説明

ワイヤジャッキング装置

【課題】ワイヤにワイヤグリップ押し込み用スプリングの弾性力を超える上方への引き抜き力が作用しても、ワイヤがワイヤジャッキング装置から上方に引き抜かれるおそれを回避できるワイヤジャッキング装置の提供。
【解決手段】上部および下部ワイヤグリッピング装置1a、1bと油圧ジャッキ15とからなり、上部および下部ワイヤグリッピング装置1a、1bは、間隔をあけて設けたプレッシャープレート2とアンカーブロック3とリリースプレート4とベースプレート5を有し、アンカーブロック3のワイヤ貫通孔3a内に嵌め込まれるワイヤグリップ7を有し、プレッシャープレート2とリリースプレート4はクランピングシリンダ6により一体的に昇降し、プレッシャープレート2の下降によりワイヤグリップ7は、ワイヤ貫通孔3aに嵌め込まれてワイヤ10を把持し、リリースプレート4の上昇によりワイヤグリップ7が緩められてワイヤ10の把持が解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤジャッキング装置、特に、ワイヤに作用する引き抜き荷重によりワイヤが引き抜かれてしまうことを確実に防止することができるワイヤジャッキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物の吊り揚げ、吊り降しを行うワイヤジャッキング装置として、特許文献1(特許第2828430号公報)に開示されるものがある。以下、このワイヤジャッキング装置を従来ワイヤジャッキング装置といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図2は、従来ワイヤジャッキング装置を構成するワイヤグリッピング装置を示す一部省略断面図、図3はプレッシャープレートを示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C断面図、図4はワイヤグリップを示す斜視図、図5はワイヤグリップの作動態様を示す図であり、(a)はワイヤグリップが閉の状態を示す断面図、(b)はワイヤグリップが開の状態を示す断面図、図6はアンカーブロックを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、図7はリリースプレートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図、図8はアンカーベースプレートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D断面図、図9は従来ワイヤジャッキング装置を示す断面図である。
【0004】
先ず、ワイヤグリッピング装置について説明する。
【0005】
図2において、1は、ワイヤグリッピング装置、2は、プレッシャープレート、3は、アンカーブロック、4は、リリースプレート、5は、アンカーベースプレート、6は、クランピングシリンダ、7は、ワイヤグリップ、8は、連結棒、9は、スペーサブロックである。
【0006】
プレッシャープレート2、アンカーブロック3、リリースプレート4、アンカーベースプレート5は、垂直方向に複数条のPC鋼より線からなるワイヤ10(図2には、その中の一条を示している。)を貫通させる複数個のワイヤ貫通孔2a、3a、4a、5aを有している。
【0007】
クランピングシリンダ6は、アンカーブロック3にシリンダ11側が固定され、リリースプレート4にピストン12側が固定されている。ピストン12には、クランピングシリンダ用スプリング13が取り付けられている。クランピングシリンダ用スプリング13は、以下の機能を有している。
【0008】
クランピングシリンダ6は、この例では、3個設置されていて、これらのシリンダを同期して操作することにより、リリースプレート4をプレッシャープレート2と共に均一に昇降させるが、クランピングシリンダ用スプリング13を設けることにより、特に、下降操作がより確実に行える。
【0009】
ワイヤグリップ7は、アンカーブロック3のテ−パ状ワイヤ貫通孔3a内に上方から嵌まり込む。ワイヤグリップ7の頭部とプレッシャープレート2のワイヤ貫通孔2aとの間には、ワイヤ10を貫通させた状態でスプリング座17を介してワイヤグリップ押し込み用スプリング14が取り付けられ、ワイヤグリップ押し込み用スプリング14によってワイヤグリップ7がアンカーブロック3側に押り付けられるようになっている。ワイヤグリップ押し込み用スプリング14は、以下の機能を有している。
【0010】
ワイヤグリップ押し込み用スプリング14の弾性力により全てのワイヤグリップ7がアンカーブロック3のワイヤ貫通孔3a内に均等に入り込むので、全てのワイヤ10を常に均一に把持することができ、この結果、全てのワイヤ10に均一に引張力が作用する。ワイヤグリップ押し込み用スプリング14を設けないと、特定のワイヤグリップ7が先にワイヤ貫通孔3a内に入り込んだ場合、先にワイヤ貫通孔3a内に入り込んだワイヤグリップ7により把持されたワイヤ10に引っ張り荷重が集中して、ワイヤ10が切断するおそれがある。
【0011】
連結棒8は、アンカーブロック3の貫通孔3bを貫通し、プレッシャープレート2とリリースプレート4とを連結している。これによって、プレッシャープレート2とリリースプレート4とが一体的に上下移動する。
【0012】
スペーサブロック9は、リリースプレート4の貫通孔4bを貫通し、アンカーブロック3とアンカーベースプレート5とを間隔をあけて連結している。これによって、クランピングシリンダ6のピストン12の伸縮に伴って、リリースプレート4とプレッシャープレート2とが一体的に上下移動する。
【0013】
15は、油圧ジャッキであり、アンカーベースプレート5に取り付けられている。
【0014】
23は、プレッシャープレート2の上方に、支柱24により取り付けられたワイヤガイドである。
【0015】
次に、図3から図8を参照しながら、プレッシャープレート2、ワイヤグリップ7、アンカーブロック3、リリースプレート4、アンカーベースプレート5についてさらに説明する。
【0016】
図3(a)、(b)に示すように、プレッシャープレート2は、円盤状で、ワイヤ貫通孔2aが中心部に1個とそれを囲む一点鎖線で示す同心円上の位置に6個設けられている。プレッシャープレート2のワイヤ貫通孔2aの下端部の径口は広がっていて、この部分にワイヤ10の周囲に取り付けられたワイヤグリップ押し込み用スプリング14の上端部が入り込むようになっている。
【0017】
プレッシャープレート2には、ワイヤ貫通孔2aの外側の同心円上に3本の連結棒8をボルト・ナットによって固定するための貫通孔2dが形成されている。プレッシャープレート2には、この上方に取り付けられるワイヤガイド23をアンカーブロック3に支持する支柱24を貫通させる貫通孔(ここでは3個)2cが形成されている。
【0018】
図4に示すように、ワイヤグリップ7は、3個のジョウ7aとジョウ7aの上部周方向に設けた溝7bに嵌込んだゴム製のOリング16とから構成されている。Oリング16は、3個のジョウ7aが使用時に極端に偏らないように機能を有している。
【0019】
ワイヤグリップ7は、上広テーパ状に形成され、中心部には、ワイヤ10が貫通する貫通孔7cが形成されている。貫通孔7cの壁は、ワイヤ10を把持し易いようにネジ7dが形成されている。
【0020】
図5(a)に示すように、ワイヤグリップ7は、プレッシャープレート2を押し下げることによって、アンカーブロック3のテ−パ状ワイヤ貫通孔3aに上方から完全に嵌まり込んで閉の状態になり、ワイヤ10を完全に把持する。この状態で、ワイヤグリップ7の下部は、アンカーブロック3のワイヤ貫通孔3aから突出する。
【0021】
一方、図5(b)に示すように、リリースプレート4を引き上げると、リリースプレート4がワイヤ貫通孔3aから突出しているワイヤグリップ7の下部が持ち上げられる結果、ワイヤグリップ7とワイヤ貫通孔3aとの間に隙間を生じて、ワイヤグリップ7が開の状態になり、ワイヤ10の把持が解除される。
【0022】
このように、リリースプレート4にピストン12側が固定されたクランピングシリンダ6を駆動させて、連結棒8により連結されたプレッシャープレート2とリリースプレート4とを一体的に上下に移動させ、その上下移動によってプレッシャープレート2およびリリースプレート4に強制的な機能を発揮させて、ワイヤグリップ7の開閉が行われる。
【0023】
図6(a)、(b)に示すように、アンカーブロック3は、プレッシャープレート2のワイヤ貫通孔2aに対応した中心位置に1個の貫通孔3aが形成され、他の6個の貫通孔3aが一点鎖線で示す同心円上に形成されている。貫通孔3aは、上広テーパを呈し、ワイヤグリップ7が上方から嵌まり込むようになっている。
【0024】
貫通孔3aの外側の同心円上には、連結棒8を貫通させる貫通孔3bが3個設けられている。また、アンカーブロック3の平面は、円形形状部分を基盤としてその周面の3方に突出させた矩形形状部分を有し、3個のクランピングシリンダ6の取り付けを容易にしている。矩形形状部分の位置には、下面にスペーサブロック9を固定するボルト・ナットを挿入する貫通孔3cが形成されている。また、矩形形状の位置には、クランピングシリンダ6を支持するサポートブロック3fを固定するボルト孔3dが形成されている。
【0025】
図7(a)、(b)に示すように、リリースプレート4は、プレッシャープレート2、アンカーブロック3のワイヤ貫通孔2a、3aに対応した中心位置に1個の貫通孔4aが形成され、他の6個の貫通孔4aが一点鎖線で示す同心円上に形成されている。また、アンカーブロック3を貫通する連結棒8のボルト孔4cと、クランピングシリンダ6のピストン12側を固定するボルトのボルト孔4dが形成されている。また、リリースプレート4には、アンカーブロック3に上端が固定されたスペーサブロック9を貫通させる貫通孔4bが3個設けられている。
【0026】
図8(a)、(b)に示すように、アンカーベースプレート5は、プレッシャープレート2、アンカーブロック3、リリースプレート4の貫通孔2a、3a、4aに対応した中心位置に1個の貫通孔5aが形成され、他の6個の貫通孔5aが一点鎖線で示す同心円上に形成されている。また、アンカーベースプレート5には、アンカーブロック3の下面に上端が固定され、リリースプレート4を貫通したスペーサブロック9の下端を固定するボルトのボルト孔5bが3個設けられている。さらに、アンカーベースプレート5には、油圧ジャッキ15を固定するためのボルトのボルト孔5cが形成されている。
【0027】
次に、従来ワイヤジャッキング装置について説明する。
【0028】
図9に示すように、従来ワイヤジャッキング装置は、上述したワイヤグリッピング装置1をワイヤ10に沿って2個、間隔をあけて設けたものから構成されている。下部ワイヤグリッピング装置1bのアンカーベースプレート5は、油圧ジャッキ15のシリンダ21側に固定され、上部ワイヤグリッピング装置1aのアンカーベースプレート5は、油圧ジャッキ15のピストン20側に固定されている。油圧ジャッキ15は、対称位置に3個設置され、油圧系統により同期して駆動される。
【0029】
上述したように、上部および下部ワイヤグリッピング装置1a、1bの各々のプレッシャープレート2とリリースプレート4とは、アンカーブロック3を貫通した複数本の連結棒8により一体的に上下動するので、クランピングシリンダ6により、プレッシャープレート2とリリースプレート4とを同時に上下動させて、複数個のワイヤグリップ7を強制的にアンカーブロック3の貫通孔3aに嵌め込んだり、緩めたりすることによって、各ワイヤ10の把持または解放を同時に行うことができる。そして、この操作を上部および下部ワイヤグリッピング装置1a、1bについて交互に行い、ワイヤ10を把持した上部ワイヤグリッピング装置1aを油圧ジャッキ15により昇降させれば、ワイヤ10の先端に連結した重量物22の吊り揚げ、吊り降しが行える。
【0030】
なお、重量物22の吊り揚げによって、上部ワイヤグリッピング装置1aの上方からはワイヤ10が吊り揚げ高さに応じて繰り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特許第2828430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
上述のように、従来ワイヤジャッキング装置によれば、重量物22の吊り揚げ、吊り降しが確実に行えるが、以下のような問題があった。
【0033】
例えば、重量物22がワイヤ10に連結されていない場合には、上部ワイヤグリッピング装置1aから繰り出されたワイヤ10自身の重量によって、ワイヤ10が従来ワイヤジャッキング装置から抜け出るおそれがあった。すなわち、図5(a)の状態において、ワイヤ10にワイヤグリップ押し込み用スプリング14の弾性力を超える上方への引き抜き力が作用すると、アンカーブロック3のワイヤ貫通孔3a内のワイヤグリップ7が緩んで、ワイヤ10の上方への抜け出しを阻止する把持力がなくなりワイヤ10が従来ワイヤジャッキング装置から上方に引き抜かれてしまうおそれがあった。
【0034】
従って、この発明の目的は、従来ワイヤジャッキング装置において、ワイヤ10にワイヤグリップ押し込み用スプリング14の弾性力を超える上方への引き抜き力が作用しても、ワイヤ10が従来ワイヤジャッキング装置から上方に引き抜かれてしまうおそれを確実に回避することができるワイヤジャッキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とする。
【0036】
請求項1に記載の発明は、垂直方向に伸びるワイヤに沿って配される上部ワイヤグリッピング装置および下部ワイヤグリッピング装置と油圧ジャッキとからなり、前記上部および下部ワイヤグリッピング装置の各々は、前記ワイヤを貫通させるワイヤ貫通孔が形成された、それぞれ間隔をあけて配されたプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、前記アンカーブロックに対してシリンダ側が固定され、前記リリースプレートに対してピストン側が固定されたクランピングシリンダと、前記アンカーブロックの前記ワイヤ貫通孔に嵌め込まれ、前記プレッシャープレートの前記ワイヤ貫通孔の下端部にワイヤグリップ押し込み用スプリングを介して当接されるワイヤグリップと、前記プレッシャープレートと前記リリースプレートとの間に、前記アンカーブロックを貫通して固定された連結棒と、前記アンカーブロックと前記アンカーベースプレートとの間に、前記リリースプレートを貫通して固定されたスペーサブロックとを備え、前記油圧ジャッキは、前記下部ワイヤ用グリッピング装置の前記アンカーベースプレートと前記上部ワイヤ用グリッピング装置の前記アンカーベースプレートとの間に取り付けられているワイヤジャッキング装置において、前記プレッシャープレートに押し下げ力を常時付与するプレッシャープレート押し下げ用スプリングが設けられ、前記プレッシャープレート押し下げ用スプリングの弾性力は、前記ワイヤグリップ押し込み用スプリングの弾性力より大きいことに特徴を有するものである。
【0037】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のワイヤジャッキング装置において、前記上部ワイヤ用グリッピング装置における前記プレッシャープレートの上方に前記ワイヤをガイドするワイヤガイドが設けられ、前記プレッシャープレート押し下げ用スプリングは、前記プレッシャープレートと前記ワイヤガイドとの間の前記ワイヤの通路に取り付けられていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、従来ワイヤジャッキング装置において、ワイヤにワイヤグリップ押し込み用スプリングの弾性力を超える上方への引き抜き力が作用しても、ワイヤが従来ワイヤジャッキング装置から上方に引き抜かれてしまうおそれを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明のワイヤジャッキング装置を示す一部省略断面図である。
【図2】従来ワイヤジャッキング装置を構成するワイヤグリッピング装置を示す一部省略断面図である。
【図3】プレッシャープレートを示す図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、(a)のC−C断面図である。
【図4】ワイヤグリップを示す斜視図である。
【図5】ワイヤグリップの作動態様を示す図であり、(a)は、ワイヤグリップが閉の状態を示す断面図、(b)は、ワイヤグリップが開の状態を示す断面図である。
【図6】アンカーブロックを示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。
【図7】リリースプレートを示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、(a)のB−B断面図である。
【図8】アンカーベースプレートを示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、(a)のD−D断面図である。
【図9】従来ワイヤジャッキング装置を示す一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
この発明のワイヤジャッキング装置の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1は、この発明のワイヤジャッキング装置を示す一部省略断面図である。なお、図1において、図2から図9に示す番号と同一番号は、同一物を示し、説明は省略する。
【0042】
この発明のワイヤジャッキング装置は、図9に示される従来ワイヤジャッキング装置を構成する上部ワイヤグリッピング装置1aおよび下部ワイヤグリッピング装置1bのプレッシャープレート2とワイヤガイド23との間を貫通するワイヤ10の通路に、プレッシャープレート押し下げ用スプリング25を設けたものからなっている。
【0043】
プレッシャープレート押し下げ用スプリング25の弾性力は、ワイヤグリップ押し込み用スプリング14の弾性力より大きい。これによって、プレッシャープレート2には、常時、押し下げ力が付与されるので、例えば、重量物22がワイヤ10に連結されていない場合において、上部ワイヤグリッピング装置1aから繰り出されたワイヤ10自身の重量によって、ワイヤ10にこれを上方に引く抜き力が作用し、これによりアンカーブロック3のワイヤ貫通孔3a内のワイヤグリップ7が緩んで、ワイヤ10の上方への抜け出しを阻止する把持力がなくなりワイヤ10が上方に引き抜かれてしまうことを確実に回避することができる。
【0044】
なお、クランピングシリンダ6を加圧してプレッシャープレート2を押し下げてもワイヤグリップ7の緩みを回避することはできるが、クランピングシリンダ6を操作する油圧回路には、どうしても油漏れの問題が避けられず、長時間、確実にプレッシャープレート2を押し下げておけないおそれがある。
【0045】
プレッシャープレート押し下げ用スプリング25を設けることによって、ワイヤグリップ7を緩ませる際のリリースプレート4の押し上げ力が増大するが、これはクランピングシリンダ6の操作によって問題なく行える。
【0046】
プレッシャープレート押し下げ用スプリング25の設置箇所は、プレッシャープレート2に押し下げ力を付与することができる箇所であれば、プレッシャープレート2とワイヤガイド23との間を貫通するワイヤ10の通路に限定されない。
【0047】
以上のように、この発明によれば、プレッシャープレート2に押し下げ力を常時付与するプレッシャープレート押し下げ用スプリング25を設けることによって、ワイヤ10にワイヤグリップ押し込み用スプリング14の弾性力を超える上方への引き抜き力が作用しても、ワイヤ10がワイヤジャッキング装置から上方に引き抜かれてしまうおそれを確実に回避することができる。
【0048】
なお、プレッシャープレート押し下げ用スプリング25は、ワイヤ10毎に設けることができるので、ワイヤ10の本数にかかわらず同じスプリングを使用することができる。この結果、部品の共有化を図ることができる。
【0049】
また、ワイヤジャッキング装置の大型化によりワイヤ10の本数が増加した場合には、それに伴ってプレッシャープレート2も大型化するので、プレッシャープレート2に撓みが生じ、プレッシャープレート2の中央部と外周部とでのワイヤグリップ押し込み用スプリング14の縮み量のばらつきによりワイヤグリップ7の押し込み力が不均一になる。なお、プレッシャープレート2の撓みは、クランピングシリンダ6の操作によりある程度、矯正することはできるが限度がある。
【0050】
しかしながら、プレッシャープレート押し下げ用スプリング25を設けて、プレッシャープレート2に押し下げ力を作用させることによって、プレッシャープレート2の大型化に伴い生じる撓みを大幅に軽減することができ、この結果、ワイヤグリップ押し込み用スプリング14によるワイヤグリップ7の押し込み力を均一に維持することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:ワイヤグリッピング装置
1a:上部ワイヤグリッピング装置
1b:下部ワイヤグリッピング装置
2:プレッシャープレート
3:アンカーブロック
4:リリースプレート
5:アンカーベースプレート
6:クランピングシリンダ
7:ワイヤグリップ
8:連結棒
9: スペーサブロック
10:ワイヤ
11:シリンダ
12:ピストン
13:クランピングシリンダ用スプリング
14:ワイヤグリップ押し込み用スプリング
15:油圧ジャッキ
16:Oリング
17:スプリング座
20:ピストン
21:シリンダ
22:重量物
23:ワイヤガイド
24:支柱
25:プレッシャープレート押し下げ用スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に伸びるワイヤに沿って配される上部ワイヤグリッピング装置および下部ワイヤグリッピング装置と油圧ジャッキとからなり、前記上部および下部ワイヤグリッピング装置の各々は、前記ワイヤを貫通させるワイヤ貫通孔が形成された、それぞれ間隔をあけて配されたプレッシャープレート、アンカーブロック、リリースプレート、アンカーベースプレートと、前記アンカーブロックに対してシリンダ側が固定され、前記リリースプレートに対してピストン側が固定されたクランピングシリンダと、前記アンカーブロックの前記ワイヤ貫通孔に嵌め込まれ、前記プレッシャープレートの前記ワイヤ貫通孔の下端部にワイヤグリップ押し込み用スプリングを介して当接されるワイヤグリップと、前記プレッシャープレートと前記リリースプレートとの間に、前記アンカーブロックを貫通して固定された連結棒と、前記アンカーブロックと前記アンカーベースプレートとの間に、前記リリースプレートを貫通して固定されたスペーサブロックとを備え、前記油圧ジャッキは、前記下部ワイヤ用グリッピング装置の前記アンカーベースプレートと前記上部ワイヤ用グリッピング装置の前記アンカーベースプレートとの間に取り付けられているワイヤジャッキング装置において、
前記プレッシャープレートに押し下げ力を常時付与するプレッシャープレート押し下げ用スプリングが設けられ、前記プレッシャープレート押し下げ用スプリングの弾性力は、前記ワイヤグリップ押し込み用スプリングの弾性力より大きいことに特徴とするワイヤジャッキング装置。
【請求項2】
前記上部ワイヤ用グリッピング装置における前記プレッシャープレートの上方に前記ワイヤをガイドするワイヤガイドが設けられ、前記プレッシャープレート押し下げ用スプリングは、前記プレッシャープレートと前記ワイヤガイドとの間の前記ワイヤの通路に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のワイヤジャッキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−230910(P2011−230910A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104808(P2010−104808)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000204000)太平電業株式会社 (30)