説明

ワイパーユニット及び液体噴射装置

【課題】ワイパーカセットの着脱交換の操作性を向上することができるワイパーユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ワイパーカセット31は、ワイパーホルダー32からの取り外し方向と交わる方向へ延在するように設けられる掛止部100と、取り外し方向および掛止部100が延在する方向に交わる方向に突出する係合突起95と、ワイパーホルダー32に装着された状態で固定する係止爪とを有し、ワイパーホルダー32は、係合突起95を取り外し方向にガイドする係合凹部140と、係止爪と係止する掛止孔とを有し、取り外し方向及び係合突起95の突出方向と交わる方向において、掛止部100と係止爪の間に係合突起95が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドを払拭するワイパーユニット、及びこのワイパーユニットを備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、液体噴射ヘッドから液体を用紙等の記録媒体に噴射して画像を形成するインクジェット式のプリンターが知られている。こうしたプリンターには、通常、液体噴射ヘッドからの液体の噴射特性を維持するためにヘッドメンテナンス装置が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のプリンターには、そのようなヘッドメンテナンス装置として、液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭するインク拭き取り装置が設けられている。このインク拭き取り装置は、液体噴射ヘッドからインクを払拭するためのインク吸収体を搭載したカセットが装置本体に対して着脱自在に構成されている。具体的には、カセットは、長尺状をなす未使用のインク吸収体がロール状に巻回された送り出し軸と、この送り出し軸から巻き解かれたインク吸収体における使用済みの部分を巻き取る巻き取り軸とを有している。そして、送り出し軸に巻装されたインク吸収体の全量が送り出されてインク吸収体における未使用の部分が無くなった場合には、未使用のインク吸収体を送り出し軸に巻装した新たなカセットが装置本体に対して装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のプリンターでは、カセットが装置本体に対して嵌合態様で装着されているため、カセットの着脱交換を容易に行うことができないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイパーカセットの着脱交換の操作性を向上することができるワイパーユニット及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のワイパーユニットは、液体を噴射する液体噴射ヘッドに付着した前記液体を払拭するワイピング部材を搭載したワイパーカセットと、前記ワイパーカセットを着脱自在に且つ嵌合態様での装着可能に構成され、前記ワイパーカセットを装着した状態で、前記ワイピング部材を前記液体噴射ヘッドに当接させた状態で前記液体噴射ヘッドから前記液体を払拭する払拭方向に移動可能なワイパーホルダーと、を備えたワイパーユニットであって、前記ワイパーカセットは、前記ワイパーホルダーからの取り外し方向と交わる方向へ延在するように設けられる力点作用部と、前記取り外し方向および前記力点作用部が延在する方向に交わる方向に突出する突起と、前記ワイパーホルダーに装着された状態で固定する係止爪とを有し、前記ワイパーホルダーは、前記突起を前記取り外し方向にガイドする係合部と、前記係止爪と係止する孔とを有し、前記取り外し方向及び前記突起の突出方向と交わる方向において、前記力点作用部と前記係止爪の間に前記突起が位置する。
【0007】
上記構成によれば、ワイパーカセットに搭載されたワイピング部材が液体噴射ヘッドを払拭する際に、ワイパーカセットが液体噴射ヘッドから作用する反力によってワイパーホルダーから外れる方向に変位しようとしても、このワイパーカセットの変位は係止爪によって規制される。一方、ワイパーカセットがワイパーホルダーから取り外される際には、ワイパーカセットが突起を傾動中心として傾動すると、係止爪によるワイパーホルダーに対する固定は解除される。そのため、ワイパーカセットからのワイパーホルダーの取り外し動作が係止爪によって阻害されない。したがって、ワイパーホルダーからワイパーカセットを容易に取り外すことができる。
【0008】
また、本発明のワイパーユニットは、前記取り外し方向において、前記力点作用部と前記係止爪の間に前記突起が位置する。
上記構成によれば、ワイパーカセットがワイパーホルダーから取り外される際には、ワイパーカセットが突起を傾動中心として傾動すると、係止爪によるワイパーホルダーに対する固定はより確実に解除される。したがって、ワイパーホルダーからワイパーカセットを更に容易に取り外すことができる。
【0009】
また、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成のワイパーユニットとを備えた。
上記構成によれば、上記ワイパーユニットの発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る実施形態のプリンターの斜視図。
【図2】ワイパーユニットの斜視図。
【図3】ワイパーユニットの側面図。
【図4】一部の構成を省略したワイパーユニットの斜視図。
【図5】図4に示すワイパーユニットの正面図。
【図6】(a)はワイパーカセットの正面図、(b)は筐体を省略したワイパーカセットの正面図。
【図7】ワイパーカセットがワイパーホルダーから上方へ取り出された状態を右側後方斜め上方から見た斜視図。
【図8】ワイパーカセットがワイパーホルダーから上方へ取り出された状態を左側前方斜め上方から見た斜視図。
【図9】中継ローラーの回動量を検出するための機構を示す一部破断斜視図。
【図10】ワイパーカセットがワイパーホルダーから上方へ取り出された状態を示す正面図。
【図11】(a)は払拭動作を開始する前のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図11(a)のワイパーユニットを模式的に示す側面図、(c)は図11(a)のワイパーユニットの内部構成を模式的に示す正面図。
【図12】(a)は遊星歯車が第1ラックギア部に噛合した状態のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図12(a)のワイパーユニットを模式的に示す側面図。
【図13】(a)は記録ヘッドを往動方向に払拭している状態のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図13(a)のワイパーユニットの内部構成を模式的に示す正面図。
【図14】(a)はワイピング部材の巻き取り位置に配置されたワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図14(a)のワイパーユニットの内部構成を模式的に示す正面図。
【図15】(a)は遊星歯車が巻き取り歯車に噛合した状態のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図15(a)のワイパーユニットの内部構成を模式的に示す正面図。
【図16】(a)は遊星歯車が第2ラックギア部に噛合した状態のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図16(a)のワイパーユニットを模式的に示す側面図。
【図17】(a)は記録ヘッドを復動方向に払拭している状態のワイパーユニットを模式的に示す正面図、(b)は図17(a)のワイパーユニットの内部構成を模式的に示す正面図。
【図18】払拭動作を完了した後のワイパーユニットを模式的に示す正面図。
【図19】(a)はワイパーカセットがワイパーホルダーから上方へ取り出された状態を模式的に示す正面図、(b)は図19(a)に示す状態からワイパーカセットがワイパーホルダーに対して装着された状態を模式的に示す正面図、(c)は図19(b)に示す状態からワイピング部材が繰り出されている状態を模式的に示す正面図。
【図20】(a)はワイパーホルダーからワイパーカセットを取り外す前の状態を模式的に示す正面図、(b)はワイパーカセットが傾動した状態を模式的に示す正面図、(c)はワイパーカセットが取り外されている状態を模式的に示す正面図。
【図21】(a)はワイパーホルダーに対してワイパーカセットを装着する前の状態を模式的に示す正面図、(b)はワイパーホルダーに対してワイパーカセットが装着されている最中の状態を模式的に示す正面図、(c)はワイパーホルダーに対してワイパーカセットが装着された状態を模式的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式のプリンター及び同プリンターが備えるワイパーユニットに具体化した一実施形態を図1〜図21に従って説明する。
【0012】
図1に示すように、プリンター11において略矩形箱状をなすフレーム12の内側下部には、略矩形板状をなす支持部材13がその長手方向を主走査方向X(図1では左右方向)に一致させた状態で設けられている。この支持部材13上には、フレーム12の後面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づいて、記録用紙Pが主走査方向Xと直交する副走査方向Y(図1では前後方向)における後方側から給送される。また、フレーム12内における支持部材13の上方には、支持部材13の長手方向と平行に延びる棒状のガイド軸16が設けられている。ガイド軸16には、その軸線方向に往復移動可能な状態でキャリッジ17が支持されている。
【0013】
フレーム12の後壁の内面におけるガイド軸16の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー18及び従動プーリー19が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー18には、キャリッジ17を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター20の出力軸が連結されている。また、これら一対のプーリー18,19の間には、一部がキャリッジ17に連結された無端状のタイミングベルト21が掛装されている。したがって、キャリッジ17は、ガイド軸16にガイドされながら、キャリッジモーター20の駆動力により無端状のタイミングベルト21を介して主走査方向Xに移動可能となっている。
【0014】
キャリッジ17の下面には、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド22が設けられる一方、キャリッジ17には、記録ヘッド22に対して供給するインク(液体)を貯留する複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ23が着脱可能に搭載されている。また、記録ヘッド22の下面(支持部材13と対向する面)は、各色のインク滴を噴射するための複数のノズル(図示略)がキャリッジ17の主走査方向Xと直交する前後方向に沿って並列して設けられたノズル形成面となっている。そして、記録ヘッド22のノズル形成面に形成されたノズルから支持部材13上に給送された記録用紙Pに対してインク滴が噴射されることにより、記録用紙Pに対して記録が実行される。
【0015】
また、図1に示すように、フレーム12内において記録用紙Pが搬送される記録領域の右側に設けられたホームポジションHPには、記録ヘッド22のメンテナンスを行なうためのヘッドメンテナンス装置26が設けられている。
【0016】
次に、ヘッドメンテナンス装置26について説明する。
図2及び図3に示すように、ヘッドメンテナンス装置26は、記録ヘッド22のノズル形成面からインクを払拭するワイピング部材30を搭載したワイパーカセット31と、該ワイパーカセット31が着脱自在に装着されるワイパーホルダー32と、該ワイパーホルダー32を記録ヘッド22のノズル列方向と直交する方向となる左右方向に移動させる駆動機構33とからなるワイパーユニット34を有している。なお、ヘッドメンテナンス装置26は、ワイパーユニット34以外に、記録ヘッド22のノズル形成面に対してノズルを囲うように当接可能に設けられるキャップ(図示略)と、そのキャップを介して記録ヘッド22内から増粘等したインクを廃インクとして吸引排出するために駆動される吸引ポンプ(図示略)を備えている。
【0017】
図2に示すように、ワイパーホルダー32は、その内部にワイパーカセット31を着脱方向(上下方向)に着脱可能に保持する箱体状をなしている。ガイドフレーム35は、ワイパーホルダー32の下方にあり、プリンター11におけるフレーム12の底壁内面上に図示しないブラケットを介して取り付けられる。ガイドフレーム35には左右方向に離れた位置で対をなす対向片部35aが前後方向において離れた2箇所に折曲げ形成され、前後2対の各対向片部35a間には左右方向に延びるガイド軸36がそれぞれ架設されている。また、ワイパーホルダー32の下面には各ガイド軸36を摺動可能に挿通する軸受け部37(図5参照)が鉛直下方に向けて延出されている。そして、ワイパーホルダー32は、この軸受け部37が前後一対のガイド軸36に対してその軸線方向に摺接することにより、左右方向への移動がガイド軸36によってガイド可能に支持される。
【0018】
図2に示すように、ワイパーホルダー32の前壁部における上方寄りの位置には、被噛合部としてのラックギア部39が設けられている。ラックギア部39は、ワイパーホルダー32の左端位置から右方寄りの位置まで直線状に延びる第1ラックギア部40と、ワイパーホルダー32の右端位置から左方寄りの位置まで直線状に延びる第2ラックギア部41とから構成されている。なお、第1ラックギア部40は、第2ラックギア部41に対して前方に隣り合う位置に配置されている。すなわち、両ラックギア部40,41は、ワイパーホルダー32の移動方向と直交する前後方向において互いに異なる位置に配置されている。また、両ラックギア部40,41は、ワイパーホルダー32の移動方向となる左右方向においてずれて配置され、部分的に重なっている。
【0019】
また、図2及び図3に示すように、ガイドフレーム35の前端部における左右方向の略中央位置には、先端側が上方に向けて略L字状をなすように屈曲した支持片部43がガイドフレーム35から延設されている。また、この支持片部43の上端には、上端側がワイパーホルダー32の内方となる後方に向けて略L字状をなすように屈曲した支持フレーム44が止めねじ45によって固定されている。また、支持片部43における水平方向に延びた基端部分の右端部には、取付フレーム46が止めねじ47によって固定され、その取付フレーム46を介して駆動機構33の駆動源となる駆動モーター48が支持されている。
【0020】
図3に示すように、駆動モーター48の出力軸49には出力歯車50が一体回転可能に設けられている。そして、軸51に軸支されたかさ歯車52は、出力歯車50に対して下方から噛合している。また、軸53に軸支されたかさ歯車54は、その後方に位置するかさ歯車52に対して前方から噛合している。そして、かさ歯車54は、軸55に軸支された従動歯車57を介して軸56に軸支された従動歯車58に対して動力伝達可能に噛合している。また、軸56には遊星歯車機構60が設けられている。そして、本実施形態では、軸51,53,55,56、かさ歯車52,54、及び従動歯車57,58によって、駆動モーター48から出力される動力を遊星歯車機構60に伝達する動力伝達機構61が構成されている。
【0021】
図4及び図5は、駆動モーター48、動力伝達機構61、支持フレーム44、及びガイドフレーム35を省略したワイパーユニット34を示している。そして、図4及び図5に示すように、遊星歯車機構60は、太陽歯車70と、該太陽歯車70の周囲を周回する複数(本実施形態では2つ)の変位歯車としての遊星歯車71,72と、該遊星歯車71,72を回動自在に支持しつつ揺動するベース部材73とを備えている。
【0022】
ベース部材73は、一対のアーム部74が基端部から分岐するように延出した側面視で略V字状をなすと共に、その基端部が太陽歯車70の回動軸となる軸56によって回動自在に支持されている。また、ベース部材73に形成された一対のアーム部74には、遊星歯車71,72が各々対応する軸75,76を介して回動自在に支持されている。
【0023】
なお、これらの遊星歯車71,72は、軸56の軸線方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、これらの遊星歯車71,72のうち、一方側(図4及び図5において左側)の遊星歯車71は、軸56の軸線方向において第1ラックギア部40と同一の位置に配置されると共に、他方側(図4及び図5において右側)の遊星歯車72は、軸56の軸線方向において第2ラックギア部41と同一の位置に配置されている。そして、図4及び図5に示すように、太陽歯車70の鉛直上方に第1ラックギア部40が位置する場合には、第1ラックギア部40が太陽歯車70の周囲を周回する遊星歯車71の移動経路上に位置する。一方で、図4及び図5に示す状態からワイパーホルダー32がガイド軸36に沿って左方に移動し、太陽歯車70の鉛直上方に第2ラックギア部41が位置する場合には、第2ラックギア部41が太陽歯車70の周囲を周回する遊星歯車72の移動経路上に位置する。
【0024】
そして、駆動モーター48から出力される動力が動力伝達機構61を通じて遊星歯車機構60の太陽歯車70に伝達されると、遊星歯車機構60の各遊星歯車71,72が太陽歯車70から伝達される駆動力に基づいて太陽歯車70の周囲を周回する。その結果、各遊星歯車71,72が各々対応するラックギア部40,41に対して動力伝達可能に噛合する。この場合、駆動モーター48から出力される動力がワイパーホルダー32をガイド軸36の軸線方向となる左右方向へ移動させる動力として伝達される。この点で、本実施形態では、駆動モーター48、動力伝達機構61、及び遊星歯車機構60によって、ワイパーホルダー32を記録ヘッド22のノズル列方向と直交する左右方向に移動させる駆動機構33が構成されている。
【0025】
図6(a)(b)に示すように、ワイパーカセット31の外装を構成する略矩形箱状をなす筐体80の内側には、筐体80の短手方向となる前後方向へ水平に延びる軸線を有した一対のローラー81,82が筐体80の長手方向となる左右方向に距離をおいて収容されている。この一対のローラー81,82の間には、記録ヘッド22のノズル形成面からインクを払拭するための長尺状のワイピング部材30が掛装されている。そして、この一対のローラー81,82のうち、記録ヘッド22が記録用紙Pに対して記録を実行する記録領域寄りとなる左方側に設けられた第1のローラーとしての繰り出しローラー81は、巻装した未使用のワイピング部材30を繰り出す。一方、この一対のローラー81,82のうち、記録ヘッド22が記録用紙Pに対して記録を実行する記録領域とは反対寄りとなる右方側の第2のローラーとしての巻き取りローラー82は、繰り出しローラー81から巻き解かれて払拭に使用された使用済みのワイピング部材30を巻き取る。なお、繰り出しローラー81及び巻き取りローラー82は互いに略同一の高さに位置している。また、筐体80の外側に露出した繰り出しローラー81の軸線方向の一端部(前端部)には、繰り出し歯車83(図8参照)が繰り出しローラー81と一体回転可能に設けられている。また、筐体80の外側に露出した巻き取りローラー82の軸線方向の両端部には、巻き取り歯車84,85(図7及び図8参照)が巻き取りローラー82と一体回転可能に設けられている。
【0026】
また、筐体80の内側には、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82に至るワイピング部材30の繰り出し経路上に、複数(本実施形態では4つ)のローラー86,87,88,89が設けられている。これらのローラー86,87,88,89は、繰り出しローラー81及び巻き取りローラー82と平行に前後に延びており、その前後方向の両端が筐体80の側壁部に設けられた軸受け部等によって回動自在に支持されている。
【0027】
具体的には、繰り出しローラー81の右斜め上方に設けられた押圧ローラー87には、ワイピング部材30において繰り出しローラー81から繰り出される部分が巻き掛けられている。押圧ローラー87における軸線方向両端の軸部87aは、筐体80の前後両側の外側面に固定された棒ばね90によって下方から支持されている。棒ばね90は、その長手方向の中間位置で押圧ローラー87の軸部87aを下方から支持している。なお、押圧ローラー87の軸部87aは、筐体80に設けられた軸受け孔91に対して前後に挿通されており、棒ばね90から作用する上方への付勢力に従って軸受け孔91の上側の孔縁に密着している。そして、押圧ローラー87の軸部87aは、棒ばね90と軸受け孔91の孔縁との間で上下両側から回動自在に支持されている。また、押圧ローラー87における周面の最上部は筐体80の上面よりも上方に位置しており、ワイピング部材30において押圧ローラー87に巻き掛けられた部分は筐体80の上面から上方に突出している。また、押圧ローラー87における周面の最上部は、記録ヘッド22のノズル形成面よりも上方に位置している。
【0028】
また、押圧ローラー87の鉛直下方には、ワイピング部材30において押圧ローラー87から繰り出される部分を巻き掛ける中継ローラー89が設けられている。また、中継ローラー89に対してワイピング部材30を挟んで反対側となる位置には、中継ローラー89との間でワイピング部材30を挟持する挟持ローラー92が設けられている。また、筐体80の底壁内面と挟持ローラー92との間には付勢部材としてのばね部材93が介設されている。そして、挟持ローラー92は、ばね部材93によって中継ローラー89に接近する方向に付勢されている。
【0029】
なお、中継ローラー89において筐体80の側壁部から外側に露出した軸線方向の一方側(図6(a)(b)では後方側)の軸部89aの端部には、中継歯車94が中継ローラー89と一体回転可能に設けられている。また、挟持ローラー92における軸線方向両端の軸部92aは、筐体80の側壁部に弾性片部を切り抜き形成した際に形成された切り欠き溝状の軸受け部から外側に端部が露出している。
【0030】
また、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82に至るワイピング部材30の繰り出し経路上において、繰り出しローラー81と押圧ローラー87との間、及び、押圧ローラー87と中継ローラー89との間には、ワイピング部材30に対してテンションを付与するテンションローラー86,88が設けられている。なお、テンションローラー86,88における軸線方向両端の軸部86a,88aは、筐体80の側壁部に設けられた円形凹状の軸受け部から外側に端部が露出している。
【0031】
また、筐体80の前後両側面には、略円柱状をなす係合凸部としての係合突起95が前後方向に向けて水平に突設されている。この係合突起95は、筐体80における左右方向の中央位置よりも記録ヘッド22の記録領域側となる左方寄りの位置であって、且つ、筐体80における高さ方向の略中央位置に形成されている。
【0032】
また、筐体80の右側面における下方寄りの位置には、上端側を筐体80に対する固定端とすると共に下端側を自由端とする弾性片部96(図7参照)が形成されている。弾性片部96は、上端側の固定端を支点として左右方向に弾性変形可能となっている。そして、弾性片部96において自由端となる下端側には、側面視で略三角形状をなす係止部としての係止爪97が形成されている。
【0033】
また、筐体80においてワイパーカセット31の着脱方向(上下方向)の端部に連なる部分となる右上隅部及び左下隅部には、筐体80の外側に向けて凸となる略円弧状に湾曲した湾曲面98,99が形成されている。これらの湾曲面98,99は、筐体80の外側面における他の部分よりも内側に退避した形状をなしている。さらに、筐体80の左側面における上方寄りの位置には、ワイパーカセット31をワイパーホルダー32から取り外す際に、使用者が指先を引っ掛けて取り外し方向に外力を作用させ得る力点作用部としての掛止部100(図8参照)が凹設されている。
【0034】
図7に示すように、ワイパーホルダー32の前壁部の内側面には、装着されるワイパーカセット31の繰り出しローラー81に対応する左端寄りの位置に、繰り出し歯車83に対して動力伝達可能に連結される歯車群101が設けられている。この歯車群101は、複数(本実施形態では5つ)の従動歯車102,103,104,105,106(図5参照)から構成されている。なお、図7には、歯車群101を構成する4つの従動歯車102,103,104,105が図示されているが、従動歯車104及び従動歯車105に噛み合う従動歯車106は従動歯車105の裏側(前側)に隠れているため図示されていない。歯車群101のうち従動歯車104,105,106は、ワイパーホルダー32の前壁部に挿通されて支持された各々が対応する軸104a,105a,106a(図5参照)によって回動自在に支持され、従動歯車102,103はワイパーカセットに備えられた軸102a、103aに支持される。そして、隣り合う歯車同士が動力伝達可能に噛合している。そして、繰り出し歯車83と従動歯車102が噛み合い、従動歯車105に駆動力が伝達される。従動歯車105には、基端側がワイパーホルダー32の底壁部によって片持ち支持されたラチェット115(図5参照)が係合している。
【0035】
図5に示すように、ラチェット115は、先端側に形成された歯部が従動歯車105に対して下方から噛合している。そして、ラチェット115は、従動歯車105が軸105aを中心とした一方の回動方向(本実施形態では、前方から見て時計回り方向)に回動した場合には、従動歯車105から作用する力に基づいて、片持ち支持された基端側を固定端として従動歯車105から遠ざかる方向に弾性変形することにより、従動歯車105に対する係合状態が解除されて従動歯車105の回動が許容される。一方、ラチェット115は、従動歯車105が軸105aを中心とした他方の回動方向(本実施形態では、前方から見て反時計回り方向)に回動した場合には、従動歯車105から力が作用したとしても、従動歯車105に対する係合状態を維持することにより、従動歯車105の回動を規制する。そして、ラチェット115が従動歯車105の回動を規制することに伴って、この従動歯車105に対して動力伝達可能に連結されている繰り出しローラー81の回動も併せて規制される。具体的には、繰り出しローラー81は、巻装しているワイピング部材30が出される方向となる前方から見て時計回りへの回動が規制される。すなわち、ラチェット115は、ワイピング部材30が出される方向に繰り出しローラー81が回動することを規制する規制部を構成している。なお、図2に示すように、ガイドフレーム35の左端部には、ワイパーホルダー32の移動方向となる左右方向においてラチェット115に対して対向する位置に、ラチェット115側に突出した突片部116が形成されている。
【0036】
また、図7に示すように、ワイパーホルダー32の右壁部には、ワイパーカセット31の係止爪97に対応する位置に掛止孔117が貫通形成されている。そして、ワイパーカセット31をワイパーホルダー32に対して装着した場合には、ワイパーカセット31の係止爪97がワイパーホルダー32の掛止孔117に対して係止されることにより、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32に対して安定した状態で装着される。
【0037】
図8に示すように、ワイパーホルダー32の後壁部の内側面には、装着されるワイパーカセット31の巻き取りローラー82に対応する右端寄りの位置に、巻き取り歯車84に対して動力伝達可能に連結される歯車群120が設けられている。この歯車群120は、複数(本実施形態では2つ)の従動歯車121,122から構成されている。これらの従動歯車121,122は、ワイパーホルダー32の後壁部に挿通されて支持された各々が対応する軸121a,122aによって回動自在に支持されており、互いに動力伝達可能に噛合している。そして、これらの従動歯車121,122のうち、巻き取り歯車84からの動力伝達経路上において巻き取り歯車84から離れて位置する従動歯車122(図8では上側の従動歯車)には、基端側がワイパーホルダー32の後壁部の内側面に固定された支持部材123によって片持ち支持されたラチェット124が係合している。
【0038】
ラチェット124は、先端側に形成された歯部が従動歯車122に対して上方から噛合している。そして、ラチェット124は、従動歯車122が軸122aを中心とした一方の回動方向(本実施形態では、前方から見て時計回り方向)に回動した場合には、従動歯車122から作用する力に基づいて、片持ち支持された基端側を固定端として従動歯車122から遠ざかる方向に弾性変形することにより、従動歯車122に対する係合状態が解除されて従動歯車122の回動が許容される。一方、ラチェット124は、従動歯車122が軸122aを中心とした他方の回動方向(本実施形態では、前方から見て反時計回り方向)に回動した場合には、従動歯車122から力が作用したとしても、従動歯車122に対する係合状態を維持することにより、従動歯車122の回動を規制する。そして、ラチェット124が従動歯車122の回動を規制することに伴って、この従動歯車122に対して動力伝達可能に連結されている巻き取りローラー82の回動も併せて規制される。具体的には、巻き取りローラー82は、巻装しているワイピング部材30が出される方向となる前方から見て反時計回り方向への回動が規制される。すなわち、ラチェット124は、巻き取りローラー82が巻き取り方向と反対に回動して、ワイピング部材30が出されて弛むことを規制する規制部を構成している。
【0039】
また、ワイパーホルダー32の後壁部の内側面には、装着されるワイパーカセット31の中継ローラー89に対応する左右方向の略中央位置に、止めねじ125によって支持フレーム126が固定されている。この支持フレーム126に挿通された軸127aには従動歯車127が一体回転可能に設けられている。そして、図9に示すように、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32に対して装着された場合には、ワイパーカセット31側に設けられた中継歯車94がワイパーホルダー32側に設けられた従動歯車127に対して動力伝達可能に噛合する。また、軸127aには、スリット板128が一体回転可能に設けられている。そして、軸127aの回転量は、ワイパーホルダー32に固定された回動量検出部材としてのロータリーエンコーダー129によって検出される。
【0040】
また、図7及び図8に示すように、ワイパーホルダー32の左壁部には、ワイパーカセット31の掛止部100に対応する位置に切り欠き部としての凹部130が形成されている。この凹部130は、ワイパーホルダー32の左壁部の上端面から下方に凹設されている。そして、ワイパーホルダー32に装着されたワイパーカセット31の掛止部100は凹部130を通じてワイパーホルダー32の外側に露出する。
【0041】
また、ワイパーホルダー32における前後両側の側壁部には、ワイパーカセット31の係合突起95に対して左右方向において対応する位置に係合凹部140が設けられている。係合凹部140は、ワイパーホルダー32における前後両側の側壁部の上端面から、ワイパーホルダー32の前後両側の側壁部における高さ方向の略中央位置までワイパーカセット31の着脱方向となる上下方向に延びている。係合凹部140における上側の開口の左右寸法は、係合突起95の直径よりも若干大きく設定されており、下側に向かうに連れて左右寸法が次第に幅狭となるように構成されている。
【0042】
具体的には、図10に示すように、係合凹部140において凹部130寄りに位置する左側の内側面は、鉛直方向に直線状に延びる鉛直面141にて構成される。一方、係合凹部140において凹部130とは反対寄りに位置する右側の内側面は、その下端が鉛直方向に直線状に延びる鉛直面142にて構成されると共に、その上方が凹部130から遠ざかる右方に向けて上り勾配となるように鉛直方向に対して傾斜した傾斜面143にて構成されている。なお、係合凹部140の下端に位置する左右両側の鉛直面141,142の距離は、係合突起95の直径とほぼ等しい。
【0043】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、ワイパーユニット34が記録ヘッド22のノズル形成面からインクを払拭する際の作用に着目して図11〜18に基づき以下説明する。なお、図11〜図18では、テンションローラー86、テンションローラー88、及び中継ローラー89は省略されている。
【0044】
まず、ワイパーユニット34が記録ヘッド22のノズル形成面からインクを払拭する際には、キャリッジ17がホームポジションHPに移動する。この場合、図11(a)〜(c)に示すように、ワイパーホルダー32が初期位置に配置された状態では、記録ヘッド22は、押圧ローラー87よりも左方に位置している。また、太陽歯車70の鉛直上方には、遊星歯車71の周回経路上に第1ラックギア部40が位置している。ただし、この遊星歯車71は、第1ラックギア部40に対して噛合していない。また、遊星歯車72の周回経路から外れた位置に、第2ラックギア部41及び巻き取り歯車85が位置している。
【0045】
そして次に、駆動モーター48の正転駆動に伴って、太陽歯車70が図11(a)における時計回り方向に回動する。すると、遊星歯車71,72は、時計回り方向に太陽歯車70の周囲を周回する。そして、図12(a)(b)に示すように、遊星歯車71は、第1ラックギア部40に対する噛合位置まで変位する。すなわち、遊星歯車71は、駆動モーター48の正転駆動時に第1ラックギア部40に対して噛合する第1の変位歯車として機能する。
【0046】
すると、遊星歯車71は、第1ラックギア部40に対して噛合した状態で回動し、第1ラックギア部40の移動とともにワイパーホルダー32は、遊星歯車71から伝達される駆動力に基づいて記録ヘッド22に向けて左方に移動する。
【0047】
そして、図13(a)(b)及び図14(a)(b)に示すように、ワイパーホルダー32の移動に伴って、ワイピング部材30において押圧ローラー87に巻き掛けられている部分が記録ヘッド22のノズル形成面に対して往動方向となる左方向への移動を伴って記録ヘッド22に摺接することによりノズル形成面からインクを払拭する。払拭されたインクはワイピング部材30に吸収される。この場合、押圧ローラー87は、棒ばね90によって記録ヘッド22に対して接近する方向となる鉛直上方に付勢されているため、その棒ばね90からの付勢力に基づいてワイピング部材30を記録ヘッド22のノズル形成面に対して押圧する。
【0048】
すると、ワイピング部材30が記録ヘッド22のノズル形成面に摺接する際の摩擦力によって、ワイピング部材30には繰り出しローラー81から出される方向に張力が作用する。この点、本実施形態では、ワイピング部材30が出される方向への繰り出しローラー81の回動がラチェット115によって規制されている。そのため、記録ヘッド22のノズル形成面からのインクの払拭時に、ワイピング部材30が繰り出しローラー81から出されて弛むことはほとんどない。
【0049】
また、図14(a)(b)に示すように、遊星歯車71が回転して第1ラックギア部40を更に左方に移動させると、遊星歯車71は第1ラックギア部40の右端位置を通過して第1ラックギア部40に対する噛合状態が解除される。
【0050】
そして、遊星歯車71が第1ラックギア部40に対して噛合していない状態で駆動モーター48が正転駆動を継続すると、遊星歯車71,72は、太陽歯車70から伝達される駆動力に基づいて、図14(a)における時計回り方向に太陽歯車70の周囲を周回する。その結果、図15(a)(b)に示すように、遊星歯車72は巻き取り歯車85に対する噛合位置まで変位して巻き取り歯車85と噛み合う。
【0051】
そして、駆動モーター48が正転駆動を継続すると、巻き取り歯車85が回動し、巻き取りローラー82がワイピング部材30を巻き取る方向に回動する。すなわち、巻き取り歯車85は、駆動モーター48から出力される回転駆動力を巻き取りローラー82に伝達する動力伝達歯車として機能する。ワイピング部材30は、押圧ローラー87に巻き掛けられている部分にインクを吸収している。そこで、ワイピング部材30を巻き取ることで、押圧ローラー87に巻き掛けられている部分にインクを吸収していない未使用の部分を移動させる。これによって、次回、ワイピング部材30でノズル形成面からインクを払拭する際には、付着したインクを確実に吸収することができる。
【0052】
なお、ワイパーホルダー32の移動に伴って、ガイドフレーム35に設けられた突片部116がラチェット115をワイパーホルダー32の移動方向と反対方向となる右方向に押圧する。そして、突片部116からの押圧動作によって弾性変形したラチェット115は、繰り出しローラー81に対する回動規制を解除する。すなわち、突片部116は、ラチェット115による繰り出しローラー81に対する回動規制を解除可能な規制解除部材として機能する。この場合、ラチェット115による繰り出しローラー81の回動規制は解除されているため、繰り出しローラー81側から巻き取りローラー82側へのワイピング部材30の繰り出し動作は許容されている。そのため、巻き取りローラー82は、繰り出しローラー81側から繰り出されるワイピング部材30を円滑に巻き取ることが可能となる。すなわち、図15(a)(b)に示すように、ワイパーホルダー32の移動範囲内における左端寄りの位置は、ワイピング部材30を巻き取る巻き取り位置となっている。
【0053】
そして、巻き取りローラー82へのワイピング部材30の巻き取り動作が完了すると、駆動モーター48が逆転駆動する。すると、駆動モーター48の逆転駆動に伴って、太陽歯車70が図15(a)における反時計周り方向に回動する。そのため、遊星歯車71,72は、軸56を中心として図15(a)における反時計回り方向に太陽歯車70の周囲を周回する。そして、図16(a)(b)に示すように、遊星歯車72は、第2ラックギア部41に対する噛合位置まで変位して噛み合う。すなわち、遊星歯車72は、駆動モーター48の逆転駆動時に第2ラックギア部41に対して噛合する第2の変位歯車として機能する。
【0054】
遊星歯車72が第2ラックギア部41に対して噛合した状態で回動すると、第2ラックギア部の移動とともにワイパーホルダー32は、記録ヘッド22に向けて右方に移動する。そして、図17(a)(b)に示すように、ワイパーホルダー32の移動に伴って、ワイピング部材30において押圧ローラー87に巻き掛けられている部分が記録ヘッド22のノズル形成面に対して復動方向となる右方向への移動を伴って記録ヘッド22に摺接することによりノズル形成面からインクを払拭する。払拭されたインクはワイピング部材30に吸収される。この場合も、往動時と同様に、押圧ローラー87は、棒ばね90によって記録ヘッド22に対して接近する方向となる鉛直上方に付勢されているため、その棒ばね90からの付勢力に基づいてワイピング部材30を記録ヘッド22のノズル形成面に対して押圧する。
【0055】
すると、ワイピング部材30が記録ヘッド22のノズル形成面に摺接する際の摩擦力によって、ワイピング部材30には巻き取りローラー82から出される方向に張力が作用する。この点、本実施形態では、ワイピング部材30が出される方向への巻き取りローラー82の回動がラチェット124によって規制されている。そのため、記録ヘッド22のノズル形成面の払拭時に、ワイピング部材30が巻き取りローラー82から出されて弛むことはほとんどない。
【0056】
また、図18に示すように、遊星歯車72が第2ラックギア部41に対して噛合した状態で更に回動すると、ワイパーホルダー32が更に右方に移動し、押圧ローラー87が記録ヘッド22のノズル形成面を横切る。そして、遊星歯車72は、第2ラックギア部41の左端位置を通過して第2ラックギア部41に対する噛合状態が解除される。その結果、ワイパーホルダー32は、遊星歯車71の周回経路上に第1ラックギア部40が位置する初期位置に配置される。
【0057】
次に、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量を検出する際の作用について説明する。
さて、図19(a)に示すように、装着されるワイパーカセット31がワイパーホルダー32の鉛直上方に位置した状態では、ワイパーカセット31に設けられた中継歯車94は、ワイパーホルダー32に設けられた従動歯車127に対して上下方向で対向する位置に配置される。
【0058】
そして、図19(b)に示すように、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32に対して装着されると、中継歯車94が従動歯車127に対して上側から動力伝達可能に噛合する。続いて、図19(c)に示すように、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82に向けてワイピング部材30が繰り出されると、ワイピング部材30が巻き掛けられた中継ローラー89がワイピング部材30の繰り出し動作に連動して回動する。すると、中継ローラー89の回転量が中継歯車94を通じて従動歯車127に伝達され、中継ローラー89の回転量に対応した軸127aの回転量がワイパーホルダー32に設けられたロータリーエンコーダー129によって検出される。
【0059】
ここで、中継ローラー89の回転量は、繰り出しローラー81及び巻き取りローラー82に巻装されているワイピング部材30の巻き取り残量によることなく、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量を正確に反映している。そのため、ロータリーエンコーダー129は、中継ローラー89の回転量の検出を通じて、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量を正確に検出することが可能となる。
【0060】
なお、中継ローラー89は、ばね部材93によって付勢された挟持ローラー92との間でワイピング部材30を強固に挟持している。そのため、ワイピング部材30が中継ローラー89の周面に対して繰り出し方向に滑ることが抑制される。その結果、中継ローラー89の回転量は、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量をより正確に反映する。したがって、ロータリーエンコーダー129は、ワイピング部材30の繰り出し量をより正確に検出することが可能となる。
【0061】
次に、ワイパーホルダー32に対してワイパーカセット31を着脱する際の作用について説明する。
さて、図20(a)に示すように、ワイパーホルダー32からワイパーカセット31を取り外す際には、使用者は、ワイパーホルダー32の凹部130を通じてワイパーホルダー32の内側に指先Aを挿入する。そして、使用者は、ワイパーカセット31の掛止部100に指先Aを引っ掛けた状態で、ワイパーカセット31の掛止部100を鉛直上方に持ち上げる。
【0062】
すると、図20(b)に示すように、ワイパーカセット31の係合突起95は、ワイパーホルダー32の係合凹部140の内側を上方に向けて変位する。この場合、係合突起95は、係合凹部140内において指先Aからの力が作用する掛止部100とは反対寄りに位置する傾斜面143に対して上方向に摺接する。そして、ワイパーカセット31は、この係合突起95の突出方向と直交する左右方向において掛止部100とは反対側に位置する右端寄りの部分が下方に沈み込んでワイパーホルダー32の内底面に対して摺接しつつ、係合突起95を中心として傾動する。すなわち、ワイパーカセット31の傾動中心となる係合突起95は、係合凹部140の内面の一部を構成する傾斜面143に摺接してワイパーカセット31の取り外し方向となる上方向にガイドされる。そして、係合凹部140は、被ガイド部としての係合突起95をワイパーカセット31の取り外し方向にガイドするガイド部として機能する。
【0063】
なお、ワイパーカセット31は、係合突起95の突出方向となる前後方向から見た場合の輪郭形状の隅部に湾曲面98,99が形成されているため、ワイパーホルダー32の内面によって干渉されることなく係合突起95を中心として円滑に傾動することが可能となる。
【0064】
また、ワイパーカセット31が係合突起95を中心として傾動すると、この係合突起95の突出方向となる前後方向から見て掛止部100に対して係合突起95を挟んで反対側となる位置に形成された係止爪97がワイパーホルダー32の掛止孔117から外れ、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32に対して上下方向に係止されなくなる。
【0065】
その後、図20(c)に示すように、使用者は、ワイパーカセット31の傾動に伴って、ワイパーカセット31におけるワイパーホルダー32から露出した上方寄りの部分を把持し、ワイパーカセット31をワイパーホルダー32から鉛直上方に取り外す。
【0066】
また、図21(a)に示すように、ワイパーホルダー32に対してワイパーカセット31を装着する際には、ワイパーカセット31の係合突起95をワイパーホルダー32の係合凹部140に対して位置合わせする。
【0067】
続いて、図21(b)に示すように、ワイパーカセット31を水平姿勢としつつ鉛直下方に変位させることにより、ワイパーカセット31の係合突起95がワイパーホルダー32の係合凹部140に対して上側から挿入される。この場合、係合突起95がその突出方向と直交する左右方向に係合凹部140によって位置決めされつつ、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32に対して装着される。なお、係合凹部140における上側の開口の左右寸法は、係合突起95の直径よりも若干大きく設定されているため、係合突起95を係合凹部140に対して上側から容易に挿入することが可能となる。また、係止爪97は、上端部を固定端として弾性片部96を弾性変形させつつ、ワイパーホルダー32の内側面に対して摺接する。
【0068】
その後、図21(c)に示すように、係合突起95が係合凹部140の内奥側となる下端位置まで挿入されると、係合突起95が係合凹部140の鉛直面141,142によって左右両側から係止される。そして、ワイパーカセット31はワイパーホルダー32に対して左右方向に位置決めされる。また、係止爪97が弾性片部96の弾性復帰力に従ってワイパーホルダー32の掛止孔117に対して係止されることにより、ワイパーホルダー32に対するワイパーカセット31の装着動作が完了する。
【0069】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ワイピング部材30を記録ヘッド22に摺接させてインクを払拭する際に、記録ヘッド22とワイピング部材30との間に発生した摩擦力により繰り出しローラー81又は巻き取りローラー82から出される方向にワイピング部材30に対して張力が作用したとしても、かかるワイピング部材30が出される方向のローラー81,82の回動はラチェット115,124によって規制される。なお、両ローラー81,82を回転規制するラチェット115,124は、両ローラー81,82を回転駆動させる場合に用いられる駆動モーター48よりも軽量な構成とすることができる。そのため、両ローラー81,82を回転駆動させる駆動モーターをワイパーホルダー32に設ける場合と比較して、ワイパーホルダー32の軽量化を図ることができる。したがって、ワイパーホルダー32の軽量化を図りつつ、記録ヘッド22からのインクの払拭時にワイピング部材30が弛むことを抑制できる。
【0070】
(2)ラチェット115,124が従動歯車105,122に噛み合うことにより、払拭時に張力がかかるローラー81,82の回動を抑止して記録ヘッド22からのインクの払拭時にワイピング部材30が弛むことを抑制できる。
【0071】
(3)突片部116がラチェット115による繰り出しローラー81に対する回動規制を解除することによって、繰り出しローラー81がワイピング部材30を出す方向に回動することを可能とし、巻き取りローラー82へのワイピング部材30の巻取りを可能とする。したがって、記録ヘッド22からのインクの払拭時にワイピング部材30が弛むことを抑制しつつ、払拭しないときには必要に応じて巻き取りローラー82に対してワイピング部材30を巻き取ることができる。
【0072】
(4)払拭時のラチェット115の移動に併せて、突片部116がラチェット115による繰り出しローラー81に対する回動規制を解除させる。そのため、ラチェット115による繰り出しローラー81に対する回動規制を解除するための特別な操作を要することなく、払拭しないときには必要に応じて繰り出しローラー81からワイピング部材30を出して巻き取りローラー82に対してワイピング部材30を巻き取ることができる。
【0073】
(5)駆動モーター48は、ワイパーホルダー32を払拭方向に移動させる際の駆動源として機能するだけでなく、ワイピング部材30を巻き取りローラー82に巻き取る際の駆動源としても機能する。したがって、部品点数の削減に伴って、装置全体の組み付け効率の向上を図ることができる。
【0074】
(6)駆動モーター48から伝達される動力に基づいて太陽歯車70が正逆両方向に回転駆動した場合に、この回転駆動力を遊星歯車71,72を通じて各々が対応するラックギア部40,41に伝達することにより、ワイパーホルダー32に搭載されたワイピング部材30を記録ヘッド22に対して双方向に相対移動させてインクを払拭させることができる。
【0075】
(7)払拭方向へのワイパーホルダー32の移動動作によって、遊星歯車72が巻き取り歯車85に対して噛合可能であるか否かが切り替わる。そのため、ワイピング部材30を巻き取りローラー82に巻取り可能としつつも、ワイパーホルダー32がインクの払拭方向に移動した場合には、ワイピング部材30が巻き取りローラー82に誤って巻き取られない構成を簡易に実現することができる。
【0076】
(8)遊星歯車71,72は、駆動モーター48の正転駆動時及び逆転駆動時に、太陽歯車70から伝達される駆動力に基づいて、各々が対応するラックギア部40,41に対して噛合する方向に、太陽歯車70の回動軸となる軸56を中心とした周方向に沿って周回する。そのため、駆動モーター48から出力される動力をワイパーホルダー32に伝達する際に、遊星歯車71,72とワイパーホルダー32のラックギア部40,41とが確実に噛合される。したがって、ワイピング部材30が記録ヘッド22に対して双方向に相対移動してインクを払拭する際において、その払拭方向への移動時における払拭動作を安定して行うことができる。
【0077】
(9)ロータリーエンコーダー129は、中継ローラー89の回動量の検出を通じて、この中継ローラー89に巻き掛けられたワイピング部材30の繰り出しローラー81から巻き取りローラー82への繰り出し量を検出する。そのため、両ローラー81,82に巻装されたワイピング部材30のロール径の大きさに影響を受けることなく、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量を正確に検出することができる。したがって、ワイピング部材30の浪費を抑制しつつ、ワイピング部材30においてインクを吸収した部分が記録ヘッド22に付着することを回避することができる。
【0078】
(10)ワイパーカセット31が着脱されるワイパーホルダー32に対してロータリーエンコーダー129が設けられているため、着脱交換の前後のワイパーカセット31に対して共通のロータリーエンコーダー129が用いられる。すなわち、着脱されるワイパーカセット31毎にロータリーエンコーダー129を設けることが不要となるため、部品点数の削減に寄与することができる。
【0079】
(11)挟持ローラー92と中継ローラー89との間にワイピング部材30が挟持される。そのため、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出しに伴って、ワイピング部材30を挟持している中継ローラー89がより確実に連れ回るように回動する。したがって、ロータリーエンコーダー129は、中継ローラー89の回動量の検出を通じてワイピング部材30の繰り出し量を正確に検出することができる。
【0080】
(12)ばね部材93から挟持ローラー92に作用する付勢力に基づいて、挟持ローラー92と中継ローラー89との間でワイピング部材30が強固に挟持される。そのため、ワイピング部材30の繰り出し方向における中継ローラー89に対するワイピング部材30の滑りが抑制される。したがって、ロータリーエンコーダー129は、中継ローラー89の回動量をワイピング部材30の繰り出し量として更に正確に検出することができる。
【0081】
(13)ワイパーカセット31に搭載されたワイピング部材30が記録ヘッド22を払拭する際に、ワイパーカセット31が記録ヘッド22から作用する反力によってワイパーホルダー32から外れる方向に変位しようとしても、このワイパーカセット31の変位は係止爪97によって規制される。一方、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32から取り外される際には、ワイパーカセット31の傾動に伴って、係止爪97によるワイパーホルダー32に対する係止状態は解除される。そのため、ワイパーカセット31からのワイパーホルダー32の取り外し動作が係止爪97によって阻害されない。したがって、ワイパーホルダー32からワイパーカセット31を容易に取り外すことができる。
【0082】
(14)ワイパーカセット31がワイパーホルダー32内に嵌合態様で装着された状態にあっても、ワイパーホルダー32の凹部130を介して外部に露出した状態にあるワイパーカセット31の掛止部100に対して取り外し方向に向けた外力を作用させることができるので、ワイパーホルダー32からワイパーカセット31を容易に取り外すことができる。
【0083】
(15)掛止部100に外力を作用させた場合において、ワイパーカセット31がワイパーホルダー32内で傾動することが許容されるため、取り外し時にはワイパーカセット31を傾動させることにより、ワイパーホルダー32からワイパーカセット31における把持可能な部分を露出させることができる。したがって、使用者はワイパーカセット31におけるワイパーホルダー32から露出した部分を把持することによりワイパーホルダー32からワイパーカセット31を容易に取り外すことができる。
【0084】
(16)掛止部100に外力を作用させた場合において、ワイパーカセット31の傾動中心となる係合突起95がワイパーホルダー32の係合凹部140によってワイパーカセット31の取り外し方向にガイドされる。そのため、ワイパーカセット31の傾動姿勢が安定するため、ワイパーカセット31が過度に傾くことを抑制しつつ、ワイパーカセット31を円滑に取り外すことができる。
【0085】
(17)ワイパーカセット31に設けられた係合突起95がワイパーホルダー32に設けられた係合凹部140に対して凹凸係合することにより、ワイパーカセット31を係合突起95を傾動中心として安定して傾動させると共に、ワイパーカセット31の傾動中心をワイパーカセット31の取り外し方向に円滑に変位させる構成を容易に実現することができる。
【0086】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、ラチェット115による繰り出しローラー81の回動規制を解除可能な規制解除部材は、必ずしもガイドフレーム35に設ける必要はなく、ワイパーホルダー32の移動時にワイパーホルダー32に対して移動方向に相対移動する部材であれば任意の部材に設けてもよい。また、規制解除部材は、ワイパーホルダー32の移動に伴ってワイパーホルダー32の移動方向と反対方向にラチェット115を押圧する構成に限定されず、ラチェット115による繰り出しローラー81の回動規制を解除可能な構成であれば任意の構成を採用することができる。なお、規制解除部材の対象は、繰り出しローラー81の回動を規制するラチェット115に限定されず、巻き取りローラー82の回動規制を解除するラチェット124を対象としてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、ワイパーホルダー32が記録ヘッド22に対して単一の方向に相対移動することによりノズル形成面からインクを払拭する構成としてもよい。この場合、繰り出しローラー81及び巻き取りローラー82のうち、記録ヘッド22からのインクの払拭時にワイピング部材30が出される一方のローラーのみにラチェットを設ける構成としてもよい。
【0088】
・上記実施形態において、繰り出しローラー81の回動を規制するラチェット115、及び、巻き取りローラー82の回動を規制するラチェット124のうち少なくとも一方のラチェットは、各々が対応するローラーがワイピング部材30を巻き取る方向に回動することを規制する構成としてもよい。
【0089】
・上記実施形態において、ワイパーホルダー32がワイピング部材30を巻き取りローラー82に巻き取る巻き取り位置から外れた位置に配置された状態で、太陽歯車70の回動軸となる軸56を中心とした周方向に沿う遊星歯車72の移動経路上に巻き取り歯車85が位置する構成としてもよい。
【0090】
・上記実施形態において、遊星歯車71は、駆動モーター48の正転駆動時における太陽歯車70の回転方向の前側から第1ラックギア部40に対して動力伝達可能に噛合する構成としてもよい。また、遊星歯車72は、駆動モーター48の逆転駆動時における太陽歯車70の回転方向の前側から第2ラックギア部41に対して動力伝達可能に噛合する構成としてもよい。
【0091】
・上記実施形態において、駆動モーター48の正転駆動時に遊星歯車71が噛合するラックギア部を、駆動モーター48の逆転駆動時に遊星歯車72が噛合するラックギア部として兼用させてもよい。
【0092】
・上記実施形態において、挟持ローラー92を中継ローラー89に対して接近させる方向に付勢する付勢部材を省略した構成としてもよい。
・上記実施形態において、中継ローラー89との間でワイピング部材30を挟持する挟持ローラー92を省略した構成としてもよい。
【0093】
・上記実施形態において、中継ローラー89の回転量を計測するロータリーエンコーダー129をワイパーカセット31に搭載してもよい。
・上記実施形態において、ロータリーエンコーダー129は、押圧ローラー87又はテンションローラー86,88の回転量の検出を通じて、繰り出しローラー81から巻き取りローラー82へのワイピング部材30の繰り出し量を検出する構成としてもよい。
【0094】
・上記実施形態において、ワイピング部材30が巻き掛けられたローラーの回転量を検出する回転量検出部材は、ロータリーエンコーダーに限定されず、ローラーの回転量を検出可能な構成であれば任意の検出方式の部材を採用することができる。
【0095】
・上記実施形態において、ワイパーカセット31をワイパーホルダー32に対して係止させる係止爪97は、ワイパーカセット31の係合突起95から見て掛止部100側となる位置に設けてもよい。また、この係止爪97を省略した構成としてもよい。
【0096】
・上記実施形態において、ワイパーホルダー32に係合突起を設けると共に、この係合突起に係合する係合凹部をワイパーカセット31に設けてもよい。
・上記実施形態において、ワイパーカセット31の湾曲面98,99は、ワイパーカセット31の外側に向けて凹となる略円弧状に湾曲した形状をなしてもよい。また、ワイパーカセット31が傾動時にワイパーホルダー32に干渉されないための干渉回避形状は湾曲形状に限定されず、ワイパーカセット31の外側面における他の部分よりも内側に退避した形状であれば任意の形状を採用することができる。
【0097】
・上記実施形態において、ワイパーカセット31に対してワイパーホルダー32からの取り外し方向に向けて外力を作用させる力点作用部として、使用者の指先を引っ掛ける突起部を設けてもよいし、使用者の指先が摩擦係合する粗面部を設けてもよい。
【0098】
・上記実施形態において、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
11…液体噴射装置としてのプリンター、22…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、30…ワイピング部材、31…ワイパーカセット、32…ワイパーホルダー、33…駆動機構、34…ワイパーユニット、48…駆動モーター、70…駆動歯車としての太陽歯車、71…第1の変位歯車としての遊星歯車、72…第2の変位歯車としての遊星歯車、81…第1のローラーとしての繰り出しローラー、82…第2のローラーとしての巻き取りローラー、85…動力伝達歯車としての巻き取り歯車、89…巻き掛けローラーとしての中継ローラー、92…挟持ローラー、93…付勢部材としてのばね部材、95…突起としての係合突起、97…係止爪、100…力点作用部としての掛止部、105…伝達歯車としての従動歯車、115…規制部を構成するラチェット、116…規制解除部材としての突片部、117…孔としての掛止孔、122…伝達歯車としての従動歯車、124…規制部を構成するラチェット、129…回動量検出部材としてのロータリーエンコーダー、140…係合部としての係合凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射する液体噴射ヘッドに付着した前記液体を払拭するワイピング部材を搭載したワイパーカセットと、前記ワイパーカセットを着脱自在に且つ嵌合態様での装着可能に構成され、前記ワイパーカセットを装着した状態で、前記ワイピング部材を前記液体噴射ヘッドに当接させた状態で前記液体噴射ヘッドから前記液体を払拭する払拭方向に移動可能なワイパーホルダーと、を備えたワイパーユニットであって、
前記ワイパーカセットは、前記ワイパーホルダーからの取り外し方向と交わる方向へ延在するように設けられる力点作用部と、前記取り外し方向および前記力点作用部が延在する方向に交わる方向に突出する突起と、前記ワイパーホルダーに装着された状態で固定する係止爪とを有し、
前記ワイパーホルダーは、前記突起を前記取り外し方向にガイドする係合部と、前記係止爪と係止する孔とを有し、
前記取り外し方向及び前記突起の突出方向と交わる方向において、前記力点作用部と前記係止爪の間に前記突起が位置することを特徴とするワイパーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパーユニットにおいて、
前記取り外し方向において、前記力点作用部と前記係止爪の間に前記突起が位置することを特徴とするワイパーユニット。
【請求項3】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項1又は請求項2に記載のワイパーユニットと
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−103379(P2013−103379A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247662(P2011−247662)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】