説明

ロール

【課題】被洗浄面にたいするグリップ力が高く、且つ被洗浄面からの液体除去性能に優れたロールを提供する。
【解決手段】鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、前記被洗浄面にたいする張力の付与、あるいは前記被洗浄面を搬送する為のロール1において、前記ロール1はロール部2及び台座3を有し、前記ロール部2は前記台座3の外周に形成されてあると共に、不織布からなり、外周に線状及び/又は斑点状の窪み部7a、7bが形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、前記被洗浄面にたいする張力の付与、あるいは前記被洗浄面を搬送する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールに関しては、不織布ロール、ゴムロール等が一般的に使用され、例えば、不織布ロールに関しては、合成繊維不織布で構成されたディスク状物を、多数枚重畳させてなるロールにおいて、該合成繊維不織布が融点の異なる複数の繊維成分が混繊されてなるスパンボンド長繊維不織布であり、かつ、該合成繊維の低融点繊維成分が接合することにより形態固定されており、しかも該ロールの表面はJISK6301におけるスプリング式C型ゴム硬度計で測定したとき、60度以上の硬度を有するものであることを特徴とする不織布ロール(特許文献1)が考案されている。
【0003】
また、ゴムロールについては、芯ロールの周面にゴム層を有してなり、該ゴム層のロール軸心方向縁端近傍の外周面に、周方向全体にわたる環状溝を形成したゴムロールであって、環状溝とロール軸心方向縁端との間のゴム層の外周面が、粗面に形成されていることを特徴とするゴムロール(特許文献2)がある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−190046号公報
【特許文献2】特許第2831938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の不織布ロールは、被洗浄面に接触するのがロールの不織布層であり、不織布層はゴムロールの有するゴム層に比べて粗面であることから、ゴムロールに比べて摩擦抵抗を高く設定することができる。また、不織布層は合成繊維を有する為、被洗浄面に付着した液体を繊維が吸い上げることから、液体の絞液性は、繊維のないゴムロールに比べて優れている。しかしながら、不織布ロールの表面は平滑である為、被洗浄面にたいするグリップ力、すなわち摩擦力、抵抗力は弱く、特に、被洗浄面に鉱物油等の粘度の高い油分が付着している場合においては、グリップ力が弱いことから、被洗浄面が洗浄ライン内で蛇行し、蛇行した被洗浄面を正常な位置に戻すのにラインを停止しなければならず、生産工程の計画を予定通りに遂行できず、生産性に支障をきたすという課題があった。
【0006】
また、特許文献2のゴムロールにおいては、ゴム層に環状溝が形成されてあると共に、環状溝とロール軸心方向縁端との間のゴム層の外周面が粗面に形成されている為、ゴム層の表面が平滑であるゴムロールに比べて、被洗浄面にたいするグリップ力は高く、被洗浄面が洗浄ライン内で蛇行することが抑制される。しかしながら、ゴムロールは不織布ロールの如く、被洗浄面に付着した液体を吸い上げる繊維を有していない為、被洗浄面からの液体の除去性能が劣るという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、被洗浄面にたいするグリップ力が高く、且つ被洗浄面からの液体除去性能に優れたロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、前記被洗浄面にたいする張力の付与、あるいは前記被洗浄面を搬送する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は前記台座の外周に形成されてあると共に、不織布からなり、外周に線状及び/又は斑点状の窪み部が形成されてあるもので、ロール部の外周に、線状及び/又は斑点状の窪み部が形成されている為、ロール部の表面が平滑なロールに比べて、被洗浄面にたいするグリップ力を高く設定することができる。その為、洗浄ライン内にて、特に、被洗浄面に高粘度の液体が付着している場合においても、被洗浄面が蛇行することが抑えられ、鋼板、非鉄金属板、樹脂板等の生産性の向上につながる。
【0009】
また、ロール部は不織布からなり、液体を吸い上げる繊維を有する為、ゴムロールに比べて、被洗浄面からの液体除去性能に優れる。
【0010】
請求項2の発明のロールは、特に、請求項1のロールにおいて、ロール部は台座の外周に不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあるもので、ロールの使用目的に応じて、ロール片の台座にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部の表面の硬度を任意に設定することができる。すなわち、ロール片の積層枚数が多ければ硬度は高くなり、少なければ硬度は低くなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0011】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項1から2のロールにおいて、窪み部の淵部にグリップ部が形成されてあるもので、ロール部が被洗浄面に圧接されながら、台座の回転に伴い接触すると、グリップ部は変形し、被洗浄面にたいして接触面積を広く確保しながら接触する。その為、ロールは、被洗浄面にたいする摩擦抵抗が向上し、一段と高いグリップ力が発揮される。
【0012】
請求項4の発明のロールは、特に、請求項1から3のロールにおいて、窪み部はロール部の長手方向に略平行に形成されてあるもので、被洗浄面に液体が付着している場合、ロール部を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、ロール部の長手方向に略平行に形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出される。その為、ロールの液体除去性能が大幅に向上する。
【0013】
請求項5の発明のロールは、特に、請求項1から3のロールにおいて、窪み部はロール部の外周に巻き回されて形成されてあるもので、被洗浄面に液体が付着している場合、ロール部を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、台座の回転に伴い、ロール部の外周に巻き回されて形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出される。その為、ロールの液体除去性能が大幅に向上する。また、窪み部はロール部の外周に巻き回されて形成されてある為、ロールの回転時において、窪み部は連続的に被洗浄面に当接する。
【0014】
請求項6の発明のロールは、特に、請求項5のロールにおいて、ロール部の長手方向に窪み部の螺旋の傾斜方向が逆になるよう設定された反転部が少なくとも1箇所以上形成されてあるもので、被洗浄面に液体が付着している場合、ロール部を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、台座の回転に伴い、ロール部の外周に巻き回されて形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出される。特に、反転部を境に、窪み部の螺旋の傾斜方向が逆になることから、ロール部の一方の端部からでなく、両端部からロールの外部に液体を、迅速、且つ確実に排出することができる。その為、ロールの液体除去性能が飛躍的に向上する。
【0015】
請求項7の発明のロールは、特に、請求項1から3のロールにおいて、窪み部はロール部の外周に円環状に形成されてあるもので、被洗浄面に液体が付着している場合、ロール部を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、一旦、ロール部の外周に円環状に形成された窪み部に保液され、台座の回転に伴い、ロールの外部に放出される。その為、ロールの液体除去性能が大幅に向上する。また、円環状の窪み部が被洗浄面の進行方向と同一の方向に回転する為、被洗浄面の蛇行が防止される。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明のロールは、ロール部の外周に、線状及び/又は斑点状の窪み部が形成されている為、被洗浄面にたいするグリップ力を高く設定することができると共に、ロール部は不織布からなり、液体を吸い上げる繊維を有する為、優れた液体除去性能を発揮することができる。
【0017】
請求項2の発明のロールは、ロールの使用目的に応じて、ロール片の台座にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部の表面の硬度を任意に設定することができる。
【0018】
請求項3の発明のロールは、被洗浄面にたいしてグリップ部が接触面積を広く確保しながら接触する為、被洗浄面にたいする摩擦抵抗が向上し、一段と高いグリップ力を発揮することができる。
【0019】
請求項4の発明のロールは、ロール部を構成する不織布の有する繊維が吸液できなかった液体を、ロール部の長手方向に略平行に形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出することができる為、液体除去性能が大幅に向上する。
【0020】
請求項5の発明のロールは、ロール部を構成する不織布の有する繊維が吸液できなかった液体を、台座の回転に伴い、ロール部の外周に巻き回されて形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出することができる為、液体除去性能が大幅に向上する。
【0021】
請求項6の発明のロールは、ロール部を構成する不織布の有する繊維が吸液できなかった液体を、台座の回転に伴い、ロール部の外周に巻き回されて形成された窪み部を通して、ロール部の端部からロールの外部に排出することができるが、特に、反転部を境に、窪み部の螺旋の傾斜方向が逆になることから、ロール部の一方の端部からでなく、両端部からロールの外部に液体を、迅速、且つ確実に排出することができる為、液体除去性能が飛躍的に向上する。
【0022】
請求項7の発明のロールは、ロール部を構成する不織布の有する繊維が吸液できなかった液体を、一旦、ロール部の外周に円環状に形成された窪み部に保液し、台座の回転に伴い、ロールの外部に放出することができる為、液体除去性能が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例におけるロールの正面図、図2は、ロール片を前面側から見た斜視図、図3(a)は、図1のA−A部分断面図、図3(b)は、ロール部が被洗浄面である鋼板に圧接した場合の部分断面図である。
【0025】
図1において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4からなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄等の金属材料からなる略円柱形状、あるいは略円筒形状であり、外周にロール部2が形成されている。ロール部2は、複数のロール片4が台座3の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されている。また、ロール部2の外周には、複数本の線状の窪み部7a、及び複数個の斑点状の窪み部7bが形成されてあり、線状の窪み部7aはロール部2の長手方向に略平行に設けられ、斑点状の窪み部7bは千鳥状をなすよう配置されている。なお、線状の窪み部7aは、ロール部2の長手方向に20°程度までの傾斜角度を有し、捩られて形成されてあっても構わない。
【0026】
図2において、ロール片4は、中心部に穴部10、外周部に端部11が形成された概円環状の不織布8からなる。不織布8は、複数本の繊維9を有する。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成される。また、特に図示しないが、台座3にたいするロール片4の位置ズレを防止する為に、ロール片4の内周部に凹状溝を形成すると共に、台座3の軸心方向の外周部に凸部からなるキーを装着して、前記凹溝をキーに嵌合させることにより、ロール片4を台座3に積層してもよい。
【0027】
図3(a)において、ロール部2の外周に形成された窪み部7aの断面形状は、略凹状であり、窪み部7aの有する淵部12の両方の外周端側には、ロール部2の外周と略直角をなすグリップ部13が形成されている。なお、窪み部7aの断面形状は、略凹状に限らず、例えば、傾斜を有する略三角形状、あるいは曲面を有する形状等に形成してもよい。また、斑点状の窪み部7bの断面形状についても同様である。
【0028】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0029】
最初に、複数本の繊維9を有する平板状の不織布8を用意し、不織布8をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部10、及び端部11を有する概円環状のロール片4に打ち抜く。次いで、ロール片4を複数重ね合わせて、穴部10を台座3にたいして貫通させる。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4を挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、端部11を切削加工及び研磨加工し、台座3の外周にロール部2を形成する。次いで、ロール部2の外周を、砥石、あるいはバイト、カッター等の刃物を用いて彫り、窪み部7a、7bを形成してロール1が製作される。
【0030】
ロール部2の表面の硬度は、40°〜95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、硬度が高すぎて、ロール1の弾力性が劣り、ロール部2が被洗浄面に圧接されてもロール部2と被洗浄面との接触面積が広がらず、高いグリップ力を発揮することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0031】
また、ロール部2は、複数の概円環状のロール片4を、台座3の外周に積層して形成する以外にも、平板状の不織布8を、台座3の外周に巻き付けて形成することもできる。さらに、概円筒状に一体成形された不織布8を、台座3に挿着して形成することもできる。
【0032】
窪み部7a、7bの深さ、及び幅は、特に限定されるものではないが、例えば、深さは0.1〜3.0mm、幅は0.1〜3.0mm程度に設定されるのが望ましい。深さ、及び幅とも0.1mm未満の場合、グリップ力が弱く、3.0mmを超える場合、ロール部2の外周を、彫って窪み部7a、7bを形成するのが難しくなる。
【0033】
次に、ロール片4を構成する不織布8の製造方法について、いくつか述べる。
【0034】
第1の方法は、複数本の繊維9を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布8を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布8は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布8にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布8を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布8、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布8を形成する繊維9には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0035】
第2の方法は、複数本の繊維9を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布8を得る。得られた不織布8にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布8を形成する繊維9の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布8は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布8を形成する繊維9には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0036】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた熱可塑性樹脂繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維9を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維9に付着させ、加熱することにより不織布8を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布8は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0037】
上記に示した不織布8の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維9を形成し、繊維9を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維9を結合して不織布8を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維9を結合させて不織布8を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維9を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維9を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維9を結合して不織布8を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維9を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維9を接着させて不織布8を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布8を用いても構わない。なお、不織布8は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維9がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0038】
ロール片4に用いられる不織布8の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0039】
なお、本実施例においては、線状の窪み部7aと斑点状の窪み部7bが形成されてある形態について説明したが、線状の窪み部7aのみ、あるいは斑点状の窪み部7bのみがロール部2の外周に形成された形態も、勿論、採用できる。
【0040】
次に、図3(b)を用いて、本発明の第1の実施例におけるロール1の動作、作用について説明する。
【0041】
ロール1を構成するロール部2は、ロール1の回転に伴い、圧接されながら被洗浄面である鋼板14に接触する。ロール部2の外周には、窪み部7a、7bが形成されてあり、窪み部7a、7bの有する淵部12の外周側の端部に形成され、ロール部2の外周と略直角をなすグリップ部13は、ロール部2が鋼板14に圧接されると、淵部12から内側に曲り、鋼板14との接触面積を広く確保する。その為、ロール1は、鋼板14にたいする摩擦抵抗が向上し、高いグリップ力、すなわち摩擦力、抵抗力が発揮されるので、洗浄ライン内にて、鋼板14が蛇行し、ラインが停止することが抑制され、鋼板14の生産性の向上につながる。
【0042】
また、ロール部2は、不織布8からなる複数の概円環状のロール片4が積層されて形成されているので、鋼板14の表面から図示しない液体を、不織布8を構成する繊維9が吸い上げることができるので、ロール1は優れた液体除去性能を有する。
【0043】
さらに、不織布8の有する繊維9が吸液できなかった液体を、ロール部2の長手方向に略平行に形成された線状の窪み部7aを通して、ロール部2の端部からロール1の外部に排出することができると共に、斑点状に形成された窪み部7bには、一旦、液体を保持し、ロール1の回転に伴い、窪み部7bからロール1の外部に放出する為、液体除去性能が大幅に向上する。
【0044】
また、ロール部2は、不織布8からなる複数の概円環状のロール片4が積層されて形成されているので、ロール片4の台座3にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部2の表面の硬度を任意に設定することができる。
【0045】
次に、本発明のロール1のグリップ力、及び液体除去性能について、下記要領にて試験した。試験結果を表1に示す。
【0046】
実施例として、長手方向の長さが326mmで、外径が50mmの鉄からなる略円柱形状の台座3を用意し、台座3の外周に、軸心方向の長さが190mmで、外径が120mmのロール部2を形成し、ロール部2の外周には、深さが0.3mm、幅が1.0mmの線状の窪み部7aと、斑点状の窪み部7bを複数設けた試験用のロール1を2本、製作した。ロール部2は、不織布8からなる複数の概円環状のロール片4を、台座3の外周に積層して形成すると共に、表面の硬度は90°に設定した。なお、不織布8は、目付量が280g/mのケミカルボンド法不織布で、繊維9は綿、及びナイロンから構成されると共に、架橋剤としてトリメチロールメラミンを配合したニトリルゴムを、繊維9を結合させるバインダーとして用いた。実施例のロール1の重量は3kgであった。
【0047】
比較例として、ロール部2の表面に窪み部7a、7bが形成されていないこと以外は、上記の実施例と同一条件のロール1を2本、製作した。比較例のロール1の重量は3kgであった。
【0048】
上記の如く構成された実施例、及び比較例のロール1を、それぞれ上下一対で回転試験機に設置した。上側のロール1の両端部には、外径が40mmのエアーシリンダーを取り付け、それぞれのエアーシリンダーに1kg/cmのエアー圧力を供給した。次に、幅が150mm、長さが220mm、厚みが2mmの鋼板14と、バネ量りを用意し、鋼板14の一方の端部の略中央部に穴を開け、バネ量りのフックを鋼板14の穴に掛け、バネ量りを回転試験機に固定した。次いで、鋼板14を、上下一対にて回転試験機に取り付けられたロール1の間に挟み込むと共に、鋼板14の表面に出光興産製の鉱物油であるIPソルベント1620を200cc付着させ、周速20mpmにて上下のロール1を回転させ、ロール1に鋼板14を引っ張らせた。
【0049】
そして、ロール1が鋼板14を引っ張った引張力、すなわち摩擦力をバネ量りから読み取り、下記算出式にてロール1の摩擦係数を算出し、下記基準にてロール1のグリップ力を判定した。
○・・・摩擦係数が0.4以上であった
×・・・摩擦係数が0.4未満であった
なお、摩擦係数は、下記算出式に基づいて算出した。
F=μN
Fはロール1が鋼板14を引っ張った時の引張力、すなわち摩擦力であり、μは摩擦係数、Nはロール1の垂直抗力である。なお、垂直抗力Nは、実施例、及び比較例のロール1とも同じで、28.12kgである。垂直抗力Nは、ロール1の垂直方向に加わった力で、エアーシリンダーを介してロール1に加わったエアー圧力と、ロール1の重量の総和である。エアーシリンダーの外径は40mm、すなわち半径は2cmであり、面積は12.56cmであり、1cmあたり1kgのエアー圧力が供給されたので、1個のエアーシリンダーを介して、ロール1には12.56kgの力が付加されたことになり、エアーシリンダーはロール1の両端部に設置されていることから、2個のエアーシリンダーにより25.12kgの力がロール1に付加されたことになる。さらに、ロール1の重量、すなわち自重は3kgであることから、垂直抗力Nは、25.12kg+3kg=28.12kgとなる。
【0050】
また、ロール1の引張力を測定した後、鋼板14をバネ量りから取り外し、コーラーインスツールメント社製のフィルムゲージを用いて、鋼板14の上面の油膜厚みを測定して、下記基準によりロール1の液体除去性能を判定した。
○・・・油膜厚みが2.0μ以下であった
×・・・油膜厚みが2.0μを超えていた
【0051】
【表1】

【0052】
実施例のロール1は、ロール部2の外周に、線状の窪み部7a、及び斑点状の窪み部7bが形成されており、窪み部7a、7bの淵部12のグリップ部13が、ロール部2の圧接に伴い、変形し、鋼板14との接触面積を広く確保することから、引張力Fは11.5kgであり、摩擦係数μは0.41であった。また、ロール部2を構成する不織布8の有する繊維9が鋼板14から油分を吸い上げると共に、繊維9が吸液できなかった油分は、ロール部2の外周に形成された窪み部7a、7bを通して、ロール1の外部に排出、放出することができるので、油膜厚みは1.6μであった。実施例のロール1は、高いグリップ力と液体除去性能を有するものであった。
【0053】
一方、比較例のロール1は、ロール部2の外周に、窪み部7a、7bが形成されていないことから、引張力Fは10.1kgであり、摩擦係数μは0.36であった。また、ロール部2を構成する不織布8の有する繊維9が鋼板14から油分を吸い上げることはできるものの、ロール部2の外周に、窪み部7a、7bが形成されていないことから、窪み部7a、7bを通して、ロール1の外部に油分を排出、放出することができないので、油膜厚みは3.0μであった。比較例のロール1は、実施例のロール1に比べて、グリップ力、液体除去性能とも劣るものであった。
【0054】
(実施例2)
図4は、本発明の第2の実施例におけるロールの正面図である。なお、上記第1の実施例と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0055】
図4において、ロール21は、台座23、止め金具25、プレート26、及び複数の不織布にて形成されたロール片24からなるロール部22より構成されている。ロール部22は、複数のロール片24が台座23の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具25、及びプレート26にて挟み付けられて形成されている。また、ロール部22の外周には、線状の窪み部27が傾斜角度θを有して、巻き回されて形成されている。
【0056】
傾斜角度θは、窪み部27と、ロール部22の長手方向と直交する方向との間に形成される角度であり、1°以上45°以下、さらに好適には5°以上30°以下にて設定されるのが望ましい。傾斜角度θが1°未満の場合、窪み部27が多すぎて、窪み部27を形成する際の作業性が悪くなり、傾斜角度θが45°を超える場合、窪み部27が少なすぎて、グリップ力が弱くなる。
【0057】
上記の如く構成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0058】
ロール21は、ロール部22が液体の付着している被洗浄面と接触すると、ロール部22を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、台座23の回転に伴い、ロール部22の外周に巻き回されて形成された窪み部27を通して、ロール部22の一方の端部からロール21の外部に排出される。その為、ロール21の液体除去性能が大幅に向上する。
【0059】
(実施例3)
図5は、本発明の第3の実施例におけるロールの正面図である。なお、上記第1、及び第2の実施例と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0060】
図5において、ロール31は、台座33、止め金具35、プレート36、及び複数の不織布にて形成されたロール片34からなるロール部32より構成されている。ロール部32は、複数のロール片34が台座33の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具35、及びプレート36にて挟み付けられて形成されている。また、ロール部32の外周には、線状の窪み部37が傾斜角度θを有して、巻き回されて形成されてあると共に、窪み部37は、ロール部32の長手方向の略中央部にて設定された反転部38において、螺旋の傾斜方向が逆になるよう配置されている。
【0061】
反転部38は、ロール部32の長手方向の略中央部にて設定されているので、被洗浄面から除去された液体を、窪み部37を通して、反転部38からロール部32の両端部に均等に押し流すことができる。また、反転部38は、ロール部32の長手方向にて任意の位置に設定することができると共に、複数箇所設けても構わない。
【0062】
上記の如く構成されたロール31の動作、作用は下記の通りである。
【0063】
ロール31は、ロール部32が液体の付着している被洗浄面と接触すると、ロール部32を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、台座33の回転に伴い、ロール部32の外周に巻き回されて形成された窪み部37を通して、ロール部32の端部からロール31の外部に排出される。特に、反転部38を境に、窪み部37の螺旋の傾斜方向が逆になることから、ロール部32の一方の端部からでなく、両端部からロール31の外部に液体を、迅速、且つ確実に排出することができる。その為、ロール31の液体除去性能が飛躍的に向上する。
【0064】
(実施例4)
図6は、本発明の第4の実施例におけるロールの正面図である。なお、上記第1、第2、及び第3の実施例と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0065】
図6において、ロール41は、台座43、止め金具45、プレート46、及び複数の不織布にて形成されたロール片44からなるロール部42より構成されている。ロール部42は、複数のロール片44が台座43の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具45、及びプレート46にて挟み付けられて形成されている。また、ロール部42の外周には、複数の線状の窪み部47が円環状をなすよう形成されている。
【0066】
上記の如く構成されたロール41の動作、作用は下記の通りである。
【0067】
ロール41は、ロール部42が液体の付着している被洗浄面と接触すると、ロール部42を構成する不織布の有する繊維が被洗浄面から液体を吸い上げると共に、繊維が吸液できなかった液体は、一旦、ロール部42の外周に円環状に形成された窪み部47に保液され、台座43の回転に伴い、ロール41の外部に放出される。その為、ロール41の液体除去性能が大幅に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、前記被洗浄面にたいする張力の付与、あるいは前記被洗浄面を搬送する目的以外にも、高いグリップ力、液体除去性能を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施例におけるロールの正面図
【図2】ロール片を前面側から見た斜視図
【図3】(a)図1のA−A部分断面図、(b)ロール部が被洗浄面である鋼板に圧接した場合の部分断面図
【図4】本発明の第2の実施例におけるロールの正面図
【図5】本発明の第3の実施例におけるロールの正面図
【図6】本発明の第4の実施例におけるロールの正面図
【符号の説明】
【0070】
1、21、31、41 ロール
2、22、32、42 ロール部
3、23、33、43 台座
4、24、34、44 ロール片
5、25、35、45 止め金具
6、26、36、46 プレート
7a、7b、27、37、47 窪み部
8 不織布
9 繊維
10 穴部
11 端部
12 淵部
13 グリップ部
14 鋼板
38 反転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、前記被洗浄面にたいする張力の付与、あるいは前記被洗浄面を搬送する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は前記台座の外周に形成されてあると共に、不織布からなり、外周に線状及び/又は斑点状の窪み部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、ロール部は台座の外周に不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、窪み部の淵部にグリップ部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、窪み部はロール部の長手方向に略平行に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、窪み部はロール部の外周に巻き回されて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項6】
請求項5記載の構成よりなるロールにおいて、ロール部の長手方向に窪み部の螺旋の傾斜方向が逆になるよう設定された反転部が少なくとも1箇所以上形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項7】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、窪み部はロール部の外周に円環状に形成されてあることを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−174647(P2009−174647A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14318(P2008−14318)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】