ワイヤグリッドモニタ装置
ワイヤグリッドバイオセンサのアナライト流体に存在する発光団によって放出される放射線をモニタする装置。モニタリング装置は、前記バイオセンサのアナライト流体中に配される蛍光標識を励起するために、ワイヤグリッドバイオセンサを照明する非偏光の光源41を有する。検出器71は、励起後、標識によって放出される放射線を検出する。偏光フィルタ53は、トランスペアレントな基板及び検出器の間に配置され、アナライト流体中の、ワイヤグリッドの開口の外側に位置する標識からのバックグラウンド放出放射線を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサの分野に関し、特に、サブ回折限界のあるバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサ技術は、良く知られた技術である。
【0003】
米国特許出願第2003/0174992号は、アナライトを解析するために電磁放射による活性化を受けるアナライトを含むゼロモード導波管を提供する方法及び装置を開示する。
【0004】
「Luminescence sensors using sub-wavelength apertures or slits」なるタイトルの国際公開第2006/136991号パンフレットは、サブ波長空間分解能を有するバイオセンサを開示する。
【0005】
「Luminescence sensor operating in reflection mode」なるタイトルの国際公開第2007/072415号パンフレットは、開口内の分子によって生成される蛍光放射の検出方法を開示する。
【0006】
このようなバイオセンサは、トランスペアレントな材料の基板上に配され、前記アナライト流体で満たされるための少なくとも1つの開口を形成する、非トランスペアレントな材料を有することができる。開口は、開口内の媒体における励起光の回折限界より小さい第1の面内寸法、及び開口内の媒体における励起光の回折限界より大きい第2の面内寸法を有する。開口面は、開口の第1の面内寸法に沿って向けられる第1のベクトル、及び開口の第2の面内寸法に沿って向けられる第2のベクトルによって規定される。このようなワイヤグリッドは、透過軸を有し、電界が第1のベクトル及び開口面に対して垂直な第3のベクトルによって規定される透過面と平行であるように偏光される、以下でT偏光と呼ばれる光が、本質的に透過され、電界が透過面に直交するように偏光される、以下でR偏光と呼ばれる光が実質的に阻止される。
【0007】
アナライトは、バイオセンサに供給され、開口に入り込む。アナライトは、解析されるべきターゲット分子を含む。ターゲット分子は、発光団によって標識化され、発光団/ターゲット分子の集合体は、開口の基板側に固定化され、ターゲット分子に付着される1又は複数の自由発光団は、アナライト中の、開口のアナライト側に存在する。固定化された発光団は、解析されるべきターゲット分子の定性的又は定量的表現に対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
固定化された発光団からの放出放射線は、検出器によって決定される。固定化された発光団の所望の放射線を、自由発光団及び発光団によって標識化されたターゲット分子のバックグラウンド放射線から区別するために、バックグラウンド放射線は、抑制されなければならない。バックグラウンド放射線は、固定化された発光団からの有用な放射線より数オーダー大きいことがある。ルミネセントバックグラウンド放射線の実質的な抑制は、他の方法でリンスを必要とする本質的にはバックグラウンドのない測定を可能にするが、リンスは、例えばリアルタイムの測定中に行われることはできない。偏光された励起光により照明される実際のワイヤグリッドバイオセンサの場合、バックグラウンド放射線の抑制は、約3のオーダーの大きさに制限される。この制限されたバックグラウンド抑制は、最終的に、センサの正確さ及び表面特異性の低減をもたらす。更に、より安価であり、より大きい出力パワーを生成することができる例えば発光ダイオードLEDのような非偏光の光源を使用することができるバイオセンサの技術のニーズがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、上述した不足及び不利益の1又は複数を単独で又は任意の組み合わせで緩和し、軽減し又は除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの見地によれば、アナライト流体に存在する発光団によって放出される放射線をモニタする装置であって、トランスペアレントな材料の基板に配置され、前記アナライト流体で満たされるための少なくとも1つの開口を形成する、少なくとも1つの非トランスペアレントな材料を有するバイオセンサであって、前記開口は、バイオセンサにおいて放射線の有効波長の半分より短い第1の面内寸法及びバイオセンサの放射線の有効波長の半分より大きい第2の面内寸法を有し、透過面を有する、バイオセンサと、前記バイオセンサのアナライト流体に存在する発光団を励起するための励起源と、励起に応じて発光団によって放出される放射線を検出する検出器と、バイオセンサ及び検出器の間に配置される偏光フィルタと、を有する装置が提供される。検出器は、バイオセンサの基板側に配置されることができる。励起源は、例えば、円偏向、直線偏光又は楕円偏光を有する偏光光のような偏光光を放出する光源でありえ、又は前記励起源は、非偏光の光を放出する光源であってもよい。偏光フィルタは、開口の透過面と平行な電界を有する放射線を実質的に減衰するように構成されることができる。偏光フィルタは、回転可能でありうる。
【0011】
一実施例において、光源は、前記発光団の励起のための吸収波長帯域に対応する波長通過帯域を有する放射線を通過させ、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を阻止する帯域フィルタを有する。更に、波長通過フィルタが、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を通過させ、前記帯域通過フィルタによって通される放射線を阻止するために、検出器の前に配置されることができる。
【0012】
別の実施例において、偏光フィルタは、前記検出器の方へ、開口の透過面と平行な偏光面を有する放射線を通過させ、開口の透過面に直交する偏光を有する放射線を、第2の検出器を方へ反射し又は阻止する偏光ビームスプリッタを有することができ、又は偏光フィルタは、バイオセンサの方へ前記励起放射線を向け、検出器へ放出放射線を通すように配置されるダイクロイックミラーを有することができる。
【0013】
他の実施例において、前記光源からの放射線は、バイオセンサを照明する前に、前記偏光フィルタを通過するように配置されることができる。
【0014】
更に他の実施例において、光源は、バイオセンサの基板側に配置されることができ、検出は、反射モードにおいて実施される。代替として、光源は、バイオセンサのアナライト流体側に配置されてもよく、検出は、透過モードで実施される。光源は、例えば約1nmより大きい帯域幅を有するような低いコヒーレンス長を有する光を放出することができる。
【0015】
装置は、アナライト流体を含むことができ、アナライトは、ターゲット分子、及び例えば前記開口に含まれる媒体中の蛍光団のような発光団を有することができる。捕捉分子は、開口の基板端部に隣接して配置されることができ、前記捕捉分子は、前記ターゲット分子及び発光団との会合体を形成することを意図する。アナライト流体は、前記開口を含む基板の一方の側に配置されることができ、検出器及び偏光フィルタは、基板の反対側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の原理を説明するための概略図。
【図2】バイオセンサの一実施例の概略図。
【図3】バイオセンサの他の実施例の概略図。
【図4】バイオセンサの他の実施例の概略図。
【図5】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図6】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図7】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図8】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図9】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図10】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図11】標識化分子のパターンで覆われるワイヤグリッドに対してそれぞれ平行に及び垂直に配置された偏光フィルタを有する検出器像を示す2つの写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、図面を参照して本発明の実施例の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0018】
以下、本発明のいくつかの実施例が、図面を参照して記述される。これらの実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にし、最良の形態を開示するために、説明の目的で記述されている。しかしながら、このような実施例は、本発明を制限しない。更に、さまざまな異なる特徴の他の組み合わせが、本発明の範囲内で可能である。
【0019】
以下に記述される実施例によるバイオセンサは、励起及びルミネセンス光のうちの少なくとも1つに対して非透過である材料に規定される開口に配置されるアナライトを含むことができ、一般的な例は、開口内の媒体中の励起光の回折限界より小さい第1の面内寸法及び開口内の媒体中の励起光の回折限界より大きい第2の面内寸法を有する、アルミニウム、金、銀、クロミウムである。面内寸法とは、基板に平行な平面内の寸法を意味する。
【0020】
アナライトは、流体中に含まれることができる。流体に存在する発光団は、励起エネルギーに露呈される場合、電磁放射線を放出する。放出された放射線は、検出器によって集められる。
【0021】
放出された放射線エネルギー全体、すなわち発光団によって放出された個別の発光団の放射線エネルギーの合計は、例えばアナライトの分子の濃度と比例するような、アナライトの特性と予め決められた関係をもつ。放出された放射線を解析することによって、アナライトの特性が、定量的に及び/又は定性的に決定されることができる。
【0022】
各開口の底部にアナライト分子を固定化する方法が、以下に記述される。各アナライト分子は、例えば蛍光標識のような発光団を備える。発光団を励起し、放出された放射線を集めることによって、アナライト分子の検出が、提供されることができる。検出は、定性的及び/又は定量的でありうる。
【0023】
リガンド又は捕捉分子が、開口の特定の部分に配置され又は固定化されることができ、前記リガンドは、アナライトのターゲット分子によって接触されると、発光団を形成する。発光団のこのような形成は、例えばS.Weissによる文献「Fluorescence spectroscopy of single biomolecules」(Science, Vol. 283, pp 1676-1683)に記述されるように異なる態様で行われることができ、上記文献の技術的な内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。リガンドは、発光団が、励起に応じて固定化された位置から放射線を放出するように、発光団を固定化することができる。
【0024】
リガンドは、開口の底部に隣接して、基板に配置されるトレンチに固定化されることができる。
【0025】
発光団は、例えば電気又は化学エネルギーによって、さまざまな異なるやり方で放射線を放出するために励起されることができる。放出される放射線は、例えばルミネセンス、燐光、蛍光、ラマン散乱光、ハイパーラマン散乱光又はハイパーレイリー(Rayleight)散乱光等の異なる物理的プロセスによって、生じうる。放出される放射線は、例えば赤外光を含む光のような電磁放射線でありうる。
【0026】
特に開口の第1の面内寸法の少なくとも2倍大きい関連する媒体中の波長を有する紫外、可視及び赤外光を含む光である電磁放射線によって励起される発光団が考慮される。有効波長は、媒体の屈折率で除算される真空中の放射線の波長である。
【0027】
発光団によって放出されるルミネセント放射線は、バイオセンサのいずれかの側において検出されることができる。アナライト流体が、前側に存在する場合、放射線は、基板の後ろ側で検出されることができる。光源が、基板の後ろ側から基板に向けられる場合、R偏光励起光が、開口内にエバネセント場を確立し、T偏光励起光が、開口内に伝播波を確立する。このようなエバネセント場は、基板側に隣り合って開口内に存在する発光団を励起することができる。エバネセント場は、開口の基板側から、開口内に、指数関数的な崩壊を有する。こうして、開口の基板側の近くに存在する発光団は、開口のアナライト側に又はその外側に存在する発光団より効率的に励起される。非偏光であり、又は例えばR及びT偏光の線形結合である円偏光、楕円偏光又は直線偏光のような他の偏光状態を有する励起光は、R及びT偏光に分解されることができ、開口内にエバネセント及び伝播励起光の組み合わせを生じさせる。
【0028】
生成されたルミネセント放射線は、概して、R及びT偏光成分を有する偏光状態を有する。ルミネセント光のT偏光部分は、基本的に開口によって透過され、R偏光成分は、実質的に開口によって抑制される。
【0029】
多くのアプリケーションにおいて、約1000のバックグラウンド減衰が十分であるが、例えばレーザより一般に高価でなく、必要な励起パワーをなお提供することができる、発光ダイオードLEDのような非偏光の光源を使用してもよい。
【0030】
図1は、第1の実施例によるシステムを開示している。システムは、例えば国際公開第2007/072241号パンフレットに開示されるタイプのワイヤグリッドバイオセンサを有する。
【0031】
バイオセンサ1は、トランスペアレントな基板2上に配置されるいくつかの「ワイヤ」3を有する。基板は、ガラス、シリカ又は例えばアクリルガラス、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等の他の同様の材料から作られることができる。十分にトランスペアレントであるために、材料は、10―4より小さい虚数部を有する屈折率を有するべきである。ワイヤは、所望の構造、すなわち複数の開口4を得るようにエッチングされ又はメッキされる、例えば金、アルミニウム、銀、クロミウム等の金属によって形成されることができる。このようなワイヤ及びワイヤグリッドの形成は従来技術において知られており、例として国際公開第2006/136991号パンフレットを参照されたい。
【0032】
複数の開口4が、ワイヤ3の間に形成される。開口は、第1の面内方向においてサブ回折限界寸法を有する。この第1の面内寸法は、励起放射線の有効波長の半分より小さい。水(n=1.3)が開口内に存在し、励起放射線が、真空中で633nmの波長を有する場合、有効波長は、487nmであり、開口の第1の面内寸法は、243nmである有効波長の半分より小さい。第1の面内寸法は、有効波長の0.25倍すなわち121nmより小さくてもよい。第1の面内寸法は、有効波長の0.2倍すなわち97nmより小さくてもよい。第1の面内寸法は、有効波長の0.15倍すなわち73nmより小さくてもよい。開口の第2の面内寸法は、有効波長の少なくとも0.5倍すなわち少なくとも243nmのような有効波長の半分より大きい。第2の面内寸法は、有効波長の10乃至100倍すなわち4.9乃至49μmでありうる。第2の面内寸法は、有効波長の100乃至1000倍すなわち49乃至490μmでありうる。第2の面内寸法は、有効波長の少なくとも1000倍すなわち少なくとも490μmでありうる。
【0033】
アナライト流体5は、バイオセンサの開口に導入されることができる。アナライトは、励起に応じて電磁放射線を放出することが可能である発光団又は蛍光団8の標識を具えるターゲット分子7を有することができる。
【0034】
基板2は、ターゲット分子7に対する親和性を呈し、開口の底部すなわち基板側で前記基板2の表面に固定化される、捕捉分子又はリガンド6を備えることができる。ターゲット分子7がリガンド6の十分近くにくると、ターゲット分子は、リガンドによって捕えられ、リガンド6、ターゲット分子7及び蛍光団8を含む会合体9を形成する。ターゲット分子及びそれに付着される標識又は蛍光団は、開口4の基板側に近い位置に固定化される。
【0035】
バイオセンサ1は、例えば約700nmの波長の光を有する外部放射線源からの励起放射線10に露呈される。例えばマイクロ波、赤外光、近赤外(NIR)光、可視光、紫外光、X線等の他の波長の放射線も同様に使用されることができる。
【0036】
円偏光の場合、励起放射線は、(約)50%のT偏光された放射線及び(約)50%のR偏光された放射線に分解されることができる。結果として、励起放射線の(約)50%は、実質的に透過され、励起放射線の他の(約)50%は、指数関数的に崩壊し、基本的に透過されないエバネセント場を開口内に生成する。従って、ワイヤグリッドのサンプルファセットから間隔をおいて配置される位置に関する励起光の実質的な抑制は、光が基本的にR偏光されることを必要とする。
【0037】
バイオセンサは、反射モードで動作されることができる。バイオセンサは、開口の基板端部の方へ向けられる励起放射線10に露呈される。
【0038】
基板側と隣接して固定化される蛍光団8を含む会合体9は、励起エネルギーを吸収し、遷移双極子モーメントの方向に依存して、全方向に蛍光X線を放出する。蛍光は、矢印11a及び11bによって示されるように、いくつかの方向においてある程度顕著である。放出された放射線の部分11aは、基板2の下に配置される検出器12の方へ向けられ、他方、他の部分11bは、開口のアナライト側の方へ向けられる。
【0039】
適切に偏光された励起光が使用される場合でも、励起光のごくわずかな割合η(上述したような一般的な開口の場合、透過されるR偏光励起光は、入射R偏光励起光10の1/1000である)が、開口によって透過される。この透過される割合ηは、開口のアナライト側で、流体5に存在する蛍光団8によって吸収され、このような蛍光団を励起して、矢印14a及び14bによって示されるような放射線を放出することができる。放出された放射線は、概して、T及びR偏光成分を有する。流体は、蛍光団8を備える自由ターゲット分子7及び自由蛍光団8を有することができる。矢印14aによって示される放射線の部分は、開口を通り抜け、T偏光されたこのような放射線の部分は、R偏光成分と対照的に、開口によって透過され、不所望のバックグラウンド放射線を生じさせる。
【0040】
リガンド6に結合されない大量の外部の蛍光団8が、開口のアナライト側において流体5中に存在する場合、このようなバックグラウンド放射線は大きい。このような外部蛍光団は、リンスによって低減されることができるが、リンスは、例えばリアルタイム測定中に行うことができない。
【0041】
なお、一般に、アナライト側の流体5に存在する蛍光団からの、基板側の開口を通過する放射線14aの最も多くの部分は、T偏光である。開口を通る放射線14aの約0.5*ηである小さい割合が、R偏光された光である。
【0042】
偏光フィルタ33は、検出器12の前に配置される。偏光フィルタは、高い抑制を有し、例えばT偏光の場合の10,000より大きい、開口の1/ηに等しい又はそれより良い抑制である。こうして、流体6に存在する蛍光団から放射線14aの大部分は、フィルタ33によって阻止される。こうして、バックグラウンド放射線は、フィルタ33の抑制に依存して0.5*ηとηの間のファクタによって低減され、これは実質的な低減である。有用な放射線すなわち検出されるべき放射線11aは更に、ほんのわずかなファクタのみを伴って、低減される。こうして、0.5/ηと1/ηとの間の信号対バックグラウンド比率の改善が、フィルタ33によって得られる。
【0043】
フィルタ33は、前記ワイヤグリッドの減衰ファクタηと少なくとも同じ減衰ファクタを有することができるが、約10ηより大きい減衰ファクタを有することもできる。このような偏光フィルタは、例えば100000の一般的な減衰ファクタを有するGlanレーザ偏光器のように、商業的に入手可能である。
【0044】
偏光フィルタ33はバイオセンサ1と同様のワイヤグリッドでありえ、その場合、偏光フィルタ33は、ワイヤグリッドと同じ抑制ηを有する。この場合、抑制は、理論的に最大限に得られる改良の50%だけである。
【0045】
バックグラウンド放射線の他の低減は、R偏光された励起放射線を使用することによって得られることができる。この場合、励起放射線は、開口を通る際に前記減衰ファクタηによって減衰され、これは、検出器12に達するバックグラウンド放射線が、フィルタ33の減衰ファクタに依存して、0.5*η2乃至η2のファクタによって、すなわち上述したケースにおいては500,000のファクタよって、低減される。
【0046】
同じ偏光フィルタ33は、図1の破線33aによって示されるように、励起放射線のために及び検出器へのバックグラウンド放射線を阻止するために、という両方の目的で使用されることができる。
【0047】
基板2及びワイヤグリッドから反射される励起放射線もまた、バックグラウンド放射線として検出器に更に達する。このような励起バックグラウンド放射線は、例えば蛍光放出された放射線のみを通すフィルタのような、異なる手段によって低減されることができる。励起放射線は更に、ある角度でバイオセンサの方へ向けられることができ、それにより、反射された放射線は、検出器に達しない。この場合、検出器の方へ向けられる散乱された励起放射線は、蛍光X線を透過し及び励起放射線を阻止する波長フィルタ37によって除去されることができる。
【0048】
図2は、例えばアルミニウム、金、銀、クロミウム等の、金属のワイヤグリッド3を備えるガラスの基板2を有する実施例を開示している。ワイヤグリッドは、例えば70nmのような、回折限界幅270nmより小さい第1の面内寸法(幅)を有するスリットの形の開口を有する。スリットは、例えば1mmのような、回折限界幅より大きい第2の面内寸法(長さ)を有する。蛍光団20を有するターゲット分子は、開口の基板端部において固定化され/結合し、他の蛍光団21は、開口のアナライト端部に存在する流体5中に存在する。
【0049】
矢印10bによって示される、例えば約700nmの真空波長を有する光のような励起放射線が、光源からダイクロイックミラー31の方へ向けられる。ダイクロイックミラー31からの励起放射線は、前記偏光フィルタ33を通り、偏光された励起放射線10bをバイオセンサ面に向けてフォーカスするためにレンズ32に入る。
【0050】
励起放射線は、放射線を放出するように、蛍光団に影響を与える。開口の基板側に存在する蛍光団20から放出された放射線20aは、レンズ32を通り、R偏光された放射線20bだけを通す偏光フィルタ33を通る。通過された放射線20bは、レンズ34及び検出器22の方へ、ダイクロイックミラー31によって反射される。
【0051】
開口の基板側におけるR偏光された励起放射線10bは、指数関数的な崩壊を有する開口内のエバネセント場を形成する。励起放射線は、前記減衰ファクタηによって減衰され、励起放射線のごくわずかな割合だけが、開口のアナライト側で蛍光団21に達する。蛍光団21は、放射線21aを放出し、それは、開口を通り、レンズ32及び偏光フィルタ33に達する。蛍光団21からの放射線のT偏光成分21bは、開口を通るが、偏光フィルタ33によって阻止される。蛍光団21からの放射線のR偏光成分は、開口を通るとき、前記減衰ファクタηによって減衰され、レンズ32及び偏光フィルタ33を通り、ダイクロイックミラー31によってレンズ34及び検出器22の方へ向けられる。こうして、蛍光団21からのバックグラウンド放射線は、偏光フィルタ33の無い状況と比較して、ファクタη2によって減衰される。
【0052】
偏光フィルタ33は、開口のアナライト側において励起放射線のレベルを測定することによって、バイオセンサのセットアップ時にワイヤグリッドとそろえられることができる。このように測定された励起放射線レベルが最小値であるとき、偏光フィルタ33は、ワイヤグリッドとそろえられており、これは、偏光フィルタが、ワイヤグリッドに対して垂直な偏光を有する放射線のみを通す。
【0053】
偏光フィルタを回転させることによって、バックグラウンド低減が可変にされることができる。これは、外部偏光フィルタの向きが回転されることができることにより、バックグラウンドを抑制するだけでなく、更に、バックグラウンドを測定し、結合された蛍光団の偏光状態を決定することを可能にするので、柔軟性を改善する。
【0054】
図3は、偏光フィルタ24が、蛍光団によって放出される放射線によってのみ通過される他の実施例を開示している。この例において、偏光フィルタ24は、例えば100nmより大きい、より大きいストークスシフトを有する蛍光団に関連しうる励起放射線に対してトランスペアレントである必要はない。励起放射線は、円偏光を有することができる。代替として、励起放射線は、直線偏光された放射線でありえ、その場合、偏光は、上述したようにそろえられるべきである。
【0055】
図4は、図3の実施例の偏光フィルタ24が偏光ビームスプリッタ35と置き換えられる他の実施例を開示している。偏光ビームスプリッタ35は、R偏光放射線20bを、レンズ34及び検出器22へ通過させ、偏光ビームスプリッタ35は、T偏光放射線20c及び21bを、第2のレンズ36及び第2の検出器23の方へ向ける。こうして、バックグラウンド信号が評価されることができる。
【0056】
図5は、例えば紫外光、可視光又は赤外光を含む外部放射線源からの励起放射線10に露呈されるバイオセンサ1の他の実施例を示している。放射線源は、検出装置30に含まれており、検出装置30は、上述したバイオセンサ1とは別である。
【0057】
本実施例において、例えば1又は複数のLEDである非偏光の光源が使用される。このような光源は、励起放射線のより大きいパワーを放出することができ、レーザ光源より非常に安価である。
【0058】
光源ユニット40は、630nmの波長付近の放射線を放出する1又は複数のLED41、レンズ42、及び励起光を通過させ、蛍光標識の放出帯域及び放出フィルタ54の通過帯域に重なる光を除去する通過フィルタ43を有する。こうして、フィルタは、一般に20乃至30nmの幅である通過帯域を有することができ、蛍光標識の吸収帯域又は励起帯域と重なる光10を透過する。これらのLED用の適切な通過帯域波長レンジの例は、620乃至650nmである。適切な通過フィルタは、Omega Optical,Incから入手可能な3RD Millenium620―650フィルタである。
【0059】
光は、或る角度で基板側からバイオセンサの方へ向けられ、光は、光ビーム15によって示されるように、ワイヤグリッドによって部分的に反射される。こうして、実質的に、励起光は、センサ71に達しない。励起光のごくわずかな割合だけが、破線16によって示されるように、センサ71の方へ向けられる。
【0060】
イメージングブロック50は、バイオセンサの後ろ側において、バイオセンサにほぼ垂直な角度で配置される。イメージングブロック50は、偏光板53及び1又は複数の放出フィルタ54を介して、検出器71の方へ放出放射線17を向けるために第1のレンズ51及び第2のレンズ52を有する。放出フィルタは、放出放射線17を通過させ、励起放射線16を阻止する。例えば、それぞれ700nm及び650nmの波長付近を中心とする約50nmのスペクトル幅を有する放出スペクトルを有するatto680染料又はFluor633染料のような蛍光標識の場合、放出フィルタ54について適切な透過波長は、例えば665nmの最小透過波長を有するOmega Optical,Incから入手可能な695AF55EmitterXF3076フィルタのような、660nm又はそれより大きい最小透過波長を有する。
【0061】
検出器71は、CCD又はCMOS検出器を含むカメラでありうる。他の代替例は以下である。
【0062】
非偏光の光の場合、励起放射線は、T及びR偏光された放射線に分解されることができる。その結果、励起放射線の約半分は、ワイヤグリッドを通して実質的に透過され、励起放射線の他の半分は、指数関数的に崩壊する、基本的に透過されないエバネセント場を開口内に生成する。R偏光された放射線のごくわずかな割合だけが、開口を通過する。こうして、ワイヤグリッドは、実質的に偏光フィルタとして動作する。
【0063】
ワイヤグリッドを通る放射線とワイヤグリッドに当たる放射線との間の比率は、消光レートと呼ばれ、一般的なワイヤグリッドの場合、R偏光された放射線に関して一般に約0.001である。
【0064】
放射線は、蛍光X線を放出するために、蛍光標識を励起する。蛍光団の集合について、標識は、励起放射線偏光と同じ偏光の約75%を放出することができる。
【0065】
開口の基板端部と隣り合って開口内に位置する蛍光標識61は、T及びR偏光を有する励起放射線によって励起される。ここで、Tは、通常、非偏光の励起光の場合、Rにほぼ等しい。励起放射線全体は、T+Eであり、これは、標識からの蛍光放出を生じさせる。放出は、すべての方向にあり、50%が、検出器の方へ向けられるものとする。
【0066】
バイオセンサの前側すなわちサンプル側と隣り合う開口の外側に位置する蛍光標識62は、ほぼ減衰されてワイヤグリッドを通る励起光のT成分によって励起される。加えて、励起光のR成分は、消光ファクタnによって減衰される。こうして、T成分及びR成分は、放出放射線を生じさせる。この放出は、すべての方向にあり、50%が、開口に再び入り検出器に向かうものとする。しかしながら、R成分は、消光ファクタnによって減衰される。最後に、偏光フィルタは、ファクタNによってT成分を低減する。偏光フィルタの後に、標識61及び62から生じる検出される蛍光の間の比率は、以下の通りである:
(N+1)/[(N*3/4+n*1/4)+n*(n*3/4+N*1/4)]
N=nとすると、比率は1/nであり、これは、本発明の第1の実施例が、ワイヤグリッドの消光比と同様のバックグラウンド抑制をもたらすことを示す。N<<nである場合、比率は約4/nである。ワイヤグリッドの典型的な消光比は、n=0.001である。
【0067】
偏光フィルタ53は、少なくとも前記ワイヤグリッドの消光ファクタnと同じ消光ファクタNを有することができるが、約0.1*nより小さい消滅ファクタを有することもできる。このような偏光フィルタは、商業的に入手可能であり、例えば10−5の一般的な消光ファクタを有するGlanレーザ偏光板である。
【0068】
偏光フィルタ53は、ワイヤグリッド1と同様のワイヤグリッドでありえ、その場合、偏光フィルタ53は、ワイヤグリッドと同様の消光ファクタnを有しうる。
【0069】
基板2及びワイヤグリッドから散乱される励起放射線もまた、バックグラウンド放射線として検出器に達する。このような励起バックグラウンド放射線は、放出フィルタ54によって低減される。放出フィルタ54は、放出波長より短い波長を有する光を減衰させ、ゆえに、本質的に励起光を阻止する。
【0070】
図5による実施例は、反射モードで動作する。光源及び検出器は、両方とも、バイオセンサの後ろ側に配置され、検出されるべき流体は、基板上のワイヤの反対側にある。光は、検出器の方にではなく他の方向に反射されるようにするために、第1のレンズ51の開口数より大きい角度を有する基板に向けられる。
【0071】
図6は、ワイヤグリッドが第1の実施例と同じ開口を有し、透過モードで動作する他の実施例を開示している。光源は、バイオセンサの前側に配置され、検出器は、バイオセンサの後側に配置される。動作は、図5による実施例と同様である。
【0072】
LED41によって放出される光は、レンズ42によってフォーカスされ、通過フィルタ43を通った後、グリッドの開口又は複数の開口を照明する。T偏光を有する励起光は、本質的に減衰されずに開口を通過し、他方、R偏光を有する励起光は、実質的に阻止される。
【0073】
開口を通過する励起光は、本質的にT偏光された励起光であり、T偏光された励起光は、偏光フィルタ53によって実質的に阻止される。偏光フィルタ53をなお通過し、消光レートNによって減衰される任意のT偏光された励起光、及びワイヤグリッドをなお通過し、消光レートnによって減衰される任意のR偏光された励起光は、検出器71に達する前に、いくつかのカスケードされたフィルタを有しうる通過フィルタ54によって阻止される。
【0074】
開口の基板端部に位置する蛍光標識61は、励起光のT成分によってのみ実質的に励起され、これは、蛍光標識61が、図5の第1の実施例の放出放射線の約半分を放出することを意味する。
【0075】
開口のサンプル端部と隣り合って開口の外側に位置するバックグラウンド標識62は、放出放射線を放出する。T成分は通過し、R成分は、消光ファクタnによって低減される。
【0076】
こうして、検出器に達する基板端部標識61及びサンプル端部標識62の放出の間の比率は、以下の通りである:
(N*3/4+1/4+n*3/4+N*n*1/4)/(N+n)
N=n及びn<<1(n=0.001の場合の一般的な値)の場合、比率は約1/(8*n)である。n<<1及びN<<n(すなわちワイヤグリッドより実質的に小さい消光比を有する偏光板53である)の場合、比率は約1/(4*n)である。
【0077】
別の実施例において、励起放射線は、図7に示されるように、基板に本質的に平行なワイヤグリッドに向けられる。ダイクロイックミラー91が、例えばLED光の光路に配置され、基板の方へ垂直に光を向けなおす。ダイクロイックミラーは、波長620乃至650nmの励起光を反射するように設計され、670nmより大きい波長の放出光を通す。こうして、放出フィルタ54は、図7に示されるように省かれてもよいが、ダイクロイックミラーが、なお励起光のごくわずかな割合を通す場合、放出フィルタ54が含められることができる。
【0078】
偏光フィルタ53は、例えば、サンプル端部(すなわち上部の流体を介して)からワイヤグリッドを照明し、検出器71上のパワーを最小にすることによって、バイオセンサのセットアップ時にワイヤグリッドとそろえられることができる。このように測定されたパワーが最小である場合、偏光フィルタ53は、ワイヤグリッドとそろえられ、すなわちワイヤグリッドに対して垂直に配置され、これは、偏光フィルタが、ワイヤグリッドの透過面と垂直なR偏光を有する放射線のみを通すことを意味する。
【0079】
偏光フィルタを回転させることによって、バックグラウンド低減は可変にされることができる。これは、外部偏光フィルタの向きが回転されることができることにより、バックグラウンドを抑制するだけでなく、バックグラウンドを測定し、結合された蛍光団の偏光状態を決定することを可能にするので、柔軟性を改善する。
【0080】
図8は、偏光フィルタ93が、図5の実施例と比較して他の位置に、すなわちイメージングブロック50と基板2との間に配置される他の実施例を開示している。加えて、偏光フィルタ93は、光ユニット40と基板との間に配置され、それにより、LED41からの光は、基板に達する前に、偏光フィルタ93を通る。こうして、LEDから基板への励起光及び蛍光標識からの放出光は、同じ偏光フィルタ93を通る。偏光フィルタは、非偏光である励起光が偏光フィルタ93を通るような位置に配置され、偏光フィルタ93は、R偏光された放射線を通すが、10−3乃至10−6でありうるファクタNによって、T偏光された照射を減衰させる。開口の基板端部に位置する蛍光標識61及び開口のサンプル端部に位置する蛍光標識62は、放出放射線を放出する。R成分は、開口を通過する際、ファクタnによって更に減衰され、T成分は、偏光フィルタを通過する際、ファクタNによって減衰される。偏光フィルタ後の標識61及び標識62からの放出放射線の間の比率は、以下の通りである:
(3/4+N*1/4)+(N*N*3/4+N*1/4)/
(n*n*3/4+N*n*1/4)+(N*N*3/4+n*N*1/4)
N=nの場合、比率は3/(8*n*n)である。N<<nの場合、比率は約1/(n*n)である。
【0081】
偏光フィルタ93は、ワイヤグリッドのそれに対して垂直な偏光方向を有して配置される。偏光フィルタ93がワイヤグリッドである場合、フィルタのグリッド方向は、ワイヤグリッドのグリッド方向に対して垂直であるべきである。
【0082】
図9に示すように、図7の実施例の偏光フィルタ53は、偏光ビームスプリッタ92と置き換えられることができる。偏光ビームスプリッタ92は、R偏光された放射線18を検出器71に通し、偏光ビームスプリッタ92は、T偏光された放射線19を第2の検出器94の方へ向ける。こうして、バックグラウンド信号が、測定されることができる。偏光ビームスプリッタ92は、図1及び図2による実施例ののように、偏光フィルタ53と置き換わることができる。
【0083】
図10は、図7又は図9と同様の他の実施例を示しており、この例において、偏光フィルタは、図8の実施例と同じ位置に、すなわち基板に近いところに、配置される。こうして、非偏光の光源41からの励起光は、ダイクロイックミラー91の方へ向けられ、偏光フィルタ93を介して基板の方へ反射される。偏光フィルタ93は、実質的に、R偏光された放射線のみを通す。励起放射線は、蛍光団標識61から、偏光フィルタ93を通過し、ダイクロイックミラー91を通過して、検出器71に入る蛍光放出放射線、及び蛍光団標識62から、開口、偏光フィルタ93、ダイクロイックミラー91を通過して、検出器71に入る蛍光放出放射線を生じさせる。蛍光標識61及び62からの放出放射線の間の比率の算出は、図8の実施例の場合と同じである。
【0084】
上述の実施例において、簡素であり安価な構造のワイヤグリッドバイオセンサが使用されることができ、これは、ワイヤグリッドが使い捨て可能でありえることを意味する。
【0085】
偏光フィルタは、バイオセンサの外側に配置され、数回使用されることができる。偏光フィルタは、検査されるべきアナライトとの接触なしに配置される。偏光フィルタは、常に、トランスペアレントな基板とセンサとの間に配置される。こうして、より用途が広い偏光フィルタが使用されることができ、それにより、解析当たりの総コストを実質的に上げることなく、非常に大きいバックグラウンド放射線減衰をもたらす。
【0086】
光源ユニット40及びイメージングブロック50のそれぞれ異なる素子は、上述した以外の別の順序で配置されることができる。こうして、励起放射線通過フィルタ43は、光源41とレンズ42との間に配置されることができる。図7の実施例において、ダイクロイックミラーは、通過フィルタ43の動作を実施するように配置されることができ、パスフィルタ43は、余分になって、省かれることができる。イメージングブロック50において、素子の順序は、異なってもよい。例えば、偏光フィルタは、基板と検出器71との間の任意の位置に配置されることができる。
【0087】
図5による実施例は、以下の特性を有するテスト環境において使用される:
【0088】
バックグラウンド抑制を示すために、標識化されたタンパク質の蜂巣模様を有するサンプルが、ワイヤグリッド上でSiO2スペーサ材料のチェスボードパターンをスパッタリングし、開口4と重なり、スペーサ材料によってカバーされないトランスペアレントな基板2の部分上に、Fluor633染料により標識化されたタンパク質を固定化することによって、製造された。製造されたサンプル上に、例えばAtto-Tec GmbHから入手可能なatto680染料である例えば4.5マイクロモルの染料溶液のような、非常に高い濃度で満たされた厚さ0.5mmのハイブリダイゼーションチャンバが、与えられた。これらのサンプルは、620から650nmの間の励起波長を制限するためにスペクトルに関してフィルタリングされる4つの赤色LEDを使用して、図1のセットアップと同様にセットアップにおいて特徴づけられる。偏光器の透過軸を回転させることによって、検出ボリュームを、本質的にエバネセント又は近距離場から、本質的に完全なハイブリダイゼーションチャンバに、切り替えることが可能であった。
【0089】
図11は、測定された蛍光画像を示す。左は、偏光器がワイヤグリッドの透過軸に平行である場合の、右は、偏光器がワイヤグリッドの透過軸に直交する場合の、測定された蛍光画像が示されている。検出ボリュームは、本質的には開口の基板端部における標識化されたタンパク質、及びわずか20―30nmの高さを有する染料溶液の小さいエバネセントボリュームにのみ制限される。左の画像の積分時間は、右の画像より約500倍小さい。図11から、ワイヤグリッド上の蛍光流体によって生成されるバックグラウンドが効率的に抑制されることができることが明らかに分かる。左の画像の積分時間が、約500倍小さいという事実は、信号より実質的に大きいバックグラウンド蛍光を抑制することが可能であることを明らかに示す。
【0090】
更に、図5による実施例において、ワイヤグリッドの暗視野照明が使用され、その場合、入射光の入射角が、検出器上のイメージングのために使用される収集レンズの開口数に一致する角度より大きい。このように、鏡面反射される光は、検出器上にイメージングされない。
【0091】
本実施例は、以下の利点の1又は複数を有する:
【0092】
励起源の偏光軸とワイヤグリッドの透過軸との間の厳密なアライメントが、もはや必要とされない。上述の実施例において、ワイヤ間のスペースに純粋なエバネセント場を生成するために、光源の偏光軸が、ワイヤグリッドの透過軸と直交するようにそろえられなければならない。
【0093】
レーザは、非偏光の光源より一般に高価である。蛍光のようなアプリケーションの場合、標識分子の吸収帯域は、非常に広く、これは、LEDの使用を可能にする。LEDは、それらが実質的に低いコストでレーザと同様のパワーレベルを提供するので、特に魅力的である。更に、LEDの光学パワーは、将来、実質的に増加することが予測される。
【0094】
一般的なレーザの偏光純度は、100:1であり、他方、ワイヤグリッドバイオセンサ概念において使用されるワイヤグリッドの一般的な消光は、1000より良好である。これは、各レーザが、ワイヤグリッドの消光に等しい又はよりよい消光を有する専用の偏光器を必要とすることを意味する。
【0095】
レーザの長いコヒーレンス長は、スペックルを意味し、これは、照明の均一性を制限する。本実施例において、例えば1nmより大きいバンド幅の低いコヒーレンス長を有する光源が、使用される。
【0096】
上述の実施例は、例えば高次数を有するDNAハイブリダイゼーションアッセイのように、例えば高いバックグラウンド環境の測定に必要とされる高い表面特異性に関する測定のための光学バイオセンサのように、さまざまな異なるアプリケーションにおいて使用されることができる。
【0097】
上述の実施例は、顕微鏡として使用されることができ、その場合、センサ71は、ユーザの目と本質的に置き換えられる。
【0098】
本発明は、特定の実施例に関して上述されているが、ここに記述された特定の形に制限されることを意図しない。むしろ、本発明は、添付の請求項によってのみ制限され、特定の上述の実施例以外の他の実施例が、これらの添付の請求項の範囲内で等しく実現可能である。
【0099】
請求項において、「有する、含む」なる語は、他の構成要素又はステップの存在を除外しない。更に、複数の手段、構成要素又は方法ステップが、個別に列挙されているが、例えば単一のユニット又はプロセッサによって実現されることができる。加えて、個別のフィーチャは、それぞれ異なる請求項に含められることができるが、これらは、おそらく有利に組み合わせられることができ、それぞれ異なる請求項に含めることは、フィーチャの組み合わせが実現可能でなく及び/又は有利でないことを示さない。加えて、単数の言及は、複数性を除外しない。不定冠詞及び「第1」、「第2」等は、複数性を除外しない。請求項における参照符号は、例示を明確にするためだけに与えられており、いかなる形であれ請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンサの分野に関し、特に、サブ回折限界のあるバイオセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサ技術は、良く知られた技術である。
【0003】
米国特許出願第2003/0174992号は、アナライトを解析するために電磁放射による活性化を受けるアナライトを含むゼロモード導波管を提供する方法及び装置を開示する。
【0004】
「Luminescence sensors using sub-wavelength apertures or slits」なるタイトルの国際公開第2006/136991号パンフレットは、サブ波長空間分解能を有するバイオセンサを開示する。
【0005】
「Luminescence sensor operating in reflection mode」なるタイトルの国際公開第2007/072415号パンフレットは、開口内の分子によって生成される蛍光放射の検出方法を開示する。
【0006】
このようなバイオセンサは、トランスペアレントな材料の基板上に配され、前記アナライト流体で満たされるための少なくとも1つの開口を形成する、非トランスペアレントな材料を有することができる。開口は、開口内の媒体における励起光の回折限界より小さい第1の面内寸法、及び開口内の媒体における励起光の回折限界より大きい第2の面内寸法を有する。開口面は、開口の第1の面内寸法に沿って向けられる第1のベクトル、及び開口の第2の面内寸法に沿って向けられる第2のベクトルによって規定される。このようなワイヤグリッドは、透過軸を有し、電界が第1のベクトル及び開口面に対して垂直な第3のベクトルによって規定される透過面と平行であるように偏光される、以下でT偏光と呼ばれる光が、本質的に透過され、電界が透過面に直交するように偏光される、以下でR偏光と呼ばれる光が実質的に阻止される。
【0007】
アナライトは、バイオセンサに供給され、開口に入り込む。アナライトは、解析されるべきターゲット分子を含む。ターゲット分子は、発光団によって標識化され、発光団/ターゲット分子の集合体は、開口の基板側に固定化され、ターゲット分子に付着される1又は複数の自由発光団は、アナライト中の、開口のアナライト側に存在する。固定化された発光団は、解析されるべきターゲット分子の定性的又は定量的表現に対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
固定化された発光団からの放出放射線は、検出器によって決定される。固定化された発光団の所望の放射線を、自由発光団及び発光団によって標識化されたターゲット分子のバックグラウンド放射線から区別するために、バックグラウンド放射線は、抑制されなければならない。バックグラウンド放射線は、固定化された発光団からの有用な放射線より数オーダー大きいことがある。ルミネセントバックグラウンド放射線の実質的な抑制は、他の方法でリンスを必要とする本質的にはバックグラウンドのない測定を可能にするが、リンスは、例えばリアルタイムの測定中に行われることはできない。偏光された励起光により照明される実際のワイヤグリッドバイオセンサの場合、バックグラウンド放射線の抑制は、約3のオーダーの大きさに制限される。この制限されたバックグラウンド抑制は、最終的に、センサの正確さ及び表面特異性の低減をもたらす。更に、より安価であり、より大きい出力パワーを生成することができる例えば発光ダイオードLEDのような非偏光の光源を使用することができるバイオセンサの技術のニーズがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、上述した不足及び不利益の1又は複数を単独で又は任意の組み合わせで緩和し、軽減し又は除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの見地によれば、アナライト流体に存在する発光団によって放出される放射線をモニタする装置であって、トランスペアレントな材料の基板に配置され、前記アナライト流体で満たされるための少なくとも1つの開口を形成する、少なくとも1つの非トランスペアレントな材料を有するバイオセンサであって、前記開口は、バイオセンサにおいて放射線の有効波長の半分より短い第1の面内寸法及びバイオセンサの放射線の有効波長の半分より大きい第2の面内寸法を有し、透過面を有する、バイオセンサと、前記バイオセンサのアナライト流体に存在する発光団を励起するための励起源と、励起に応じて発光団によって放出される放射線を検出する検出器と、バイオセンサ及び検出器の間に配置される偏光フィルタと、を有する装置が提供される。検出器は、バイオセンサの基板側に配置されることができる。励起源は、例えば、円偏向、直線偏光又は楕円偏光を有する偏光光のような偏光光を放出する光源でありえ、又は前記励起源は、非偏光の光を放出する光源であってもよい。偏光フィルタは、開口の透過面と平行な電界を有する放射線を実質的に減衰するように構成されることができる。偏光フィルタは、回転可能でありうる。
【0011】
一実施例において、光源は、前記発光団の励起のための吸収波長帯域に対応する波長通過帯域を有する放射線を通過させ、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を阻止する帯域フィルタを有する。更に、波長通過フィルタが、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を通過させ、前記帯域通過フィルタによって通される放射線を阻止するために、検出器の前に配置されることができる。
【0012】
別の実施例において、偏光フィルタは、前記検出器の方へ、開口の透過面と平行な偏光面を有する放射線を通過させ、開口の透過面に直交する偏光を有する放射線を、第2の検出器を方へ反射し又は阻止する偏光ビームスプリッタを有することができ、又は偏光フィルタは、バイオセンサの方へ前記励起放射線を向け、検出器へ放出放射線を通すように配置されるダイクロイックミラーを有することができる。
【0013】
他の実施例において、前記光源からの放射線は、バイオセンサを照明する前に、前記偏光フィルタを通過するように配置されることができる。
【0014】
更に他の実施例において、光源は、バイオセンサの基板側に配置されることができ、検出は、反射モードにおいて実施される。代替として、光源は、バイオセンサのアナライト流体側に配置されてもよく、検出は、透過モードで実施される。光源は、例えば約1nmより大きい帯域幅を有するような低いコヒーレンス長を有する光を放出することができる。
【0015】
装置は、アナライト流体を含むことができ、アナライトは、ターゲット分子、及び例えば前記開口に含まれる媒体中の蛍光団のような発光団を有することができる。捕捉分子は、開口の基板端部に隣接して配置されることができ、前記捕捉分子は、前記ターゲット分子及び発光団との会合体を形成することを意図する。アナライト流体は、前記開口を含む基板の一方の側に配置されることができ、検出器及び偏光フィルタは、基板の反対側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の原理を説明するための概略図。
【図2】バイオセンサの一実施例の概略図。
【図3】バイオセンサの他の実施例の概略図。
【図4】バイオセンサの他の実施例の概略図。
【図5】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図6】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図7】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図8】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図9】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図10】本発明の更に別の実施例の概略ブロック図。
【図11】標識化分子のパターンで覆われるワイヤグリッドに対してそれぞれ平行に及び垂直に配置された偏光フィルタを有する検出器像を示す2つの写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、図面を参照して本発明の実施例の以下の詳細な説明から明らかになる。
【0018】
以下、本発明のいくつかの実施例が、図面を参照して記述される。これらの実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にし、最良の形態を開示するために、説明の目的で記述されている。しかしながら、このような実施例は、本発明を制限しない。更に、さまざまな異なる特徴の他の組み合わせが、本発明の範囲内で可能である。
【0019】
以下に記述される実施例によるバイオセンサは、励起及びルミネセンス光のうちの少なくとも1つに対して非透過である材料に規定される開口に配置されるアナライトを含むことができ、一般的な例は、開口内の媒体中の励起光の回折限界より小さい第1の面内寸法及び開口内の媒体中の励起光の回折限界より大きい第2の面内寸法を有する、アルミニウム、金、銀、クロミウムである。面内寸法とは、基板に平行な平面内の寸法を意味する。
【0020】
アナライトは、流体中に含まれることができる。流体に存在する発光団は、励起エネルギーに露呈される場合、電磁放射線を放出する。放出された放射線は、検出器によって集められる。
【0021】
放出された放射線エネルギー全体、すなわち発光団によって放出された個別の発光団の放射線エネルギーの合計は、例えばアナライトの分子の濃度と比例するような、アナライトの特性と予め決められた関係をもつ。放出された放射線を解析することによって、アナライトの特性が、定量的に及び/又は定性的に決定されることができる。
【0022】
各開口の底部にアナライト分子を固定化する方法が、以下に記述される。各アナライト分子は、例えば蛍光標識のような発光団を備える。発光団を励起し、放出された放射線を集めることによって、アナライト分子の検出が、提供されることができる。検出は、定性的及び/又は定量的でありうる。
【0023】
リガンド又は捕捉分子が、開口の特定の部分に配置され又は固定化されることができ、前記リガンドは、アナライトのターゲット分子によって接触されると、発光団を形成する。発光団のこのような形成は、例えばS.Weissによる文献「Fluorescence spectroscopy of single biomolecules」(Science, Vol. 283, pp 1676-1683)に記述されるように異なる態様で行われることができ、上記文献の技術的な内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。リガンドは、発光団が、励起に応じて固定化された位置から放射線を放出するように、発光団を固定化することができる。
【0024】
リガンドは、開口の底部に隣接して、基板に配置されるトレンチに固定化されることができる。
【0025】
発光団は、例えば電気又は化学エネルギーによって、さまざまな異なるやり方で放射線を放出するために励起されることができる。放出される放射線は、例えばルミネセンス、燐光、蛍光、ラマン散乱光、ハイパーラマン散乱光又はハイパーレイリー(Rayleight)散乱光等の異なる物理的プロセスによって、生じうる。放出される放射線は、例えば赤外光を含む光のような電磁放射線でありうる。
【0026】
特に開口の第1の面内寸法の少なくとも2倍大きい関連する媒体中の波長を有する紫外、可視及び赤外光を含む光である電磁放射線によって励起される発光団が考慮される。有効波長は、媒体の屈折率で除算される真空中の放射線の波長である。
【0027】
発光団によって放出されるルミネセント放射線は、バイオセンサのいずれかの側において検出されることができる。アナライト流体が、前側に存在する場合、放射線は、基板の後ろ側で検出されることができる。光源が、基板の後ろ側から基板に向けられる場合、R偏光励起光が、開口内にエバネセント場を確立し、T偏光励起光が、開口内に伝播波を確立する。このようなエバネセント場は、基板側に隣り合って開口内に存在する発光団を励起することができる。エバネセント場は、開口の基板側から、開口内に、指数関数的な崩壊を有する。こうして、開口の基板側の近くに存在する発光団は、開口のアナライト側に又はその外側に存在する発光団より効率的に励起される。非偏光であり、又は例えばR及びT偏光の線形結合である円偏光、楕円偏光又は直線偏光のような他の偏光状態を有する励起光は、R及びT偏光に分解されることができ、開口内にエバネセント及び伝播励起光の組み合わせを生じさせる。
【0028】
生成されたルミネセント放射線は、概して、R及びT偏光成分を有する偏光状態を有する。ルミネセント光のT偏光部分は、基本的に開口によって透過され、R偏光成分は、実質的に開口によって抑制される。
【0029】
多くのアプリケーションにおいて、約1000のバックグラウンド減衰が十分であるが、例えばレーザより一般に高価でなく、必要な励起パワーをなお提供することができる、発光ダイオードLEDのような非偏光の光源を使用してもよい。
【0030】
図1は、第1の実施例によるシステムを開示している。システムは、例えば国際公開第2007/072241号パンフレットに開示されるタイプのワイヤグリッドバイオセンサを有する。
【0031】
バイオセンサ1は、トランスペアレントな基板2上に配置されるいくつかの「ワイヤ」3を有する。基板は、ガラス、シリカ又は例えばアクリルガラス、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等の他の同様の材料から作られることができる。十分にトランスペアレントであるために、材料は、10―4より小さい虚数部を有する屈折率を有するべきである。ワイヤは、所望の構造、すなわち複数の開口4を得るようにエッチングされ又はメッキされる、例えば金、アルミニウム、銀、クロミウム等の金属によって形成されることができる。このようなワイヤ及びワイヤグリッドの形成は従来技術において知られており、例として国際公開第2006/136991号パンフレットを参照されたい。
【0032】
複数の開口4が、ワイヤ3の間に形成される。開口は、第1の面内方向においてサブ回折限界寸法を有する。この第1の面内寸法は、励起放射線の有効波長の半分より小さい。水(n=1.3)が開口内に存在し、励起放射線が、真空中で633nmの波長を有する場合、有効波長は、487nmであり、開口の第1の面内寸法は、243nmである有効波長の半分より小さい。第1の面内寸法は、有効波長の0.25倍すなわち121nmより小さくてもよい。第1の面内寸法は、有効波長の0.2倍すなわち97nmより小さくてもよい。第1の面内寸法は、有効波長の0.15倍すなわち73nmより小さくてもよい。開口の第2の面内寸法は、有効波長の少なくとも0.5倍すなわち少なくとも243nmのような有効波長の半分より大きい。第2の面内寸法は、有効波長の10乃至100倍すなわち4.9乃至49μmでありうる。第2の面内寸法は、有効波長の100乃至1000倍すなわち49乃至490μmでありうる。第2の面内寸法は、有効波長の少なくとも1000倍すなわち少なくとも490μmでありうる。
【0033】
アナライト流体5は、バイオセンサの開口に導入されることができる。アナライトは、励起に応じて電磁放射線を放出することが可能である発光団又は蛍光団8の標識を具えるターゲット分子7を有することができる。
【0034】
基板2は、ターゲット分子7に対する親和性を呈し、開口の底部すなわち基板側で前記基板2の表面に固定化される、捕捉分子又はリガンド6を備えることができる。ターゲット分子7がリガンド6の十分近くにくると、ターゲット分子は、リガンドによって捕えられ、リガンド6、ターゲット分子7及び蛍光団8を含む会合体9を形成する。ターゲット分子及びそれに付着される標識又は蛍光団は、開口4の基板側に近い位置に固定化される。
【0035】
バイオセンサ1は、例えば約700nmの波長の光を有する外部放射線源からの励起放射線10に露呈される。例えばマイクロ波、赤外光、近赤外(NIR)光、可視光、紫外光、X線等の他の波長の放射線も同様に使用されることができる。
【0036】
円偏光の場合、励起放射線は、(約)50%のT偏光された放射線及び(約)50%のR偏光された放射線に分解されることができる。結果として、励起放射線の(約)50%は、実質的に透過され、励起放射線の他の(約)50%は、指数関数的に崩壊し、基本的に透過されないエバネセント場を開口内に生成する。従って、ワイヤグリッドのサンプルファセットから間隔をおいて配置される位置に関する励起光の実質的な抑制は、光が基本的にR偏光されることを必要とする。
【0037】
バイオセンサは、反射モードで動作されることができる。バイオセンサは、開口の基板端部の方へ向けられる励起放射線10に露呈される。
【0038】
基板側と隣接して固定化される蛍光団8を含む会合体9は、励起エネルギーを吸収し、遷移双極子モーメントの方向に依存して、全方向に蛍光X線を放出する。蛍光は、矢印11a及び11bによって示されるように、いくつかの方向においてある程度顕著である。放出された放射線の部分11aは、基板2の下に配置される検出器12の方へ向けられ、他方、他の部分11bは、開口のアナライト側の方へ向けられる。
【0039】
適切に偏光された励起光が使用される場合でも、励起光のごくわずかな割合η(上述したような一般的な開口の場合、透過されるR偏光励起光は、入射R偏光励起光10の1/1000である)が、開口によって透過される。この透過される割合ηは、開口のアナライト側で、流体5に存在する蛍光団8によって吸収され、このような蛍光団を励起して、矢印14a及び14bによって示されるような放射線を放出することができる。放出された放射線は、概して、T及びR偏光成分を有する。流体は、蛍光団8を備える自由ターゲット分子7及び自由蛍光団8を有することができる。矢印14aによって示される放射線の部分は、開口を通り抜け、T偏光されたこのような放射線の部分は、R偏光成分と対照的に、開口によって透過され、不所望のバックグラウンド放射線を生じさせる。
【0040】
リガンド6に結合されない大量の外部の蛍光団8が、開口のアナライト側において流体5中に存在する場合、このようなバックグラウンド放射線は大きい。このような外部蛍光団は、リンスによって低減されることができるが、リンスは、例えばリアルタイム測定中に行うことができない。
【0041】
なお、一般に、アナライト側の流体5に存在する蛍光団からの、基板側の開口を通過する放射線14aの最も多くの部分は、T偏光である。開口を通る放射線14aの約0.5*ηである小さい割合が、R偏光された光である。
【0042】
偏光フィルタ33は、検出器12の前に配置される。偏光フィルタは、高い抑制を有し、例えばT偏光の場合の10,000より大きい、開口の1/ηに等しい又はそれより良い抑制である。こうして、流体6に存在する蛍光団から放射線14aの大部分は、フィルタ33によって阻止される。こうして、バックグラウンド放射線は、フィルタ33の抑制に依存して0.5*ηとηの間のファクタによって低減され、これは実質的な低減である。有用な放射線すなわち検出されるべき放射線11aは更に、ほんのわずかなファクタのみを伴って、低減される。こうして、0.5/ηと1/ηとの間の信号対バックグラウンド比率の改善が、フィルタ33によって得られる。
【0043】
フィルタ33は、前記ワイヤグリッドの減衰ファクタηと少なくとも同じ減衰ファクタを有することができるが、約10ηより大きい減衰ファクタを有することもできる。このような偏光フィルタは、例えば100000の一般的な減衰ファクタを有するGlanレーザ偏光器のように、商業的に入手可能である。
【0044】
偏光フィルタ33はバイオセンサ1と同様のワイヤグリッドでありえ、その場合、偏光フィルタ33は、ワイヤグリッドと同じ抑制ηを有する。この場合、抑制は、理論的に最大限に得られる改良の50%だけである。
【0045】
バックグラウンド放射線の他の低減は、R偏光された励起放射線を使用することによって得られることができる。この場合、励起放射線は、開口を通る際に前記減衰ファクタηによって減衰され、これは、検出器12に達するバックグラウンド放射線が、フィルタ33の減衰ファクタに依存して、0.5*η2乃至η2のファクタによって、すなわち上述したケースにおいては500,000のファクタよって、低減される。
【0046】
同じ偏光フィルタ33は、図1の破線33aによって示されるように、励起放射線のために及び検出器へのバックグラウンド放射線を阻止するために、という両方の目的で使用されることができる。
【0047】
基板2及びワイヤグリッドから反射される励起放射線もまた、バックグラウンド放射線として検出器に更に達する。このような励起バックグラウンド放射線は、例えば蛍光放出された放射線のみを通すフィルタのような、異なる手段によって低減されることができる。励起放射線は更に、ある角度でバイオセンサの方へ向けられることができ、それにより、反射された放射線は、検出器に達しない。この場合、検出器の方へ向けられる散乱された励起放射線は、蛍光X線を透過し及び励起放射線を阻止する波長フィルタ37によって除去されることができる。
【0048】
図2は、例えばアルミニウム、金、銀、クロミウム等の、金属のワイヤグリッド3を備えるガラスの基板2を有する実施例を開示している。ワイヤグリッドは、例えば70nmのような、回折限界幅270nmより小さい第1の面内寸法(幅)を有するスリットの形の開口を有する。スリットは、例えば1mmのような、回折限界幅より大きい第2の面内寸法(長さ)を有する。蛍光団20を有するターゲット分子は、開口の基板端部において固定化され/結合し、他の蛍光団21は、開口のアナライト端部に存在する流体5中に存在する。
【0049】
矢印10bによって示される、例えば約700nmの真空波長を有する光のような励起放射線が、光源からダイクロイックミラー31の方へ向けられる。ダイクロイックミラー31からの励起放射線は、前記偏光フィルタ33を通り、偏光された励起放射線10bをバイオセンサ面に向けてフォーカスするためにレンズ32に入る。
【0050】
励起放射線は、放射線を放出するように、蛍光団に影響を与える。開口の基板側に存在する蛍光団20から放出された放射線20aは、レンズ32を通り、R偏光された放射線20bだけを通す偏光フィルタ33を通る。通過された放射線20bは、レンズ34及び検出器22の方へ、ダイクロイックミラー31によって反射される。
【0051】
開口の基板側におけるR偏光された励起放射線10bは、指数関数的な崩壊を有する開口内のエバネセント場を形成する。励起放射線は、前記減衰ファクタηによって減衰され、励起放射線のごくわずかな割合だけが、開口のアナライト側で蛍光団21に達する。蛍光団21は、放射線21aを放出し、それは、開口を通り、レンズ32及び偏光フィルタ33に達する。蛍光団21からの放射線のT偏光成分21bは、開口を通るが、偏光フィルタ33によって阻止される。蛍光団21からの放射線のR偏光成分は、開口を通るとき、前記減衰ファクタηによって減衰され、レンズ32及び偏光フィルタ33を通り、ダイクロイックミラー31によってレンズ34及び検出器22の方へ向けられる。こうして、蛍光団21からのバックグラウンド放射線は、偏光フィルタ33の無い状況と比較して、ファクタη2によって減衰される。
【0052】
偏光フィルタ33は、開口のアナライト側において励起放射線のレベルを測定することによって、バイオセンサのセットアップ時にワイヤグリッドとそろえられることができる。このように測定された励起放射線レベルが最小値であるとき、偏光フィルタ33は、ワイヤグリッドとそろえられており、これは、偏光フィルタが、ワイヤグリッドに対して垂直な偏光を有する放射線のみを通す。
【0053】
偏光フィルタを回転させることによって、バックグラウンド低減が可変にされることができる。これは、外部偏光フィルタの向きが回転されることができることにより、バックグラウンドを抑制するだけでなく、更に、バックグラウンドを測定し、結合された蛍光団の偏光状態を決定することを可能にするので、柔軟性を改善する。
【0054】
図3は、偏光フィルタ24が、蛍光団によって放出される放射線によってのみ通過される他の実施例を開示している。この例において、偏光フィルタ24は、例えば100nmより大きい、より大きいストークスシフトを有する蛍光団に関連しうる励起放射線に対してトランスペアレントである必要はない。励起放射線は、円偏光を有することができる。代替として、励起放射線は、直線偏光された放射線でありえ、その場合、偏光は、上述したようにそろえられるべきである。
【0055】
図4は、図3の実施例の偏光フィルタ24が偏光ビームスプリッタ35と置き換えられる他の実施例を開示している。偏光ビームスプリッタ35は、R偏光放射線20bを、レンズ34及び検出器22へ通過させ、偏光ビームスプリッタ35は、T偏光放射線20c及び21bを、第2のレンズ36及び第2の検出器23の方へ向ける。こうして、バックグラウンド信号が評価されることができる。
【0056】
図5は、例えば紫外光、可視光又は赤外光を含む外部放射線源からの励起放射線10に露呈されるバイオセンサ1の他の実施例を示している。放射線源は、検出装置30に含まれており、検出装置30は、上述したバイオセンサ1とは別である。
【0057】
本実施例において、例えば1又は複数のLEDである非偏光の光源が使用される。このような光源は、励起放射線のより大きいパワーを放出することができ、レーザ光源より非常に安価である。
【0058】
光源ユニット40は、630nmの波長付近の放射線を放出する1又は複数のLED41、レンズ42、及び励起光を通過させ、蛍光標識の放出帯域及び放出フィルタ54の通過帯域に重なる光を除去する通過フィルタ43を有する。こうして、フィルタは、一般に20乃至30nmの幅である通過帯域を有することができ、蛍光標識の吸収帯域又は励起帯域と重なる光10を透過する。これらのLED用の適切な通過帯域波長レンジの例は、620乃至650nmである。適切な通過フィルタは、Omega Optical,Incから入手可能な3RD Millenium620―650フィルタである。
【0059】
光は、或る角度で基板側からバイオセンサの方へ向けられ、光は、光ビーム15によって示されるように、ワイヤグリッドによって部分的に反射される。こうして、実質的に、励起光は、センサ71に達しない。励起光のごくわずかな割合だけが、破線16によって示されるように、センサ71の方へ向けられる。
【0060】
イメージングブロック50は、バイオセンサの後ろ側において、バイオセンサにほぼ垂直な角度で配置される。イメージングブロック50は、偏光板53及び1又は複数の放出フィルタ54を介して、検出器71の方へ放出放射線17を向けるために第1のレンズ51及び第2のレンズ52を有する。放出フィルタは、放出放射線17を通過させ、励起放射線16を阻止する。例えば、それぞれ700nm及び650nmの波長付近を中心とする約50nmのスペクトル幅を有する放出スペクトルを有するatto680染料又はFluor633染料のような蛍光標識の場合、放出フィルタ54について適切な透過波長は、例えば665nmの最小透過波長を有するOmega Optical,Incから入手可能な695AF55EmitterXF3076フィルタのような、660nm又はそれより大きい最小透過波長を有する。
【0061】
検出器71は、CCD又はCMOS検出器を含むカメラでありうる。他の代替例は以下である。
【0062】
非偏光の光の場合、励起放射線は、T及びR偏光された放射線に分解されることができる。その結果、励起放射線の約半分は、ワイヤグリッドを通して実質的に透過され、励起放射線の他の半分は、指数関数的に崩壊する、基本的に透過されないエバネセント場を開口内に生成する。R偏光された放射線のごくわずかな割合だけが、開口を通過する。こうして、ワイヤグリッドは、実質的に偏光フィルタとして動作する。
【0063】
ワイヤグリッドを通る放射線とワイヤグリッドに当たる放射線との間の比率は、消光レートと呼ばれ、一般的なワイヤグリッドの場合、R偏光された放射線に関して一般に約0.001である。
【0064】
放射線は、蛍光X線を放出するために、蛍光標識を励起する。蛍光団の集合について、標識は、励起放射線偏光と同じ偏光の約75%を放出することができる。
【0065】
開口の基板端部と隣り合って開口内に位置する蛍光標識61は、T及びR偏光を有する励起放射線によって励起される。ここで、Tは、通常、非偏光の励起光の場合、Rにほぼ等しい。励起放射線全体は、T+Eであり、これは、標識からの蛍光放出を生じさせる。放出は、すべての方向にあり、50%が、検出器の方へ向けられるものとする。
【0066】
バイオセンサの前側すなわちサンプル側と隣り合う開口の外側に位置する蛍光標識62は、ほぼ減衰されてワイヤグリッドを通る励起光のT成分によって励起される。加えて、励起光のR成分は、消光ファクタnによって減衰される。こうして、T成分及びR成分は、放出放射線を生じさせる。この放出は、すべての方向にあり、50%が、開口に再び入り検出器に向かうものとする。しかしながら、R成分は、消光ファクタnによって減衰される。最後に、偏光フィルタは、ファクタNによってT成分を低減する。偏光フィルタの後に、標識61及び62から生じる検出される蛍光の間の比率は、以下の通りである:
(N+1)/[(N*3/4+n*1/4)+n*(n*3/4+N*1/4)]
N=nとすると、比率は1/nであり、これは、本発明の第1の実施例が、ワイヤグリッドの消光比と同様のバックグラウンド抑制をもたらすことを示す。N<<nである場合、比率は約4/nである。ワイヤグリッドの典型的な消光比は、n=0.001である。
【0067】
偏光フィルタ53は、少なくとも前記ワイヤグリッドの消光ファクタnと同じ消光ファクタNを有することができるが、約0.1*nより小さい消滅ファクタを有することもできる。このような偏光フィルタは、商業的に入手可能であり、例えば10−5の一般的な消光ファクタを有するGlanレーザ偏光板である。
【0068】
偏光フィルタ53は、ワイヤグリッド1と同様のワイヤグリッドでありえ、その場合、偏光フィルタ53は、ワイヤグリッドと同様の消光ファクタnを有しうる。
【0069】
基板2及びワイヤグリッドから散乱される励起放射線もまた、バックグラウンド放射線として検出器に達する。このような励起バックグラウンド放射線は、放出フィルタ54によって低減される。放出フィルタ54は、放出波長より短い波長を有する光を減衰させ、ゆえに、本質的に励起光を阻止する。
【0070】
図5による実施例は、反射モードで動作する。光源及び検出器は、両方とも、バイオセンサの後ろ側に配置され、検出されるべき流体は、基板上のワイヤの反対側にある。光は、検出器の方にではなく他の方向に反射されるようにするために、第1のレンズ51の開口数より大きい角度を有する基板に向けられる。
【0071】
図6は、ワイヤグリッドが第1の実施例と同じ開口を有し、透過モードで動作する他の実施例を開示している。光源は、バイオセンサの前側に配置され、検出器は、バイオセンサの後側に配置される。動作は、図5による実施例と同様である。
【0072】
LED41によって放出される光は、レンズ42によってフォーカスされ、通過フィルタ43を通った後、グリッドの開口又は複数の開口を照明する。T偏光を有する励起光は、本質的に減衰されずに開口を通過し、他方、R偏光を有する励起光は、実質的に阻止される。
【0073】
開口を通過する励起光は、本質的にT偏光された励起光であり、T偏光された励起光は、偏光フィルタ53によって実質的に阻止される。偏光フィルタ53をなお通過し、消光レートNによって減衰される任意のT偏光された励起光、及びワイヤグリッドをなお通過し、消光レートnによって減衰される任意のR偏光された励起光は、検出器71に達する前に、いくつかのカスケードされたフィルタを有しうる通過フィルタ54によって阻止される。
【0074】
開口の基板端部に位置する蛍光標識61は、励起光のT成分によってのみ実質的に励起され、これは、蛍光標識61が、図5の第1の実施例の放出放射線の約半分を放出することを意味する。
【0075】
開口のサンプル端部と隣り合って開口の外側に位置するバックグラウンド標識62は、放出放射線を放出する。T成分は通過し、R成分は、消光ファクタnによって低減される。
【0076】
こうして、検出器に達する基板端部標識61及びサンプル端部標識62の放出の間の比率は、以下の通りである:
(N*3/4+1/4+n*3/4+N*n*1/4)/(N+n)
N=n及びn<<1(n=0.001の場合の一般的な値)の場合、比率は約1/(8*n)である。n<<1及びN<<n(すなわちワイヤグリッドより実質的に小さい消光比を有する偏光板53である)の場合、比率は約1/(4*n)である。
【0077】
別の実施例において、励起放射線は、図7に示されるように、基板に本質的に平行なワイヤグリッドに向けられる。ダイクロイックミラー91が、例えばLED光の光路に配置され、基板の方へ垂直に光を向けなおす。ダイクロイックミラーは、波長620乃至650nmの励起光を反射するように設計され、670nmより大きい波長の放出光を通す。こうして、放出フィルタ54は、図7に示されるように省かれてもよいが、ダイクロイックミラーが、なお励起光のごくわずかな割合を通す場合、放出フィルタ54が含められることができる。
【0078】
偏光フィルタ53は、例えば、サンプル端部(すなわち上部の流体を介して)からワイヤグリッドを照明し、検出器71上のパワーを最小にすることによって、バイオセンサのセットアップ時にワイヤグリッドとそろえられることができる。このように測定されたパワーが最小である場合、偏光フィルタ53は、ワイヤグリッドとそろえられ、すなわちワイヤグリッドに対して垂直に配置され、これは、偏光フィルタが、ワイヤグリッドの透過面と垂直なR偏光を有する放射線のみを通すことを意味する。
【0079】
偏光フィルタを回転させることによって、バックグラウンド低減は可変にされることができる。これは、外部偏光フィルタの向きが回転されることができることにより、バックグラウンドを抑制するだけでなく、バックグラウンドを測定し、結合された蛍光団の偏光状態を決定することを可能にするので、柔軟性を改善する。
【0080】
図8は、偏光フィルタ93が、図5の実施例と比較して他の位置に、すなわちイメージングブロック50と基板2との間に配置される他の実施例を開示している。加えて、偏光フィルタ93は、光ユニット40と基板との間に配置され、それにより、LED41からの光は、基板に達する前に、偏光フィルタ93を通る。こうして、LEDから基板への励起光及び蛍光標識からの放出光は、同じ偏光フィルタ93を通る。偏光フィルタは、非偏光である励起光が偏光フィルタ93を通るような位置に配置され、偏光フィルタ93は、R偏光された放射線を通すが、10−3乃至10−6でありうるファクタNによって、T偏光された照射を減衰させる。開口の基板端部に位置する蛍光標識61及び開口のサンプル端部に位置する蛍光標識62は、放出放射線を放出する。R成分は、開口を通過する際、ファクタnによって更に減衰され、T成分は、偏光フィルタを通過する際、ファクタNによって減衰される。偏光フィルタ後の標識61及び標識62からの放出放射線の間の比率は、以下の通りである:
(3/4+N*1/4)+(N*N*3/4+N*1/4)/
(n*n*3/4+N*n*1/4)+(N*N*3/4+n*N*1/4)
N=nの場合、比率は3/(8*n*n)である。N<<nの場合、比率は約1/(n*n)である。
【0081】
偏光フィルタ93は、ワイヤグリッドのそれに対して垂直な偏光方向を有して配置される。偏光フィルタ93がワイヤグリッドである場合、フィルタのグリッド方向は、ワイヤグリッドのグリッド方向に対して垂直であるべきである。
【0082】
図9に示すように、図7の実施例の偏光フィルタ53は、偏光ビームスプリッタ92と置き換えられることができる。偏光ビームスプリッタ92は、R偏光された放射線18を検出器71に通し、偏光ビームスプリッタ92は、T偏光された放射線19を第2の検出器94の方へ向ける。こうして、バックグラウンド信号が、測定されることができる。偏光ビームスプリッタ92は、図1及び図2による実施例ののように、偏光フィルタ53と置き換わることができる。
【0083】
図10は、図7又は図9と同様の他の実施例を示しており、この例において、偏光フィルタは、図8の実施例と同じ位置に、すなわち基板に近いところに、配置される。こうして、非偏光の光源41からの励起光は、ダイクロイックミラー91の方へ向けられ、偏光フィルタ93を介して基板の方へ反射される。偏光フィルタ93は、実質的に、R偏光された放射線のみを通す。励起放射線は、蛍光団標識61から、偏光フィルタ93を通過し、ダイクロイックミラー91を通過して、検出器71に入る蛍光放出放射線、及び蛍光団標識62から、開口、偏光フィルタ93、ダイクロイックミラー91を通過して、検出器71に入る蛍光放出放射線を生じさせる。蛍光標識61及び62からの放出放射線の間の比率の算出は、図8の実施例の場合と同じである。
【0084】
上述の実施例において、簡素であり安価な構造のワイヤグリッドバイオセンサが使用されることができ、これは、ワイヤグリッドが使い捨て可能でありえることを意味する。
【0085】
偏光フィルタは、バイオセンサの外側に配置され、数回使用されることができる。偏光フィルタは、検査されるべきアナライトとの接触なしに配置される。偏光フィルタは、常に、トランスペアレントな基板とセンサとの間に配置される。こうして、より用途が広い偏光フィルタが使用されることができ、それにより、解析当たりの総コストを実質的に上げることなく、非常に大きいバックグラウンド放射線減衰をもたらす。
【0086】
光源ユニット40及びイメージングブロック50のそれぞれ異なる素子は、上述した以外の別の順序で配置されることができる。こうして、励起放射線通過フィルタ43は、光源41とレンズ42との間に配置されることができる。図7の実施例において、ダイクロイックミラーは、通過フィルタ43の動作を実施するように配置されることができ、パスフィルタ43は、余分になって、省かれることができる。イメージングブロック50において、素子の順序は、異なってもよい。例えば、偏光フィルタは、基板と検出器71との間の任意の位置に配置されることができる。
【0087】
図5による実施例は、以下の特性を有するテスト環境において使用される:
【0088】
バックグラウンド抑制を示すために、標識化されたタンパク質の蜂巣模様を有するサンプルが、ワイヤグリッド上でSiO2スペーサ材料のチェスボードパターンをスパッタリングし、開口4と重なり、スペーサ材料によってカバーされないトランスペアレントな基板2の部分上に、Fluor633染料により標識化されたタンパク質を固定化することによって、製造された。製造されたサンプル上に、例えばAtto-Tec GmbHから入手可能なatto680染料である例えば4.5マイクロモルの染料溶液のような、非常に高い濃度で満たされた厚さ0.5mmのハイブリダイゼーションチャンバが、与えられた。これらのサンプルは、620から650nmの間の励起波長を制限するためにスペクトルに関してフィルタリングされる4つの赤色LEDを使用して、図1のセットアップと同様にセットアップにおいて特徴づけられる。偏光器の透過軸を回転させることによって、検出ボリュームを、本質的にエバネセント又は近距離場から、本質的に完全なハイブリダイゼーションチャンバに、切り替えることが可能であった。
【0089】
図11は、測定された蛍光画像を示す。左は、偏光器がワイヤグリッドの透過軸に平行である場合の、右は、偏光器がワイヤグリッドの透過軸に直交する場合の、測定された蛍光画像が示されている。検出ボリュームは、本質的には開口の基板端部における標識化されたタンパク質、及びわずか20―30nmの高さを有する染料溶液の小さいエバネセントボリュームにのみ制限される。左の画像の積分時間は、右の画像より約500倍小さい。図11から、ワイヤグリッド上の蛍光流体によって生成されるバックグラウンドが効率的に抑制されることができることが明らかに分かる。左の画像の積分時間が、約500倍小さいという事実は、信号より実質的に大きいバックグラウンド蛍光を抑制することが可能であることを明らかに示す。
【0090】
更に、図5による実施例において、ワイヤグリッドの暗視野照明が使用され、その場合、入射光の入射角が、検出器上のイメージングのために使用される収集レンズの開口数に一致する角度より大きい。このように、鏡面反射される光は、検出器上にイメージングされない。
【0091】
本実施例は、以下の利点の1又は複数を有する:
【0092】
励起源の偏光軸とワイヤグリッドの透過軸との間の厳密なアライメントが、もはや必要とされない。上述の実施例において、ワイヤ間のスペースに純粋なエバネセント場を生成するために、光源の偏光軸が、ワイヤグリッドの透過軸と直交するようにそろえられなければならない。
【0093】
レーザは、非偏光の光源より一般に高価である。蛍光のようなアプリケーションの場合、標識分子の吸収帯域は、非常に広く、これは、LEDの使用を可能にする。LEDは、それらが実質的に低いコストでレーザと同様のパワーレベルを提供するので、特に魅力的である。更に、LEDの光学パワーは、将来、実質的に増加することが予測される。
【0094】
一般的なレーザの偏光純度は、100:1であり、他方、ワイヤグリッドバイオセンサ概念において使用されるワイヤグリッドの一般的な消光は、1000より良好である。これは、各レーザが、ワイヤグリッドの消光に等しい又はよりよい消光を有する専用の偏光器を必要とすることを意味する。
【0095】
レーザの長いコヒーレンス長は、スペックルを意味し、これは、照明の均一性を制限する。本実施例において、例えば1nmより大きいバンド幅の低いコヒーレンス長を有する光源が、使用される。
【0096】
上述の実施例は、例えば高次数を有するDNAハイブリダイゼーションアッセイのように、例えば高いバックグラウンド環境の測定に必要とされる高い表面特異性に関する測定のための光学バイオセンサのように、さまざまな異なるアプリケーションにおいて使用されることができる。
【0097】
上述の実施例は、顕微鏡として使用されることができ、その場合、センサ71は、ユーザの目と本質的に置き換えられる。
【0098】
本発明は、特定の実施例に関して上述されているが、ここに記述された特定の形に制限されることを意図しない。むしろ、本発明は、添付の請求項によってのみ制限され、特定の上述の実施例以外の他の実施例が、これらの添付の請求項の範囲内で等しく実現可能である。
【0099】
請求項において、「有する、含む」なる語は、他の構成要素又はステップの存在を除外しない。更に、複数の手段、構成要素又は方法ステップが、個別に列挙されているが、例えば単一のユニット又はプロセッサによって実現されることができる。加えて、個別のフィーチャは、それぞれ異なる請求項に含められることができるが、これらは、おそらく有利に組み合わせられることができ、それぞれ異なる請求項に含めることは、フィーチャの組み合わせが実現可能でなく及び/又は有利でないことを示さない。加えて、単数の言及は、複数性を除外しない。不定冠詞及び「第1」、「第2」等は、複数性を除外しない。請求項における参照符号は、例示を明確にするためだけに与えられており、いかなる形であれ請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナライト流体に存在する発光団によって放出される放射線をモニタする装置であって、
トランスペアレントな材料の基板上に配され、前記アナライト流体で満たされる少なくとも1つの開口を形成する少なくとも1つの非トランスペアレントな材料を有するバイオセンサであって、前記開口が、前記バイオセンサの放射線の有効波長の半分より小さい第1の面内寸法及び前記バイオセンサの放射線の有効波長の半分より大きい第2の面内寸法を有し、透過面を有する、バイオセンサと、
前記バイオセンサの前記アナライト流体に存在する発光団を励起するための励起源と、
励起に応じて前記発光団によって放出される放射線を検出する検出器と、
前記バイオセンサ及び前記検出器の間に配される偏光フィルタと、
を有する装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記バイオセンサの基板側に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記励起源は、楕円偏光、円偏光又は直線偏光を含む偏光光のような偏光光を放出する光源であり、又は前記励起源は、非偏光の光を放出する光源である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記偏光フィルタは、前記開口の透過面と平行な電界を有する放射線を実質的に減衰させるために配される、請求項1、2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記偏光フィルタは、回転可能である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記光源は、前記発光団の励起のための吸収波長帯域に対応する波長通過帯域を有する放射線を通過させ、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を阻止する帯域通過フィルタを有する、請求項3、4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を通過させ、前記帯域通過フィルタによって通過される放射線を阻止する波長通過フィルタが、前記検出器の前に配される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記偏光フィルタは、前記開口の透過面と直交する偏光面を有する放射線を、前記検出器の方へ通過させ、前記開口の透過面と平行な偏光を有する放射線を、第2の検出器の方へ反射し又は阻止する偏光ビームスプリッタを有し、又は
前記偏光フィルタは、前記バイオセンサの方へ前記励起放射線を向け、前記検出器へ前記放出放射線を通過させるダイクロイックミラーを有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記光源からの放射線は、前記バイオセンサを照明する前に、前記偏光フィルタを通る、請求項3乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記光源は、前記バイオセンサの基板側に配され、前記検出は、反射モードで実施され、又は
前記光源は、前記バイオセンサの前記アナライト流体側に配され、前記検出は、透過モードで実施される、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は、例えば約1nmより大きい帯域幅を有し、低いコヒーレンス長を有する光を放出する、請求項3乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、アナライト流体を有し、前記アナライトは、前記開口内に含まれる媒体中でターゲット分子及び蛍光団のような発光団を有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
捕捉分子が、前記開口の基板側の部分に隣り合って配され、前記捕捉分子は、前記ターゲット分子及び発光団との会合体を形成する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記アナライト流体は、前記開口を含む基板の一方の側に配され、前記検出器及び前記偏光フィルタは、前記基板の反対側に配される、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項1】
アナライト流体に存在する発光団によって放出される放射線をモニタする装置であって、
トランスペアレントな材料の基板上に配され、前記アナライト流体で満たされる少なくとも1つの開口を形成する少なくとも1つの非トランスペアレントな材料を有するバイオセンサであって、前記開口が、前記バイオセンサの放射線の有効波長の半分より小さい第1の面内寸法及び前記バイオセンサの放射線の有効波長の半分より大きい第2の面内寸法を有し、透過面を有する、バイオセンサと、
前記バイオセンサの前記アナライト流体に存在する発光団を励起するための励起源と、
励起に応じて前記発光団によって放出される放射線を検出する検出器と、
前記バイオセンサ及び前記検出器の間に配される偏光フィルタと、
を有する装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記バイオセンサの基板側に配される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記励起源は、楕円偏光、円偏光又は直線偏光を含む偏光光のような偏光光を放出する光源であり、又は前記励起源は、非偏光の光を放出する光源である、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記偏光フィルタは、前記開口の透過面と平行な電界を有する放射線を実質的に減衰させるために配される、請求項1、2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記偏光フィルタは、回転可能である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記光源は、前記発光団の励起のための吸収波長帯域に対応する波長通過帯域を有する放射線を通過させ、前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を阻止する帯域通過フィルタを有する、請求項3、4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記発光団の放出波長に対応する波長を有する放射線を通過させ、前記帯域通過フィルタによって通過される放射線を阻止する波長通過フィルタが、前記検出器の前に配される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記偏光フィルタは、前記開口の透過面と直交する偏光面を有する放射線を、前記検出器の方へ通過させ、前記開口の透過面と平行な偏光を有する放射線を、第2の検出器の方へ反射し又は阻止する偏光ビームスプリッタを有し、又は
前記偏光フィルタは、前記バイオセンサの方へ前記励起放射線を向け、前記検出器へ前記放出放射線を通過させるダイクロイックミラーを有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記光源からの放射線は、前記バイオセンサを照明する前に、前記偏光フィルタを通る、請求項3乃至8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記光源は、前記バイオセンサの基板側に配され、前記検出は、反射モードで実施され、又は
前記光源は、前記バイオセンサの前記アナライト流体側に配され、前記検出は、透過モードで実施される、請求項3乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は、例えば約1nmより大きい帯域幅を有し、低いコヒーレンス長を有する光を放出する、請求項3乃至10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、アナライト流体を有し、前記アナライトは、前記開口内に含まれる媒体中でターゲット分子及び蛍光団のような発光団を有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
捕捉分子が、前記開口の基板側の部分に隣り合って配され、前記捕捉分子は、前記ターゲット分子及び発光団との会合体を形成する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記アナライト流体は、前記開口を含む基板の一方の側に配され、前記検出器及び前記偏光フィルタは、前記基板の反対側に配される、請求項12又は13に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−518391(P2010−518391A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548794(P2009−548794)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050503
【国際公開番号】WO2008/099339
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050503
【国際公開番号】WO2008/099339
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]