説明

ロール

【課題】被洗浄面からの液体の吸い上げ性能に優れ、ロールが弾性変形することにより、長期間に亘り、液体除去機能が持続するロールを提供する。
【解決手段】鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール1において、前記ロール1はロール部2及び台座3を有し、前記ロール部2はロール片4が前記台座3の外周面に形成されてあり、前記ロール片2は不織布にて形成されてあると共に、前記不織布を構成する少なくとも1本の繊維は長手方向に中空部、あるいは空洞部を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関しては、さまざまな改良がなされ、例えば、合成繊維からなる不織布で構成されたディスク状物を多数枚重畳させてなるロールにおいて、該不織布が親水性極細長繊維を含む長繊維絡合体で構成されていることを特徴とする不織布ロールが、特開2004−28162号公報に開示されてある。
【0003】
また、合成繊維を交絡させてなる不織布で構成されたディスク状物を、多数枚重畳させてなるロールであって、該合成繊維がスパンボンド長繊維であり、かつ、該ロールの表面硬度がJISK6301におけるスプリング式C型ゴム硬度計で測定したときに50°以上であることを特徴とする不織布ロールが、特開平6−280854号公報に開示されてある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−28162号公報
【特許文献2】特開平6−280854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロールは、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、特開2004−28162号公報に開示されてある技術においては、不織布は極細長繊維にて形成されているので、繊維間に空隙を有し、液体の吸い上げ性能には優れているものの、不織布は高分子弾性体等を含んでいないので、ロールは弾性変形することができず、液体除去機能が長期間に亘って持続しないという課題を有していた。即ち、ロールの液体除去機能は、ロールに一定の圧力がかかりながら回転することにより、液体を被洗浄面の両端部から流し去るダム機能と、ロールが回転しながら圧力により圧縮される圧縮ゾーンにおいて、ロール部の空隙部に吸収された液体を被洗浄面に一旦放出し、次いでロールが圧力による圧縮から開放される開放ゾーンにおいて、不織布を形成する繊維により被洗浄面の液体がロール部に吸い上げられ、ロール部の空隙部に放出される吸排機能とから構成されている。前記吸排機能は、不織布の有する高分子弾性体等によりロールが弾性変形することから、ロール部の空隙率が前記圧縮ゾーンで0%となり、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元する為、発現する。しかし、前記従来技術においては、不織布は高分子弾性体等を含んでいないので、前記圧縮ゾーンでロール部の空隙率は0%になるが、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することができず、ロールは塑性変形するものの、弾性変形することはできない。その為、空隙率が減少したロール部の空隙部には、前記開放ゾーンにおいて繊維により吸い上げられた液体の全量を放出することができず、ロール部の空隙部に放出されなかった液体は、被洗浄面上に放出されることになり、液体除去機能が長期間に亘って持続しないのである。
【0006】
また、特開平6−280854号公報に開示されてある技術においては、不織布は高分子樹脂を合成繊維に対し5重量%以上充填されて含有しているので、ロールは弾性変形し、吸排機能を発現させることは可能であるが、不織布は合成繊維からなるスパンボンド長繊維不織布であり、繊度が1〜10デニールである中実状の原糸繊維である為、ロールの吸排機能における開放ゾーンでの液体の吸い上げ性能が低く、液体除去機能が劣るという課題を有していた。合成樹脂からなる原糸繊維は、天然繊維に比べて耐摩耗性等には優れているものの、天然繊維のように空隙を有していないので、液体の吸い上げ性能が劣るのである。なお、原糸繊維とは、一般的に繊度が1デニール以上の繊維のことであり、1デニール未満の繊維は極細繊維と呼ばれている。また、1デニールとは9000mで1gとなる繊維のことである。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、被洗浄面からの液体の吸い上げ性能に優れ、ロールが弾性変形することにより、長期間に亘り、液体除去機能が持続するロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決する為に、本発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部はロール片が前記台座の外周面に形成されてあり、前記ロール片は不織布にて形成されてあると共に、前記不織布を構成する少なくとも1本の繊維は長手方向に中空部、あるいは空洞部を有するもので、繊維の有する中空部、あるいは空洞部が被洗浄面から液体を、スポンジの如く吸い上げる。その為、優れた液体の吸い上げ性能が発揮される。
【0009】
また、ロールに一定の圧力がかかりながら回転すると、繊維の有する中空部、あるいは空洞部により、ロール部は圧縮ゾーンで圧縮し、開放ゾーンで伸長するので、ロールは弾性変形し、吸排機能が発現する。その為、ロールは長期間に亘り、被洗浄面の液体の除去が可能である。
【発明の効果】
【0010】
ロール片を構成する不織布の繊維は長手方向に中空部、あるいは空洞部を有するので、中空部、あるいは空洞部の空隙に液体が入り込み、被洗浄面から液体を、スポンジの如く吸い上げる。その為、ロールは優れた液体の吸い上げ性能を発揮することができる。
【0011】
また、ロールに一定の圧力がかかりながら回転すると、繊維の有する中空部、あるいは空洞部により、ロール部は圧縮ゾーンで圧縮し、開放ゾーンで伸長するので、ロールは弾性変形し、吸排機能が発現する。その為、ロールは長期間に亘り、被洗浄面から液体を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部はロール片が前記台座の外周面に形成されてあり、前記ロール片は不織布にて形成されてあると共に、前記不織布を構成する少なくとも1本の繊維は長手方向に中空部、あるいは空洞部を有するもので、繊維の有する中空部、あるいは空洞部が被洗浄面から液体を、スポンジの如く吸い上げる。その為、ロールは優れた液体の吸い上げ性能を発揮することができる。
【0013】
また、ロールに一定の圧力がかかりながら回転すると、繊維の有する中空部、あるいは空洞部により、ロール部は圧縮ゾーンで圧縮し、開放ゾーンで伸長するので、ロールは弾性変形し、吸排機能が発現する。その為、ロールは長期間に亘り、被洗浄面から液体を除去することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明のロールにおいて、前記繊維は外周面に少なくとも一つの稜を有すると共に、長手方向に中空部、あるいは空洞部を有する異形中空断面にて形成されてあるもので、略同一外径の概丸形中空断面を有する繊維に比べて、繊維と液体との接触面積が増大する為、液体の吸い上げ性能が向上する。
【0015】
第3の発明は、特に、第1から第2の発明のロールにおいて、前記繊維は複数の中空部を有する断面、あるいは長手方向に複数の空洞部を有するもので、1本の繊維は複数の中空部、あるいは空洞部を有する為、一つの中空部、あるいは空洞部を有する1本の繊維に比べて、液体の吸い上げ性能が大幅に向上すると共に、ロールは一層、容易に弾性変形することが可能となり、優れた吸排機能の発現により、ロールの液体除去機能の長期化につながる。
【0016】
また、中空部、あるいは空洞部を有する単一な繊維が、複数本、長手方向の外面に沿って接合された形態の1本の繊維においては、複数の中空部、あるいは空洞部に加えて、長手方向に形成された凹部が流通路となり、液体を吸い上げることが可能である為、液体の吸い上げ性能が飛躍的に向上する。
【0017】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明のロールにおいて、前記不織布は高分子弾性体を有するもので、高分子弾性体はロールに高反発弾性を付与する為、ロールは、より一層、容易に弾性変形することが可能となり、吸排機能が向上し、長期間に亘り、優れた液体除去機能を有するロールを提供することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
図1は、本発明のロールを鋼板表面の油分除去用として使用した形態の正面図、図2(A)は、ロール片を前面側から見た斜視図、図2(B)及び図2(C)は、弾性繊維を前面側から見た斜視図、図2(D)は、図2(B)の断面図、図3(A)から図3(E)は、他の実施の形態における繊維の断面図、図4(A)から図4(E)は、他の実施の形態における繊維の断面図、図4(F)は、他の実施の形態における繊維を前面側から見た斜視図である。
【0020】
図1において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4から形成されてあるロール部2より構成されてある。台座3は、鉄等の金属材料からなる略円柱形状、あるいは略円筒形状であり、外周面にロール部2が形成されてある。また、ロール部2は、複数のロール片4が重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて装着されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されてある。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成されてある。
【0021】
図2において、ロール片4は、概円盤状の平板形状に形成された不織布7であり、中心部には穴部13が形成され、外周部には端部14が形成されてある。また、不織布7を形成する弾性繊維9は、図2(B)、図2(C)、及び図2(D)の如く、長手方向に中空部10、あるいは空洞部11を有する繊維8の外面に高分子弾性体12が付着して形成されてある。
【0022】
次に、図2(B)、図2(C)、及び図2(D)を用いて、弾性繊維9について説明する。図2(B)、及び図2(D)において、繊維8は、長手方向に中空部10を有すると共に、中空部10は繊維8の一方の端部から他の端部に向かって空隙が貫通し、繊維8は概丸形中空断面を有する。そして、繊維8の外面に高分子弾性体12が付着して弾性繊維9が形成される。また、図2(C)において、繊維8は、長手方向に空洞部11を有すると共に、空洞部11は繊維8の一方の端部から他の端部に向かって繊維8の途中で空隙が閉塞し、繊維8は概丸形中空断面、あるいは概丸形断面を有する。そして、繊維8の外面に高分子弾性体12が付着して弾性繊維9が形成される。
【0023】
繊維8は、合成繊維であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂を溶融紡糸して得られる。また、芯鞘構造の複合繊維を紡糸し、加熱、薬品処理等を施すことにより、芯部を溶出して中空部10、あるいは空洞部11を有する繊維8を形成することもできる。さらに、中空部10、あるいは空洞部11の壁面にスリット状の超微細孔を設けて繊維8を形成してもよい。前記の如くの超微細孔が設けられた繊維8は、一般的には中空糸膜と呼ばれている。なお、繊維8は長繊維、短繊維のいずれであってもよい。長繊維とは一般的に糸長が50mmより大の繊維8のことであり、短繊維とは糸長が50mm以下の繊維8のことである。また、繊維8は原糸繊維、極細繊維のいずれであっても構わない。
【0024】
繊維8に占める中空部10、あるいは空洞部11の中空率、あるいは空洞率は5〜95%にて設定される。中空率、あるいは空洞率が5%未満の場合は、繊維8がスポンジの如く油分を吸い上げることが難しくなり、中空率、あるいは空洞率が95%より大の場合は、繊維8の肉厚が薄くなり、衝撃等により繊維8が切れやすくなるので、不織布7の耐摩耗性が劣ることになる。不織布7が繊維8による油分の吸い上げ性能、及び耐摩耗性を兼ね備え、ロール片4として、より好適に使用されるには、繊維8の中空率、あるいは空洞率は20〜50%に設定されるのが好ましい。
【0025】
また、高分子弾性体12には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム等のエラストマー、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂が、単独使用、あるいは併用される。
【0026】
次に、ロール1の製作方法について説明する。最初に、ロール片4を概円盤状の平板形状に打ち抜く。次いで、概円盤状の平板形状に打ち抜かれたロール片4を複数重ね合わせて、穴部13を台座3にたいして貫通させる。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて挟み付け固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、端部14を切削加工及び研磨加工し、台座3の外周面上にロール部2を形成して、製作される。
【0027】
次に、不織布7の製造方法について説明する。最初に複数本の繊維8を、平板状に集積させ、特殊な針を突き刺して機械的に3次元に絡合された布状体を形成する。前記の如くの機械的に繊維8を絡合させる方法はニードルパンチング法と呼ばれ、得られた布状体はウエッブと呼ばれている。次いで、得られたウエッブにたいして、高分子弾性体12をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維8の外面に付着させて弾性繊維9を形成すると共に、加熱して高分子弾性体12により複数の繊維8を結合させて平板形状の不織布7を形成する。前記の製造方法は、一般的にケミカルボンド法と呼ばれている。高分子弾性体12は、複数の繊維8を結合させる結合剤としての役割を果たすと同時に、不織布7が概円盤状に打ち抜かれ、ロール片4として台座3に嵌合挿入され、ロール部2として形成された場合には、ロール1に弾力性を付与する役割も担っている。なお、中空部10、あるいは空洞部11が形成されていない中実状の合成繊維、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート、プロミックス等の半合成繊維と、繊維8を併用して、前記ケミカルボンド法にて不織布7を形成し、ロール片4として用いることもできる。
【0028】
不織布7の製造方法は、前記ケミカルボンド法以外にも、例えば、繊維8に高圧水流をあてて絡合させる水流絡合法、繊維8を加熱ロールにて熱圧着させて絡合させるスパンボンド法、繊維8に高温エアーを吹き付けて熱融着させて絡合させるメルトブロー法、低沸点溶剤に合成樹脂を溶解させ紡糸口から加熱、加圧状態で紡糸と同時に溶剤を揮発させ熱ロールで繊維8を絡合させるフラッシュ紡糸法等、従来から不織布7の製造に用いられている方法なら特に限定されることなく、得られた不織布7をロール片4として用いることができる。また、前記の如くの製造方法で得られた不織布7にたいして、適宜、スプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて高分子弾性体12を、繊維8の外面に付着させ、弾性繊維9を形成し、繊維8をより強固に結合して、不織布7として構成しても何ら支障は無い。
【0029】
また、高分子弾性体12に架橋剤を添加して、高分子弾性体12の分子間に橋架け構造を形成して用いることもできる。架橋剤は、高分子弾性体12に一段と優れた弾力性を付与する目的で配合されるものであり、ロール1は、一段と優れたダム機能と吸排機能を発揮することができ、油分の除去機能が向上する。架橋剤としては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂が単独使用、あるいは併用される。前記架橋剤は、高分子弾性体12の100重量部にたいして、0.5〜5重量部配合されるのが好ましい。0.5重量部未満の場合には、高分子弾性体12の分子間全てに渡り、橋架け構造が形成されず、分子間に未架橋部分が生成され、高分子弾性体12に一段と優れた弾力性を付与することができない。5重量部より多い場合には、高分子弾性体12が硬くなり、却って弾力性が劣ることになる。また、架橋剤に、有機アミン塩、複合金属塩等の架橋助剤を、架橋剤の使用量の10〜50%添加して用いてもよい。架橋助剤は、高分子弾性体12の分子間に橋架け構造が形成されるのを促進する目的で添加されるものである。さらに、前記架橋剤を用いずに、高分子弾性体12を加熱することにより、高分子間反応を起こし、高分子弾性体12を自己架橋させて、橋架け構造を形成する方法を用いることもできる。
【0030】
また、繊維8に、界面活性剤に代表される液体浸透剤を含浸させて用いることもできる。繊維8に液体浸透剤が含浸されてある場合においては、鋼板に付着している油分とロール部2が接触した際、繊維8と油分の境界面における界面張力が低下し、繊維8と油分との湿潤性が増して、油分は繊維8に浸透しやすくなる為、繊維8による油分の吸い上げ性能が向上する。特に、ラインスピードの速い洗浄工程においては、ロール部2と鋼板との接触時間が短くなるので、迅速、且つ確実に鋼板に付着している油分を除去することができる。なお、界面張力とは、固体と液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことをいう。従って、界面張力が低下するということは、固体と液体との接触面積が大きくなることであり、繊維8と油分との接触面積が大きくなり、油分は繊維8に濡れやすくなるので、湿潤性が増し、繊維8に浸透しやすくなる。
【0031】
液体浸透剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等の炭化水素系の非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等の炭化水素系の陰イオン性界面活性剤が単独使用、あるいは併用される。なお、非イオン性界面活性剤とは、水溶液中で電荷を帯びない界面活性剤のことであり、陰イオン性界面活性剤とは、水溶液中で負の電荷を帯びる界面活性剤のことである。前記液体浸透剤は、繊維8の100重量部にたいして、0.3〜3重量部配合されるのが望ましい。0.3重量部未満の場合には、繊維8は十分な油分の浸透力を得ることができず、3重量部より多い場合には、著しい界面張力の低下が期待できず、却ってコスト高となる。また、前記炭化水素系界面活性剤の他、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を単独使用、あるいは併用しても構わない。
【0032】
次に、本発明のロール1の動作、作用について説明する。
【0033】
ロール1は、略箱形の鋼板洗浄機(図示せず)に上下一対で設置されてあり、エアーシリンダーや油圧シリンダーを用いて、ロール1にたいして一定の圧力が加えられ、回転している。そして、回転している上下のロール1の間を、油分が付着した鋼板が通過し、鋼板とロール部2が接触する。ロール部2を構成するロール片4は、高分子弾性体12が、中空部10、あるいは空洞部11を有する繊維8の外面に付着した弾性繊維9からなる不織布7にて形成されてある。その為、鋼板がロール部2と接触すると、ロール1には圧力が加えられているので、鋼板はロール部2から押し付け圧を受け、鋼板に付着している油分は、ロール1のダム機能により、鋼板の両端部から押し流される。また、ロール部2は、ロール片4が中空部10、あるいは空洞部11を有する繊維8の外面に高分子弾性体12が付着した弾性繊維9よりなる不織布7にて形成されている為、中空部10、あるいは空洞部11の有するスポンジ効果による弾力性に加えて、高分子弾性体12も弾力性を付与するので、容易に弾性変形することができ、ロール1に加えられた圧力からの圧縮ゾーンにてロール部2の空隙部は空隙率が0%となり、空隙部に溜まっていた油分を一旦、鋼板に放出し、次いでロール1が圧力から開放される開放ゾーンにて空隙部が元の空隙率に復元し、繊維8の有する中空部10、あるいは空洞部11がスポンジの如く油分を吸い上げ、復元した空隙部に放出する吸排機能が発現する。前記ダム機能と吸排機能が発現することにより、鋼板に付着している油分は、鋼板から除去されると共に、長期間に亘って、油分除去機能が持続する。
【0034】
次に、不織布7を構成する他の実施の形態の繊維について、図3、及び図4を用いて説明する。
【0035】
繊維8は概丸形中空断面を有するよう形成されているが、図3(A)の如くの四角形中空断面を有する繊維18、図3(B)の如くの三角形中空断面を有する繊維28、図3(C)の如くの概星形中空断面を有する繊維38、図3(D)の如くの概雫状中空断面を有する繊維48等を用いて、不織布7を形成し、ロール片4として使用してもよい。中空部20、30、40、50の形状は、繊維18、28、38、48の断面形状と略同一であっても構わないし、図3(E)の如く、中空部60は概丸形で、繊維58は四角形中空断面を有する等、中空部60の形状と、繊維58の断面形状が異なるように形成しても構わない。また、前記以外にも、十字形中空断面、卍形中空断面、M形中空断面、菱形中空断面、Y形中空断面等の異形中空断面を有する繊維を単独、あるいは併用して不織布7を形成し、ロール片4として用いることができる。なお、適宜、スプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて高分子弾性体12を、繊維18、28、38、48、58の外面に付着させ、不織布7として構成してもよい。
【0036】
異形中空断面を有する繊維18、28、38、48、58により不織布7を形成し、ロール片4として用いた場合、略同一外径の概丸形中空断面を有する繊維8に比べて、繊維18、28、38、48、58と油分との接触面積が増大する為、油分の吸い上げ性能が向上する。
【0037】
また、図4(A)の如く、複数の中空部70を有する繊維68を使用して、不織布7を形成し、ロール片4として用いてもよい。前記の如くのロール片4を用いた場合においては、一つの中空部、あるいは空洞部を有する1本の繊維8、18、28、38、48、58に比べて、油分の吸い上げ性能が大幅に向上すると共に、ロール1は一層、容易に弾性変形することが可能となり、優れた吸排機能の発現により、ロール1の油分除去機能の長期化につながる。
【0038】
さらに、図4(B)、図4(C)、図4(D)、図4(E)、及び図4(F)に示すように、中空部80、90、100、110、120、あるいは空洞部121を有する単一な繊維が、複数本、長手方向の外面に沿って接合された形態の繊維78、88、98、108、118を使用して、不織布7を形成し、ロール片4として用いてもよい。図4(B)において、繊維78は概丸形の中空部80を複数有する形態である。図4(C)において、繊維88は四角形の中空部90を複数有する形態である。図4(D)において、繊維98は概丸形の中空部100と四角形の中空部110を有する形態である。図4(E)において、繊維108は複数の概丸形の中空部120を有する単一な繊維が、複数本、長手方向の外面に沿って接合された形態である。図4(F)において、繊維118は概丸形の空洞部121を複数有する形態である。
【0039】
繊維78、88、98、108、118は紡糸口から合成樹脂を溶融紡糸して、前記の如くの形態に形成してもよいし、中空部80、90、100、110、120、あるいは空洞部121を有する単一な繊維を複数本用意して、加熱、薬品処理等の方法を用いて、単一な繊維の外面を溶融して接合しても得ることができる。
【0040】
また、接合される単一な繊維の本数、断面形状、外径、中空部80、90、100、110、120、あるいは空洞部121の数、形状、外径、1本の繊維78、88、98、108、118における中空部80、90、100、110、120と空洞部121の併用等の各種条件は、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、自由に組み合わせて、設定することができる。また、適宜、スプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて高分子弾性体12を、繊維68、78、88、98、108、118の外面に付着させ、不織布7として構成しても構わない。
【0041】
前記の如くの中空部80、90、100、110、120、あるいは空洞部121を有する単一な繊維が、複数本、長手方向の外面に沿って接合された形態の繊維78、88、98、108、118を使用して不織布7を形成し、ロール片4として用いた場合においては、複数の中空部80、90、100、110、120、あるいは空洞部121に加えて、長手方向に形成された凹部77、87、97、107、117が流通路となり、油分を吸い上げることが可能である為、油分の吸い上げ性能が飛躍的に向上する。
【0042】
なお、繊維8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118は、単独で使用して不織布7を形成してもよいし、併用して不織布7を形成してもよい。また、繊維8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118と、中実状の合成繊維、天然繊維、半合成繊維とを併用して不織布7を形成し、ロール片4として用いても何ら支障は無い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、高い耐久性を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のロールを鋼板表面の油分除去用として使用した形態の正面図
【図2】(A)ロール片を前面側から見た斜視図、(B)弾性繊維を前面側から見た斜視図、(C)弾性繊維を前面側から見た斜視図、(D)図2(B)の断面図
【図3】(A)他の実施の形態における繊維の断面図、(B)他の実施の形態における繊維の断面図、(C)他の実施の形態における繊維の断面図、(D)他の実施の形態における繊維の断面図、(E)他の実施の形態における繊維の断面図
【図4】(A)他の実施の形態における繊維の断面図、(B)他の実施の形態における繊維の断面図、(C)他の実施の形態における繊維の断面図、(D)他の実施の形態における繊維の断面図、(E)他の実施の形態における繊維の断面図、(F)他の実施の形態における繊維を前面側から見た斜視図
【符号の説明】
【0045】
1 ロール
2 ロール部
3 台座
4 ロール片
5 止め金具
6 プレート
7 不織布
8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118 繊維
9 弾性繊維
10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120 中空部
11、121 空洞部
12 高分子弾性体
13 穴部
14 端部
77、87、97、107、117 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部はロール片が前記台座の外周面に形成されてあり、前記ロール片は不織布にて形成されてあると共に、前記不織布を構成する少なくとも1本の繊維は長手方向に中空部、あるいは空洞部を有することを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、前記繊維は外周面に少なくとも一つの稜を有すると共に、長手方向に中空部、あるいは空洞部を有する異形中空断面にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、前記繊維は複数の中空部を有する断面、あるいは長手方向に複数の空洞部を有することを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、前記不織布は高分子弾性体を有することを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−51172(P2008−51172A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226346(P2006−226346)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】