説明

ロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物

【課題】本発明は、ロール部材として使用される、耐摩耗性に優れかつ、低硬度の注型ウレタンエラストマー形成性組成物を提供する。
【解決手段】注型熱硬化ウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート成分から成る主剤が、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート及び又は、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネートから成り、活性水素成分から成る硬化剤が、2種類以上のグリコール類と、アジピン酸をエステル化することによって得られるアジペート系共エステルポチオールから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール部材として使われている、注型ウレタンエラストマー形成性組成物、注型ウレタンエラストマー成型物及びその製造方法に関し、更に詳しくは、二液熱硬化性の新規なポリウレタンエラストマーにおける耐摩耗性に優れた注型ウレタンエラストマー成型物、およびこのポリウレタンエラストマー形成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロール部材として使用されている注型ウレタンエラストマーは、イソシアネート成分から成る主剤と、活性水素化合物成分から成る硬化剤とを、注型機のミキシングヘッドで混合し、得られた混合液を型に注入し、この型内で当該混合液を加熱硬化(ウレタン化反応)させることにより製造することができる。
【0003】
ここに注型ウレタンエラストマーを形成するためのイソシアネート成分としては、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)変成ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)プレポリマー、或いは、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)変成トリレンジイソシアネート(TDI)プレポリマーを主剤とするイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーが好適に用いられ、活性水素化合物成分としては、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、トリメチロールプロパン(TMP)、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオールの3成分以上から成る硬化剤が好適に用いられ、これらを混合して加熱硬化させることにより得られる注型エラストマーが広く使用されている。この他、エステルポリオール系のシステムでは、TMP変成された多官能ジエチレンアジペートとTDIから成り、これらを混合して加熱硬化させることにより得られるワンショットタイプの注型エラストマーが広く使用されている。
【0004】
特許文献1では、イソシアネート基末端プレポリマーとポリアルキレンポリオールの注型エラストマーで可塑剤を含まない低硬度のロールが提案されている。
特許文献2では、イソシアネート成分としてウレトンイミン変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含む変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたは、粗製ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートを用い、ポリオールとしてポリオレフィンポリオールを用いた現像ローラが提案されている。
【特許文献1】特開2002−37839
【特許文献2】特開平11−5637
【0005】
従来、使用されている注型ウレタンロール部材は、EPDM等のゴムロールより耐摩耗性に優れていると言うことで広く使用されて来たが、近年、産業機器の高速化と共にロール部材にかかる負荷が増大しており、既存のウレタンロール部材でも十分な耐久性を得る事が難しい状況に成っており、更なる耐久性向上が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、産業機器に使用されているロール部材は、たんなる単価よりもライフを考慮に入れたランニングコストの削減が望まれている。比較的単価の低いEPDM等のゴムロールよりも若干単価は高く成るが耐久性に優れているウレタンロールが広く使用されてきている。世界競争力を持たせる目的で更なるトータルコストの削減が課題として挙げらおり、耐久性の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、高速運転される産業機器に使用されている注型ウレタンロール部材において、特定の配合を行う事により従来の注型ウレタンロールよりも耐摩耗性を格段に向上させる事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(3)に示されるものである。
(1)イソシアネート成分から成る主剤(A)と、活性水素化合物成分から成る硬化剤(B)を混合・反応させて得られるロール部材用注型熱硬化ウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート成分から成る主剤(A)は、少なくともポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A1)及び/又はウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート(A2)から成り、活性水素化合物成分から成る硬化剤(B)は、少なくとも2種類以上のグリコール類(B1)とアジピン酸(B2)をエステル化することによって得られるアジペート系共エステルポリオール(B3)から成ることを特徴とする、JIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。
(2)グリコール類(B1)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールのうちの少なくとも2種類以上から成る事を特徴とする、請求項1に記載のJIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。
(3)アジペート系共エステルポリオール(B3)の数平均分子量が、650〜3000である事を特徴とする、請求項1又は2に記載のJIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のように、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート及び、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネートの何れかと、2種類以上のグリコール類とアジピン酸をエステル化して得られるアジペート系共エステルポリオールから成る注型ウレタンエラストマーは耐摩耗性、及び耐久性に優れる。
従って該注型ウレタンエラストマーをロールの構成部品として使用すると、部品の交換回数を削減することができ、トータルコストを削減できる。
本発明は、ロール部材用注型ウレタンエラストマーの成型物において、ポリオールがアジペート系共エステルポリオールを用いることにより、硬度変化の少ないJIS−A硬度、20〜60度のウレタンエラストマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ポリイソシアネート(A)及びポリオール(B)を混合・反応させることから成るロール部材用注型熱硬化ウレタンエラストマーにおいて、ポリイソシアネート(A)が、少なくともポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A1)及び/又はウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート(A2)から成り、ポリオール(B)が少なくとも2種類以上のグリコール類(B1)とアジピン酸(B2)をエステル化することにより得られるエステルポリオールからなることを特徴とするものでる。
【0011】
本発明に用いるポリイソシアネートとしては特に限定されるものではなく、例えば4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート等などの芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートのウレトンイミン変成体、ウレタン変成体、ビウレット変成体、アロファネート変成体など、通常のポリウレタンエラストマーの製造に使用されるポリイソシアネートを挙げることができ、これらは単独または二種以上の混合物として用いることができる。
このなかでも、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート及び、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
また、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等などの芳香族ジイソシアネート、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート、もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート、及びこれらポリイソシアネートの各種変成体などを、前述のポリイソシアネートに併用して使用することも可能である。
【0012】
ポリオール(B)は、少なくとも2種類以上のグリコール類(B1)とアジピン酸(B2)とをエステル化することによって得られるアジペート系共エステルポリオール(B3)を使用することができる。該グリコール類(B1)としては、少なくともエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、のうちの2種類以上から成る事が好ましい。本発明では、エチレングリコ−ルと、1,4−BDを併用して使用するのが特に好ましい。この他、トリメチロールプロパン等の3官能グリコールを導入する事により多官能化したグリコール類も使用出来る。
【0013】
ポリオール(B)の数平均分子量は、650〜3000の範囲にあることが好ましく、1000〜2500の範囲にあることが更に好ましい。
数平均分子量が650未満では硬度が高くなりすぎ、数平均分子量が3000を超えると低硬度になりすぎ、機械的物性が低下する。
【0014】
ポリオール(B)以外として、硬度調整する目的で、短鎖グリールを混合して使用することもでき、これに使う短鎖グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。この中でも、1,4ブタンジオールが特に好ましい。
【0015】
本発明においては、必要に応じて添加剤として、導電性カーボン、イオン導電剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤、顔料、抗菌剤等を使用できる。また、硬度調整のために可塑剤も使用できる。
【0016】
本発明のロール部材用注型ウレタンエラストマーの具体的な製造手順としては、上記各原料と成形型を用い、例えば以下のようにして製造される。
1.ポリイソシアネート(A)とポリオール(B)とを攪拌混合したのち、撹拌時に巻き込んだエアー等を真空脱泡により抜く(混合)。
2.予め、40〜150℃に予熱した成形型に混合液をを流し込み(注型)、40〜150℃で、1〜12hr程度、加熱することにより硬化反応を促進させる(硬化)。
3.十分に硬化反応を行った後、金型よりウレタン成型物を取り出す(脱型)。
【実施例】
【0017】
以下に本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下において「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味する。
【0018】
〈実施例1〉
下記表1に示す処方に従って、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業(株)製)80.0部と、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMTL、日本ポリウレタン工業(株)製)20.0部とを混合し、この系を40℃で1時間攪拌混合することにより、NCO含量30.3%のポリイソシアネート(A)を調整し、40℃にて保温準備した。
【0019】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPEBA−2000(ポリエチレンブチレンアジペート、数平均分子量 2000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価55.2KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0020】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0021】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、本発明のポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。
【0022】
〈実施例2〉
下記表1に示す処方に従って、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、100.0部、NCO含量30.7%のポリイソシアネート(A)を40℃にて保温準備した。
【0023】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPEBA−2000(ポリエチレンブチレンアジペート、数平均分子量 2000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価55.2KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0024】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0025】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、本発明のポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。
【0026】
〈実施例3〉
下記表1に示す処方に従って、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、100.0部、NCO含量28.9%のポリイソシアネート(A)を40℃にて保温準備した。
【0027】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPBHA−2000(ポリブチレンヘキサメチレンアジペート、数平均分子量 1000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価106.8KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0028】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、本発明のポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0029】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、本発明のポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。
【0030】
〈比較例1〉
下記表1に示す処方に従って、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、80.0部と、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、20.0部とを混合し、この系を40℃で1時間攪拌混合することにより、NCO含量30.3%のポリイソシアネート(A)を調整し、40℃にて保温準備した。
【0031】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPEA−2000(ポリエチレンアジペート、数平均分子量 2000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価55.1KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0032】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0033】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。このウレタン組成物は、異なるポリオール(1種類のグリコールから成るポリエチレンアジペート)を用いた場合の比較用の組成物であり、3ヶ月間の経時により、硬度の上昇が見られるため、実用的ではない結果と成った。
【0034】
〈比較例2〉
下記表1に示す処方に従って、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、100.0部、NCO含量30.7%のポリイソシアネート(A)を40℃にて保温準備した。
【0035】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPBA−2000(ポリブチレンアジペート、数平均分子量 2000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価55.4KOHmg/gの触媒入りのポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0036】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0037】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。このウレタン組成物は、異なるポリオール(1種類のグリコールから成るポリブチレンアジペート)を用いた場合の比較用の組成物であり、3ヶ月間の経時により、硬度の上昇が見られるため、実用的ではない結果と成った。
【0038】
〈比較例3〉
下記表1に示す処方に従って、ウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート、100.0部、NCO含量28.9%のポリイソシアネート(A)を40℃にて保温準備した。
【0039】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたPTG−2000(ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量 2000)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価55.1KOHmg/g触媒入りのポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0040】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0041】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。このウレタン組成物は、異なるポリオール(ポリテトラメチレングリコール)を用いた場合の比較用の組成物であり、耐摩耗性が非常に悪く、3ヶ月間の経時により、硬度の上昇が若干見られ、実用的ではない結果と成った。
【0042】
〈比較例4〉
下記表1に示す処方に従って、トリレンジイソシアネート、100.0部、NCO含量48.2%のイソシアネート(A)を40℃にて保温準備した。
【0043】
更に、下記表1に示す処方に従って、予め80℃に予熱しておいたTMPを開始剤とした2.2官能のPDEA−2000(ポリヘキサレンアジペート、数平均分子量 2000、f=2.2)100.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.02部とを混合し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価62.3KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0044】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0045】
直ちに、このイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。このウレタン組成物は、多官能ジエチレンアジペートとTDIから成る比較用の組成物であり、耐摩耗性が非常に悪く、実用的ではない結果と成った。
【0046】
〈比較例5〉
下記表1に示す処方に従って、MDI、32.7部と、PPG−2000、67.3部とを混合し、この系を75℃で5時間加熱して反応させることにより、NCO含量5.3%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を調整した。
【0047】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、PTG−2000、87.7部と、1,4−BD、8.8部と、TMP、3.5部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.10部とを混し、この系を80℃で1時間攪拌混合することにより、水酸基価153.7KOHmg/gの触媒入りポリオール(B)を調整し、80℃にて保温準備した。
【0048】
次いで、下記表1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。
【0049】
直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されている2mm厚の平板シート形成用の金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ポリウレタンエラストマー成型物を製造し、この成型物を金型から取り出した。このウレタン組成物は、従来から用いられているポリテトラメチレングリコール(PTMG)変成ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)プレポリマーを用いた場合の比較用の組成物であり、耐摩耗性が非常に悪く、実用的ではない結果と成った。
【0050】
(応用例)
下記表1の実施例1に示す処方(配合比)に従って、予め準備しておいたポリイソシアネート(A)と予め準備しておいた触媒入りポリオール(B)とを瞬時に混合攪拌し、ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調整し、速やかに真空脱泡を行い溶存ガスの除去を行った。直ちに、このポリイソシアネート(A)と触媒入りポリオール(B)との混合物を120℃に予熱されており、ロール芯金が配されている成形金型に注入し、120℃で5時間加熱硬化させることにより、ロール芯金の表面が硬化物(弾性部材)により被覆されたロールを製造した。
【0051】
〈成型物の評価〉
実施例1〜3および比較例1〜5により得られたポリウレタンエラストマー成型物を脱型後、23℃で1週間養生した後、各々について、硬度(JIS−A型硬さ計による)、引張強度、引裂強度、伸張率、反発弾性率およびTaber摩耗をJISK7312に準じ測定を実施した。尚、経時硬度については、23℃で3ヶ月間養生した後、測定を実施した。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係る成型物は、耐摩耗性が要求される種々のロールの構成部品として好適に使用することができ、本発明に係る組成物を利用することにより、ライフが長くなるため、部品交換回数の削減が行えるなどトータルコストの削減を実現することができる。
【0054】
本発明に係る成型物は、従来公知の成型物では対応することのできなかった、耐摩耗性の優れたロール部品として産業機器に搭載させることができ、高速処理を行う産業機器に対し新たな性能を付与することができ、産業機器の高速処理化に寄与することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分から成る主剤(A)と、活性水素化合物成分から成る硬化剤(B)を混合・反応させて得られるロール部材用注型熱硬化ウレタンエラストマーにおいて、イソシアネート成分から成る主剤(A)は、少なくともポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(A1)及び/又はウレトンイミン変成ジフェニルメタンジイソシアネート(A2)から成り、活性水素化合物成分から成る硬化剤(B)は、少なくとも2種類以上のグリコール類(B1)とアジピン酸(B2)をエステル化することによって得られるアジペート系共エステルポリオール(B3)から成ることを特徴とする、JIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
グリコール類(B1)が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールのうちの少なくとも2種類以上から成る事を特徴とする、請求項1に記載のJIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
アジペート系共エステルポリオール(B3)の数平均分子量が、650〜3000である事を特徴とする、請求項1又は2に記載のJIS−A硬度、20〜60度のロール部材用注型ウレタンエラストマー形成性組成物。


【公開番号】特開2007−211041(P2007−211041A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29443(P2006−29443)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】