説明

ワイパーブレードゴム

【課題】優れた低摩擦性を有し、かつ優れた拭掃性を発揮するワイパーブレードゴムを提供する。
【解決手段】フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるワイパーブレードゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に使用するワイパーのブレードゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイパーは、雨、泥などによりフロントウィンドゥ、リアウィンドゥ等の視界を確保できるように、雨や汚れを払拭するためのものであり、ワイパーブレードゴムは、自動車、電車、航空機、船舶などの乗物のワイパーブレードに使用されている。
【0003】
ワイパーブレードゴムには、天然ゴム、合成ゴム等がその柔軟性や払拭性能から用いられていたが、従来のワイパーブレードゴムでは、拭掃時にガラスとゴムとの摺動抵抗が大きいという問題があり、ゴム表面の低摩擦化が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、加硫ゴム100重量部中に四フッ化エチレン重合体5〜60重量部と、求電子試薬0.1〜10重量部が共に存在する自己潤滑性ゴムからなることを特徴としたワイパーブレードゴムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−40810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた低摩擦性を有し、かつ優れた拭掃性を発揮するワイパーブレードゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が、拭掃時の低摩擦性に優れ、かつ拭掃性に優れるワイパーブレードゴムについて鋭意検討したところ、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるワイパーブレードゴムは、拭掃される面に対する優れた低摩擦性を有し、かつ優れた拭掃性を発揮できることを見出し、本発明は完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるワイパーブレードゴムである。
【0009】
フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び、ポリフッ化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
フッ素樹脂(B)は、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。
【0011】
フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体であることが好ましい。
【0012】
本発明のワイパーブレードゴムは、ワイパーブレードゴムに対するフッ素樹脂(B)の体積比が0.05〜0.45であることが好ましい。
【0013】
フッ素ゴム(A)は、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワイパーブレードゴムは、上記構成を有することから、優れた低摩擦性を有し、かつ優れた拭掃性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、ワイパーブレードゴムが有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2を含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2を含む平面で切断した断面図である。
【図2】本発明のワイパーブレードゴムの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のワイパーブレードゴムは、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるものである。本発明のワイパーブレードゴムは、上記構成を有することによって、フッ素樹脂(B)に起因する優れた低摩擦性を備えるとともに、フッ素ゴム本来の柔軟性も損なわれないため、優れた拭掃性を発揮することができる。
また、使用されるフッ素樹脂(B)の特性に起因して、優れた耐摩耗性を有するため、砂、塵、泥等に含まれる硬質粉によって生じる欠損等を抑制することができる。欠損等を抑制することができるため、長期的に優れた拭掃性を維持することができる。
更に、本発明のワイパーブレードゴムは、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とが一体的に形成されているものであるため、耐久性に優れている。例えば、低摩擦化を目的として、ワイパーブレードゴムの表面に滑剤を塗布して塗膜を形成したような場合には、該塗膜が剥離することがある。
また、使用されるフッ素樹脂(B)の特性に起因して、優れた非粘着性を発揮し、拭掃されるガラス面と長期間接触していた場合にも、ガラス面に貼りつくことを抑制することができる。
以下に、各要素について説明する。
【0017】
(A)フッ素ゴム
フッ素ゴム(A)は、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し、且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴム(A)は、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
【0018】
フッ素ゴム(A)は、ビニリデンフルオライド(VdF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VdF/HFP/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン/VdF共重合体、エチレン/HFP共重合体、エチレン/HFP/VdF共重合体、エチレン/HFP/TFE共重合体、VdF/TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、及び、VdF/クロロトリフルオロエチレン(CTFE)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でも、VdF単位を含む共重合体からなるフッ素ゴムがより好ましい。
【0019】
上記ビニリデンフルオライド(VdF)単位を含む共重合体からなるフッ素ゴム(以下、「VdF系フッ素ゴム」ともいう。)について説明する。VdF系フッ素ゴムは、少なくともビニリデンフルオライドに由来する重合単位を含むフッ素ゴムである。
【0020】
VdF単位を含む共重合体としては、VdF単位及び含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることが好ましい。VdF単位を含む共重合体は、更に、VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位を含むことも好ましい。
【0021】
VdF単位を含む共重合体としては、30〜90モル%のVdF単位及び70〜10モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことが好ましく、30〜85モル%のVdF単位及び70〜15モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことがより好ましく、30〜80モル%のVdF単位及び70〜20モル%の含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位を含むことがより好ましい。VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位は、VdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位の合計量に対して、0〜10モル%であることが好ましい。
【0022】
含フッ素エチレン性単量体としては、たとえばTFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEともいう)、フッ化ビニル、下記一般式(1):
CFX=CXOCFOR (1)
(式中、Xは、同一又は異なり、H、F又はCFを表し、Rは、直鎖又は分岐した、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が1〜6のフルオロアルキル基、若しくは、H、Cl、Br及びIからなる群より選択される少なくとも1種の原子を1〜2個含んでいてもよい炭素数が5又は6の環状フルオロアルキル基を表す。)で表されるフルオロビニルエーテルなどの含フッ素単量体があげられる。これらのなかでも、式(1)で表されるフルオロビニルエーテル、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0023】
上記PAVEとしては、一般式(2):
CF=CFO(CFCFYO)−(CFCFCFO)−Rf (2)
(式中、YはF又はCFを表し、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。pは0〜5の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)であることが好ましい。
【0024】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることがより好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)であることが更に好ましい。これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。
【0025】
VdF及び含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体としては、たとえばエチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどがあげられる。
【0026】
このようなVdF単位を含む共重合体として、具体的には、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体のなかでも、耐熱性、非粘着性の点から、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が特に好ましい。これらのVdF単位を含む共重合体は、上述したVdF単位と含フッ素エチレン性単量体由来の共重合単位との組成割合を満足することが好ましい。
【0027】
VdF/HFP共重合体としては、VdF/HFPのモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは50〜80/50〜20であり、さらに好ましくは60〜80/40〜20である。
【0028】
VdF/HFP/TFE共重合体としては、VdF/HFP/TFEのモル比が40〜80/10〜35/10〜35のものが好ましい。
【0029】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEのモル比が65〜90/10〜35のものが好ましい。
【0030】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEのモル比が40〜80/3〜40/15〜35のものが好ましい。
【0031】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEのモル比が65〜90/3〜25/3〜25のものが好ましい。
【0032】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEのモル比が40〜90/0〜25/0〜40/3〜35のものが好ましく、より好ましくは40〜80/3〜25/3〜40/3〜25である。
【0033】
上記フッ素ゴム(A)は、架橋部位を与えるモノマー由来の共重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋部位を与えるモノマーとしては、たとえば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有モノマー、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニル基含有モノマーなどがあげられる。
【0034】
フッ素ゴム(A)は、主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムであることも好ましい。主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムは、実質的に無酸素下で、水媒体中でハロゲン化合物の存在下に、ラジカル開始剤を添加してモノマーの乳化重合を行うことにより製造できる。使用するハロゲン化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
Br
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、Rは、炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、又は、炭素数1〜3の炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。
【0035】
ハロゲン化合物としては、例えば、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CFBr、BrCFCFBr、CFCFBrCFBr、CFClBr、BrCFCFClBr、CFBrClCFClBr、BrCFCFCFBr、BrCFCFBrOCF、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに、(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0036】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタンまたはジヨードメタンを用いるのが好ましい。
【0037】
フッ素ゴム(A)は、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して測定することができる。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
【0038】
上記フッ素ゴム(A)の架橋系としては、例えば、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。上記架橋性組成物は、それぞれの架橋系において使用される架橋剤を含むものであってよい。架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0039】
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
【0040】
パーオキサイド架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子、臭素原子等を挙げることができる。
【0041】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
【0042】
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記架橋性組成物は架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、シール性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0043】
架橋助剤の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下し、シール性が劣り、10質量部をこえると、耐熱性に劣り、ワイパーブレードゴムの耐久性も低下する傾向がある。
【0044】
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。
【0045】
上記ポリオール架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0046】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0047】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0048】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記架橋性組成物は架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
【0049】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0050】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0051】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、シール性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0052】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0053】
架橋促進剤の配合量は、フッ素ゴム(A)100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、フッ素ゴムの架橋が充分に進行せず、得られるワイパーブレードゴムの耐熱性等が低下するおそれがある。8質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、シール性も低下する傾向がある。
【0054】
(B)フッ素樹脂
フッ素樹脂(B)としては、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、本発明のワイパーブレードゴムは、より優れた低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性を備えるものとなる。また、後述するような、表面に凸部を有するワイパーブレードゴムを得ることができ、このような凸部を有するワイパーブレードゴムはより優れた低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性を備えるものとなる。更に、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とがより一体的に形成されるため、耐久性も向上する。
溶融加工性のフッ素樹脂としては、例えば、TFE/HFP共重合体、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、Et/TFE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、TFE/VdF共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、ポリフッ化ビニル〔PVF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、溶融加工性であれば、低分子量のPTFEも用いることも可能である。
【0055】
フッ素樹脂(B)は、低摩擦性、耐摩耗性、非粘着性、耐熱性、耐薬品性の観点から、パーフルオロフッ素樹脂であることが好ましい。
【0056】
ワイパーブレードゴムの低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性に優れる点から、フッ素樹脂(B)はTFE/HFP共重合体、すなわち、TFE単位とHFP単位とからなる共重合体(以下、「FEP」ともいう。)であることがより好ましい。FEPは、ワイパーブレードゴムの耐熱性が優れたものとなる点でも好ましい。
【0057】
FEPとしては、TFE単位70〜99モル%とHFP単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜97モル%とHFP単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
【0058】
FEPは、TFE、HFP、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としては、CF=CF−ORf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、CX=CX(CF(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Xは、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、CF=CF−OCH−Rf(式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、PAVEであることが好ましい。
【0059】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0060】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rfが炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF=CF−OCH−CFCFがより好ましい。
【0061】
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。
【0062】
フッ素樹脂(B)の融点は、フッ素ゴム(A)の一次架橋温度以上であることが好ましい。フッ素樹脂(B)の融点は、フッ素ゴム(A)の種類により適宜決定されるが、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。上限は特に限定されないが、300℃であってよい。
融点が低すぎると、一次架橋成形時にフッ素樹脂が溶融し、所望する形状の成形品が得られないおそれがある。また、ワイパーブレードゴムの表面に後述するような凸部を形成する場合、充分な数の凸部を有するワイパーブレードゴムが得られないおそれがある。
【0063】
フッ素樹脂(B)は、372℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜100g/10分であることが好ましい。MFRが小さすぎると耐摩耗性に劣るおそれがあり、MFRが大きすぎると成形が困難になるおそれがある。
上記MFRは、ASTM
D1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
【0064】
フッ素樹脂(B)とフッ素ゴム(A)との相溶性向上のため、上記架橋性組成物は、少なくとも1種の多官能化合物を含有してもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一または異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
【0065】
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。
これらの官能基を有する化合物は、フッ素ゴム(A)との親和性が高いだけではなく、フッ素樹脂(B)が持つ反応性を有することが知られている官能基とも反応し、さらに相溶性が向上することも期待される。
【0066】
上記フッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)を含む架橋性組成物は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)との体積比(フッ素ゴム(A))/(フッ素樹脂(B))が60/40〜95/5であることが好ましい。フッ素樹脂(B)が少なすぎると低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性が充分に得られないおそれがあり、一方、フッ素樹脂(B)が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。フッ素ゴムに起因する柔軟性と、フッ素樹脂に起因する低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性の両方が良好な点から、(フッ素ゴム(A))/(フッ素樹脂(B))は、65/35〜95/5であることがより好ましく、70/30〜90/10であることがさらに好ましい。
【0067】
上記架橋性組成物は、必要に応じてフッ素ゴム中に配合される通常の添加剤、たとえば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
【0068】
本発明のワイパーブレードゴムは、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるものである。本発明のワイパーブレードゴムは、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋して得られるものであれば限定されないが、後述する形成方法により得られるものであることが好ましい。
【0069】
本発明のワイパーブレードゴムは、上記構成からなるものであるため、ワイパーブレードゴム全体として、柔軟性に優れ、更に、優れた低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性を有するものである。
更に、フッ素樹脂とフッ素ゴムの明確な界面状態が存在しないので、表面のフッ素樹脂に富む領域が脱落や剥離することもなく、耐久性に優れている。
【0070】
本発明のワイパーブレードゴムは、表面に凸部を有することが好ましい。凸部がワイパーブレードゴムの表面に存在していることにより、優れた低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性を示す。
【0071】
凸部は、実質的に架橋性組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなることが好ましい。凸部は、例えば後述する方法により、上記架橋性組成物に含まれるフッ素樹脂(B)を表面に析出させて形成することができる。
【0072】
凸部は、ワイパーブレードゴム本体との間に明確な界面等が存在せず、上記凸部とワイパーブレードゴムが一体的に構成されていることとなり、上記凸部が脱落したり、欠損したりしにくいとの効果をより確実に享受することができる。
【0073】
凸部が実質的に上記架橋性組成物に含まれるフッ素樹脂(B)からなることは、IR分析やESCA分析によってフッ素ゴム(A)由来のピークとフッ素樹脂(B)由来のピークのピーク比を求めることで示すことができる。例えば、凸部を有する領域において、IR分析によって、フッ素ゴム(A)由来の特性吸収のピークとフッ素樹脂(B)由来の特性吸収のピークとの比(成分由来ピーク比)を、凸部と凸部外のそれぞれの部分で測定し、(凸部ピーク/凸部外ピーク=ピーク比)が、1.2以上、好ましくは1.5以上であればよい。
【0074】
凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図1(a)は、ワイパーブレードゴムが有する凸部の形状を模式的に示す斜視図であり、(b)は(a)の表面に垂直な直線B1と直線B2を含む平面で凸部31を切断した断面図であり、(c)は(a)の表面と平行な直線C1と直線C2を含む平面で切断した断面図である。そして、図1(a)〜(c)には、ワイパーブレードゴムの表面の微小領域を模式的に描画している。ワイパーブレードゴムの表面には、図1(a)〜(c)に示すように、例えば、略円錐形状(コーン形状)の凸部31が形成されている。
【0075】
ここで、凸部31の高さとは、ワイパーブレードゴムの表面から突出した部分の高さをいう(図1(b)中、H参照)。また、凸部31の底部断面積とは、凸部31を、ワイパーブレードゴム表面と平行な平面(直線C1と直線C2を含む平面)で切断した面において観察される凸部31(図1(c)参照)の断面に於ける面積の値をいう。
【0076】
上記ワイパーブレードゴムの表面積に対して、上記凸部を有する領域の面積比(凸部の占有率)は、0.06(6%)以上である。より好ましい面積比は、0.15(15%)以上であり、0.30(30%)以上が更に好ましい。上記ワイパーブレードゴム表面における、凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
【0077】
本発明のワイパーブレードゴムにおいて、フッ素樹脂(B)の体積比は、上記ワイパーブレードゴムに対して0.05〜0.45(5〜45体積%)である。体積比の下限は、0.10(10体積%)であることがより好ましい。体積比の上限は、0.40(40体積%)であることが好ましく、0.35(35体積%)であることがより好ましく、0.30(30体積%)であることが更に好ましい。上記フッ素樹脂はテトラフルオロエチレンに基づく重合単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位とからなる共重合体であり、優れた耐熱性を有する。従って、成形架橋工程や熱処理工程によって分解することがないので、上記体積比は、架橋性組成物におけるフッ素樹脂の体積割合と同一と推測できる。
【0078】
上記凸部を有する領域の面積比が、フッ素樹脂(B)の体積比の1.2倍以上であり、1.3倍以上であることがより好ましい。本発明のワイパーブレードゴムは、ワイパーブレードゴムの表面における凸部を有する領域の比率が、ワイパーブレードゴムのフッ素樹脂(B)の体積比よりも高く、架橋性組成物におけるフッ素樹脂の体積比よりも高くなる。
本発明のワイパーブレードゴムは、この特徴によりフッ素樹脂の混合割合が小さくても、フッ素ゴムの欠点であった耐摩耗性、低摩擦性及び非粘着性が改善され、また、フッ素ゴムの利点が損なわれることもない。
なお、上記凸部を有する領域の面積比は、拭掃されるガラス等の面と接触するワイパーブレードゴムのワイパーエッジ部において達成されていれば、本発明の効果は十分に奏される。
【0079】
上記凸部は、高さが0.1〜30.0μmであることが好ましい。凸部の高さがこの範囲にあると、低摩擦性、拭掃性及び非粘着性が優れる。より好ましい高さは、0.3〜20.0μmであり、更に好ましくは、0.5〜10.0μmである。
【0080】
上記凸部は、底部断面積が0.1〜2000μmであることが好ましい。凸部の底部断面積がこの範囲にあると、耐摩耗性、低摩擦性、拭掃性及び非粘着性が優れる。より好ましい底部断面積は、0.3〜1500μmであり、更に好ましい底部断面積は、0.5〜1000μmである。
【0081】
本発明のワイパーブレードゴムは、上記凸部の高さの標準偏差が0.300以下であることが好ましい。この範囲にあると、耐摩耗性、低摩擦性、拭掃性及び非粘着性がより優れる。
【0082】
ワイパーブレードゴムは、凸部の数が500〜60000個/mmであることが好ましい。この範囲にあると、耐摩耗性、低摩擦性、拭掃性及び非粘着性がより優れる。
【0083】
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出することができる。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求められる。凸部の数は、測定領域中の凸部の数を1mm当たりの数に換算したものである。
【0084】
本発明のワイパーブレードゴムにおいて、上記凸部はワイパーブレードゴムの表面の一部に形成されていればよく、ワイパーブレードゴムの表面には該凸部が形成されていない領域を有していてもよい。例えば、低摩擦性が要求されないワイパーエッジ部以外の部分には、上記凸部が形成されている必要はない。
【0085】
次に、本発明のワイパーブレードゴムの形成方法について説明する。
【0086】
本発明のワイパーブレードゴムは、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるものである。低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性をより優れたものとする観点から、ワイパーブレードゴムは、下記架橋性組成物を得る混合工程、及び、成形架橋体を得る成形架橋工程からなる製造方法により得ることができる。また、低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性をより優れたものにする観点からは、成形架橋工程の後に、下記熱処理工程を経て得られたものであることがより好ましい。以下に、各工程について説明する。
【0087】
〔混合工程〕
上記架橋性組成物を得る方法は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はないが、例えば、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを溶融混練する方法、又は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを共凝析する方法が好ましい。
以下に、溶融混練と共凝析について説明する。
【0088】
(溶融混練)
溶融混練は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを、フッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂(B)の融点以上の温度で行う。加熱温度の上限は、フッ素ゴム(A)またはフッ素樹脂(B)のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
【0089】
溶融混練は、その温度で架橋を引き起こす条件(架橋剤、架橋促進剤および受酸剤の存在下など)では行わないが、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の溶融混練温度で架橋を引き起こさない成分(たとえば特定の架橋剤のみ、架橋剤と架橋促進剤の組合せのみ、など)であれば、溶融混練時に添加混合してもよい。架橋を引き起こす条件としては、例えば、ポリオール架橋剤と架橋促進剤と受酸剤との組合せが挙げられる。
【0090】
したがって、上記溶融混練では、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、架橋温度未満の温度で他の添加剤や配合剤を混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする2段階混練法が好ましい。もちろん、全ての成分を架橋剤の架橋温度未満の温度で混練する方法でもよい。
【0091】
上記架橋剤としては、アミン架橋剤、ポリオール架橋剤、パーオキサイド架橋剤等の公知の架橋剤を使用することができる。
【0092】
溶融混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素樹脂の融点より5℃低い温度以上の温度、たとえば180℃以上、通常200〜290℃でフッ素ゴムと混練することにより行うことができる。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、加圧ニーダーまたは二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。
【0093】
また、2段階混練法におけるフルコンパウンド化は、架橋温度未満、たとえば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0094】
上記溶融混練と類似の処理として、フッ素樹脂中でフッ素ゴムをフッ素樹脂の溶融条件下で架橋する処理(動的架橋)がある。動的架橋では、熱可塑性樹脂のマトリックス中に未架橋ゴムをブレンドし、混練しながら未架橋ゴムを架橋させ、かつその架橋したゴムをマトリックス中にミクロに分散させる方法であるが、上記溶融混練は、架橋を引き起こさない条件(架橋に必要な成分の不存在、またはその温度で架橋反応が起こらない配合など)で溶融混練するものであり、またマトリックスは未架橋ゴムとなり、未架橋ゴム中にフッ素樹脂が均一に分散している混合物である点において本質的に異なる。
【0095】
(共凝析)
フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とがより均一に混合される点から、上記架橋性組成物は、共凝析により得られるものであることが好ましい。すなわち、上記架橋性組成物は、共凝析により得られたフッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)を含むものであることが好ましい。共凝析を用いることで、非粘着性、耐摩耗性、低摩擦性、拭掃性及び柔軟性がより優れたワイパーブレードゴムを形成することができる。また、ワイパーブレードゴムの表面に形成される凸部を均一に形成することができるし、凸部を有する領域の面積比(占有率)を十分に高くすることもできる。
【0096】
上記架橋性組成物が、共凝析させたフッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含むと、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とが架橋性組成物中に均一に分散していると予想される。
【0097】
上記共凝析の方法としては、例えば、(i)フッ素ゴム(A)の水性分散液と、フッ素樹脂(B)の水性分散液とを混合した後に凝析させる方法、(ii)フッ素ゴム(A)の粉末を、フッ素樹脂(B)の水性分散液に添加した後に凝析させる方法、(iii)フッ素樹脂(B)の粉末を、フッ素ゴム(A)の水性分散液に添加した後に凝析させる方法が挙げられる。上記共凝析の方法としては、特に各樹脂が均一に分散し易い点で、上記(i)の方法が好ましい。
【0098】
上記(i)〜(iii)の凝析方法における凝析は、例えば、凝集剤を用いて行うことができる。このような凝集剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン等のアルミニウム塩、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の一価カチオン塩等の公知の凝集剤が挙げられる。凝集剤により凝析を行う際、凝集を促進させるために酸又はアルカリを添加してpHを調整してもよい。
【0099】
上記架橋性組成物は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを共凝析して得られた共凝析粉末を含むものであることが好ましい。上記共凝析粉末は、例えば、フッ素ゴム(A)の水性分散液と、フッ素樹脂(B)の水性分散液とを混合した後に凝析し、次いで凝析物を回収し、所望により乾燥させることにより得ることができる。また、上記架橋性組成物は、上記共凝析粉末と架橋剤とを含むものであることが好ましく、更に、後述する各種添加剤等を含むものであってもよい。
上記架橋性組成物は、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを共凝析して共凝析粉末を得て、該共凝析粉末に架橋剤を添加して得られるものであることが好ましい。
【0100】
フッ素ゴム(A)の架橋系によっては架橋剤が必要であるので、フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを共凝析して共凝析粉末を得た後、共凝析粉末に架橋剤を添加して架橋性組成物を得てもよい。
【0101】
通常は、共凝析粉末に架橋剤を添加した後、共凝析粉末と架橋剤とを混合する。上記混合は、例えば、ニーダー等を用いた通常の混合方法により、フッ素樹脂(B)の融点未満の温度で混合することができる。
【0102】
〔成形架橋工程〕
次に、架橋性組成物を成形及び架橋することにより、架橋成形体を作製する。成形及び架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋を同時に行ってもよい。
【0103】
架橋性組成物の成形及び架橋の方法及び条件は、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。
【0104】
成形方法としては、例えば、押出成形、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等が挙げられる。
【0105】
架橋方法としては、スチーム架橋法、加圧成形法、放射線架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法が採用できる。本発明においては、低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性の観点から、加熱による架橋反応が好適である。
【0106】
架橋を行う温度は、フッ素ゴム(A)の架橋温度以上であり、フッ素樹脂(B)の融点未満であることが好ましい。架橋をフッ素樹脂(B)の融点以上で行うと、充分な低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性が得られないおそれがある。
架橋を行う温度は、フッ素樹脂(B)の融点より5℃低い温度未満であり、かつフッ素ゴム(A)の架橋温度以上であることがより好ましい。架橋時間としては、例えば、1分間〜24時間であり、使用する架橋剤などの種類により適宜決定すればよい。
【0107】
ところで、フッ素ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、下記の熱処理工程で説明するように、従来の2次架橋工程と本明細書の熱処理工程とは異なる処理工程である。
【0108】
上記成形架橋工程により得られる架橋成形体をワイパーブレードゴムとして用いることもできるが、低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性をより優れたものとする観点からは、成形架橋工程により得られた架橋成形体に対して、下記の熱処理工程を行うことが好ましい。
【0109】
(熱処理工程)
この工程では、成形架橋工程で得られた架橋成形体をフッ素樹脂(B)の融点以上の温度に加熱してワイパーブレードゴムを得る。
【0110】
熱処理工程は、ワイパーブレードゴムの表面のフッ素樹脂比率を高めるために行う処理工程であり、この目的に即して、フッ素樹脂(B)の融点以上かつフッ素ゴム(A)及びフッ素樹脂(B)の熱分解温度未満の温度が加熱温度として採用される。
【0111】
加熱温度がフッ素樹脂の融点よりも低い場合は、多数の凸部を有するワイパーブレードゴムを得ることができない。また、加熱温度は、フッ素ゴム及びフッ素樹脂の熱分解を回避するために、フッ素ゴム(A)またはフッ素樹脂(B)のいずれか低い方の熱分解温度未満の温度でなければならない。好ましい加熱温度は、短時間で非粘着性、耐摩耗性及び低摩擦性を高めることができる点から、フッ素樹脂の融点より5℃以上高い温度である。
【0112】
上記の上限温度は通常のフッ素ゴムの場合であり、超耐熱性を有するフッ素ゴムの場合は、上限温度は超耐熱性を有するフッ素ゴムの分解温度であるので、上記上限温度はこの限りではない。
【0113】
熱処理工程において、加熱温度は加熱時間と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間の加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとフッ素ゴムが熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上96時間までである。通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましい。生産性が良好な点からは1分間〜24時間がより好ましいが、低摩擦性、耐摩耗性、拭掃性及び非粘着性を向上させる観点からは、8〜72時間であることが好ましい。
【0114】
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してフッ素ゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、フッ素樹脂(B)の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に本発明における熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋ではフッ素樹脂の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずにフッ素ゴムの架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、フッ素樹脂(B)を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中でフッ素樹脂(B)を加熱軟化または溶融する条件を導き出せるものではない。
【0115】
なお、上記成形架橋工程において、フッ素ゴム(A)の架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
【0116】
また、熱処理工程において、残存する架橋剤の分解が起こりフッ素ゴム(A)の架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程におけるかかるフッ素ゴム(A)の架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
【0117】
上記熱処理工程を行うことにより、フッ素樹脂(B)の特性、たとえば低摩擦性、耐摩耗性及び非粘着性が、熱処理をしないものより格段に向上したワイパーブレードゴムを得ることができる。しかも、表面領域以外では逆にフッ素ゴム(A)の特性が発揮でき、全体として、低摩擦性、耐摩耗性、非粘着性及び柔軟性のいずれにもバランスよく優れており、優れた拭掃性を有するワイパーブレードゴムが得られる。さらに、得られるワイパーブレードゴムには、フッ素樹脂(B)とフッ素ゴム(A)の明確な界面状態が存在しないので、表面のフッ素樹脂(B)に富む領域が脱落や剥離することもなく、耐久性に優れている。このようなワイパーブレードゴムを有することによって、本発明のワイパーブレードゴムは、低摩擦性、耐摩耗性、非粘着性及び柔軟性を兼ね備えており、優れた拭掃性を有するものとなる。
【0118】
ここで、本発明のワイパーブレードゴムを得るための具体的方法について簡単に説明するが、本発明のワイパーブレードゴムを得る方法は、下記方法に限られるものではない。
【0119】
本発明のワイパーブレードゴムを得る方法としては、下記方法が挙げられる。
例えば、共凝析、溶融混練等により上記架橋性組成物を調製した後、該架橋性組成物をプレス成型機、トランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形及び架橋を行うことによって本発明のワイパーブレードゴムを得ることができる。得られたワイパーブレードゴムを加熱炉中に入れ、加熱処理をしてもよい。
【0120】
本発明のワイパーブレードゴムの形状は、一般的な形状でよく、用いられる用途に応じて適宜決定すればよい。
【0121】
図2は、本発明のワイパーブレードゴムの一例の断面模式図である。本発明のワイパーブレードゴム10は、ヘッド部11とウェッジ部13を有しており、ヘッド部11とウェッジ部13とはブリッジ部12を介して結合されている。ウェッジ部13は、ヘッド部11側から拭掃されるガラス15と接触するワイパーエッジ部14に向かって幅が狭くなっている。
ガラス面と接触するワイパーエッジ部14がフッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるものであって、更に上記凸部を有するものであると、ワイパーエッジ部14の表面が低摩擦性であるため、拭掃されるガラス15の表面との摩擦がより低くなる。
また、ワイパーブレードゴム10は全体としてゴム本来の柔軟性が損なわれることもなく、拭掃されるガラス15の表面に密着するため、優れた拭掃性能が発揮される。
【0122】
本発明のワイパーブレードゴムは、例えば、自動車、電車、航空機、船舶などの乗物や、各種工作機械用のワイパーブレードに使用することができる。ワイパーブレードゴムが配設される場所についても、特に限定されず、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、各種ミラー等に用いることができる。
【実施例】
【0123】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0124】
本明細書における各種の特性については、つぎの方法で試験した。その結果を表1に示した。
〔ワイパー性能の試験〕
成形されたワイパーブレードコムを車両のワイパーブレードに取付けて、ワイパー性能の試験を行った。ワイパーは毎分55回往復するように作動させ、ガラス表面は、乾燥状態、霧吹き状態(部分的に乾燥した状態が存在する)、放水状態(全体に水を散布し続ける)の3状態で拭掃性、スティックスリップ現象の有無を観察した。さらに、ワイパーを100時間連続運転させた後の、スティックスリップ現象の有無を観察した。
拭掃性(払掃性能)
○:拭掃時の拭残しが全く認められなかった
△:わずかに拭残しが認められる
×:拭残しが認められる
スティックスリップ現象の評価
○:スティックスリップが全く起こらなかった
△:スティックスリップが時たま起こった
×:スティックスリップが頻繁に起こった
【0125】
〔凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比〕
凸部を有する領域の面積比、凸部の高さ、凸部の底部断面積、凸部の数等は、例えば、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用い、解析ソフトとして三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いて算出した。凸部を有する領域の面積比は、凸部の底部断面積を求め、断面積合計の値が、測定全領域面積に占める割合として求めた。凸部の数は、測定領域中の凸部の数を1mm当たりの数に換算したものである。
【0126】
〔メルトフローレート(MFR)〕
MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
【0127】
〔ムーニー粘度〕
ムーニー粘度は、ASTM−D1646に準拠して得られる値である。
測定機器:ALPHA TECHNOLOGIES社製のMV2000E型
ローター回転数:2rpm
測定温度:100℃
【0128】
フッ素ゴムディスパージョン(A1)
ポリオール架橋可能な2元フッ素ゴム(VdF/HFP共重合体、VdF/HFP=78/22、ムーニー粘度(ML1+10(100℃)):80)のディスパージョン(固形分濃度:24質量%)
【0129】
フッ素ゴムディスパージョン(A2)
ポリオール架橋可能な2元フッ素ゴム(VdF/HFP共重合体、VdF/HFP=78
/22、ムーニー粘度(ML1+10(100℃)):60)のディスパージョン(固形分濃度:23質量%)
【0130】
フッ素ゴム(A3)
ポリオール架橋可能な2元フッ素ゴム(ダイキン工業(株)製のG7400BP)
【0131】
フッ素樹脂ディスパージョン(B1)
FEP(TFE/HFP共重合体、MFR:31.7g/10min(327℃測定)、融点:約215℃)の水性ディスパージョン(固形分濃度:21質量%)
【0132】
フッ素樹脂(B2)
ETFE(ダイキン工業(株)製のEP−610)
【0133】
充填剤
カーボンブラック(Cancarb社製のMTカーボン:N990)
【0134】
架橋剤
ビスフェノールAF 特級試薬 和光純薬工業(株)製
架橋促進剤
BTPPC 特級試薬 和光純薬工業(株)製
架橋助剤
酸化マグネシウム 協和化学工業(株)製 MA150
水酸化カルシウム 近江化学工業(株)製 CALDIC2000
【0135】
実施例1
容量1Lのミキサー内に、水500ccと塩化マグネシウム4gをあらかじめ混合した溶液にFEP水性ディスパージョン(B1)とフッ素ゴムディスパージョン(A1)とを、固形分が体積比で75/25(フッ素ゴム/FEP)となるようにあらかじめ混合した溶液400ccを投入し、ミキサーにて5分間混合し、共凝析した。
共凝析後、固形分を取り出し、120℃×24時間乾燥炉で乾燥させた後、オープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物とした。
その後、成形金型内でワイパーブレードの形状に成形し、180℃、5分間、40kg/cmの加圧下で架橋して、架橋成形品を得た。
その後、架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れて加熱処理を行うことで、ワイパーブレードゴムを得た。得られたワイパーブレードゴムを用いて、ワイパー性能の試験を行った。また、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。
【0136】
実施例2
内容積3リットルの加圧型ニーダーにフッ素ゴム(A3)とフッ素樹脂(B2)の体積比が75/25で、内容量の75%になる量を投入し、フッ素樹脂(B2)の融点(225℃)以上の230℃の温度で20分間溶融混練し、取り出し室温まで冷却させた後、オープンロールにて表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物とした。その後は実施例1と同様の方法でワイパーブレードゴムを得た。得られたワイパーブレードゴムを用いて、ワイパー性能の試験を行った。また、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。
【0137】
比較例1
オープンロールにて、フッ素ゴム(A3)に表1に示す所定の配合物を混合して、架橋性組成物とした。その後は実施例1と同様の方法でワイパーブレードゴムを得た。得られたワイパーブレードゴムを用いて、ワイパー性能の試験を行った。また、凸部の数、底部断面積、高さ、凸部を有する領域の面積比を測定した。
【0138】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のワイパーブレードゴムは低摩擦性、耐摩耗性、非粘着性に優れ、かつ優れた拭掃性を発揮するものであり、種々の乗物、工作機機械用のワイパーブレードとして利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
10、30:ワイパーブレードゴム
11:ヘッド部
12:ブリッジ部
13:ウェッジ部
14:ワイパーエッジ部
15:ガラス
31:凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素ゴム(A)とフッ素樹脂(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得られるものであることを特徴とするワイパーブレードゴム。
【請求項2】
フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、及び、ポリフッ化ビニルからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のワイパーブレードゴム。
【請求項3】
フッ素樹脂(B)は、パーフルオロフッ素樹脂である請求項1又は2記載のワイパーブレードゴム。
【請求項4】
フッ素樹脂(B)は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体である請求項1、2又は3記載のワイパーブレードゴム。
【請求項5】
ワイパーブレードゴムに対するフッ素樹脂(B)の体積比が0.05〜0.45である
請求項1、2、3又は4記載のワイパーブレードゴム。
【請求項6】
フッ素ゴム(A)は、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、及び、ビニリデンフルオライド/クロロトリフルオロエチレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である
請求項1、2、3、4又は5記載のワイパーブレードゴム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86524(P2013−86524A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225689(P2011−225689)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】