ワイヤハーネス
【課題】電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネスの軽量化と車両の軽量化を図ることができるワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス11は、一又は複数本の導電路となる高圧電線19と、この高圧電線19を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材20とを備える。保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなり、保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂被覆部で覆うと共に、保護部材の端末を露出してシールド部材22と接続する構成。
【解決手段】ワイヤハーネス11は、一又は複数本の導電路となる高圧電線19と、この高圧電線19を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材20とを備える。保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなり、保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂被覆部で覆うと共に、保護部材の端末を露出してシールド部材22と接続する構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の機器、すなわちモータユニットやインバータユニット、バッテリーなどの機器を電気的に接続するためとして、高圧のワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、機器間を電気的に接続する三本の電線と、三本の電線をこの全長の大半にわたって収容するメインシールド部と、メインシールド部の端部からのびる三本の電線を覆うサブシールド部とを備えて構成されている。ワイヤハーネスは、機器の搭載位置にもよるが、配索経路が非常に長いものになっている。
【0004】
三本の電線の各端末には、端子金具が設けられている。端子金具は、ワイヤハーネスの製造後、電線の端末と一緒に機器のシールドケース内に差し込まれ、機器本体の所定位置に配設された接続部に対し例えばボルト締め等で接続されるようになっている。
【0005】
メインシールド部は、導電性を有する一本の長い金属パイプが用いられている。メインシールド部は、この小径化を図るためとして、三本の電線だけを挿通することができる大きさに内径が形成されている。
【0006】
サブシールド部は、筒状に形成された編組と、この編組の一端に固定されるシールドシェルと、編組の他端に固定される接続パイプとを備えて構成されている。シールドシェルは、機器のシールドケースに接続固定する部分として備えられている。
【0007】
編組とシールドシェルは、これらを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分にシールドリングを配置し、この後にシールドリングに対して加締めを施すことにより固定されている。このような固定は、編組と接続パイプとの固定にも採用されている。すなわち、編組と接続パイプとを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分に加締めリングを配置し、この後に加締めリングに対し加締めを施すことにより固定されている。
【0008】
接続パイプは、メインシールド部と同じ材質及び同じ内径の金属パイプが用いられている。接続パイプは、メインシールド部よりも長さが格段に短くなるように形成されている。接続パイプは、この端部をメインシールド部の端部に一致させた後に、溶接により固定されている。
【0009】
上記構成及び構造において、上記の如く、溶接にてサブシールド部がメインシールド部に一体化することから、ワイヤハーネスは非常に長い金属パイプからなるシールド部材を備えていることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のワイヤハーネスにあっては、金属パイプを用いることで電磁波対策としての電磁シールド効果は得られるものの、次のような問題点を有している。すなわち、ワイヤハーネスが非常に長い金属パイプからなるシールド部材を備えることになるため、ワイヤハーネス全体としての重量が大きくなってしまうという問題点を有している。係る問題点は、車両の軽量化にも影響を来すことになる。
【0012】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネスの軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、前記導電路を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材とを備えるワイヤハーネスにおいて、前記保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成されたパイプ状の保護部材を備えるワイヤハーネスとなる。保護部材は導電性を有する樹脂組成物からなることから、金属パイプと比べて軽量化を図ることができる。また、導電性を有することから電磁シールド効果も確保することができる。
【0015】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂組成物からなる絶縁性樹脂被覆部で覆うことを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、保護部材の外面を絶縁性樹脂被覆部で覆う構成であるため、衝撃等の外力からワイヤハーネスの保護を図りつつ、保護部材の外側に例えばプロテクタ等の外装部材を設けることなく絶縁性樹脂被覆部による経路規制を行うことが可能となる。
【0017】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とすることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とする構成であるため、衝撃等の外力からワイヤハーネスの保護を図る部分と、例えば編組等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材を備えるワイヤハーネスとなるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネスの軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、保護部材の外面を絶縁性樹脂被覆部で覆うことから、ワイヤハーネスにおける保護機能を高めることができるという効果を奏する。また、絶縁性樹脂被覆部によるワイヤハーネスの経路規制を行うことが可能となるため、プロテクタ等の外装部材を設ける必要がなくワイヤハーネスの経路規制に係る部品点数や外装部材の組み付けに係る作業工数を削減でき、製造コストを削減し、また、作業性の向上を図ることが可能なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【0021】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項2の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、衝撃等の外力からワイヤハーネスを保護する部分と、例えば編組等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材となることから、保護機能を確保しつつ、保護部材の端末におけるシールド部材の接続部分も確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のワイヤハーネスを配索した車両の模式図である。
【図2】ワイヤハーネスの構成を示す断面図である(実施例1)。
【図3】保護部材の構成を示す断面図である(実施例1)。
【図4】ワイヤハーネスの構成を示す断面図である(実施例2)。
【図5】保護部材の構成を示す断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ワイヤハーネスは、複数本の高圧電線(導電路)と、この複数本の高圧電線を一括して覆いシールドする保護部材と、保護部材の両端末部分に接続される端末シールド部材とを含んで構成されている。
【実施例1】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスを配索した車両の模式図である。また、図2はワイヤハーネスの構成を示す断面図である。図3は保護部材の構成を示す断面図である。
【0025】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0026】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネス用中間部材及びワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0027】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2、フロントモーターユニット3、及びリアモーターユニット4を併用して駆動する車両であって、フロントモーターユニット3はフロントインバータユニット5を介して、また、リアモーターユニット4はリアインバータユニット6を介してバッテリー7(電池パック、組電池)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、フロントモーターユニット3、及びフロントインバータユニット5は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム8に搭載されている。また、リアモーターユニット4、リアインバータユニット6、及びバッテリー7は、後輪等がある自動車後部9に搭載されている(搭載位置は一例であるものとする。尚、バッテリー7に関しては、ハイブリッド自動車1や電気自動車等に使用可能であれば特に限定されないものとする)。
【0028】
フロントモーターユニット3とフロントインバータユニット5は、高圧のワイヤハーネス10により接続されている。また、フロントインバータユニット5とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス11により接続されている。さらに、リアモーターユニット4とリアインバータユニット6も高圧のワイヤハーネス12により接続されている。さらにまた、リアインバータユニット6とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス13により接続されている。
【0029】
ワイヤハーネス11は、この中間部14が車体床下15の地面側に配索されている。ワイヤハーネス11は、車体床下15に沿って略平行に配索されている。車体床下15は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔は、ワイヤハーネス11の挿通部分となっている。
【0030】
ワイヤハーネス12は、この中間部16が自動車後部9における車体床下17を貫通するように配索されている。ワイヤハーネス12が挿通される貫通孔は、上記ワイヤハーネス11の貫通孔と同様に形成されている。引用符号18は室内を示している。
【0031】
尚、ワイヤハーネス10は、フロントモーターユニット3に接続されることから、また、ワイヤハーネス12は、リアモーターユニット4に接続されることから、モーターケーブルやモーターケーブル装置と呼ばれることもある。この他、ワイヤハーネス11は、車体床下15に配索されることから、床下ワイヤハーネスと呼ばれることもある。
【0032】
以下、本発明に関し、ワイヤハーネス11を例に挙げて説明をするものとする。本発明は、ワイヤハーネス11に限らず、ワイヤハーネス10、12、13にも適用可能であるものとする。
【0033】
ワイヤハーネス11は、フロントインバータユニット5とバッテリー7とを電気的に接続するためのものであって(図1参照)、図2に示す如く、二本の高圧電線19(導電路)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材兼用の保護部材20と、柔軟な二つの端末シールド部材22、23とを含んで構成されている。保護部材20は、本発明の特徴的な部材であって、導電性を有する樹脂組成物をパイプ状に形成したものをワイヤハーネス11の保護部材20として用いる構成となっている。また、保護部材20は、上記の如く、シールド部材兼用であることから、シールド機能を発揮させる部材となっている。
【0034】
保護部材20は、上記の如く、導電性を有する樹脂組成物からなり、図2、図3に示す如く、二本の高圧電線19の所定範囲を覆うことができる大きさ(直径)及び長さに形成されている。保護部材20は、本実施例において、導電性を有する樹脂組成物を断面円形のパイプ状に押し出して成型されている。導電性を有する樹脂組成物としては、樹脂材料に導電性材料を混ぜてなるものが挙げられる。具体的には、PBT等の樹脂材料にカーボンファイバを混ぜてなるものが一例として挙げられる。保護部材20は、金属製ではなく樹脂製であることから、軽量なものとなっている。
【0035】
高圧電線19は、導体及び絶縁体(被覆)24を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体(図示省略)は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0036】
尚、本実施例においては高圧電線19を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧の導電路としたもの等を用いてもよいものとする。
【0037】
高圧電線19は、両端部とも所定長さで絶縁体24が除去されている。この除去部分からは、導体(図示省略)が露出するようになっている。露出した導体には、端子金具25が接続されている(図2参照)。端子金具25は、フロントインバータユニット5の図示しない接続部に対し接続される部分として、また、バッテリー7の図示しない接続部に対し接続される部分として設けられている。
【0038】
図1において、一の端末シールド部材22は、フロントインバータユニット5への接続部材として、また、他の端末シールド部材23は、バッテリー7への接続部材として設けられている。保護部材20は、この一端に端末シールド部材22が接続されるとともに、他端に端末シールド部材23が接続されている。
【0039】
二つの端末シールド部材22、23は、図2に示す如く、編組26と、この編組26の一端に電気的に接続されるシールドシェル27とを含んで構成されている。一の端末シールド部材22を構成するシールドシェル27は、フロントインバータユニット5のシールドケースに対し接続固定をすることができるように形成されている。また、他の端末シールド部材23を構成するシールドシェル27は、バッテリー7に対し接続固定をすることができるように形成されている。
【0040】
編組26は、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、編組26は、図2に示す如く、二本の高圧電線19の所定範囲を覆うことができる大きさ形成されている。編組26は、導電性を有する極細の素線を多数用い、これを網状に編んで形成されている。
【0041】
上記素線に関しては、軟銅等の金属素線、非金属繊維からなる極細の素線などが挙げられるものとする。非金属繊維は、炭素繊維、又は樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性樹脂繊維が挙げられるものとする。尚、これらの素線の他に、例えば耐摩耗性を持たせるための樹脂素線(PETの素線)を混在させるようにしてもよいものとする。本実施例において編組26と、保護部材20の端末33及び後述するシールドシェル27との溶接による接続固定のため、導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組26が用いられている(一例であって、これに限られるものではない)。
【0042】
シールドシェル27は、本実施例において導電性を有する樹脂組成物からなる導電性樹脂シールドシェルが用いられているが、これ以外にも、例えば、導電性を有する金属からなるシールドシェル等を用いてもよいものとする。尚、編組26とシールドシェル27との接続固定は、例えば、編組26とシールドシェル27との接続箇所における溶接、溶着、接着、半田付け等を行う方法が挙げられる。溶接による接続の一例としては、導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組26と、導電性樹脂組成物からなるシールドシェル27とが図2に示す如く溶接され、編組26とシールドリング27の外周面との間に形成される接続部分28によって接続固定がなされている。従って、編組26とシールドシェル27とが重なり合う部分においてシールドリング等による加締めを施す作業が不要となり、ワイヤハーネス11の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。すなわち、ワイヤハーネス11の製造に係る製造コストを削減し、また、ワイヤハーネス11の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0043】
次に、保護部材20の端末33と、編組26との接続固定について説明する。
【0044】
編組26の他端は、保護部材20の端末33に接続固定をすることができるように形成されている。尚、保護部材20と編組26との接続固定は、例えば、保護部材20と編組26との接続箇所における溶接、溶着、接着、半田付け等を行う方法が挙げられる。溶接による接続の一例としては、保護部材20の端末33と導電性樹脂繊維を網状に編んで形成された編組26とが図2に示す如く溶接され、編組26と保護部材20の端末33の外面34との間に形成される接続部分29によって接続固定がなされている。従って、保護部材20の端末33と編組26とが重なり合う部分において加締めリング等による加締めを施す作業が不要となり、ワイヤハーネス11の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。すなわち、ワイヤハーネス11の製造に係る製造コストを削減し、また、ワイヤハーネス11の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0045】
以上、図1から図3までを参照しながら説明してきたように、本発明によれば、金属パイプと比べて軽量な導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材20を備えるワイヤハーネス11となるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネス11の軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるワイヤハーネス11を提供することができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0046】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図4はワイヤハーネスの構成を示す断面図である。図5は保護部材の構成を示す断面図である。
【0047】
実施例2は、実施例1のワイヤハーネス11の保護部材20の外面34に後述する絶縁性樹脂被覆部32が設けられた点以外は同じであるものとする。従って、以下、絶縁性樹脂被覆部32について説明する。
【0048】
図4、図5において、ワイヤハーネス31の保護部材20は、本実施例においてこの保護部材20の外面34に更に絶縁性樹脂被覆部32が形成されている。絶縁性樹脂被覆部32は、保護部材20の上層に相当するものとして絶縁性を有する樹脂組成物からなる層として形成されている。絶縁性樹脂被覆部32は、保護部材20が成型された後、この保護部材20の外面34に対して絶縁性を有する樹脂をオーバーモールド成形することによって形成されている。言い換えれば、本実施例において保護部材20は、第一層と第二層とからなる二層構造を有して形成されているものである。そして、保護部材20が第一層に相当し、保護部材20の上層として形成される絶縁性樹脂被覆部32が第二層に相当するものである。
【0049】
本実施例によれば保護部材20の外面34に絶縁性樹脂被覆部32が形成されることにより、衝撃等の外力からワイヤハーネス31の保護を図りつつ、保護部材20の外側に例えばプロテクタ等の外装部材を設けることなく、絶縁性樹脂被覆部32によるワイヤハーネス31の経路規制を行うことが可能となる。
【0050】
図5に示す如く、本実施例において保護部材20の外面34には、保護部材20の端末33において絶縁性樹脂被覆部32が形成されず、保護部材20の端末33の外面34が露出されるように形成されている。保護部材20の係る露出された端末33の外面34は、シールド部材接続部35として構成されている。
【0051】
図4において、保護部材20のシールド部材接続部35には、端末シールド部材22、23を構成する部材であり且つ一端をシールドシェル27の外周面と接続された編組26の他端が接続される。編組26とシールド部材接続部35との接続は、本実施例において溶接により行うものとする(一例であるのもとする)。編組26とシールド部材接続部35とは、編組26とシールド部材接続部35との間に形成される接続部分29によって接続固定がなされている。尚、本実施例において編組26及びシールドシェル27は、実施例1と同じく導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組及び導電性樹脂組成物から形成されているシールドシェルを用いるものとする(一例であるものとする)。
【0052】
尚、本実施例において保護部材20のシールド部材接続部35に端末シールド部材22、23を予め溶接、溶着、接着、半田付け等により接続固定することができる。このように、保護部材20と端末シールド部材22、23とを一つの部材として一体的に形成することができることから、ワイヤハーネス31の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。従って、ワイヤハーネス31の製造に係る製造コストの削減やワイヤハーネス31の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0053】
以上、図1から図5までを参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材20を備えるワイヤハーネス11、31となるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネス11、31の軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるという効果の他、以下の効果も奏する。
【0054】
本発明によれば、保護部材20の外面34を絶縁性樹脂被覆部32で覆うことからワイヤハーネス31における保護機能を高めることができるという効果を奏する。また、絶縁性樹脂被覆部32によるワイヤハーネス31の経路規制を行うことが可能となるため、プロテクタ等の外装部材を設ける必要がなくワイヤハーネス31の経路規制に係る部品点数や外装部材の組み付けに係る作業工数を削減でき、製造コストを削減し、また、作業性の向上を図ることが可能なワイヤハーネス31を提供することができるという効果を奏する。
【0055】
また、本発明によれば、衝撃等の外力からワイヤハーネス31を保護する部分と、例えば編組26等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材20となることから、保護機能を確保しつつ、保護部材20の端末33におけるシールド部材の接続部分も確保することができるという効果を奏する。
【0056】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…フロントモーターユニット
4…リアモーターユニット
5…フロントインバータユニット
6…リアインバータユニット
7…バッテリー
8…エンジンルーム
9…自動車後部
10〜13、31…ワイヤハーネス
14、16…中間部
15、17…車体床下
18…室内
19…高圧電線(導電路)
20…保護部材
22、23…端末シールド部材
24…絶縁体
25…端子金具
26…編組
27…シールドシェル
28、29…接続部分
32…絶縁性樹脂被覆部
33…端末
34…外面
35…シールド部材接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車の機器、すなわちモータユニットやインバータユニット、バッテリーなどの機器を電気的に接続するためとして、高圧のワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、機器間を電気的に接続する三本の電線と、三本の電線をこの全長の大半にわたって収容するメインシールド部と、メインシールド部の端部からのびる三本の電線を覆うサブシールド部とを備えて構成されている。ワイヤハーネスは、機器の搭載位置にもよるが、配索経路が非常に長いものになっている。
【0004】
三本の電線の各端末には、端子金具が設けられている。端子金具は、ワイヤハーネスの製造後、電線の端末と一緒に機器のシールドケース内に差し込まれ、機器本体の所定位置に配設された接続部に対し例えばボルト締め等で接続されるようになっている。
【0005】
メインシールド部は、導電性を有する一本の長い金属パイプが用いられている。メインシールド部は、この小径化を図るためとして、三本の電線だけを挿通することができる大きさに内径が形成されている。
【0006】
サブシールド部は、筒状に形成された編組と、この編組の一端に固定されるシールドシェルと、編組の他端に固定される接続パイプとを備えて構成されている。シールドシェルは、機器のシールドケースに接続固定する部分として備えられている。
【0007】
編組とシールドシェルは、これらを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分にシールドリングを配置し、この後にシールドリングに対して加締めを施すことにより固定されている。このような固定は、編組と接続パイプとの固定にも採用されている。すなわち、編組と接続パイプとを重ね合わせ、そして、重ね合わせ部分に加締めリングを配置し、この後に加締めリングに対し加締めを施すことにより固定されている。
【0008】
接続パイプは、メインシールド部と同じ材質及び同じ内径の金属パイプが用いられている。接続パイプは、メインシールド部よりも長さが格段に短くなるように形成されている。接続パイプは、この端部をメインシールド部の端部に一致させた後に、溶接により固定されている。
【0009】
上記構成及び構造において、上記の如く、溶接にてサブシールド部がメインシールド部に一体化することから、ワイヤハーネスは非常に長い金属パイプからなるシールド部材を備えていることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来のワイヤハーネスにあっては、金属パイプを用いることで電磁波対策としての電磁シールド効果は得られるものの、次のような問題点を有している。すなわち、ワイヤハーネスが非常に長い金属パイプからなるシールド部材を備えることになるため、ワイヤハーネス全体としての重量が大きくなってしまうという問題点を有している。係る問題点は、車両の軽量化にも影響を来すことになる。
【0012】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネスの軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、前記導電路を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材とを備えるワイヤハーネスにおいて、前記保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成されたパイプ状の保護部材を備えるワイヤハーネスとなる。保護部材は導電性を有する樹脂組成物からなることから、金属パイプと比べて軽量化を図ることができる。また、導電性を有することから電磁シールド効果も確保することができる。
【0015】
請求項2記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、前記保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂組成物からなる絶縁性樹脂被覆部で覆うことを特徴とする。
【0016】
このような特徴を有する本発明によれば、保護部材の外面を絶縁性樹脂被覆部で覆う構成であるため、衝撃等の外力からワイヤハーネスの保護を図りつつ、保護部材の外側に例えばプロテクタ等の外装部材を設けることなく絶縁性樹脂被覆部による経路規制を行うことが可能となる。
【0017】
請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、前記保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とすることを特徴とする。
【0018】
このような特徴を有する本発明によれば、保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とする構成であるため、衝撃等の外力からワイヤハーネスの保護を図る部分と、例えば編組等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材を備えるワイヤハーネスとなるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネスの軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるという効果を奏する。
【0020】
請求項2に記載された本発明によれば、請求項1の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、保護部材の外面を絶縁性樹脂被覆部で覆うことから、ワイヤハーネスにおける保護機能を高めることができるという効果を奏する。また、絶縁性樹脂被覆部によるワイヤハーネスの経路規制を行うことが可能となるため、プロテクタ等の外装部材を設ける必要がなくワイヤハーネスの経路規制に係る部品点数や外装部材の組み付けに係る作業工数を削減でき、製造コストを削減し、また、作業性の向上を図ることが可能なワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【0021】
請求項3に記載された本発明によれば、請求項2の効果に加え次のような効果を奏する。すなわち、衝撃等の外力からワイヤハーネスを保護する部分と、例えば編組等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材となることから、保護機能を確保しつつ、保護部材の端末におけるシールド部材の接続部分も確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のワイヤハーネスを配索した車両の模式図である。
【図2】ワイヤハーネスの構成を示す断面図である(実施例1)。
【図3】保護部材の構成を示す断面図である(実施例1)。
【図4】ワイヤハーネスの構成を示す断面図である(実施例2)。
【図5】保護部材の構成を示す断面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ワイヤハーネスは、複数本の高圧電線(導電路)と、この複数本の高圧電線を一括して覆いシールドする保護部材と、保護部材の両端末部分に接続される端末シールド部材とを含んで構成されている。
【実施例1】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスを配索した車両の模式図である。また、図2はワイヤハーネスの構成を示す断面図である。図3は保護部材の構成を示す断面図である。
【0025】
以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができるものとする。
【0026】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車であってもよいものとする)に本発明のワイヤハーネス用中間部材及びワイヤハーネスを採用する例を挙げて説明するものとする。
【0027】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2、フロントモーターユニット3、及びリアモーターユニット4を併用して駆動する車両であって、フロントモーターユニット3はフロントインバータユニット5を介して、また、リアモーターユニット4はリアインバータユニット6を介してバッテリー7(電池パック、組電池)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、フロントモーターユニット3、及びフロントインバータユニット5は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム8に搭載されている。また、リアモーターユニット4、リアインバータユニット6、及びバッテリー7は、後輪等がある自動車後部9に搭載されている(搭載位置は一例であるものとする。尚、バッテリー7に関しては、ハイブリッド自動車1や電気自動車等に使用可能であれば特に限定されないものとする)。
【0028】
フロントモーターユニット3とフロントインバータユニット5は、高圧のワイヤハーネス10により接続されている。また、フロントインバータユニット5とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス11により接続されている。さらに、リアモーターユニット4とリアインバータユニット6も高圧のワイヤハーネス12により接続されている。さらにまた、リアインバータユニット6とバッテリー7も高圧のワイヤハーネス13により接続されている。
【0029】
ワイヤハーネス11は、この中間部14が車体床下15の地面側に配索されている。ワイヤハーネス11は、車体床下15に沿って略平行に配索されている。車体床下15は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔(符号省略)が形成されている。この貫通孔は、ワイヤハーネス11の挿通部分となっている。
【0030】
ワイヤハーネス12は、この中間部16が自動車後部9における車体床下17を貫通するように配索されている。ワイヤハーネス12が挿通される貫通孔は、上記ワイヤハーネス11の貫通孔と同様に形成されている。引用符号18は室内を示している。
【0031】
尚、ワイヤハーネス10は、フロントモーターユニット3に接続されることから、また、ワイヤハーネス12は、リアモーターユニット4に接続されることから、モーターケーブルやモーターケーブル装置と呼ばれることもある。この他、ワイヤハーネス11は、車体床下15に配索されることから、床下ワイヤハーネスと呼ばれることもある。
【0032】
以下、本発明に関し、ワイヤハーネス11を例に挙げて説明をするものとする。本発明は、ワイヤハーネス11に限らず、ワイヤハーネス10、12、13にも適用可能であるものとする。
【0033】
ワイヤハーネス11は、フロントインバータユニット5とバッテリー7とを電気的に接続するためのものであって(図1参照)、図2に示す如く、二本の高圧電線19(導電路)と、この二本の高圧電線19を一括して覆いシールドするシールド部材兼用の保護部材20と、柔軟な二つの端末シールド部材22、23とを含んで構成されている。保護部材20は、本発明の特徴的な部材であって、導電性を有する樹脂組成物をパイプ状に形成したものをワイヤハーネス11の保護部材20として用いる構成となっている。また、保護部材20は、上記の如く、シールド部材兼用であることから、シールド機能を発揮させる部材となっている。
【0034】
保護部材20は、上記の如く、導電性を有する樹脂組成物からなり、図2、図3に示す如く、二本の高圧電線19の所定範囲を覆うことができる大きさ(直径)及び長さに形成されている。保護部材20は、本実施例において、導電性を有する樹脂組成物を断面円形のパイプ状に押し出して成型されている。導電性を有する樹脂組成物としては、樹脂材料に導電性材料を混ぜてなるものが挙げられる。具体的には、PBT等の樹脂材料にカーボンファイバを混ぜてなるものが一例として挙げられる。保護部材20は、金属製ではなく樹脂製であることから、軽量なものとなっている。
【0035】
高圧電線19は、導体及び絶縁体(被覆)24を含む高圧の導電路であって、電気的な接続に必要な長さを有するように形成されている。導体(図示省略)は、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金により製造されている。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。
【0036】
尚、本実施例においては高圧電線19を用いているが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧の導電路としたもの等を用いてもよいものとする。
【0037】
高圧電線19は、両端部とも所定長さで絶縁体24が除去されている。この除去部分からは、導体(図示省略)が露出するようになっている。露出した導体には、端子金具25が接続されている(図2参照)。端子金具25は、フロントインバータユニット5の図示しない接続部に対し接続される部分として、また、バッテリー7の図示しない接続部に対し接続される部分として設けられている。
【0038】
図1において、一の端末シールド部材22は、フロントインバータユニット5への接続部材として、また、他の端末シールド部材23は、バッテリー7への接続部材として設けられている。保護部材20は、この一端に端末シールド部材22が接続されるとともに、他端に端末シールド部材23が接続されている。
【0039】
二つの端末シールド部材22、23は、図2に示す如く、編組26と、この編組26の一端に電気的に接続されるシールドシェル27とを含んで構成されている。一の端末シールド部材22を構成するシールドシェル27は、フロントインバータユニット5のシールドケースに対し接続固定をすることができるように形成されている。また、他の端末シールド部材23を構成するシールドシェル27は、バッテリー7に対し接続固定をすることができるように形成されている。
【0040】
編組26は、電磁シールド用の筒状の部材(電磁波対策用のシールド部材)に形成されている。また、編組26は、図2に示す如く、二本の高圧電線19の所定範囲を覆うことができる大きさ形成されている。編組26は、導電性を有する極細の素線を多数用い、これを網状に編んで形成されている。
【0041】
上記素線に関しては、軟銅等の金属素線、非金属繊維からなる極細の素線などが挙げられるものとする。非金属繊維は、炭素繊維、又は樹脂材料に導電性材料を混ぜた導電性樹脂繊維が挙げられるものとする。尚、これらの素線の他に、例えば耐摩耗性を持たせるための樹脂素線(PETの素線)を混在させるようにしてもよいものとする。本実施例において編組26と、保護部材20の端末33及び後述するシールドシェル27との溶接による接続固定のため、導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組26が用いられている(一例であって、これに限られるものではない)。
【0042】
シールドシェル27は、本実施例において導電性を有する樹脂組成物からなる導電性樹脂シールドシェルが用いられているが、これ以外にも、例えば、導電性を有する金属からなるシールドシェル等を用いてもよいものとする。尚、編組26とシールドシェル27との接続固定は、例えば、編組26とシールドシェル27との接続箇所における溶接、溶着、接着、半田付け等を行う方法が挙げられる。溶接による接続の一例としては、導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組26と、導電性樹脂組成物からなるシールドシェル27とが図2に示す如く溶接され、編組26とシールドリング27の外周面との間に形成される接続部分28によって接続固定がなされている。従って、編組26とシールドシェル27とが重なり合う部分においてシールドリング等による加締めを施す作業が不要となり、ワイヤハーネス11の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。すなわち、ワイヤハーネス11の製造に係る製造コストを削減し、また、ワイヤハーネス11の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0043】
次に、保護部材20の端末33と、編組26との接続固定について説明する。
【0044】
編組26の他端は、保護部材20の端末33に接続固定をすることができるように形成されている。尚、保護部材20と編組26との接続固定は、例えば、保護部材20と編組26との接続箇所における溶接、溶着、接着、半田付け等を行う方法が挙げられる。溶接による接続の一例としては、保護部材20の端末33と導電性樹脂繊維を網状に編んで形成された編組26とが図2に示す如く溶接され、編組26と保護部材20の端末33の外面34との間に形成される接続部分29によって接続固定がなされている。従って、保護部材20の端末33と編組26とが重なり合う部分において加締めリング等による加締めを施す作業が不要となり、ワイヤハーネス11の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。すなわち、ワイヤハーネス11の製造に係る製造コストを削減し、また、ワイヤハーネス11の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0045】
以上、図1から図3までを参照しながら説明してきたように、本発明によれば、金属パイプと比べて軽量な導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材20を備えるワイヤハーネス11となるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネス11の軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるワイヤハーネス11を提供することができるという効果を奏する。
【実施例2】
【0046】
以下、図面を参照しながら実施例2を説明する。図4はワイヤハーネスの構成を示す断面図である。図5は保護部材の構成を示す断面図である。
【0047】
実施例2は、実施例1のワイヤハーネス11の保護部材20の外面34に後述する絶縁性樹脂被覆部32が設けられた点以外は同じであるものとする。従って、以下、絶縁性樹脂被覆部32について説明する。
【0048】
図4、図5において、ワイヤハーネス31の保護部材20は、本実施例においてこの保護部材20の外面34に更に絶縁性樹脂被覆部32が形成されている。絶縁性樹脂被覆部32は、保護部材20の上層に相当するものとして絶縁性を有する樹脂組成物からなる層として形成されている。絶縁性樹脂被覆部32は、保護部材20が成型された後、この保護部材20の外面34に対して絶縁性を有する樹脂をオーバーモールド成形することによって形成されている。言い換えれば、本実施例において保護部材20は、第一層と第二層とからなる二層構造を有して形成されているものである。そして、保護部材20が第一層に相当し、保護部材20の上層として形成される絶縁性樹脂被覆部32が第二層に相当するものである。
【0049】
本実施例によれば保護部材20の外面34に絶縁性樹脂被覆部32が形成されることにより、衝撃等の外力からワイヤハーネス31の保護を図りつつ、保護部材20の外側に例えばプロテクタ等の外装部材を設けることなく、絶縁性樹脂被覆部32によるワイヤハーネス31の経路規制を行うことが可能となる。
【0050】
図5に示す如く、本実施例において保護部材20の外面34には、保護部材20の端末33において絶縁性樹脂被覆部32が形成されず、保護部材20の端末33の外面34が露出されるように形成されている。保護部材20の係る露出された端末33の外面34は、シールド部材接続部35として構成されている。
【0051】
図4において、保護部材20のシールド部材接続部35には、端末シールド部材22、23を構成する部材であり且つ一端をシールドシェル27の外周面と接続された編組26の他端が接続される。編組26とシールド部材接続部35との接続は、本実施例において溶接により行うものとする(一例であるのもとする)。編組26とシールド部材接続部35とは、編組26とシールド部材接続部35との間に形成される接続部分29によって接続固定がなされている。尚、本実施例において編組26及びシールドシェル27は、実施例1と同じく導電性樹脂繊維を網状に編んで形成されている編組及び導電性樹脂組成物から形成されているシールドシェルを用いるものとする(一例であるものとする)。
【0052】
尚、本実施例において保護部材20のシールド部材接続部35に端末シールド部材22、23を予め溶接、溶着、接着、半田付け等により接続固定することができる。このように、保護部材20と端末シールド部材22、23とを一つの部材として一体的に形成することができることから、ワイヤハーネス31の製造に係る部品点数や作業工数の削減を図ることができる。従って、ワイヤハーネス31の製造に係る製造コストの削減やワイヤハーネス31の製造における作業性の向上を図ることができる。
【0053】
以上、図1から図5までを参照しながら説明してきたように、本発明によれば、導電性を有する樹脂組成物から形成された保護部材20を備えるワイヤハーネス11、31となるため、電磁シールド効果を確保しつつ、ワイヤハーネス11、31の軽量化を図るとともに車両の軽量化をも図ることができるという効果の他、以下の効果も奏する。
【0054】
本発明によれば、保護部材20の外面34を絶縁性樹脂被覆部32で覆うことからワイヤハーネス31における保護機能を高めることができるという効果を奏する。また、絶縁性樹脂被覆部32によるワイヤハーネス31の経路規制を行うことが可能となるため、プロテクタ等の外装部材を設ける必要がなくワイヤハーネス31の経路規制に係る部品点数や外装部材の組み付けに係る作業工数を削減でき、製造コストを削減し、また、作業性の向上を図ることが可能なワイヤハーネス31を提供することができるという効果を奏する。
【0055】
また、本発明によれば、衝撃等の外力からワイヤハーネス31を保護する部分と、例えば編組26等のシールド部材を接続する部分とを有する保護部材20となることから、保護機能を確保しつつ、保護部材20の端末33におけるシールド部材の接続部分も確保することができるという効果を奏する。
【0056】
この他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…フロントモーターユニット
4…リアモーターユニット
5…フロントインバータユニット
6…リアインバータユニット
7…バッテリー
8…エンジンルーム
9…自動車後部
10〜13、31…ワイヤハーネス
14、16…中間部
15、17…車体床下
18…室内
19…高圧電線(導電路)
20…保護部材
22、23…端末シールド部材
24…絶縁体
25…端子金具
26…編組
27…シールドシェル
28、29…接続部分
32…絶縁性樹脂被覆部
33…端末
34…外面
35…シールド部材接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路と、前記導電路を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材とを備えるワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなる
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂組成物からなる絶縁性樹脂被覆部で覆う
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項1】
一又は複数本の導電路と、前記導電路を収容し且つシールド機能を有するパイプ状の保護部材とを備えるワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材は、導電性を有する樹脂組成物からなる
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材の外面を絶縁性を有する樹脂組成物からなる絶縁性樹脂被覆部で覆う
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記保護部材の端末の外面を所定の範囲に亘って露出させ、この露出させた部分をシールド部材接続部とする
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−99074(P2013−99074A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238851(P2011−238851)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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