説明

ロール

【課題】 ロールの回転中にロール片が回転ずれを起こすことを防ぐと共に、安価に製作することができるロールを提供する。
【解決手段】 鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロール1において、前記ロール1はロール部2及び台座3を有し、前記ロール部2は少なくとも1つ以上のモジュール部7が前記台座3の外周面に形成されてあると共に、前記モジュール部7は積層された複数のロール片14が接合され、一体化されて形成されてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールとして不織布を使用したものが知られており、例えば、不織布シートのディスク状物を多数枚重畳させてなるロールにおいて、該ロールが、低融点ポリマー繊維、高融点ポリマー繊維および低融点ポリマー成分と高融点ポリマー成分からなる複合繊維とで構成されたものがある(特許文献1)。
【0003】
また、ディスク状の繊維で補強されたゴム弾性体シートが積層されたロールを、ゴム弾性体の溶剤に含浸し、前記ゴム弾性体の一部若しくは全部を溶解して一体化されたロールがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−2694号公報
【特許文献2】特公平7−14629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の不織布ロールは、ロールの硬度が低く設定されている場合、ロールの回転中にロール片が回転ずれを起こし、ロールの表面に凹凸が発生する為、被洗浄面に付着した液体を均一に除去することが困難であった。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載のロールは、ロール片を一体化することによって、上記課題を解決することが可能となったが、ゴム弾性体の溶剤は高価であり、ロール製作の製造コストが増加することから工業用の用途としては、あまり採用されていなかった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ロールの回転中にロール片が回転ずれを起こすことを防ぐと共に、安価に製作することができるロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は少なくとも1つ以上のモジュール部が前記台座の外周面に形成されてあると共に、前記モジュール部は積層された複数のロール片が接合され、一体化されて形成されてあることを特徴としている。したがって、積層された複数のロール片が接合され、一体化されてモジュール部を形成していることから、ロールの回転中にロール片が回転ずれを起こすことを防ぐことができる。また、ロールを新たに製作する際、モジュール部のみを生産現場に送り、現地にてロールを製作することができるので、輸送コストの削減につながる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片は、少なくとも2種類以上の融点の異なる材質にて形成されてあることを特徴としている。したがって、ロールを温水に浸すことによって、低い融点の材質からなる成分を溶解させることができ、ロール片を一体化することが可能となるので、ロールを安価に製作することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片は、不織布と基部とからなり、前記不織布と前記基部との間に空隙部が形成された二重構造体が使用されてあることを特徴としている。したがって、空隙部によって、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収することができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片の基部として、ポリウレタンが形成されてあると共に、前記ロール片の全重量にたいする前記基部の重量比が30%以下であることを特徴としている。したがって、基部のポリウレタンが溶解してロール片間を接合する接着剤の役割を果すことが可能となると共に、ポリウレタンの重量比を30%以下に抑えることによって、不織布により、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収させる効果を高めることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片の厚みが2.0ミリ以下であることを特徴としている。したがって、ロールを温水に浸した時にロール片に熱が伝わりやすくなり、厚み方向にたいする水分の浸透速度が速くなることから、低い融点の材質からなる成分を容易に溶解させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、ロール片が一体化されて、ロールの回転中にロール片が回転ずれを起こすことを防ぐことができる。また、請求項2の発明では、ロールを安価に製作することができる。また、請求項3の発明では、空隙部によって、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収することができる。また、請求項4の発明では、ポリウレタンの重量比を30%以下に抑えることによって、不織布により、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収させる効果を高めることができる。さらに、請求項5の発明では、厚み方向に熱が伝導しやすいことから、ロールを容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るロールの正面図
【図2】本発明に係るロールの断面図
【図3】本発明に係るロールに使用されるロール片の斜視図
【図4】本発明に係るロールに使用されるモジュール部の斜視図
【図5】本発明に係るロールに使用される二重構造体を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るロールの正面図である。図1において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片14が一体化されたモジュール部7、7から形成されてあるロール部2より構成されてある。台座3は、鉄等の金属材料からなる略円柱形状、あるいは略円筒形状であり、外周面にロール部2が形成されてある。また、ロール部2は、複数のモジュール部7が直列的に重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて装着されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されてある。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のモジュール部7より形成されてあるものであり、1つ以上のモジュール部7が使用される。
【0016】
図2は、本発明に係るロール1の断面図である。ロール1は台座3の外周にロール片14が形成されており、台座3の外周とロール片14の内周との間にキー15が取り付けられてある。
【0017】
図3は、本発明に係るロールに使用されるロール片14を正面から見た斜視図である。ロール片14は概円盤状の平板形状に形成されてあり、略中央部には穴部18が形成されてある。この穴部18の外周には、略四角形の溝部12が形成されてある。また、ロール片14の外周部には端部17が形成されてある。
【0018】
図1及び図2で示した本発明に係るロール1は、台座3が駆動源(図示せず)により回転するものである。また、台座3の外周にはロール片14が形成されてあると共に、溝部12と台座3の切り欠きに嵌合するキー15により、台座3の回転力をロール片14に伝えている。また、ロール片14の端部17は被洗浄面(図示せず)に圧接される。
【0019】
図4は、本発明に係るロールに使用されるモジュール部7を示す斜視図である。モジュール部7は、上述した複数のロール片14が接合され、一体化されて形成されてある。また、ロール片14は、少なくとも2種類以上の融点の異なる材質にて形成されてある。
【0020】
次に、モジュール部7の製作方法について説明する。最初に、ロール片14を軸体の外周に複数重ね合わせ、両端部をステンレス板で挟みつけた後、所定の硬度が形成されるようにプレスして仮モジュール部を製作する。次に、仮モジュール部を約90℃の温水で満たされた処理槽に1時間浸漬する。ロール片14は上述したように、少なくとも2種類以上の融点の異なる材質にて形成されてあり、低い融点の材質にポリウレタンを使用することによって、このポリウレタンが約90℃で加水分解する。したがって、加水分解して溶解したポリウレタンが接着剤となって隣り合うロール片14、14間が互いに接合され、一体化されたモジュール部7となる。次に、モジュール部7を処理槽から取り出し、真空ポンプで水分を吸引し、乾燥させることによって、台座3に組み付けることができる状態となる。
【0021】
尚、ロール片14の厚みは2.0ミリ以下であることが好ましい。何故ならば、ロール片14の一部の材質であるポリウレタンを、上述したように、約90℃の温水で満たされた処理槽に1時間浸漬して加水分解させて、接着剤としての効果を奏させるためには、ロール片の厚みが2.0ミリ以下である必要があるからである。このように、ロール片14の厚みを2.0ミリ以下とすることによって、厚み方向にたいする水分の浸透速度が速くなるので、ポリウレタンが加水分解されるまでの時間が短くなり、迅速かつ確実にロール片14、14間を接合することができる。
【0022】
次に、ロール1の製作方法について説明する。最初に、モジュール部7を複数重ね合わせて、穴部13を台座3にたいして貫通させる。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、端部17を切削加工及び研磨加工し、台座3の外周面上にロール部2を形成して、製作される。
【0023】
図5は、ロールに用いられる二重構造体61の断面を示す図である。二重構造体61は、複数本の極細繊維39が集束した繊維束40が複数個形成されて不織布43が形成されると共に、繊維束40の周りに、極微細な気泡42を有する発泡化したポリウレタンの基部41が形成されている。隣り合う極細繊維39の間には空隙部38が形成されている。極細繊維39は、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなり、繊度は1dTx未満である。一般的に、極細繊維39はマイクロファイバーと呼ばれ、繊維束40は海島構造と呼ばれている。
【0024】
このように構成することによって、空隙部によって、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収することができる。また、気泡42が連続気泡の場合には、気泡42にも水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収することができる。
【0025】
また、ロールに使用する二重構造体を構成する不織布の主成分は、ポリアミド繊維、ポリエステル、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ウレタンゴム繊維のいずれか1種類または複数からなり、ロールに使用する二重構造体を構成する基部は、微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンが好ましい。
【0026】
また、二重構造体61は、主成分及び副成分を混合紡糸して繊維にしたものを立体的に編込み、ウレタンを形成させ、その後、副成分を溶解除去させることにより製造される。尚、二重構造体61は、不織布と基部とからなり、この不織布と基部との間に空隙部が形成されてあれば、その製造方法は特に問わない。
【0027】
ロールに二重構造体61を使用した場合には、ロールは、耐久性が極めて高く、且つ弾性劣化、変色、黄変化等がほとんど発生することが無い。また、ポリウレタンの基部は、高い耐摩耗性を有するので、耐久性に優れたロールを製造することができる。また、基部は、極微細な気泡を有している為、塗油体の重量を軽くすることができると共に、ロールに加えられた衝撃を吸収することができる。したがって、被洗浄面にたいして、柔軟に接触させることができ、被洗浄面に傷を付けることが無い。
【0028】
また、二重構造体61を構成する不織布として、ナイロンに代表されるポリアミド繊維を使用した場合には、ポリアミド繊維の有する耐摩耗性、耐熱性、及び弱酸から強アルカリにおける耐薬品性の高さ、耐油性等の特性をロールに持たせることができる。また、ポリエステルを使用した場合には、ポリエステルの有する耐熱性、及び強酸から弱アルカリにおける耐薬品性の高さ、耐油性、価格の低さ等の特性をロールに持たせることができる。また、ポリエチレン繊維を使用した場合には、ポリエチレン繊維の有する酸、及びアルカリにおける耐薬品性の高さ、価格の低さ等の特性をロールは有することができる。また、ポリプロピレン繊維を使用した場合には、ポリプロピレン繊維の有する価格の低さ、軽量である等の特性をロールに持たせることができる。また、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるウレタンゴム繊維を使用した場合には、ウレタンゴム繊維の有する親油性の高さ、弾性の高さ等の特性をロールに持たせることができる。
【0029】
尚、上述したように、ロール片の基部として、ポリウレタンが形成されてある場合には、ロール片の全重量にたいする基部の重量比が30%以下であることが好ましい。何故ならば、基部のポリウレタンが溶解してロール片間を接合する接着剤の役割を果すことが可能となると共に、ポリウレタンの重量比を30%以下に抑えることによって、不織布により、水分、油分或いは薬品成分等の液体を吸収させる効果を高めることができるからである。
【0030】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、ロール部2は1以上のモジュール部7で構成されているが、モジュール部7と単体のロール片14とを組み合わせた構成としてもよく、この実施形態も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のロールは、主に、鋼板、非鉄金属、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する目的以外にも、高い耐久性を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ロール
2 ロール部
3 台座
5 止め金具
6 プレート
7 モジュール部
12 溝部
14 ロール片
15 キー
17 端部
18 穴部
38 空隙部
39 極細繊維
40 繊維束
41 ポリウレタンの基部
42 極微細な気泡
43 不織布
61 二重構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を除去、搾取、洗浄する為のロールにおいて、前記ロールはロール部及び台座を有し、前記ロール部は少なくとも1つ以上のモジュール部が前記台座の外周面に形成されてあると共に、前記モジュール部は積層された複数のロール片が接合され、一体化されて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片は、少なくとも2種類以上の融点の異なる材質にて形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項1又は2記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片は、不織布と基部とからなり、前記不織布と前記基部との間に空隙部が形成された二重構造体が使用されてあることを特徴とするロール。
【請求項4】
請求項3記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片の基部として、ポリウレタンが形成されてあると共に、前記ロール片の全重量にたいする前記基部の重量比が30%以下であることを特徴とするロール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の構成よりなるロールにおいて、ロール片の厚みが2.0ミリ以下であることを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74987(P2011−74987A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226006(P2009−226006)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】