチルシロキサンを含む組成物を開示している。これらの液状コーティング組成物は、白金をベースとした触媒及び高い比表面積を有するシリカ(特にヒュームドシリカ)から成る流動学的添加剤をさらに含む。
【0018】
米国特許第6057033号には、軟質支持体上にコーティングして、UV下でカチオン架橋させた後に剥離性コーティングを形成させるためのシリコーン組成物が開示されている。これらの組成物は、ポリオルガノシロキサンに加えて、15〜100μmの平均長さ及び5〜40μmの平均厚さを有するセルロース繊維を含む。使用されるポリオルガノシロキサンは、UV下でラジカル架橋するのを可能にさせるアクリルオキシ又はメタクリルオキシタイプの架橋性基で官能化されたポリオルガノシロキサンである。
【0019】
組成物中に組み込まれるセルロース繊維は、非脆性の架橋されたシリコーン剥離コーティングを得るという技術上の課題に対する解決策を提供することができる。セルロース繊維は、支持体へのシリコーンコーティングフィルムの転写、打抜き抵抗、機械的特性(引張り抵抗及び引裂抵抗)、紙に対するコーティングの付着性、紙内へのコーティング液の吸収の減少及び付随的にはミスト形成の減少に関して改善をもたらすことが示されている。
【0020】
この最後の点について、米国特許第6057033号には、セルロース繊維がもたらしたミストの減少を評価するための定量的要素は何ら与えられていない。この減少は全く不充分なままであると考えるだけの充分な理由がある。
【0021】
また、参考までに、特開昭62−64011号公報が挙げられる。この特許文献には、フィルム形成用樹脂と溶剤とを含有するコーティング液が開示されており、このコーティング液はさらに、1〜10μmの直径を有するワックス粒子であって最も粗大な粒子の直径が支持体に適用された未乾燥コーティングフィルムの厚さの150%以下であるものも含有する。この種のコーティング液は、一見したところではミストの形成が抑制されるため、少なくとも10〜30m/分のコーティング速度の増大を可能にするようだが、この特許文献の教示はシリコーンコーティングに関するものではないので無視すべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開WO2004/046248号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0716115号
【特許文献3】米国特許第4808391号
【特許文献4】米国特許第6057033号
【特許文献5】特開昭62−64011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
このような従来技術の記述に対して、本発明の本質的な目的の一つは、高速度で運転されるロールコーティング装置によって軟質支持体を架橋コーティングの前駆体である液状シリコーン組成物でコーティングする時のミスティングを制御するための効果的な方法を提供することにある。
【0024】
本発明の別の本質的な目的は、高速度で運転されるロールコーティング装置によって軟質支持体を架橋させることが予定されるシリコーン組成物でコーティングする時のミスティングを制御するための簡単且つ経済性のよい方法を提供することにある。
【0025】
本発明の別の本質的な目的は、シリコーンコーティングの前駆体であって高速ロールコーティングの際にミスティングをもはや示さない新規の液状シリコーン組成物Xを提供することにある。
【0026】
本発明の別の本質的な目的は、ロールコーティング装置を用いて軟質支持体を架橋して剥離性コーティングになることができるシリコーン組成物でコーティングする際のミスティングを抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの全ての目的及び他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、まず最初に、軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法を提供する。この方法は、次の工程(I)及び(II):
(I)次の成分:
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含み、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程;
(II)この液状シリコーン組成物Xをロールコーティング装置によって軟質支持体上にコーティングする工程:
を含み、
この方法は、工程(a)において前記液状シリコーン組成物Xに下記の特徴を有するミスティング防止用添加剤Eを混合することを特徴とする。このミスティング防止用添加剤Eの特徴とは、
●(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈した又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈した)液体の形にあり、そして
●次の手順(1)及び(2):
(1)下記化合物(a)〜(d):
(a)次式:
・(R1)3SiO1/2(M単位)、
・(R1)2SiO2/2(D単位)、
・R1SiO3/2(T単位)及び
・SiO4/2(Q単位)
(これら単位中、
基R1は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基及び3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される)
のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を構造中に含む有機ケイ素樹脂F(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈したもの又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈したもの)
(ここで、
・前記の単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位であり、
・この有機ケイ素樹脂Fは基≡SiOH及び/又は≡SiOR2を含み、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲であり、R2は直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基である);
(b)次の一般式:
R3dSiX4-d
(ここで、R3は1〜5個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、dは1以下の平均値を有する)
の有機ケイ素化合物N;
(c)前記有機ケイ素化合物Nの部分加水分解縮合物L;
(d)前記有機ケイ素樹脂Fと前記有機ケイ素化合物N又は前記縮合物Lとの縮合物M:
から選択される1種以上の化合物と、
(e)反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(ここで、RはC1〜C40カルビノール基である)を1分子当たりに少なくとも1個有する少なくとも1種のオルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーG
とを、
・少なくとも1種の重縮合触媒H、
・随意としてのフィラーZ、及び
・随意としての1種以上の希釈剤J'又は溶剤J''
の存在下で好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において反応させ;そして
(2)随意に縮合触媒Hを除去し且つ/又は脱蔵(揮発成分除去)を行い且つ/又は中和した後に、前記ミスティング防止用添加剤Eを単離する:
によって得られたものであることである。
【0028】
有機ケイ素樹脂Fの例には、当業者に周知の方法によってアルコキシシラン群又は式(R1)3SiCl、(R1)2Si(Cl)2、R1Si(Cl)3及びSi(Cl)4のものより成る群から選択されるクロロシラン群を同時加水分解及び/又は同時縮合することによって調製される有機ケイ素樹脂が包含される。これらの樹脂は、商品として入手できる周知の分岐状オルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、式(R1)3SiO0.5(M単位)、(R1)2SiO(D単位)、R1SiO1.5(T単位)及びSiO2(Q単位)のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を有し、これらの単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位である。基R1は、該樹脂がケイ素原子1個当たりに約0.8〜1.8個の基R1を含有するように分配される。さらに、これらの樹脂は完全には縮合しておらず、ケイ素原子1個当たりに約0.001〜1.5個のOH基及び/又はアルコキシ基OR2を依然として有する。基R1及びR2は上で規定した通りである。
【0029】
有機ケイ素樹脂Fの例には、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂並びにMDT、MvinylQ、MDvinylQ及びQQOH樹脂が包含され、基OH及び/又はOR2はM、D及び/又はT単位が有し、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲である。
【0030】
有機ケイ素化合物Nの例には、CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、(CH2=CH)Si(OCH3)3、C6H5Si(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、(CH2=CH)Si(OC2H5)3及びSi(OC2H4OC2H5)4が包含される。
【0031】
化合物Gは、1分子当たりに少なくとも1個の反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(Rはカルビノール基である)を有し、式(I)及び(II)の化合物より成る群から選択される:
【化1】
(ここで、
i、j、k、l、m及びnは0以上の数であり、i+kは0より大きく、好ましくはm=0であり且つs=0であり、
o、p、q、r、s及びtは0以上の数であり、p+tは0より大きく、
MはR10R11R12SiO1/2であり、
DはR13R14SiO2/2であり、
DRはRR15SiO2/2であり、
TはR16SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
MRはRR17R18SiO1/2であり、
DOHはR19R20(OH)SiO1/2であり、
TOHはR21(OH)SiO2/2であり、
RはC1〜C40カルビノール基であり、そして
記号R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれ、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル又は3,3,3−トリフルオロプロピル)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、
・アルケニル、好ましくはビニル又はアリル、
・エポキシド−エーテル又はポリエーテルタイプの1種以上の官能基を含む基、並びに/或は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/又はアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす)。
【0032】
1つの好ましい実施態様において、オルガノシロキサンGは、オルガノシロキサンポリマー、好ましくは線状ポリジメチルシロキサンであって、少なくとも1個の鎖末端単位≡SiOHを有するものである。
【0033】
化合物Gとして本発明にとって特に好適なものは、次式の化合物である。
【化2】
(ここで、fは1≦f≦2000、好ましくは1≦f≦1000である。)
【0034】
ミスティング防止用添加剤Eの調製方法において規定された条件、即ち反応の性状(縮合反応)が、非常に顕著なミスティング防止特性を有する液体の形の添加剤を得ることを可能にする。いずれか1つの科学理論やメカニズムに限定されることは望まないが、本発明に従うミスティング防止用添加剤Eのこの特性は、伴われる反応の性状(縮合反応)によるものであるように思われ、これが高速度で運転されるロールコーティングシステムにおいてミスティングを制御するのに有用な粘弾性を有する分岐状ポリマーを得ることを可能にする。これらの粘弾性は、ミスティング防止用添加剤Eの非常に粘りけのある外観によって特徴付けられる。
【0035】
本発明に従うミスティング防止用添加剤Eは、コーティングの際のミスティングの量を減らすのに充分な量で用いられる。当業者はもちろん、通常の試験によって難なくこれらの量を決定することができる。例えば、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xの総重量に対して0.1〜15重量部の量で、本発明に従う添加剤を用いることができる。
【0036】
「縮合」とは、≡SiOH(又は≡SiOR)単位間の反応を意味し、シロキシ結合≡Si−O−Si≡の生成及び水(又はアルコール)の遊離をもたらすものである。この反応は、有効量の縮合触媒Hによって触媒される。
【0037】
当業者は、用いる触媒のタイプに従って縮合触媒Hの有効量を決定する方法を知るだろう。本発明の目的のための有効量は、反応を開始させるのに足りる量である。この量は、できるだけ最少量で組成物を経時的に効率良く保存することが可能になるように決定するのが好ましい。有効触媒濃度は、反応させるべきオルガノシロキサンポリマーの重量に対して1×10-6〜5重量部の範囲、好ましくは1×10-5〜2重量部の範囲にある。縮合反応を開始させることができる任意の触媒が好適であろう。縮合又は重縮合触媒は、スズ、チタン及びジルコニウムから選択される金属の化合物であるのが一般的である。従って、スズのモノカルボキシレート及びジカルボキシレート、例えば2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、原子価IVのスズの六配位キレート等、例えば欧州特許公開第036769号公報又はNollの著書"Chemistry and technology of silicones"、Academic Press社、1968年、第2版、P205、307に記載されたものを用いることができる。
【0038】
また、以下のものを用いることもできる:
・塩基性触媒、例えば水酸化カリウムKOH、カリウムシリコネート、ホスファゼン類、カルベン類、KOHとkryptofixのようなクリプタンドとの組合せ物、又は
・酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、Tonsil(登録商標)及びAmberlyst(登録商標)タイプのスルホン樹脂。
【0039】
架橋禁止剤Dは、所定のポットライフを有するすぐ使用できる組成物を提供するために一般的に用いられる。組成物中の触媒系の性状及びその濃度に作用する(所定の架橋速度をもたらす)と共に、遅延剤の性状及びその濃度にも作用することで、ポットライフを調節することが可能となる。触媒系の活性は、加熱することによって回復する(熱活性化)。
【0040】
架橋禁止剤Dは、好ましくは、アセチレン性アルコール(エチニルシクロヘキサノール:ECH)、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、マレイン酸ジアルキル(マレイン酸ジエチル若しくはジアルキルアルキニルジカルボキシレート)(ジエチルアセチレンジカルボキシレート)又はポリオルガノシロキサン(有利には環状であり且つ少なくとも1個のアルケニルで置換されたもの)(テトラメチルビニルシクロテトラシロキサンが特に好ましい)、又はマレイン酸アルキルから選択される。
【0041】
アセチレン性アルコール(例えば仏国特許第1528464B号及び仏国特許第2372874A号を参照されたい)は、本発明に従って有用な遅延剤である。その例には、次のものが包含される:
・1−エチニルシクロヘキサン−1−オール;
・3−メチル−1−ドデシン−3−オール;
・3,7,11−トリメチル−1−ドデシン−3−オール;
・1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール;
・3−エチル−6−エチル−1−ノニン−3−オール;
・3−メチル−1−ペンタデシン−3−オール。
【0042】
これらのα−アセチレン性アルコールは、商品となっている。
【0043】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物X中には、架橋したシリコーンコーティングの剥離特性を調節することを可能にするために、少なくとも1種の粘着性調整剤系Kを用いるのが有利である。
【0044】
ポリマー系支持体を有する粘着テープや剥離紙用のシリコーン配合物中の粘着性調整剤系Kの例として、欧州特許公開第0601938A号公報を挙げることができる。その開示内容すべてを本明細書に取り入れる。
【0045】
1つの態様において、粘着性調整剤系Kは、
・重付加によって架橋する配合物の場合には:式MDViQ;MMViQ;MMViDViQ;MMViDDViQ;MDHQ又はMMHQ(ここで、Viはビニル基である)のポリオルガノシロキサン樹脂であり、
・重縮合によって架橋する配合物の場合には:式MOHQのポリオルガノシロキサン樹脂であり、そして
・放射線下で架橋する配合物の場合には:式MDHQ又はMMHQのポリオルガノシロキサン樹脂である。
【0046】
希釈剤J'及び/又は溶剤J''の例には、脂肪族及び芳香族溶剤、塩素化溶剤、例えばホワイトスピリット、ケトン類、例えばメチルエチルケトン及びアセトン、アルコール類、例えばイソプロパノール及びn−ブチルアルコール、飽和、不飽和又は芳香族炭化水素、有利にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン及びベンゼン、「ナフサ」と称される石油留分;C7〜C8石油留分、縮合反応に対して反応性ではないポリシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン、及びハロゲン化炭化水素、並びにそれらの混合物が包含される。
【0047】
シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物XのポリオルガノシロキサンAは、周囲温度又は加熱条件下においてこの場合には白金をベースとする金属触媒の存在下で重付加反応によって架橋するタイプのものであることができる。これらは、RTV(「室温加硫性」)と称される架橋性ポリオルガノシロキサン組成物又は「熱加硫性エラストマー」の略語であるHVEと称される重付加ポリオルガノシロキサン組成物である。
【0048】
二成分型又は一成分型RTV又は重付加HVEポリオルガノシロキサン組成物は、本質的に、一般的に金属触媒(好ましくは白金触媒)の存在下におけるヒドロシリル基とシリルアルケニル基との反応によって硬化又は架橋する。これらは、例えば米国特許第3220972号、同第3284406号、同第3436366号、同第3697473号及び同第4340709号の各明細書に記載されている。
【0049】
ポリオルガノシロキサンAはまた、湿分の作用下で一般的に金属触媒、例えばスズ化合物の存在下で重縮合反応によって室温において架橋するタイプのものであることもできる(重縮合RTV)。このタイプのポリオルガノシロキサンを用いた組成物は、例えば米国特許第3065194号、同第3542901号、同第3779986号及び同第4417042号の各明細書、並びに仏国特許第2638752号明細書(一成分型組成物)並びに米国特許第3678002号、同第3888815号、同第3933729号及び同第4064096号の各明細書(二成分型組成物)に記載されている。
【0050】
これらの重縮合RTV組成物に用いられるポリオルガノシロキサンAは、ヒドロキシル基又は加水分解性基(例えばアルコキシ基)を有する直鎖状、分岐鎖状又は架橋したポリシロキサンである。この種の組成物は追加的に架橋剤を含有していてもよく、この架橋剤は特に少なくとも3個の加水分解性基を有する化合物、例えばシリケート、アルキルトリアルコキシシラン又はアミノアルキルトリアルコキシシランである。
【0051】
液状シリコーン組成物Xはまた、
・有効量のカチオン系開始剤系(熱開始剤及び/又は光開始剤)−有機金属錯体又はオニウムホウ酸塩タイプの開始剤、プロトン供与性有機溶剤(イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等)の存在下で、且つ/或は
・適宜にフリーラジカル開始剤の存在下で、化学線(UV)又は電子ビームによる活性化を介して、
カチオンルート又はラジカルルートによって架橋可能な1種以上のポリオルガノシロキサンAを含むこともできる。
【0052】
これらのポリオルガノシロキサンは例えば、直鎖状又は環状のビニルエーテルシリコーン及び/又はエポキシシリコーンである。これらの種類のエポキシ官能性又はビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、より特定的には独国4009889号明細書、欧州特許公開第0396130号、同第0355381号、同第0105341号の各公報、仏国特許第2110115号及び同第2526800号の両明細書に記載されている。エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、≡SiH単位を含有するオイルと1,2−エポキシ−4−ビニル−4−シクロハン(VCMX)又はアリルグリシジルエーテル等のエポキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。ビニルオキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、SiH単位を含有するオイルとアリルビニルエーテル又はアリルビニルエトキシベンゼン等のビニルオキシ官能性化合物とのヒドロシリル化反応によって調製することができる。
【0053】
本発明の方法の1つの好ましい態様において、シリコーンコーティングの前駆体であり、ミスティング防止用添加剤Eと混合される前記液状シリコーン組成物Xは、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・少なくとも1種の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0054】
この好ましい態様に従えば、ポリオルガノシロキサンAは、重付加によって架橋するタイプのものであって、式(III)のシロキシ単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IV)のシロキシ単位であるものである。
【化3】
{これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基であり、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である。}
【0055】
重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAの例には、ジメチルビニルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサン、トリメチルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマー、及びジメチルビニルシリル末端基を有するメチルビニルジメチルポリシロキサンコポリマーがある。
【0056】
架橋用有機ケイ素化合物Bは、式(V)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VI)の単位であるものである。
【化4】
(ここで、記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である。}
【0057】
架橋用有機ケイ素化合物Bの例には、例えば次のものがある。
・ヒドロジメチルシリル末端基を有するジメチルポリシロキサンポリマー、
・ポリ(ジメチルシロキサン)(メチルヒドロシロキシ)−α,ω−ジメチルヒドロシロキサンポリマー、
・MDDH:(ジメチル)ジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を含有し且つトリメチルシリル末端基を有するコポリマー、
・MHDDH:ジメチルヒドロメチルポリシロキサン単位を含有し且つヒドロメチルシリル末端基を有するコポリマー、
・MDH:トリメチルシリル末端基を有するヒドロメチルポリシロキサン。
【0058】
重付加触媒C1は、例えば白金族に属する少なくとも1種の金属から成る。この触媒は、より特定的には白金の化合物及びロジウムの化合物から選択される。特に、米国特許第3159601号、同第3159602号及び同第3220972号の各明細書並びに欧州特許公開第0057459A号、同第0188978A号及び同第0190530A号の各公報に記載された白金と有機物質との錯体、並びに米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号及び同第3814730号の各明細書に記載された白金とビニルオルガノシロキサンとの錯体を用いることができる。一般的に好ましい触媒は、白金である。この場合、白金金属の重量によって計算した重付加触媒C1の重量による量は、2〜400ppmの範囲であるのが一般的である。
【0059】
これらの成分に加えて、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xにはさらに、重付加により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋するシリコーン組成物において一般的な少なくとも1種の添加剤を含ませることができる。例えば顔料等を挙げることができる。
【0060】
フィラーZは、無機フィラーであるのが好ましい。これらのフィラーは、非常に微細に粉砕した製品の形を呈することができる。これらのフィラーには、熱分解法シリカ及び沈降シリカが包含される。これらの比表面積は、例えば40m2/g以上、通常は40〜300m2/gの範囲である。
【0061】
これらのフィラーZはまた、もっと粗大な製品の形、例えば1μm超の平均粒子直径を有する製品の形にあることもできる。斯かるフィラーの例には、粉砕石英、ケイ藻土シリカ、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、様々な形のアルミナ(水和又は非水和)が包含される。それらの比表面積は、例えば30m2/g以下である。
【0062】
フィラーZは、様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面変性されていることができる。この有機ケイ素化合物は、この目的のために通常用いられるものであり、例えばオルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであることができる。被処理フィラーは、多くの場合、それらの重量の2%〜20%の有機ケイ素化合物を含有する。
【0063】
フィラーZは、粒度が異なる2タイプ以上のフィラーの混合物から成ることができる。従って、これらは例えば、40m2/g以上の比表面積を有する微粉砕シリカ30%〜70%と、30m2/g以下の比表面積を有する粗大シリカ70%〜30%とから成ることができる。
【0064】
本発明はさらに、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xであって、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む前記液状シリコーン組成物Xを提供する。
【0065】
1つの好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0066】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0067】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・少なくとも1種の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む。
【0068】
別の好ましい実施態様において、シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xは、
・重付加、脱水素縮合、重縮合、カチオンルート又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・上記の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、少なくとも1種の触媒又は光開始剤C、
・少なくとも1種の粘着性調整剤系K、及び
・少なくとも1種の架橋禁止剤D
を含む。
【0069】
本発明は最後に、軟質支持体をシリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすために、前記のミスティング防止用添加剤Eを使用することにも関する。
【0070】
従って、本発明は、高速で運転されるロールコーティング装置を用いた軟質支持体(例えば紙、フィルム又はポリマーフィルム)のコーティングにおけるミストの生成を抑制するための、独創的であり、簡単であり、経済性がよく且つ信頼できる手段を提供するものである。実際の産業上の結果として、コーティングの品質にとって有害なこのミスティング現象を起こすことなく、運転速度をさらに高めることができる。本発明が提供する制御手段は、軟質支持体の少なくとも一方の面の上で得ることが望まれる架橋したコーティングの外観品質、被覆性、剥離性及び機械的特性(擦り落ち)に影響を及ぼさないという、無視できない利点をも有する。
【0071】
さらに、ミスティングが減少すれば、高速で運転されるロール上でのシリコーンコーティングのための工業用装置の周辺にいる作業員にとっての衛生上及び安全上の環境が有意に向上する。
【0072】
以下の実施例は、本発明の特定実施態様を例示するためのものであり、本発明の範囲をこれらの実施態様に限定するものではない。
【実施例】
【0073】
シロキシ単位:
M=(CH3)3SiO1/2
Q=SiO4/2
【0074】
(I)ミスティング防止用添加剤Eの調製:
【0075】
粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)DV-I+粘度計(スピンドルS34)を用いて25±2℃において測定した。
【0076】
例1:本発明のミスティング防止用添加剤E1の調製:
【0077】
アンカー型撹拌機を備え且つ窒素流出入り口を備えた1リットルの三つ口フラスコに、トリメチルシリル鎖末端を有するポリジメチルシロキサン(粘度:25℃において1000cP)150g、25℃において14000cPの粘度を有する鎖末端ヒドロキシル官能基含有ポリジメチルシロキサン72g及びケイ酸エチルの部分加水分解縮合物(部分加水分解ポリエチルシリケートと通常称される)7.2gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.9gを添加する。この混合物を130℃に加熱する。撹拌及び加熱を続ける。次いでシリカ(日本アエロジェル社から入手した200m2/gの比表面積を有する「Aerogel(登録商標)200」)5g及び25℃において50cPの粘度を有する鎖末端ヒドロキシル官能基含有ポリジメチルシロキサン4.7gを添加し、ホモミキサーを用いて均質に分散させる。180℃において4時間加熱を続けて反応を完了させる。次いで反応生成物を冷まして周囲温度にし、25℃において2600cPの粘度を有する粘りけのある透明な無色のミスティング防止用添加剤を得た。この全プロセスは、窒素雰囲気下で実施した。
【0078】
例2:本発明のミスティング防止用添加剤E2の調製
【0079】
ミスティング防止用添加剤を2工程で調製する。工程1では、超高分子量樹脂を得る。
【0080】
工程1:
【0081】
ディーン・スターク装置と一般的に称される装置及び凝縮器を備えた三つ口フラスコ中で、分子量(Mw)12900を有する一般式SiO1.3(OH)1.28Me0.12の固体状MQ樹脂(A)と、≡SiOH鎖末端を有する式HO(Me2SiO)15Hの線状ポリジメチルシロキサン(B)及びキシレンとを反応させることによって、超高分子量MQ樹脂を調製する。化合物(A)の分子量(Mw)は12900だった。化合物Bは、≡SiOH鎖末端を有する式HO(Me2SiO)15Hの線状ポリジメチルシロキサンであるのが好ましい。(A)/(B)の重量比は15.7/1とする。この反応混合物を撹拌しながら24時間加熱還流し(140℃)、その間にアンモニアガス、触媒を連続的に反応混合物に吹き込み、反応によって生成した水をディーン・スターク装置によって取り除く。反応終了時に、反応器を窒素でパージし、反応生成物(1)を含有する混合物を冷まして周囲温度にする。得られた樹脂のMwは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定して665000だった。
【0082】
工程2:
【0083】
上で調製したキシレン中に超高分子量MQ樹脂を56%含有する混合物52.2gを含有させた2リットルの三つ口フラスコに、トリメチルシロキシを末端基とするポリジメチルシロキサン771.6gを撹拌しながら装填する。この混合物を撹拌しながら5320Paにおいて180℃に1時間加熱してキシレンを除去する。次いでこの混合物を90℃まで冷まし、次いでシラノールを末端基とするポリジメチルシロキサン(3)384g及びイソプロパノール中のKOHの溶液(溶液1リットル当たりにKOH1.7モル)1.8gを添加する。この混合物を所望の粘度が得られるまで5330Pa下で90℃に加熱する。反応終了時に、KOH触媒を水1.92g中の酢酸0.18gで中和し、この混合物を冷めて周囲温度になるまで0.5時間撹拌する。得られた生成物は、粘りけがあり、25℃において31800cPの粘度を有していた。次いでTS-350シリカ(Cabot Corp.より入手したヘキサメチルジシラザンHMDZで処理したヒュームドシリカ)35gを添加し、ホモミキサーによって均質に分散させる。
【0084】
例3:本発明のミスティング防止用添加剤E3の調製:
【0085】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた1リットルの三つ口フラスコに、25℃において100mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン280g、25℃において14000mPa・sの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン505g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン165gを装填する。この混合物を撹拌し、次いでアルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)30.7gを添加する。45分間撹拌を続け、次いでシリカ(Rhodia社から入手した沈降シリカTixosil-365(登録商標))38.4gを添加し、ホモミキサーを用いて均質に分散させる。この混合物を次いで160℃に1時間加熱して反応を完了させ、次いで冷まして周囲温度にする。25℃において70000cP付近又はそれ以下の粘度を有する粘りけのある生成物が得られた。貯蔵時の粘度増大の問題を抑制するために、この生成物を、酢酸AcOHやポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和したり、非反応性ポリシロキサン中に希釈したりすることができる。
【0086】
例4:本発明のミスティング防止用添加剤E4の調製:
【0087】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた1リットルの三つ口フラスコに、25℃において100cPの粘度を有するトリメチルシリル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン280g、25℃において14000cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン505g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン165gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.76gを添加する。 この混合物を所望の粘度に達するまで110℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において68000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0088】
例5:本発明のミスティング防止用添加剤E5の調製:
【0089】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた350ミリリットルの三つ口フラスコに、25℃において14000cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン161g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン13.6gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.024gを添加する。この混合物を所望の粘度に達するまで130℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において91000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0090】
例6:本発明のミスティング防止用添加剤E6の調製:
【0091】
撹拌機及び窒素シールシステムを備えた350ミリリットルの三つ口フラスコに、25℃において3500cPの粘度を有するヒドロキシル鎖末端含有ポリジメチルシロキサン108g及びMQ樹脂を約31%含有し且つOH含有率が0.7重量%である混合ポリシロキサン67gを装填する。この混合物を撹拌し、アルカリ金属触媒(オクタメチルシクロテトラシロキサン中のカリウムシラノラートの溶液、KOH当量含量:14重量%)0.051gを添加する。この混合物を所望の粘度に達するまで110℃に加熱し、次いでKOH触媒をポリジメチルシロキサン中のリン酸の溶液で中和する。25℃において100000cPの粘度を有する透明で粘りけのある生成物が得られた。
【0092】
(II)ミスティング防止用添加剤としての試験
【0093】
(I)で調製したミスティング防止用添加剤E1〜E6を、ミスティング防止用途について試験した。観察された結果を、様々なロール回転速度について添加剤を用いて又は添加剤を用いずに測定されたミスティング量(mg/m3)として又はミスティングの比の形で、下記の表にまとめる。
【0094】
試験の説明
【0095】
高速で運転されるロールコーティング装置において生成するミストを分析して定量化するために、実験室規模で、再現性のある態様で運転され、900m/分超の線速度で紙テープを前進させることができる2本ロール装置(フランス国所在のErmap社から入手)を用いた。プレスロール/コーティングロールの2本のロールは、10cmの直径を有する。プレスロールはゴムで被覆されたものであり、コーティングロールはクロムで被覆されたものである。コーティングロールは、2本のロールの速度が同調するように、ダンベル形状にカットされたものである。プレスロールはモーターで駆動させることができ、コーティングロールと一定圧力で接触する。シリコーンコーティング液は、2本のロールの間隙に直接注がれる。この液の使用量は0.25ミリリットルとする。
【0096】
次いで、シリコーンポリマーA1(末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた、粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサン)と例1〜6に上記した生成物とを、ポリマー100重量部中に該生成物1〜4重量部の割合で混合することによって、様々な組成物を調製した。これらの組成物を、バレルローリング装置を用いて必要な時間均質化させる。上記の回転システムを用い、ロール上に対象製剤を塗り広げる。次いでロールの回転速度を次第に高める。同時に、ロール間の接触点付近に配置させた粒子カウンターと称される測定装置(フランス国所在のITS社より販売されているもの)によって、ミストの密度を測定する。ミスト密度測定結果は、所定測定速度における空気1m3当たりのシリコーンエーロゾルのmg数で表わされる。下記の表に、得られた結果をまとめる。
【0097】
【表1】
【0098】
例1の添加剤E1も、試験した添加剤E2〜E6と同様に、良好な結果を与える。
【0099】
紙支持体上のシリコーン剥離性コーティングの製造
【0100】
下記の物質を順次混合することによって、浴を得る。
・末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマー、
・本発明に従う添加剤(例2、3及び4)、
・ポリヒドロメチルシロキサン及びポリジメチルシロキサンコポリマーから成るオイル混合物(これら2つのタイプのコポリマーは、トリメチルシロキサン基でブロックされたものである)、
・ジビニルテトラメチルジシロキサン中の溶液状のPt含有触媒(カーステッド触媒)。
【0101】
混合物の割合は、最終浴中で、ビニル基の総モル数とヒドロシロキサン基の総モル数との間の比が1.8となり、白金濃度が50ppmとなり、エチニルシクロヘキサン−1−オール含量が配合物の重量に対して約0.15重量%となるように、計算する。さらに、本発明に従うミスティング防止用添加剤は、前記の末端基がジメチルビニルシロキシ基でブロックされた粘度220mPa・sのポリジメチルシロキサンシリコーンポリマーに、配合物の総重量に対して1〜2重量%の割合で、添加する。これらの浴を次いで、コーティングヘッドが4本の湿式ロールを供えたヘッドであるコーティング基を用いて、「グラシン紙」と称される紙支持体をコーティングするために連続的に用いる。このヘッドの下流に、約195℃において空気が循環する乾燥ステーションを用い、130〜160℃の範囲の最高温度にすることによってシリコーンコーティングを硬化させる。
【0102】
上記の浴を連続的に用いて実施したコーティング操作の後に、コーティングの際のミストの減少に関して匹敵しうる結果が得られつつ、指触乾燥状態であり且つ剥離性のコーティングが得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法であって、次の工程(I)及び(II):
(I)次の成分:
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D:
を含み、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程:
(II)この液状シリコーン組成物Xをロールコーティング装置によって軟質支持体上にコーティングする工程:
を含み、
工程(a)において前記液状シリコーン組成物Xに次の特徴を有するミスティング防止用添加剤Eを混合することを特徴とし、
ここで、該ミスティング防止用添加剤Eの特徴が、
●液体の形にあること(希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈した形又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈した形であってもよい);並びに
●次の手順(1)及び(2):
(1)下記化合物(a)〜(d):
(a)次式:
・(R1)3SiO1/2(M単位)、
・(R1)2SiO2/2(D単位)、
・R1SiO3/2(T単位)及び
・SiO4/2(Q単位)
(これら単位中、
基R1は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基及び3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される)
のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を構造中に含む有機ケイ素樹脂F(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈したもの又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈したもの)
(ここで、
・前記の単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位であり、
・この有機ケイ素樹脂Fは基≡SiOH及び/又は≡SiOR2を含み、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲であり、R2は直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基である);
(b)次の一般式:
R3dSiX4-d
(ここで、R3は1〜5個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、dは1以下の平均値を有する)
の有機ケイ素化合物N;
(c)前記有機ケイ素化合物Nの部分加水分解縮合物L;
(d)前記有機ケイ素樹脂Fと前記有機ケイ素化合物N又は前記縮合物Lとの縮合物M:
から選択される1種以上の化合物と、
(e)反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(ここで、RはC1〜C40カルビノール基である)を1分子当たりに少なくとも1個有する少なくとも1種のオルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーG
とを、
・少なくとも1種の重縮合触媒H、
・随意としてのフィラーZ、及び
・随意としての1種以上の希釈剤J'又は溶剤J''
の存在下で好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において反応させ;そして
(2)随意に縮合触媒Hを除去し且つ/又は脱蔵を行い且つ/又は中和した後に、前記ミスティング防止用添加剤Eを単離する:
によって得られたものであること:
である、前記方法。
【請求項2】
前記オルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーGが1分子当たりに少なくとも1個の反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(Rはカルビノール基である)を有し、式(I)及び(II):
【化1】
{ここで、
i、j、k、l、m及びnは0以上の数であり、i+kは0より大きく、好ましくはm=0であり且つs=0であり、
o、p、q、r、s及びtは0以上の数であり、p+tは0より大きく、
MはR10R11R12SiO1/2であり、
DはR13R14SiO2/2であり、
DRはRR15SiO2/2であり、
TはR16SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
MRはRR17R18SiO1/2であり、
DOHはR19R20(OH)SiO1/2であり、
TOHはR21(OH)SiO2/2であり、
RはC1〜C40カルビノール基であり、そして
記号R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれ、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル又は3,3,3−トリフルオロプロピル)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、
・アルケニル、好ましくはビニル又はアリル、
・エポキシド−エーテル又はポリエーテルタイプの1種以上の官能基を含む基、並びに/或は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/又はアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす}
の化合物より成る群から選択される、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物NがCH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、(CH2=CH)Si(OCH3)3、C6H5Si(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、(CH2=CH)Si(OC2H5)3及びSi(OC2H4OC2H5)4より成る群から選択される、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項4】
シリコーンコーティングの前駆体であり、請求項1〜3のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eと混合される前記液状シリコーン組成物Xが、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・少なくとも1種の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項5】
前記の重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAが式(III)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IV)の単位である:
【化2】
{これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基であり、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である}
ものであることを特徴とする、請求項3に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項6】
前記架橋用有機ケイ素化合物Bが式(V)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VI)の単位である:
【化3】
{ここで、記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である}
ものであることを特徴とする、請求項3に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項7】
シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xであって、
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・請求項1〜6のいずれかに記載の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む、前記液状シリコーン組成物X。
【請求項8】
軟質支持体をシリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすための、請求項1〜3のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eの使用。
【請求項1】
軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法であって、次の工程(I)及び(II):
(I)次の成分:
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D:
を含み、シリコーンコーティングの前駆体となる液状シリコーン組成物Xを調製する工程:
(II)この液状シリコーン組成物Xをロールコーティング装置によって軟質支持体上にコーティングする工程:
を含み、
工程(a)において前記液状シリコーン組成物Xに次の特徴を有するミスティング防止用添加剤Eを混合することを特徴とし、
ここで、該ミスティング防止用添加剤Eの特徴が、
●液体の形にあること(希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈した形又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈した形であってもよい);並びに
●次の手順(1)及び(2):
(1)下記化合物(a)〜(d):
(a)次式:
・(R1)3SiO1/2(M単位)、
・(R1)2SiO2/2(D単位)、
・R1SiO3/2(T単位)及び
・SiO4/2(Q単位)
(これら単位中、
基R1は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基、C2〜C4アルケニル基及び3,3,3−トリフルオロプロピルから選択される)
のものから選択される少なくとも2つの異なるシロキシ単位を構造中に含む有機ケイ素樹脂F(随意に希釈剤J'若しくは溶剤J''で希釈したもの又は前記液状シリコーン組成物Xの成分の内の1種中に希釈したもの)
(ここで、
・前記の単位の内の少なくとも1つはT又はQ単位であり、
・この有機ケイ素樹脂Fは基≡SiOH及び/又は≡SiOR2を含み、基OH及び/又はOR2の重量による量は0.2〜10重量%の範囲であり、R2は直鎖状又は分岐鎖状のC1〜C6アルキル基である);
(b)次の一般式:
R3dSiX4-d
(ここで、R3は1〜5個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、Xは加水分解性基であり、dは1以下の平均値を有する)
の有機ケイ素化合物N;
(c)前記有機ケイ素化合物Nの部分加水分解縮合物L;
(d)前記有機ケイ素樹脂Fと前記有機ケイ素化合物N又は前記縮合物Lとの縮合物M:
から選択される1種以上の化合物と、
(e)反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(ここで、RはC1〜C40カルビノール基である)を1分子当たりに少なくとも1個有する少なくとも1種のオルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーG
とを、
・少なくとも1種の重縮合触媒H、
・随意としてのフィラーZ、及び
・随意としての1種以上の希釈剤J'又は溶剤J''
の存在下で好ましくは0℃〜200℃の範囲の温度において反応させ;そして
(2)随意に縮合触媒Hを除去し且つ/又は脱蔵を行い且つ/又は中和した後に、前記ミスティング防止用添加剤Eを単離する:
によって得られたものであること:
である、前記方法。
【請求項2】
前記オルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーGが1分子当たりに少なくとも1個の反応性単位≡SiOH及び/又は≡SiR(Rはカルビノール基である)を有し、式(I)及び(II):
【化1】
{ここで、
i、j、k、l、m及びnは0以上の数であり、i+kは0より大きく、好ましくはm=0であり且つs=0であり、
o、p、q、r、s及びtは0以上の数であり、p+tは0より大きく、
MはR10R11R12SiO1/2であり、
DはR13R14SiO2/2であり、
DRはRR15SiO2/2であり、
TはR16SiO3/2であり、
QはSiO4/2であり、
MRはRR17R18SiO1/2であり、
DOHはR19R20(OH)SiO1/2であり、
TOHはR21(OH)SiO2/2であり、
RはC1〜C40カルビノール基であり、そして
記号R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は同一であっても異なっていてもよく、互いに独立してそれぞれ、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状又は分岐鎖状アルキル基(好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル又は3,3,3−トリフルオロプロピル)、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、
・アルケニル、好ましくはビニル又はアリル、
・エポキシド−エーテル又はポリエーテルタイプの1種以上の官能基を含む基、並びに/或は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/又はアルキルで置換されたアラルキル基
を表わす}
の化合物より成る群から選択される、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物NがCH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、(CH2=CH)Si(OCH3)3、C6H5Si(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、(CH2=CH)Si(OC2H5)3及びSi(OC2H4OC2H5)4より成る群から選択される、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項4】
シリコーンコーティングの前駆体であり、請求項1〜3のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eと混合される前記液状シリコーン組成物Xが、
・重付加によって架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・少なくとも1種の架橋用有機ケイ素化合物B、
・少なくとも1種の重付加反応触媒C1、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む、請求項1に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項5】
前記の重付加によって架橋可能なポリオルガノシロキサンAが式(III)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(IV)の単位である:
【化2】
{これら式中、
Wはアルケニル基、好ましくはビニル又はアリル基であり、
記号Zは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
aは1又は2、好ましくは1であり、bは0、1又は2であり、a+bは1、2又は3であり、そして
cは0、1、2又は3である}
ものであることを特徴とする、請求項3に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項6】
前記架橋用有機ケイ素化合物Bが式(V)の単位を有し且つ随意としてのその他の単位の少なくとも一部が平均式(VI)の単位である:
【化3】
{ここで、記号Lは同一であっても異なっていてもよく、
・1〜20個の炭素原子を有し且つ随意に少なくとも1個のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに/又は
・5〜14個の炭素原子を有するアルキル部分及び6〜12個の炭素原子を有するアリール部分を有し且つ随意にアリール部分上をハロゲン及び/若しくはアルキルで置換されたアラルキル基
を表わし、
cは0、1又は2であり、そして
gは0、1、2又は3である}
ものであることを特徴とする、請求項3に記載の軟質支持体をコーティングする時のミスティングを抑制する方法。
【請求項7】
シリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xであって、
・重付加により、脱水素縮合により、重縮合により、カチオンルートで又はラジカルルートで架橋可能な少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
・請求項1〜6のいずれかに記載の少なくとも1種のミスティング防止用添加剤E、
・随意としての1種以上の架橋用有機ケイ素化合物B、
・随意としての、前記ポリオルガノシロキサンAに考えられる反応のタイプの応じて選択される種類の、1種以上の触媒又は光開始剤C、
・随意としての1種以上の粘着性調整剤系K、及び
・随意としての1種以上の架橋禁止剤D
を含む、前記液状シリコーン組成物X。
【請求項8】
軟質支持体をシリコーンコーティングの前駆体である液状シリコーン組成物Xでコーティングする時のミスティングを減らすための、請求項1〜3のいずれかに記載のミスティング防止用添加剤Eの使用。
【公表番号】特表2010−535862(P2010−535862A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512685(P2010−512685)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057759
【国際公開番号】WO2008/155374
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057759
【国際公開番号】WO2008/155374
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】
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