説明

ロール

【課題】長期間に亘って被洗浄面に付着した液体を迅速、且つ確実に除去、搾取、洗浄することができるロールを、コストを抑えて安価にて提供する。
【解決手段】ロールはロール部及び台座を有し、ロール部は台座の外周面に形成されてあると共に、ロール片を有し、台座は外周面にロール部が形成される本体部、及び本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう中空部が形成されてあり、中空部には開口面積が最小となる絞り開口部が形成されてあると共に、継ぎ手部A側から絞り開口部に向かうほど開口面積が大から小に変化し、絞り開口部から継ぎ手部B側に向かうほど開口面積が小から大に変化し、本体部の外壁面に複数の小孔が形成されてあると共に、小孔に連通し、連通路を介して大孔が本体部の内壁面に複数設けられ、大孔は絞り開口部の下流側の近傍に形成されてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関しては、さまざまな改良がなされ、例えば、極細繊維が立体的に絡合された不織布の空隙部に高分子弾性体が多孔質構造で充填された繊維質シートからなるディスク状物を多数枚重畳してなる吸液ロール(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1の吸液ロールは、吸液に必要な外部装置を備えていない為、不織布層からなるロール部が徐々に吸液飽和状態となる。吸液に必要な外部装置を備えていないロールにおける液体除去機能は、ロールにコンプレッサー等を介してエアー圧等の一定の圧力がかかりながら回転することにより、液体を被洗浄面の両端部から流し去るダム機能と、ロールが回転しながら圧力により圧縮される圧縮ゾーンにおいて、ロール部の空隙部に吸収された液体を被洗浄面に一旦放出し、次いでロールが圧力による圧縮から開放される開放ゾーンにおいて、不織布を形成する繊維質の毛細管現象により被洗浄面の液体がロール部に吸い上げられ、ロール部の空隙部に放出される吸排機能とから構成されている。前記吸排機能は、不織布に充填された高分子弾性体が弾性変形する為、ロール部の空隙率が前記圧縮ゾーンで0%となり、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することにより発現する。しかし、液体がロール部の空隙部に吸収、及び空隙部から排出されることを繰り返すと、高分子弾性体は液体と接触することにより、徐々に膨潤して弾性率が低下し、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することができなくなる。その為、空隙率が減少したロール部の空隙部には、繊維質の毛細管現象により吸い上げられた液体の全量を放出することができず、ロール部は吸液飽和状態となり、液体除去機能が長期間に亘って持続しないという問題を有していた。なお、高分子弾性体の弾性率と膨潤度の関係は、弾性率は膨潤度の3/5乗に反比例するというフローリーのゴム弾性の理論が知られている。
【0004】
上記問題を解決するために、吸液機能を備えた軸本体、及びこの軸本体に圧着重畳された不織布シートで構成する不織布ロールと、当該不織布ロールと配管を介し連通される真空ポンプとで構成される、送出、吸液機能を備えた不織布ロールを利用する吸液方法であって、この吸液方法は、吸引抵抗による真空値、及び毛細管の機能を高めることを意図して、前記不織布部をウエットな吸液状態にして使用し、かつこの使用状態で前記軸本体に多数千鳥状等に開設した透孔を介して、前記吸液状態にある不織布部内部に於いて、不織布ロール外表面方向に向かってほぼ倒円錐形状に有効な吸液、送液毛細管部を作用せしめるとともに、前記真空吸引力の一部が前記不織布ロールの外表面に於いて重畳作用するように構成したことにより、前記真空吸引力を当該不織布ロールの外表面で均一作用させる構成とした不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置(特許文献2)が考案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−262586号公報
【特許文献2】特開平7−120145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置は、ロールの有するダム機能と吸排機能に加えて、ロール部に吸収された液体は、吸引ポンプにより、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロール外部に排出されるので、吸液に必要な外部装置を備えていないロールに比べて、ロール部の吸液飽和状態は抑制され、液体除去機能は長期間に亘って持続される。しかしながら、新たに吸引ポンプ等の外部装置を導入する必要があり、設備投資コストが高くなるという課題を有していた。
【0007】
また、不織布ロール外部に排出された液体は、吸引ポンプ装置側に吸引されることになる。排出された液体は、フィルター等により吸引ポンプ装置への流入を防いでいるものの、排出された液体の一部はフィルター等を通過して吸引ポンプ装置に流入し、徐々に真空吸引力が低下すると共に、吸引ポンプが故障しやすくなる為、吸引ポンプのメンテナンス費用、あるいは修理費用等のロールにかかるランニングコストが嵩むという課題も有していた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、長期間に亘って被洗浄面に付着した液体を迅速、且つ確実に除去、搾取、洗浄することができるロールを、コストを抑えて安価にて提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は前記台座の外周面に形成されてあると共に、ロール片を有し、前記台座は外周面に前記ロール部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう中空部が形成されてあり、前記中空部には開口面積が最小となる絞り開口部が形成されてあると共に、前記継ぎ手部A側から前記絞り開口部に向かうほど開口面積が大から小に変化し、前記絞り開口部から前記継ぎ手部B側に向かうほど開口面積が小から大に変化し、前記本体部の外壁面に複数の小孔が形成されてあると共に、前記小孔に連通し、連通路を介して大孔が前記本体部の内壁面に複数設けられ、前記大孔は前記絞り開口部の下流側の近傍に形成されてあるもので、台座の継ぎ手部A側から継ぎ手部B側に向け、流体を噴射すると、流体は絞り開口部の通過直後において、運動エネルギーが最も上昇する。その結果、大孔近傍の中空部の圧力エネルギーは最も低下するので、大孔近傍の中空部に負圧が発生し、ロールにおける圧力構成は、ロール部に比べて、大孔近傍の中空部の方が低くなる。ところで、物質は圧力の高い方から低い方へ移動することから、ロール部に吸収された液体は、ロール部から小孔、連通路、大孔を介して中空部に排出されることになり、流体と共に、台座の継ぎ手部B側からロールの外部に放出される。その為、ロール部は液体により吸液飽和状態になることが抑制されるので、ロールは長期間に亘って被洗浄面に付着した液体を迅速、且つ確実に除去、搾取、洗浄することが可能となる。なお、ロール部を構成するロール片は、人工皮革、不織布等の基材からなり、前記基材の有する繊維の毛細管現象により、ロール部に液体が吸収される。
【0010】
上記の如くの仕組みは、流体の位置エネルギー、運動エネルギー、及び圧力エネルギーの総和は、中空部の任意のどの位置においても常に一定であるというエネルギー保存の法則によるものである。前記中空部の如くの管路における流体のエネルギー保存の法則は、一般的にベルヌーイの定理と呼ばれている。本発明のロールの場合、流体は中空部において、継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの横同一方向に貫通するのみであり、中空部は流体が上部から下部、あるいは下部から上部に流れるよう形成されていないので、流体の位置エネルギーは中空部のどの位置においても同一である。また、流体の運動エネルギーは、中空部の開口面積が最も小さくなる絞り開口部の通過直後において流速が最も速くなることから最大となる。その為、圧力エネルギーは、運動エネルギーが最大となる絞り開口部の通過直後、すなわち大孔近傍において最小となる。従って、流体を継ぎ手部Aから継ぎ手部Bの方向に貫通させると、中空部において断面積変化による負圧が発生する為、ロール部に吸収された液体は、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座の本体部に引き寄せられることになり、本体部の外壁面に形成されてある小孔、連通路、及び内壁面に形成されてある大孔を介して、中空部に排出され、中空部を通る流体と共に、継ぎ手部B側からロール外部に放出されるのである。
【0011】
また、本発明においては、ロールの他に、継ぎ手部A側から流体を噴射等により導入するエアー供給機等の外部装置が必要となるが、ロールには従来からコンプレッサー等によりエアー圧等の一定の圧力が加えられていることから、前記コンプレッサー等を利用して中空部に流体を噴射することができるので、新たに流体を供給する為の外部装置を導入する必要が無い。その為、設備投資コストを抑えることができる。
【0012】
さらに、ロール部に吸収された液体は、上記の如く、継ぎ手部B側から流体と共にロール外部に放出される為、継ぎ手部A側に設置されてあるコンプレッサー等の外部装置に、液体が流入することが無く、安定した流体の供給ができると共に、液体の流入に伴うコンプレッサー等の外部装置に故障が発生することが無い。その為、ロールのランニングコストを抑えることができる。
【0013】
請求項2の発明のロールは、特に、請求項1の発明のロールにおいて、絞り開口部は本体部の長手方向の略中央部より下流側に形成されてあるもので、継ぎ手部A側から絞り開口部までの距離を長く設定することができ、流体の運動エネルギーを絞り開口部に向けて徐々に高めることができる為、流体の圧力損失を極力防ぎ、効率的に大孔近傍に負圧を発生させることができる。その為、効率よく確実にロール部から液体を中空部に排出することができる。
【0014】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項1から2の発明のロールにおいて、小孔は本体部の長手方向の外壁面に複数箇所設けられると共に、内壁面に設けられた大孔に連通するよう分枝状に連通路が形成されてあるもので、ロール部に吸収された液体は、本体部の外壁面の複数箇所に開設された小孔、分枝状に形成された連通路、本体部の内壁面に開設された大孔を介して、中空部に排出される。その為、ロール部に吸収された液体は、ロール部から万遍なく中空部に排出されることから、液体の排出除去機能が大幅に向上する。
【0015】
請求項4の発明のロールは、特に、請求項1から3の発明のロールにおいて、本体部の継ぎ手部B側の端部外方に、中空部における最大開口面積以上の面積を有する流通路が形成されてあるもので、本体部の継ぎ手部B側の端部外方における流体の圧力エネルギーは、中空部における圧力エネルギー以下になることが無い。その為、継ぎ手部B側の端部外方からロールの外部に放出される流体、及び液体は、中空部に引き寄せられることが無いので、流体、及び液体が中空部に逆流することが防止される。
【0016】
請求項5の発明のロールは、特に、請求項1から4の発明のロールにおいて、小孔の開口面積は、前記小孔から大孔に連通する連通路の長さが大になるほど小から大に変化するもので、小孔の開口面積が略同一の場合においては、大孔から離れた小孔近傍の圧力エネルギーは、大孔の近くに形成された小孔近傍の圧力エネルギーに比べて高くなる。しかしながら、圧力エネルギーが高くなる小孔近傍における小孔の開口面積を、圧力エネルギーの小さい小孔近傍における小孔の開口面積より大きく設定することにより、大孔から離れた小孔から液体が中空部へ排出される量と、大孔の近くの小孔から液体が中空部へ排出される量を略同一にすることができる為、大孔から離れたロール部に吸収された液体も積極的、且つ効果的に中空部に排出することができる。その為、ロール部に吸収された液体の排出除去機能が飛躍的に向上する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、中空部に発生した負圧を活用し、流体と共に、ロールの外部に放出することができるので、ロール部の吸液飽和状態が抑制され、ロールの耐用期間の長期化を図ることができる。
【0018】
また、ロールにかかわる設備投資コスト、ランニングコストを極めて抑えることができるので、迅速、且つ確実に被洗浄面に付着している液体を除去、搾取、洗浄できるロールを、安価にて提供することができる。
【0019】
請求項2の発明のロールは、流体の圧力損失を防ぐことができるので、効率的に中空部に負圧を発生させ、ロール部に吸収された液体を、効率よく確実に、中空部に排出することができる。
【0020】
請求項3の発明のロールは、ロール部に吸収された液体を、ロール部から万遍なく中空部に排出することができるので、液体の排出除去機能が大幅に向上する。
【0021】
請求項4の発明のロールは、継ぎ手部B側の端部外方からロールの外部に放出される流体、及び液体の中空部への逆流を防止することができる。
【0022】
請求項5の発明のロールは、大孔から離れたロール部に吸収された液体も積極的、且つ効果的に中空部に排出することができるので、ロール部に吸収された液体の排出除去機能が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例におけるロールの正面図、図2(a)は、図1のA−A断面図、図2(b)は、ロール片を前面側から見た斜視図、図3(a)は、内筒の部分斜視図、図3(b)は、外筒の部分斜視図、図4は、本発明の第1の実施例におけるロールの断面図、図5は、本発明の第1の実施例におけるロールを継ぎ手部B側から見た側面図である。
【0025】
図1、及び図2(a)において、ロール1は、台座3、止め金具8、プレート9、及び複数の概円環状のロール片4から形成されてあるロール部2より構成されてある。台座3は、鉄等の金属材料からなる略円筒形状であり、外周面にロール部2が形成される本体部5、及び本体部5の両端にボルト10にて連接される継ぎ手部A6、及び継ぎ手部B7を有して形成されてある。本体部5と、継ぎ手部A6、及び継ぎ手部B7の連接は、前記ボルト10締めの他、溶接等の方法を用いることもできる。また、ロール部2は、複数の概円環状のロール片4が重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具8、及びプレート9にて挟み付けられて、本体部5の外周面に形成されてある。止め金具8には、スナップリングが使用されてある。
【0026】
本体部5に連接された継ぎ手部A6には、ロール1の回転時におけるバランスを保持する目的で、鉄、鉛等の金属材料からなるバランスウエイト23が溶接により装着され、ロール1の継ぎ手部A6側の重量が補正されてある。前記の如くのロール1にたいする重量補正施策は、図4に示すように、本体部5における中空部14の開口面積が、継ぎ手部A6側から開口面積が最小となる絞り開口部22に向け大から小に変化し、絞り開口部22から継ぎ手部B7側に向け小から大に変化し、絞り開口部22が本体部5の長手方向の略中央部より下流側、すなわち継ぎ手部B7側に設けられているので、継ぎ手部A6側の方が、継ぎ手部B7側に比べて中空部14の占める割合が大きく、軽くなる為、ロール1に重量補正を施すことにより、ロール1の回転時におけるバランスを保持すると共に、長期間に亘ってロール1が安定した回転を持続させることができるようにする施策である。継ぎ手部A6にバランスウエイト23を装着する方法は、前記溶接以外にもボルト締め等の方法を用いても良い。さらに、継ぎ手部A6にバランスウエイト23を装着せず、継ぎ手部B7に穴を設けて、ロール1の継ぎ手部B7側の重量を軽くすることにより、ロール1にたいする重量補正を施しても構わない。一方、本体部5に連接された継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7には、中空部14における最大開口面積以上の面積を有する流通路11が形成されている。
【0027】
図2(a)、及び図4において、本体部5は、略円筒形状の外筒13と、中空部14を有する略円筒形状の内筒12が溶接により一体化されると共に、外筒13が内筒12を被覆して形成されてある。外筒13と、内筒12を一体化して本体部5を形成する方法は、溶接以外にもボルト止め等の方法を用いることもできる。また、外筒13の外壁面の等分4箇所には小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fが開設されてあり、内筒12の外周等分4箇所には、小孔15aより大の開口面積を有する大孔16が開設されている。小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fと大孔16は、分枝状に形成された連通路19を介して連通すると共に、大孔16を介して中空部14に通じている。なお、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15f、及び大孔16は、外筒13、及び内筒12の外周等分4箇所以外にも、等分6箇所、8箇所等設けても構わない。また、大孔16は、内筒12に少なくとも1箇所から形成可能である。さらに、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fの総数は、大孔16の総数以上に形成されてある。
【0028】
図2(b)において、ロール片4は、中心部に穴部17を有すると共に、外周面には端部18を有する概円環状にて形成されてある。ロール片4は、平板状の人工皮革、あるいは不織布等からなる基材を、トムソン型、レーザーカッター等を用いて概円環状に抜き取り、形成される。
【0029】
なお、ロール片4、外筒13は、実施例1の形態以外にも、ロール片4の内周面にキー溝を設けると共に、外筒13の外周面に前記キー溝が挿入されるキーを装着することにより、回転ズレ防止機能を付加させた形態等も採用できる。
【0030】
次に、ロール片4を構成する基材の製造方法について、いくつか述べる。
【0031】
第1の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成するもので、前記二重構造体は一般的には人工皮革と呼ばれている。なお、不織布を形成する繊維には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0032】
第2の方法は、複数本の繊維を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布を得る。得られた不織布にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布を形成する繊維間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布を形成する繊維には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0033】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた熱可塑性樹脂繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維に付着させ、加熱することにより不織布を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0034】
上記に示した基材の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合して不織布を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維を結合させて不織布を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維を結合して不織布を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維を接着させて不織布を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布を用いても構わない。また、織布、編物等の布帛を採用することもできる。
【0035】
ロール片4に用いられる基材の選択については、ロール1が除去、搾取、洗浄する液体の性状、ロール1が使用される雰囲気温度等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0036】
次に、図3、図4、及び図5を用いて、ロール1の製作方法について説明する。
【0037】
最初に、図3(a)の如く、鉄等の金属材料からなる略円筒形状の内筒12を用意する。図3(a)において、内筒12は、円周上、及び長手方向の外周等分4箇所に亘って分枝状の連通路19が形成されてあると共に、連通路19の間には複数の凸状の外周部20が形成されている。また、内筒12の継ぎ手部B側の外周等分4箇所には、連通路19上に、大孔16が形成されてある。図4に示すように、内筒12の内周面は、継ぎ手部A6側から開口面積が最小となる絞り開口部22に向け開口面積が大から小に変化し、絞り開口部22から継ぎ手部B7側に向け開口面積が小から大に変化する中空部14が形成されてあり、絞り開口部22の下流側の近傍に大孔16が位置するよう内筒12は構成されている。
【0038】
次に、図3(b)の如く、鉄等の金属材料からなる略円筒形状の外筒13を用意する。図3(b)において、外筒13は円周等分4箇所、及び長手方向に亘って、複数の小孔15a、15b、15c、15d・・・が等間隔にて開設されている。小孔15a、15b、15c、15d・・・は、千鳥形状をなすよう開設してもよい。そして、外筒13の内壁面が、上記の如く構成された内筒12の外周部20に接するように嵌め合わされて一体化され、一体化された内筒12と外筒13の両端部を溶接により固定することによって、本体部5が形成される。なお、外筒13に開設された複数の小孔15a、15b、15c、15d・・・が、内筒12に設けられた分枝状の連通路19の上部に位置するよう、外筒13は内筒12に嵌合される。外筒13の外周面21には複数枚のロール片4の穴部17が嵌合挿入され、ロール部2が形成される。
【0039】
小孔15a、15b、15c、15d・・・は、最も継ぎ手部B7側に近い小孔15aの開口面積が最小で、図2(a)、及び図4の如く、小孔15aは大孔16に直接連通するよう形成されている。他の小孔15b、15c、15d・・・の開口面積は、小孔15b、15c、15d・・・から大孔16に連通する連通路19の長さが大になるほど小から大に変化するよう形成されている。すなわち、図4に示すように、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fの開口面積は、15a、15b、15c、15d、15e、15fの順で、小から大となるように形成されている。
【0040】
次に、図4の如く、中空部14を有する継ぎ手部A6、及び継ぎ手部B7を本体部5の両端部にたいして複数本のボルト10にて接合し、台座3が形成される。中空部14は、継ぎ手部A6から本体部5、継ぎ手部B7にかけて流体が貫通するよう形成されてあると共に、絞り開口部22において開口面積が最小となるよう構成されている。絞り開口部22は、本体部5の長手方向の略中央部より下流側に位置するよう形成されている。
【0041】
また、継ぎ手部A6には、鉄、鉛等の金属材料からなる複数のバランスウエイト23が溶接により装着される。
【0042】
図4、及び図5において、台座3を構成する本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7には、中空部14における最大開口面積以上の面積を有するよう流通路11が形成されている。
【0043】
次に、概円環状に打ち抜かれたロール片4を複数枚重ね合わせて、穴部17を台座3にたいして貫通させる。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具8、及びプレート9にて挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数枚のロール片4の内部応力を均一化させ、端部18を切削加工、及び研磨加工し、台座3の本体部5の外周面21上にロール部2を形成して、ロール1が製作される。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成されてある。
【0044】
ロール部2の表面部の硬度は、40°〜95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、ロール1の弾力性が劣り、効率よく確実に、被洗浄面に付着した液体を、ロール部2に吸収することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0045】
次に、図4を用いて、本発明の実施例1におけるロール1を、鋼板に付着した油分除去用に使用した際の動作、作用について説明する。
【0046】
ロール1は、箱形の鋼板洗浄機(図示せず)に上下一対で設置され、コンプレッサー等の外部装置によりエアー圧等の一定の圧力が加えられて回転駆動し、上下のロール1の間を、表面に油分が付着した鋼板が通過する。その際、鋼板はロール部2と接触し、ロール部2を構成するロール片4が有する繊維の毛細管現象により、鋼板表面の油分はロール部2に吸い上げられると共に、ロール部2の空隙部に放出される。
【0047】
台座3は、継ぎ手部A6側に設置されたコンプレッサーから配管系(図示せず)が継ぎ手部A6の端部に連接され、台座3に形成された中空部14内を、コンプレッサーにより矢印Bの方向に流体が噴射されている。流体は、継ぎ手部A6の中空部14を通り、本体部5に形成された中空部14、及び本体部5の略中央部より継ぎ手部B7側に形成された絞り開口部22を通過し、本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7に設けられた流通路11を介して、ロール1の外部に流出していく。流体は、絞り開口部22の通過直後において、運動エネルギーが最大となり、且つ圧力エネルギーが最小となる。すなわち、大孔16が形成された近傍において圧力エネルギーは最小となる。従って、ロール部2に吸収された油分は、中空部14における断面積変化による負圧の発生に伴い、圧力の高い方から低い方へ移動するので、台座3の本体部5に引き寄せられ、本体部5の外周面21に形成されてある小孔15a、15b、15c、15d、15e、15f、及び分枝状に形成された連通路19を介して、大孔16から中空部14に排出され、中空部14を通る流体と共に本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7に設けられた流通路11よりロール1の外部に放出される。放出された油分は、鋼板洗浄機の内部で循環する。その為、ロール部2に吸収された油分は、常にロール1外部の鋼板洗浄機内に放出されるので、ロール部2は吸液飽和状態になることが抑制され、長期間に亘って鋼板表面の油分は迅速、且つ確実に除去される。
【0048】
また、本発明のロール1においては、ロール1の他に、継ぎ手部A6側から流体を導入するエアー供給機等の外部装置が必要となるが、ロール1には従来からコンプレッサー等によりエアー圧等の一定の圧力が加えられていることから、前記コンプレッサー等を利用して中空部14に流体を噴射することができるので、新たに流体を供給する為の外部装置を導入する必要が無い。その為、ロール1にかかわる設備投資コストを抑えることができる。
【0049】
さらに、ロール部2に吸収された油分は、上記の如く、継ぎ手部B7側から流体と共にロール1の外部に放出される為、継ぎ手部A6側に設置されてあるコンプレッサー等の外部装置に、油分が流入することが無く、安定した流体の供給ができると共に、油分の流入によるコンプレッサー等の外部装置に故障が発生することが無い。その為、ロール1のランニングコストを抑えることができる。
【0050】
絞り開口部22は、本体部5の長手方向の略中央部より下流側に形成されてあるので、継ぎ手部A6側から絞り開口部22までの距離を長く設定することができ、流体の運動エネルギーを絞り開口部22に向けて徐々に高めることができる為、流体の圧力損失を極力防ぎ、効率的に大孔16近傍に負圧を発生させることができる。その為、効率よく確実にロール部2から油分を中空部14に排出することができる。
【0051】
小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fは、本体部5の長手方向の外壁面に複数箇所設けられると共に、内壁面に設けられた大孔16に連通するよう分枝状に連通路19が形成されてあるので、ロール部2に吸収された油分は、本体部5の外壁面の複数箇所に開設された小孔15a、15b、15c、15d、15e、15f、分枝状に形成された連通路19、本体部5の内壁面に開設された大孔16を介して、中空部14に排出される。その為、ロール部2に吸収された油分は、ロール部2から万遍なく中空部14に排出される。
【0052】
本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方に、中空部14における最大開口面積以上の面積を有する流通路11が形成されてあるので、本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方における流体の圧力エネルギーは、中空部14における圧力エネルギー以下になることが無い。その為、継ぎ手部B7側の端部外方からロール1の外部に放出される流体、及び油分は、中空部14に引き寄せられることが無いので、流体、及び油分が中空部14に逆流することが防止され、効率よく確実に、流体、及び油分がロール1の外部に放出される。
【0053】
小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fの開口面積は、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fから大孔16に連通する連通路19の長さが大になるほど小から大に変化するので、大孔16から離れた小孔15f、15e、15d・・・近傍の圧力エネルギーは、大孔16の近くに形成された小孔15a、15b、15c・・・近傍の圧力エネルギーに比べて高くなる。しかしながら、圧力エネルギーが高くなる小孔15f、15e、15d・・・近傍における小孔15f、15e、15d・・・の開口面積を、圧力エネルギーの小さい小孔15a、15b、15c・・・近傍における小孔15a、15b、15c・・・の開口面積より大きく設定することにより、大孔16から離れた小孔15f、15e、15d・・・から油分が中空部14へ排出される量と、大孔16の近くの小孔15a、15b、15c・・・から油分が中空部14へ排出される量を略同一にすることができる為、大孔16から離れたロール部2に吸収された油分も積極的、且つ効果的に中空部14に排出することができる。
【0054】
次に、本発明のロール1の油分排出性能について、下記要領にて試験した。
【0055】
最初に、外径が45mm、最大の内径が30mm、全長が190mmの鉄からなる略円筒形状の中空部14を有する内筒12を用意し、内筒12の継ぎ手部A6側から長手方向の160mm付近に、絞り開口部22を形成した。絞り開口部22の直径は10mmに設定すると共に、中空部14はテーパー状に形成した。また、絞り開口部22の下流側近傍の円周等分4箇所には、直径が5mmの大孔16を開設すると共に、内筒12の外周面には分枝状の連通路19を設けた。次に、外径が50mm、内径が45mm、全長が190mmで、外周面に直径が1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mmの複数の小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fが開設された鉄からなる外筒13を用意し、内筒12に嵌め合わせると同時に、両端部を溶接により固定し、一体化した本体部5を製作した。なお、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fは、外周面の等分4箇所に開設すると共に、外筒13の長手方向に30mm間隔で、合計24箇所開設した。小孔15a、15b、15c、15d、15e、15fは、内筒12の外周面に設けられた連通路19の上部に位置するよう配置した。次に、本体部5の両端部に、中空部14を有する継ぎ手部A6、及び継ぎ手部B7を、4本のボルト10により連接し、一体化して全長が326mmとなる台座3を形成した。なお、本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7には中空部14における最大開口面積以上の面積を有する流通路11を設けた。
【0056】
次に、見掛け密度が0.45g/cmの人工皮革から、外径が130mm、内径が50mmの概円環状のロール片4を複数枚、抜き取った。そして、複数枚のロール片4が有する穴部17を、上記の如く構成された台座3に積層し、ロール片4の端部18を10mm切削加工、及び研磨加工して、外径が120mm、内径が50mm、全長が190mmのロール部2を有する本発明のロール1を1本製作した。なお、ロール部2の表面部の硬度は60°に設定した。
【0057】
上記の如く構成されたロール1を、スギムラ化学工業製の洗浄油プレトンR−303Pに24時間、浸漬させ、ロール部2を吸液飽和状態とした。ロール部2には、約700ccの洗浄油が吸収された。
【0058】
次に、外径が120mmで、本体部の長さが190mm、継ぎ手部を含めた全長が326mmの鉄からなる略円筒形状のワークロールを1本用意した。そして、本発明のロール1が上部、ワークロールが下部となるように、回転試験機に上下一対でロール1とワークロールを設置した。次に、ワークロールを270rpmにて回転させると共に、ロール1にコンプレッサーにて線圧8.3kgf/cmのエアー圧を加えてワークロールに押し付け、回転させた。また、ロール1には、コンプレッサーから配管系が継ぎ手部A6の端部に連接され、台座3に形成された中空部14内を、コンプレッサーにより継ぎ手部B7の方向に流体を噴射した。流体の初速度は35m/秒に設定した。
【0059】
上記に示した試験条件にて、ロール1を24時間回転させ、24時間後のロール1の重量を測定することにより、ロール部2からロール1の外部に放出された洗浄油の量を算出した。
【0060】
上記試験の結果、ロール1の本体部5における中空部14にて、断面積変化により負圧が発生し、ロール部2に吸収された約700ccの洗浄油は、小孔15a、15b、15c、15d、15e、15f、連通路19、及び大孔16を介して、中空部14を貫通する流体と共に、本体部5の継ぎ手部B7側の端部外方、及び継ぎ手部B7に形成された流通路11からロール1の外部に放出された。放出された洗浄油の量は、約685ccで、ロール部2に吸収されたほぼ全量の洗浄油が、ロール1の外部に放出されたことになり、本発明のロール1は、非常に優れた油分排出性能を有するものであった。
【0061】
(実施例2)
図6は、本発明の第2の実施例におけるロールの断面図である。なお、上記実施例1と同一の部品については、詳しい説明を省略する。
【0062】
図6において、ロール31は、台座33、止め金具38、プレート39、及び複数の概円環状のロール片34が積層して形成されてあるロール部32より構成されてある。台座33は、鉄等の金属材料からなる略円筒形状であり、外周面にロール部32が形成される本体部35、及び本体部35の両端に複数のボルト40にて連接される継ぎ手部A36、及び継ぎ手部B37を有して形成されてある。
【0063】
台座33には、継ぎ手部A36から継ぎ手部B37に向け、矢印Cの方向に流体が貫通するよう中空部44が形成されている。本体部35の長手方向の略中央部には、開口面積が最小となる絞り開口部52が設けられてあり、本体部35における中空部44の開口面積は、継ぎ手部A36側から絞り開口部52に向け大から小に変化し、絞り開口部52から継ぎ手部B37側に向け小から大に変化するよう形成されている。すなわち、本体部35における中空部44は、概鼓形状、テーパー状に形成されてある。
【0064】
上記の如く、絞り開口部52を、本体部35の長手方向の略中央部に設けた場合、本体部35の両端から略中央部に向け、中空部44が概鼓形状、テーパー状となるように製作作業を進めていくことができるので、本体部35における中空部44の製作が、実施例1のロール1に比べて容易であり、ロール31の製作コストの削減につながる。また、本体部35の長手方向の略中央部から継ぎ手部A36側と、本体部35の長手方向の略中央部から継ぎ手部B37側における中空部44の占める割合が略同一であるので、実施例1のロール1の如く、バランスウエイト23をロール1に装着することなく、安定したロール31の回転を保持することができる。
【0065】
本体部35に連接された継ぎ手部A36における開口面積は略同一である。一方、本体部35に連接された継ぎ手部B37側の端部外方、及び継ぎ手部B37には、中空部44における最大開口面積以上の面積を有する流通路41が形成されている。
【0066】
本体部35は、略円筒形状の内筒42にたいして、略円筒形状の外筒43が被覆され、両端部を溶接により接合し、一体化して形成されている。本体部35を構成する内筒42の長手方向の略中央部の内周面には、開口面積が最小となる絞り開口部52が設けられてあり、絞り開口部52の下流側の近傍には複数の大孔46が開設されている。また、外筒43の外周面には複数の小孔45a、45b、45c、45dが開設され、内筒42の外周面に形成された分枝状の連通路49を介して、ロール部32に吸収された液体を、大孔46から中空部44に排出されるよう構成されてある。
【0067】
また、小孔45a、45b、45c、45dの開口面積は、大孔46に最も近い小孔45aが最小で、連通路49を介して大孔46からの距離が長くなるほど大きくなるように設定されている。すなわち、小孔45a、45b、45c、45dの開口面積は、45a、45b、45c、45dの順で、小から大となるように形成されている。
【0068】
次に、本発明のロール31の油分排出性能について、下記要領にて試験した。
【0069】
最初に、外径が45mm、最大の内径が30mm、全長が190mmの鉄からなる略円筒形状の中空部44を有する内筒42を用意し、内筒42の長手方向の略中央部に、絞り開口部52を形成した。絞り開口部52の直径は10mmに設定すると共に、中空部44はテーパー状に形成した。また、絞り開口部52の下流側近傍の円周等分4箇所には、直径が5mmの大孔46を開設すると共に、内筒42の外周面には分枝状の連通路49を設けた。次に、外径が50mm、内径が45mm、全長が190mmで、外周面に直径が2mm、2.5mm、3mm、3.5mmの複数の小孔45a、45b、45c、45dが開設された鉄からなる外筒43を用意し、内筒42に嵌め合わせると同時に、両端部を溶接により固定し、一体化した本体部35を製作した。なお、小孔45a、45b、45c、45dは、外周面の等分4箇所に開設すると共に、外筒43の長手方向に30mm間隔で、合計24箇所開設した。小孔45a、45b、45c、45dは、内筒42の外周面に設けられた連通路49の上部に位置するよう配置した。次に、本体部35の両端部に、中空部44を有する継ぎ手部A36、及び継ぎ手部B37を、4本のボルト40により連接し、一体化して全長が326mmとなる台座33を形成した。なお、本体部35の継ぎ手部B37側の端部外方、及び継ぎ手部B37には中空部44における最大開口面積以上の面積を有する流通路41を設けた。
【0070】
次に、見掛け密度が0.45g/cmの人工皮革から、外径が130mm、内径が50mmの概円環状のロール片34を複数枚、抜き取った。そして、複数枚のロール片34が有する穴部を、上記の如く構成された台座33に積層し、ロール片34の端部を10mm切削加工、及び研磨加工して、外径が120mm、内径が50mm、全長が190mmのロール部32を有する本発明のロール31を1本製作した。なお、ロール部32の表面部の硬度は60°に設定した。
【0071】
上記の如く構成されたロール31を、スギムラ化学工業製の洗浄油プレトンR−303Pに24時間、浸漬させ、ロール部32を吸液飽和状態とした。ロール部32には、約700ccの洗浄油が吸収された。
【0072】
次に、外径が120mmで、本体部の長さが190mm、継ぎ手部を含めた全長が326mmの鉄からなる略円筒形状のワークロールを1本用意した。そして、本発明のロール31が上部、ワークロールが下部となるように、回転試験機に上下一対でロール31とワークロールを設置した。次に、ワークロールを270rpmにて回転させると共に、ロール31にコンプレッサーにて線圧8.3kgf/cmのエアー圧を加えてワークロールに押し付け、回転させた。また、ロール31には、コンプレッサーから配管系が継ぎ手部A36の端部に連接され、台座33に形成された中空部44内を、コンプレッサーにより継ぎ手部B37の方向に流体を噴射した。流体の初速度は35m/秒に設定した。
【0073】
上記に示した試験条件にて、ロール31を24時間回転させ、24時間後のロール31の重量を測定することにより、ロール部32からロール31の外部に放出された洗浄油の量を算出した。
【0074】
上記試験の結果、ロール31の本体部35における中空部44にて、断面積変化により負圧が発生し、ロール部32に吸収された約700ccの洗浄油は、小孔45a、45b、45c、45d、連通路49、及び大孔46を介して、中空部44を貫通する流体と共に、本体部35の継ぎ手部B37側の端部外方、及び継ぎ手部B37に形成された流通路41からロール31の外部に放出された。放出された洗浄油の量は、約670ccで、ロール部32に吸収されたほとんどの洗浄油が、ロール31の外部に放出されたことになり、本発明のロール31は、優れた油分排出性能を有するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄するリンガーロール、ワイパーロール以外にも、高い耐久性を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施例におけるロールの正面図
【図2】(a)図1のA−A断面図、(b)ロール片を前面側から見た斜視図
【図3】(a)内筒の部分斜視図、(b)外筒の部分斜視図
【図4】本発明の第1の実施例におけるロールの断面図
【図5】本発明の第1の実施例におけるロールを継ぎ手部B側から見た側面図
【図6】本発明の第2の実施例におけるロールの断面図
【符号の説明】
【0077】
1、31 ロール
2、32 ロール部
3、33 台座
4、34 ロール片
5、35 本体部
6、36 継ぎ手部A
7、37 継ぎ手部B
8、38 止め金具
9、39 プレート
10、40 ボルト
11、41 流通路
12、42 内筒
13、43 外筒
14、44 中空部
15a、15b、15c、15d、15e、15f、45a、45b、45c、45d 小孔
16、46 大孔
17 穴部
18 端部
19、49 連通路
20 外周部
21 外周面
22、52 絞り開口部
23 バランスウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は前記台座の外周面に形成されてあると共に、ロール片を有し、前記台座は外周面に前記ロール部が形成される本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A、及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部Aから前記継ぎ手部Bの方向に流体が貫通するよう中空部が形成されてあり、前記中空部には開口面積が最小となる絞り開口部が形成されてあると共に、前記継ぎ手部A側から前記絞り開口部に向かうほど開口面積が大から小に変化し、前記絞り開口部から前記継ぎ手部B側に向かうほど開口面積が小から大に変化し、前記本体部の外壁面に複数の小孔が形成されてあると共に、前記小孔に連通し、連通路を介して大孔が前記本体部の内壁面に複数設けられ、前記大孔は前記絞り開口部の下流側の近傍に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、絞り開口部は本体部の長手方向の略中央部より下流側に形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるロールにおいて、小孔は本体部の長手方向の外壁面に複数箇所設けられると共に、内壁面に設けられた大孔に連通するよう分枝状に連通路が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるロールにおいて、本体部の継ぎ手部B側の端部外方に、中空部における最大開口面積以上の面積を有する流通路が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなるロールにおいて、小孔の開口面積は、前記小孔から大孔に連通する連通路の長さが大になるほど小から大に変化することを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41868(P2009−41868A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208923(P2007−208923)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】