説明

ワイヤハーネスのパネルへの取付構造

【課題】 車体等のパネルに設けられたパネル穴に容易に着脱できるワイヤハーネスの取付構造を提供する。
【解決手段】 ワイヤハーネス11の所定箇所に固定された複数のクランプ12の傘状止め部16がパネル14に設けられた複数のパネル穴15にそれぞれ係止されたワイヤハーネス11のパネル14への取付構造において、所要のクランプ12がワイヤハーネス11に、その傘状止め部16がパネル穴15に対して変位するように固定され、それにより各傘状止め部16がパネル穴15に対して偏心して係止されている。
【効果】 パネル穴15に係止されるクランプ12の傘状止め部の傘部分がパネル穴15より小さく、かつ所要のクランプ12がワイヤハーネス11に、その傘状止め部16がパネル穴15に対して変位するように固定され、それにより各傘状止め部16がパネル穴15に対して偏心して係止されているものなので、ワイヤハーネス11の着脱が容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車体等のパネルに設けられたパネル穴に容易に着脱できるワイヤハーネスの取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】ワイヤハーネスは複数のリード線を束ねたもので、これを車体等に取付けるには、図6に示すように、ワイヤハーネス11に弾性係止片26を有するクランプ22を所定間隔を開けて複数固定し、弾性係止片26を車体などのパネル14のパネル穴15にそれぞれ係止して行われている。通常、クランプ22はワイヤハーネス11にテープ13で巻かれて固定される。弾性係止片26をパネル穴15に係止するには、弾性係止片26の先端をパネル穴15に押当てると弾性係止片26の舌片27が狭まってパネル穴15を通過し、通過後舌片27がパネル穴15内で元の形状に広がってパネル穴15に係止される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この弾性係止片26をパネル穴15から取外すには、テープ13を切断してワイヤーハーネスをクランプ22より取外してから、図7() に示すように弾性係止片26の基部をペンチ28で狭めて引出す方法、又は図7() に示すように弾性係止片26の基部にアンカー29を設け、このアンカー29を指先きで狭めて引出す方法により行われており、前者はペンチ28を必要とし、又両者とも、テープ13を切断してワイヤーハーネスをクランプ22より取外さなければならず、又狭い場所では取外し作業が困難になるという問題がある。取外しが容易なワイヤハーネスのパネルへの取付構造は、近年の自動車やOA機器のリサイクル重視の観点からも強く求められている。本発明は、着脱が容易なワイヤハーネスのパネルへの取付構造の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、ワイヤハーネスの所定箇所に固定された複数のクランプの傘状止め部がパネルに設けられた複数のパネル穴にそれぞれ係止されたワイヤハーネスのパネルへの取付構造において、所要のクランプがワイヤハーネスに、その傘状止め部がパネル穴に対して変位するように固定され、それにより各傘状止め部がパネル穴に対して偏心して係止されていることを特徴とするワイヤハーネスのパネルへの取付構造である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、ワイヤハーネスが複数のリード線を束ねたもので、湾曲し易く、又多少の伸び縮みが可能な特性を有することを利用したワイヤハーネスのパネルへの取付構造である。以下に本発明を図を参照して具体的に説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの第1の実施形態を示す斜視図である。ワイヤハーネス11にクランプ12がテープ13巻きにより固定され、前記クランプ12にはパネル14のパネル穴15に係止される傘状止め部16が設けられている。この傘状止め部16の傘部分17はパネル穴15より小さく、軸を合わせれば、パネル穴15への出し入れは容易に行える。
【0006】図2 ()〜() は、本発明のワイヤハーネスのパネルへの取付構造の説明図である。図2() はワイヤハーネス11に固定されたクランプ12の傘状止め部16とパネル14のパネル穴15との位置関係を示す図である。クランプ12の傘状止め部A、B、C(16)は、その位置がパネル穴a、b、c(15)にそれぞれ対応するように、各々のクランプ12がワイヤハーネス11に固定されている。傘状止め部Dは、その位置がパネル穴dより若干パネル穴cの方向に変位するように、そのクランプ12がワイヤハーネス11に固定されている。つまり傘状止め部CとDの間隔tCDはパネル穴c、dの間隔pcdより若干(パネル穴の径程度)狭く、他の傘状止め部AとB、BとCの間隔tAB、tBCはパネル穴aとb、bとcの間隔pab、pbcとそれぞれ同じ間隔になっている。
【0007】図2() はワイヤハーネス11の傘状止め部A、B、Cが車体のパネル穴a、b、cに挿入され、傘状止め部Dがパネル穴dに挿入されていない状態の説明図である。傘状止め部CとDの間隔はパネル穴cとdの間隔より狭くなっているため、傘状止め部Dをパネル穴dに挿入するには、ワイヤハーネス11を傘状止め部D方向に引張りながら湾曲させて行う。
【0008】図2() はワイヤハーネス11の傘状止め部A、B、C、Dがパネル穴a、b、c、dに挿入された状態を示す。傘状止め部C、D間は間隔が狭いため、Cは左方向(D方向)にDは右方向(C方向)にそれぞれ偏心してパネル穴c、dに挿入されている。傘状止め部B、Aは、傘状止め部CとB、BとAの間隔が同じなので傘状止め部Cと同じ左方向に偏心している。このように傘状止め部A、B、C、Dはそれぞれパネル穴a、b、c、d内に偏心して挿入されているので、傘状止め部A、B、C、Dの傘部分はパネル穴a、b、c、dに引掛かって抜け出さない状態、つまり係止された状態になる。
【0009】図2() に示した状態のワイヤハーネス11をパネル穴15から外すには、先ずワイヤハーネス11を左方向(D方向)に引張りながら湾曲させて傘状止め部Dをパネル穴dから外し、次にワイヤハーネス11全体をパネル穴15の半径に相当する距離だけ右方向(A方向)に移動させると、傘状止め部16の傘部分はパネル穴15より小さいので、傘状止め部A、B、Cはパネル穴a、b、cから同時に抜け出て、ワイヤハーネス11はパネル穴15から容易に外される。
【0010】図3は、本発明の第2の実施形態を示す説明図である。このものは、傘状止め部CとDの間隔tCDはパネル穴cとdの間隔pcdより若干(パネル穴の径程度)広く、他の傘状止め部AとB、BとCの間隔tAB、tBCはパネル穴aとb、bとcの間隔pab、pbcとそれぞれ同じ間隔になっている。したがって、傘状止め部Dは左方向(Cと反対方向)に、傘状止め部CBAは右方向(Dと反対の方向)にそれぞれ偏心して挿入され、係止されている。このワイヤハーネス11の取外しは、傘状止め部Dを、ワイヤハーネス11を右方向(C方向)に押してパネル穴dから外し、次にワイヤハーネス11全体をパネル穴15の半径に相当する距離だけ左方向(D方向)に移動させると傘状止め部A、B、Cがパネル穴a、b、cから同時に外れる。
【0011】図4は、本発明の第3の実施形態を示す説明図である。このものは、傘状止め部CとD、AとBの間隔tCD、tABがパネル穴cとd、aとbの間隔pcd、pabよりそれぞれ若干(パネル穴の径程度)広くなっており、傘状止め部BとCの間隔tBCはパネル穴bとcの間隔pbcより若干狭くなっている。したがって、傘状止め部A、Cは右方向(A方向)に変位し、B、Dは左方向(D方向)に変位して、それぞれパネル穴a、c、b、dに係止されている。このワイヤハーネス11の取外しは、傘状止め部Dを、ワイヤハーネス11を右方向(C方向)に押してパネルdから外し、次に傘状止め部Cを、ワイヤハーネス11を左方向(D方向)に引張りながら湾曲させてパネル穴cから外し、以下同様にしてB、Aをパネル穴b、aから外して行う。
【0012】本発明において、傘状止め部の変位量はパネル穴の径程度である。ワイヤハーネスは湾曲し易いので、傘状止め部はその間隔が狭まるように変位させた方が係止がより確実に行われる。パネル穴の形状は円形に限らず、図5に示すような、四角、長穴、異径穴など任意である。傘状止め部の平面形状はパネル穴と相似形にしておくのが出し入れが容易に行えて望ましい。
【0013】以上、傘状止め部のパネル穴に対する位置の変位は、クランプのワイヤハーネスに固定する位置を変えて行ったが、傘状止め部の形成位置が異なるクランプを用い、クランプをワイヤハーネスの定位置に固定して変位させても良い。本発明の取付構造は、自動車のパネルへのワイヤハーネスの取付けだけでなく、複写機やコンピューターなどのOA機器のパネルへの取付けに対しても同様の効果が得られる。
【0014】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明の取付構造は、パネル穴に係止されるクランプの傘状止め部の傘部分がパネル穴より小さく、かつ所要のクランプがワイヤハーネスに、その傘状止め部がパネル穴に対して変位するように固定され、それにより各傘状止め部がパネル穴に対して偏心して係止されているものなので、ワイヤハーネスの着脱作業が容易に行え、従ってリサイクルにも有利であり、工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いるワイヤハーネスの斜視説明図である。
【図2】()〜() は本発明の取付構造の第1の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の取付構造の第2の実施形態を示す説明図である。
【図4】本発明の取付構造の第3の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明の取付構造におけるパネル穴の形状を示す図である。
【図6】従来の取付構造の部分説明図である。
【図7】従来の取付構造におけるワイヤハーネスの取外し方法の説明図である。
【符号の説明】
11……ワイヤハーネス
12、22クランプ
13……テープ
14……パネル
15……パネル穴
16……傘状止め部
17……傘部分
26……弾性係止片
27……舌片
28……ペンチ
29……アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワイヤハーネスの所定箇所に固定された複数のクランプの傘状止め部がパネルに設けられた複数のパネル穴にそれぞれ係止されたワイヤハーネスのパネルへの取付構造において、所要のクランプがワイヤハーネスに、その傘状止め部がパネル穴に対して変位するように固定され、それにより各傘状止め部がパネル穴に対して偏心して係止されていることを特徴とするワイヤハーネスのパネルへの取付構造。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平11−41761
【公開日】平成11年(1999)2月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−193862
【出願日】平成9年(1997)7月18日
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)近江電線株式会社 (571)