説明

ワイヤハーネス

【課題】曲げ可能であるとともに所望の形状に保持することも可能な、また、プロテクタほど構造を複雑化せずにコストを抑えることも可能な、ワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス9は、二本の高圧電線19と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材20と、シールド部材20の外側に設けられる外装部材21とを含んで構成されている。外装部材21は、収縮チューブ28からなり、この収縮チューブ28を収縮させると、ワイヤハーネス9の配索経路に合わせて曲げ部29が形成されるようになっている。そして、外装部材21は、曲げ部29の形成により、配索経路の形状を保持することができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一又は複数本の導電路と、これを収容する筒状の外装部材とを含むワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、三本の高圧電線と、この三本の高圧電線を一本ずつ収容して保護するための三本の金属保護パイプとを備えて構成されている。高圧電線は、車両の前側に搭載されるモータと、車両の中間又は後側に搭載されるインバータとを接続するものとして備えられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、車体フレームの外側となる車体床下を通って配索されるようになっている。このため、金属保護パイプは石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護することができるように形成されている。金属保護パイプは、石跳ねや水跳ねから高圧電線を保護し且つ高圧電線の撓みを防止する剛性を有するとともに、金属製であることから電磁シールド機能も有している。
【0004】
ワイヤハーネスは、真っ直ぐな状態の金属保護パイプに高圧電線を挿通し、この挿通を三本分行った後に、車体床下におけるワイヤハーネスの配索経路に沿って金属保護パイプに曲げを施すことにより製造されている。ワイヤハーネスは、ハーネスメーカーの工場で上記の如く製造された後に、自動車メーカーの組み立て工場へと搬送されて車両の所定位置に組み付けられ、これにより配索が完了するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来技術にあっては、ワイヤハーネスの搬送の際に、金属保護パイプ同士が接触したり変形したりしてしまわないようにするため、金属保護パイプ毎、及びワイヤハーネス毎に十分なスペースを確保する必要があるという問題点を有している。また、金属保護パイプを三次元的に曲げ加工していることから、立体的なスペースを確保する必要もあるという問題点を有している。
【0007】
上記問題点を解消するためとして、曲げ可能な管体を金属保護パイプの代替部材とすることが考えられる。しかしながら上記曲げ可能な管体を単に代替部材とするだけでは、次のような幾つかの問題点を解消することは困難である。
【0008】
すなわち、曲げ可能であるだけの管体では、ワイヤハーネスの組み付け・配索時及び配索後において、所望の形状を保持することが困難であるという問題点を有している。また、所望の形状を保持することが困難であれば、このような管体を車両の所定位置に組み付けるにあたり例えばプロテクタを追加する必要があるが、プロテクタは配索経路に合わせて樹脂成形される部材であることから、車両毎に専用設計・専用部材になってしまうという問題点、さらには汎用性が低くコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0009】
プロテクタに関しては、開発段階で何度も試作金型を起こす場合があることから、設計費用、金型費用、設計時間等が掛かってしまうという問題点を有している。また、プロテクタに関しては、管体への組み付け部分が大型化することから、地面に近づき不具合が生じてしまうという問題点を有している。
【0010】
尚、従来技術の金属保護パイプは、防食処理や塗装、さらには高圧であることを示す所定の色付け等の各種工程を行わなければならないことから、これらの面でもコスト高になってしまうという問題点を有している。また、金属保護パイプは、ベンダー機などによる曲げ加工の際において、パイプに潰れが生じてしまう虞があり、仮に潰れた場合には内部の高圧電線が圧迫によって損傷してしまうという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、曲げ可能であるとともに所望の形状に保持することも可能な、また、プロテクタほど構造を複雑化せずにコストを抑えることも可能な、ワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、該一又は複数本の導電路を収容する筒状の外装部材とを含むワイヤハーネスにおいて、前記外装部材は収縮チューブからなり、収縮させつつ配索経路に合わせた曲げ部を形成するとともに、該曲げ部の形成にて前記配索経路の形状を保持することを特徴とする。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路と、収縮チューブからなる外装部材とを備えるワイヤハーネスになる。収縮チューブからなる外装部材は、この収縮により配索経路に合わせた曲げ部を形成する。曲げ部が形成されると、ワイヤハーネスは所望の配索経路の形状に保持される。すなわち、ワイヤハーネスは、収縮チューブからなる外装部材により、所望の配索経路形状に保持される。
【0014】
請求項2に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスに係り、前記収縮チューブからなる前記外装部材は、導電性を有してシールド部材としても機能することを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、収縮チューブからなる外装部材は導電性を有する。導電性を有する外装部材は、シールド部材としても機能する。すなわち、シールド部材を別途、ワイヤハーネスの構成に含ませる必要がなくなる。
【0016】
請求項3に記載の本発明のは、請求項1又は2に記載のワイヤハーネスに係り、前記一又は複数本の導電路の端末位置に設けられる接続部材を更に含み、前記収縮チューブはこの収縮により前記接続部材の外面に密着する止水部を有することを特徴とする。
【0017】
このような特徴を有する本発明によれば、一又は複数本の導電路と、収縮チューブからなる外装部材と、接続部材とを備えるワイヤハーネスになる。収縮チューブからなる外装部材は、この収縮により接続部材の所定部分に止水部を形成する。止水部は、接続部材の外面に密着して接続部材内への水分の浸入を規制する。本発明によれば、止水のための部材(例えばゴム栓等)を別途、ワイヤハーネスの構成に含ませる必要はない。収縮チューブからなる外装部材の端末部分は、止水のための部分として機能する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載された本発明によれば、外装部材として収縮チューブを用いることから、収縮チューブを収縮させる前において曲げ可能とすることができ、収縮後は所望の配索経路形状に保持することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、外装部材として収縮チューブを用いることから、プロテクタほど構造を複雑化せずに経路保持と保護をすることができ、以てコストを抑えることもできるという効果を奏する。
【0019】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、外装部材をシールド部材としても機能させることから、電磁シールドに係る部品点数の増大を抑えてコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項1、2の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、外装部材の端末に接続部材の外面に対し密着して止水をする部分を有することから、止水構造に係る部品点数の増大を抑えてコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のワイヤハーネスの配索例を示す自動車の模式図である(実施例1)。
【図2】図1のワイヤハーネスの一端側を示す模式的な断面図である。
【図3】図1のワイヤハーネスの他端側を示す模式的な断面図である。
【図4】図1のワイヤハーネスの製造に係る説明図である。
【図5】本発明のワイヤハーネスの他の例を示す模式的な断面図である(実施例2)。
【図6】本発明のワイヤハーネスの更に他の例を示す断面図である(実施例3)。
【図7】本発明のワイヤハーネスの更に他の例を示す断面図である(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、収縮チューブからなる外装部材とを備えて構成される。
【実施例1】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの配索例を示す自動車の模式図である。また、図2はワイヤハーネスの一端側を示す模式的な断面図、図3はワイヤハーネスの他端側を示す模式的な断面図、図4はワイヤハーネスの製造に係る説明図である。
【0024】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0025】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載されている。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載されている(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0026】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8により接続されている。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続されている。ワイヤハーネス9は、高圧用のものとして構成されている。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車体床下11の地面側に配索されている。また、車体床下11に沿って略平行に配索されている。車体床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が挿通されている。
【0027】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続されている。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続されている。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続されている。
【0028】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0029】
以下、本発明に関し、ワイヤハーネス9を例に挙げて説明をするものとする。本発明は、ワイヤハーネス9に限らず、ワイヤハーネス8にも適用可能であるものとする。
【0030】
ワイヤハーネス9は、インバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線19(導電路)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材20と、シールド部材20の外側に設けられる外装部材21とを含んで構成されている。
【0031】
以下での説明にあたり、インバータユニット4に近い側を一端と呼ぶものとする。また、バッテリー5に近い側を他端と呼ぶものとする。
【0032】
先ず、上記構成部材について説明をする。
【0033】
図2及び図3において、高圧電線19は、導体22(図4参照)及び絶縁体(被覆)23を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0034】
尚、本実施例においては高圧電線19を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧の導電路としたもの等や、n系統の回路(n個の回路)を同軸で一本に構成することによりなる高圧同軸複合導電路等を用いてもよいものとする。
【0035】
上記高圧同軸複合導電路の一例としては、プラス極導体及びマイナス極導体のいずれか一方と、このいずれか一方の外側を覆うように設けられる第一絶縁体と、第一絶縁体の外側を覆うように設けられるプラス極導体及びマイナス極導体のいずれか他方と、このいずれか他方の外側を覆うように設けられる第二絶縁体とを含み、全体が一本で構成された導電路が挙げられるものとする。
【0036】
高圧電線19の一端及び他端は、共に所定長さで絶縁体23が除去されている。この除去部分からは、導体22(図4参照)が露出するようになっている。露出した導体22には、端子金具24が接続されている。端子金具24は、インバータユニット4の図示しない接続部に対し接続される部分として、また、バッテリー5(ジャンクションブロック12)の図示しない接続部に対し接続される部分として設けられている。
【0037】
シールド部材20として本実施例においては、編組25が用いられている。編組25は、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、編組25は、二本の高圧電線19のほぼ全長を覆うことのできる大きさに形成されている。編組25は、導電性を有する極細の素線を多数用い、これを筒状に編んで形成されている。
【0038】
上記素線に関しては、軟銅等の金属素線、非金属繊維からなる極細の素線などが挙げられるものとする。非金属繊維は、炭素繊維、又は樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性樹脂繊維が挙げられるものとする。尚、これらの素線の他に、例えば耐摩耗性を持たせるための樹脂素線(PETの素線)を混在させるようにしてもよいものとする。
【0039】
編組25以外のシールド部材20としては、金属箔単体、若しくは金属箔を含むフィルム状、シート状のものが挙げられるものとする。電磁シールド機能を有し、柔軟性を有するものであれば特に限定されないものとする。
【0040】
編組25の一端及び他端には、シールドシェル26が設けられている。シールドシェル26は、公知のものが用いられており、インバータユニット4及びバッテリー5の各シールドケース27等に対し接続固定をすることができるように形成されている。尚、シールドシェル26と編組25の一端及び他端との接続固定は、公知のシールドリングを加締める工法が採用されるものとする(一例であるものとする)。
【0041】
図1ないし図3において、外装部材21は、収縮チューブ28からなり、この収縮チューブ28を収縮させると、ワイヤハーネス9の配索経路に合わせて曲げ部29が形成されるようになっている。そして、外装部材21は、曲げ部29の形成により、上記配索経路の形状を保持することができるようになっている。
【0042】
収縮チューブ28は、この収縮前の状態として、真っ直ぐな筒状に形成されている。このような収縮チューブ28は、二本の高圧電線19及びシールド部材20を簡単に挿通することができるように内径寸法が設定されている。収縮チューブ28は、収縮後の状態として、二本の高圧電線19及びシールド部材20を圧迫することのないように内径寸法が設定されている。
【0043】
収縮チューブ28としては、本実施例において熱により収縮する熱収縮チューブが用いられている(熱で収縮させるのは一例であるものとする。すなわち、常温で収縮させるものを用いてもよいものとする)。
【0044】
材質としては、本実施例においてエチレンプロピレンゴム(EPDM)が採用されている。尚、外装部材(保護部材)としての機能を確保することができれば、例えばポリオレフィン系、フッ素樹脂、シリコーン等を採用してもよいものとする。厚みに関しては、外装部材(保護部材)としての機能を確保することができれば、特に限定されないものとする。
【0045】
材質に関し、他の実施例で説明するようになるが、導電性材料を混ぜてもよいものとする。すなわち、導電性を有する熱収縮チューブを得るための材料を採用してもよいものとする。この他、ワイヤハーネス9が高圧のものであると認識させるためとして、オレンジ色に着色できる材料を混ぜてもよいものとする。
【0046】
次に、ワイヤハーネス9の製造について説明をする(以下で説明する各作業に限らないものとする)。
【0047】
図4(a)において、先ずはじめに二本の高圧電線19をシールド部材20(編組25)にて一括して覆い、そして、この外側に収縮前の収縮チューブ28を挿通する作業を行う。尚、高圧電線19、シールド部材20、及び収縮前の収縮チューブ28は、予め所定長さに加工されているものとする。
【0048】
続いて、図4(b)に示す如く高圧電線19とシールド部材20の一端及び他端に端子金具24やシールドシェル26を設ける作業を行う(この作業は収縮前の収縮チューブ28を挿通する作業よりも前に行ってもよいものとする)。
【0049】
続いて、例えば自動車メーカーの組み立て工場へと搬送し、その後、ハイブリッド自動車1(図1参照)の近傍において配索経路に合わせた曲げ形状を形成する作業を行う。
【0050】
配索経路に合わせた曲げ形状を形成した後は、収縮前の収縮チューブ28に対しこの全体に熱30を均等に加えて収縮させる作業を行う。収縮チューブ28が収縮すると、図4(c)に示す如く外装部材21の形成が完了するとともにワイヤハーネス9の製造も完了する。ワイヤハーネス9は、この製造後、ハイブリッド自動車1(図1参照)の所定位置に組み付けられて配索が完了する。
【0051】
以上、図1ないし図4を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス9は、導電路としての二本の高圧電線19と、収縮チューブ28からなる外装部材21とを備えて構成されている。収縮チューブ28からなる外装部材21は、収縮チューブ28の収縮により配索経路に合わせた曲げ部29を形成し、これにより配索経路の形状を保持することができる。
【0052】
ワイヤハーネス9は、外装部材21として収縮チューブ28を用いることから、この収縮チューブ28を収縮させる前において曲げ可能とすることができ、収縮後は所望の配索経路形状に保持することができる。
【0053】
外装部材21として収縮チューブ28を用いることにより、プロテクタほど構造を複雑化せずに経路保持と保護をすることができる。また、プロテクタを用いる必要がないことから、コストを抑えることもできる。
【0054】
収縮チューブ28を収縮させる作業は、経路保持のために設けられるプロテクタの組み付け作業よりも簡単であるのは勿論である。
【実施例2】
【0055】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図5は本発明のワイヤハーネスの他の例を示す模式的な断面図である。尚、上記実施例1と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
図5において、ワイヤハーネス41は、インバータユニット4とバッテリー5とを電気的に接続するためのものであって、二本の高圧電線19(導電路)と、この二本の高圧電線19を覆いシールドするシールド部材42とを備えて構成されている。シールド部材42は、外装部材兼シールド部材43(外装部材、シールド部材)と、この外装部材兼シールド部材43の一端及び他端に設けられる端末シールド部材44とを備えて構成されている。
【0057】
外装部材兼シールド部材43は、導電性を有する収縮チューブ、すなわち導電性収縮チューブ45からなり、この導電性収縮チューブ45を収縮させると、ワイヤハーネス41の配索経路に合わせて曲げ部(実施例1の曲げ部29参照)が形成されるようになっている。そして、外装部材兼シールド部材43は、収縮により曲げ部が形成されると、上記配索経路の形状を保持することができるようになっている。
【0058】
導電性収縮チューブ45は、この収縮前の状態として、真っ直ぐな筒状に形成されている。導電性収縮チューブ45は、二本の高圧電線19及び端末シールド部材44の後述するチューブ接続部48を簡単に挿通することができるように内径寸法が設定されている。収縮後は、二本の高圧電線19を圧迫することのないように内径寸法が設定されている。また、収縮後の状態として、後述するチューブ接続部48に接触し電気的な接続がなされるように内径寸法が設定されている。
【0059】
導電性収縮チューブ45としては、本実施例において熱により収縮する導電性の熱収縮チューブが用いられている(熱で収縮させるのは一例であるものとする)。材質としては、本実施例においてエチレンプロピレンゴム(EPDM)に導電性材料を混ぜたものが採用されている。尚、導電性材料を混ぜても外装部材(保護部材)としての機能や、シールド部材としての機能を確保することができれば、例えばポリオレフィン系、フッ素樹脂、シリコーン等を採用してもよいものとする。この他、ワイヤハーネス41が高圧のものであると認識させるために、オレンジ色に着色できる材料を混ぜてもよいものとする。厚みに関しては、外装部材(保護部材)としての機能を確保することができれば、特に限定されないものとする。
【0060】
導電性を持たせることに関しては、導電性材料を混ぜることの他に、次のような加工も有効であるものとする。すなわち、熱収縮チューブ内面に蒸着メッキを施したり、金属箔を筒状に貼り付けたりする加工も有効であるものとする。
【0061】
端末シールド部材44は、編組46と、この編組46の機器側に設けられるシールドシェル47と、シールドシェル47の反対側に設けられるチューブ接続部48とを有している。
【0062】
編組46は、電磁シールド用の筒状の部材であって(編組46に限らず、金属箔単体、若しくは金属箔を含むフィルム状、シート状のものであってもよいものとする)、二本の高圧電線19の端末部分を覆うことのできる大きさに形成されている。編組46は、導電性を有する極細の素線を多数用い、これを筒状に編んで形成されている。
【0063】
シールドシェル47は、公知のものが用いられており、インバータユニット4及びバッテリー5の各シールドケース27等に対し接続固定をすることができるように形成されている。尚、シールドシェル47と編組46の端部との接続固定は、公知のシールドリングを加締める工法が採用されているものとする(一例であるものとする)。
【0064】
チューブ接続部48は、収縮させた導電性収縮チューブ45の一端及び他端を接触させる部分として編組46の端部に配置形成されている。本実施例においては、編組46の端部を折り返して厚みを持たせるように形成されている(一例であるものとする。導電性収縮チューブ45との接触が可能であれば特に限定されないものとする)。
【0065】
上記構成及び構造において、ワイヤハーネス41は、導電性収縮チューブ45からなる外装部材兼シールド部材43を外装部材として、また、シールド部材として備えることから、外装部材兼シールド部材43を配設する箇所に専用のシールド部材を別途設ける必要はなく、結果、電磁シールドに係る部品点数の増大を抑えてコスト低減を図ることができる。
【0066】
また、ワイヤハーネス41は、編組46の占める割合が実施例1よりも少なくなることから、軽量化を図ることもできる。
【0067】
ワイヤハーネス41は、実施例1と同様の効果を奏するのは勿論である。
【実施例3】
【0068】
以下、図面を参照しながら実施例3を説明する。図6は本発明のワイヤハーネスの更に他の例を示す断面図である。
【0069】
図6において、ワイヤハーネス51は、二本の高圧電線52(導電路。ここでは一本のみ図示)と、外装部材兼シールド部材53(外装部材、シールド部材)と、高圧電線52の一端側に設けられるインバータ側接続部材54(接続部材)と、他端側に設けられる図示しないバッテリー側接続部材(接続部材)とを備えて構成されている。図示しないバッテリー側接続部材は、基本的にインバータ側接続部材54と同様に構成されている。
【0070】
高圧電線52は、導体55と、この導体55を被覆する絶縁体56とを備えて構成されている。高圧電線52は、この端末において所定の長さ分だけ絶縁体56が皮剥されて導体55が露出するように加工されている。導体55は、ここでは素線(銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金からなる素線)を撚り合わせてなる導体構造のものが用いられている。導体55は、特に限定するものでないが、断面略丸形(円形)となる形状に形成されている。尚、導体55に関し、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造)のものであってもよいものとする。また、例えば編組バスバーからなる導体構造のものであってもよいものとする。
【0071】
絶縁体56は、絶縁性を有する樹脂材料を導体55の外側に押し出し被覆することによりなるものであって、ここでは公知のものが用いられている。
【0072】
高圧電線52は、高圧用であることから、太物の電線に形成されている。
【0073】
外装部材兼シールド部材53は、導電性を有する収縮チューブ、すなわち導電性収縮チューブ57からなり、この導電性収縮チューブ57を収縮させると、ワイヤハーネス51の配索経路に合わせて曲げ部(実施例1の曲げ部29参照)が形成されるようになっている。そして、外装部材兼シールド部材53は、収縮により曲げ部が形成されると、上記配索経路の形状を保持することができるようになっている。
【0074】
導電性収縮チューブ57は、この収縮前の状態として、真っ直ぐな筒状に形成されている。このような導電性収縮チューブ57は、二本の高圧電線52や、インバータ側接続部材54及び図示しないバッテリー側接続部材の所定部分を簡単に挿通することができるように内径寸法が設定されている。導電性収縮チューブ57は、収縮後の状態として、二本の高圧電線52を圧迫することのないように内径寸法が設定されている。また、収縮後の状態として、上記所定部分に接触し電気的に接続されるとともに、上記所定部分に密着して水密状態になるように内径寸法が設定されている。
【0075】
導電性収縮チューブ57としては、実施例2の導電性収縮チューブ45(図5参照)と同様のものが用いられている。すなわち、熱により収縮する導電性の熱収縮チューブが用いられている。
【0076】
インバータ側接続部材54は、所謂コネクタであって、インバータユニット4(図1及び図2参照)のシールドケース27(図2参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるように構成されている。インバータ側接続部材54は、端子金具58と、ハウジング59と、端子係止部材60と、シール部材61、62と、シールドシェル63と、このシールドシェル63を固定するための図示しないボルトとを備えて構成されている。
【0077】
端子金具58は、導電性を有する金属板をプレス加工することにより形成されている。端子金具58は、ここでは雄型のものが用いられている。端子金具58は、電気接触部64と、この電気接触部64に連続する電線接続部65とを有している。
【0078】
電気接触部64は、タブ状に形成されている。電気接触部64には、第一貫通孔66と、第二貫通孔67とが形成されている。第一貫通孔66は、インバータユニット4(図1及び図2参照)の内部において電気的な接続に用いられる部分として形成されている。一方、第二貫通孔67は、端子係止部材60により係止される部分として形成されている。
【0079】
電線接続部65は、高圧電線52の導体55を接続固定することができるように形成されている。本実施例においては、バレル形状であって加締めにより導体55を圧着して接続することができるように形成されている(接続に関しては、溶接等も可能であるものとする)。
【0080】
ハウジング59は、絶縁性を有する樹脂成形品(絶縁部材)であって、ハウジング本体68を有して図示形状に形成されている(形状は一例であるものとする)。
【0081】
ハウジング本体68の内部には、端子収容室69が形成されている。端子収容室69は、高圧電線52の導体55に接続固定された端子金具58の電線接続部65が主に収容されるように形成されている。端子収容室69には、ハウジング先端に向けて貫通する電気接触部導出穴70が形成されている。
【0082】
端子金具58は、端子収容室69に収容されると、電気接触部導出穴70を介して電気接触部65がハウジング先端から突出するようになっている。
【0083】
ハウジング本体68には、電気接触部導出穴70に連通する端子係止部材収容穴71が下方から上方へ向けて形成されている。端子金具58は、端子係止部材収容穴71に嵌合する端子係止部材60により第二貫通孔67が係止され、これにより抜け止めがなされるようになっている。
【0084】
端子収容室69と電気接触部導出穴70との連続部分には、シール部材収容穴72が形成されている。シール部材収容穴72に収容されたシール部材61は、電気接触部64に対して水密に接触するようになっている。尚、シール部材61を設けることは任意であるものとする(外装部材兼シールド部材53が止水構造として機能するため。これに関しては後述する)。
【0085】
ハウジング本体68の外部には、フランジ部73が形成されている。このフランジ部73には、シール部材収容溝74が形成されている。シール部材収容溝74に収容されたシール部材62は、インバータユニット4(図1及び図2参照)のシールドケース27(図2参照)に対して水密に接触するようになっている。
【0086】
シールドシェル63は、金属製又は導電性樹脂成型品であって、筒状のシェル本体75と、シールドケース27(図2参照)に対する固定部分としてのシェル固定部76とを有している。シェル本体75の外面には、導電性収縮チューブ57からなる外装部材兼シールド部材53の収縮によりこの端部が密着する止水部77が形成されている。尚、引用符号78は外装部材兼シールド部材53の止水部を示している。
【0087】
上記構成及び構造において、端子収容室69の後方に存在する空間79は、高圧電線52とハウジング59とをシールするシール部材や、このシール部材を押さえるリアホルダを取り付ける部分として本来用いられる。しかしながら、本実施例では外装部材兼シールド部材53が密着して水密状態を形成することから、すなわち止水構造として機能することから、不要な空間79となっている。つまり、ワイヤハーネス51は、外装部材兼シールド部材53をインバータ側接続部材54の所定位置に密着させることから、シール部材やリアホルダの分の部品点数を減らすことができる。従って、コスト低減を図ることができる。
【0088】
ワイヤハーネス51は、実施例1、2と同様の効果を奏するのは勿論である。
【実施例4】
【0089】
以下、図面を参照しながら実施例4を説明する。図7は本発明のワイヤハーネスの更に他の例を示す断面図である。尚、上記実施例3と同一の構成部材には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0090】
図7において、実施例4のワイヤハーネス91は、実施例3のワイヤハーネス51(図6参照)の変形例であり、次の点が異なっている。すなわち、シールド部材92をシールドシェル93の筒状のシェル本体94に一体化(ここではインサート成型)する点と、シェル本体94の外面に外装部材95を密着させるように配設する点とが異なっている。
【0091】
尚、引用符号96、97は止水部を示している。引用符号98はインバータ側接続部材(接続部材)を示している。引用符号99は収縮チューブを示している。
【0092】
シールド部材92は、実施例1のシールド部材20(図1ないし図4参照)と同様のものとなっている。外装部材95は、実施例1の外装部材21(図1ないし図4参照)と同様のものとなっている。
【0093】
従って、ワイヤハーネス91は、実施例1〜3と同様の効果を奏するのは勿論である。
【0094】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0095】
上記説明では、外装部材が長い状態に形成されているが、この限りでないものとする。すなわち、外装部材はワイヤハーネスの曲げ部分にのみ配設できるような比較的短い状態で且つ一又は複数存在するような状態に形成されてもよいものとする。
【符号の説明】
【0096】
1…ハイブリッド自動車、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8…高圧ワイヤハーネス、 9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車体床下、 12…ジャンクションブロック、 13…後端、 14…前端、 19…高圧電線(導電路)、 20…シールド部材、 21…外装部材、 22…導体、 23…絶縁体、 24…端子金具、 25…編組、 26…シールドシェル、 27…シールドケース、 28…収縮チューブ、 29…曲げ部、 30…熱、 41…ワイヤハーネス、 42…シールド部材、 43…外装部材兼シールド部材(外装部材、シールド部材)、 44…端末シールド部材、 45…導電性収縮チューブ(収縮チューブ)、 46…編組、 47…シールドシェル、 48…チューブ接続部、 51…ワイヤハーネス、 52…高圧電線(導電路)、 53…外装部材兼シールド部材(外装部材、シールド部材)、 54…インバータ側接続部材(接続部材)、 57…導電性収縮チューブ(収縮チューブ)、 77、78…止水部、 91…ワイヤハーネス、 92…シールド部材、 93…シールドシェル、 94…シェル本体、 95…外装部材、 96、97…止水部、 98…インバータ側接続部材(接続部材)、 99…収縮チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路と、該一又は複数本の導電路を収容する筒状の外装部材とを含むワイヤハーネスにおいて、
前記外装部材は収縮チューブからなり、収縮させつつ配索経路に合わせた曲げ部を形成するとともに、該曲げ部の形成にて前記配索経路の形状を保持する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記収縮チューブからなる前記外装部材は、導電性を有してシールド部材としても機能する
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記一又は複数本の導電路の端末位置に設けられる接続部材を更に含み、前記収縮チューブはこの収縮により前記接続部材の外面に密着する止水部を有する
ことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114785(P2013−114785A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257416(P2011−257416)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】