説明

ワイパーブレード

【課題】ホルダ部とホルダプレートとのかしめピン結合工程でこれら両者間にカバーを挟着可能で、しかも、スペーサを不要として該カバーを挟着固定可能なワイパーブレードの提供を図る。
【解決手段】ホルダ部10を構成するブラケット13の底壁に、カバー20の肉厚相当の段差でホルダプレート11側に向けて突出する座ぐり部13aを形成してある。カバー20はその貫通孔20bに座ぐり部13aを通してブラケット13とホルダプレート11との間に挟み込んで、座ぐり部13aの部分でかしめピン15によりブラケット13とホルダプレート11とをかしめ固定することにより、座ぐり部13aがスペーサとして機能してカバー20をこれらブラケット13とホルダプレート11との間に挟着することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のワイパー装置に用いられるワイパーブレード、とりわけ、ブレードラバーの上方側をカバーで全体的に内包して被覆した冬期用のワイパーブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
冬期用のワイパーブレードは上述のように、ブレードラバーの上方側を弾性材からなるカバーで全体的に内包して被覆することにより、被払拭面から掻き落した雪がブレードラバーに付着,堆積するのを極力回避できるようにしている。
【0003】
ワイパーブレードの中でも、トーナメントタイプのレバーアッセンブリを用いない、所謂、フラットタイプのワイパーブレードでは、特許文献1に示すように、長さ方向中央部分にホルダユニットを装着して、ワイパーアームと係脱可能に連結するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−126853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ホルダユニットはステンレス鋼等の耐腐蝕性金属材料からなり、ワイパーアームに対するホルダ部と、該ホルダ部をかしめピン結合し、バーティブラを付設したブレードラバーに着脱可能に装着するホルダプレートとで構成されている。
【0006】
このホルダプレートのブレードラバーへの装着は、カバーに開窓部を形成して、この開窓部を通してホルダプレートをブレードラバーに装着するようにしているが、この場合、ホルダプレートが貫通した開窓部周りのシールの徹底が困難となる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明はホルダ部とホルダプレートのかしめピンによる結合工程でこれら両者間にカバーを挟着可能で、しかも、ピン結合部に専用のスペーサを不要としてカバーを損傷することなくかしめ結合することができて、ホルダユニット周りのシール性を高めることができるワイパーブレードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパーブレードは、ブレードラバーと、前記ブレードラバーの基部に沿って配設した第1のバーティブラと、前記ブレードラバーの基部と第1のバーティブラに沿って配設されて、これら両者を抱持して固定する第2のバーティブラと、ワイパーアームに対するホルダ部をピン結合し、前記第2のバーティブラの長さ方向中央部に連結したホルダプレートと、前記ホルダ部とホルダプレートとの間に挟着固定され、該ホルダプレートから前記ブレードラバーの基部に亘ってこれらを全体的に内包して被覆する弾性材からなるカバーと、を備えた構成であって、前記ホルダ部の前記ホルダプレートに対するピン結合部分に、前記カバーの肉厚相当の段差で前記ホルダプレート側に向けて突出する座ぐり部を形成し、該座ぐり部を前記カバーを貫通して配置されるスペーサとして機能させたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ホルダとホルダプレートとの間にカバーを挟んだ状態で、これらの部材を一体的にピン結合できるため、カバーにはホルダプレートを配設するための開窓部を設けることなく、該ホルダプレートのブレードラバー側に対する連結が可能となる。
【0010】
従って、カバーのホルダプレート周りにおけるシール性を高められて、水の侵入,凍結防止を徹底することができる。
【0011】
また、ホルダ部の座ぐり部がスペーサとして機能するため、専用のスペーサを不要として前述の3部材をかしめピンをもってカバーを損傷することなくかしめ結合できて、部品点数の削減と、コストダウンとを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るワイパーブレードの全体外観を示す斜視図。
【図2】ワイパーブレードの分解斜視図。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図。
【図4】ホルダ部を構成するブラケットの平面図。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図。
【図6】ホルダ部におけるブラケットの異なる例を示す図5と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0014】
図1,図2に示す実施形態のワイパーブレードは、ブレードラバー1と、該ブレードラバー1に作用する押圧力をその長さ方向に分散して均一化するための第1のバーティブラ7と、を備えている。
【0015】
ブレードラバー1は、図3に示すように、自動車のフロントウィンドウパネルやリヤウィンドウパネル等の被払拭面を摺擦して払拭する下方側のリップ2と、該リップ2と頸部4を介して連設した上方側の基部3と、を備えている。
【0016】
基部3は、上側の略方形断面のアッパー部3Uと、該アッパー部3Uよりも幅広のロアー部3Lとで構成され、これらアッパー部3Uとロアー部3Lとの連設部の両側に長さ方向に沿う溝部5を形成してある。
【0017】
第1のバーティブラ7は、適宜のばね鋼材をもって基部3よりもやや幅広の帯板状に形成され、該基部3のアッパー部3Uの上面に重ねて配置してある。
【0018】
これらアッパー部3Uと第1のバーティブラ7は、リテーナ部材としての機能を併有する第2のバーティブラ8により抱持して固定してある。
【0019】
第2のバーティブラ8は適宜の合成樹脂材からなり、第1のバーティブラ7を抱持するC字形のチャンネル断面部8Aと、これよりも幅狭に形成され、下縁をフランジ部8aとして曲折成形してアッパー部3Uを抱持する方形のチャンネル断面部8Bとが連続した多段のチャンネル断面形状に形成してある。
【0020】
本実施形態では、アッパー部3Uの幅方向両側にスリット6を長さ方向に形成して、該スリット6に板ばね材からなる第3のバーティブラ9を嵌着配置してある。この第3のバーティブラ9はアッパー部3Uと共に、第2のバーティブラ8のチャンネル断面部8Bで抱持され、払拭作動時におけるアッパー部3Uの捻転動作の抑制機能を併有している。
【0021】
第2のバーティブラ8の長さ方向中央部には、図外のワイパーアームに対するホルダ部10を設けたホルダプレート11を装着してある。
【0022】
ホルダ部10は、ワイパーアームの端部に係脱可能に挿し込み係着するクリップ12と、該クリップ12を幅方向の対向壁間に支軸14によって回動可能に軸支したコ字形のブラケット13とで構成している。
【0023】
このホルダ部10は、ホルダプレート11の中央部上面にブラケット13の底壁を重ね合わせ、長さ方向に間隔をおいて2本のかしめピン15によってかしめ固定してある。
【0024】
ホルダ部10およびホルダプレート11は、何れもステンレス鋼等の耐腐蝕性の金属材料で構成されている。
【0025】
ホルダプレート11の長さ方向の両端部は、幅方向両側縁に板厚相当の段差で下側へオフセットしてC字形のチャンネル断面の抱持部11aを形成してあり、該抱持部11aを第2のバーティブラ8の上段側のチャンネル断面部8Aに外嵌装着してある。
【0026】
このチャンネル断面部8Aの上壁には、ホルダプレート11の下面側に突出したかしめピン15のかしめ頭部に対応する位置に、該かしめ頭部が落ち込み係合するロケート孔8bを形成して、ホルダプレート11とホルダ部10とからなるホルダユニットを適正に位置決めするようにしている。
【0027】
ホルダ部10の底壁とホルダプレート11との間には、カバー20を挟着固定してある。
【0028】
ここで、前記ホルダ部10のホルダプレート11に対するピン結合部分、即ち、ブラケット13の底壁の長さ方向両端部のピン結合部分には、図4,図5にも示すように前記カバー20の肉厚相当の段差でホルダプレート11側に向けて突出する座ぐり部13aを形成してある。
【0029】
そして、この座ぐり部13aをホルダプレート11上に当接して、該座ぐり部13aおよびホルダプレート11に設けたピン挿通孔13b,11bにかしめピン15を挿通して、これら両者をかしめ結合するようにしている。
【0030】
また、ブラケット13の底壁の長さ方向両端部には、座ぐり部13aから端末が離間するように延長部13cを円弧状に突設してある。
【0031】
カバー20は、弾性材、例えばブレードラバー1と同質のゴム材をもって略C字形断面に形成され、幅方向両側の下縁はコ字形断面が背合わせ状に対向するフランジ部20aとしている。
【0032】
カバー20の長さ方向中央部には、ホルダ部10の座ぐり部13a,13aに対応して貫通孔20bを形成してある。この貫通孔20bに前記座ぐり部13aを挿入して、上述のようにピン挿通孔13b,11bにかしめピン15,15を通してホルダ部10とホルダプレート11とをかしめ固定することにより、カバー20を座ぐり部13aを除くホルダ部10の底壁とホルダプレート11との間に挟んだ状態で、ホルダユニットと一体的にかしめ固定してある。従って、座ぐり部13aがかしめ結合するカバー20の圧潰を回避するスペーサとして機能するようにしている。
【0033】
カバー20のフランジ部20aは、そのコ字形断面内に第2のバーティブラ8のフランジ部8aを挿し込んだ状態で重ね合わせて接着して、該フランジ部8aと共にブレードラバーの基部3の溝部5に嵌挿配置してある。
【0034】
これにより、ホルダユニットのホルダプレート11からブレードラバー1の基部3のアッパー部3Uまでの部分を、カバー20で全体的に内包して被覆するようにしている。
【0035】
カバー20はブレードラバー1と同様に一定断面形状に連続的に押出し成形してこれを所要の長さに裁断して用いられている。そこで、カバー20の長さ方向端末の断面開放部に、例えばゴム製のエンドキャップ22を装着して、該断面開放部を密封している。
【0036】
エンドキャップ22は、例えば、図2に示すようにカバー20と第2のバーティブラ8の下半部両側との間に生じる空隙に挿入する脚部22aを有し、該脚部22aがこの空隙に圧入されることで、自体の弾性作用で抜け止めできるようにしている。
【0037】
上述のホルダ部10とホルダプレート11とからなるホルダユニットと、カバー20はサブアッセンブリされ、更に、このカバー20を組付けたホルダユニットを第2のバーティブラ8にサブアッセンブリするようにしている。このホルダユニットの第2のバーティブラ8への組付けは、ホルダプレート11の抱持部11aと第2のバーティブラ8とを、長さ方向に相互に摺接して嵌挿係合することによって行われる。このとき、ホルダプレート11の下面に突出したかしめピン15のかしめ頭部が、第2のバーティブラ8のロケート孔8bに落ち込み係合することで、カバー20付きのホルダユニットと第2のバーティブラ8の相互の長さ方向の位置決めが行われる。この位置決めが行われた段階で、フランジ部8a,20a同士を接着する。
【0038】
そして、第2のバーティブラ8およびカバー20と、ブレードラバー1、第1のバーティブラ7との組付けは、次のようにして行われる。
【0039】
先ず、ブレードラバー1の基部3のアッパー部3Uのスリット6に、第3のバーティブラ9を圧入係合してサブアッセンブリする。
【0040】
次に、このアッパー部3Uの長さ方向の端末を、第2のバーティブラ8の長さ方向の端末における下段側のチャンネル断面部8Bに照合させると共に、該チャンネル断面部8Bの下縁のフランジ部8aとカバー20の下縁のフランジ部20aの重ね合わせ部の長さ方向の端末と、ブレードラバー1の基部3の溝部5の長さ方向の端末とを照合させて、ブレードラバー1と、第2のバーティブラ8およびカバー20と、を長さ方向に相互に圧入係合する。
【0041】
そして、最後にエンドキャップ22をカバー20の長さ方向両側の開放端部で、カバー20とブレードラバー1側との間の空隙に脚部22aを挿し込んで嵌合装着して、カバー20の端末の断面開放部を密封することで組付けを終了する。
【0042】
ブレードラバー1の交換に際してこれを取り外す際には、上述の工順を逆行する。
【0043】
以上の構成からなる本実施形態のワイパーブレードによれば、ホルダ部10とホルダプレート11との間にカバー20を挟んだ状態で、これらの部材10,11,20を一体的にかしめピン15によりかしめ固定(結合)できるため、カバー20には従来のようにホルダプレート配設用の開窓部を設けることなく、該ホルダプレート11のブレードラバー1側に対する連結が可能となる。
【0044】
従って、カバー20のホルダプレート11周りにおけるシール性を高められて、水の侵入,凍結防止を徹底することができる。
【0045】
また、ホルダ部10の座ぐり部13aがスペーサとして機能するため、専用のスペーサを不要として前述の3部材10,11,20をかしめピン15をもってカバー20を損傷することなくかしめ結合できて、部品点数の削減と、コストダウンとを実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では前述の座ぐり部13aがホルダ部10の底壁、つまり、ブラケット13の底壁の長さ方向両端部に設けられているが、この底壁端部には延長部13cを円弧状に突設して、かしめ固定点から端末までの寸法を大きく確保するようにしている。
【0047】
これにより、ホルダ部10のピン結合部から長さ方向外側におけるカバー20の押え面積を十分に確保して、払拭作動中にカバー20のかしめピン結合部に外力が集中するのを抑制して、該かしめピン結合部からカバー20の亀裂等の破損が誘起されるのを回避することができる。
【0048】
図6はホルダ部10を構成するブラケット13の変形例を示すもので、底壁の円弧状の延長部13cには、その下面側に向けて切り起し爪13dを突出して形成してある。
【0049】
これにより、カバー20をホルダ部10とホルダプレート11との間に挟んでかしめピン15によりかしめ固定した際に、延長部13cの下面側では切り起し爪13dがカバー20に食い込んで、カバー20の挟着固定をより安定的に行わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…ブレードラバー
3…基部
7…第1のバーティブラ
8…第2のバーティブラ
10…ホルダ部
11…ホルダプレート
13…ブラケット
13a…座ぐり部
13b…ピン挿通孔
13c…延長部
13d…切り起し爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードラバーと、
前記ブレードラバーの基部に沿って配設した第1のバーティブラと、
前記ブレードラバーの基部と第1のバーティブラに沿って配設されて、これら両者を抱持して固定する第2のバーティブラと、
ワイパーアームに対するホルダ部をピン結合し、前記第2のバーティブラの長さ方向中央部に連結したホルダプレートと、
前記ホルダ部とホルダプレートとの間に挟着固定され、該ホルダプレートから前記ブレードラバーの基部に亘ってこれらを全体的に内包して被覆する弾性材からなるカバーと、を備えた構成であって、
前記ホルダ部の前記ホルダプレートに対するピン結合部分に、前記カバーの肉厚相当の段差で前記ホルダプレート側に向けて突出する座ぐり部を形成し、該座ぐり部を前記カバーを貫通して配置されるスペーサとして機能させたことを特徴とするワイパーブレード。
【請求項2】
前記座ぐり部が前記ホルダ部の底壁の長さ方向両端部に設けられ、該底壁の長さ方向両端部には延長部が円弧状に突設されていることを特徴とする請求項1に記載のワイパーブレード。
【請求項3】
前記ホルダ部の底壁の下面に、前記カバーの挟着部分に食い込む切り起し爪が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のワイパーブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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