説明

ワイヤハーネスの保護構造

【課題】 別部品を要することなくコルゲートチューブとコネクタハウジングとの間における電線の露出部分をなくして電線への傷つきを防止する。
【解決手段】 ワイヤハーネスW/Hの端末部に外装されたコルゲートチューブ13は電線挿入部12a側の端末部に先端から軸線方向に向けて切り込んだ複数のスリット14を円周方向に間隔をあけて形成し、該スリット14により分割された小片部15を外方へ拡開すると共に各小片部15をコネクタハウジング12の背面部に被せるようにして装着している。また、コルゲートチューブ13は小片部15がコネクタハウジング12に被せられた状態で固定するため、他端と電線束11との間にテープTを巻き付けて位置決め固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの保護構造に関し、別部品を要することなくコネクタハウジングに導入される電線をコルゲートチューブで確実に保護することができるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車用のワイヤハーネスでは、特定部位の電線を保護するために合成樹脂製のコルゲートチューブを外装している。このコルゲートチューブ1は、図4(A)に示すように、電線Wの端末に取り付けられたコネクタ2への導入部分においては、僅かながら隙間3が生じて電線Wの一部が露出した状態となる場合がある。このため、車両へのワイヤハーネスの組付け作業時に電線Wの露出した部分に車体パネルのエッジや各種機器が接触して電線Wの露出部分が損傷を受けることがある。また、コルゲートチューブ1の端面のエッジ部1aは鋭利な状態となっている場合があり、車両走行中の振動などによりコルゲートチューブ1のエッジ部1aが電線Wの露出部分に頻繁に当接することで電線Wを傷つけるおそれもある。
【0003】
このため、上記のように電線Wの露出部分に対し、図4(B)に示すように、コルゲートチューブ1の端部とコネクタハウジング2aの背面部との間に合成樹脂製のカバー4を取り付け、電線Wの露出部分を完全に被覆して保護する対策が施されている。このようなカバー4を取り付けた保護構造は、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
【特許文献1】特開2004−172067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにコルゲートチューブ1の端部とコネクタハウジング2aの背面部との間に別体のカバー4を取り付けたものにおいては、カバー4によって電線Wの露出部分が完全に覆われるので電線Wへの傷つきを確実に防止できるが、別体の追加部品を要するため、部品点数および組付け工数が増加してコスト高となる問題があった。更に、別部品としてのカバー4は、コルゲートチューブ1とコネクタハウジング2aの形状に合致させなければならないため、多種類のカバー4を準備しておかねばならず、更なるコスト高の要因になると共に、管理面でも煩雑となる等の問題があった。
【0005】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたもので、別部品を要することなくコルゲートチューブとコネクタハウジングとの間における電線の露出部分をなくして電線への傷つきを防止するようにしたワイヤハーネスの保護構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、コネクタハウジングの電線挿入部に挿入される電線をコルゲートチューブで外装してなるワイヤハーネスの保護構造であって、
上記コルゲートチューブには電線挿入部側の端末部に先端から軸線方向に向けて切り込んだ複数のスリットを円周方向に間隔をあけて形成し、該スリットにより分割された小片部を外方へ拡開すると共に各小片部をコネクタハウジングの背面部に被せるようにして装着していることを特徴とするワイヤハーネスの保護構造を提供している。
【0007】
上記構成によれば、スリットによって拡開された複数の小片部がコネクタハウジングの背面部に被せられているので、コルゲートチューブとコネクタハウジングとの間で電線が露出することがなく、コルゲートチューブのみによって電線を確実に保護することができる。また、コルゲートチューブの先端のエッジ部分は小片部の拡開に伴って外方へ広げられているため、エッジ部が電線外周に直接触れるおそれがなく、エッジ部による電線への傷つきも防止できる。
なお、電線に外装するコルゲートチューブとしては、軸線方向に割溝が形成された半割タイプと、割り溝のないタイプのいずれの場合にも適用することができる。
【0008】
更に具体的には、上記コルゲートチューブにおいて、小片部とは反対側の基端部と電線の外周との間にテープ巻き処理を施し、上記小片部がコネクタハウジングの背面部に被さった状態でのコルゲートチューブの外装位置を固定している。
このようにすれば、ワイヤハーネスが屈曲された場合等においても、電線に外装されたコルゲートチューブの位置ずれを防止でき、小片部がコネクタハウジングの背面部から外れることがない。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明より明らかなように、本発明のワイヤハーネスの保護構造によれば、コルゲートチューブの先端に形成したスリットを介して拡開する小片部がコネクタハウジングの背面部に被さることによってコルゲートチューブの先端とコネクタハウジングとの間において電線が露出することがない。よって、カバー等の別部材を要することなくコルゲートチューブのみで電線を確実に外装保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1〜図3は、本発明におけるワイヤハーネスの保護構造の実施形態を示し、ワイヤハーネスW/Hを構成する電線束11の端末部の各電線Wは先端に端子金具(図示せず)が圧着され、この端子金具をコネクタハウジング12の背面の電線挿入部12aから内部へ挿入して係止固定している。そして、特に電線Wの保護が必要な箇所には、合成樹脂製よりなる蛇腹状のコルゲートチューブ13を所要の領域にわたって外装するようにしている。本実施形態ではコルゲートチューブ13として軸線方向に割溝13aの入った半割タイプのものを使用している。
【0011】
コルゲートチューブ13の一端には図2(A)に示すように、コネクタハウジング12の電線挿入部12a側に外装する部分の先端から軸線方向に向けて所要深さ寸法にわたって切り込んだ複数のスリット14を形成している。本実施形態においては、図2(B)に示すように、スリット14は円周方向に6等分割する位置に形成し、このスリット14を介して6個の小片部15を設けている。そして、各小片部15は、図2(C)に示すように、それぞれ独立して拡開方向に弾性的に変形可能となるようにしている。なお、スリット14のうち1つはコルゲートチューブ13の割溝13aを代用してもよい。
【0012】
次に、本発明にかかるワイヤハーネスの保護構造の組立て工程について説明すると、先ず図3(A)に示すように、コネクタハウジング12の電線挿入部12a側から複数の電線Wが挿入係止された状態のワイヤハーネスW/Hを組み立てる。次いで、電線Wを保護べき範囲に対応する長さと略合致する長さに切断されたコルゲートチューブ13を準備すると共に、その一端部にスリット14を切り込み形成して複数の小片部15が分割可能な状態にしておく。そして、図3(B)に示すように、コルゲートチューブ13の割溝13aを広げながらコルゲートチューブ13を電線束11の外周に装着する。この段階では、コルゲートチューブ13の先端とコネクタハウジング12の電線挿入部12aとの間に隙間Sがあって電線Wが一部露出した状態となっている。
【0013】
上記のようにして電線束11にコルゲートチューブ13を外装するに際し、各小片部15はコネクタハウジング12の電線挿入部12a側に対向位置させるようにし、次いで、図3(C)に示すように、コルゲートチューブ13をコネクタハウジング12の電線挿入部12a側に向けて押圧することで各小片部15は電線挿入部12aの端面に当接すると共に、その外形に沿って拡開変形する。これにより、各小片部15はコネクタハウジング12の電線挿入部12aに被さった状態となり、コネクタハウジング12とコルゲートチューブ13との間に電線Wが露出するのを防止している。
【0014】
次いで、図1に示すように、小片部15がコネクタハウジング12の電線挿入部12a側に被せられた状態を維持させるため、コルゲートチューブ13の他端の基端部と電線束11の外面との間にテープTを巻き付けるようにしている。このテープTの巻き付け処理により、コルゲートチューブ13の小片部15がコネクタハウジング12の電線挿入部12a側に押し付けられた状態でコルゲートチューブ13の外装位置を固定している。これにより、コルゲートチューブ13が電線束11と共に屈曲された場合においても、小片部15が若干引き戻されるのみで、コネクタハウジング12とコルゲートチューブ13との間に隙間Sが生じることはない。また、コルゲートチューブ13のエッジ部13bが鋭利な状態になっていても、小片部15が拡開されているので、エッジ部13bが電線Wの外周に接触することがなく、よって電線Wを傷つけるおそれもない。
【0015】
なお、コルゲートチューブ13における小片部15のスリット14の切り込み深さは、被せるべきコネクタハウジング12の大きさに対応してその寸法を適宜設定している。また、上記実施形態では、コルゲートチューブ13として割溝13aの入った半割タイプを用いた例を示したが、コルゲートチューブ13として、割溝13aの入っていないものを用いることもできる。ただし、この場合、電線束11の端末にコネクタハウジング12を取り付ける前に電線束11の外周にコルゲートチューブ13を挿入しておく必要がある。また、スリット14により分割形成した小片部15の数もコルゲートチューブ13の外径、コネクタハウジング12の大きさにより適宜増減調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のワイヤハーネスの保護構造を示す斜視図である。
【図2】(A)はコルゲートチューブの斜視図、(B)はコルゲートチューブの端面図、(C)は小片部を拡開した状態の斜視図である。
【図3】(A)〜(C)はワイヤハーネスの保護構造の組立て工程を示し、(A)はコルゲートチューブの外装前の状態を示すワイヤハーネス端末の斜視図、(B)は電線の所要箇所にコルゲートチューブを外装した状態の斜視図、(C)は小片部をコネクタハウジングの背面部に被せた状態の斜視図である。
【図4】(A)(B)は従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
12 コネクタハウジング
12a 電線挿入部
13 コルゲートチューブ
14 スリット
15 小片部
W/H ワイヤハーネス
W 電線
T テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの電線挿入部に挿入される電線をコルゲートチューブで外装してなるワイヤハーネスの保護構造であって、
上記コルゲートチューブには電線挿入部側の端末部に先端から軸線方向に向けて切り込んだ複数のスリットを円周方向に間隔をあけて形成し、該スリットにより分割された小片部を外方へ拡開すると共に各小片部をコネクタハウジングの背面部に被せるようにして装着していることを特徴とするワイヤハーネスの保護構造。
【請求項2】
上記コルゲートチューブにおいて、小片部とは反対側の基端部と電線の外周との間にテープ巻き処理を施し、上記小片部がコネクタハウジングの背面部に被さった状態でのコルゲートチューブの外装位置を固定している請求項1に記載のワイヤハーネスの保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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