説明

ワイヤハーネス用のプロテクタ

【課題】ワイヤハーネスに外装するプロテクタの内部に多数のスプライスを収容できるようにする。
【解決手段】プロテクタの本体の底壁と周壁に囲まれたワイヤハーネス主通路の側部空間に底壁からスプライス収容部を突設し、該スプライス収容部は一定間隔をあけて立設する仕切壁と、該仕切壁の一端側に閉鎖壁を備え、前記仕切壁により挟まれた複数のスプライス収容室を並設し、各スプライス収容室の前記閉鎖壁と対向側を挿入用開口とし、かつ、各スプライス収容室は少なくとも上下2段でスプライスを収容できる高さとし、前記ワイヤハーネスから分岐するスプライスのうち、外周面にスプライスシートが巻き付けられたスプライスと絶縁樹脂製キャップを被せたスプライスを上下隣接して収容する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワイヤハーネス用のプロテクタに関し、特に、ワイヤハーネスに設けられている多数のスプライス部をプロテクタ内に効率よく絶縁して収容できるようにするものである。
【背景技術】
【0002】
車両に配索するワイヤハーネスは多数本の電線を集束して構成されており、電子制御される車載品の急増に伴って、ワイヤハーネスを構成する電線中に占めるシールド線の割合が多くなっている。これらシールド線は金属材からなるシールド層をアース接続する必要があり、シールド線が増加すると、シールド層をドレン線と接続するシールド継ぎ足しスプライスが増加する。大型電子制御ユニットに接続されるワイヤハーネスは多数のシールド線を含むため、該ワイヤハーネスから分岐するスプライスも多数になり、かつ、該ワイヤハーネスの端末部分に集中しやすい。
【0003】
さらに、前記シールド継ぎ足し用のスプライス以外にも、複数本の電線の回路を分岐接続する場合、接続する電線が比較的多くなると、これら電線端末の絶縁被覆層を剥離して芯線端末を露出させ、露出させた芯線同士を重ねて端末集中溶接するスプライスを形成する場合もある。この端末集中スプライスは絶縁樹脂製のキャップに収容する場合が多い。
【0004】
さらに、車両のエンジンルーム等の被水領域に配索するワイヤハーネスの電線に形成されるスプライスは防水仕様とする必要がある。よって、前記シールド線のシールド層継ぎ足しスプライスでは電線接続部にシリコーン樹脂等の止水剤を充填して防水シートを巻き付ける場合が多い。また、前記端末集中スプライスをキャップに収容する場合は、キャップ内に2液止水剤等を充填して端末集中スプライスを止水剤で充填している。
【0005】
前記のように、電子制御ユニット等に接続するシールド線の増加によりワイヤハーネス中にシールド継ぎ足し用のスプライスが増加し、かつ、防水仕様のスプライスとした場合、各スプライスが大型化する。このように、スプライスの増加、大型化によりスプライスを絶縁信頼性を確保した状態で収容できる収容部を確保することは容易でない。
【0006】
一方、前記ワイヤハーネスの経路規制および他部材との干渉防止を図る必要がある領域では樹脂成形品からなるプロテクタの内部を通している。前記ワイヤハーネスから多数のスプライスが分岐する場合、これらのスプライスを前記プロテクタの内部に収容できるようにすることが好ましい。
【0007】
従来、本出願人は特開平8−205360号公報で図8(A)(B)(C)に示すスプライス部を収容できるプロテクタ100を提供している。該プロテクタ100はワイヤハーネスの幹線110から分岐させたスプライス部120を有する枝線111のみを通しており、プロテクタ100内の電線通路101の中間部にスプライス部保持部103を幅方向全体に並設し、各枝線のスプライス部120をそれぞれスプライス部保持部103に通して分離収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−205360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1のプロテクタはスプライスを設けたワイヤハーネスの枝線のみを通すスプライス部収容専用のプロテクタである。よって、ワイヤハーネスの幹線およびスプライス部が無い枝線もプロテクタに通す必要がある場合には、プロテクタが別に必要になる。その場合、2種類のプロテクタを設ける必要があり、コスト高になる。かつ、2種類のプロテクタを配置するスペースも必要となり、スペース上の制約をうけて配置できない場合もある。
【0010】
さらに、スプライス収容専用の前記プロテクタ100は、スプライス部保持部103を並列に設けているだけであるため、収容するスプライス部の個数が多くなると使用できず、大型のプロテクタを新たに設ける必要があり、該プロテクタは幅を増大したスプライス部収容部を増加する必要があり、プロテクタ100が大型化し、スペース上で規制を受ける恐れがある。
【0011】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの幹線およびスプライス部を設けた枝線も通す1つのプロテクタ内に、スプライスの個数を増大しても収容できるスプライス収容部を備えるプロテクタを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、車両に配索されるワイヤハーネスに外装する樹脂成形品からなるプロテクタであり、
底壁と、該底壁の周縁から突設すると共にワイヤハーネスの入口と出口を設けた周壁を備えた本体と、該本体の上面開口を閉鎖する蓋を備え、
前記本体の底壁と周壁に囲まれたワイヤハーネス主通路の側部空間にスプライス収容部を設け、
前記スプライス収容部は前記底壁から突設した一定間隔をあけて立設する仕切壁と、該仕切壁の一端側に閉鎖壁を備え、前記仕切壁により挟まれた複数のスプライス収容室を並設し、各スプライス収容室の前記閉鎖壁と対向側を挿入用開口とし、かつ、各スプライス収容室は少なくとも上下2段でスプライスを収容できる高さとし、
前記ワイヤハーネスから分岐するスプライスのうち、外周面にスプライスシートが巻き付けられたスプライスと絶縁樹脂製キャップを被せたスプライスを上下隣接して収容する構成としていることを特徴とするワイヤハーネス用のプロテクタを提供している。
【0013】
本発明のプロテクタは、ワイヤハーネスのスプライスを設けた枝線およびスプライスを設けていない幹線および枝線も挿通できるものとし、プロテクタ本体の内部空間に、スプライスを設けていない幹線および枝線が挿通する主通路を前記入口から出口にかけて設けると共に、該主通路の側部にスプライスを収容する部分を並設している。
よって、前記入口から出口に向けて主通路に沿って配線するワイヤハーネスの幹線から分岐する複数の枝線のスプライスをそれぞれ前記各スプライス収容室に挿入して収容することができる。スプライス収容専用のプロテクタを設ける必要がない。
【0014】
また、並設した各スプライス収容室はそれぞれ少なくとも上下2段で収容できる高さとし、上下に重ねて収容する際に絶縁樹脂製キャップを被せたスプライスとスプライスシートで外装したスプライスとを隣接させることで絶縁用仕切板を不要としながら絶縁信頼性を保持しつつ多数のスプライスをスプライス収容部に収容できる。
よって、例えば、スプライス収容室を3個並列で設け、上下3段で重ねて収容できるようにスプライス収容室の高さを設定すると、キャップに収容したスプライスを中段に3個、スプライスシート(防水性を有する絶縁樹脂シート)で外装したスプライスを上下段に各3個、合計9個のスプライスを収容することができる。
【0015】
また、前記プロテクタの本体の前記周壁の中間位置に分岐線用開口を設け、スプライスを設けた電線を前記分岐線用開口を通して前記スプライスを前記スプライス収容室に収容できる構成としてもよい。
前記構成とすると、プロテクタの入口から挿入して主通路に配線するワイヤハーネスの幹線から分岐する枝線のスプライスと、前記分岐線用開口から挿入してワイヤハーネスの幹線と合流する枝線のスプライスをスプライス収容室に収容することができる。
【0016】
前記プロテクタ本体に設ける前記周壁は円弧部を有する形状とした外側壁と内側壁とからなり、前記外側壁に沿った内部空間を前記ワイヤハーネスの円弧状の主通路とし、該周壁の周方向の両端に前記ワイヤハーネスの入口と出口を設けると共に、該入口と出口の間で前記内側壁に接してスプライス収容部を設けていることが好ましい。
【0017】
プロテクタの外形はワイヤハーネスの配索経路およびプロテクタの配置スペースとの関係で規制されるが、前記周壁に設ける円弧部を比較的大きなアールとし、かつ、内側壁の外面に固定用ブラケットを設けると全体形状が略幅広長方形状となり、主通路の内周側にスプライス収容部を突出させることなく設けることができる。
【0018】
前記ワイヤハーネスの電線群中に複数のシールド線があり、これらシールド線のシールド層をアース接続する継ぎ足し線のスプライスを前記スプライスシートで外装して前記プロテクタのスプライス収容室に収容することが好ましい。
【0019】
前記のように電子制御ユニットに接続するワイヤハーネスはシールド線を多数含むため、該シールド線のシールド層とアース接続する電線とのシールド継ぎ足しスプライスが集中的に生じる。よって、これら多数のスプライスを収容できるスプライス収容室をスプライス数に応じて簡単に増設できるスプライス収容部をプロテクタの内部に設けると、該プロテクタを使い勝手の良いものとすることができる。
前記スプライス収容室に挿入するスプライスは、前記のように、シールド継ぎ足しスプライスと接して、前記絶縁樹脂製キャップを被せた端末集中スプライスからなる。
【0020】
かつ、前記プロテクタをエンジンルーム等の被水領域に配置する場合には、プロテクタのスプライス収容室に収容するスプライスは防水仕様とし、スプライスシート巻きのスプライスはシリコーン樹脂等からなる止水剤を充填した後にスプライスシートを巻き付けている。また、絶縁樹脂製キャップを被せる場合は、2液硬化性の止水剤等を滴下したキャップ内に端末集中スプライスを挿入した構成としている。
【発明の効果】
【0021】
前記のように、本発明のプロテクタは、挿通するワイヤハーネスが多数のスプライスを有する場合、該プロテクタ内にスプライス収容部を設けると共に、該スプライス収容部にスプライスシートで外装したスプライスと絶縁樹脂製キャップを被せて外装したスプライスとを上下に重ねて収容することで、絶縁信頼性を保持しながら効率よく多数のスプライスを収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態のプロテクタの斜視図である。
【図2】前記プロテクタの本体の平面図である。
【図3】前記プロテクタ本体にワイヤハーネスを挿通した状態の平面図である。
【図4】スプライス収容部にスプライスを収容する状態を示す概略説明図である。
【図5】ワイヤハーネスに巻き付けて底壁に取り付けるバンドクリップを示す図面である。
【図6】(A)は前記プロテクタに挿通するワイヤハーネスの電線群を示す概略斜視図、(B)は前記電線群に含まれるシールド線のスプライスを示す図面である。
【図7】(A)は前記シールド線のスプライスシートを巻き付けるスプライスを示す図面、(B)は絶縁樹脂製キャップをかぶせる端末集中スプライスを示す図面である。
【図8】(A)(B)(C)は従来例の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のプロテクタの実施形態を図面に基づいて説明する。
実施形態のプロテクタ1は、自動車に配索するワイヤハーネス用のプロテクタであり、本実施形態のプロテクタ1は被水領域のエンジンルーム内に配置するものである。
プロテクタ1は、本体2と、該本体2の上面開口に被せる蓋3とからなり、いずれも樹脂成型品である。
【0024】
図2、3に示すように、前記本体2は底壁5と、底壁5の幅方向両側から突設する外側壁6と内側壁7からなる周壁を備えている。外側壁6は全体として大きな円弧で湾曲させた略C形状とし、内側壁7と外側壁6の長さ方向の両端の間に同一方向に開口するワイヤハーネスの入口8と出口9を設けている。
【0025】
本体2の外側壁6は入口8側は高壁部6aとすると共に出口9側は低壁部6bとしている。低壁部6bは大きな曲率の円弧状とし、高壁部6aは直線と曲線を連続させて略L形状に屈曲させ、低壁部6bと高壁部6aとの間に分岐線用開口10を設けている。また、内側壁7は外側壁6の高壁部6aと同一高さで突設している。
一方、蓋3の上壁3aは本体2の底壁5と同形状とし、該上壁3aの周縁には前記本体2の高壁部6aと対向する位置には低壁部3bー1、低壁部6bと対向する位置には高壁部3b−2からなる周壁3bを設けている。すなわち、ワイヤハーネスの出口9側では本体2の周壁は低くし、蓋3の高壁部3b−2で外周を囲むようにし、入口8側は本体2の周壁を高くしている。
前記蓋3の周壁に間隔をあけてロック爪3rを突設すると共に本体2の外側壁6および内側壁7に前記ロック爪3rを挿入係止するロック枠6r、7rを設けている。
【0026】
前記本体2の内部では、外側壁6の内面に沿って湾曲した主通路11を設け、該主通路11の両端の入口8と出口9は同一方向に向けて開口し、かつ、主通路11の中間位置の外側壁6に前記分岐線用開口10を設けている。
【0027】
前記本体2内には、主通路11の内周側に底壁5からスプライス収容部12を突設している。スプライス収容部12の高さは前記高壁部6aおよび内側壁7の高さと同程度の高さとしている。スプライス収容部12は両側壁12a、12bと該両側壁12aと12bの一端を連結する連結壁12cとからなるコ字状の外枠部12dと、両側壁12aと12bに挟まれた中間位置に2つの中間仕切壁12m、12nを平行に設けている。このように両側壁12a、12b、中間仕切壁12m、12nからなる4つの仕切壁を設けて、3つの略同一幅のスプライス収容室13(13a〜13c)を並列に設けている。これらスプライス収容室13の前記連結壁12cが閉鎖壁となり、対向側が挿入用開口13pとなる。該挿入用開口13pは出口9に近接した主通路11に向けて開口し、さらに低壁部6bに向けて開口させてスプライスSを挿入用開口13pからスプライス収容室13に挿入しやすくしている。
また、スプライス収容部12の一方の側壁12aおよび連結壁12cは前記主通路11の内周壁を兼ねるようにしている。
【0028】
前記3つの並設したスプライス収容室13a〜13cを囲む前記両側壁12a、12b、中間仕切壁12m、12nの高さはスプライスSを上中下の3段に重ねて収容できる高さとしている。よって、プロテクタ1内のスプライス収容部は合計9個のスプライスが収容できるようにしている。
【0029】
上記同一列に上下に重ねて収容するスプライスは、図7(A)に示すシールド継ぎ足しスプライスS−1と、図7(B)に示す端末集中スプライスを絶縁樹脂製キャップ60に収容したスプライスS−2とを上下隣接して収容するものとしている。前記スプライスを有するワイヤハーネスについては後述する。
【0030】
前記プロテクタ1の本体2には内側壁7の外面に車体固定用のブラケット16Aを突設すると共に、外側壁6の外面にも固定用ブラケット16Bを突設している。
【0031】
また、本体2の底壁5には、前記分岐線用開口10に近接した位置にクリップ係止穴14Aを設け、分岐線用開口10から引き出す複数の枝線を結束するバンドクリップ22Aのクリップをクリップ係止穴14Aに挿入係止するようにしている。また、外側壁6とスプライス収容部の側壁12aに挟まれた主通路11の中間位置にクリップ係止穴14Bを設け、主通路11を通すワイヤハーネス30の電線群に結束するバンドクリップ22Bのクリップ22cをクリップ係止穴14Bに挿入し、係止羽根部に設けた係止段部22eを係止するようにしている。なお、クリップ係止穴14Bは円形とし、バンドクリップ22Bのクリップを回転可能に保持できるようにしている。
【0032】
さらに、本体2の入口8を囲む外側壁6、内側壁7および底壁5の内面には主通路11に通すワイヤハーネス30に外装するコルゲートチューブ31の谷部31aに嵌合するリブ16を突設している。該コルゲートチューブ31は入口8から挿入した部分で終端し、ワイヤハーネス30の電線群を前記バンドクリップ22Bで結束し、該バンドクリップ22Bを前記クリップ係止穴14Bに係止している。よって、出口9から引き出されるワイヤハーネス30は出口9の位置では固定されず、バンドクリップ22Bの係止位置を支点として所要角度範囲で出口9から出たワイヤハーネス30を回転できるようにしている。よって、前記クリップ係止穴14Bから出口9までの主通路11の幅はワイヤハーネス30の外径の1.5倍以上として、ワイヤハーネス30の揺動可能空間を設けている。
【0033】
前記プロテクタ1の主通路11に挿通するワイヤハーネス30は、プロテクタの出口9の引出位置から80mm〜200mmの短寸法を隔てた端末にコネクタ33を接続している。該コネクタ33をエンジンルーム内に固定するエンジン制御用の電子制御ユニットからなる機器(図示せず)のコネクタ嵌合部に嵌合させるために、コネクタ33を回転しながら嵌合作業をしなければならず、よって、プロテクタ1の出口9では回転可能としている。
【0034】
前記エンジン制御ユニットにコネクタ接続するワイヤハーネス30は、構成する電線群中に、図6(A)に示すシールド線50が多数含まれている。シールド線50は1本または複数本のコア線51を金属編組チューブまたは金属箔テープからなるシールド層52で覆い、シールド層52の外周を絶縁樹脂からなるシース53で被覆している。
前記シールド層52はアース接続する必要があるため、図6(B)に示すように、コネクタ接続側の端末からシース53を皮剥ぎしてシールド層52を露出させ、該シールド層52を引き出してドレン線55をハンダ付けまたは溶接で接続している。該シールド線50は被水領域のエンジンルームに配線するため、図7(A)に示すように前記接続部に止水剤としてシリコーン樹脂57を充填した後にスプライスシート(絶縁樹脂シート)56を巻き付けてシールド継ぎ足しのスプライスSー1を形成している。よって、コネクタ33に近接した位置に該シールド継ぎ足しのスプライスSー1が集中することになる。
前記シールド線50のコア線51は絶縁層51bを皮剥して芯線51aを露出し、芯線51aの端末にコネクタ33に挿入係止する端子(図示せず)を圧着している。
【0035】
また、前記コネクタ33にはワイヤハーネス30の幹線の電線と共に分岐線用開口10からプロテクタ1に挿入する枝線36の端末もコネクタ33に接続する。この枝線36中にもシールド線があり、シールド継ぎ足しスプライスS−1が有る。
前記プロテクタ1の入口8および分岐線用開口10から挿入するワイヤハーネスの電線群にあるシールド継ぎ足しスプライスS−1を集中して前記スプライス収容部12の各スプライス収容室13に挿入するようにしている。
【0036】
また、前記ワイヤハーネス30の電線群中に、回路を接続するために複数本の電線58の端末を抵抗溶接して端末集中スプライスを形成し、これを絶縁樹脂製キャップ60に収容し、該絶縁樹脂製キャップ60に2液硬化性の止水剤59を滴下して形成したスプライスS−2もある。
本実施形態では、前記絶縁樹脂製キャップ60を被せたスプライスS−2が2個あり、スプライスシートで被覆したシールド継ぎ足しスプライスS−1が5個ある。
【0037】
前記プロテクタ1に通すワイヤハーネス30は、出口9から引き出される部分で、予め枝線36と粘着テープ37を巻き付けて結束している。かつ、ワイヤハーネス30と分岐する枝線36にバンドクリップ22Aを締結すると共に、ワイヤハーネス30にもバンドクリップ22Bを締結している。さらに、入口8に挿入する部分のワイヤハーネス30にコルゲートチューブ31を外装し、該コルゲートチューブ31とワイヤハーネス30とを粘着テープで固着している。
【0038】
前記プロテクタ1へのワイヤハーネスの組みつけは、ワイヤハーネス30をプロテクタ1の主通路11に沿って収容し、枝線36を分岐線用開口10を通して引き出している。 入口8側ではコルゲートチューブ31の谷部31aにリブ16を嵌合して位置決め保持している。また、バンドクリップ22A、22Bのクリップをそれぞれクリップ係止穴14A、14Bに挿入係止する。
【0039】
ついで、ワイヤハーネス30および枝線36からスプライスSー1、S−2を有する電線を分岐させ、3つのスプライスSー1をそれぞれスプライス収容室13a〜13cに挿入する。
ついで、2個の絶縁樹脂製キャップ60を被せたスプライスS−2をスプライス収容室13b、13cに前記各スプライスS−1の上面に重ねて挿入する。
最後に、残った2個のスプライスS−1をスプライス収容室13b、13cの各スプライスS−2の絶縁樹脂製キャップ60の上面に重ねて挿入する。このように、スプライスS−1はスプライスS−2を介在させて重ね、スプライスS−1を直接上下に重ねないようにし、絶縁樹脂製キャップ60で絶縁している。
【0040】
前記のように、全てのスプライスS(S−1、S−2)をそれぞれ並列に仕切ったスプライス収容室13に収容し、上下に重ねる部分では絶縁樹脂製キャップ60を介在させているため、上下に仕切る樹脂板を不要としながら、上下も絶縁材で仕切って絶縁信頼性を高めることができる。
【0041】
前記構成からなるプロテクタでは、収容するスプライスの個数が増加しても、絶縁樹脂製キャップ60を利用して絶縁を図りながら上下に重ねて収容でき、スプライスの増加に容易に対応できる。
【0042】
なお、本発明は前記実施形態に限定されず、並列するスプライス収容室は3個以上の4個、5個としてもよく、並列するスプライス収容室を増加すると、各スプライス収容室内に上下に重ねて収容するスプライスを2倍、3倍と増加させることができる。
また、ワイヤハーネスの主通路は直線状であってもよく、かつ、プロテクタの出入口にワイヤハーネスに外装するコルゲートチューブを位置決め保持するリブを突設した形状としてもよい。
さらに、前記プロテクタは被水領域に搭載するため、スプライス収容部に収容するスプライスも防水仕様であるが、非水領域ではスプライスは防水仕様ではないため、スプライスはそれぞれ小型になり、スプライス収容部を小さくすることができる。または、スプライス収容数を増やすことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 プロテクタ
2 本体
3 蓋
5 底壁
6 外側壁
7 内側壁
8 入口
9 出口
10 分岐線用開口
11 主通路
12 スプライス収容部
13(13a〜13c) スプライス収容室
14A、14B クリップ係止穴
22A、22B バンドクリップ
30 ワイヤハーネス
31 コルゲートチューブ
33 コネクタ
50 シールド線
56 スプライスシート
S−1、S−2 スプライス
60 絶縁樹脂製キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索されるワイヤハーネスに外装する樹脂成形品からなるプロテクタであり、
底壁と、該底壁の周縁から突設すると共にワイヤハーネスの入口と出口を設けた周壁を備えた本体と、該本体の上面開口を閉鎖する蓋を備え、
前記本体の底壁と周壁に囲まれたワイヤハーネス主通路の側部空間にスプライス収容部を設け、
前記スプライス収容部は前記底壁から突設した一定間隔をあけて立設する仕切壁と、該仕切壁の一端側に閉鎖壁を備え、前記仕切壁により挟まれた複数のスプライス収容室を並設し、各スプライス収容室の前記閉鎖壁と対向側を挿入用開口とし、かつ、各スプライス収容室は少なくとも上下2段でスプライスを収容できる高さとし、
前記ワイヤハーネスから分岐するスプライスのうち、外周面にスプライスシートが巻き付けられたスプライスと絶縁樹脂製キャップを被せたスプライスを上下隣接して収容する構成としていることを特徴とするワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項2】
前記プロテクタの本体の前記周壁の中間位置に分岐線用開口を設け、スプライスを設けた電線を前記分岐線用開口を通し、該電線のスプライスを前記スプライス収容室に収容できるようにしている請求項1に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項3】
前記プロテクタ本体に設ける前記周壁は円弧部を有する形状とした外側壁と内側壁とからなり、前記外側壁に沿った内部空間を前記ワイヤハーネスの円弧状の主通路とし、該周壁の周方向の両端に前記ワイヤハーネスの入口と出口を設けると共に、該入口と出口の間で前記内側壁に接して前記スプライス収容部を設けている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項4】
前記ワイヤハーネスの電線群中に複数のシールド線があり、これらシールド線のシールド層をアース接続する継ぎ足し線のスプライスを前記スプライスシートで外装して前記プロテクタのスプライス収容室に収容している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。
【請求項5】
被水領域のエンジンルームに配置されるプロテクタであり、前記スプライス収容室に収容する前記スプライスは防水仕様とし、スプライスシート巻きのスプライスは止水剤を充填した後に前記スプライスシートを巻き付ける一方、前記スプライスに被せる前記絶縁樹脂製キャップに止水剤を充填している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のワイヤハーネス用のプロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−152042(P2012−152042A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9304(P2011−9304)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】