説明

ワイパーブレード

【課題】払拭面から掻き落とした雪がカバー内に侵入するのを防止できるワイパーブレードの提供を図る。
【解決手段】カバー20のフランジ部20aと第2のバーティブラ8のフランジ部8aとを上下方向に重ね合わせて、ブレードラバー1の基部3の両側の溝部5に嵌挿配置してある。これにより、払拭作動時にカバー20のフランジ部20aが溝部5から離脱するのを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のワイパー装置に用いられるワイパーブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冬期用のワイパーブレードとして、ブレードラバーの先端の払拭用のリップと基部とを連設した頸部に一対の腕片を突設する一方、ブレードラバーの上方側を内包して被覆したカバーの下側開放縁に段差部を設け、この段差部に前記腕片の先端を当接係合して、カバー内部への雪の侵入,堆積を回避するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、ブレードラバーの腕片の先端を自体の弾性により、カバーの下側開放縁の段差部に下側から当接,係合した構成であるため、払拭作動時に摺擦振動あるいは捩れが発生した場合に、前記腕片の先端が対応する段差部から離間して、払拭面から掻き落した雪がカバー内に侵入する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は払拭面から掻き落した雪がカバー内に侵入するのを確実に防止することができるワイパーブレードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイパーブレードは、ブレードラバーと、該ブレードラバーの基部に沿って配設した第1のバーティブラと、ブレードラバーの基部と第1のバーティブラに沿って配設されて、これら両者を抱持して固定する第2のバーティブラと、ワイパーアームに対するホルダ部を備えて前記第2のバーティブラの長さ方向中央部に連結したホルダプレートと、該ホルダプレートに固定され、このホルダプレートと前記ブレードラバーの基部に亘ってこれらを全体的に内包して被覆する弾性材からなるカバーと、を備えている。
【0007】
そして、前記ブレードラバーは、その基部の幅方向両側に長さ方向に沿う溝部を備えている一方、第2のバーティブラおよびカバーの各幅方向両側部に、相互に上下方向に重ね合わせるフランジ部を備え、これらフランジ部を、上下方向に重ね合わせた状態で前記溝部に嵌挿配置したことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバーのフランジ部と第2のバーティブラのフランジとを上下方向に重ね合わせた状態で、ブレードラバーの基部両側の溝部に嵌挿配置してあるため、払拭作動時に摺擦振動あるいは捩れが発生した場合でも、該カバーのフランジ部が対応する溝部から離脱することはなく、密封状態が維持される。
【0009】
この結果、払拭面から掻き落とされた雪がカバー内に侵入,堆積するのを確実に防止することができ、ブレードラバーの払拭性能を阻害するのを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るワイパーブレードの全体外観を示す斜視図。
【図2】ワイパーブレードの分解斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態を示す図1のA−A線に沿う断面図。
【図4】本発明の第2実施形態を示す図3と同様の断面図。
【図5】本発明の第3実施形態を示す図3と同様の断面図。
【図6】本発明の第4実施形態を示す図3と同様の断面図。
【図7】本発明の第5実施形態を示すカバーの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1,図2に示す第1実施形態のワイパーブレードは、ブレードラバー1と、該ブレードラバー1に作用する押圧力をその長さ方向に分散して均一化するための第1のバーティブラ7と、を備えている。
【0013】
ブレードラバー1は、図3に示すように、自動車のフロントウィンドウパネルやリャウィンドウパネル等の払拭面を摺擦する払拭用のリップ2と、該リップ2と頸部4を介して連設した基部3と、を備えている。
【0014】
基部3は、上側の略方形断面のアッパー部3Uと、該アッパー部3Aよりも幅広のロアー部3Lとで構成され、これらアッパー部3Uとロアー部3Lとの連設部の両側に長さ方向に沿う溝部5を形成してある。
【0015】
第1のバーティブラ7は、適宜のばね鋼材をもって基部3よりもやや幅広の帯板状に形成され、該基部3のアッパー部3Uの上面に重ねて配置してある。
【0016】
これらアッパー部3Uと第1のバーティブラ7は、リテーナ部材として機能する第2のバーティブラ8により抱持して固定してある。
【0017】
第2のバーティブラ8は適宜の合成樹脂材からなり、第1のバーティブラ7を抱持するC字形のチャンネル断面部8Aと、これよりも幅狭に形成され、下縁をフランジ部8aとして曲折成形してアッパー部3Uを抱持する方形のチャンネル断面部8Bとが連続した多段の断面形状に形成してある。
【0018】
本実施形態では、アッパー部3Uの幅方向両側にスリット6を長さ方向に形成して、該スリット6に板ばね材からなる第3のバーティブラ9を嵌着配置してある。この第3のバーティブラ9はアッパー部3Uと共に、第2のバーティブラ8のチャンネル断面部8Bで抱持され、払拭作動時におけるアッパー部3Uの捻転動作の抑制機能を併有している。
【0019】
第2のバーティブラ8の長さ方向中央部には、図外のワイパーアームに対するホルダ部10を設けたホルダプレート11を装着してある。
【0020】
ホルダ部10は、ワイパーアームの端部に係脱可能に挿し込み係着するクリップ12と、該クリップ12を幅方向の対向壁間に支軸14によって回動可能に軸支したコ字形のブラケット13とで構成している。
【0021】
このホルダ部10は、ホルダプレート11の中央部上面にブラケット13の底壁を重ね合わせ、長さ方向に間隔をおいて2本のかしめピン15によってかしめ固定してある。
【0022】
ホルダ部10およびホルダプレート11は、何れもステンレス鋼等の耐腐蝕性の金属材料で構成されている。
【0023】
ホルダプレート11の長さ方向の両端部は、幅方向両側縁に板厚相当の段差で下側へオフセットしてC字形のチャンネル断面の抱持部11aを形成してあり、該抱持部11aを第2のバーティブラ8の上段側のチャンネル断面部8Aに外嵌装着してある。
【0024】
このチャンネル断面部8Aの上壁には、ホルダプレート11の下面側に突出したかしめピン15のかしめ頭部に対応する位置に、該かしめ頭部が落ち込み係合するロケート孔8bを形成して、ホルダプレート11とホルダ部10とからなるホルダユニットを適正に位置決めするようにしている。
【0025】
ホルダ部10の底壁とホルダプレート11との間には、カバー20を挟着固定してある。
【0026】
カバー20は、弾性材、例えばブレードラバー1と同質のゴム材をもって略C字形断面に形成され、幅方向両側の下縁は内向きに対向するフランジ部20aとしている。
【0027】
カバー20の長さ方向中央部には、ホルダユニットのかしめピン15,15に対応して貫通孔20bを形成してある。この貫通孔20bに環状のスペーサ21を挿入介装して、該スペーサ21を通してかしめピン15,15により上述のようにホルダ部10の底壁とホルダプレート11との間に挟んだ状態で、ホルダユニットと一体的にかしめ固定してある。
【0028】
このカバー20のフランジ部20aは、第2のバーティブラ8のフランジ部8aの下側に重ね合わせて接着して、該フランジ部8aと共にブレードラバー1の基部3の溝部5に嵌挿配置してある。
【0029】
これにより、ホルダユニットのホルダプレート11からブレードラバー1の基部3のアッパー部3Uまでの部分を、カバー20で全体的に内包して被覆するようにしている。
【0030】
本実施形態では、カバー20のフランジ部20aの端末には、略L字状にシールリップ20cを突設してあり、該シールリップ20cが溝部5の奥底部と第2のバーティブラ8のフランジ部8aの端末との間に挟着固定されて、シール機能と抜止め機能とを発揮するようにしている。
【0031】
また、本実施形態では、カバー20はブレードラバー1と同様に一定断面形状に押出し成形してあり、そこで、カバー20の長さ方向両端末の断面開放部にゴム製のキャップ部材22を装着して、該断面開放部を密封している。キャップ部材22はカバー20と第2のバーティブラ8の下半部両側との間に生じる空隙に挿入する脚部22aを有し、該脚部22aがこの空隙に圧入されることで、自体の弾性作用で抜止めできるようにしている。
【0032】
上述のホルダ部10とホルダプレート11とからなるホルダユニットと、カバー20はサブアッセンブリされ、更に、このカバー20を組付けたホルダユニットを第2のバーティブラ8にサブアッセンブリするようにしている。このホルダユニットの第2のバーティブラ8への組付けは、ホルダプレート11の抱持部11aと第2のバーティブラ8とを、長さ方向に相互に摺接して嵌挿係合することによって行われる。このとき、ホルダプレート11の下面に突出したかしめピン15のかしめ頭部が、第2のバーティブラ8のロケート孔8bに落ち込み係合することで、カバー20付きのホルダユニットと第2のバーティブラ8の相互の長さ方向の位置決めが行われる。この位置決めが行われた段階で、フランジ部8a,20a同士を接着する。
【0033】
そして、第2のバーティブラ8およびカバー20と、ブレードラバー1、第1のバーティブラ7との組付けは、次のようにして行われる。
【0034】
先ず、ブレードラバー1の基部3のアッパー部3Uのスリット6に、第3のバーティブラ9を圧入係合してサブアッセンブリする。
【0035】
次に、このアッパー部3Uの長さ方向の端末を、第2のバーティブラ8の長さ方向の端末における下段側のチャンネル断面部8Bに照合させると共に、該チャンネル断面部8Bの下縁のフランジ部8aとカバー20の下縁のフランジ部20aの重ね合わせ部の長さ方向の端末と、ブレードラバー1の基部3の溝部5の長さ方向の端末とを照合させて、ブレードラバー1と、第2のバーティブラ8およびカバー20と、を長さ方向に相互に圧入係合する。
【0036】
そして、最後にキャップ部材22をカバー20の長さ方向の端末の断面開放部に圧入係着して、該断面開放部を密封することで組付けを終了する。
【0037】
この第1実施形態の構成からなるワイパーブレードによれば、カバー20のフランジ部20aと第2のバーティブラ8のフランジ部8aとを上下方向に重ね合わせた状態で、ブレードラバー1の基部3の両側の溝部5に嵌挿配置してある。これにより、払拭面に対する払拭作動時に、摺擦振動あるいは捩れが発生した場合でも、カバー20のフランジ部20aが溝部5から離脱することはなく、カバー20内の密封状態が維持される。
【0038】
この結果、掻き落とされた雪がカバー20の内側に侵入,堆積して、これが次第に成長する現象を確実に防止することができ、ブレードラバー1の払拭性能を阻害することはない。
【0039】
また、本実施形態では、カバー20のフランジ部20aの端末のシールリップ20cが、溝部5の奥底部と第2のバーティブラ8のフランジ部8aの端末との間に挟着固定されるため、該カバー20のフランジ部20aの溝部5からの離脱をより確実に防止できる。しかも、該シールリップ20cのシール機能によって、カバー20内への水の侵入を防止することもできる。
【0040】
更に、カバー20はブレードラバー1と同様に押出し成形されているが、該カバー20の長さ方向端末の断面開放部は、キャップ部材22を嵌挿して密封してあるため、ここからの水侵入が生じることもない。
【0041】
図4は本発明の第2実施形態を示しており、本実施形態では、カバー20の幅方向両側部の内面に、長さ方向に沿う一条もしくは複数条の溝部20dを形成してある。
【0042】
この第2実施形態の構造によれば、ワイパーブレードの払拭反転作動時におけるカバー20の幅方向両側部の伸縮変形が溝部20dの設定によって良好に行われ、カバー20の側部外表面に雪が付着しても、この伸縮変形作用で落下させることができて、カバー20内への雪の侵入防止効果を高めることができる。
【0043】
図5は本発明の第3実施形態を示しており、本実施形態では、カバー20の幅方向両側部の肉厚を、フランジ部20a側に至るにしたがって薄くなるように徐変して形成してある。
【0044】
この第3実施形態の構造にあっても、上述の肉厚徐変によって、ワイパーブレードの払拭反転作動時におけるカバー20の幅方向両側部の伸縮変形が良好に行われ、カバー20の側部外表面に雪が付着しても、この伸縮変形作用で落下させることができて、カバー20内への雪の侵入防止効果を高めることができる。
【0045】
図6は本発明の第4実施形態を示しており、本実施形態では、カバー20の幅方向両側のフランジ部20a側の内側と、第2のバーティブラ8のチャンネル断面部8A,8Bの連設段部との間に生じた空隙に、合成樹脂製の線条材、あるいはピアノ線等の、弾性復元性に優れた部材からなる保形用のクッション材23を挿入配設してある。
【0046】
この第4実施形態の構造によれば、クッション材23の存在により、カバー20の幅方向側部が内側に凹み変形するのを防止して、雪の付着防止効果が低下するのを回避することができる。
【0047】
図7は本発明の第5実施形態を示しており、本実施形態では、カバー20の幅方向両側部の、少なくともフランジ部20a側半部の外表面を、絞模様等を施して粗面Sを形成してある。
【0048】
この第5実施形態の構造によれば、ワイパーブレードの払拭反転作動時に、カバー20の幅方向両側部が伸縮変形した際に、その外表面でも粗面Sが微妙に伸縮作用して、付着した雪の落下作用を良好に行わせることができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態の構造に限定されるものではなく、ブレードラバー1,第2のバーティブラ8,カバー20等の断面形状は、仕様によって如何ようにも変更することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…ブレードラバー
3…基部
5…溝部
7…第1のバーティブラ
8…第2のバーティブラ
8a…フランジ部
10…ホルダ部
11…ホルダプレート
20…カバー
20a…フランジ部
20c…シールリップ
20d…溝部
22…キャップ部材
23…保形用のクッション材
S…粗面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードラバーと、
前記ブレードラバーの基部に沿って配設した第1のバーティブラと、
前記ブレードラバーの基部と第1のバーティブラに沿って配設されて、これら両者を抱持して固定する第2のバーティブラと、
ワイパーアームに対するホルダ部を有し、前記第2のバーティブラの長さ方向中央部に連結したホルダプレートと、
前記ホルダプレートに固定され、該ホルダプレートから前記ブレードラバーの基部に亘ってこれらを全体的に内包して被覆する弾性材からなるカバーと、を備えた構成であって、
前記ブレードラバーは、その基部の幅方向両側に長さ方向に沿う溝部を備えている一方、
前記第2のバーティブラおよびカバーの各幅方向両側部に、相互に上下方向に重ね合わせるフランジ部を備え、
これらフランジ部を、上下方向に重ね合わせた状態で前記溝部に嵌挿配置したことを特徴とするワイパーブレード。
【請求項2】
前記カバーのフランジ部の端末には、略L字状に突設されて前記溝部の奥底部と、前記第2のバーティブラのフランジ部の端末との間に挟着固定される抜止めを兼ねたシールリップを備えたことを特徴とする請求項1に記載のワイパーブレード。
【請求項3】
前記カバーは一定断面形状に押出し成形され、その長さ方向の端末の断面開放部をキャップ部材で密封したことを特徴とする請求項1または2に記載のワイパーブレード。
【請求項4】
前記カバーは、その幅方向両側部の内面に、長さ方向に沿う溝部を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のワイパーブレード。
【請求項5】
前記カバーは、その幅方向両側部の肉厚を、フランジ部側に至るにしたがって薄くなるように徐変して形成したことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のワイパーブレード。
【請求項6】
前記カバーの幅方向両側のフランジ部側の内側と、前記第2のバーティブラとの間に、保形用のクッション材を配設したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のワイパーブレード。
【請求項7】
前記カバーの幅方向両側部の、少なくともフランジ部側半部の外表面を粗面としたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1つに記載のワイパーブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−148616(P2012−148616A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7228(P2011−7228)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】