説明

ワイヤハーネス

【課題】長さ調整可能なワイヤハーネスにおいて、構成の簡素化を実現するとともに、長さ調整時の作業性を改善する。
【解決手段】ワイヤハーネスは、第1、第2端末11、12を有する電線10と、第1、第2開口端62、63を有する管部60とを備える。第1端末11を第1開口端62から管部60内に挿入して第2開口端63から管部60外に引き出し、第2端末12を第2開口端63から管部60内に挿入して第1開口端62から管部60外に引き出す。これにより、管部60内に電線10の中間部13A、13Bを交差状態に収容して保持するとともに、管部60外に電線10の余長部14を環状に回曲する状態となす。第1、第2端末11、12を互いに接近・離間させた場合に、電線10の中間部13A、13Bが管部60の内面を摺接して、電線10の余長部14が拡径・縮径する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの電線を配索するにあたり、ワイヤハーネスに伸縮機能をもたせた上で、電線の余長部分をプロテクタ等に収納することがある。例えば、特許文献1に記載のものでは、プロテクタ内に複数の電線挿通路が形成されており、各電線挿通路に電線を折り返し状に選択的に沿わせることで、ワイヤハーネスの長さ調整を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−215736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のワイヤハーネスでは、プロテクタ内に電線挿通路を区画する突部が必要とされるとともに、プロテクタの蓋締めを行うためのロック構造が必要とされる。このため、構成が複雑になり、コストがかさむという事情がある。
また、電線の両端間の長さ調整を行う際には、プロテクタ内において、各電線挿通路に対する電線の配索構造を逐一変更せねばならず、作業が煩雑になる嫌いがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、長さ調整可能なワイヤハーネスにおいて、構成の簡素化を実現するとともに、長さ調整時の作業性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、長さ調整可能なワイヤハーネスであって、第1、第2端末を有する電線と、第1、第2開口端を有する管状の管部とを備え、前記第1端末を、前記第1開口端から前記管部内に挿入して前記第2開口端から前記管部外に引き出し、前記第2端末を、前記第2開口端から前記管部内に挿入して前記第1開口端から前記管部外に引き出し、もって、前記管部内に前記電線の中間部分を交差状態に収容して保持するとともに、前記管部外に前記電線の余長部分を環状に回曲する状態となし、前記第1、第2端末を互いに接近・離間させた場合に、前記電線の中間部分が前記管部の内面を摺接して、前記電線の余長部分が拡径・縮径するところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記第1、第2端末を互いに接近・離間させた場合に、前記第1、第2端末間における前記管部の相対位置が変動するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
電線の中間部分が管部内に交差状態に収容保持され、電線の余長部分が管部外に環状に回曲されるため、余長部分の分、電線の長さ(第1、第2端末間の直線距離)が短縮される。また、第1、第2端末を互いに接近・離間させることにより、電線の中間部分が管部の内面を摺接して、電線の余長部分が拡径・縮径するため、余長部分の変化に応じて、電線の長さが適宜に調整される。この場合に、長さ調整部材として、管部を用意すれば足りるから、構成の簡素化が実現される。また、第1、第2端末の接離動作に連動して長さ調整が行われるから、作業性が改善される。
【0009】
<請求項2の発明>
第1、第2端末を互いに接近・離間させた場合に、第1、第2端末間における管部の相対位置が変動するため、第1、第2端末の動作量(ストローク量)が小さくても、余長部分の拡縮量を大きくとることができ、作業効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係るワイヤハーネスにおいて、電線が管部に短縮状態で保持されている状態を示す正面図である。
【図2】電線が管部に伸長状態で保持されている状態を示す正面図である。
【図3】電線が短縮状態で収容されている状態を示すランス装置への組付図である。
【図4】電線が伸長状態で引き伸ばされた状態を示すランプ装置の分解図である。
【図5】参考例1に係るワイヤハーネスにおいて、電線が短縮状態で保持されている状態を示す正面図である。
【図6】電線が伸長状態で保持されている状態を示す正面図である。
【図7】参考例2に係るワイヤハーネスにおいて、電線が棒材に短縮状態で保持されている状態を示す正面図である。
【図8】電線が棒材に伸長状態で保持されている状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。実施形態1に係るワイヤハーネスは、電線10と、管部60とを備えている。
【0012】
電線10は、芯線の周りを絶縁被覆で包囲した被覆電線からなる。本実施形態の場合、複数本が束ねられ、各電線10は、長さ方向の適宜箇所に巻き付けられるテープ20によって、電線群10Aとして、ばらけないように一体化されている。電線群10Aの長さ方向一端は第1端末11とされ、電線群10Aの長さ方向他端は第2端末12とされている(図3を参照)。第1、第2端末11、12は、それぞれ、端子等に接続された状態でコネクタ等の取付部材90に装着されるようになっている。
【0013】
管部60は、円管状であって、可撓性の樹脂製チューブからなる。本実施形態の場合、管部60は、例えば、1cm〜3cmの長さに調整されている。管部60内は、電線群10Aが挿入される貫通孔61とされ、管部60の長さ方向一端は、第1開口端62とされ、管部60の長さ方向他端は、第2開口端63とされている。
【0014】
ここで、電線群10Aの第1端末11は、第1開口端62を通して管部60の貫通孔61内に挿入され、さらに第2開口端63から外部に引き出される。一方、電線群10Aの第2端末12は、第2開口端63を通して管部60の貫通孔61内に挿入され、さらに第1開口端62から外部に引き出される。これにより、電線群10Aの中間部13A、13Bは、管部60の貫通孔61内に交差状態に収容され、電線群10Aのスプリングバック作用によって、貫通孔61の内周面に所定の摩擦力をもって弾性的に接触するようになっている。
【0015】
そして、第1、第2端末11、12が管部60内に互いに交差して挿通された状態では、管部60外において、電線群10Aの余長部14が円環状に回曲させられることとなる。なお、電線群10Aの中間部13A、13Bは、余長部14を挟んだ両側の部分で対をなし、第1端末11側の第1中間部13Aと、第2端末12側の第2中間部13Bとで構成されている。
【0016】
次に、本実施形態に係るワイヤハーネスの使用状況について説明する。
管部60内を貫通した第1、第2端末11、12は、取付部材90に装着される。本実施形態の場合、ワイヤハーネスは、自動車のヘッドランプ等のランプ装置50内に組み込まれる(図3を参照)。ランプ装置50は、ランプボディ51及びランプカバー52によって区画されるランプ室53と、ランプ室53内に配置される光源としてのリフレクタ54及びレンズ55と、ランプ室53内においてレンズ55の周囲からランプカバー52にかけて延在するエクステンション56とを備えている。ワイヤハーネスは、同じくランプ室53内に配置され、その一端(第1、第2端末11、12のうちのいずれか一方)がリフレクタ54に接続され、その他端(第1、第2端末11、12のうちのいずれか他方)がランプボディ51を貫通して車両側のコネクタ40に接続されている。
【0017】
上記のように、ワイヤハーネスの配索スペースは、ランプ室53内の限られた範囲に制約されている。このため、ランプ装置50内に組み付けられた状態では、電線群10Aは、その長さ(第1、第2端末11、12間の直線距離)を短くした短縮状態で収容されることが求められる。一方、組み付けの過程又は取り外しの過程では、電線群10Aは、作業の利便性から、その長さを長くした伸長状態になることが求められる(図4を参照)。
【0018】
電線群10Aを短縮状態にするには、第1、第2端末11、12を互いに接近する向きに変位させればよい。すると、第1、第2中間部13A、13Bが互いに摺接するとともに、第1、第2中間部13A、13Bが管部60の貫通孔61の内周面に摺接し、それに伴って余長部14が拡径させられる。こうして余長部14の長さが周方向に長くなると、第1、第2端末11、12の動作量に応じて、電線群10Aの長さが短縮させられる(図1を参照)。なお、組み付け状態では、電線群10Aの余長部14がクリップ58によってランプボディ51に固定されている。
【0019】
これに対し、電線群10Aを伸長状態にするには、第1、第2端末11、12を互いに離間する向きに変位させればよい。すると、第1、第2中間部13A、13Bが互いに摺接するとともに、第1、第2中間部13A、13Bが管部60の貫通孔61の内周面に摺接し、それに伴って余長部14が縮径させられる。こうして余長部14の長さが周方向に短くなると、第1、第2端末11、12の動作量に応じて、電線群10Aの長さが伸長させられる(図2を参照)。
【0020】
電線群10Aが短縮状態又は伸長状態にあるとき、第1、第2中間部13A、13Bが管部60の貫通孔61の内周面に弾性的に当接することで、電線群10Aが短縮状態又は伸長状態に保持される。また、第1、第2端末11、12の変位動作に伴い、電線群10Aに沿って管部60全体が押し引きされ、第1、第2端末11、12間における管部60の相対位置が変動する。このため、第1、第2端末11、12の変位量(ストローク量)以上に、余長部14の拡縮動作がなされるようになっている。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、ワイヤハーネスの電線群10Aの長さ調整を行うに際し、長さ調整部材として、管状の管部60を用意すれば足りるから、構成の簡素化が実現される。また、第1、第2端末11、12の変位動作に連動して長さ調整が行われるから、長さ調整時の作業性が改善される。
【0022】
さらに、第1、第2端末11、12を互いに接近・離間させた場合に、第1、第2端末11、12間における管部60の相対位置が変動するため、第1、第2端末11、12の動作量が小さくても、余長部14の拡縮量を大きくとることができ、作業効率に優れる。
【0023】
<参考例1>
図5及び図6は、参考例1を示す。このものは、実施形態1と違って、管部60を有さず、ワイヤハーネスの電線群10Aのみで構成されている。
【0024】
電線群10Aは、その中間部13A、13Bで1重に結び付けられ、その結び目19の部分の摩擦抵抗によって所定長さに保持されている。第1、第2端末11、12を互いに接近させれば、余長部14が拡径し、第1、第2端末11、12を互いに離間させれば、余長部14が縮径する点は、実施形態1と同様である。しかし、参考例1は、管部60を有さないため、実施形態1に比べ、伸縮動作の円滑性に欠ける嫌いがある。
【0025】
<参考例2>
図7及び図8は、参考例2を示す。このものは、電線群10Aと、電線群10Aの長さ方向に間隔をあけつつ同電線群10Aに沿って配置される複数の棒状部71と、各棒状部71の両端部及び電線群10Aに巻き付けられて両者を固定するテープ等の固定部72とを備えている。各棒状部71はほぼ同じ長さに揃えられ、電線群10Aの各棒状部71間はほぼ同じ間隔に揃えられている。電線群10Aのうち、各棒状部71で支持される部分は硬質部73とされ、各棒状部71間は柔軟部74とされ、硬質部73と柔軟部74との間は節部75とされる。
【0026】
ここで、第1、第2端末11、12を互いに接近する向きに変位させると、節部75を略支点として、電線群10Aが折り畳まれ、電線群10Aが短縮状態に保持される。このとき、硬質部73は各棒状部71によって直線状に延出する状態に保たれ、柔軟部74は略U字状に屈曲する状態に保たれる(図7を参照)。一方、第1、第2端末11、12を互いに離間する向きに変位させると、柔軟部74の屈曲状態が解除され、電線群10Aが全体的に引き伸ばされた伸長状態に保持される(図8を参照)。参考例2では、短縮状態でワイヤハーネスをコンパクトにまとめることができるものの、実施形態1に比べ、構成が複雑になる嫌いがある。
【0027】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)電線が1本のみからなるものであってもよい。
(2)管部が金属製であってもよい。
(3)本発明は、ランプ装置内に配索されるワイヤハーネス以外にも適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
10…電線
10A…電線群
11…第1端末
12…第2端末
13A…第1中間部(中間部分)
13B…第2中間部(中間部分)
14…余長部
60…管部
62…第1開口端
63…第2開口端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ調整可能なワイヤハーネスであって、
第1、第2端末を有する電線と、
第1、第2開口端を有する管状の管部とを備え、
前記第1端末を、前記第1開口端から前記管部内に挿入して前記第2開口端から前記管部外に引き出し、
前記第2端末を、前記第2開口端から前記管部内に挿入して前記第1開口端から前記管部外に引き出し、もって、
前記管部内に前記電線の中間部分を交差状態に収容して保持するとともに、前記管部外に前記電線の余長部分を環状に回曲する状態となし、
前記第1、第2端末を互いに接近・離間させた場合に、前記電線の中間部分が前記管部の内面を摺接して、前記電線の余長部分が拡径・縮径することを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記第1、第2端末を互いに接近・離間させた場合に、前記第1、第2端末間における前記管部の相対位置が変動する請求項1記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151047(P2012−151047A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10112(P2011−10112)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】